【実施例】
【0029】
下記合成例1乃至合成例5及び比較合成例1に示す重量平均分子量及び多分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果に基づく。測定には、東ソー(株)製GPCシステムを用い、測定条件は下記のとおりである。
GPCカラム:TSKgel SuperMultipore〔登録商標〕Hz−N(東ソー(株))
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株))
【0030】
(合成例1)
窒素下、100mL三口フラスコに2,7−ジヒドロキシナフタレン(8.00g、0.0499mol、東京化成工業(株)製)、9−フルオレノン(9.00g、0.0499mol、東京化成工業(株)製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(2.5803g、0.0150mol、東京化成工業(株)製)及び助触媒として3−メルカプトプロピオン酸(0.4776g、0.0045mol、東京化成工業(株)製)を加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(19.58g、関東化学(株)製)を仕込み、撹拌し、120℃まで昇温して各成分を溶解し、重合を開始した。96時間後得られたポリマー液を室温まで放冷し、メタノール(500g、関東化学(株)製)中に加え、再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して集め、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とする下記式(2−16)で表される構造単位を有するポリマー(以下、本明細書では2,7−DHN−Flと略称する。)16.32gを得た。2,7−DHN−Flの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1400、多分散度Mw/Mnは1.95であった。
【化8】
【0031】
(合成例2)
窒素下、100mL三口フラスコに2,7−ジヒドロキシナフタレン(8.00g、0.0499mol、東京化成工業(株)製)、ベンゾフェノン(9.10g、0.0499mol、東京化成工業(株)製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(2.5803g、0.0150mol、東京化成工業(株)製)及び助触媒として3−メルカプトプロピオン酸(0.4776g、0.0045mol、東京化成工業(株)製)を加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(19.68g、関東化学(株)製)を仕込み、撹拌し、120℃まで昇温して各成分を溶解し、重合を開始した。96時間後得られたポリマー液を室温まで放冷し、メタノール(500g、関東化学(株)製)中に加え再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して集め、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とする下記式(1−16)で表される構造単位を有するポリマー(以下、本明細書では2,7−DHN−BzPnと略称する。)11.97gを得た。2,7−DHN−BzPnの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1800、多分散度Mw/Mnは1.89であった。
【化9】
【0032】
(合成例3)
窒素下、100mL三口フラスコに2,7−ジヒドロキシナフタレン(6.50g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、4−ヒドロキシベンゾフェノン(8.04g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、メタンスルホン酸(1.1701g、0.0122mol、東京化成工業(株)製)及び助触媒として3−メルカプトプロピオン酸(0.3927g、0.0037mol、東京化成工業(株)製)を加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.71g、関東化学(株)製)を仕込み、撹拌し、120℃まで昇温して各成分を溶解し、重合を開始した。96時間後得られたポリマー液を室温まで放冷し、メタノール(500g、関東化学(株)製)中に加え再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して集め、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とする下記式(1−19)で表される構造単位を有するポリマー(以下、本明細書では2,7−DHN−4−HBzPnと略称する。)5.82gを得た。2,7−DHN−4−HBzPnの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2900、多分散度Mw/Mnは1.87であった。
【化10】
【0033】
(合成例4)
窒素下、100mL三口フラスコに2,7−ジヒドロキシナフタレン(6.50g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、3−メチルベンゾフェノン(7.96g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、メタンスルホン酸(1.1701g、0.0122mol、東京化成工業(株)製)及び助触媒として3−メルカプトプロピオン酸(0.3927g、0.0037mol、東京化成工業(株)製)を加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.71g、関東化学(株)製)を仕込み、撹拌し、120℃まで昇温して各成分を溶解し、重合を開始した。96時間後得られたポリマー液を室温まで放冷し、メタノール(500g、関東化学(株)製)中に加え再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して集め、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とする下記式(1−17)で表される構造単位を有するポリマー(以下、本明細書では2,7−DHN−4−MBzPnと略称する。)7.23gを得た。2,7−DHN−4−MBzPnの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4600、多分散度Mw/Mnは2.40であった。
【化11】
【0034】
(合成例5)
窒素下、100mL三口フラスコに2,7−ジヒドロキシナフタレン(6.50g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、2−メチルベンゾフェノン(7.96g、0.0406mol、東京化成工業(株)製)、メタンスルホン酸(1.1701g、0.0122mol、東京化成工業(株)製)及び助触媒として3−メルカプトプロピオン酸(0.3927g、0.0037mol、東京化成工業(株)製)を加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(15.71g、関東化学(株)製)を仕込み、撹拌し、120℃まで昇温して各成分を溶解し、重合を開始した。96時間後得られたポリマー液を室温まで放冷し、メタノール(500g、関東化学(株)製)中に加え再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して集め、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とする下記式(1−18)で表される構造単位を有するポリマー(以下、本明細書では2,7−DHN−2−MBzPnと略称する。)4.34gを得た。2,7−DHN−2−MBzPnの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2200、多分散度Mw/Mnは1.68であった。
【化12】
【0035】
(比較合成例1)
100mlナスフラスコにフロログルシノール(東京化成工業(株)製)5.51g、ベンズアルデヒド(東京化成工業(株)製)4.27g、1,4−ジオキサン(関東化学(株)製)10.09g、p−トルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業(株)製)0.76gを入れた。その後これらを110℃まで加熱し、約2時間還流撹拌した。反応終了後、反応物をテトラヒドロフラン(関東化学製)7.54gで希釈し、沈殿物を濾過により除去した。回収した濾液をメタノール/水混合溶液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過し、ろ物を85℃で一晩減圧乾燥し、下記式で表される構造単位を有する、茶褐色粉末のフロログルシノール樹脂を7.25g得た。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,600、多分散度Mw/Mnは1.34であった。
【化13】
【0036】
(実施例1)
合成例1で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0037】
(実施例2)
合成例2で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0038】
(実施例3)
合成例3で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0039】
(実施例4)
合成例4で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0040】
(実施例5)
合成例5で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0041】
(比較例1)
比較合成例1で得たポリマー1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0042】
(比較例2)
市販のクレゾールノボラック樹脂(クレゾールとホルムアルデヒドを用いて得られたノボラック樹脂)1gに、界面活性剤としてメガファックR−30(DIC(株)製)0.003gを混合し、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4gに溶解して溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例で使用したクレゾールノボラック樹脂の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4000、多分散度Mw/Mnは2.1であった。
【0043】
(フォトレジスト溶剤への溶出試験)
実施例1乃至実施例5、比較例1及び比較例2で調製したレジスト下層膜形成組成物を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。それらをホットプレート上で350℃の温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.25μm)を形成した。このレジスト下層膜をレジストに使用する溶剤(乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びシクロヘキサノン)に浸漬し、これらの溶剤に不溶であることを確認した。
【0044】
(ドライエッチング速度の測定)
ドライエッチング速度の測定に用いたエッチャー及びエッチングガスは以下のものである。
エッチャー:RIE−10NR(サムコ(株)製)
エッチングガス:CF
4
実施例1乃至実施例5、比較例1及び比較例2で調製したレジスト下層膜形成組成物を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。それらをホットプレート上で350℃の温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.25μm)を形成した。エッチングガスとしてCF
4ガスを使用して、これらのレジスト下層膜のドライエッチング速度を測定した。また、フェノールノボラック樹脂(市販品、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2000、多分散度Mw/Mnは2.5)の溶液を、スピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布し、ホットプレート上で205℃1分間ベークしてフェノールノボラック樹脂膜(膜厚0.25μm)を形成した。エッチングガスとしてCF
4ガスを使用して、そのフェノールノボラック樹脂膜のドライエッチング速度を測定した。このフェノールノボラック樹脂膜のドライエッチング速度を1.00とした時の、実施例1乃至実施例5、比較例1及び比較例2で調製したレジスト下層膜形成組成物から形成したレジスト下層膜のドライエッチング速度を、ドライエッチング速度比として算出した結果を表1に示す。ドライエッチング速度比が小さいほど、CF
4ガスに対する耐エッチング性が高いことを示す。
ドライエッチング速度比=(レジスト下層膜のドライエッチング速度)/(フェノールノボラック樹脂膜のドライエッチング速度)
【0045】
【表1】
【0046】
(ホールウェハーへの埋め込み性試験)
実施例1乃至実施例5及び比較例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を、それぞれスピンコーターを用いてホールウェハー上に塗布した。それらをホットプレート上で350℃の温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(ホールパターン未形成部の膜厚0.25μm)を形成した。前記ホールウェハーとして、直径100nm、高さ400nmのホールパターンが形成されたウェハーを用いた。実施例1乃至実施例5で調製したレジスト下層膜形成組成物を、スピンコーターを用いてホールウェハー上に塗布し、350℃の温度で1分間ベークした後のホールウェハーの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、
図1乃至
図5に示す断面SEM写真が示すように、ホール内部まで十分にレジスト下層膜で充填されていた。一方、比較例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を、スピンコーターを用いてホールウェハー上に塗布し、350℃の温度で1分間ベークした後のホールウェハーの断面を、走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、
図6に示す断面SEM写真が示すように、ホール内部にボイド(空洞)が存在していた。