特許第6471273号(P6471273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6471273
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】食品微粒子含有ペースト及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20190204BHJP
   A23L 5/30 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 11/00 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 25/00 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20190204BHJP
【FI】
   A23L5/00 Z
   A23L5/30
   A23L7/10 Z
   A23L11/00 Z
   A23L19/00 A
   A23L25/00
   A23L27/00 Z
【請求項の数】22
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-554129(P2018-554129)
(86)(22)【出願日】2018年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2018025135
【審査請求日】2018年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2018-3783(P2018-3783)
(32)【優先日】2018年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 達也
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳一郎
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−211844(JP,A)
【文献】 特開平11−290036(JP,A)
【文献】 特開2004−159606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品の油脂存在下での粉砕処理物であり、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【請求項2】
超音波処理を行った場合に、当該処理後の単位体積当り比表面積が0.08m2/mL以上であり、且つ、当該処理の前後で単位体積当り比表面積が1.1倍以上に上昇する、請求項1に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項3】
超音波処理を行った場合における単位体積当り比表面積(m2/mL)をα、清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角(°)をβとした場合に、式α×2.6+β×0.03≧2.2を充足する、請求項1又は2に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項4】
超音波処理を行った場合に、当該処理の前後で最大粒子径が10%以上95%以下の範囲で低下する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項5】
超音波処理前のモード径が20μm以上400μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項6】
食品として可食部を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項7】
超音波処理を行った場合における50%積算径(メジアン径)が0.3μm以上150μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項8】
ボストウィック粘度計による測定温度20℃、測定時間10秒の粘度が0.1cm以上22.0cm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項9】
水分含量と全油脂分含量の割合が1:4〜4:1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項10】
同一種類の食品に由来する可食部及び非可食部の双方を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項11】
粉砕処理される食品が乾燥食品である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項12】
粉砕処理される食品が水分活性値0.95以下の食品である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項13】
粉砕処理が、媒体撹拌ミル及び/又はホモジナイザー処理である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項14】
粉砕処理が湿式粉砕処理である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペーストを含有する飲食品。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペーストを含有する液状調味料。
【請求項17】
食品微粒子を含有するペーストの保管時の離油抑制方法であって、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
【請求項18】
食品微粒子を含有するペーストの製造方法であって、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
【請求項19】
粉砕処理される食品が乾燥食品である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
粉砕処理される食品が水分活性値0.95以下の食品である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
粉砕処理が、媒体撹拌ミル及び/又はホモジナイザー処理である、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
粉砕処理が湿式粉砕処理である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品微粒子含有ペースト及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜等の様々な有効成分を含有する食品を微粒子として含む組成物は多様な用途に用いられることが望まれている。例えば、緑黄色野菜の粉砕に際しオイルを存在させて、粉砕された緑黄色野菜を含有する調味料(特許文献1)、非ナッツ植物材料を粉砕し、平均粒径が約100μm未満の粉を生成した後、前記平均粒径が約100μm未満の粉を昇温へ曝すスプレッド食品(特許文献2)などが報告されている。また、食品の微細化技術として、種皮、種実及び食用油を含み、固形分の50%積算径(メジアン径)が4〜15μmであることを特徴とする種皮付き種実微粉砕ペースト(特許文献3)、水分率5重量%以下、最大粒子径5000μm以下の天然物を、有機媒体中、磨砕機能を有する超微粉砕機による1段粉砕で最大粒子径30μm以下に超微粉砕する超微粉砕された天然物の製法(特許文献4)、乾燥状態の天然物全物質を原料として、磨砕機能を有する超微粉砕機を用いて一段の湿式粉砕で、最大粒径が100μm以下の微粉砕物を得ることを特徴とする天然物の超微粉砕物の製造方法(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141291号公報
【特許文献2】特表2009−543562号公報
【特許文献3】特開2004−159606号公報
【特許文献4】特開2003−144949号公報
【特許文献5】特開2007−268515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手段では、微細化が不十分で、得られる組成物が保型性を有するものではなかった。特許文献2、3についても得られる組成物は適当な水分含量を有する組成物ではなく、本発明のペーストの特性を有するものではなかった。また、特許文献4、5で得られる組成物は、超音波処理前における最大粒子径が本発明に規定される程度に大きいものではなく、本発明のペーストの特性を有するものではなかった。かように、これらの手段によっても保型性が良く、付着性にも優れた特性をもった組成物は実現できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、多様な種実類、穀物類、豆類、野菜類、果実類、藻類等の微粒子と、水分と、油脂とを、一定量比で含有させた組成物において、組成物の水分含量や全油脂分割合や組成物のモード径などの特性を調整すれば、多様な種実類、穀物類、豆類、野菜類、果実類、藻類等が安定的に保持され、かつ保型性と付着性を備えた、多様な用途に用いることができる、産業的にも好ましい特性をもったペーストになることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の発明を提供するものである。
【0007】
〔1〕 種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
〔2〕 超音波処理を行った場合に、当該処理後の単位体積当り比表面積が0.08m2/mL以上であり、且つ、当該処理の前後で単位体積当り比表面積が1.1倍以上に上昇する、〔1〕に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔3〕 超音波処理を行った場合における単位体積当り比表面積(m2/ml)をα、清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角(°)をβとした場合に、式α×2.6+β×0.03≧2.2を充足する、〔1〕又は〔2〕に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔4〕 超音波処理を行った場合に、当該処理の前後で最大粒子径が10%以上95%以下の範囲で低下する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔5〕 超音波処理前のモード径が20μm以上400μm以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔6〕 食品として可食部を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔7〕 超音波処理を行った場合における50%積算径(メジアン径)が0.3μm以上150μm以下である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔8〕 ボストウィック粘度計による測定温度20℃、測定時間10秒の粘度が0.1cm以上22.0cm以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔9〕 水分含量と全油脂分含量の割合が1:4〜4:1である、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔10〕 同一種類の食品に由来する可食部及び非可食部の双方を含有する、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔11〕 種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を、油脂の存在下で粉砕処理して得られる、〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔12〕 粉砕処理される食品が乾燥食品である、〔11〕に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔13〕 粉砕処理される食品が水分活性値0.95以下の食品である、〔12〕に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔14〕 粉砕処理が、媒体撹拌ミル及び/又はホモジナイザー処理である、〔11〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔15〕 粉砕処理が湿式粉砕処理である、〔11〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペースト。
〔16〕 〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペーストを含有する飲食品。
〔17〕 〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の食品微粒子含有ペーストを含有する液状調味料。
〔18〕 食品微粒子を含有するペーストの保管時の離油抑制方法であって、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
〔19〕 食品微粒子を含有するペーストの製造方法であって、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
〔20〕 粉砕処理される食品が乾燥食品である、〔18〕又は〔19〕に記載の方法。
〔21〕 粉砕処理される食品が水分活性値0.95以下の食品である、〔20〕に記載の方法。
〔22〕 粉砕処理が、媒体撹拌ミル及び/又はホモジナイザー処理である、〔18〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の方法。
〔23〕 粉砕処理が湿式粉砕処理である、〔18〕〜〔22〕のいずれか一項に記載の方法。
〔24〕 種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法によって得られる、食品微粒子含有ペースト。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多様な食品を含有する組成物において、保型性を有し、かつ付着性に優れた様々な利用特性をもったペーストが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様の例を記載するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない限りにおいて、任意の改変を加えて実施することが可能である。
【0010】
本発明の食品微粒子含有ペーストは、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペーストである。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0011】
昨今、素材の物性が変化し応用範囲が格段に広がることから、微細化技術は盛んに研究が行なわれている。食品分野においても微細化技術の研究が盛んに行なわれているが、微細化に伴い付着性が高まり、食器や生産設備の洗浄性が悪化するという問題が生じていた。また、洗浄性を改善するためにぬれ性を抑えると、それに伴い付着性(食品などへの付着しやすさ)も失われ、食品などへの戴置性などが悪化する傾向があった。すなわち、高い付着性と洗浄性を兼ね備えた組成物は、従来存在しなかった。さらに、組成物中の全油脂分含量、水分含量、食品微粒子含量のバランスが不適当であると、組成物から保型性が失われ、チクソトロピックペーストとしての価値が失われるという問題があった。
すなわち、本発明によれば、食品微粒子含有組成物の特徴を持ちつつ、適度なぬれ性、付着性、保型性を有するチクソトロピックペーストを提供することができる。
【0012】
本発明に用いられる食品微粒子の素原料である食品は、一般的に飲食に用いることができる食品であればどのようなものでも良く、種実類、穀物類、豆類、野菜類(芋類を含む)、果実類及び藻類から選ばれる1種以上であり、それらの加工品(加熱調理や灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工などの前処理を施したものを含む)を含む。
【0013】
種実類としては、飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特にアーモンド、カシューナッツ、ペカン(ピーカン)、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、ヒマワリの種、カボチャの種、スイカの種、シイ、クルミ、クリ、銀杏、ごま、ブラジルナッツなどが挙げられる。さらには、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンドを好適に用いることができる。
【0014】
穀物類としては、飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特にとうもろこし(特にスイートコーンが好ましい)、コメ、コムギ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、キノア、ひえ、アワ、きび、ジャイアントコーン、サトウキビ、アマランサスなどが挙げられる。さらには、とうもろこし(特にスイートコーン)、コメを好適に用いることができる。
【0015】
豆類としては、飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特にインゲンマメ(赤インゲン、白インゲンなど)、キドニー・ビーン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、エンドウ豆(特にグリーンピース)、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、大豆(特に枝豆)、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメなどが挙げられる。さらには、エンドウ豆、グリーンピース、大豆、枝豆を好適に用いることができる。
【0016】
野菜類としては、食品として飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特にダイコン、ニンジン、ゴボウ、ルタバガ、ビートルート(ビート、ビーツ)、パースニップ、カブ、ブラック・サルシファイ、サツマイモ、キャッサバ、ヤーコン、タロイモ、サトイモ、コンニャクイモ、タシロイモ(ポリネシアン・アロールート)、レンコン、ジャガイモ、ムラサキイモ、キクイモ、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、カタクリ、ケール、ヤムイモ、ヤマノイモ、ナガイモ、タマネギ、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、フキ、フダンソウ(不断草、スイスチャード)、ミズナ、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、ショウガ、シソ、ワサビ、マスタード、パプリカ、ハーブ類(クレソン、コリアンダー、クウシンサイ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉、ステビア)、ワラビ、ゼンマイ、クズ、チャノキ(茶)、タケノコ、シイタケ、マツタケ、キクラゲ、マイタケ、サルノコシカケ、ヒラタケ、エリンギ、エノキタケ、シメジ、ナラタケ、マッシュルーム、ナメコ、アミタケ、ハツタケ、チチタケ、などが挙げられる。さらには、ニンジン、カボチャ、トマト、パプリカ、キャベツ、ビートルート(ビート、ビーツ)、タマネギ、ブロッコリー、アスパラガス、ムラサキイモ、サツマイモ、タイガーナッツ、マスタード、ホウレンソウ、ケールが特に好適である。
【0017】
果実類としては、飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特にカリン、チュウゴクナシ(白梨、シナナシ)、ナシ、マルメロ、セイヨウカリン、ジューンベリー、シポーバ、リンゴ、アメリカンチェリー(ブラックチェリー、ダークチェリー)、アンズ(杏、杏子、アプリコット)、ウメ(梅)、サクランボ(桜桃、スイートチェリー)、スミミザクラ、スピノサスモモ、スモモ(李、酸桃)、モモ、アケビ(木通)、イチジク(無花果)、カキ、カシス(クロスグリ)、キイチゴ(木苺)、キウイフルーツ(キウイ)、グミ(頽子、胡頽子、茱萸)、クワの実(マルベリー、どどめ)、クランベリー(オオミツルコケモモ)、コケモモ(苔桃、岩桃、はまなし、おかまりんご)、ザクロ(柘榴、石榴)、サルナシ(猿梨、シラクチズル、コクワ)、シーバックソーン(サジー、ヒッポファエ、シーベリー)、スグリ(酢塊、グーズベリー)、ナツメ(棗)、ニワウメ(庭梅、こうめ、いくり)、ハスカップ(クロミノウグイスカグラ)、ビルベリー、フサスグリ(房酸塊、レッドカラント)、ブドウ(葡萄)、ブラックベリー、ブルーベリー、ポーポー(ポポー、ポウポウ、ポポウ)、マツブサ、ラズベリー、ユスラウメ、ミカン、キンカン、カラタチ、オリーブ、ビワ(枇杷)、ヤマモモ(山桃、楊梅)、羅漢果、トロピカルフルーツ類(マンゴー、マンゴスチン、パパイヤ、チェリモヤ、アテモヤ、バナナ、ドリアン、スターフルーツ、グァバ、パイナップル、アセロラ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、ライチ、エッグフルーツなどの熱帯果実)、イチゴ、スイカ、メロン、アボカド、ミラクルフルーツ、オレンジ、レモン、プルーン、ユズ、スダチ、グレープフルーツ、ダイダイ、シークワーサーなどが挙げられる。さらには、アボカド、ユズ、ブドウ、モモ、バナナ、オレンジ、ミカン、イチジク、リンゴが特に好適であり、アボカド、ユズ、モモ、リンゴが最も好適である。
【0018】
藻類としては、コンブ類、ワカメ類、海苔類、アオノリ類、テングサ類などの大型藻類、緑藻類、紅藻類、藍藻類、渦鞭毛藻類、ユーグレナ類などの微細藻類などの飲食に供されるものであればどのようなものでも用いることができるが、特に、あおさ、あおのり(青海苔)、アナアオサ、うみぶどう(クビレヅタ)、カタシオクサ、クビレヅタ、クロミル、タマミル、とりのあし(ユイキリ)、ヒトエグサ、ヒラアオノリ、フサイワヅタ、ボウアオノリ、アカモク、アミジグサ、アラメ、アントクメ、イシゲ、イチメガサ、イロロ、イワヒゲ、ウミトラノオ、ウミウチワ、オオバモク、オキナワモヅク、カイガラアマノリ、カゴメノリ、かじめ(アラメ)、カヤモノリ、ぎばさ(アカモク、銀葉草、神馬草、じばさ)、サナダグサ、シワノカワ、シワヤハズ、セイヨウハバノリ、ツルアラメ、なのり(カヤモノリ)、ネバリモ、ノコギリモク、ハバノリ、ヒジキ、ヒロメ、フクロノリ、フトモヅク、ホンダワラ、昆布、マツモ、むぎわらのり(カヤモノリ)、ムチモ、モヅク(モズク)、ユナ、ワカメ、アサクサノリ、イボツノマタ、ウシケノリ、ウスカワカニノテ、エゾツノマタ(クロハギンナンソウ)、オオブサ、オゴノリ、オキツノリ、オバクサ、カタノリ、カバノリ、カモガシラノリ、キジノオ、クロハギンナンソウ(エゾツノマタ)、サクラノリ、シラモ、タンバノリ、ツノマタ、ツルシラモ、ツルツル、トサカノリ、トサカマツ、のげのり(フクロフノリ)、海苔(のり、スサビノリ)、ハナフノリ、ハリガネ、ヒラガラガラ、ヒラクサ、ヒラムカデ、ピリヒバ、フクロフノリ、フシツナギ、マクサ、マルバアマノリ、ミツデソゾ、ミドリムシ(ユーグレナ)、クロレラ、ミリン、ムカデノリ、ユイキリ、ユカリ、天草(テングサ)などが挙げられる。さらには、昆布、海苔が特に好適であり、昆布が最も好適である。
【0019】
前記食品のうち、非常に強い細胞壁を有するクロレラ類などの微細藻類については、微細化が難しいため微細藻類以外の食品を用いることが便利である。
前記食品のうち、種実類、穀物類、豆類、野菜類、果実類及び藻類を用いるのが好ましく、さらに穀物類、種実類、豆類、野菜類、果実類については、それらを食品として用いた微細化食品含有組成物は設備等に残留しやすい特性をもつため、洗浄性を向上する本発明の技術を好適に用いることができる。
また、これらの食品は、1種類でもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明は、「食品」(例えば「枝豆」)において通常飲食に供される部分、すなわち可食部(「枝豆」であれば、「さや」から取り出した豆の部分)に適用できるが、通常飲食に適さない部分、すなわち非可食部(「枝豆」であれば、「さや」に相当)にも適用が可能である。具体的には、非可食部として、前述の食品やその加工品の皮、種実、芯、絞り滓など、特に不溶性食物繊維が多い部分から選ばれる1種以上を用いることができる。また、本発明では食品として可食部を含むことが好ましく、可食部と非可食部を両方含むことがさらに好ましく、同一種類の食品に由来する可食部と非可食部を両方含むことが、その食品の栄養を無駄なく摂取できるため最も好ましい。例えば、とうもろこしの可食部(「種実」の部分)と非可食部(「芯」の部分)を併用する場合や、枝豆の可食部(「豆」の部分)と非可食部(「さや」の部分)を併用する場合などが、同一種類の食品を用いる場合として例示される。また、非可食部の中でも、特に不溶性食物繊維が5%以上含有されるものについては、摂食性が顕著に悪いため、本発明の技術がより有用であり、8%以上含有されるものについてはより有用であり、10%以上含有されるものについてはより有用であり、12%以上含有されるものに最も有用である。さらに、非可食部の中でも、不溶性食物繊維/可溶性食物繊維の割合が10倍以上のものについては、摂食性が顕著に悪いため、本発明の技術がより有用であり、13倍以上含有されるものについては、さらに有用であり、15倍以上含有されるもの(例えば、とうもろこしの一種であるスイートコーンの芯:不溶性食物繊維を15.1%含有し、かつ不溶性食物繊維/可溶性食物繊維の割合が21.6倍)については、最も有用である。
【0021】
本発明における「非可食部」とは、通常の食習慣において廃棄される部分を表し、「可食部」とは食品全体(より具体的には購入形態)から廃棄部位を除いた部分を表す。また、食品、食品の加工品における「非可食部」の部位、分量は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば当然理解することができるが、例えば日本食品標準成分表2015年版(七訂)における「廃棄率」「廃棄部位」の判断基準を参照、準用することで、より明確に理解することができる。例えば、「野菜類/えだまめ/生」であれば、「廃棄部位: さや(廃棄率:45%)」であると、「 (キャベツ類)/キャベツ/結球葉、生」であれば「廃棄部位: しん(廃棄率15%)」であると非可食部の部位、分量を特定し、理解することができる(ひいては可食部についても理解できる)。
【0022】
前記食品における、通常飲食に適さない部分としては、前述の食品の外皮、種実、芯、絞り滓など、特に不溶性食物繊維が多い部分については、特に摂食性が悪く、従来喫食に用いられてこなかったものであるので、本発明の技術をより好適に用いることができる。
特に、米、りんご、枝豆、とうもろこし(特にスイートコーン)、タマネギ、キャベツ、ニンジン、パプリカ、ビート、ブロッコリー、かぼちゃ、エンドウ豆(グリーンピース)、トマト、柑橘類(特にウンシュウミカン、ユズ)、さとうきび、ぶどうなどの通常飲食に適さない部分(皮、種実、芯、絞り滓など)については、栄養が豊富に残存している部分が廃棄されている状況であるため、本発明を最も好適に用いることができる。さらに例えば、米(籾)の籾殻、とうもろこしの包葉、めしべ及び穂軸 、タマネギの皮(保護葉)、底盤部及び頭部、キャベツの芯、ホウレンソウの株元、ケールの葉柄基部、ぶどうの果皮、種子、枝豆のさや、エンドウ豆のさや、かぼちゃの皮、ブロッコリーの茎菜、ビートの皮、ムラサキイモの皮、パプリカの種子及びへた、さとうきびの絞り滓、ニンジンの皮について、本発明を好適に用いることができる。
【0023】
前記食品として乾燥食品を用いるのが、組成物中の油脂安定性(離油性)、チクソトロピックペーストの形成性等の観点から好ましい。当該乾燥食品の品質は、食品の水分活性値が0.95以下であるのが、保型性が発現しやすく、種々の飲食品への応用範囲が広がる点で好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がより好ましく、0.65以下がさらに好ましい。なお、食材の水分活性値は、一般的な水分活性測定装置を用いて、定法に従って測定することができる。
【0024】
また、食品として乾燥食品を用いる場合は、あらかじめ乾燥処理を施した食品を用いる方法がさらに好ましい。前記食品の乾燥方法は一般的に食品の乾燥に用いられるどのような方法でも良く、例えば天日乾燥、陰干し、フリーズドライ、エアドライ(熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温(常温)乾燥など)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥などによる乾燥方法が挙げられるが、食品が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭など)が発生しにくいため、エアドライまたはフリーズドライによる方法を用いるとより好ましく、さらに低温(常温)乾燥を行うことが最も好ましい。
また、あらかじめ乾燥処理を施した食品を用いて本発明に規定の割合の油脂、水分の存在下で微細化処理を行なうことが、さらに好ましい。
【0025】
本発明のペーストは、食品の粉砕処理微粒子を含有するペースト、すなわち、食品を粉砕処理した状態の微粒子を含有するペーストである。前述のように、本発明ペーストは、微粒子を含有していることにより、チクソトロピックペーストとしての特性が得られる。
また、本発明において、特に指定が無い場合は、「超音波処理」とは周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間処理することを表す。
【0026】
本発明のペースト中の食品微粒子含有量は、洗浄性、安定性(離油性)、摂食しやすさ等の観点から15質量%以上85質量%以下であればよいが、15質量%未満であると洗浄性が向上しないため、食品微粒子の含有量は15質量%以上が好ましく、20質量%以上が最も好ましい。また、食品微粒子の含有量が85質量%を超えると、摂食しにくい品質となり好ましくないため、食品微粒子の含有量は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下が好ましく、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下が最も好ましい。
【0027】
本発明のペースト中の前記食品微粒子の含有量は、本発明においてレーザ回折式粒度分布測定や粒子形状画像解析装置の測定対象とならない2000μm(2mm)よりも大きい食品等を除いたペースト中の食品微粒子含量を測定する。
ペーストが2mmよりも大きい食品等を含む場合には、例えば、ペーストを9メッシュ(目開き2mm)パスさせてペースト中の2mmよりも大きい食品等を取り除いた後、遠心分離による分離上清を充分に取り除いた沈殿画分の重量を食品微粒子含量とすることができる。一部の油脂や水分は沈殿画分に取り込まれるため、食品微粒子の合計量は、沈殿画分に取り込まれたそれら成分と食品微粒子の合計重量を表す。また、ペーストがそのままでは9メッシュをパスしない場合、例えばペーストを水乃至油などの溶媒で希釈した後、食品微粒子のサイズに影響しない程度の強さで均一混合した希釈液を9メッシュパスさせた画分中のうち、遠心分離による分離上清を充分に取り除いた沈殿画分の重量を測定してもよい。また、9メッシュパスさせる際のメッシュ上残分については、充分に静置した後、組成物の粒子サイズが変わらないようにヘラなどで9メッシュの目開きより小さい食品微粒子を充分に通過させた後、通過画分を得ても良い。
また、遠心分離の条件としては、分離上清が取り除ける程度に食品微粒子が沈殿する条件であれば良いが、例えば、通過画分に対して15000rpmで1分間の遠心分離を行い、分離上清を充分に取り除いた沈殿画分重量を量ることでペースト中の食品微粒子の含有量を測定することができる。
【0028】
本発明のペーストには油脂が含まれる。油脂の種類としては、食用油脂、各種脂肪酸やそれらを原料とする食品などが挙げられるが、食用油脂を用いることが好ましい。また、本発明のペーストは、全油脂分含量が特定の範囲となることでぬれ性が適度に抑えられるため、ペースト全体の全油脂分含量が20質量%以上75質量%以下である。ペースト全体の全油脂分含量が30質量%以上であるとさらに好ましく、40質量%以上であるとさらに好ましく、50質量%以上が最も好ましい。ペースト全体の全油脂分含量が20質量%未満であると、ぬれ性が高くなりすぎるため、好ましくない。また、全油脂分含量は70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が最も好ましい。
【0029】
食用油脂の例としては、ごま油、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、パーム核油、パーム分別油(PMF)、綿実油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、香味油、ココナッツオイル、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、サラダ油、キャノーラ油、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油、乳脂、ギー、カカオバターなど、が挙げられるが、食品の風味が味わいやすいため、カカオバター以外の油脂を用いることが好ましい。また、ごま油、オリーブ油、菜種油、大豆油、乳脂、ひまわり油、米油、パームオレインなどの液体状食用油脂については、ペーストのなめらかさを高める効果があり、より効果的に用いることができるためより好ましい。また、食用油脂はペーストの食品中に含まれる油脂でも良いが、抽出精製処理がなされた油脂を食品とは別に添加する方が食品とのなじみが良いため好ましく、油脂全体の10質量%以上抽出精製処理がなされた油脂を添加することが好ましく、30%以上抽出精製処理がなされた油脂を添加することがより好ましい。
また、食用油脂はその組成中の飽和脂肪酸割合よりも不飽和脂肪酸割合(一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の合計割合)が多い食用油脂であることで、微細化処理が効率的に行なえるため好ましく、油脂全体として飽和脂肪酸割合の2倍量よりも不飽和脂肪酸割合が多い方がさらに好ましい。
また、食用油脂を原料とする食品の例としては、バター、マーガリン、ショートニング、生クリーム、豆乳クリーム(例えば不二製油株式会社の「濃久里夢(こくりーむ)」(登録商標))など、が挙げられるが、特にその物性が液体状の食品が、便利に用いることができる。これらのうち2種以上の食用油脂やそれらを原料とする食品を任意の比率で併用してもよい。
【0030】
本発明のペーストは、全油脂分含量と共に組成物全体の水分の含有量が調整されていることでぬれ性が適度に抑えられるため、ペースト全体の水分含有量が20質量%超、80質量%以下である。ペースト全体の水分含量が20質量%以下であると、ぬれ性が高くなりすぎるため、好ましくない。水分は、水として添加してもよく、原料由来の水分として組成物に含まれても良い。また、ペースト全体の水分含量が30質量%以上であるとより好ましく、40質量%以上であるとさらに好ましく、45質量%以上が最も好ましい。また、ペースト全体の水分含量が70質量%以下であるとより好ましく、60%以下が最も好ましい。また、水分含量と全油脂分含量の割合が1:4〜4:1であると、さらにぬれ性が抑えられるため好ましく、1:3〜3:1であるとさらに好ましく、1:2〜2:1であると最も好ましい。
【0031】
本発明のペーストにおいて、超音波処理前における最大粒子径が100μm以下となるまで微細化を行なうと、食品の組織が破壊されて好ましく無い風味が付与されやすいため、超音波処理前における最大粒子径が100μmよりも大きくなるように微細化を行なうのが好ましい。最大粒子径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
本発明のペーストは混濁系であり目視による最大粒子径の判別は困難であるが、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きい粒子を含むペーストは、顕微鏡下で肉眼で観察される最大粒子径が100μmより大きい粒子を含む蓋然性が高いと考えられる。
【0032】
本発明において、最大粒子径が、超音波処理前後で10%以上低下する性質を有することで安定性(離油性)が長期間(例えば常温で1ヶ月以上)保持される品質となり好ましく、20%以上低下することがさらに好ましく、30%以上低下することがさらに好ましく、40%以上低下することがさらに好ましく、45%以上低下することが最も好ましい。また、粉っぽい食感とならないようにする観点から、超音波処理による最大粒子径低下率は95%以下であることが好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。「最大粒子径が、超音波処理前後で低下した割合(最大粒子径低下率)」とは、「周波数40kHz出力40W、3分間の超音波処理による超音波処理後最大粒子径/超音波処理前最大粒子径」を%表示した割合を100%から差し引いた値を表す。例えば、あるペーストにおける超音波処理前最大粒子径が200μmであり、超音波処理後最大粒子径が150μmの場合、そのペーストの最大粒子径が、超音波処理前後で低下した割合(最大粒子径低下率)は25%となる。
【0033】
また、本発明における最大粒子径は後述するレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、表1に記載した測定チャンネルごとの粒子径を規格として用いてモード径などと同条件で測定することができる。すなわち、各チャンネルに規定された粒子径以下で、かつ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度をチャンネルごとに測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる。具体的には後述する表1中の132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定して得られた結果について、粒子頻度%が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径として採用した。すなわち、本発明に食品の微粒子を含有する組成物をレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定する際の好ましい測定方法は、「レーザ回折式粒度分布測定装置によって、測定溶媒として95%エタノールを用いて、測定上限2000.00μm、測定下限0.021μmの対象について、サンプル投入後速やかに粒子径を測定する。超音波処理を行うサンプルについては、周波数40kHz出力40W、3分間の超音波処理を行う」ことである。
【0034】
本発明のペーストは、超音波処理前の最大粒子径だけでなく、超音波処理前後の比表面積、モード径、d50等が特定の範囲であることで良好な特性を発揮する。
【0035】
また、本発明における単位体積当り比表面積とは、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積を表し、サンプルをレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することで得られる。粒子を球状と仮定した場合の単位体積当り比表面積は、良好な風味を得る観点から、超音波処理を行った場合における単位体積当り比表面積が1.00m2/mL以下であるのが好ましく、0.85m2/mL以下であるのがより好ましく、0.75m2/mL以下であるのがより好ましく、0.60m2/mL以下であるのがより好ましく、0.45m2/mL以下であるのが最も好ましい。また、良好な摂食性を確保する観点から、超音波処理を行った場合における単位体積当り比表面積が0.08m2/mL以上であるのが好ましく、0.09m2/mL以上であるのがより好ましく、0.14m2/mL以上であるのがより好ましい。さらに、超音波処理により単位体積当り比表面積が1.1倍以上に上昇するのが好ましく、2.0倍以上に上昇するのがより好ましい。
【0036】
モード径は、超音波処理前が20μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましく、40μm以上であるのがさらに好ましく、50μm以上であるのが最も好ましい。また、400μm以下であるのが好ましい。
また超音波処理を行った場合におけるモード径は0.3μm以上であるのが好ましく、6μm以上であるのがより好ましく、15μm以上であるのがさらに好ましい。また、超音波処理を行った場合におけるモード径は200μm以下であるのが好ましく、150μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのがさらに好ましく、90μm以下であるのが特に好ましい。
特に超音波処理を行った場合におけるモード径が一定範囲に調整されていることで、本発明の組成物特有の安定性(離油性)がさらに高まるため好ましい。また、超音波処理によりモード径が1%以上95%以下に変化するのが好ましく、5%以上93%以下に変化するのがより好ましい。超音波処理前後のモード径変化率が一定範囲に調整されていることで、安定性(離油性)が長期間(例えば常温で1ヶ月以上)高まるため好ましい。。例えば、超音波処理前の組成物モード径が100μmであり、超音波処理を行った場合における組成物モード径が20μmである場合、超音波処理前後のモード径変化率は20%となる。
【0037】
d50(メジアン径)は、超音波処理前が20μm以上であるのが好ましく、25μm以上であるのがより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、超音波処理前のd50は400μm以下であるのが好ましく、500μm以下であるのがより好ましい。超音波処理を行った場合におけるd50は、0.3μm以上が好ましく、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、超音波処理を行った場合におけるd50は、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0038】
本発明における粒子径とは、特に指定が無い限り全て体積基準で測定されたものを表す。
また、本発明における比表面積(粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積)は、サンプルをレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することで得られる。なお、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、レーザー回折式粒度分布測定装置では測定できない粒子の成分や表面構造などを反映した測定値(透過法や気体吸着法などで求められる体積あたり、重量あたり比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子1個当りの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、6×Σ(ai)÷Σ(ai・di)によって求められる。
また、モード径とは組成物をレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定して得られたチャンネルごとの粒子径分布について、粒子頻度%がもっとも大きいチャンネルの粒子径を表す。全く同じ粒子頻度%のチャンネルが複数存在する場合には、その中で最も粒子径の小さいチャンネルの粒子径を採用する。粒子径分布が正規分布であればその値はメジアン径と一致するが、粒子径分布に偏りがある場合、特に粒子径分布のピークが複数ある場合には大きく数値が異なる。レーザ回折式粒度分布測定装置によるサンプルの粒子径分布測定は、例えば以下の方法で実施することができる。
レーザ回折式粒度分布測定装置は、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用することができる。測定時の溶媒は、ペースト中の食品微粒子の構造に影響を与えにくいものを用いることができる。例えば、油が多い組成物には95%エタノール(例えば、日本アルコール販売 特定アルコール トレーサブル95 95度1級)を用いることが好ましい。また、測定アプリケーションソフトウェアとして、DMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。測定に際しては、測定アプリケーションソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトのSetzoroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで適正濃度範囲に入るまでサンプルを直接投入できる。超音波処理を行なわないサンプルについては、サンプル投入後のサンプローディング2回以内に適正濃度範囲に調整し、調整後ただちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とし、超音波処理を行なうサンプルについては、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して周波数40kHz出力40W、3分間の超音波処理を行い、2回の脱泡処理を行ったうえで、超音波処理後再度サンプルローディングを行い、濃度が適正範囲であることを確認した上で、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザ回折した結果を測定値とすることができる。
測定条件としては、分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μm、の条件で測定することができる。
本発明におけるチャンネル(CH)ごとの粒子径分布を測定する際は、後述の表1に記載した測定チャンネルごとの粒子径を規格として用いて測定することができる。各チャンネルに規定された粒子径を、「○○チャンネルの粒子径」とも称する。各チャンネルに規定された粒子径以下で、かつ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度をチャンネルごとに測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。
【0039】
本発明のペーストは、チクソトロピックペーストであり、接触角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えられていると好ましい。具体的には、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下であることが好ましい。接触角とは、本発明におけるペーストを水平に静置した清浄なガラス(例えば新品の松浪硝子工業社製スライドグラス「S−1225」)面上に滴下すると、ペーストは自らの持つ「表面張力」で丸くなるが、静止(通常は滴下後10秒程度で静止する)したペーストの自由表面がガラス表面に接する場所で、組成物表面とガラス表面とのなす角度(°)(組成物の内部にある角をとる)を表す。
本発明における接触角は、以下の計算によって求めることができる。すなわち、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下した際に、滴下10秒後の静止したペーストのガラス面上における略円形の接触面において、内接する最長の直線の長さを2r(mm)、滴下したペーストの最高部とガラス面間の距離(高さ)をH(mm)とした時に、接触角θ(°)は以下の式によって表される。
tan(θ/2)=H/r
水や油のような液体は、ガラス面上で盾状の液滴となり、接触角は40°未満となる(蒸留水の実測値は2°)。バターやラードなどの固形物は、ガラス面上で略円形の接触面を形成せず、仮に形成してもその接触角は160°より大きい値となるため、本発明のペーストとは異なる。
本発明におけるペーストの接触角が40°未満であると、付着効果が弱まるため好ましくない品質となるため、接触角は40°以上が好ましく、50°以上がさらに好ましく、60°以上がさらに好ましく、70°以上がさらに好ましく、80°以上がさらに好ましく、90°以上が最も好ましい。また、本発明におけるペーストの接触角は160°以下であることが組成物の製造上便利であるため、好ましい。
【0040】
さらに本発明のペーストは、転落角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えられていると好ましい。具体的には、清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上であると、好ましい。転落角は、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かに組成物約0.1mLを滴下し、滴下10秒後に組成物が静止した後、ガラス面の一方を持ち上げることでゆっくりと傾斜させた際の、液滴が滑り落ち始める(すなわち、組成物とガラス面との接触面の位置、形状が変更し始める)角度を表す。
水や油のような液体は、そのガラス面上の液滴がわずかな傾斜でも滑り落ち始めるため、その転落角は50°未満となる(蒸留水の実測値は5°)。また、一般的に接触角が大きい組成物は、固体表面に対する親和性が低いため固体表面に留まることができずに結果として転落角が小さくなり、食品上などに戴置することが難しい品質となる。本発明の技術によれば、接触角と転落角が共に一定範囲であり、従来実現が困難であった相反する特性(適度なぬれ性、付着性、保型性などの、チクソトロピー性)を有し、その結果新規かつ有利な特性を有するペーストを提供することもできる。
本発明におけるペーストの転落角が50°未満であると、保型性が低下するため好ましくなく、転落角は50°以上が好ましく、60°以上がさらに好ましく、70°以上がさらに好ましく、85°以上が最も好ましい。
【0041】
さらに、本発明のペーストは、前進接触角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えられていると好ましい。具体的には、清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上であると、好ましい。前進接触角は、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下し、滴下10秒後にペーストが静止した後、ガラス面を45°の角度に傾斜させた際の、ペーストの自由表面がガラス表面に接する場所で、ペースト表面とガラス表面とのなす角度(°)(ペーストの内部にある角をとる)を表す。固体的な特性を強く有するペーストは清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°未満となり、保型性の前提となる変形性が充分ではないため好ましくなく、前進接触角は50°以上が好ましく、60°以上がさらに好ましく、70°以上がさらに好ましく、90°以上が最も好ましい。また液体的な特性を強く有するペーストは、前進接触角が165°より大きくなり、保型性が充分ではないため好ましくなく、前進接触角は165°以下が好ましい。
また、上述の通り、本発明のペーストは、接触角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えらているか、転落角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えられているか、前進接触角が一定範囲となる程度にぬれ性が抑えられているか、いずれか1以上の要件が充足されていることで本発明における好ましい効果が発現するが、2以上が充足されていることがより好ましく、3つ全てが充足されていることが最も好ましい。
【0042】
本発明のペーストは、超音波処理を行った場合に、当該処理後の単位体積当り比表面積(m2/mL)をα、清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角(°)をβと置いた時、関係式「α×2.6+β×0.03」が2.2以上を満たす場合、すなわち以下の関係式を満たす場合に流動性が適度に抑制され、飲食品に使用する際のたれ落ちやすさが改善するため、好ましい。
α×2.6+β×0.03≧2.2
また、関係式「α×2.6+β×0.03」が2.4以上を満たす場合、さらに好ましく、3.0以上を満たす場合が最も好ましい。
【0043】
また、微細化処理前の油脂または水中に食品を含有させた食品含有媒体の粘度(20℃)が20Pa・s以下に調整されていることが良く、8Pa・s以下に調整されていることで、微細化処理効率がさらに高まるため、有用である。また、食品微粒子含有組成物の粘度(20℃)が10mPa・s以上となるように調整されていると好ましく、50mPa・s以上に調整されているとより好ましい。
【0044】
本発明のペーストはチクソトロピックペーストであることが好ましい。ここで本発明における「チクソトロピックペースト」とは、一定の保型性を有し、応力を加えると容易に崩れるテクスチャを有する、あたかも弱いゲルのような挙動を示す、固体と液体の両方の特性を有する粘弾性体であるペースト状組成物を表す。例えば、典型的なチクソトロピックペーストは、ボストウィック粘度計による粘度測定値(cm)(測定温度20℃、10秒間)によって規定することができる。例えば、固体的な物性がやや強いチクソトロピックペーストは、ボストウィック粘度計による粘度測定値(測定温度20℃、10秒間)が0.1cm未満となるため、粘度測定値が0.1cm以上が好ましく、1cm以上がより好ましい。また液体的な物性がやや強いチクソトロピックペーストは粘度測定値(測定温度20℃、10秒間)が22cmより大きくなるため、粘度測定値が22cm以下であることで飲食品に使用する際のたれ落ちやすさが改善するため好ましく、20cm以下がより好ましく、17cm以下がより好ましく、15cm以下であるとさらに好ましい。
本発明におけるペーストは、適度なぬれ性、付着性、保型性を有する。そのチクソトロピー性が発現される原理は不明であるが、特定サイズの食品微粒子が特定割合の油脂と水分の存在下で分散することでゲルネットワーク構造を形成し、あたかも弱いゲルのような挙動を示すためではないかと考えられる。
本発明の粘度測定値はボストウィック粘度計を用いて測定することができる。具体的にはKO式ボストウィック粘度計(深谷鉄工所社製、トラフ長28.0cmで、ボストウィック粘度、即ちサンプルのトラフ内における流下距離が最大28.0cmのもの)を用いて測定することができる。測定時には水準器を用いて装置を水平に設置し、ゲートを閉じた後リザーバーに20℃に温度調整したサンプルを満量まで充填し、ゲートを開くためにトリガーを押し下げると同時に時間を計測し、10秒経過時点でのトラフ内の材料の流下距離を測定することで、ボストウィック粘度計による粘度測定値を測定することができる。
【0045】
本発明のペーストには、その構成要件を満たす範囲で必要に応じて一般的な食品に用いられる各種食品や食品添加物などを含んでいてもよい。例えば、醤油、味噌、アルコール類、糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(カルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)などを挙げることができる。また、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル等)や着色料や増粘安定剤も添加することができるが、昨今の自然志向の高まりからいわゆる乳化剤及び/または着色料及び/又は増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」「増粘安定剤」「乳化剤」として記載されているもの)を添加しない品質が望ましく、また特に乳化剤を添加しないほうが素材の味が感じやすい品質となるため、好ましい。さらに、食品添加物(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)中の「表示のための食品添加物物質名表」に記載されている物質を食品添加物用途に用いたもの)を含有しない品質が最も望ましい。また、素材そのものの甘みが感じられにくくなるため、素材以外に精製された糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)を添加しない方が好ましく、果汁やその濃縮物由来による甘味(りんご果汁、ぶどう果汁、デーツ果汁など)を用いることが好ましい。
【0046】
本発明のペーストは、基本的に、前記食品、好ましくは前記乾燥食品を必要に応じて一定の水分含量、全油脂分割合の下で粉砕処理又は微細化処理することにより製造できる。
本発明に用いられる粉砕処理又は微細化手段は特に限定されず、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機などと称される機器類のいずれであってもよく、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれであってもよく、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕のいずれであってもよい。例えば、乾式微粉砕機としては乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式など)などの媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミルなど)、ロールミル、ハンマーミル、などを用いることができる。例えば、湿式微粉砕としては、ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式、遊星式ミルなど)などの媒体撹拌ミル、ロールミル、コロイドミル、スターバースト、ホモジナイザー(特に高圧ホモジナイザー)などを用いることができる。湿式微粉砕処理された状態の特定の形状の食品微粒子を含有するペーストについては、媒体攪拌ミル(ボールミル、ビーズミル)、ホモジナイザー(特に高圧ホモジナイザー)をより好適に用いることができる。例えば、ホモジナイザー(特に高圧ホモジナイザー)や攪拌媒体ミルを好ましく用いることができる。媒体攪拌ミルを用いて処理をする場合は、処理前の内容物のボストウィック粘度(測定温度20℃)が10秒間で28.0cm以下であると処理しやすく好ましい。
【0047】
特に、湿式ビーズミルやホモジナイザー(特に高圧ホモジナイザー)を用いた粉砕方法を用いることで、その他の処理法に比べてペーストを静置した際に油脂分離が起こりにくい安定性の高い品質となるため好ましい。その原理は不明であるが、ビーズミル処理やホモジナイザー(特に高圧ホモジナイザー)により食品微粒子の粒子状態が好ましく変化するためであると考えられる。
また、湿式ビーズミル処理時の条件は、食品の大きさや性状、目的とする食品微粒子含有ペーストの性状に合わせて、ビーズの大きさや充填率、出口メッシュサイズ、原料スラリーの送液速度、ミル回転強度、一回のみ通過させる方式(ワンパス)か、何度も循環させる方式(循環式)かなどについて、適宜選択・調整すれば良いが、ワンパス処理が好ましく、処理時間が1分以上25分以下であることがさらに好ましく、2分以上20分以下であることが最も好ましい。また、あらかじめ前処理として、ジェットミル、ピンミル、石臼粉砕ミルなどによって食品をあらかじめ粗粉砕したものを微細化処理に供することが良く、メジアン径1000μm以下100μm以上の大きさに調整された粉末食品を微細化処理に供することで、原理は不明であるが、対象物のぬれ性がさらに抑えられるため、より好ましい。また、ビーズミル処理において、ビーズ材質とビーズミル内筒の材質が同じ材質であることが好ましく、材質が共にジルコニアであるとさらに好ましい。
また、ホモジナイザーとしては、粒子の微細化・均一化能力があり、一定の乳化分散が可能なものであればどのようなものでも用いることができるが、例えばホモミクサーMARK II(プライミクス社製)を用いることができる。さらに、高圧ホモジナイザーとしては、1.00MPa以上の与圧条件下でせん断処理が可能な分散機であればどのようなものでも用いることができるが、例えばPANDA2K型ホモジナイザー(Niro Soavi社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、LAB2000(エスエムテー社製)などを用いることができる。処理条件としては、例えば0.01MPa以上に加圧調整された状態で微細化処理が行なわれていることが好ましく、0.02MPa以上であることがさらに好ましく、50MPa以上に加圧調整された状態での高圧均質化処理を単数回または複数回実施することで微細化処理を行なうことができる。上記の微細化処理を行う際には、食品を粉砕溶媒中で微細化処理することが好ましい。なお、加圧条件が過酷すぎると設備が破損する恐れがあるため、高圧ホモジナイザーを用いて処理をする場合は、微細化処理時の加圧条件の上限は200MPa以下が好ましい。
すなわち、本発明には、以下(イ)(ロ)の発明が含まれる。
(イ)食品微粒子を含有するペーストの製造方法であって、種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
(ロ)種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法によって得られる、食品微粒子含有ペースト。
【0048】
以上説明した本発明のペーストは、そのままの状態で菓子などの食品の上に戴置したりして喫食できる他、飲食品又は液状調味料の原料や素材として好適に使用することができる。即ち、本発明には、本発明のペーストを含有する飲食品及び調味料が包含される。本発明のペーストを原料の一部として用いることで、保型性の高いソースやたれやディップやマヨネーズやドレッシングやバターやジャムなどの調味料を製造することができる。調味料への添加量は概ね0.001〜50質量%程度が望ましい。また、製造に際しては、前記ペーストをどのタイミングで調味料に添加しても良い。詳細には、調味料に対して本発明のペーストを添加しても良く、調味料に微細化処理前の食品等を添加してから所定の条件で微細化処理を実施しても良く、それらの方法を組み合わせても良いが、調味料に対して本発明のペーストを添加する方法が産業的に便利であり、好ましい。
【0049】
また、本発明の組成物の製造法における微細化処理によるぬれ性抑制、保型性向上、付着性向上効果に着目した派生態様として、本発明には以下の発明が含まれる。なお、(i)から(vii)の発明については、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足すれば良いが、2以上を充足することがより好ましく、3つ全て充足することが最も好ましい。
【0050】
(i)
種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0051】
(ii)
乾燥種実類、乾燥穀物類、乾燥豆類、乾燥野菜類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の乾燥食品が、油脂の存在下に微細化処理された状態の食品微粒子含有ペーストであって、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0052】
(iii)
種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類の可食部および非可食部から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0053】
(iv)
食品の微粒子複合体を含有するペーストの付着性を向上させる方法であって、乾燥種実類、乾燥穀物類、乾燥豆類、乾燥野菜類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の乾燥食品を粉砕処理することにより、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する食品微粒子含有ペーストを作製することを含む方法。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0054】
(v)
食品の微粒子複合体を含有するペーストのぬれ性を向上させる方法であって、乾燥種実類、乾燥穀物類、乾燥豆類、乾燥野菜類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の乾燥食品を粉砕処理することにより、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する食品微粒子含有ペーストを作製することを含む方法。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0055】
(vi)
食品の微粒子複合体を含有するペーストの保型性を向上させる方法であって、乾燥種実類、乾燥穀物類、乾燥豆類、乾燥野菜類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の乾燥食品を粉砕処理することにより、下記の(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する食品微粒子含有ペーストを作製することを含む方法。
(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、
(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、
(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、
(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、
(5)最大粒子径が100μmより大きい、
(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、
(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、
(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。
【0056】
(vii)
食品微粒子を含有するペーストの保管時の離油抑制方法であって、乾燥種実類、乾燥穀物類、乾燥豆類、乾燥野菜類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の食品を10質量%以上70質量%以下、油脂を10質量%以上70質量%以下、水分を15質量%以上70質量%以下含有する食品含有混合液を、超音波処理を行った場合におけるモード径が0.3μm以上200μm以下となり、超音波処理前における最大粒子径が100μmより大きくなり、水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、測定温度20℃における転落角が50°以上、測定温度20℃かつ傾斜角45°における前進接触角が50°以上となるまで微細化処理することを含む方法。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中で食品について特に限定が無い場合は、その食品において通常飲食に供される部分を用いた。
【0058】
[食品微粒子含有ペースト試料の調製方法]
食品微粒子含有ペーストは以下のとおりに調製した。
【0059】
穀物類の一種であるスイートコーン、精白米、野菜類の一種であるニンジン、カボチャ、ジャガイモ、マスタード、ビーツの皮やヘタなどを取り除いた可食部、果実類の一種であるリンゴ、ももの皮や芯などを取り除いた可食部、種実類の一種であるカシューナッツの殻などを取り除いた可食部、藻類の一種である昆布の根などを取り除いた可食部について、それぞれ乾燥処理後に表中の「原料微細化方法」に記載された方法で粉砕した乾燥粉砕物を得た。さらに、豆類の一種である大豆は鞘から出した乾燥豆を、枝豆(大豆を未熟な状態で鞘ごと収穫したもので、豆が緑色の外観を呈するもの)は茹でて鞘から出して乾燥したものを、表中の「原料微細化方法」に記載された方法で粉砕した乾燥粉砕物を得た。また、穀物類の一種であるスイートコーンについて、非可食部である「芯」を乾燥させ、「原料微細化方法」に記載された方法で粉砕した乾燥粉砕物を得た。さらに、豆類の一種である枝豆について、非可食部である「鞘」を乾燥させ、「原料微細化方法」に記載された方法で粉砕した乾燥粉砕物を得た。また、野菜類の一種であるタマネギは、可食部をそのまま粉砕した粉砕物(生)を得た。さらに、野菜類の一種であるサツマイモについては、皮などを取り除いた可食部を「原料微細化方法」に記載された方法で粉砕し、米麹をペーストに対して10重量%添加し、50℃で5日間静置した粉砕物(生)を得た。
これらの粉砕物を、表中の「ブレンド組成」に従って、適宜混合した組成物を表中の「微細化処理方法(一回目)」に記載された方法で外見上略均一になるまで微細化処理(一回目)し、ペースト状の組成物を得た。油脂としては、市販のオリーブオイル(飽和脂肪酸14%、不飽和脂肪酸80%)、サラダ油(飽和脂肪酸8%、不飽和脂肪酸85%)、パーム油(飽和脂肪酸50%、不飽和脂肪酸45%)を用いた。また、こんぶだし、食酢などは市販のものを用いた。
また、上記組成物について、追加で微細化処理を行ったサンプルについては、表中の「微細化処理方法(二回目)」に記載された方法に従って、適宜実施した。「ビーズミル」を用いる場合は、湿式ビーズミル微粉砕機を用いて、φ2mmのビーズを用いて微細化処理を施し、ホモジナイザーとしては、ホモミクサーMARK II(プライミクス社製)を用いて乳化処理を施し、高圧ホモジナイザーとしては、LAB2000(エスエムテー社製)を用いて80MPa以上に加圧調整された状態で高圧均質化処理を単数回実施することで微細化処理を施すことで、微細化食品含有ペーストを得た。
【0060】
本発明におけるチャンネルごとの粒子径分布を測定する際は、表1に記載した測定チャンネルごとの粒子径を規格として用いて測定した。各チャンネルに規定された粒子径以下で、かつ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度をチャンネルごとに測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めた。具体的には以下132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定した。測定して得られた結果について、粒子頻度%がもっとも大きいチャンネルの粒子径をモード径とした。
全く同じ粒子頻度%のチャンネルが複数存在する場合には、その中で最も粒子径の小さいチャンネルの粒子径をモード径として採用した。また、粒子頻度が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径として採用した。
【0061】
【表1】
【0062】
(1)θ(接触角)(20℃)(2)転落角(20℃)(3)前進接触角(傾斜角45°、20℃)
本発明における接触角は、以下の方法によって測定した。すなわち、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下し、滴下10秒後の静止したペーストのガラス面上における略円形の接触面において、内接する最長の直線の長さを2r(mm)、滴下した組成物の最高部とガラス面間の距離(高さ)をH(mm)とした時に、接触角θ(°)をtan(θ/2)=H/rの式によって求めた。
本発明のペーストにおける転落角は、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下し、滴下10秒後にペーストが静止した後、ガラス面の一方を持ち上げることでゆっくりと傾斜させた際の、液滴が滑り落ち始める(すなわち、ペーストとガラス面との接触面の位置、形状が変更し始める)角度を測定した。
本発明のペーストにおける前進接触角は、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下し、滴下10秒後にペーストが静止した後、ガラス面を45°の角度に傾斜させた際の、ペーストの自由表面がガラス表面に接する場所で、ペースト表面とガラス表面とのなす角度(°)(ペーストの内部にある角をとる)を測定した。
【0063】
(4)ボストウィック粘度計を用いた粘度測定値(20℃、10秒)
本発明のペーストの粘度測定値はKO式ボストウィック粘度計(深谷鉄工所社製)を用いて測定した。測定時には水準器を用いて装置を水平に設置し、ゲートを閉じた後リザーバーに20℃に温度調整したサンプルを満量まで充填し、ゲートを開くためにトリガーを押し下げると同時に時間を計測し、10秒経過時点でのトラフ内の材料の流下距離を測定することで、ボストウィック粘度計による粘度測定値を測定した。
【0064】
(5)洗浄性、(6)付着性、(7)保型性、(8)安定性(離油性)
実施例、比較例で得られた各ペーストのサンプルについて、大さじ1杯を、クラッカー(「ルヴァン(登録商標)」ヤマザキビスケット社製)に戴置したものを観察、試食して、食品への付着性、保型性について品質を評価する官能試験を、訓練された官能検査員のべ10名によって行った。
尚、前記官能検査員は、下記A)〜C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、のべ10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、のべ10名のスコアの算術平均値から算出し、更にパネラー間のばらつきを評価するために標準偏差を算出した。
また、各ペーストのサンプルについて、40℃で1週間静置した際の安定性(離油性)を、保管前の品質と比較して評価した。
あわせて、「洗浄性」は、清浄なガラス(例えば、新品の松浪硝子工業社製スライドグラス「S−1225」)上に、ガラス面上との接触面が略円形となるように、約3cmの高さから静かにペースト約0.1mLを滴下し、滴下後の静止したペーストを、スライドグラスごと蒸留水中に水平に浸漬し、スライドグラスをゆっくりと約5cm程度上下動させた際のペーストのガラスへの残留状況を観察し、その洗浄しやすさについて検査員のべ10名によって評価した。また、ガラス上の残留物が目視で確認できなくなるまでに要した上下動回数をカウントし、「略洗浄完了するまでに要した上下往復回数」とした。例えば、2往復完了時点でサンプルが残留しており、3往復完了時点でサンプルが残留していなかった場合、上下動回数は3回とした。
また、各ペーストのサンプルについて、この官能試験では、「洗浄性」「付着性」「保型性」「安定性(離油性)」といった4項目についてそれぞれ5点満点で評価を行った。「洗浄性」については、5:洗浄性が良い、4:洗浄性がやや良い、3:どちらでもない、2:洗浄性がやや良くない、1:洗浄性が良くない、の5段階で、ガラス面上の組成物の洗浄しやすさについて評価した。「付着性」については組成物の付着しやすさを、5:付着性が良い、4:付着性がやや良い、3:どちらでもない、2:付着性がやや悪い、1:付着性が悪い、の5段階で、喫食時の付着性について評価した。「保型性」については、5:保型性が良い、4:保型性がやや良い、3:どちらでもない、2:保型性がやや悪い、1:保型性が悪い、の5段階で、組成物の保型性について評価した。「安定性(離油性)」については、5:離油が認められず好ましい、4:離油がほとんど認められずやや好ましい、3:離油が認められるが許容範囲、2:やや離油が目立ちやや好ましくない、1:離油が目立ち好ましくない、の5段階で40℃で1週間静置した際の離油性を、保管前の品質と比較して評価した。各評価項目について、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。また、評価結果の集計はのべ10名のスコアの算術平均値から算出した。
官能検査員の訓練に際しては、5感についての識別試験、例えば下記A)乃至C)のような識別訓練を実施し、特に成績が優秀でかつ商品開発経験があり食品の味や外観といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価することが可能な検査員を選抜した。また、事前に各人の評価がばらつかないよう各評価軸の得点と評価品質をキャリブレーション(目あわせ)し、客観評価できる訓練を施した後、検査員のべ10名によって客観性のある官能検査を行った。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験、
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験、及び、
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0065】
得られた結果を表2〜表6に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【要約】
多様な食品を含有する組成物中において、保型性が良く、付着性にも優れた、多様な用途に用いることができる様々な利用特性をもった組成物の提供。
種実類、穀物類、豆類、藻類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上の食品微粒子と油脂とを含有するペーストであって、(1)乃至(5)を全て充足し、且つ、(6−1)乃至(6−3)のうち1以上を充足する、食品微粒子含有ペースト。(1)食品微粒子の含有量が15質量%以上85質量%以下、(2)全油脂分割合が20質量%以上75質量%以下、(3)超音波処理を行った場合に、当該処理後のモード径が0.3μm以上200μm以下、(4)水分の含有量が20質量%以上80質量%以下、(5)最大粒子径が100μmより大きい、(6−1)水平に静置した清浄なガラス面上における、測定温度20℃における接触角が40°以上160°以下、(6−2)清浄なガラス面上における、測定温度20℃における転落角が50°以上、(6−3)清浄なガラス面上における、測定温度20℃、傾斜角45°における前進接触角が50°以上。