(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物は、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマー及び(d)エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー及び/又は(メタ)アクリルモノマーを含みて構成される。
【0016】
体積ホログラム記録材料用組成物を用いた体積ホログラム記録媒体における体積ホログラムの記録原理の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
ホログラムなどのパターンは、記録層に含まれる少なくとも二種の成分の屈折率の差を利用して、光の干渉パターンを記録することにより形成される。従って、パターンを形成するためのパターン露光の条件下(例えばホログラム記録のための干渉露光の条件下)で、例えば本発明の場合には、上記の重合性化合物などの重合性成分より生じる重合体の屈折率と、トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの屈折率との差が大きいことが重要となる。
【0017】
すなわち、本発明においては、ホログラム記録のための干渉露光に用いる光の波長に対して、トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの屈折率と、重合性化合物などの重合性成分より生じる重合体の屈折率との差が0.01〜0.6であることが求められる。好ましくは、該屈折率の差は0.02〜0.5、又は0.03〜0.4であることがより好ましい。そして、このような観点から、本発明で用いる好適なトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーと重合性成分が夫々選択されることとなる。
該トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの屈折率は比較的高く、例えば、波長589nmの光に対する屈折率は1.7を超えるものがある。このため、本発明で用いられる重合性成分より生ずる重合体の屈折率は、上記数値と比べて相対的に小さいことが好ましく、例えば、波長589nmの光に対する屈折率が1.3以上、1.7以下である重合体を与える重合性成分が好ましく使用される。より好ましくは波長589nmの光に対する屈折率が1.3〜1.6である重合体を与える重合性成分(重合性化合物など)が使用されることとなる。
【0018】
なお、重合体の屈折率は、重合性成分及び光重合開始剤からなる組成物を支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥を行った後、ホログラム記録のための干渉露光に用いる光を用いた条件下で空間的に一様な露光を組成物に施すことによって重合体を得、その重合体の屈折率を測定することにより求めることができる。そして、このようにして得られる重合体の屈折率と、トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの屈折率とを基にして、本発明のホログラム記録材料用組成物に好適な重合性成分(重合性化合物など)、及びトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーをそれぞれ選択することができる。
【0019】
以下、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0020】
[(a)重合性化合物]
本発明における重合性化合物は、光重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を、分子内に1個以上、好ましくは1乃至6個有する化合物であれば特に制限はない。重合性の部位としては、ラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合が挙げられる。
なお、本発明における重合性化合物とは、いわゆる反応性を有しない高分子物質ではない化合物を意味し、従って、狭義の単量体化合物(モノマー)だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーや反応性高分子をも包含するものである。
【0021】
このような重合性化合物としては、ラジカル重合性の部位又はカチオン重合性の部位を
有する化合物が挙げられる。
ラジカル重合性の部位を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。また、カチオン重合性の部位を有する重合性化合物としては、ビニルチオエーテル構造、或いは、エポキシ環又はオキセタン環などの環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。
【0022】
<ラジカル重合性の部位を有する重合性化合物>
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸エステル化合物;脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸及び多価カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステル化合物等が挙げられる。
【0023】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸エステル化合物の具体例としては、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イソボロニルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物が挙げられる。また、これらの例示化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマイレン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル化合物が挙げられる。また、これらの例示化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、マレエートに代えたマイレン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0026】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物としては、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等が挙げられる。
【0027】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物及び芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸及び多価カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステル化合物としては、必ずしも単一物では無いが、代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸及びフタル酸とエチレングリコールとの縮合物、アクリル酸及びマレイン酸とジエチレングリコールとの縮合物、メタクリル酸及びテレフタル酸とペンタエリスリトールとの縮合物、アクリル酸及びアジピン酸とブタンジオール及びグリセリンとの縮合物等が挙げられる。
【0028】
以上のエステル化合物以外に、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、多価イソシアネートとヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルとの反応によって得ることが
できるウレタン化合物や、多価エポキシ化合物とヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルとの反応によって得ることができる化合物を挙げることができる。上記ウレタン化合物の例としては、例えばダイセル・サイテック(株)製EBECRYL(商品名)シリーズウレタンアクリレートが挙げられ、具体的には、例えばEBECRYL8301などを使用することによって、分散性を損なうことなく優れた回折効率を得ることができる。
その他本発明に用いられるエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、フタル酸ジアリル等のアリルエステル化合物;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
【0029】
本発明においては、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物が特に好ましい。
これらのエチレン性不飽和結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、必要に応じ混合して用いてもよい。
【0030】
<カチオン重合性の部位を有する重合性化合物>
エポキシ環を有する化合物としては、例えば、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル等を挙げることができる。
【0031】
オキセタン環を有する化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3,3−ジエチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1つ有する化合物;1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等のオキセタン環を2つ以上有する化合物を挙げることができる。
【0032】
これらのカチオン重合性の部位を有する重合性化合物は単独で用いてもよいし、必要に応じ混合して用いてもよい。
【0033】
<重合性化合物>
本発明において、(a)成分である重合性化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
また、(a)成分として、重合性の部位を1個有する化合物と、重合性の部位を2個以
上有する化合物を(2官能以上の重合性化合物)を併用することにより、後述する(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの拡散が速やかに起こり、回折効率などの特性がさらに好ましい形態となる。但し、2官能以上の重合性化合物の使用量(質量)は、組成物の合計質量から2官能以上の重合性化合物を除いた質量に対して10倍量(質量)までが好適であり、これ以上使用量が多くなると、(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの分散量が相対的に少なくなり、回折効率などにおいてよい特性が得られない。
上記2官能以上の重合性化合物としては前出のラジカル重合性の部位を有する重合性化合物或いはカチオン重合性化合物を有する化合物において、重合性の部位を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0034】
[(b)光重合開始剤]
本発明における光重合開始剤としては、後に詳述するパターン露光によって前記(a)重合性化合物の重合を開始することができる機能を有する化合物であれば特に限定はない。
重合性化合物としてラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物を使用する場合、光重合開始剤としては、基本的にはパターン露光時に活性ラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤が用いられる。
また、重合性化合物としてカチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、エポキシ環又はオキセタン環を有する化合物等を使用する場合、光重合開始剤としては、基本的にはパターン露光時にルイス酸あるいはブレンステッド酸を生成する光酸発生剤が用いられる。
【0035】
<光ラジカル重合開始剤>
光ラジカル重合開始剤としては、パターン露光時に活性ラジカルを生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アゾ系化合物、アジド系化合物、ジアゾ系化合物、o−キノンジアジド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。これらのうち、チタノセン化合物が好ましい。光ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
チタノセン化合物は、特に限定はされないが、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0037】
ベンゾイン系化合物としては、例えばベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができ
る。
【0038】
α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0039】
チオキサントン系化合物としては、例えばチオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0040】
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキシブチル)〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕硫酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕等を挙げることができる。
【0041】
アジド系化合物としては、例えばp−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0042】
ジアゾ系化合物としては、例えば1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−(ジメチルアミノ)ベンゼンクロリド、1−ジアゾ−4−(ジエチルアミノ)ベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0043】
o−キノンジアジド系化合物としては、例えば1,2−ナフトキノンジアジド(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノンジアジド(2)−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド(2)−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0044】
アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0045】
オキシムエステル系化合物としては、例えば2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0046】
ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0047】
ビスクマリンとしては、例えば3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)等が挙げられ、これはみどり化学株式会社でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている。
【0048】
ビスイミダゾール化合物としては、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0049】
<光酸発生剤>
光酸発生剤としては、パターン露光時にルイス酸あるいはブレンステッド酸を生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジアリールヨードニウム塩化合物、トリアリールスルホニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物などのオニウム塩化合物、鉄アレーン錯体化合物等を挙げることができる。
【0050】
ジアリールヨードニウム塩化合物としては、例えば、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム、3,3’−ジニトロフェニルヨードニウム等のヨードニウムの、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0051】
トリアリールスルホニウム塩化合物としては、例えば、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウム等のスルホニウムの、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。
【0052】
鉄アレーン錯体化合物としては、例えばビスシクロペンタジエニル−(η
6−イソプロピルベンゼン)−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0053】
<光重合開始剤>
これら光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤などの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物における光重合開始剤の配合量は、(a)重合性化合物に対し0.01乃至10質量部であり、好ましくは0.05乃至5質量部である。
【0054】
[(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマー]
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物は、(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを必須の成分として含む。
上記(c)成分は、その屈折率が、重合性成分、すなわち前記(a)重合性化合物と後
述する(d)エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー及び/又は(メタ)アクリルモノマーの重合体の屈折率に対して0.01以上、0.6以下の差となるような屈折率を有してなることが好ましい。
また体積ホログラム記録材料用組成物に含まれる上記(c)成分の配合量は、前記(a)重合性化合物の重合体、前記(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマー及び後述する(d)エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー及び/又は(メタ)アクリルモノマーの重合体の合計体積に占める割合が3体積%以上、50体積%以下であることが好ましく、より好ましくは15体積%以上50体積%以下である。
【0055】
トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーとしては、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むポリマーが好ましい。
【化1】
上記式(1)中、R及びR’は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
【0056】
本発明において、アルキル基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素原子数1〜10であることがより好ましく、1〜3であることがより一層好ましい。また、その構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−イソプロピル−シクロプロピル基、2−イソプロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シク
ロプロピル基、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0057】
上記アルコキシ基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素原子数1〜10であることがより好ましく、1〜3であることがより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0058】
上記アリール基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、炭素原子数が6〜40であることが好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素原子数6〜16であることがより好ましく、6〜13であることがより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0059】
アラルキル基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、炭素原子数が7〜20であることが好ましく、そのアルキル部分は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル基、p−メチルフェニルメチル基、m−メチルフェニルメチル基、o−エチルフェニルメチル基、m−エチルフェニルメチル基、p−エチルフェニルメチル基、2−プロピルフェニルメチル基、4−イソプロピルフェニルメチル基、4−イソブチルフェニルメチル基、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0060】
上記式(1)中、Arは、下記式(2)乃至式(13)で表される群から選ばれる少なくとも1種の二価の基を表す。
【化2】
【0061】
上記式(2)乃至式(13)中、R
1〜R
92は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、R
93及びR
94は、水素原子又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、W
1及びW
2は、互いに独立して、単結合、CR
95R
96(式中、R
95及びR
96は、互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、R
95とR
96は結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO
2、又はNR
97(式中、R
97は、水素原子又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基としては上記において挙げた基と同様の基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0062】
また上記式中、X
1及びX
2は、互いに独立して、単結合、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、又は式(14)
【化3】
(式中、R
99〜R
101は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y
1及びY
2は、互いに独立して、単結合又は炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基
を表す。)
で表される基を表す。
これらハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては上記において挙げた基と同様の基が挙げられる。
また炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0063】
本発明における前記式(1)における好適なArとしては、式(2)、(5)乃至(13)で表される基から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、式(2)、(5)、(7)、(8)、(11)乃至(13)で表される基から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0064】
上記式(2)乃至式(13)で表されるアリール基(Ar)の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
これらの中でも、より高い屈折率を発現するハイパーブランチポリマーが得られることから、下記式で示されるアリール基がより好ましい。
【0068】
中でも、(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーに含まれる好適な繰り返し単位構造としては、式(1)で表される繰り返し単位構造において、Arが式(2)で表される二価の基であるもの、すなわち、下記式(15)で示される繰り返し単位構造が好ましい。
【化6】
(式中、R、R’及びR
1〜R
4は、前記と同じ意味を表す。)
【0069】
そして特に好適な繰り返し単位構造としては、下記式(16)で表される繰り返し単位構造が挙げられ、中でも下記式(17)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーが最適である。
【0070】
【化7】
(式中、R及びR’は、上記と同じ意味を表す。)
【0072】
本発明における(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、500〜500,000が好ましく、さらに500〜100,000が好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、さらに10,000以下が好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0073】
上記(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーは、国際公開第2010/128661号パンフレットに開示された手法によって製造することができる。その一例を挙げるとすれば、例えば、下記スキーム1に示されるように、ハロゲン化シアヌル(18)及びm−フェニレンジアミン化合物(19)を適当な有機溶媒中で反応させることにより繰り返し単位構造(17’)を有するトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0074】
【化9】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0075】
[(d)エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー又は(メタ)アクリルモノマー]
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物は、前記(c)トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを分散させることができ、そして前記(a)重合性化合物に対して成分(c)とともに分散し得る成分(d)を必須の成分として含む。
このような性質を有するという観点から、成分(d)としては、エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。
なお本明細書において(メタ)アクリルモノマーとはアクリルモノマーとメタクリルモノマーの両方を意味する。
【0076】
上記(d)成分(化合物)は、エーテル構造又はアミド構造を有するビニルモノマー、或いは、エーテル構造又はアミド構造を有する(メタ)アクリルモノマーであれば特に限定されず、例えば、2−クロロエチル=ビニル=エーテル、n−ブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のビニルエーテル構造含有化合物;N−ビニルホルムアミド(NVF)、N−ビニルアセトアミド(NVA)、N−ビニルピロリドン(NVP)等のN−ビニルアミド類;N−アリルホルムアミド、N−アリルアセトアミド等のN−アリルアミド類;ポリエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−co−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−co−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−co−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−co−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等のグリコール(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基含有(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリアミン化合物と(メタ)アクリル酸とのアミド化合物、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類などが挙げられる。
これらの中でも、特に、N−ビニルアミド類及び環状エーテル基含有(メタ)アクリレート類が好ましく、N−ビニルピロリドン(NVP)及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらのエーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いてもよいし、必要に応じ混合して用いてもよい。
【0077】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物における(d)エーテル又はアミド構造を有するビニルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの配合量は、(a)重合性化合物1質量部に対し0.01乃至1,000質量部、好ましくは0.1乃至1,000質量部、より好ましくは1乃至1,000質量部である。
【0078】
[体積ホログラム記録媒体]
本発明は上記成分(a)乃至(d)を含有する体積ホログラム記録材料用組成物を含む体積ホログラム記録層並びに該記録層を含む体積ホログラム記録媒体も対象とする。
本発明の体積ホログラム記録媒体における記録層には、上記成分(a)乃至(d)の他、必要に応じて、増感剤、連鎖移動剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を加えてもよい。また、膜厚の均一性を持たせ、光照射での重合で形成された干渉膜を安定に存在させるためには結合材としてバインダ樹脂を加えてもよい。
【0079】
バインダ樹脂は前記樹脂成分(成分(a)及び(d))と相溶性のよいものが好ましく、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。
【0080】
本発明の体積ホログラム記録用組成物を用いて体積ホログラム記録層並びに体積ホログラム記録媒体を作るには成分(a)乃至(d)を、必要に応じ、増感剤、及びバインダ樹脂等とともに混合し、このまま無溶剤で透明基体(支持体)上に塗布するか、これらの混合物に溶剤又は添加剤を加えて所謂ワニスの形態とし、これを透明基体上に塗布、乾燥して、透明基体上に体積ホログラム記録層が形成した記録媒体を得る。
さらに該記録層上に透明基体、或いは酸素遮断のための保護層を設け、体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間、或いは透明基体と保護層間に配置された構造とすることもできる。
【0081】
上記溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の高極性溶剤;あるいはこれらの混合溶剤、さらには、これらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
上記溶剤の使用量の割合は、本実施形態の体積ホログラム用材料組成物の総量に対して、通常、質量比で1乃至20倍程度の範囲である。
【0082】
上記透明基体としては、透明なガラス板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等が用いられる。塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。
【0083】
上記保護層としては、酸素による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための公知技術、例えば、水溶性ポリマー等の塗布を用いることもできる。
【0084】
本発明はまた、前記体積ホログラム記録材料用組成物を用いるパターン形成方法も対象とする。
すなわち、前記体積ホログラム記録材料用組成物を、支持体に塗布し塗布膜を形成する工程、及び前記塗布膜にパターン露光する工程を含む方法であって、特に前記パターン露光が干渉露光であることが好ましい。
上記支持体としては前述の透明基体として挙げたものを好適に使用でき、また支持体への塗布方法としては前述の透明基体上への塗布方法を挙げることができる。
【0085】
前述したとおり、体積ホログラム記録用組成物として従来、屈折率の異なる複数の官能性モノマーからなる組成物や液状有機物と官能性モノマーからなる組成物などが知られている。こうした組成物を用いて回折効率の高いホログラムを得るためには、干渉縞の明部に当たる領域と暗部に当たる領域の屈折率差を大きくする必要がある。しかしながら従来提案されている有機物の屈折率は通常1.3〜1.6程度に限られることから、有機物同士の組合せからなるホログラム記録材料では屈折率差を大きくするのに限界があるとされていた。
本発明において使用するトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーは1.7を上回る高い屈折率を有し、このため、従来限界があるとされた有機物(樹脂成分など)との組合せにおいても屈折率差を大きく取ることができ、従って回折光率の高いホログラムを得ることができる。
【実施例】
【0086】
以下、合成例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[
1H NMR]
装置:Varian NMR System 400NB(400MHz)(現:アジレントテクノロジー(株)製)
JEOL−ECA700(700MHz)
測定溶媒:DMSO−d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0ppm)
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THF)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE[示差熱天秤(TG−DTA)]
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃−750℃
[膜密度測定 XRR]
装置:D8 DISCOVER(ブルカー・エイエックスエス(株)製)
管電圧−電流:50kV−100mA
測定範囲:0.2−3.000deg(2θ)
ステップ幅:0.005deg(2θ)
time/step:0.5秒/step
【0087】
[1]トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの合成
[合成例1]HB−TmDA40の合成
【化10】
【0088】
窒素下、1000mL四口フラスコにジメチルアセトアミド(DMAc)456.02gを加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](84.83g、0.460mol、エポニックデグザ社製)を加え溶解した。その後、別途DMAc304.01gに溶解したm−フェニレンジアミン[2](62.18g、0.575mol)及びアニリン(14.57g、0.156mol)を前記四口フラスコに滴下し、滴下後30分撹拌して反応溶液を得た。
予めDMAc621.85gを加えてオイルバスで85℃に加熱してある2000mL四口フラスコに、この反応溶液を送液ポンプにより1時間かけて滴下し、その後1時間撹拌して重合させた。その後、アニリン(113.95g、1.224mol)を加え、その後1時間撹拌して反応を終了した。
氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(116.36g、1.15mol)を滴下し、その後30分撹拌した後、塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28%アンモニア水溶液(279.29g)とイオン交換水8820gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、8時
間乾燥後、THF833.1gに再溶解させ、イオン交換水6665gに再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物の微粒子[3](以下、HB−TmDA40と略す)118.0gを得た。
HB−TmDA40の
1H−NMRスペクトルの測定結果を
図1に示す。得られたHB−TmDA40は前述の式(1)で表される繰り返し単位構造を有する化合物である。HB−TmDA40のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,300、多分散度Mw/Mnは3.44であった。また膜密度測定より得られたHB−TmDA40の密度は1.32g/cm
3であった。
【0089】
(1)耐熱性試験
合成例1で得られたHB−TmDA40について、TG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少温度(Td
5%)は419℃であった。得られた結果を
図2に示す
(2)屈折率測定
合成例1で得られたHB−TmDA40 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液(ポリマーワニス)を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.790であった。
【0090】
[製造例1]
窒素下、200mLフラスコに、HB−TmDA40 30質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(以下、THF−A)66質量部[共栄社化学(株)製]、N−ビニルピロリドン(以下、NVP)4質量部[純正化学(株)製]を加え、オイルバスにて60℃に加熱し、24時間撹拌しHB−TmDA40のアクリルモノマー分散液を得た。
【0091】
<実施例1>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
製造例1で調製したHB−TmDA40のアクリルモノマー分散液(ハイパーブランチポリマー濃度30.0質量%)1.067gに、さらに(d)としてNVPを17mg加え、(a)重合性化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)303mg、(b)光重合開始剤として、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名:Irgacure784)3.1mgを加え、これらを溶解させ、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0092】
なお波長589nmにおける、HB−TmDA40の屈折率は1.79、重合性成分(DPHA、THF−A及びNVP)の重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率差は0.26であった。
また、重合性化合物(DPHA)の重合体の密度は1.186g/cm
3であり、HB−TmDA40の密度は前述したとおり1.32g/cm
3であるから、その体積はそれぞれ、重合性化合物:0.303/1.186=0.255cm
3、HB−TmDA40:1.067×0.3/1.32=0.243cm
3であった。なお使用したTHF−A(1.067×0.66=0.704g)とNVP(1.067×0.04+0.017=0.060g)の合計体積は0.708cm
3であった。
従って、重合性成分(DPHA、THF−A及びNVP)及びHB−TmDA40の合計体積に占めるHB−TmDA40の体積分率は、[0.243/(0.255+0.243+0.708)]×100=20.14、即ち20.1体積%であった。
【0093】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
スライドガラスの上下左右両端部に、スペーサとして厚さ10μmのアルミニウム箔を
載せ、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)に上記体積ホログラム記録材料用組成物を滴下し、体積ホログラム記録層を形成した。その後、形成した体積ホログラム記録層を挟むように別のスライドガラスを被せ、体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0094】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
本発明の体積ホログラム記録媒体に対し、
図3に示す装置によって二光束干渉露光を行い、体積ホログラムの記録を試みた。体積ホログラム記録媒体に対し、波長532nmのNd:YVO
4レーザーを用いて、露光パワー密度250mW/cm
2で二光束干渉露光(格子間隔1μm)を行った。Nd:YVO
4レーザーから出射した光はビームエキスパンダを経てハーフミラーで2本に分割され、それぞれミラーを経て体積ホログラム記録媒体に照射され、両光の干渉縞が記録され体積ホログラムを形成させた。
同時に、体積ホログラム記録媒体が感光しない波長632.8nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザーを体積ホログラム記録媒体に照射し、その回折光を光検出器で検出することによりホログラム形成過程をモニターし回折効率を評価した。また、露光後の回折効率の角度依存性を測定し、試料の露光後の膜厚を算出した。さらに、得られた回折効率と膜厚から屈折率変調量(Δn)の露光時間変化と飽和屈折率変調量(Δn
sat)を評価した。結果を表1に合わせて示す。また
図4に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0095】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で、HB−TmDA40の体積分率12.2体積%の試料を作成し、屈折率変調量(Δn)の露光時間変化と飽和屈折率変調量(Δn
sat)を評価した。結果を表1に合わせて示す。また
図5に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0096】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、HB−TmDA40の体積分率15.6体積%の試料を作成し、屈折率変調量(Δn)の露光時間変化と飽和屈折率変調量(Δn
sat)を評価した。結果を表1に合わせて示す。また
図6に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0097】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で、HB−TmDA40の体積分率17.9体積%の試料を作成し、屈折率変調量(Δn)の露光時間変化と飽和屈折率変調量(Δn
sat)を評価した。結果を表1に合わせて示す。また
図7に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0098】
<実施例5>
実施例1と同様の方法で、HB−TmDA40の体積分率22.9体積%の試料を作成し、屈折率変調量(Δn)の露光時間変化と飽和屈折率変調量(Δn
sat)を評価した。結果を表1に合わせて示す。また
図8に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0099】
<比較例>
実施例1と同様の方法で、但しHB−TmDA40を分散させない試料を作成し、屈折率変調量(Δn)の露光時間変化を評価した。
図9に露光時間に対するΔnの変化を示す。
【0100】
また実施例1乃至実施例5で作製したHB−TmDA40の体積分率の異なる試料(12.2体積%、15.6体積%、17.9体積%、20.1体積%、22.9体積%)について、Δn
satのHB−TmDA40の濃度依存性を評価した。
図10に、HB−TmDA40の体積分率(体積%)に対するΔn
satを示す。
【0101】
【表1】
[表1]
【0102】
表1に示すように、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の飽和屈折率変調量Δn
satは極めて高く、また微粒子(HB−TmDA40)の体積分率が増加するにつれてΔn
satは増加する傾向にある(
図10参照)とする結果を得た。
一方、
図9に示すように、微粒子(HB−TmDA40)を添加しない媒体に対して実施例と同様に体積ホログラムの記録を行った場合(比較例)、回折効率は一旦上昇するが時間の経過とともに急速に低下し、最終的にはほとんど消えてしまうとする結果を得た。これは、官能性モノマー単一成分であるため、全体が重合すると屈折率変調が消失することに対応している。