(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対し、前記(b)ジエステル可塑剤及び前記(c)トリメリット酸エステル可塑剤を合計で5〜200質量部含む、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記(b)ジエステル可塑剤と前記(c)トリメリット酸エステル可塑剤との配合比(ジエステル可塑剤/トリメリット酸エステル可塑剤)が、質量比で、1/99〜99/1である、請求項1又は2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)所定の化合物からなるジエステル可塑剤と、(c)トリメリット酸エステル可塑剤とを含み、任意に、添加剤を更に含有する。
【0017】
<塩化ビニル樹脂>
ここで、(a)塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニル単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する共重合体が挙げられる。塩化ビニル共重合体の共単量体の具体例は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などである。以上に例示される単量体は、塩化ビニルと共重合可能な単量体(共単量体)の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの単量体の1種又は2種以上が使用され得る。上記(a)塩化ビニル樹脂には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと共重合可能な前記共単量体がグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0018】
上記(a)塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
【0019】
また、(a)塩化ビニル樹脂は、1種類の塩化ビニル樹脂または2種類以上の塩化ビニル樹脂の混合物とすることができる。具体的には、(a)塩化ビニル樹脂は、(x)ベース塩化ビニル樹脂のみ、或いは、(x)ベース塩化ビニル樹脂と(y)塩化ビニル樹脂微粒子との混合物とすることができる。そして、(a)塩化ビニル樹脂は、(x)ベース塩化ビニル樹脂100〜70質量%及び(y)塩化ビニル樹脂微粒子0〜30質量%を含んでなることが好ましい。
なお、塩化ビニル樹脂組成物において、(a)塩化ビニル樹脂が含有する(x)ベース塩化ビニル樹脂は、マトリックス樹脂として機能する。また、(a)塩化ビニル樹脂が所望により含有する(y)塩化ビニル樹脂微粒子は、後述するダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。そして、(x)ベース塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法により製造することが好ましく、(y)塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0020】
[ベース塩化ビニル樹脂]
上記(x)ベース塩化ビニル樹脂の平均重合度は、好ましくは800以上5000以下であり、より好ましくは800以上3000以下である。上記(x)ベース塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体成形時の流動性および溶融性を良好なものとすることができると共に、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な耐熱老化性を付与することができる。なお、平均重合度は、JIS K6720−2に準拠して測定される。
【0021】
上記(x)ベース塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂粒子であることが好ましい。(x)ベース塩化ビニル樹脂としての塩化ビニル樹脂粒子の平均粒径は特に限定されない。当該平均粒径は、好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上250μm以下、更に好ましくは100μm以上200μm以下である。(x)ベース塩化ビニル樹脂としての塩化ビニル樹脂粒子の平均粒径が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上し、かつ、上記塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の平滑性が向上する。なお、平均粒径は、JIS Z8801に規定されたJIS標準篩による篩い分け法に準拠して測定される。
【0022】
そして、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量%中の(x)ベース塩化ビニル樹脂の含有量は、通常、70質量%以上100質量%以下であり、好ましくは70質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上95質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上92質量%以下である。
【0023】
[塩化ビニル樹脂微粒子]
上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子は、平均粒径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上するからである。なお、(y)塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒径は、JIS Z8825に準拠し、例えば(株)島津製作所製「SALD−2300」を用いて、レーザー回折法によって測定される。
【0024】
上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子は、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が500以上2000以下であることが好ましく、700以上1500以下であることがより好ましい。
【0025】
そして、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量%中の(y)塩化ビニル樹脂微粒子の含有量は、通常、0質量%以上30質量%以下であり、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以上20質量%以下である。
【0026】
<ジエステル可塑剤>
塩化ビニル樹脂組成物が含む(b)ジエステル可塑剤は、下記式(1)で示される化合物からなる。
【化2】
なお、上記式(1)中、R
1及びR
3は炭素−炭素不飽和結合を有する一価の炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
2は二価の炭化水素基である。
【0027】
ここで、上記式(1)中のR
1及びR
3は、好ましくは、それぞれ、炭素−炭素不飽和結合を有する一価の脂肪族炭化水素基である。
【0028】
そして、上記式(1)中のR
1及びR
3がそれぞれ有する炭素−炭素不飽和結合は、少なくとも1つあることが必要であるが、2つ以上有していてもよい。なお、相溶性の観点からは、上記式(1)中のR
1及びR
3がそれぞれ有する炭素−炭素不飽和結合の数は、3つ以下であることが好ましい。
【0029】
また、上記式(1)中のR
1及びR
3がそれぞれ有する炭素−炭素不飽和結合は、炭化水素鎖の端部でない部分にあることが好ましく、前記炭化水素鎖の中央付近にあることがより好ましい。炭素−炭素不飽和結合を炭化水素鎖の端部でない部分に有することにより、上記(b)ジエステル可塑剤は熱安定性により優れたものとなる。その結果、本発明の塩化ビニル樹脂組成物、本発明の塩化ビニル樹脂成形体及び本発明の積層体は、それぞれ熱安定性、低温での柔軟性及び引張特性により優れたものとなる。
【0030】
更に、上記式(1)中のR
1及びR
3は、それぞれ、炭素−炭素飽和結合が連続する数が、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下となるように、不飽和結合を、少なくとも1つ有することが望ましい。上記のように不飽和結合を少なくとも1つ有することにより、上記(b)ジエステル可塑剤はその凝固点が降下し、取扱い性に優れたものとなる他、本発明の塩化ビニル樹脂組成物への分散性により優れるものとなる。その結果、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、低温での柔軟性及び引張特性が更に優れたものとなる。
【0031】
また、上記式(1)中のR
1及びR
3がそれぞれ有する炭素−炭素不飽和結合は、炭素−炭素二重結合であっても、炭素−炭素三重結合であってもよい。中でも、熱安定性の観点からは、炭素−炭素二重結合が好ましい。
【0032】
更に、上記式(1)中のR
2は、好ましくは、二価の脂肪族炭化水素基である。R
2として二価の脂肪族炭化水素基を用いることにより、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び引張特性が優れたものとなる。
【0033】
また、上記式(1)中のR
1及びR
3の炭素数は、それぞれ独立して、好ましくは3以上24以下であり、より好ましくは8以上24以下であり、更に好ましくは10以上20以下であり、特に好ましくは15以上19以下であり、より一層好ましくは17以上19以下である。R
1及びR
3として上記の炭素数の一価の炭化水素基を用いることにより、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び引張特性が優れたものとなる。
【0034】
更に、上記式(1)中のR
2の炭素数は、好ましくは2以上20以下であり、より好ましくは2以上15以下であり、更に好ましくは2以上13以下であり、特に好ましくは3以上10以下であり、より一層好ましくは6以上9以下である。R
2として上記の炭素数の二価の炭化水素基を用いることにより、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び引張特性が優れたものとなる。
【0035】
また、上記式(1)中のR
1、R
2及びR
3の好ましい直鎖率は、それぞれ90モル%以上であり、より好ましい直鎖率は、それぞれ95モル%以上であり、更に好ましい直鎖率は、それぞれ100モル%である。R
1、R
2及びR
3の直鎖率は、R
1、R
2及びR
3それぞれについての、全炭化水素基に対する直鎖状炭化水素基の割合である。R
1、R
2及びR
3として上記の直鎖率の炭化水素基を用いることにより、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び引張特性が優れたものとなる。
【0036】
なお、上記式(1)中のR
1及びR
3として特に好ましい一価の炭化水素基の具体例は、シス−7−ペンタデセニル基、トランス−7−ペンタデセニル基、シス−8−ヘキサデセニル基、トランス−8−ヘキサデセニル基、シス−8−ヘプタデセニル基、トランス−8−ヘプタデセニル基、シス−9−オクタデセニル基、トランス−9−オクタデセニル基、シス−9−ノナデセニル基、トランス−9−ノナデセニル基、等が挙げられる。上記式(1)中のR
1及びR
3として最も好ましい一価の炭化水素基の具体例は、シス−8−ヘプタデセニル基、トランス−8−ヘプタデセニル基である。
【0037】
また、上記式(1)中のR
2として特に好ましい二価の炭化水素基の具体例は、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、等が挙げられる。上記式(1)中のR
2としては、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基が好ましく、フォギング性の観点からはヘキサメチレン基がより好ましい。
【0038】
(b)ジエステル可塑剤として上記の範囲内のものを用いることにより、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び引張特性が優れたものとなる。
【0039】
<トリメリット酸エステル可塑剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(c)トリメリット酸エステル可塑剤を含有する。塩化ビニル樹脂組成物に(c)トリメリット酸エステル可塑剤を含有させれば、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体のフォギング性と柔軟性とのバランスが良好なものとなる。
【0040】
好ましい上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤は、トリメリット酸と一価アルコールとのエステル化合物である。
【0041】
ここで、上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤の具体例は、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)等である。
【0042】
そして、上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤のより好ましい具体例は、下記式(2)で示される化合物である。
【化3】
なお、上記式(2)中、R
4、R
5及びR
6はアルキル基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
ここで、R
4、R
5及びR
6の直鎖率は、それぞれ好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。そして、R
4、R
5及びR
6の全アルキル基に対する炭素数7以下のアルキル基の割合は好ましくは0モル%以上10モル%以下であり、R
4、R
5及びR
6の全アルキル基に対する炭素数8及び9のアルキル基の割合は好ましくは5モル%以上100モル%以下、より好ましくは40モル%以上95モル%以下、更に好ましくは75モル%以上95モル%以下であり、R
4、R
5及びR
6の全アルキル基に対する炭素数10のアルキル基の割合は好ましくは0モル%以上95モル%以下、より好ましくは5モル%以上60モル%以下、更に好ましくは5モル%以上25モル%以下であり、R
4、R
5及びR
6の全アルキル基に対する炭素数11以上のアルキル基の割合は好ましくは0モル%以上10モル%以下である。なお、R
4、R
5及びR
6の直鎖率は、R
4、R
5及びR
6それぞれについての、全アルキル基に対する直鎖状アルキル基の割合である。
【0044】
なお、上記式(2)中のR
4、R
5及びR
6を構成する直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ステアリル基などが挙げられる。また、上記式(2)中のR
4、R
5及びR
6を構成する分岐状アルキル基の具体例としては、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、i−ヘキシル基、i−ヘプチル基、i−オクチル基、i−ノニル基、i−デシル基、i−ウンデシル基、i−ドデシル基、i−トリデシル基、i−ヘキサデシル基、i−ペンタデシル基、i−ヘキサデシル基、i−ヘプタデシル基、i−オクタデシル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基、t−ヘプチル基、t−オクチル基、t−ノニル基、t−デシル基、t−ウンデシル基、t−ドデシル基、t−トリデシル基、t−ヘキサデシル基、t−ペンタデシル基、t−ヘキサデシル基、t−ヘプタデシル基、t−オクタデシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0045】
上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤は、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。
【0046】
そして、上記(b)ジエステル可塑剤及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤の、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する好ましい合計含有量は5質量部以上200質量部以下であり、より好ましい合計含有量は30質量部以上180質量部以下であり、更に好ましい合計含有量は50質量部以上150質量部以下であり、特に好ましい合計含有量は90質量部以上120質量部以下である。(b)ジエステル可塑剤及び(c)トリメリット酸エステル可塑剤の合計含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0047】
また、上記(b)ジエステル可塑剤と上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤との配合比(ジエステル可塑剤/トリメリット酸エステル可塑剤)は、質量比で、好ましくは1/99〜99/1であり、より好ましくは1/99〜50/50であり、更に好ましくは1/99〜35/65であり、特に好ましくは1/99〜20/80であり、より一層好ましくは5/95〜20/80である。上記(b)ジエステル可塑剤及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤の含有比が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0048】
<添加剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記(a)塩化ビニル樹脂、(b)ジエステル可塑剤、及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤以外に、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、上記(b)ジエステル可塑剤及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤(以下、「その他の可塑剤」ということがある。)、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、脂肪酸金属塩、上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子以外のダスティング剤(粉体流動性改良剤。以下、「その他のダスティング剤」ということがある。)、及びその他の添加剤が挙げられる。
【0049】
[その他の可塑剤]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、上記(b)ジエステル可塑剤及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤の具体例としては、以下の一次可塑剤及び二次可塑剤などが挙げられる。
【0050】
いわゆる一次可塑剤としては、
ピロメリット酸テトラ−n−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ−n−ノニル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル、ピロメリット酸テトライソデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)等の、ピロメリット酸エステル系可塑剤;
エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−n−ノニルフタレート、ジ−n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−ドデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、n−ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体、;
ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペートなどのアジピン酸誘導体;
ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−n−ブチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;
ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノ−n−ブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、n−ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;
n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ−n−ブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;
などが挙げられる。
【0051】
また、いわゆる二次可塑剤としては、塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、n−ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどが挙げられる。
【0052】
なお、本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の、その他の可塑剤を使用しうる。また、二次可塑剤を用いる場合、それと等質量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
【0053】
そして、上記その他の可塑剤の中でも、好ましい可塑剤は、ピロメリット酸エステル系可塑剤及びエポキシ化植物油であり、より好ましい可塑剤は、エポキシ化植物油であり、更に好ましい可塑剤は、エポキシ化大豆油である。
【0054】
また、上記その他の可塑剤の、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する好ましい含有量は、0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましい含有量は0.5質量部以上20質量部以下であり、更に好ましい含有量は1質量部以上10質量部以下である。上記(b)ジエステル可塑剤及び上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤の含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与することができる。
【0055】
[過塩素酸処理ハイドロタルサイト]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、過塩素酸処理ハイドロタルサイトは、例えば、ハイドロタルサイトを過塩素酸の希薄水溶液中に加えて撹拌し、その後必要に応じて、ろ過、脱水または乾燥することによって、ハイドロタルサイト中の炭酸アニオン(CO
32-)の少なくとも一部を過塩素酸アニオン(ClO
4-)で置換して(炭酸アニオン1モルにつき過塩素酸アニオン2モルが置換する)、容易に製造することができる。上記ハイドロタルサイトと上記過塩素酸とのモル比は任意に設定できるが、一般には、ハイドロタルサイト1モルに対し、過塩素酸0.1〜2モルとする。
【0056】
未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。また、未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは95モル%以下である。未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率が上記の範囲内にあることにより、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与することができる。
【0057】
ハイドロタルサイトは、一般式:[Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層[Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+と、マイナスに荷電した中間層[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、上記一般式中、xは0より大きく0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトは、Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2Oである。合成されたハイドロタルサイトとしては、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2Oが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、例えば特公昭61−174270号公報に記載されている。
【0058】
過塩素酸処理ハイドロタルサイトの、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する好ましい含有量は0.5質量部以上7質量部以下であり、より好ましい含有量は1質量部以上6質量部以下であり、更に好ましい含有量は1.5質量部以上5.5質量部以下である。過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0059】
[ゼオライト]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式:M
x/n・[(AlO
2)
x・(SiO
2)
y]・zH
2O(一般式中、Mは原子価nの金属イオン、x+yは単子格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表される化合物である。当該一般式中のMの種類としては、Na、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
【0060】
ゼオライトの含有量は特定の範囲に限定されない。好ましい含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である。
【0061】
[脂肪酸金属塩]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、好ましい脂肪酸金属塩は、一価脂肪酸金属塩であり、より好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数12〜24の一価脂肪酸金属塩であり、更に好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数15〜21の一価脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩の具体例は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等である。脂肪酸金属塩を構成する金属としては、多価陽イオンを生成しうる金属が好ましく、2価陽イオンを生成しうる金属がより好ましく、周期表第3周期〜第6周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が更に好ましく、周期表第4周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が特に好ましい。最も好ましい脂肪酸金属塩はステアリン酸亜鉛である。
【0062】
脂肪酸金属塩の、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する含有量は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。脂肪酸金属塩の含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与でき、更に色差の値を小さくできる。
【0063】
[その他のダスティング剤]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子以外の、その他のダスティング剤(粉体流動性改良剤)としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウムなどの無機微粒子;ポリアクリロニトリル樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子などの有機微粒子;が挙げられる。中でも、平均粒径が10nm以上100nm以下の無機微粒子が好ましい。ダスティング剤の含有量は特定の範囲に限定されない。当該含有量は、ダスティング剤が上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子でない場合は、好ましくは(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以上25質量部以下である。
【0064】
[その他の添加剤]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有し得るその他の添加剤としては、着色剤、耐衝撃性改良剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、光安定剤、発泡剤、β−ジケトン類等が挙げられる。
【0065】
着色剤の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。1種又は2種以上の顔料が使用される。
キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。
ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンとの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。
ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。
イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンとの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。
銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。
チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。
カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。
【0066】
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンなどである。本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤が使用できる。なお、耐衝撃性改良剤は、塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。塩化ビニル樹脂組成物では、当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が(a)塩化ビニル樹脂と相溶し、塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
【0067】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などである。
【0068】
防黴剤の具体例は、脂肪族エステル系防黴剤、炭化水素系防黴剤、有機窒素系防黴剤、有機窒素硫黄系防黴剤などである。
【0069】
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;などである。
【0070】
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤;などである。
【0071】
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレーなどである。
【0072】
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤などである。
【0073】
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤;フロンガス、炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物、これらを内包したマイクロカプセルなどの、ガス系の発泡剤;などである。
【0074】
β−ジケトン類は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトン類の具体例は、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタンなどである。これらのβ−ジケトン類は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、β−ジケトン類の含有量は特定の範囲に限定されない。β−ジケトン類の好ましい含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である。
【0075】
<塩化ビニル樹脂組成物の調製方法>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂と、上記(b)ジエステル可塑剤と、上記(c)トリメリット酸エステル可塑剤と、必要に応じて添加される添加剤の混合方法は限定されない。好ましい混合方法は、可塑剤及びダスティング剤(上記(y)塩化ビニル樹脂微粒子を含む)を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、可塑剤、ダスティング剤を順次、混合する方法である。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、好ましくは50℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上80℃以下である。
【0076】
(塩化ビニル樹脂成形体)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した本発明の塩化ビニル樹脂組成物を、粉体成形、好ましくはパウダースラッシュ成形して得る。パウダースラッシュ成形時の金型温度は、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上280℃以下である。
【0077】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、例えば、上記温度範囲の金型に本発明の塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。
【0078】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に用いられる。
【0079】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体を積層して得ることができる。積層方法は、塩化ビニル樹脂成形体と、発泡ポリウレタン成形体とを別途作製した後に、熱融着、熱接着又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行い、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。後者の方が、工程が簡素であり、かつ、種々の形状の積層体を得る場合においても、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体との接着を確実に行うことができるのでより好適である。
【0080】
本発明の積層体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等として好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
なお、実施例および比較例において用いたジエステル可塑剤は、以下のようにして調製した。
【0082】
<製造例1>1,6−ヘキサンジオールジエステル可塑剤の製造
0.59質量部の1,6−ヘキサンジオール、2.97質量部のオレイン酸、全仕込み量に対して5質量%のキシレン及び全仕込み量に対して0.2質量%のパラトルエンスルホン酸を、攪拌機、温度計、窒素ガス吹き込み管及び冷却管付き水分分留受器を備える四つ口フラスコに加え、200℃にて理論生成水量の水が水分分留受器に溜まるまでエステル化反応を行った。
反応終了後、過剰の酸及びキシレンを蒸留して除去し、エステル化粗生成物を得た。次いで、得られたエステル化粗生成物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、中性になるまで水洗した。
その後、水洗されたエステル化粗生成物を活性炭で処理し、濾過により活性炭を除去し、2.59質量部の1,6−ヘキサンジオールジエステル可塑剤を得た。得られた1,6−ヘキサンジオールジエステル可塑剤の酸価は0.4mgKOH/g、けん化価は177mgKOH/gであった。
【0083】
<製造例2>1,9−ノナンジオールジエステル可塑剤の製造
0.80質量部の1,9−ノナンジオール、2.97質量部のオレイン酸、全仕込み量に対して5質量%のキシレン及び全仕込み量に対して0.2質量%のパラトルエンスルホン酸を、攪拌機、温度計、窒素ガス吹き込み管及び冷却管付き水分分留受器を備える四つ口フラスコに加え、200℃にて理論生成水量の水が水分分留受器に溜まるまでエステル化反応を行った。
反応終了後、過剰の酸及びキシレンを蒸留して除去し、エステル化粗生成物を得た。次いで、得られたエステル化粗生成物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、中性になるまで水洗した。
その後、水洗されたエステル化粗生成物を活性炭で処理し、濾過により活性炭を除去し、2.76質量部の1,9−ノナンジオールジエステル可塑剤を得た。得られた1,9−ノナンジオールジエステル可塑剤の酸価は0.4mgKOH/g、けん化価は168mgKOH/gであった。
【0084】
(実施例1〜9、比較例1及び2)
表1及び表2に示す配合成分のうち、可塑剤(トリメリット酸エステル可塑剤、製造例1で得られた1,6−ヘキサンジオールジエステル可塑剤、製造例2で得られた1,9−ノナンジオールジエステル可塑剤及びエポキシ化大豆油)とダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で可塑剤を添加し、ドライアップ(可塑剤がベース塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
そして、得られた塩化ビニル樹脂組成物を250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、塩化ビニル樹脂成形シートの厚みが1mmになるよう調整した時間(具体的には8〜18秒間)放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、200℃に設定したオーブンに静置し、60秒経過した時点で金型を冷却水により冷却し、金型温度が40℃まで冷却された時点で145mm×175mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。そして、得られた塩化ビニル樹脂成形シートについて以下の方法で各種物性を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0085】
各種物性の測定方法は次の通りである。
(1)初期引張試験
上記塩化ビニル樹脂成形シートをJIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、23℃と−35℃における引張応力及び引張伸びを測定した。塩化ビニル樹脂成形シートは、−35℃での引張伸びが高いほど、低温での柔軟性が優れている。
(2)粘弾性試験
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを10mm×40mmの寸法で打ち抜き、JIS K7244−4に準拠して、周波数10Hz、測定温度範囲−90℃〜+100℃、昇温速度2℃/分で損失弾性率のピークトップ温度を測定した。塩化ビニル樹脂成形シートは、当該ピークトップ温度が低いほど、低温での柔軟性が優れている。
(3)低温脆化試験
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを6mm×38mmの寸法で打ち抜き、JIS K7216に準拠して、試験温度間隔2℃で脆化温度を求めた。塩化ビニル樹脂成形シートは、脆化温度が低いほど、低温での柔軟性が優れている。
(4)フォギング性試験
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを直径80mmの円形に打ち抜き、ISO6452規格に準拠した装置を用いて、100℃に加熱した試験ビンの中に入れ、その上部開口部に20℃に冷却したガラス板をセットし、3時間のフォギング試験を実施した。試験終了後、23℃、湿度50%下で1時間静置したガラス板について、光沢度試験機(東京電色社製GP−60)を用いて、60°反射率を測定した。また、試験前のガラス板の60°反射率を予め測定しておき、下記式によりガラス板の光沢度保持率(%)を求めた。塩化ビニル樹脂成形シートは、光沢度保持率が高いほど、フォギング性に優れている。
光沢度保持率(%)=100×[(試験後のガラス板の光沢度)/(試験前のガラス板の光沢度)]
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
1)新第一塩ビ(株)製、ZEST 2500Z(塩化ビニル系樹脂粒子、平均重合度2500、平均粒径130μm)
2)花王(株)製、トリメックスN−08
3)(株)ADEKA製、アデカサイザーO−130S
4)協和化学工業(株)製、アルカマイザー5
5)水澤化学工業(株)製、MIZUKALIZER DS
6)昭和電工(株)製、カレンズ DK−1
7)堺化学工業(株)製、SAKAI SZ2000
8)新第一塩ビ(株)製、ZEST PQLTX(塩化ビニル系樹脂微粒子、平均重合度800、平均粒径2μm)
9)大日精化工業(株)製、DA PX−1720ブラック(A)
10)新第一塩ビ(株)製、ZEST 2000Z(塩化ビニル系樹脂粒子、平均重合度2000、平均粒径124μm)
【0089】
実施例1〜9の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体(塩化ビニル樹脂成形シート)は、損失弾性率のピークトップ温度及び脆化温度が低く、低温での柔軟性に優れていた。また、これらの成形体は、常温及び低温での初期引張特性も優れていた。
【0090】
ジエステル可塑剤を含まない比較例1の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体は、初期引張特性は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体の初期引張特性と同等であった。しかし、比較例1の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体は、脆化温度が高く、低温での柔軟性は劣っていた。
【0091】
同じくジエステル可塑剤を含まない比較例2の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体は、−35℃で測定された初期引張応力が大きく、また、損失弾性率のピークトップ温度及び脆化温度が高く、低温での柔軟性はかなり劣っていた。