特許第6471845号(P6471845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471845クラスターイオンビームを用いた常温接合方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471845
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】クラスターイオンビームを用いた常温接合方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-101586(P2014-101586)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-220287(P2015-220287A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503177074
【氏名又は名称】須賀 唯知
(73)【特許権者】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】須賀 唯知
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
(72)【発明者】
【氏名】潟岡 泉
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−342855(JP,A)
【文献】 特開2008−294098(JP,A)
【文献】 特開2011−246761(JP,A)
【文献】 特開平10−092702(JP,A)
【文献】 特開2013−098186(JP,A)
【文献】 特開2011−181631(JP,A)
【文献】 特開平08−293483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を接合する方法であって、
少なくとも一方の基板の接合面をガスクラスターイオンビームで照射することと、
前記少なくとも一方の基板の接合面を単原子ビームで照射することと、
前記一対の基板の接合面を互いに接触させることと、
を含む基板接合方法。
【請求項2】
前記単原子ビーム照射の後に、前記ガスクラスターイオンビームの照射を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の基板接合方法。
【請求項3】
前記ガスクラスターイオンビームの照射の後に、前記単原子ビームの照射を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の基板接合方法。
【請求項4】
前記少なくとも一方の基板の接合面を単原子ビームで照射することと、
その後、前記少なくとも一方の基板の接合面をガスクラスターイオンビームで照射することと、
その後、前記少なくとも一方の基板の接合面を単原子ビームで照射することと、
を含む、請求項1に記載の基板接合方法。
【請求項5】
前記少なくとも一方の基板の接合面を化学反応性ガスで照射すること
を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の基板接合方法。
【請求項6】
前記化学反応性ガスはラジカルを含む、請求項5に記載の基板接合方法。
【請求項7】
一対の基板を接合する装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバに接続され、前記真空チャンバ内に載置された基板に向かってガスクラスターイオンビームを放射するように構成されたガスクラスターイオンビーム源と、
前記真空チャンバに接続され、前記真空チャンバ内に載置された基板に向かって単原子イオンビームを放射するように構成された単原子イオンビーム源と、
前記真空チャンバに配置され、一対の基板の表面を支持し、互いに接触させるように構成された基板支持体と、
を備える、基板接合装置。
【請求項8】
前記真空チャンバに接続され、前記真空チャンバ内に載置された基板に向かって化学反応性ガスを放射するように構成された化学反応性ガス源
を更に備える、請求項7に記載の基板接合装置。
【請求項9】
互いに接触した一対の基板に対して圧力を印加する加圧機構
を更に備える、請求項7又は8に記載の基板接合装置。
【請求項10】
前記ガスクラスターイオンビーム源と、前記単原子イオンビーム源と、前記化学反応性ガス源に対して、前記基板の相対的姿勢及び位置を制御するように構成された基板支持機構
を更に備える、請求項に記載の基板接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、基板接合方法及び基板接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板の接合において、接合前に基板の接合面をイオン又は原子ビームで照射して清浄化又は活性化し、これらを接触させて接合界面を形成する接合技術が開発されてきている。この技術は、これに限定されないが、常温接合(SAB)などと呼ばれる場合がある。当該接合技術により、比較的低温すなわち低サーマルバジェット(低熱履歴)で良好な特性を有する接合界面することが可能になっている。(特許文献1)
【0003】
一方で、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いて、基板表面を効率よく低損傷でエッチング又は平坦化する技術の開発がなされている。(特許文献2、非特許文献1)
【0004】
【特許文献1】特開平10―092702号公報
【特許文献2】特許第3731917号
【0005】
【非特許文献1】松尾、その他「クラスターイオンビーム技術の最近の進展」、表面化学Vol.31, No. 11, pp. 564-271, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、常温接合に代表される接合方法(常温接合等)では、イオン又は原子ビームによる長時間の照射により、基板の接合面に損傷が導入され、当該損傷が形成された接合界面に残り、当該損傷を除去するためには高温処理を行う必要があった。
【0007】
また、本発明者の知る限り、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)の表面処理手法を常温接合等の表面処理に適用した例はなく、適用しようとする試みが行われたことも報告されていない。
【0008】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、常温接合法において、表面処理方法としてガスクラスターイオンビーム(GCIB)照射を適用して、表面損傷が少ない常温接合方法を提供することである。
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、少なくとも一方の基板の接合面をガスクラスターイオンビームで照射することと、一対の基板の接合面を互いに接触させることと、を含む基板接合方法である。本願発明によれば、活性且つ平坦な接合面を形成し、これらの接合面を接触させて基板を接合し、良好な接合界面を形成することができる。
【0010】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、少なくとも一方の基板の接合面を単原子ビームで照射すること、を更に含むようにしてもよい。ガスクラスターイオンビーム照射と単原子ビーム照射とを行うことで、より効率よく、より清浄、活性且つ平坦な接合面を形成することができる。
【0011】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、単原子イオンビーム照射の後に、ガスクラスターイオンビームの照射を行うこと、を特徴としてもよい。これにより、単原子イオンビーム照射で効率よく表面層を除去した後、ガスクラスターイオンビーム照射で接合面を平坦化するので、より平坦で活性な接合面を形成することができる。
【0012】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、ガスクラスターイオンビームの照射の後に、単原子イオンビームの照射を行うこと、を特徴としてもよい。これにより、ガスクラスターイオンビーム照射で平坦な接合面を形成した後に、吸着層などを単原子イオンビームの短時間の照射で接合面に損傷を与えることなく短時間で効率よく除去することができる。
【0013】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、少なくとも一方の基板の接合面を単原子イオンビームで照射することと、その後、少なくとも一方の基板の接合面をガスクラスターイオンビームで照射することと、その後、前記少なくとも一方の基板の接合面を単原子イオンビームで照射することと、を含むようにしてもよい。
【0014】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、少なくとも一方の基板の接合面を、化学反応性ガスで照射することを更に含むようにしてもよい。化学反応性ガス照射を行うことで、よりダメージの少ない接合面を形成することができる。
【0015】
本願発明に係る一対の基板を接合する方法は、化学反応性ガスがラジカルを含む、ようにしてもよい。
【0016】
上記の技術的課題を解決するために、本願発明に係る基板接合装置は、真空チャンバと、真空チャンバに接続され、真空チャンバ内に載置された基板に向かってガスクラスターイオンビームを放射するように構成されたガスクラスターイオンビーム源と、真空チャンバ内に配置され、一対の基板の表面を互いに接触させるように構成された基板支持手段と、を備える、基板接合装置である。
【0017】
本願発明に係る基板接合装置は、真空チャンバに接続され、真空チャンバ内に載置された基板に向かって単原子イオンビームを放射するように構成された単原子イオンビーム源を、更に備えていてもよい。
【0018】
本願発明に係る基板接合装置は、真空チャンバに接続され、真空チャンバ内に載置された基板に向かって化学反応性ガスを放射するように構成された化学反応性ガス源を更に備えていてもよい。
【0019】
本願発明に係る基板接合装置は、互いに接触した一対の基板に対して圧力を印加する加圧機構を更に備えていてもよい。
【0020】
本願発明に係る基板接合装置は、ガスクラスターイオンビーム源と、単原子イオンビーム源と、化学反応性ガス源に対して、基板の相対的姿勢及び位置を制御するように構成された基板支持機構を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本願発明によれば、活性且つ平坦な接合面を形成し、これらの接合面を接触させて基板を接合し、良好な接合界面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の基板接合方法を実施するための基板接合装置の一例を示す概略正面図である。
図2図1に示す基板接合装置のA−A断面図である。
図3】本発明の基板接合装置の基板支持搬送機構の概略断面図である。
図4】本発明の基板接合装置の基板支持搬送機構の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施形態を説明する。
【0024】
<1 基板接合装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板接合装置(基板接合システム)100の構成を示す概略図である。基板接合装置(基板接合システム)100は、接合面を有する一対の基板に対して表面処理を行い、当該一対の基板を接合するための装置である。
【0025】
基板接合装置100は、基板搬入チャンバ(ロードロックチャンバ)200と、処理チャンバ300と、接合チャンバ400と、基板支持搬送機構500と、これらに接続される機構又は部品とを有して構成される。基板搬入チャンバ(ロードロックチャンバ)200は、基板1を外部から基板接合装置100内に搬入し、基板接合装置100から外部へ搬出するために用いられる。処理チャンバ300は、ロードロックチャンバ200と真空弁210を介して接続され、基板1に対して各種の表面処理を行うために用いられる。接合チャンバ400は、一対の基板1,1を対向させて接触させて接合するために用いられる。
【0026】
ロードロックチャンバ200と、処理チャンバ300と、接合チャンバ400とは、ほぼ一列(Y方向)に整列されて順次接続され、接合チャンバ400の+Y方向端部に基板支持搬送機構500が接続されている。この基板支持搬送機構500は、基板1,1をY方向にロードロックチャンバ200から処理チャンバ300を通って接合チャンバ400までの搬送を行うとともに、処理チャンバ300では、所定の基板処理に対して基板1,1の位置を制御し又は位置決めすることができるように構成されている。以下、上記の各構成についてより詳細に説明する。
【0027】
ロードロックチャンバ200は、大気に対して開口する搬入口(搬入ポート)220と、ロードロック真空ポンプ230と、大気を導入するための大気弁240とを有して構成されている。基板1のロードロックチャンバ200への導入は、以下のように行われる。まず、真空弁210が閉状態において、大気弁240を開けて外気を導入してロードロックチャンバ200内の圧力をほぼ大気圧と同じにし、その後搬入口220を開ける。次に、外部の基板搬入機構(図示せず)により、搬入口220から基板1を導入し、ロードロックチャンバ200に保持された基板支持体510上に載置し又は受け渡す。その後、再び搬入口220を閉じ、真空ポンプ230によりロードロックチャンバ200内の雰囲気を所定の真空度まで真空引きする。
【0028】
処理チャンバ300について、図2も併せて参照しつつ説明する。図2は、図1の処理チャンバ300のA−A断面図であり、図1には省略されている各表面処理手段の構成を表している。
【0029】
図2に示すように、処理チャンバ300には、ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源350と、単原子ビーム源(原子又はイオンビーム源)310と、化学反応性ガス源としてラジカルプラズマ源320と、処理チャンバ真空ポンプ330とが配置されている。
【0030】
基板1は、基板支持体510に支持された状態で、処理チャンバ300内に位置決めされる。基板支持機構500は、基板1を、Y軸周りに回転しかつ基板1の面内方向に移動させることができる(後述参照)。GCIB源350、原子ビーム源310、ラジカルプラズマ源320は、処理チャンバ300のY軸周りのXY面上、ほぼ円周上に配置され、それぞれ、処理チャンバ300内で位置決めされた基板1の表面に対して、放射ビーム又は放射プラズマを照射できるように配置されている。
【0031】
基板支持機構500は、基板を支持する基板支持体510を着脱可能に有している。基板支持体510は、加熱ヒータを有し、これにより支持されている基板1,1を加熱し、又はその温度を制御することができる。加熱等は、処理チャンバ300内での各処理の間、又は接合チャンバ400内での基板1,1の接触接合の間に行われることで、表面処理の条件を適切に維持し、又は良好な接合界面を形成することが可能になる。
【0032】
図3は、基板支持機構500のYZ面内でのA−A概略断面図を示し、図4は、基板支持機構500の概略斜視図を示している。これらの図面を参照して、基板支持機構500について説明する。基板支持機構500は、接合チャンバ400又は基板接合装置100の外側から内側に貫通して配置されているので、真空封止機構を有しているが、図3及び図4には図示していない。
【0033】
図3に示すように、基板支持機構500は、基板支持体510と、基板支持体に接続された、回転機構520及び水平移動機構530と、外筒540とを有して構成されている。
【0034】
回転移動機構520は、外筒540の中に同軸方向に移動又は回転可能な中筒521と、当該中筒521の一端に取り付けられ、外筒540の内側に位置する第1内側マグネット522と、これに対応して外筒540の外側に位置する第1外側マグネット523とを有し、中筒521のY方向他端は基板支持体510を支持している。したがって、第1外側マグネット523を外筒540周りに回転させることで、基板支持体510及びこれに支持された基板1のY軸周りの回転位置を決め又は制御することができる。
【0035】
水平移動機構530は、中筒521の中に同軸方向に移動又は回転可能な中心軸531と、当該中心軸531の一端は中筒521から延長して、当該延長された中心軸531の一端に取り付けられた第2内側マグネット532と、これに対応して外筒540の外側に位置する第2外側マグネット533とを有している。中心軸531のY方向他端には、ラックアンドピニオン534,535のピニオン534が固定され、基板支持体510の裏側(基板支持面と反対側)には、ピニオン534と嵌合するラック535が固定されている。したがって、第2外側マグネット533を、第1外側マグネット523に対して回転させることで、基板支持体510及びこれに支持された基板1を、Y方向とY方向に垂直方向とで張られる基板支持体510の面方向に移動させ又はその位置を制御することができる。これによって、一つの表面処理をしている間、例えばGCIB源350による基板1,1に対するガスクラスターイオンビーム(GCIB)照射の間、ビーム方向351に対して所定の角度を保ったまま、基板支持体510をY方向とY方向に垂直な方向との移動を組み合わせて、GCIBを基板1,1の表面に対して均一に照射することができる。
【0036】
さらに、回転機構520の第1外側マグネット523と水平移動機構530の第2外側マグネット532を、同時に又は一緒にY方向に移動させることで、基板支持体510及びこれに支持された基板1を、Y方向に移動させることができる。この動作により、基板支持体510及びこれに支持された基板1を、ロードロックチャンバ200から処理チャンバ300を通って接合チャンバ400まで移動させ又は搬送することができる。
【0037】
基板支持体510は、基板支持機構500の他の部分から切り離すこともできる。これにより、たとえば、基板支持体510をロードロックチャンバ200に搬送し載置した後、その他の基板支持機構500は処理チャンバ300又は接合チャンバ400まで戻ることができる。したがって、ロードロックチャンバ200と処理チャンバ300との間の真空弁210を閉じて、処理チャンバ300と接合チャンバ400とを真空ポンプ330又は430の動作によって真空に維持したまま、ロードロックチャンバ200に大気を導入して、基板1,1の搬入又は搬出を行うことができる。
【0038】
基板支持体510は、そのほぼ中央部で、一対の基板1,1各々を支持し、枢動可能に連結されたサブ基板支持体510a,510bを有して構成されている。一方の基板支持体510bには、これを510aに対して枢動させるための機構(レバー511)が固定されており、接合チャンバ400には、その外側から内側に移動可能に配置された基板支持体回転機構410が設けられている。したがって、接合チャンバ400内で、基板支持体回転機構410を動かしレバー511を−Y方向に押すことで、回転軸を中心にサブ基板支持体510bを旋回運動させて、基板1,1を対向させて位置決めされ、又は更に接合面を互いに接触させることができる。
【0039】
接合チャンバ400は、その内部に上記のように対向配置され、又は更に接合面を互いに接触させられた基板1,1に対して、加圧するための加圧機構420を有している。加圧機構420は、一対の加圧ヘッド421a,421bを有し、各加圧ヘッド421a,421bが各基板1,1の裏側又はサブ基板支持体510a,510bの裏側に接触することができるようになっている。加圧機構420は、さらに上下移動機構、圧力センサ及び圧力制御機構(いずれも図示せず)を有し、これらにより、加圧ヘッド421a,421bの基板1,1又はサブ基板支持体510a,510bへの接近、接触又は離間、基板1,1の接触面への所望の圧力の印可を行うことができる。
【0040】
加圧ヘッド421a,421bには、それぞれ接合ヒータ422a,422bが内蔵され、これらにより基板1,1を加熱し又は適切な温度に維持して、接合を促進させ又は制御して、良好な接合界面を形成することができる。
【0041】
接合チャンバ400には、接合チャンバ真空ポンプ430が設けられ、これにより接合チャンバ400内の雰囲気を接合に適切な雰囲気に維持することができる。接合チャンバ真空ポンプ430は、基板1,1の接合面接触時の真空度を10−5Pa以上にする性能を有することが好ましい。これにより、処理チャンバ300内で表面処理された基板1,1の接合面の特性を、基板接触時まで良好に保ち、したがって、良好な接合界面を形成することができる。
【0042】
<ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源>
図2に示すガスイオンクラスタービーム(GCIB)源350は、加速により運動エネルギーが与えられた原子又は分子が複数集まった集合体であるガスクラスターイオンビーム351を放射することができる。GCIB源350は、噴射ノズルとイオン化機構と加速機構とを有して構成されている(いずれも図示せず)。GCIB源350は、ガス原子又は分子を、数気圧の比較的高圧で噴射ノズルの小孔から噴出させ、断熱膨張によるか冷却現象によって、中性のガスクラスターを生成する。GCIB源350は、イオン化機構(アイオナイザ又はイオナイザとも呼ぶ。)により、生成した中性のガスクラスターに電子を衝撃させてイオン化させ、ガスイオンクラスターを生成する。GCIB源350は、生成されたガスイオンクラスターを、加速機構による所定の静電場下で加速して、これに運動エネルギーを与え、ガスイオンクラスタービームを放射する。
【0043】
ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源350は、更に、磁場に依るモノマー除去、或いはクラスターサイズを選別する機構、又はビーム径の拡大縮小或いは偏向させる機構を有して構成されてもよい。
【0044】
GCIB源350により生成されるクラスターのサイズは、クラスターあたり数十から数万原子又は分子の範囲であるが、これに限定されない。
【0045】
ガスイオンクラスターがターゲットと衝突すると、多体衝突が繰り返され、非線形照射効果が生じると考えられている。また、単原子に比べて非常に大きい原子数に依り構成されるクラスターに対して運動エネルギーを与えるので、クラスターを構成する各原子に等価的に与えられるエネルギーが非常に小さくなる。したがって、GCIB源350は、低エネルギー大電流のイオンビームを生成することができる。このガスイオンクラスタービームでターゲット表面を照射することで、低ダメージで、表面活性化や表面平坦化などの表面処理を行うことができる。
【0046】
<単原子ビーム源>
図2に示す原子又はイオンビーム源(以降、「単原子ビーム源」と呼ぶ。)310は、加速により運動エネルギーを与えられた単原子又は単分子若しくはそれらのイオン、又は中性ガスを放射することができる。単原子ビーム源310が放射する単原子ビーム311は、イオン、中性原子又はラジカル種を含んでも、若しくはこれらの混合粒子を含んでもよい。すなわち、単原子ビーム源310は、イオンビーム源であっても中性原子ビーム源又は高速原子ビーム源であってもよい。中性原子を放出するためには、例えばイオンを所定の運動エネルギーを与えて加速させた後に、電子雲などを通過させることで中性化するような構成を使用してもよい。このような加速されたイオンの中性化は、与えられた所定の運動エネルギーをほぼ失うことなく行われうる。所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する単原子ビーム源310として、冷陰極型、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいはクラスターイオン源などが採用されうる。
【0047】
単原子ビーム源310を使用して1eVから2keVの運動エネルギーを有する粒子(エネルギー粒子)を放射する場合には、真空ポンプ330は、処理チャンバ300内の1×10−5Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。これにより、単原子ビーム源310による表面処理中の雰囲気に存在する不純物の量を低減させ、表面処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、単原子ビーム源310は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、比較的高い真空度では、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去を行い、表面を活性化することができると考えられる。
【0048】
<化学反応性ガス源>
図2に示す化学反応性ガス源であるラジカルプラズマ源320は、プラズマ生成チャンバ321と、プラズマ生成チャンバ321内にガスを導入するガス導入管322と、プラズマ生成チャンバ321内に高周波の電磁場を生成するマイクロ波を形成するマイクロ波源323と、マイクロ波源323よって生成されたラジカル又はプラズマを処理チャンバ300内に導入するための多孔板324とを有して構成されている。
【0049】
上記実施形態の基板接合装置100は、単原子ビーム源310、化学反応性ガス源320、GCIB源350などが処理チャンバ300又は真空接合装置100に固定され、基板1,1が移動可能となるように構成されているが、これに限られない。単原子ビーム源310、化学反応性ガス源320、GCIB源350と、基板1,1とは、互いに相対的に移動し、所望の表面処理が行えるように構成されうる。たとえば、基板接合装置100は、基板1,1が基板接合装置100に対して固定され、単原子ビーム源310、化学反応性ガス源320、GCIB源350などが基板1,1又は基板接合装置100に対して移動可能に構成されてもよい。
【0050】
<2 表面処理>
<第1実施形態>
処理チャンバ300内で基板1,1に対して行う表面処理として、ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源350を用いて、基板1,1表面をガスイオンクラスタービームで照射することができる。ガスイオンクラスタービーム照射は、真空ポンプ330,430の作動により、真空雰囲気中で行われる。これにより、低ダメージで平坦かつ活性な接合面を形成することができ、この接合面の状態をほぼ保ったまま、基板1,1を接合チャンバ400に搬送して、ここで基板1,1の接合面同士を接触させて、良好な接合面を形成させることができる。
【0051】
<第2実施形態>
本実施形態によれば、処理チャンバ300内の表面処理として、ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源350によるガスイオンクラスタービーム351の照射と、単原子ビーム源310による単原子ビーム311の照射とを組み合わせて行う。ガスイオンクラスタービーム351の照射と単原子ビーム311の照射とは、真空雰囲気中で行われ、2つの照射プロセスの間も真空雰囲気は破られない。これにより、ガスイオンクラスタービームの利点と単原子ビームの利点との両方を生かして良好な接合面を準備することができる。
【0052】
<実施例1>
単原子ビーム照射の次にガスイオンクラスタービーム照射を行ってもよい。
30nm程の酸化膜を表面に有するシリコン基板を、2kV,100mAで600秒間、アルゴン(Ar)の高速原子ビームで照射することで、表面酸化膜を除去することができ、その後のシリコン基板の表面粗さはRa3nm程度になる。このシリコン基板表面を、5kVで1×1014イオン/cm、COのガスイオンクラスタービームで照射することで、シリコン基板の表面粗さをRa0.2nm程度にすることができる。このような表面処理により、活性且つ平坦な基板表面を準備することができる。
【0053】
本実施例では、アルゴン(Ar)のガスイオンクラスターを用いたが、これに限られない。例えば、窒素分子(N)、塩素分子(Cl)、SFなどを用いてもよい。以下の実施形態及び実施例でも、同様である。
【0054】
<実施例2>
上記と同様の、30nm程の酸化膜を表面に有するシリコン基板を、2kV,100mAで300秒間、アルゴン(Ar)の高速原子ビームで照射することで、表面酸化膜を除去することができ、その後のシリコン基板の表面粗さはRa1nm程度になるが、厚さ約10nm程の表面層が形成される場合がある。このシリコン基板表面を、5kVで1×1014イオン/cm、アルゴン(Ar)のガスイオンクラスタービームで照射することで、シリコン基板の表面粗さをRa0.2nm程度で、表面のアモルファス層の厚さを0.3nm程に低下させることができる。
【0055】
<実施例3>
ガスイオンクラスタービーム照射の次に単原子ビーム照射を行ってもよい。
上記と同様のシリコン基板上の30nm程の酸化膜をガスイオンクラスタービーム照射で除去するためには、ガスイオンクラスタービームを、5kVで1×1016イオン/cm、アルゴン(Ar)でスキャン照射して、14分程度掛かる。したがって、ガスイオンクラスタービームのスキャン照射を14分程度行っている間に、照射されていない部位の表面に、処理チャンバ300内に浮遊する不純物が付着し、当該表面が酸化又は汚染し、吸着表面層が形成される場合がある。これらの吸着表面層は、接合後に接合界面に残留し、当該接合界面の特性の悪化原因となりうる。この吸着表面層を除去するために、ガスイオンクラスタービーム照射の後に単原子ビーム照射を行うことが有用である。ガスイオンクラスタービーム照射の後の単原子ビーム照射は、例えば、0.5kV,100mAで10秒間、アルゴン(Ar)の高速原子ビームを照射することで行うことができる。
【0056】
<第3実施形態>
ガスイオンクラスタービーム照射と、化学反応性ガスによる表面処理とを組み合わせて行ってもよい。
<実施例4>
上記と同様の、30nm程の酸化膜を表面に有するシリコン基板に対して、基板温度摂氏120度で、マイクロラジカル源320を27MHz,250W,60s,100sccmで作動して、化学反応性ガスとして水素ラジカルを照射してもよい。このように表面の酸化膜を除去した後で、このシリコン基板表面を、0.5kVで5×1015イオン/cm、ガスイオンクラスタービームで照射してもよい。このように、水素ラジカル照射により、酸化物を除去し、低ダメージ又は実質的に無ダメージのシリコン基板表面を形成することができる。この極めて低ダメージのシリコン基板表面に対して、ガスイオンクラスタービームを適用して、活性、平坦かつ低ダメージの基板接合面を形成することができる。
【0057】
ガスイオンクラスタービーム照射の後に、更に高速原子ビーム照射を行ってもよい。これにより、ガスイオンクラスタービーム照射間に付着などした接合面上の接合に不要な物質を除去することができる。
【0058】
以上、本願発明の幾つかの実施形態及び変形例について説明したが、これらの実施形態及び変形例は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態等を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態等は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。また、各実施形態等で説明した態様は、これらの実施形態等形間で矛盾がない限り、他の実施形態等に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100 基板接合装置(基板接合システム)
200 ロードロックチャンバ
300 処理チャンバ
310 単原子ビーム源
320 ラジカルプラズマ源(化学反応ガス源)
350 ガスイオンクラスタービーム(GCIB)源
400 接合チャンバ
420 加圧機構
500 基板支持搬送機構
510 基板支持体
図1
図2
図3
図4