特許第6472479号(P6472479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472479
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】飼料又は食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/25 20160101AFI20190207BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20190207BHJP
   A23P 20/25 20160101ALI20190207BHJP
   A23K 40/30 20160101ALI20190207BHJP
【FI】
   A23P30/25
   A23L5/00 Z
   A23L5/00 F
   A23P20/25
   A23K40/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-78942(P2017-78942)
(22)【出願日】2017年4月12日
(62)【分割の表示】特願2013-540756(P2013-540756)の分割
【原出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-176179(P2017-176179A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-235325(P2011-235325)
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘美
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
(72)【発明者】
【氏名】高山 雄二
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/110326(WO,A1)
【文献】 特開2001−095503(JP,A)
【文献】 特許第3377964(JP,B2)
【文献】 特公平05−048101(JP,B2)
【文献】 特開平08−084565(JP,A)
【文献】 特公平06−046929(JP,B2)
【文献】 特開2005−204645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00 − 5/30
A23L 17/00
A23P 10/00 − 30/40
A23K 10/00 − 40/35
A22C 5/00 − 29/04
A21C 1/00 − 15/04
A23J 1/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりゲルを形成する蛋白質原料及び/又は澱粉原料に副原料を添加し撹拌混合した外層組成物原料、及び、外層組成物によって包みこまれる内層組成物を調製し、二重ノズル及び加熱機能を備えたエクストルーダを用いて、外層組成物原料に加熱処理を加えゲル化しながら、同時に内層組成物の表面を覆うように押出成形し、耐熱性のあるシャッター機構を用いて、連続的に押し出される柱状成形物を一定の長さに切断すると同時に、ゲル化した外層組成物によって切断面を包被させることを特徴とするゲル化した外層組成物で内層を包みこんだ飼料又は食品の製造方法。
【請求項2】
シャッター機構が、6枚以上の耐熱性のある素材で製造されているシャッター片を開閉自在に設けたシャッター装置である請求項1の飼料又は食品の製造方法。
【請求項3】
シャッター機構がクランクシャフト駆動である請求項1又は2の飼料又は食品の製造方法。
【請求項4】
加熱によりゲルを形成する蛋白質原料が魚肉すり身、魚肉落し身、オキアミ、グルテン、卵白、大豆蛋白質から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせたものであり、加熱によりゲルを形成する澱粉原料がタピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、豆澱粉、ワキシーコンスターチ、及びそれらの加工澱粉から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせたものである請求項1ないし3いずれかの飼料又は食品の製造方法。
【請求項5】
エクストルーダによる加熱温度が60〜110℃である請求項1ないし4いずれかの飼料又は食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層と内層を有する二重構造の飼料や食品の製造方法に関する。具体的には、二重ノズルを備えたエクストルーダを用いる、外層で内層を包み込んだ飼料や食品を大量生産するのに適した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
饅頭菓子類に代表される包被食品を製造する装置として包餡機が広く利用されている。包餡機は餅や小麦粉などを原料とする外皮で餡や具材などを包み、成形する装置である。包餡機は複雑な形状やデリケートな扱いが要求されるパン・菓子類などの製造を可能にするためにいろいろなバリエーションがあるが、特に、餡を外皮で包み込む機能、包被切断装置についてはいろいろな工夫がされている(特許文献1〜4)。
また、特許文献5には、多層包被食品を、2種類以上の食品材料が断面同心円状に重なってなる多層棒状食品から高能率に製するために、押し出し機とカッターを組み合わせる方法が記載されている。
【0003】
特許文献6には、外層で内層を包む二重構造の飼料が記載されており、二重ノズルのエクストルーダで製造することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3377964号
【特許文献2】特許3415072号
【特許文献3】特許3758901号
【特許文献4】特許2537751号
【特許文献5】特許2641033号
【特許文献6】国際公開公報2010/110326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外層、内層の二重構造を有する食品を生産するには各種の包餡機が存在するが、上述の特許文献5に記載されているような二重構造の魚類用飼料を生産するような場合、生産量が大量であること、飼料であるため食品ほどデリケートな仕上がりでなくてもいいが、安価に大量に製造する必要があることなどから、包餡機により包餡してから、加熱処理を行う従来の製造方法では現実的ではなかった。
包被タイプの飼料や食品を製造する場合に、外層と内層を包餡機により成形した後に、成形物を加熱処理する方法は、工程が2段階になり、加熱前の成形物の型崩れを起こさないように加熱処理工程に移送するのに手間がかるなど、大量生産に適しているとはいえない。本発明は、包被タイプの飼料や食品を大量生産するのに適した方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、二重構造の飼料を効率良く製造するため、菓子、パンなどの分野で多用されている包餡機を用いた製造を試みたが、安価に効率よく、大量生産するには向かなかった。一つの大きな課題は、包餡機で成形した後に、別途、外層を加熱加工する必要があり、成形物の移送、保存などの効率が悪いことであった。そこで、成形と加熱処理を2つの別工程で行うのではなく、一気に行う方法を検討した。二重ノズルを備えるエクストルーダで二重構造に成形し、続いて、温度が高いうちに、シャッター機構により、包被切断することにより、外層で内層を完全に包んだ形の飼料を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、(1)〜(8)の飼料又は食品の製造方法を要旨とする。
(1)加熱によりゲルを形成する蛋白質原料及び/又は澱粉原料に副原料を添加し撹拌混合した外層組成物原料、及び、外層組成物によって包みこまれる内層組成物を調製し、二重ノズルを備えたエクストルーダを用いて、外層組成物原料に加熱処理を加えゲル化しながら、同時に内層組成物の表面を覆うように押出成形し、シャッター機構を用いて、連続的に押し出される柱状成形物を一定の長さに切断すると同時に、ゲル化した外層組成物によって切断面を包被させることを特徴とするゲル化した外層組成物で内層を包みこんだ飼料又は食品の製造方法。
(2)シャッター機構が複数のシャッター片を開閉自在に設けたシャッター装置である(1)の飼料又は食品の製造方法。
(3)シャッター片が6枚以上組み合わされたものである(3)の飼料又は食品の製造方法。
(4)シャッターが耐熱性のある素材で製造されている(1)ないし(3)いずれかの飼料又は食品の製造方法。
(5)シャッター機構がクランクシャフト駆動である(1)ないし(4)いずれかの飼料又は食品の製造方法。
(6)加熱によりゲルを形成する蛋白質原料が魚肉すり身、魚肉落し身、オキアミ、ゼラチン、コラーゲン、グルテン、卵白、大豆蛋白質から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせたものである(1)ないし(5)いずれかの飼料又は食品の製造方法。
(7)加熱によりゲルを形成する澱粉原料がタピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、豆澱粉、ワキシーコンスターチ、及びそれらの加工澱粉から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせたものである(1)ないし(5)いずれかの飼料又は食品の製造方法。
(8)エクストルーダによる加熱温度が60〜110℃である(1)ないし(7)いずれかの飼料又は食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により、内層が外層に包み込まれた二重構造の飼料や食品を高速で大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の方法を実施する1つの態様を示す模式図である。
図2図2は本発明で使用するシャッター機構の1つの態様を示す模式図である。
図3図3は本発明で使用するスライドシャッターの1つの態様を示す模式図である。
図4図4は本発明で使用するスライドシャッターの1つの態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は外皮により内包物が包みこまれた包被タイプの飼料や食品を生産する方法である。二重ノズルを備えたエクストルーダを用い、エクストルージョンクッキングによる外層の加熱処理と外層による内層の被覆を同時に行い、柱状に押し出されてくる成形物を押し出されてくるスピードに合わせて上下するシャッター機構により、一定の長さに切断すると同時に切断面を外層で包被する方法である。包餡機で製造する場合のように、成形後、外層を別途加熱加工する必要がなく、生の外層原料から一気に最終製品を製造することができる。
【0011】
本発明で用いるエクストルーダは一軸でも二軸でもよく、押し出し機能と加熱機能を有するものであればよい。外層組成物原料をエクストルーダに供給し、混練するとともに外層組成物原料が加熱ゲルを形成する温度にまで加温して押し出す。エクストルーダの吐出口付近に内層組成物を外層組成物の中心に送り込むノズルが配置され、筒状に押し出される外層の中心部に内層組成物が押し出されることにより二重構造となる。
エクストルーダによる加熱温度は外層原料によるが、品温を60〜110℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは70〜90℃に昇温させることによりゲル化する。膨化しても差し支えなければ、温度が110℃以上でも製造可能である。押し出された際に外層が膨化するのを望まない場合には、さらに外層組成物原料を脱気しておくのが好ましい。
エクストルーダから連続的に押し出されてくる二重構造の成形物を垂直下向きにシャッター機構に送り込む。
【0012】
シャッター機構は、包餡機で用いられている各種タイプのものを利用することができる。外層で切断面を確実に包被するには、複数のシャッター片により開口部が均等な形状を保ちながら徐々に小さくなり中心で閉じる構造のスライド式のシャッターが好ましい。シャッターがエクストルーダからの押し出し成形物の外層の加熱ゲルを引き寄せながら、くびれをつくり、開口部が縮まり、最後に中心で切断する。エクストルーダから出てきた加熱ゲルが冷めないうちにシャッターで閉じることにより確実に閉じることができる。
シャッターの形状は具体的には、レオン自動機株式会社の特許3016246、特許3377964、特許3415072、実用新案平5−25432、株式会社コバートの特許2641033などに記載されているシャッターを用いることができる。特にシャッター片が6枚以上組み合わされ、開口部が正多角形の形状のままで開閉するものを用いると外層が均等に引き寄せられるので好ましい。
また、シャッター片の切断面の厚みは、外層により切断面を確実に覆うために製造する製品の半径以上の厚みとするのが好ましい。すなわち、例えば直径26mmの製品の場合、シャッター片の切断面の厚みを15mm程度、直径18mmの製品の場合は10mm程度にするのが適当である。
【0013】
しかしながら、従来包餡機に用いられているシャッターそのままでは、エクストルーダに適用することはできない。エクストルーダのスピードにあわせるには、シャッターの開閉速度及び上下動の速度を高める必要がある。また、高速での動作であり、しかもエクストルーダから吐出される加熱ゲルの温度は60〜100℃であるため、シャッターは高温にさらされ膨張する。さらに飼料原料である魚粉のような硬い原料を含むと、表面が擦れて磨耗が激しい。これを解決するため、まず、シャッターの素材を耐熱性、摺動性、強度のある材質で製造する必要がある。従来の材質ニューライト系樹脂では耐熱性が低く(60℃)、材質が柔らかい。本発明には、PEEK(ピーク)材又は同等以上の材質を用いるのが好ましい。また、必要に応じて、シャッターの冷却を行ってもよい。具体的には、圧縮エアー吹付け、冷却エアー吹付けなどの方法が採用できる。
【0014】
また、高速で動かすためには、カム駆動では耐久性の問題もあり、一定以上のスピードアップができなかった。カム駆動にかえて、クランクシャフト駆動を採用した。クランクシャフトの回転運動にて駆動させ、シャッター装置の切断スピードと同装置上下スピードを高速可能にした。また、上下ストロークの変更によりスピード調整を可能にした。この方式で駆動することにより、シャッターによる包被切断スピードを120〜140回/分以上とすることが可能となった。
シャッター機構で包被切断した生産物は、一定の長さで外層により内層が完全に包み込まれた柱状の成形物であり、そのまま飼料や食品として用いることができる。
【0015】
本発明は、外皮となる外層として、加熱によりゲルを形成する蛋白質原料及び/又は澱粉原料を含有する原料を用いるのが重要である。加熱によりゲル化し、一定の弾力性、伸展性、粘着性を有する原料を用いることにより、内層が確実に包被される。
本発明において加熱によるゲルとは、蛋白質を60℃以上に加熱することによりできるゲルや澱粉に水分を加えて60℃以上に加熱することにより糊化してできるゲルを意味する。
【0016】
外層の組成物は、内層組成物を包みこめるものであればなんでもよいが、蛋白質を加熱してできるゲル、あるいは、澱粉を加熱してできるゲルの物性が、その柔軟性、伸展性などの点で、本発明に適している。例えば、魚肉、すり身、オキアミ、グルテン、大豆たん白酵素分解大豆たん白、卵白などの蛋白質の単体もしくはこれらの2種以上の混合物などのゲル形成能を有する蛋白質が好ましい。澱粉としては、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、豆澱粉、ワキシーコンスターチ、及びそれらの加工澱粉が好ましい。これら蛋白質及び/又は澱粉を多く含む食品素材を用いることもできる。これら蛋白質及び/又は澱粉を含む組成の外層は加熱することによりゲルが固定され、柔軟性を持ち、かつ、内層組成物の保持力もあり、一定の強度を有する。
例えば、魚肉すり身を外層組成物として用いる場合、一般的なかまぼこなどの練製品の製造方法を用いて製造することができる。具体的には、2%以上の食塩を加え10℃以上、好ましくは30℃〜40℃で10分以上置いてから、80〜90℃で10分以上加熱する。あるいは卵白を用いる場合、例えば、卵白:澱粉:魚粉:水を1:1:2:6の重量比率で混合し、加熱することにより、望ましい物性の組成物を得ることができる。
【0017】
外層にはゲル形成に影響を与えない範囲で各種副原料を添加することができる。
飼料の場合、外層のゲル化に影響を与えない範囲で外層にも魚粉、油脂を添加してもよい。用いるゲルの種類にもよるが、外層には魚粉を60重量%程度まで、また、油脂を30重量%まで添加することが可能である。魚粉を20〜30重量%及び油脂を5〜10重量%程度添加するのが好ましい。
外層のゲルの品質をよりよくするために、魚肉練製品などの品質改良剤として用いられている添加物を添加することができる。澱粉、増粘多糖類、分離大豆蛋白、重曹、重合リン酸塩、卵白、トランスグルタミナーゼ、各種プロテアーゼインヒビター、などを添加してもよい。特に、ゲル強度を強化するために、寒天、ジェランガム、プルラン、澱粉、マンナン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、アラビアガム、キトサン、デキストリン、可食性水溶性セルロースなどの増粘剤を適宜配合してもよい。
【0018】
本発明の外層として好ましい別の態様として、澱粉を主成分とする加熱ゲルがその弾力性、柔軟性において優れている。澱粉に水を加えて混練し、加熱したゲルには弾力、柔軟性、伸展性がある。特に種々の加工澱粉にはそれぞれに特徴があり、2種以上を組み合わせることでより、弾力性、柔軟性、伸展性などの性質をもった外層を得ることができる。例えば、エーテル化澱粉とリン酸架橋澱粉の組み合わせのように異なるタイプの加工澱粉を組み合わせるのがよい。澱粉にグルテン、大豆タンパクなどの蛋白質を加えることによりさらに強いゲルを得ることができる。グルテンの変りにグルテンを含有する小麦粉などを使用することもできる。その他の副原料としては、小麦粉などの穀粉、大豆タンパク、グルテン、卵白などのタンパク質、砂糖、水あめなどの糖・糖アルコール類、カラギーナン、寒天、ジェランガム、プルラン、マンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、アラビアガム、キトサン、デキストリン、可食性水溶性セルロースなどの増粘剤、リン酸塩等の塩類を添加してもよい。例えば、澱粉に小麦粉を加えることによって、外層に強度を与えることができる。また、一定量のタンパク質を加えることで加熱後の表面のべたつきを押さえることができる。
【0019】
本発明で用いる澱粉は特に制限はないが、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、豆澱粉などが利用でき、特にこれらのエーテル化、アセチル化、アセチル架橋、エーテル架橋、リン酸架橋、α化ヒドロキシプロピルリン酸架橋などの加工澱粉が好ましい。これら澱粉に蛋白質など他の副原料を加え、水を加えて混合し混練し、包餡機などで、内層を包んだ後、加熱することにより本発明の飼料を製造する。あるいは、外層原料と内層原料をそれぞれ二重ノズルのエクストルーダに供給し、外層原料を混合、加熱処理しながら、同時に外層で内層を包み込む形で押し出し成形することによっても製造できる。澱粉等の原料に対し水の添加量は包餡機やエクストルーダに対応できる量であればよいが、30〜50重量%程度が適当である。加熱温度は、澱粉や添加した蛋白質等がゲル化する温度以上であればよく、品温が60〜110℃、好ましくは、70〜100℃、さらに好ましくは、80〜90℃程度になればよい。魚油を添加する場合は酸化しやすいのでなるべく高温は避けるのが好ましい。
【0020】
本発明の澱粉の加熱ゲルで内層を包んでできあがった外層の水分量は25〜50重量%程度になる。そのまま長期保存する場合は、冷蔵又は冷凍保存することができる。また、この飼料をさらに乾燥させ水分量を10〜20重量%にすると保存性を高めることができる。外層を乾燥させることと外層に添加物を加えて水分活性を低下させることを併用することにより、室温で長期に保存できる飼料を製造することができる。水分量10〜20重量%、水分活性0.8以下、特に0.6以下が好ましい。
【0021】
澱粉を含有する外層の組成物の配合は種々のパターンが考えられる。飼料の場合、魚種や魚の成長段階によって、飼料に要求される栄養素、カロリーは異なる。魚粉や魚油を多く入れるほど、外層の配合を厳密に調製する必要があるが、魚粉や魚油が少なめの場合は、外層の配合にはかなりの自由度がある。少なくとも乾物換算で澱粉を20〜80重量%含有させる。魚粉を25〜50重量%(乾物換算)添加した外層とする場合、乾物換算で、澱粉20〜65重量%、小麦粉5〜20重量%、タンパク質、油脂、増粘剤、塩類などを合計5〜15重量%程度添加するのが好ましい。魚油は1〜5重量%、リン酸塩は1〜2重量%、タンパク質は1〜5重量%、増粘剤は1〜5重量%程度添加するのが好ましい。
副原料として用いる場合、小麦粉はグルテン含有量の多い強力粉が好ましいが、薄力粉でもよい。
外層の品質をよりよくするために、澱粉食品の品質改良剤として用いられている添加物を添加することができる。
【0022】
飼料の場合、内層の組成物は魚粉と油脂が主成分であるが、養魚用の栄養成分として知られているその他の栄養成分、例えば、ビタミン、ミネラル等を添加してもよい。また、外層に包まれているが魚粉や液状である油脂が漏れることがあっては好ましくないので、多糖類や硬化油を配合、また乳化し安定化させることもできる。特に、機械で製造する場合、内包組成物の物性を機械適性のある流動性、物性にするのが好ましい。多糖類(油脂吸着剤)としては、オイルQ(日殿化学社製)、硬化油としてはユニショートK(不二製油社製)、ニューフジプロSEH(不二製油社製)等が例示される。
さらに、内層の組成物には、従来の養殖魚用配合飼料の原材料を添加することができる。例えば、生魚類、イカミール、オキアミミール、大豆油かす、コーングルテンミールなどのタンパク質、オキアミ油、鯨油、大豆油、コーン油、菜種油、硬化油などの油脂、澱粉、小麦粉、米粉、タピオカ粉、トウモロコシ粉などのデンプン質、アルギン酸及びその塩類、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、グァガム、デキストリン、キトサン、カードラン、ペクチン、カラギーナン、マンナン、ジェランガム、アラビアガム、可食性水溶性セルロースなどの多糖類、ビタミン、ミネラル類などである。
【0023】
上記内層の組成物は、油脂含量を20〜70質量%、特に大型養殖魚に給餌する場合、油脂含量を好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、最も好ましくは45質量%以上となるように配合する。多量の油脂含量は、養殖魚の成長及び成長効率に優れた効果を奏するが、油脂含量を70質量%超配合すると、必然的に他の配合成分が減少し、栄養バランスの調整が困難となる。魚油やその他植物性油脂は流動性が高いものであり、そのまま用いてもよいが、好ましくはビタセルWF200、ビタセルWF600又はビタセルWF600/30(レッテンマイヤー社製)、オイルQ No.50又はオイルQ−S(日澱化学株式会社製)、パインフロー(松谷化学工業株式会社製)等のデキストランをはじめとする吸油性多糖類、発酵大豆、イソフラボンなどの吸油性タンパク又はダイズ油、ナタネ油又はパーム油などの油脂に水素付加した硬化油を用いて流動性を低下させて用いることができる。あるいは、魚油を乳化させることにより流動性を低下させて用いることもできる。ただし、魚の消化性を考慮すると、これらの流動性を低下させるような成分は好ましくは内層の組成物の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下とすることが望ましい。油脂としては、魚油がもっとも好ましいが、他の植物性油脂などで一部代替することも可能である。
内層の必須成分である魚粉は通常養魚用飼料原料として用いられている各種魚粉、オキアミなどの甲殻類の粉末などが利用できる。魚粉含量を30〜70質量%、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、最も好ましくは45質量%以上となるように配合する。内層の組成物が崩れにくいように、内層組成物に結着性のある多糖類、硬化油、乳化剤などの賦形剤を添加しておくのが好ましい。
【0024】
本発明の飼料の保存性を考慮して、水分活性を調節してもよい。この水分活性の調整は、内層、外層の組成物の組成により調整することができる。例えば、添加する水分量の調整により、内層の組成物の水分活性を低くすることができる。また、塩類(食塩、リンゴ酸ソーダ、乳酸ソーダなど)、糖類(砂糖、乳糖、マルトース、ソルビットなど)、糖アルコール類、アミノ酸、核酸関連物質、有機酸類、アルコール類、プロピレングリコース、グリセリン、澱粉類、蛋白類などの水分活性調整剤の添加により、組成物の水分活性を調整してもよい。
【0025】
以上、主に飼料の場合について詳細に説明したが、食品であっても同様の基準で外層の成分を設計することができる。食品の場合は、飼料のように栄養効率を考える必要はないので、食感や好みに応じて、自由度が大きい。蛋白質や澱粉を含有する外層組成物で、餡やチョコレート、クリームなどのほか、野菜、果物、畜肉、魚肉、鶏肉、卵、穀物など各種食材を包み込むことができる。内層の組成物はエクストルーダのノズルから送り込める物性であれば、どのような素材でもよい。内層は生でも加工品でもよく、単一素材でも調理品でもでもよい。
【0026】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
本発明の製造方法を実施するために、図1に示した構成で製造装置を作成した。外層組成物原料供給装置1は、外層組成物原料を混合してポンプでエクストルーダ3に送り込む。内層組成物供給装置2は、別途混合、製造した内層組成物をポンプでノズル5からエクストルーダの吐出口4に送り込む。外層組成物原料はエクストルーダ3内で混練された後、加熱され加熱ゲルとなる。吐出口において外層は筒状に押し出され、その内部はノズル5から挿入される内層組成物で満たされ、二重構造の柱状で排出される。排出された二重構造の柱状物はコンベアで搬送され、シャッター機構6に垂直下向き方向に挿入する。シャッター機構6で一定の長さで包被切断され、二重構造の成形物ができあがる。
高速での生産を可能とするため、エクストルーダは吐出能力1t/hの同方向回転完全噛み合い型2軸タイプの装置(Buhler社製)を用いた。
【0028】
エクストルーダの吐出スピードに合わせて包被切断できるシャッター機構として、図2に示した構成のシャッター機構を用いた。シャッター装置はエクストルーダの吐出スピードに合わせて上下動する。すなわち、回転スピードを制御したモーター8がクランクシャフト9を回転させ、クランクシャフト9の回転運動を連結棒10により上下運動に変換し、上下運動によりリニアガイド11と連結させたシャッター装置12を上下させる。
シャッターはスライド式のスライドシャッター13であり、回転スピードを制御したモーター14がクランクシャフト15を回転させ、クランクシャフト15の回転運動を連結棒16により前後運動に変換し、連結棒16と連結された駆動レバー17を前後運動させ、駆動レバー17の前後運動をハウジング18内にあるギア類で回転運動に変換することにより、開閉する。図3はこの開閉の機構を上から見た図である。カム機構を使わず、モーター14でクランクシャフトを回転させる方式を用いたことにより、装置の強度を高めることができ、スピードアップすることができる。また、シャッター片は加熱による膨張、高速運転による磨耗に耐える素材としてPEEK材を用いた。熱耐性のない樹脂では、高速運転に耐えなかった。
シャッターの機構はレオン自動機株式会社の包被切断機シャッター(特許3377964)と同様の機構を用いた。図4に示すように6枚のシャッター片19がスライドピン20で固定されており、左右の図は開いた状態と閉じた状態を示している。
【実施例2】
【0029】
実施例1の製造装置を用いて、直径3cm、長さ15cmの養魚用飼料を製造した。
タピオカ澱粉(エーテル化澱粉)18重量%、ワキシー澱粉(α化ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉)4重量%、豆澱粉(アセチル化澱粉)1重量%、分離大豆タンパク粉体(ニューフジプロSEH:不二製油社製)3重量%、オキアミミール3重量%、小麦粉3重量%、グルテン1重量%、カラギーナン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.5重量%、卵白3重量%、魚粉20重量%、水あめ3重量%、魚油2重量%、水40重量%をサイレントカッターを用いて混合し、外層用組成物原料とした。
魚粉60重量%、魚油36重量%、硬化油1.2重量%、オキアミミール3重量%、ビタミン2.5重量%、ミネラル1重量%、リン酸カルシウム1.2重量%、有機酸0.1重量%をミキサーを用い混合し、内層組成物とした。
これらを実施例1の製造装置の外層組成物原料供給装置1と内層組成物供給装置2からそれぞれ送りこみ、エクストルーダにより、スクリュー回転数450rpm、吐出温度90℃、出口圧力45barの条件で混合、加熱した。実施例1の装置により、145個/分の生産が可能であり、切断面は外層により包被され、内層物が漏れ出てくることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は外層と内層の二重構造を有する飼料、食品などを大量に高速で生産する方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
P 製造物
1 外層組成物原料供給装置
2 内層組成物供給装置
3 加熱機能付きエクストルーダ
4 吐出口
5 ノズル
6 シャッター機構
7 コンベア
8 モーター
9 クランクシャフト
10 連結棒
11 リニアガイド
12 シャッター装置
13 スライドシャッター
14 モーター
15 クランクシャフト
16 連結棒
17 駆動レバー
18 ハウジング
19 シャッター片
20 スライドピン
21 ノブボルト
図1
図2
図3
図4