特許第6470057号(P6470057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6470057半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470057
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/314 20060101AFI20190204BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20190204BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190204BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H01L21/314 M
   H01L21/314 A
   H01L21/316 X
   H01L21/316 M
   H01L21/31 B
   C23C16/455
【請求項の数】17
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-16083(P2015-16083)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-143681(P2016-143681A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
(72)【発明者】
【氏名】▲ひろせ▼ 義朗
(72)【発明者】
【氏名】島本 聡
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/080785(WO,A1)
【文献】 特開2006−245089(JP,A)
【文献】 特開2011−082493(JP,A)
【文献】 特開2014−082322(JP,A)
【文献】 特開2015−012198(JP,A)
【文献】 特開2013−102130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31−316
C23C 16/00−56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する工程を有し、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における炭素の濃度を微調整する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第2の層を形成する工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込める請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における前記第2の元素の濃度および炭素の濃度のうち少なくともいずれかを微調整する請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間よりも長くする請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間よりも短くする請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記特定のサイクルは、前記サイクルを前記所定回数行う際の初期、中期、および後期のうち、少なくともいずれかである請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記特定のサイクル以外のサイクルでは、前記封じ込めを不実施とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記膜における炭素の濃度および前記第2の元素の濃度のうち少なくともいずれかは、前記膜の厚さ方向において異なる請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記膜における炭素の濃度および前記第2の元素の濃度のうち少なくともいずれかは、前記膜の底面側から表面側にかけて段階的に、もしくは、連続的に変化する請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記原料ガスはさらにハロゲン元素を含み、前記反応ガスはさらに水素を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の元素は半導体元素または金属元素を含み、前記第2の元素は酸素を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の触媒ガスは、前記第2の触媒ガスと、同一の分子構造を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する工程を有し、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第2の層を形成する工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、
前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における前記第2の元素の濃度および炭素の濃度のうち少なくともいずれかを微調整する半導体装置の製造方法。
【請求項14】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の元素を含む反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の触媒ガス、第2の触媒ガスを供給する触媒ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内の基板に対して、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する処理と、前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、前記処理室内の前記基板に対して、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する処理と、前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する処理において、前記排気系を閉塞した状態で前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における炭素の濃度を微調整するように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、前記触媒ガス供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項15】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の元素を含む反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の触媒ガス、第2の触媒ガスを供給する触媒ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内の基板に対して、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する処理と、前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、前記処理室内の前記基板に対して、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する処理と、前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第2の層を形成する処理において、前記排気系を閉塞した状態で前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における前記第2の元素の濃度および炭素の濃度のうち少なくともいずれかを微調整するように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、前記触媒ガス供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項16】
基板処理装置の処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する手順と、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルにおける、前記第1の層を形成する手順において、前記排気系を閉塞した状態で前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における炭素の濃度を微調整する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項17】
基板処理装置の処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する手順と、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルにおける、前記第2の層を形成する手順において、前記排気系を閉塞した状態で前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込め、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記膜における前記第2の元素の濃度および炭素の濃度のうち少なくともいずれかを微調整する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板に対して原料ガスと反応ガスとを供給し、基板上に膜を形成する成膜処理が行われることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、原料ガスと反応ガスとを用いて基板上に膜を形成する際、成膜処理の生産性を高め、形成する膜の組成比の制御性を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、
処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する工程を有し、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する工程および前記第2の層を形成する工程のうち少なくともいずれかの工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記各ガスを前記処理室内へ供給して封じ込める技術が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、原料ガスと反応ガスとを用いて基板上に膜を形成する際、成膜処理の生産性を高め、形成する膜の組成比の制御性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の一部の概略構成図であり、処理炉の一部を図1のA−A線断面図で示す図である。
図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】(a)は本発明の一実施形態の成膜シーケンスを示す図であり、(b)は本発明の一実施形態の成膜シーケンスの変形例を、(c)は本発明の一実施形態の成膜シーケンスの他の変形例をそれぞれ示す図である。
図5】(a)は本発明の一実施形態の成膜シーケンスの他の変形例を、(b)は本発明の一実施形態の成膜シーケンスの他の変形例をそれぞれ示す図である。
図6】(a)はスタック膜の一例を、(b)はスタック膜の他の一例を、(c)はスタック膜の他の一例を、(d)はスタック膜の他の一例をそれぞれ示す図である。
図7】(a)はスタック膜の他の一例を、(b)はスタック膜の他の一例を、(c)はスタック膜の他の一例を、(d)はスタック膜の他の一例をそれぞれ示す図である。
図8】(a)はナノラミネート膜の一例を、(b)はナノラミネート膜の他の一例をそれぞれ示す図である。
図9】(a)はHCDSの化学構造式を、(b)はOCTSの化学構造式をそれぞれ示す図である。
図10】(a)はBTCSMの化学構造式を、(b)はBTCSEの化学構造式をそれぞれ示す図である。
図11】(a)はTCDMDSの化学構造式を、(b)はDCTMDSの化学構造式を、(c)はMCPMDSの化学構造式をそれぞれ示す図である。
図12】(a)は環状アミンの化学構造式等を、(b)は鎖状アミンであるTEAの化学構造式等を、(c)は鎖状アミンであるDEAの化学構造式等を、(d)は鎖状アミンであるMEAの化学構造式等を、(e)は鎖状アミンであるTMAの化学構造式等を、(f)は鎖状アミンであるMMAの化学構造式等をそれぞれ示す図である。
図13】本発明の他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図14】本発明の他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図1図3を用いて説明する。
【0008】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0009】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0010】
処理室201内には、ノズル249a〜249cが、マニホールド209を貫通するように設けられている。ノズル249a〜249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料からなる。ノズル249a〜249cには、ガス供給管232a〜232cがそれぞれ接続されている。このように、反応管203には、3本のノズル249a〜249cと、3本のガス供給管232a〜232cとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。
【0011】
ガス供給管232a〜232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241cおよび開閉弁であるバルブ243a〜243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d〜232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d〜232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241d〜241fおよび開閉弁であるバルブ243d〜243fがそれぞれ設けられている。
【0012】
ガス供給管232a〜232cの先端部には、ノズル249a〜249cがそれぞれ接続されている。ノズル249a〜249cは、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a〜249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a〜249cは、処理室201内に搬入されたウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル249a〜249cは、L字型のロングノズルとしてそれぞれ構成されており、それらの各水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、それらの各垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249a〜249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a〜250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a〜250cは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a〜250cのそれぞれは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0013】
このように、本実施形態では、反応管203の内壁と、積載された複数のウエハ200の端部と、で定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a〜249cを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a〜249cにそれぞれ開口されたガス供給孔250a〜250cから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内へガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1の元素を含む原料ガスとして、例えば、第1の元素としてのSiおよびハロゲン元素を含むハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0015】
ハロシラン原料ガスとは、気体状態のハロシラン原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるハロシラン原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるハロシラン原料等のことである。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン原料は、ハロゲン化物の一種ともいえる。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。
【0016】
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むC非含有の原料ガス、すなわち、無機系のクロロシラン原料ガスを用いることができる。無機系のクロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガスや、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等を用いることができる。図9(a)にHCDSの化学構造式を、図9(b)にOCTSの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにClを含み、Si−Si結合を有する原料ガスであるともいえる。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとして作用する。
【0017】
また、ハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、Clおよびアルキレン基を含み、Si−C結合を有する原料ガス、すなわち、有機系のクロロシラン原料ガスであるアルキレンクロロシラン原料ガスを用いることもできる。アルキレン基には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が含まれる。アルキレンクロロシラン原料ガスを、アルキレンハロシラン原料ガスと称することもできる。アルキレンクロロシラン原料ガスとしては、例えば、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiClCH、略称:BTCSM)ガス、エチレンビス(トリクロロシラン)ガス、すなわち、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl、略称:BTCSE)ガス等を用いることができる。図10(a)にBTCSMの化学構造式を、図10(b)にBTCSEの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにCおよびClを含み、Si−C結合を有する原料ガスであるともいえる。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとしても作用し、Cソースとしても作用する。
【0018】
また、ハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、Clおよびアルキル基を含み、Si−C結合を有する原料ガス、すなわち、有機系のクロロシラン原料ガスであるアルキルクロロシラン原料ガスを用いることもできる。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。アルキルクロロシラン原料ガスを、アルキルハロシラン原料ガスと称することもできる。アルキルクロロシラン原料ガスとしては、例えば、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン((CHSiCl、略称:TCDMDS)ガス、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン((CHSiCl、略称:DCTMDS)ガス、1−モノクロロ−1,1,2,2,2−ペンタメチルジシラン((CHSiCl、略称:MCPMDS)ガス等を用いることができる。図11(a)にTCDMDSの化学構造式を、図11(b)にDCTMDSの化学構造式を、図11(c)にMCPMDSの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにCおよびClを含み、Si−C結合を有する原料ガスであるともいえる。なお、これらのガスはさらにSi−Si結合をも有する。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとしても作用し、Cソースとしても作用する。
【0019】
HCDSやBTCSMやTCDMDS等のように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体状態の原料を気化器やバブラなどの気化システムにより気化して、原料ガス(HCDSガス、BTCSMガス、TCDMDSガス等)として供給することとなる。
【0020】
ガス供給管232bからは、第2の元素を含む反応ガスとして、第2の元素としての酸素(O)を含むO含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、後述する成膜処理において、酸化剤(酸化ガス)、すなわち、Oソースとして作用する。O含有ガスとしては、例えば水蒸気(HOガス)を用いることができる。例えば、逆浸透膜を用いて不純物を除去したRO(Reverse Osmosis)水や、脱イオン処理を施すことで不純物を除去した脱イオン水や、蒸留器を用いて蒸留することで不純物を除去した蒸留水等の純水(或いは超純水)を、気化器やバブラやボイラ等の気化システムにより気化して、反応ガス(HOガス)として供給することとなる。
【0021】
ガス供給管232cからは、上述の原料ガスや反応ガスによる成膜反応を促進させる触媒ガス(第1の触媒ガス、第2の触媒ガス)が、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。触媒ガスとしては、例えば、C、NおよびHを含むアミン系ガスを用いることができる。
【0022】
アミン系ガスとは、アンモニア(NH)のHのうち少なくとも1つをアルキル基等の炭化水素基で置換したアミンを含むガスである。図12(a)〜図12(f)に示すように、孤立電子対を有するNを含み、酸解離定数(以下、pKaともいう)が例えば5〜11程度であるアミンを、触媒として好適に用いることができる。酸解離定数(pKa)とは、酸の強さを定量的に表わす指標のひとつであり、酸からHイオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表わしたものである。アミン系ガスとしては、炭化水素基が環状となった環状アミン系ガスや、炭化水素基が鎖状となった鎖状アミン系ガスを用いることができる。
【0023】
環状アミン系ガスとしては、図12(a)に示すように、例えば、ピリジン(CN、pKa=5.67)ガス、アミノピリジン(C、pKa=6.89)ガス、ピコリン(CN、pKa=6.07)ガス、ルチジン(CN、pKa=6.96)ガス、ピペラジン(C10、pKa=9.80)ガス、ピペリジン(C11N、pKa=11.12)ガス等を用いることができる。環状アミン系ガスは、CとNとの複数種類の元素からその環状構造が構成される複素環化合物(複素環式化合物)、すなわち、窒素含有複素環化合物であるともいえる。
【0024】
鎖状アミン系ガスとしては、図12(b)〜図12(f)に示すように、例えば、トリエチルアミン((CN、略称:TEA、pKa=10.7)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA、pKa=10.9)ガス、モノエチルアミン((C)NH、略称:MEA、pKa=10.6)ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA、pKa=9.8)ガス、モノメチルアミン((CH)NH、略称:MMA、pKa=10.6)ガス等を用いることができる。
【0025】
触媒として作用するアミン系ガスを、アミン系触媒、或いは、アミン系触媒ガスと称することもできる。触媒ガスとしては、上述のアミン系ガスの他、非アミン系ガス、例えば、アンモニア(NH、pKa=9.2)ガス等も用いることができる。
【0026】
なお、ここで例示した触媒は、後述する成膜処理において、分子構造の一部が分解する場合もある。このような、化学反応の前後でその一部が変化する物質は、厳密には「触媒」ではない。しかしながら、本明細書では、化学反応の過程でその一部が分解する場合であっても、大部分は分解せず、また、反応の速度を変化させ、実質的に触媒として作用する物質を、「触媒」と称することとしている。
【0027】
ガス供給管232d〜232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC241d〜241f、バルブ243d〜243f、ガス供給管232a〜232c、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給される。
【0028】
ガス供給管232aから上述の原料ガスを供給する場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。ノズル249aを原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。ガス供給管232aからハロシラン原料ガスを供給する場合、原料ガス供給系を、ハロシラン原料ガス供給系、或いは、ハロシラン原料供給系と称することもできる。
【0029】
ガス供給管232bから上述の反応ガスを供給する場合、主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。ノズル249bを反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管232bからO含有ガスを供給する場合、反応ガス供給系を、O含有ガス供給系、酸化剤供給系、或いは、酸化ガス供給系と称することもできる。
【0030】
ガス供給管232cから上述の触媒ガス(第1の触媒ガス、第2の触媒ガス)を供給する場合、主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、触媒ガス供給系が構成される。ノズル249cを触媒ガス供給系に含めて考えてもよい。触媒ガス供給系を触媒供給系と称することもできる。ガス供給管232cからアミン系ガスを供給する場合、触媒ガス供給系を、アミン系触媒ガス供給系、アミン系ガス供給系、或いは、アミン供給系と称することもできる。
【0031】
また、主に、ガス供給管232d〜232f、MFC241d〜241f、バルブ243d〜243fにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0032】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a〜249cと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0033】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0035】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a〜249cと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0036】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241f、バルブ243a〜243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0041】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するシーケンス例について、図4(a)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0042】
本実施形態における成膜シーケンスでは、
処理室201内の基板としてのウエハ200に対して、Si−C結合を含む原料ガスであるTCDMDSガスと第1の触媒ガスであるピリジンガスとを供給し、第1の層を形成するステップ1と、
処理室201内のTCDMDSガスとピリジンガスとを排気系より排気するステップ2と、
処理室201内のウエハ200に対して、Oを含む反応ガスであるHOガスと第2の触媒ガスであるピリジンガスとを供給し、第1の層を改質して、第2の層を形成するステップ3と、
処理室201内のHOガスとピリジンガスとを排気系より排気するステップ4と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回)行うことで、ウエハ200上に、Si、OおよびCを含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)を形成する。なお、本実施形態では、第1の触媒ガスが第2の触媒ガスと同一の分子構造を有する例を示している。
【0043】
ここで、サイクルを所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、第1の層を形成するステップ1および第2の層を形成するステップ3のうち少なくともいずれかのステップにおいて、排気系を閉塞した状態で各ガスを処理室201内へ供給して封じ込める処理(以下、この処理を単に「封じ込め」とも呼ぶ)を行う。
【0044】
図4(a)に示す成膜シーケンスは、TCDMDSガスとピリジンガスとを供給するステップ1でのみ封じ込めを実施し、HOガスとピリジンガスとを供給するステップ3では封じ込めを不実施とする例を示している。図4(a)に示す成膜シーケンスでは、後述する理由から、C濃度が比較的高いCリッチなSiOC膜、例えば、C濃度がO濃度よりも高いSiOC膜が形成されることとなる。
【0045】
なお、本明細書において、CリッチなSiOC膜とは、化学量論的な組成を有するSiOC膜よりもC濃度が高いSiOC膜のことをいう。すなわち、CリッチなSiOC膜とは、Si,Oに対するCの割合が、化学量論組成を有するSiOC膜におけるSi,Oに対するCの割合よりも大きいSiOC膜のことをいう。
【0046】
また、本明細書において、OリッチなSiOC膜とは、化学量論的な組成を有するSiOC膜よりもO濃度が高いSiOC膜のことをいう。すなわち、OリッチなSiOC膜とは、Si,Cに対するOの割合が、化学量論組成を有するSiOC膜におけるSi,Cに対するOの割合よりも大きいSiOC膜のことをいう。
【0047】
本明細書では、図4(a)に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。なお、以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0048】
([TCDMDS+ピリジン]→HO+ピリジン)×n ⇒ C−rich SiOC
【0049】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0050】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0051】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0052】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0053】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0054】
(成膜処理)
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してTCDMDSガスとピリジンガスとを供給する。このとき、排気系を閉塞した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給し、TCDMDSガスとピリジンガスとの処理室201内への封じ込めを実施する。
【0055】
具体的には、APCバルブ244を全閉とし、排気系による処理室201内の排気を停止する。また、バルブ243a,243cを開き、ガス供給管232a内へTCDMDSガスを、ガス供給管232c内へピリジンガスをそれぞれ流す。TCDMDSガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241a,241cにより流量調整され、ノズル249a,249cを介して処理室201内へ供給され、処理室201内に供給された後に混合(Post−mix)する。このとき同時にバルブ243d,243fを開き、ガス供給管232d,232f内へNガスを流す。ガス供給管232d,232f内を流れたNガスは、それぞれ、MFC241d,241fにより流量調整され、TCDMDSガス、ピリジンガスと一緒に処理室201内へ供給される。また、ノズル249b内へのTCDMDSガス、ピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へNガスを流す。Nガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0056】
このとき、MFC241aで制御するTCDMDSガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241cで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241d〜241fで制御するNガスの供給流量は、それぞれ、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。
【0057】
排気系を閉塞した状態で、処理室201内へTCDMDSガス、ピリジンガスを供給することで、処理室201内の圧力が上昇し始める。ガスの供給を継続することで最終的に到達する処理室201内の圧力(到達圧力)は、例えば400〜5000Pa、好ましくは500〜4000Paの範囲内の圧力となる。処理室201内の圧力をこのような高い圧力とすることで、TCDMDSガスやピリジンガスを、ノンプラズマで熱的に効率的に活性化(励起)させることが可能となる。TCDMDSガスやピリジンガスは、熱で活性化させて供給した方が、比較的ソフトな反応を生じさせることができ、後述する成膜反応を比較的ソフトに行うことが可能となる。
【0058】
排気系を閉塞した状態でTCDMDSガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。
【0059】
ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば室温(25℃)以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。TCDMDSガス供給時にピリジンガスを供給しない場合、ウエハ200の温度が250℃未満となるとウエハ200上にTCDMDSが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜レートが得られなくなることがある。TCDMDSガスと一緒にピリジンガスを供給することで、ウエハ200の温度を250℃未満としても、これを解消することが可能となる。ピリジンガスの存在下において、ウエハ200の温度を150℃以下、さらには100℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減することができ、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。ピリジンガスの存在下では、ウエハ200の温度が室温以上の温度であれば、ウエハ200上にTCDMDSを化学吸着させることができ、成膜処理を進行させることが可能となる。よって、ウエハ200の温度は、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度とするのがよい。
【0060】
上述の条件下でウエハ200に対してTCDMDSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのCおよびClを含むSi含有層が形成される。CおよびClを含むSi含有層は、Si−C結合を含む層となる。CおよびClを含むSi含有層は、CおよびClを含むSi層であってもよいし、TCDMDSの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。なお、本明細書では、CおよびClを含むSi含有層を、便宜上、単に、Cを含むSi含有層と称することともある。
【0061】
CおよびClを含むSi層とは、Siにより構成されCおよびClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるCおよびClを含むSi薄膜をも含む総称である。Siにより構成されCおよびClを含む連続的な層を、CおよびClを含むSi薄膜という場合もある。CおよびClを含むSi層を構成するSiは、CやClとの結合が完全に切れていないものの他、CやClとの結合が完全に切れているものも含む。
【0062】
TCDMDSの吸着層は、TCDMDS分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、TCDMDSの吸着層は、TCDMDS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。TCDMDSの吸着層を構成するTCDMDS分子は、図11(a)に化学構造式を示すものだけでなく、SiとCとの結合が一部切れたものや、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、TCDMDSの吸着層は、TCDMDSの物理吸着層であってもよいし、TCDMDSの化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0063】
ここで、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。CおよびClを含むSi含有層は、CおよびClを含むSi層とTCDMDSの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、CおよびClを含むSi含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとする。
【0064】
ウエハ200上に形成される第1の層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3での酸化の作用が第1の層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能な第1の層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、第1の層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。第1の層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ3での酸化反応の作用を相対的に高めることができ、ステップ3での酸化反応に要する時間を短縮することもできる。ステップ1での第1の層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、第1の層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0065】
TCDMDSガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、TCDMDSの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでCおよびClを含むSi層が形成される。TCDMDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、TCDMDSの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にTCDMDSが吸着することでTCDMDSの吸着層が形成される。どちらの条件下でも、TCDMDSガスにおけるSi−C結合の少なくとも一部は切断されずに保持(維持)され、CおよびClを含むSi含有層(CおよびClを含むSi層、または、TCDMDSの吸着層)中にそのまま取り込まれることとなる。ウエハ200上にTCDMDSの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にCおよびClを含むSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ、好ましい。但し、本実施形態では、ウエハ200の温度を例えば150℃以下の低温としているので、ウエハ200上へは、CおよびClを含むSi層ではなく、TCDMDSの吸着層の方が形成されやすくなる。なお、TCDMDSガスと一緒にピリジンガスを供給しない場合には、TCDMDSの吸着層は、TCDMDSの化学吸着層ではなく、TCDMDSの物理吸着層によって構成されやすくなる。
【0066】
ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、TCDMDSガスの分解を促し、TCDMDS分子の化学吸着による第1の層の形成を促進させる触媒ガス(第1の触媒ガス)として作用する。例えば、ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合に作用し、その結合力を弱めるように作用する。結合力の弱まったHと、TCDMDSガスのClと、が反応することで、Cl、Hを含むガス状物質が生成され、ウエハ200の表面からHが脱離すると共に、TCDMDS分子からClが脱離することとなる。Clを失ったTCDMDS分子(ハロゲン化物)は、ウエハ200等の表面に化学吸着する。これにより、ウエハ200上に、第1の層として、TCDMDSの化学吸着層が形成されることとなる。
【0067】
ピリジンガスの触媒作用により、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力が弱まるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するNが、Hを引きつけるように作用するためである。pKaが大きい化合物は、Hを引き付ける力が強くなる。pKaが5以上の化合物を第1の触媒ガスとして用いることで、TCDMDSの分解を促し、化学吸着による第1の層の形成を促進させることが可能となる。但し、pKaが過度に大きな化合物を第1の触媒ガスとして用いると、TCDMDS分子から引き抜かれたClと第1の触媒ガスとが反応し、これにより、塩化アンモニウム(NHCl)等の塩(パーティクル源)が発生する場合がある。そのため、pKaが例えば11以下、好ましくは7以下である化合物を第1の触媒ガスとして用いるのが好ましい。ピリジンガスは、pKaが約5.67と比較的大きく、また、7以下であることから、第1の触媒ガスとして好適に用いることが可能である。
【0068】
原料ガスとしては、TCDMDSガスの他、例えば、DCTMDSガス、MCPMDSガス、BTCSMガス、BTCSEガス等のSi−C結合を有するシラン原料ガスを用いることができる。
【0069】
第1の触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、例えば、アミノピリジンガス、ピコリンガス、ルチジンガス、ピペラジンガス、ピペリジンガス等の環状アミン系ガスや、TEAガス、DEAガス、MEAガス、TMAガス、MMAガス等の鎖状アミン系ガスや、NHガス等の非アミン系ガスを用いることができる。
【0070】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0071】
[ステップ2]
第1の層が形成された後、バルブ243a,243cを閉じ、処理室201内へのTCDMDSガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。そして、APCバルブ244を開き、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のTCDMDSガス、ピリジンガス、反応副生成物を処理室201内から排除する。また、バルブ243d〜243fは開いたままとして、処理室201内へのNガスの供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のTCDMDSガスおよびピリジンガス等を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0072】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ3において悪影響が生じることはない。処理室201内へ供給するNガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ3において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。Nガスの消費を必要最小限に抑えることも可能となる。
【0073】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0074】
[ステップ3]
ステップ2が終了した後、処理室201内のウエハ200に対してHOガスとピリジンガスとを供給する。このとき、排気系を開放した状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給し、HOガスとピリジンガスとの処理室201内への封じ込めを不実施とする。
【0075】
具体的には、APCバルブ244を開き、排気系による処理室201内の排気を実施する。また、バルブ243b,243c,243d〜243fの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243c,243d〜243fの開閉制御と同様の手順で行う。HOガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241b,241cにより流量調整され、ノズル249b,249cを介して処理室201内に供給され、処理室201内に供給された後に混合(Post−mix)する。また、ノズル249a内へのHOガス等の侵入を防止するNガスが、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0076】
このとき、MFC241bで制御するHOガスの供給流量は、例えば10〜10000sccm、好ましくは100〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241cで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。なお、ステップ3で供給するピリジンガスの量と、ステップ1で供給するピリジンガスの量とは、それぞれ独立に調整することが可能である。例えば、ステップ1,3におけるピリジンガスの供給量は、同一としてもよく、異ならせてもよい。
【0077】
処理室201内の圧力は、例えば50〜5000Pa、好ましくは100〜4000Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力をこのような圧力帯とすることで、HOガスやピリジンガスを、ノンプラズマで熱的に活性化させることが可能となる。HOガスやピリジンガスは、熱で活性化させて供給した方が、比較的ソフトな反応を生じさせることができ、後述する酸化を比較的ソフトに行うことができる。
【0078】
Oガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。
【0079】
その他の処理条件は、例えば、ステップ1と同様な処理条件とする。
【0080】
上述の条件下でウエハ200に対してHOガスを供給することで、ステップ1でウエハ200上に形成された第1の層(CおよびClを含むSi含有層)の少なくとも一部が酸化(改質)される。第1の層が改質されることで、Si、OおよびCを含む第2の層、すなわち、シリコン酸炭化層(SiOC層)が形成されることとなる。第2の層を形成する際、第1の層中に含まれるSi−C結合の少なくとも一部は、切断されることなく保持され、第2の層中にそのまま取り込まれる(残存する)こととなる。第2の層を形成する際、第1の層に含まれていたCl等の不純物は、HOガスによる改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。すなわち、第1の層中のCl等の不純物は、第1の層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、第1の層から分離する。これにより、第2の層は、第1の層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0081】
ピリジンガスは、HOガスが有するO−H結合の結合力を弱め、HOガスの分解を促し、HOガスと第1の層との反応による第2の層の形成を促進させる触媒ガス(第2の触媒ガス)として作用する。例えば、ピリジンガスは、HOガスの有するO−H結合に作用し、その結合力を弱めるように作用する。結合力の弱まったHと、ウエハ200上に形成された第1の層が有するClと、が反応することで、Cl、Hを含むガス状物質が生成され、HO分子からHが脱離すると共に、第1の層からClが脱離することとなる。Hを失ったHOガスのOは、Clが脱離して少なくともCの一部が残った第1の層のSiと結合する。これにより、ウエハ200上に、酸化された第1の層、すなわち、第2の層が形成されることとなる。
【0082】
ピリジンガスの触媒作用により、HOガスが有するO−H結合の結合力が弱まるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するNが、Hを引きつけるように作用するためである。上述したように、pKaが大きい化合物は、Hを引き付ける力が強くなる。pKaが5以上の化合物を第2の触媒ガスとして用いることで、HOガスが有するO−H結合の結合力を適正に弱めることができ、上述の酸化反応を促進させることが可能となる。但し、pKaが過度に大きな化合物を第2の触媒ガスとして用いると、第1の層から引き抜かれたClと第2の触媒ガスとが反応してNHCl等の塩が発生する場合がある。そのため、pKaが例えば11以下、好ましくは7以下である化合物を第2の触媒ガスとして用いるのが好ましい。ピリジンガスは、pKaが約5.67と比較的大きく、また、7以下であることから、第2の触媒ガスとして好適に用いることが可能である。この点は、第1の触媒ガスと同様である。
【0083】
反応ガスとしては、HOガスの他、例えば、過酸化水素(H)ガス等のO−H結合を含むO含有ガスを用いることができる。また、反応ガスとしては、O−H結合非含有のO含有ガス、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水素(H)ガス+Oガス、Hガス+Oガス等を用いることもできる。
【0084】
第2の触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、例えば、上述の各種のアミン系ガスや、非アミン系ガスを用いることができる。すなわち、第2の触媒ガスとしては、上述の第1の触媒ガスと同一の分子構造(化学構造)を有するガス、すなわち、マテリアルの等しいガスを用いることができる。また、第2の触媒ガスとしては、上述の第1の触媒ガスと異なる分子構造を有するガス、すなわち、マテリアルの異なるガスを用いることもできる。
【0085】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0086】
[ステップ4]
第2の層が形成された後、バルブ243b,243cを閉じ、処理室201内へのHOガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ2と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のHOガス、ピリジンガス、反応副生成物等を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、ステップ2と同様である。不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0087】
(所定回数実施)
上述したステップ1〜4を非同時に行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiOC膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する第2の層(SiOC層)の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2の層を積層することで形成されるSiOC膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0088】
(パージおよび大気圧復帰)
バルブ243d〜243fを開き、ガス供給管232d〜232fのそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0089】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0090】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0091】
(a)ステップ1において、排気系を閉塞した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給し、これらのガスを処理室201内へ封じ込める(封じ込めを実施する)ことで、排気系を開放した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給する(封じ込めを不実施とする)よりも、第1の層の形成レートを高めることが可能となる。
【0092】
というのも、封じ込めを実施することで、処理室201内に供給されたTCDMDSガスやピリジンガスが熱的に活性化される前に処理室201内から排出されてしまうことを回避できるようになる。これにより、処理室201内におけるこれらのガスの滞在時間、すなわち、熱による活性化に必要な加熱時間を、充分に確保することが可能となる。
【0093】
また、封じ込めを実施することで、封じ込めを不実施とするよりも、処理室201内の圧力(到達圧力)を高めることができるようになる。処理室201内の圧力を高めることで、例えば150℃以下の低温条件下であっても、TCDMDSガスやピリジンガスの熱的な活性化を充分に行うことができ、これらのガスの反応効率を充分に高めることが可能となる。特に、本実施形態のように、排気系を閉塞している間、処理室201内へのガス供給を停止することなく継続する場合は、処理室201内の圧力を上昇させやすくなる。その結果、TCDMDSガスやピリジンガスの熱的な活性化をより充分に行うことが可能となる。
【0094】
このように、TCDMDSガスとピリジンガスとの処理室201内への封じ込めを実施することで、これらのガスを、充分に活性化させることができ、これらのガスの反応効率を高めることが可能となる。これにより、TCDMDSガスの分解を促すことができ、ウエハ200上へのTCDMDSの化学吸着、すなわち、第1の層の形成を促進させることが可能となる。結果として、SiOC膜の成膜レートを高めることが可能となる。また、封じ込めを実施することで、成膜反応に寄与することなく処理室201内から排出されてしまうガスの量を削減することが可能となる。すなわち、処理室201内に供給されたガスのうち、成膜反応に寄与するガスの割合を増やすことが可能となる。これにより、ガスコスト、すなわち、成膜コストを低減させることも可能となる。
【0095】
(b)ステップ1において、TCDMDSガスとピリジンガスとの封じ込めを実施することで、封じ込めを不実施とするよりも、SiOC膜の組成比の制御性を高めることが可能となる。具体的には、封じ込めを実施することで、膜中へCをより高濃度に添加することができ、ウエハ200上に形成する膜を、CリッチなSiOC膜とすることが可能となる。
【0096】
というのも、封じ込めを実施することで、ウエハ200上へのTCDMDSの化学吸着を、より高密度に(緻密に)行わせることが可能となる。すなわち、封じ込めを実施することで形成される第1の層(TCDMDSの化学吸着層)は、封じ込めを不実施とすることで形成される層よりも、Si−C結合を含むTCDMDS分子を、より高密度かつ多量に含む緻密な層となる。このため、封じ込めを実施することで形成される第1の層は、封じ込めを不実施とすることで形成される第1の層よりも、Si−C結合の含有量がさらに大きいCリッチな層となる。その結果、ウエハ200上へCリッチなSiOC膜、例えば、C濃度がO濃度よりも高いSiOC膜を形成することが可能となる。
【0097】
なお、封じ込めを実施することで形成されるSiOC膜は、封じ込めを不実施とすることで形成されるSiOC膜よりも、膜中におけるSi−C結合の含有量が増加することを確認している。また、封じ込めを実施することで形成されるSiOC膜は、例えば600〜800℃の温度帯でSiソース、Oソース、Cソースをウエハ200に対して間欠供給することで形成されるSiOC膜よりも、膜中におけるSi−C結合の含有量が多くなることを確認している。
【0098】
(c)ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を調整することにより、最終的に形成されるSiOC膜の組成を緻密に制御することが可能となる。
【0099】
例えば、ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を長くすることで、ウエハ200上に化学吸着させるTCDMDSの密度を増加させることが可能となる。結果として、第1の層に含まれるTCDMDSの量、すなわち、Si−C結合の量を増加させ、SiOC膜におけるC濃度を増加させる方向に制御(微調整)することが可能となる。
【0100】
また例えば、ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を短くすることで、ウエハ200上に化学吸着させるTCDMDSの密度を低下させることが可能となる。結果として、第1の層に含まれるTCDMDSの量、すなわち、Si−C結合の量を低下させ、SiOC膜におけるC濃度を低下させる方向に制御(微調整)することが可能となる。
【0101】
(d)ステップ3におけるピリジンガスの供給量を調整することにより、最終的に形成されるSiOC膜の組成を緻密に制御することが可能となる。
【0102】
例えば、ステップ3におけるピリジンガスの供給量を低下させることで、HOガスの酸化力を低下させることが可能となる。これにより、ステップ3において、第1の層に含まれるSi−C結合の切断を抑制し、第1の層からのCの脱離量を低減させることが可能となる。結果として、SiOC膜におけるC濃度を増加させる方向に制御(微調整)することが可能となる。
【0103】
また例えば、ステップ3におけるピリジンガスの供給量を増加させることで、HOガスの酸化力を増加させることが可能となる。これにより、ステップ3において、第2の層中に導入するOの量を増加させることが可能となる。また、第1の層に含まれるSi−C結合の切断を促進させ、第1の層からのCの脱離量を僅かに増加させることが可能となる。結果として、SiOC膜におけるO濃度を増加させる方向に、また、SiOC膜におけるC濃度を僅かに低下させる方向に、それぞれ制御(微調整)することが可能となる。
【0104】
(e)TCDMDSガスおよびピリジンガスの供給と、HOガスおよびピリジンガスの供給と、を非同時に、すなわち、同期させることなく交互に行うことで、これらのガスを、表面反応が支配的な条件下で適正に反応させることができる。結果として、SiOC膜の段差被覆性、膜厚制御性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、処理室201内における過剰な気相反応を回避することができ、パーティクルの発生を抑制することも可能となる。
【0105】
(f)ステップ1において、APCバルブ244を全閉として排気系を閉塞することで、APCバルブ244の寿命を延ばすことが可能となる。これは、ステップ1において、処理室201内の圧力制御のためにAPCバルブ244の開度調整動作が不要となることから、APC244バルブの消耗を抑制することができるためである。
【0106】
(g)上述の各効果は、原料ガスとしてTCDMDSガス以外のガスを用いる場合や、反応ガスとしてHOガス以外のO含有ガスを用いる場合や、第1、第2の触媒ガスとしてピリジンガス以外のアミン系ガスや非アミン系ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。また、上述の効果は、第1、第2の触媒ガスとして、同一の分子構造を有するガスを用いる場合に限らず、異なる分子構造を有するガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。例えば、第1の触媒ガスとしてピリジンガスを用い、第2の触媒ガスとしてアミノピリジンガス、ピコリンガス、ルチジンガス等を用いる場合であっても、上述の効果を得ることができる。
【0107】
(4)変形例
本実施形態における成膜シーケンスは、図4(a)に示す態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0108】
(変形例1)
図4(b)に示すように、TCDMDSガスとピリジンガスとを供給するステップ1では封じ込めを不実施とし、HOガスとピリジンガスとを供給するステップ3でのみ封じ込めを実施するようにしてもよい。本変形例では、ステップ1ではAPCバルブ244を開き、排気系による処理室201内の排気を実施するようにし、ステップ3ではAPCバルブ244を全閉とし、排気系による処理室201内の排気を停止するようにする。また、ステップ1,3におけるバルブ243a〜243fの開閉制御は、図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1,3におけるバルブ243a〜243fの開閉制御と同様とする。
【0109】
本変形例によれば、ステップ3において、排気系を閉塞した状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給し、これらのガスを処理室201内へ封じ込めることで、封じ込めを不実施とするよりも、第2の層の形成レートを高めることが可能となる。
【0110】
というのも、封じ込めを実施することで、処理室201内に供給されたHOガスやピリジンガスが熱的に活性化される前に処理室201内から排出されてしまうことを回避できるようになる。これにより、処理室201内におけるこれらのガスの滞在時間、すなわち、熱による活性化に必要な加熱時間を、充分に確保することが可能となる。また、封じ込めを実施することで、封じ込めを不実施とするよりも、処理室201内の圧力を高めることができるようになる。処理室201内の圧力を高めることで、例えば150℃以下の低温条件下であっても、HOガスやピリジンガスの熱的な活性化を充分に行うことができ、これらのガスの反応効率を充分に高めることが可能となる。特に、図4(b)に示すように、排気系を閉塞している間、処理室201内へのガス供給を停止することなく継続する場合は、処理室201内の圧力を上昇させやすくなる。その結果、HOガスやピリジンガスの熱的な活性化をより充分に行うことが可能となる。
【0111】
このように、HOガスとピリジンガスとの処理室201内への封じ込めを実施することで、これらのガスを充分に活性化させることができ、これらのガスの反応効率を高めることが可能となる。これにより、HOガスの分解を促し、HOガスの酸化力を高めることが可能となる。これにより、第1の層の酸化、すなわち、第2の層の形成を促進させることが可能となる。結果として、SiOC膜の成膜レートを高めることが可能となる。また、封じ込めを実施することで、成膜反応に寄与することなく処理室201内から排出されてしまうガスの量を削減することが可能となる。すなわち、処理室201内に供給されたガスのうち、成膜反応に寄与するガスの割合を増やすことが可能となる。これにより、ガスコスト、すなわち、成膜コストを低減させることも可能となる。
【0112】
また、本変形例によれば、ステップ3において、HOガスとピリジンガスとの封じ込めを実施することで、封じ込めを不実施とするよりも、SiOC膜の組成比の制御性を高めることが可能となる。具体的には、封じ込めを実施することで、膜中へOを高濃度に添加することができ、ウエハ200上に形成する膜を、OリッチなSiOC膜とすることが可能となる。
【0113】
というのも、上述したように、封じ込めを実施することで、封じ込めを不実施とするよりも、HOガスの分解を促し、HOガスの酸化力を高めることが可能となる。これにより、ステップ3において、第1の層に含まれるSiと、HOに含まれるOと、の結合を促進させることができる。また、第1の層に含まれるSi−C結合の切断を促進させ、第1の層からのCの脱離量を増加させることが可能となる。また、Si−C結合が切断されることで未結合手(ダングリングボンド)を有することとなったSiと、HOに含まれるOと、を結合させることも可能となる。これらにより、第1の層に添加するOの量を増加させ、第2の層中に含まれるSi−O結合の量を増やすことが可能となる。結果として、SiOC膜におけるO濃度を増加させる方向に、また、SiOC膜におけるC濃度を僅かに低下させる方向にそれぞれ調整することが可能となる。このため、封じ込めを実施することで形成される第2の層は、封じ込めを不実施とすることで形成される第2の層よりも、O含有量が大きいOリッチな層となる。その結果、ウエハ200上にOリッチなSiOC膜、例えば、O濃度がC濃度よりも高いSiOC膜を形成することが可能となる。
【0114】
また、本変形例によれば、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を調整することにより、最終的に形成されるSiOC膜の組成を緻密に制御することが可能となる。
【0115】
例えば、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を長くすることで、第1の層に添加するOの量を増加させることが可能となる。また、第1の層に含まれるSi−C結合の切断を促進させ、第1の層からのCの脱離量を僅かに増加させることも可能となる。結果として、SiOC膜におけるO濃度を増加させる方向に、また、SiOC膜におけるC濃度を僅かに低下させる方向に、それぞれ制御(微調整)することが可能となる。
【0116】
また例えば、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を短くすることで、第1の層に添加するOの量を減少させるとともに、第1の層に含まれるSi−C結合の切断を抑制し、第1の層からのCの脱離量を低減させることが可能となる。結果として、SiOC膜におけるC濃度の低下を抑制する方向に制御することが可能となる。
【0117】
本変形例の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。
【0118】
(TCDMDS+ピリジン→[HO+ピリジン])×n ⇒ O−rich SiOC
【0119】
(変形例2)
図4(c)に示すように、TCDMDSガスとピリジンガスとを供給するステップ1で封じ込めを実施し、さらに、HOガスとピリジンガスとを供給するステップ3で封じ込めを実施するようにしてもよい。本変形例では、ステップ1,3のそれぞれでAPCバルブ244を全閉とし、排気系による処理室201内の排気を停止するようにする。ステップ1,3におけるバルブ243a〜243fの開閉制御は、図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1,3におけるバルブ243a〜243fの開閉制御と同様とする。
【0120】
本変形例においても、図4(a)、図4(b)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
【0121】
また、本変形例によれば、ステップ1,3の両方で封じ込めを実施することから、第1の層の形成レート、第2の層の形成レートをそれぞれ高めることが可能となる。結果として、SiOC膜の成膜レートを一層高めることが可能となる。また、両方のステップで封じ込めを実施することで、成膜反応に寄与することなく処理室201内から排出されてしまうガスの量をさらに削減し、ガスコスト、すなわち、成膜コストを一層低減させることも可能となる。
【0122】
また、本変形例によれば、ステップ1,3において封じ込めを実施する時間を調整することで、SiOC膜の組成を広範囲に制御することが可能となる。
【0123】
例えば、ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間よりも長くすることで、CリッチなSiOC膜、例えば、O濃度よりもC濃度の方が高いSiOC膜を形成することが可能となる。
【0124】
また例えば、ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間よりも短くすることで、OリッチなSiOC膜、例えば、C濃度よりもO濃度の方が高いSiOC膜を形成することが可能となる。
【0125】
また例えば、ステップ1においてTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を、ステップ3においてHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間と同程度とすることで、CリッチなSiOC膜、OリッチなSiOC膜、または、CリッチでありOリッチでもあるSiOC膜を形成することが可能となる。例えば、O濃度とC濃度とが同等のSiOC膜を形成することもできる。
【0126】
本変形例の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。
【0127】
([TCDMDS+ピリジン]→[HO+ピリジン])×n ⇒ C/O−rich SiOC
【0128】
(変形例3)
図5(a)に示すように、ステップ1においては、TCDMDSガスおよびピリジンガスの供給を、排気系の閉塞期間の初期にのみ行うようにしてもよい。
【0129】
すなわち、ステップ1において、APCバルブ244を全閉とした状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込めるサブステップと、TCDMDSガスとピリジンガスとの処理室201内への供給を停止してTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込めた状態を維持するサブステップと、を行うようにしてもよい。
【0130】
また、図5(b)に示すように、ステップ3においては、HOガスおよびピリジンガスの供給を、排気系の閉塞期間の初期にのみ行うようにしてもよい。
【0131】
すなわち、ステップ3において、APCバルブ244を全閉とした状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込めるサブステップと、HOガスとピリジンガスとの処理室201内への供給を停止してHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込めた状態を維持するサブステップと、を行うようにしてもよい。
【0132】
本変形例によっても、図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、成膜反応に寄与することなく処理室201内から排出されてしまうガスの量をさらに削減し、ガスコスト、すなわち、成膜コストを一層低減させることも可能となる。
【0133】
(変形例4)
図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例を組み合わせ、化学組成の異なる2つの膜を積層することで、ウエハ200上に、SiOC膜(スタック膜)を形成するようにしてもよい。
【0134】
例えば、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成した後、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図6(a)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0135】
また例えば、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成した後、ステップ1,3のいずれでも処理室201内へのガスの封じ込めを行わない成膜シーケンスによりSiOC膜(Normal SiOC)を形成するようにしてもよい。図6(b)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0136】
また例えば、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成した後、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図6(c)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0137】
また例えば、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成した後、ステップ1,3のいずれでも処理室201内へのガスの封じ込めを行わない成膜シーケンスによりSiOC膜(Normal SiOC)を形成するようにしてもよい。図6(d)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0138】
これらの変形例においても、図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例と同様の効果が得られる。
【0139】
また、これらの変形例によれば、最終的に形成されるSiOC膜(スタック膜)におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、膜の厚さ方向(積層方向)に異なる膜を形成することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiOC膜におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、この膜の底面側から表面側にかけて段階的に変化した膜を形成することが可能となる。
【0140】
なお、膜の表面側のC濃度を高めるように組成を変化させた場合は、この膜のエッチング耐性、すなわち、加工特性を向上させることが可能となる点で、好ましい。膜中のC濃度が相対的に高い膜は、膜中のC濃度が相対的に低い膜よりも、HF等に対する耐性が高くなる傾向がある。
【0141】
また、膜の表面側のO濃度を高める(C濃度を低下させる)ように組成を変化させた場合は、この膜の表面ラフネスを向上させることが可能となる点で、好ましい。なお、「表面ラフネス」とは、ウエハ面内あるいは任意の対象面内の高低差を意味しており、表面粗さと同様の意味を有している。表面ラフネスが向上するとは、この高低差が小さくなること、すなわち、表面が平滑となることを意味している。表面ラフネスが悪化するとは、この高低差が大きくなる(大きい)こと、すなわち、表面が粗くなることを意味している。膜中のC濃度が相対的に低い膜は、膜中のC濃度が相対的に高い膜よりも、表面ラフネスが良好となる傾向がある。
【0142】
サイクルを所定回数行う際の前期、後期で行う成膜シーケンスは、上述の例に限定されず、図4(a)〜図4(c)に示す成膜シーケンスから任意の組み合わせで選択することができる。この際、一部の変形例のように、サイクルを所定回数行う際の前期、後期のうち、少なくともいずれかにおいて封じ込めを実施し、他では封じ込めを不実施とするようにしてもよい。
【0143】
(変形例5)
図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例を組み合わせ、組成の異なる3つの膜を積層することで、ウエハ200上に、SiOC膜(スタック膜)を形成するようにしてもよい。
【0144】
例えば、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成した後、ステップ1,3のいずれでも処理室201内へのガスの封じ込めを行わない成膜シーケンスによりSiOC膜(Normal SiOC)を形成し、その後、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図7(a)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0145】
また例えば、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成した後、ステップ1,3のいずれでも処理室201内へのガスの封じ込めを行わない成膜シーケンスによりSiOC膜(Normal SiOC)を形成し、その後、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図7(b)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0146】
また例えば、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成した後、図4(c)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C/O−rich SiOC)を形成し、その後、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図7(c)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0147】
また例えば、図4(b)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(O−rich SiOC)を形成した後、図4(c)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C/O−rich SiOC)を形成し、その後、図4(a)に示す成膜シーケンスによりSiOC膜(C−rich SiOC)を形成するようにしてもよい。図7(d)に、本変形例により形成されるスタック膜の断面構造を示す。
【0148】
本変形例においても、図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例と同様の効果が得られる。
【0149】
また、本変形例によれば、最終的に形成されるSiOC膜(スタック膜)におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、膜の厚さ方向(積層方向)において異なる膜を形成することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiOC膜におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、この膜の底面側から表面側にかけて段階的に変化した膜を形成することが可能となる。上述したように、膜の表面側のC濃度を高めるように組成を変化させた場合は、この膜のエッチング耐性、すなわち、加工特性を向上させることが可能となる点で、好ましい。また、膜の表面側のO濃度を高める(C濃度を低下させる)ように組成を変化させた場合は、この膜の表面ラフネスを向上させることが可能となる点で、好ましい。
【0150】
サイクルを所定回数行う際の初期、中期、後期で行う成膜シーケンスは、上述の例に限定されず、図4(a)〜図4(c)に示す成膜シーケンスから任意の組み合わせで選択することができる。この際、一部の変形例のように、サイクルを所定回数行う際の初期、中期、および後期のうち、少なくともいずれかにおいて封じ込めを実施し、他では封じ込めを不実施とするようにしてもよい。
【0151】
(変形例6)
図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例を組み合わせ、組成の異なる複数の膜をナノレベルの厚さで積層することで、ウエハ200上に、SiOC膜(ナノラミネート膜)を形成するようにしてもよい。
【0152】
例えば、
第1の層を形成するステップにおいて、排気系を閉塞した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込め、第2の層を形成するステップにおいて、排気系を開放した状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給する第1のサイクルと、
第1の層を形成するステップにおいて、排気系を開放した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給し、第2の層を形成するステップにおいて、排気系を閉塞した状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込める第2のサイクルと、
を交互に行う(繰り返す)ようにしてもよい。
【0153】
また例えば、
第1の層を形成するステップにおいて、排気系を閉塞した状態でTCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込め、第2の層を形成するステップにおいて、排気系を閉塞した状態でHOガスとピリジンガスとを処理室201内へ供給して封じ込め、
TCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を、HOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間よりも長くする第1のサイクルと、
TCDMDSガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間を、HOガスとピリジンガスとを処理室201内へ封じ込める時間よりも短くする第2のサイクルと、
を交互に行う(繰り返す)ようにしてもよい。
【0154】
本変形例においても、図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例と同様の効果が得られる。
【0155】
また、本変形例によれば、第1のサイクルで形成するCリッチなSiOC膜(第1の膜)と、第2のサイクルで形成するOリッチなSiOC膜(第2の膜)と、がナノレベルで交互に積層されてなるナノラミネート膜を形成することが可能となる。
【0156】
なお、ナノラミネート膜を構成する各膜の膜厚は、それぞれ、0.1nm以上5nm以下、好ましくは0.1nm以上3nm以下、より好ましくは0.1nm以上1nm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0157】
第1の膜および第2の膜の膜厚をそれぞれ0.1nm未満の膜厚とすることは困難である。また、第1の膜および第2の膜のいずれかの膜の膜厚が5nmを超える膜厚となると、最終的に形成されるSiOC膜が、積層方向に非統一(不統一)な特性を有する膜、すなわち、第1の膜と第2の膜とが単に積層され、積層方向に特性が分離した膜となることがある。第1の膜および第2の膜の膜厚をそれぞれ上述の範囲内の膜厚とすることで、最終的に形成されるSiOC膜を、積層方向において統一された特性を有する膜、すなわち、第1の膜および第2の膜のそれぞれの特性、性質が適正に融合した膜とすることが可能となる。なお、第1の膜および第2の膜の膜厚をそれぞれ3nm以下とすることで、これらの膜のそれぞれの特性、性質がより充分に融合した積層膜を得ることができる。また、第1の膜および第2の膜の膜厚をそれぞれ1nm以下とすることで、これらの膜のそれぞれの特性、性質が確実に融合した積層膜を得ることができる。つまり、第1の膜および第2の膜の膜厚を上述の範囲内の膜厚とすることで、最終的に形成されるSiOC膜を、膜全体として一体不可分の特性を有するナノラミネート膜とすることが可能となる。なお、上述の第1のサイクル、第2のサイクルの実施回数を、それぞれ、1回以上50回以下、好ましくは1回以上30回以下、より好ましくは1回以上10回以下とすることで、第1の膜および第2の膜の膜厚を、それぞれ上述の範囲内の膜厚とすることができる。また、第1の膜および第2の膜の膜厚をそれぞれ薄くするほど、最終的に形成されるSiOC膜の表面ラフネスを向上させることも可能となる。
【0158】
また、本変形例によれば、最終的に形成されるSiOC膜(ナノラミネート膜)におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、膜の厚さ方向(積層方向)において異なる膜を形成することも可能である。すなわち、最終的に形成されるSiOC膜におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかが、この膜の底面側から表面側にかけて段階的、もしくは、連続的に変化した膜を形成することも可能である。
【0159】
例えば、ナノラミネート膜を形成する際、図8(a)に示すように、膜の底面側ではC濃度を小さく、O濃度を大きくするようにし、膜の表面側ではC濃度を大きく、O濃度を小さくするようにしてもよい。この場合、膜の底面と表面との間で、C濃度、O濃度をそれぞれ徐々に、または、滑らかに変化させるようにしてもよい。すなわち、膜の厚さ方向におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかに、勾配(グラデーション)をつけるようにしてもよい。
【0160】
また例えば、ナノラミネート膜を形成する際、図8(b)に示すように、膜の底面側ではC濃度を大きく、O濃度を小さくするようにし、膜の表面側ではC濃度を小さく、O濃度を大きくするようにしてもよい。そして、膜の底面と表面との間で、C濃度、O濃度をそれぞれ徐々に、または、滑らかに変化させるようにしてもよい。すなわち、膜の厚さ方向におけるC濃度およびO濃度のうち少なくともいずれかに、グラデーションをつけるようにしてもよい。
【0161】
上述したように、ナノラミネート膜の表面側のC濃度を高めるように組成を変化させた場合は、この膜のエッチング耐性、すなわち、加工特性を向上させることが可能となる点で、好ましい。また、ナノラミネート膜の表面側のO濃度を高める(C濃度を低下させる)ように組成を変化させた場合は、この膜の表面ラフネスを向上させることが可能となる点で、好ましい。
【0162】
ナノラミネート膜を構成する各膜を形成する際の成膜シーケンスは、図4(a)〜図4(c)に示す成膜シーケンスから任意の組み合わせで選択することができる。この際、ナノラミネート膜を構成する複数の膜のうち、特定の膜については封じ込めを実施することで形成し、他の膜については封じ込めを不実施とすることで形成するようにしてもよい。
【0163】
(変形例7)
原料ガスとして、TCDMDSガスのようなアルキルハロシラン原料ガスではなく、BTCSMガスのようなアルキレンハロシラン原料ガスを用いるようにしてもよい。
【0164】
本変形例によっても、図4(a)に示す成膜シーケンスや各変形例と同様の効果が得られる。また、原料ガスとして、Si−Si結合を有さず、それらの間にCが介在したSi−C−Si結合を有するアルキレンハロシラン原料ガスを用いることで、SiOC膜中のC濃度をさらに高めることが可能となる。というのも、アルキレンハロシラン原料ガスに含まれるCは、2つの結合手でSiとそれぞれ結合している。このため、第1の層を形成する際、原料ガスに含まれるCとSiとの結合が全て切れてしまい、Cが第1の層中に取り込まれなくなることを抑制できるようになる。また、第1の層を第2の層へと改質する際、第1の層中に含まれるCとSiとの結合が全て切れてしまい、第1の層からCが脱離してしまうことを抑制できるようになる。すなわち、アルキレンハロシラン原料ガスのようなSi−C−Si結合を有する原料ガスを用いることで、Si−Siの間にCが介在した結合を有さない原料ガス等を用いる場合よりも、膜中のC濃度を高めることが可能となる。
【0165】
(変形例8)
以下に示す成膜シーケンスのように、原料ガスとして、HCDSガスのようなC非含有のハロシラン原料ガス、すなわち、Si−C結合非含有のハロシラン原料ガスを用いるようにしてもよい。処理室201内へHCDSガスとピリジンガスとを供給するステップ1では、第1の層として、Clを含みC非含有のシリコン含有層(Clを含むSi含有層)が形成されることとなる。処理室201内へHOガスとピリジンガスとを供給するステップ3では、第2の層として、C非含有のシリコン酸化層(SiO層)が形成されることとなる。結果として、ウエハ200上には、C非含有のシリコン酸化膜(SiO膜)が形成されることとなる。
【0166】
([HCDS+ピリジン]→HO+ピリジン)×n ⇒ SiO
【0167】
(HCDS+ピリジン→[HO+ピリジン])×n ⇒ SiO
【0168】
([HCDS+ピリジン]→[HO+ピリジン])×n ⇒ SiO
【0169】
これらの成膜シーケンスによっても、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。すなわち、ステップ1やステップ3のうち少なくともいずれかのステップにおいて、処理室201内へのガスの封じ込めを行うことで、第1の層や第2の層の形成レートを高めることが可能となる。結果として、SiO膜の成膜レートを高めることが可能となる。また、SiO膜の組成比の制御性を高めることも可能となる。
【0170】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0171】
上述の実施形態等では、原料ガスと第1の触媒ガスとを供給した後、反応ガスと第2の触媒ガスとを供給する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、これらの供給順序は逆でもよい。すなわち、反応ガスと第2の触媒ガスとを供給した後、原料ガスと第1の触媒ガスとを供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0172】
上述の実施形態等では、排気系を閉塞する際に、APCバルブ244を全閉とせず、僅かに開くようにしてもよい。この場合、処理室201内へガスを供給しつつ処理室201内からガスを排気するようにし、その際、処理室201内からのガスの排気レートを、処理室201内へのガスの供給レートよりも小さくした状態を維持するようにしてもよい。このようにすることで、処理室201内から排気管231へと向かうガスの流れを僅かに形成することができる。これにより、処理室201内で生成された反応副生成物等を処理室201内から除去することが可能となり、成膜処理の品質を向上させることが可能となる。本明細書では、APCバルブ244を全閉とする場合だけでなく、APCバルブ244を僅かに開く場合についても、排気系を閉塞した状態に含めて考えることとする。
【0173】
また、上述の実施形態等では、第1の層を第2の層へと変化させる際、第2の触媒ガスと共に熱で活性化させた反応ガスを用いる例、すなわち、第2の触媒ガスと反応ガスとをノンプラズマの雰囲気下で供給する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、プラズマ励起させた反応ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、反応ガスをプラズマ雰囲気下で供給するようにしてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0174】
また、上述の実施形態等では、HOガス等の酸化ガスを反応ガスとして用いSiOC膜やSiO膜等のSi系酸化膜を形成する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、例えば酸化ガスの代わりにN−H結合を含む窒化ガスを反応ガスとして用い、第1の層を窒化させて第2の層を形成し、SiCN膜やSiN膜等のSi系窒化膜を形成してもよい。あるいは、酸化ガスや窒化ガス等を適宜組み合わせて反応ガスとして用い、SiON膜やSiOCN膜等のSi系酸窒化膜を形成してもよい。窒化ガスとしては、例えば、NHガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス、これらの化合物を含むガス等を用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0175】
また、上述の実施形態等では、SiOC膜やSiO膜の成膜に用いる原料ガスとして、クロロシラン原料ガスを用いる例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、クロロシラン原料ガス以外のハロシラン原料ガス、例えば、フルオロシラン原料ガスやブロモシラン原料ガス等を用いてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0176】
上述の実施形態の手法により形成したシリコン系絶縁膜を、サイドウォールスペーサとして使用することにより、リーク電流が少なく、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、上述のシリコン系絶縁膜を、エッチストッパーとして使用することにより、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、上述の実施形態によれば、プラズマを用いず、理想的量論比のシリコン系絶縁膜を形成することができる。プラズマを用いずシリコン系絶縁膜を形成できることから、例えばDPTのSADP膜等、プラズマダメージを懸念する工程への適応も可能となる。
【0177】
上述の成膜シーケンスは、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む酸化膜、すなわち、金属系酸化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、上述の成膜シーケンスは、ウエハ200上に、TiOC膜、TiO膜、TiOCN膜、TiON膜、ZrOC膜、ZrO膜、ZrOCN膜、ZrON膜、HfOC膜、HfO膜、HfOCN膜、HfON膜、TaOC膜、TaO膜、TaOCN膜、TaON膜、NbOC膜、NbO膜、NbOCN膜、NbON膜、AlOC膜、AlO膜、AlOCN膜、AlON膜、MoOC膜、MoO膜、MoOCN膜、MoON膜、WOC膜、WO膜、WOCN膜、WON膜を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0178】
金属系酸化膜を形成する場合、原料ガスとして、例えば、チタニウムテトラクロライド(TiCl)ガス、チタニウムテトラフルオライド(TiF)ガス、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl)ガス、ジルコニウムテトラフルオライド(ZrF)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)ガス、ハフニウムテトラフルオライド(HfF)ガス、タンタルペンタクロライド(TaCl)ガス、タンタルペンタフルオライド(TaF)ガス、ニオビウムペンタクロライド(NbCl)ガス、ニオビウムペンタフルオライド(NbF)ガス、アルミニウムトリクロライド(AlCl)ガス、アルミニウムトリフルオライド(AlF)ガス、モリブデンペンタクロライド(MoCl)ガス、モリブデンペンタフルオライド(MoF)ガス、タングステンヘキサクロライド(WCl)ガス、タングステンヘキサフルオライド(WF)ガス等の金属元素およびハロゲン元素を含む無機金属原料ガスを用いることができる。また、原料ガスとして、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)ガス等の金属元素およびCを含む(金属元素とCとの化学結合を含む)有機金属原料ガスを用いることもできる。反応ガス、第1の触媒ガス、第2の触媒ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。
【0179】
このときの処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0180】
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素を含む酸化膜を形成する場合に好適に適用することができる。
【0181】
基板処理に用いられるレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成する膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0182】
上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0183】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0184】
例えば、図13に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内へガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート332bと、上述の第1、第2の触媒ガスを供給するガス供給ポート332cと、が接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332cには、上述の実施形態の触媒ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内へガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0185】
また例えば、図14に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403内のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート432bと、上述の第1、第2の触媒ガスを供給するガス供給ポート432cと、が接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432cには、上述の実施形態の触媒ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0186】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜処理を行うことができる。
【0187】
また、上述の実施形態や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば、上述の実施形態や変形例と同様な処理条件とすることができる。
【0188】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0189】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する工程と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する工程を有し、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する工程および前記第2の層を形成する工程のうち少なくともいずれかの工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記各ガスを前記処理室内へ供給して封じ込める半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0190】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込める。これにより、前記第1の層(前記膜)における炭素の濃度を、前記封じ込めを行わない場合よりも高くすることができる。
【0191】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記第1の層(前記膜)における炭素の濃度を微調整する。
【0192】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記少なくとも特定のサイクルでは、前記第2の層を形成する工程において、前記排気系を閉塞した状態で前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ供給して封じ込める。これにより、前記第2の層(前記膜)における前記第2の元素の濃度を、前記封じ込めを行わない場合よりも高くすることができる。また、前記第2の層(前記膜)における炭素の濃度を、前記封じ込めを行わない場合よりも低くすることができる。
【0193】
(付記5)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を調整することにより、前記第2の層(前記膜)における前記第2の元素の濃度および炭素の濃度のうち少なくともいずれかを微調整する。
【0194】
(付記6)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間よりも長くする。これにより、炭素リッチな前記膜を形成することができる。
【0195】
(付記7)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間よりも短くする。すなわち、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間を、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記処理室内へ封じ込める時間よりも長くする。これにより、前記第2の元素リッチな前記膜を形成することができる。
【0196】
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記特定のサイクルは、前記サイクルを前記所定回数行う際の初期、中期、および後期のうち、少なくともいずれかである。
【0197】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記特定のサイクル以外のサイクルでは、前記封じ込めを不実施とする。すなわち、前記特定のサイクル以外のサイクルでは、前記排気系を開放した状態で前記各ガスを前記処理室内へ供給する。
【0198】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記膜における炭素の濃度および前記第2の元素の濃度のうち少なくともいずれかは、前記膜の厚さ方向において異なる。
【0199】
(付記11)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記膜における炭素の濃度および前記第2の元素の濃度のうち少なくともいずれかは、前記膜の底面側から表面側にかけて段階的に、もしくは、連続的に変化する。
【0200】
(付記12)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記膜を形成する工程では、
前記第1の層を形成する工程において前記封じ込めを実施し、前記第2の層を形成する工程において前記封じ込めを不実施とする第1のサイクルと、
前記第1の層を形成する工程において前記封じ込めを不実施とし、前記第2の層を形成する工程において前記封じ込めを実施する第2のサイクルと、
を交互に行う(繰り返す)。
【0201】
これにより、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む炭素リッチな第1の膜と、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む前記第2の元素リッチな第2の膜と、が(ナノレベルで交互に)積層されてなる積層膜(ナノラミネート膜)を形成することができる。
【0202】
(付記13)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記膜を形成する工程では、前記第1の層を形成する工程および前記第2の層を形成する工程の両方において前記封じ込めを実施し、
前記第1の層を形成する工程における封じ込め時間を、前記第2の層を形成する工程における封じ込め時間よりも長くする第1のサイクルと、
前記第1の層を形成する工程における封じ込め時間を、前記第2の層を形成する工程における封じ込め時間よりも短くする第2のサイクルと、
を交互に行う(繰り返す)。
【0203】
これにより、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む炭素リッチな第1の膜と、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む前記第2の元素リッチな第2の膜と、が(ナノレベルで交互に)積層されてなる積層膜(ナノラミネート膜)を形成することができる。
【0204】
(付記14)
付記1乃至13のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記原料ガスはさらにハロゲン元素を含み、前記反応ガスはさらに水素(前記第2の元素と水素との化学結合)を含む。
【0205】
また好ましくは、前記第1の元素は、半導体元素または金属元素を含み、前記第2の元素は酸素を含む。
【0206】
また好ましくは、前記第1の触媒ガスは、前記第2の触媒ガスと、同一の分子構造(化学構造)を有する。すなわち、前記第1の触媒ガスは、前記第2の触媒ガスと、マテリアルが同一である。
【0207】
(付記15)
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の元素を含む反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の触媒ガス、第2の触媒ガスを供給する触媒ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内の基板に対して、前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する処理と、前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、前記処理室内の前記基板に対して、前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する処理と、前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する処理および前記第2の層を形成する処理のうち少なくともいずれかの処理において、前記排気系を閉塞した状態で前記各ガスを前記処理室内へ供給して封じ込めるように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、前記触媒ガス供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0208】
(付記16)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内の基板に対して、第1の元素と炭素との化学結合を含む原料ガスと第1の触媒ガスとを供給し、第1の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記原料ガスと前記第1の触媒ガスとを排気系より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、第2の元素を含む反応ガスと第2の触媒ガスとを供給し、前記第1の層を改質して、第2の層を形成する手順と、
前記処理室内の前記反応ガスと前記第2の触媒ガスとを前記排気系より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記第1の元素、前記第2の元素、および炭素を含む膜を形成する手順をコンピュータに実行させ、
前記サイクルを前記所定回数行う際の少なくとも特定のサイクルでは、前記第1の層を形成する手順および前記第2の層を形成する手順のうち少なくともいずれかの手順において、前記排気系を閉塞した状態で前記各ガスを前記処理室内へ供給して封じ込めるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0209】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 排気管
232a〜232f ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14