(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の位置決め対象面が前記位置決め対象面と交差する配列方向に配列された位置決め対象物を、前記配列方向に移動させ、前記位置決め対象面を所定の目標位置に位置決めするために、
同じ光源からの一対のレーザ光を、前記位置決め対象物を挟んで反対側から、前記位置決め対象面に対して同じ角度で、それぞれ前記位置決め対象面の同じ位置に入射させ、
前記位置決め対象面で反射された一対のレーザ光をホログラフィ干渉させ、得られたホログラムに基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行う非接触位置決め方法であって、
予め、前記位置決め対象面が所期の基準位置に配置された状態で、前記位置決め対象物を挟んで反対側に得られる、前記位置決め対象面で反射された一対の前記レーザ光を、互いに重ね合わせてホログラフィ干渉させ、得られたホログラムを前記基準ホログラムとして記録しておき、
前記位置決め対象物を移動させ、前記位置決め対象面に一対のレーザ光を入射させ、前記位置決め対象面で反射された一対の前記レーザ光からホログラムを生成し、得られる生のホログラムを前記基準ホログラムと重ね合わせ、得られる重ね合わせ状態に基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行うことを特徴とする非接触位置決め方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1は、マイクロメータ用ねじやダイヤルゲージ用ラックなど、長さが50ミリメートル程度の比較的小物部品のピッチ測定を主とした非接触位置決めを想定したものである。
しかし、特許文献1を、長尺で大型の測定対象物に適用した場合、測定対象物の測定軸方向のアライメントの狂いや移動台の姿勢変化(ピッチング、ヨーイング、ローリング、など)の影響が無視できなくなる。
【0009】
例えば、三次元座標測定機の空間補正データ取得用の参照基準器には、0.3メートルから2メートルに及ぶ長尺のステップゲージが用いられる。このようなステップゲージでは、ブロックゲージ間ピッチ測定や、組み込まれている多数のブロックゲージ単体の寸法測定などが必要である。
【0010】
このようなステップゲージの測定を行う場合、ブロックゲージの測定面の方向が、組み立て時の誤差のため微妙に狂ってセットされている恐れがある。また、測定時に発生する位置決め光学系の姿勢変化の影響も受ける。そのため、位置決め光学系そのものの工夫や、位置決め光学系と実際の測長に用いるレーザ干渉測長機との光学的かつ空間的な配置の工夫が必要である。したがって、特許文献1のようなホログラフィ干渉光学系と測長用レーザ干渉計との単純な組み合わせによる測定システムでは、前述した長尺化による影響を解決することができない。
【0011】
前述した特許文献2の白色光源干渉計による位置決めでは、多波長が混ざり合った白色光のコヒーレンス長が極端に短いため、マイケルソン干渉計の構成で位置決め信号を得るようにするには、参照光と測定光との光路長差を約1mm以内に揃えなければならない。このような光路長調整の厳しさから、光学部品の配置や干渉光学系の構成の自由度や応用範囲が、極端に制限されるという問題がある。
【0012】
特許文献2においては、ステップゲージのブロックゲージ面を測定対象面とする例も開示されている。しかし、長尺のステップゲージに多数セットされたブロックゲージに対して、その測定面方向の微妙な傾きによる位置決め誤差の影響に配慮した光学系とはなっていない。
さらに、現状の白色光源干渉計による位置決めでは、位置決め対象面への照明が垂直方向に限定され、かつ粗面の位置決めが不可能であり、測定対象物が限定され、前述した多数の測定面が繰り返される基準器への適用が困難である。
【0013】
加えて、特許文献2において、測長用レーザ干渉計が、測定対象である長尺ステップゲージに対して、アッベの原理に従って一直線上に配置されている。このような状況では、測定系全体の占める空間が、測定対象の長さの2倍以上必要になり、測定中の温度管理が厄介になる。また、アッベの原理に従っているがゆえに、長尺ステップゲージの位置検出面の測定点と測長用レーザ干渉計の測長点が測長方向に沿って空間で離れた配置となる。そのため温度変化の影響や幾何学的な測長誤差の影響を受け、高精度測定の観点から信頼性が劣るという問題がある。
【0014】
以上に述べた問題は、多数の測定面が所期のピッチで配列される基準器のほか、歯面が所期のピッチで配列されるラック、ねじ、ボールねじや、同様な表面が所期のピッチで配列されるコイルその他の部材など、多数の測定対象面が配列された測定対象物において共通する問題であり、多数の測定対象面に対する測定が繰り返される点で、個々の操作の煩雑さは全体の作業効率にも影響する。
【0015】
さらに、測定対象物に対する位置決めに限らず、各種の高精度移動機構の非接触位置決めにおいても同様な事情があり、多数の位置決め対象面が配列された位置決め対象物において同様に解決されることが必要である。
【0016】
本発明の目的は、多数の位置決め対象面が配列された位置決め対象物の位置決めを、ホログラフィ干渉を利用して高精度かつ効率よく行える、非接触位置決め方法および非接触位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の非接触位置決め方法は、複数の位置決め対象面が前記位置決め対象面と交差する配列方向に配列された位置決め対象物を、前記配列方向に移動させ、前記位置決め対象面を所定の目標位置に位置決めする
ために、同じ光源からの一対のレーザ光を、前記位置決め対象物を挟んで反対側から、前記位置決め対象面に対して同じ角度で、それぞれ前記位置決め対象面の同じ位置に入射させ、前記位置決め対象面で反射された一対のレーザ光をホログラフィ干渉させ、得られたホログラムに基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行う
非接触位置決め方法であって、
予め、前記位置決め対象面が所期の基準位置に配置された状態で、前記位置決め対象物を挟んで反対側に得られる、前記位置決め対象面で反射された一対の前記レーザ光を、互いに重ね合わせてホログラフィ干渉させ、得られたホログラムを前記基準ホログラムとして記録しておき、
前記位置決め対象物を移動させ、前記位置決め対象面に一対のレーザ光を入射させ、前記位置決め対象面で反射された一対の前記レーザ光からホログラムを生成し、得られる生のホログラムを前記基準ホログラムと重ね合わせ、得られる重ね合わせ状態に基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行うことを特徴とする。
本発明において、ホログラフィ干渉に基づく位置決め対象物の位置決めとしては、前述した特許文献1に記載の技術を利用することができる。
【0018】
このような本発明では、一対のレーザ光が、位置決め対象物を挟んで反対側から、それぞれ位置決め対象面の同じ位置に同じ角度で斜めに入射され、各々の反射光が、位置決め対象物を挟んで反対側に投射される。
この際、一対のレーザ光が位置決め対象面に入射して反射される光路は、互いに同じ経路で逆向きとなり、位置決め対象物(位置決め対象面のレーザ光の入射位置を通る配列方向軸線)を基準として各側で対称形となる。
【0019】
そして、位置決め対象物を挟んで各側に投射された一対の信号光は、それぞれ位置決め対象面の傾きの影響を受けるが、各々は位置決め対象面の互いに反対側から同じ角度で入射された一対のレーザ光に基づいているため、これら一対の信号光に生じる変化は互いに逆向きとなる。
従って、これら一対の信号光をホログラフィ干渉させ、得られたホログラムに基づいて位置決め対象物の位置決めを行うことで、位置決め対象面の傾きの影響を解消することができる。
【0020】
ホログラフィ干渉による位置決めにあたっては、例えば、位置決め対象物を挟んで各側に投射された一対のレーザ光(信号光)を、それぞれ光源からのレーザ光(参照光)と重ね合わせることにより、位置決め対象物を挟んで両側に一対のホログラムを生成し、各側に得られた一対のホログラムの各々から位置情報を検出し、得られた一対の位置情報を合成することで、各々の傾きの影響による測定誤差を相殺することができる。
【0021】
位置決め対象物を挟んで各側に投射された一対のレーザ光(信号光)を、互いに重ね合わせてホログラフィ干渉させることにより、一つのホログラムを生成し、得られたホログラムに基づいて位置決め対象物の位置決めを行うとしてもよい。
この場合でも、生成されたホログラムには各側の信号光における傾きの影響による測定誤差を相殺することができる。
【0022】
このように、本発明では、ホログラフィ干渉を利用した位置決めにおいて、位置決め対象物の各側でのホログラフィ測定を行い、その結果の「算術和の平均値」を求めることで、傾き等の誤差が相殺され、正しい位置に位置決めを行うことができる。
これにより、長尺で大型の位置決め対象物に適用した場合でも、位置決め対象物の測定軸方向のアライメントの狂いや移動台の姿勢変化(ピッチング、ヨーイング、ローリング、など)の影響を解消することができる。
【0024】
本発明においては、位置決め対象面の正しい位置および姿勢を反映した基準ホログラム(凍結ホログラム)を準備しておき、この基準ホログラムと、現在の位置決め対象面を反映したホログラム(生のホログラム)とを重ね合わせることで、位置決め対象面の傾きおよび変位の情報を検出することができる。
【0028】
本発明においては、
予め、前記位置決め対象面が所期の基準位置に配置された状態で、前記位置決め対象面で反射された一対の前記レーザ光をホログラフィ干渉させ、得られたホログラムを前記基準ホログラムとして記録するため、位置決めを行う実際の環境で基準ホログラムを作製することができ、基準位置を高精度に割り出しておけば、これを基準ホログラムとして繰り返し利用することができる。
【0031】
本発明においては、
前記位置決め対象物を挟んで反対側に得られる信号光を、互いに重ね合わせて前記基準ホログラムを作製し、前記基準ホログラムに基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行うため、各側の信号光を合成することで、各々に含まれる傾きの影響が相殺され、基準ホログラムと生のホログラムの重ね合わせで検出される位置情報に基づいて、正確な位置決めを行うことができる。
【0038】
本発明の非接触位置決め装置において、
複数の位置決め対象面が前記位置決め対象面と交差する配列方向に配列された位置決め対象物を、前記配列方向に移動させ、前記位置決め対象面を所定の目標位置に位置決めする非接触位置決め装置であって、前記位置決め対象物を前記配列方向に移動させる移動装置と、前記移動装置で移動される前記位置決め対象物を挟んで配置された第1光学経路および第2光学経路を有するホログラフィ干渉装置と、前記ホログラフィ干渉装置に共通のレーザ光源からのレーザ光を供給する投光装置と、前記ホログラフィ干渉装置で得られた一対のホログラムに基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行う制御装置と、を有し、前記ホログラフィ干渉装置は、前記投光装置から供給された前記レーザ光を、前記位置決め対象面に対して所定の角度で、前記位置決め対象面の同じ位置に入射させる
前記第1光学経路および
前記第2光学経路と、前記位置決め対象面で反射された前記レーザ光が投射される第1投射面および第2投射面と、を有し、さらに、前記第1投射面に配置されかつ基準ホログラムが記録された記録媒体と、前記第2投射面に配置されかつ前記第2投射面に投射された前記レーザ光を前記第1投射面に向けて反射させる反射鏡と、前記第1投射面に生成される現在のホログラムと前記記録媒体から再生される前記基準ホログラムとを重ね合わせて、前記位置決め対象面の位置信号を検出する検出装置と、を有すること
を特徴とする。
【0039】
このような本発明では、移動装置により位置決め対象物を配列方向へ移動させ、位置決め対象面を所定の目標位置に配置する。この際、ホログラフィ干渉装置および制御装置により、ホログラフィ干渉を利用した位置決めを行うことにより、目標位置に対する位置決め対象面の位置決めを正確に行うことができる。
とくに、本発明では、共通のレーザ光を供給する投光装置、および位置決め対象物の両側に配置された第1光学経路および第2光学経路を有するホログラフィ干渉装置を用いることで、各側のホログラムに生じる位置決め対象面の傾き誤差を相殺させることができ、更に高精度な位置決めを行うことができる。
本発明では、第1光学経路および第2光学経路により、位置決め対象面で反射された逆向き一対のレーザ光(信号光)が生成され、これらの信号光は第1投射面および第2投射面に投射される。第2光学経路の信号光は、第2投射面の反射鏡で反射され、第1投射面において第1光学経路の信号光と重ね合わせられる。これにより第1投射面には現在のホログラムが生成され、記録媒体による基準ホログラムとの重ね合わせにより、検出装置において位置決め対象面の位置信号を検出することができる。
【0040】
このような本発明では、記録媒体および検出装置を1系統だけにすることができ、機械的な簡略化が図れる。そして、本発明においては、各側からの信号光を重ね合わせることで、各々に生じる位置決め対象面の傾き誤差を光学的に相殺することができる。また、基準ホログラムを用いることで、各側からの信号光を重ね合わせて生成した現在のホログラムに対して、変位を検出することができ、検出装置の簡略化も図れる。
【0041】
本発明の非接触位置決め装置において、
複数の位置決め対象面が前記位置決め対象面と交差する配列方向に配列された位置決め対象物を、前記配列方向に移動させ、前記位置決め対象面を所定の目標位置に位置決めする非接触位置決め装置であって、前記位置決め対象物を前記配列方向に移動させる移動装置と、前記移動装置で移動される前記位置決め対象物を挟んで配置された第1光学経路および第2光学経路を有するホログラフィ干渉装置と、前記ホログラフィ干渉装置に共通のレーザ光源からのレーザ光を供給する投光装置と、前記ホログラフィ干渉装置で得られた一対のホログラムに基づいて前記位置決め対象物の位置決めを行う制御装置と、を有し、前記ホログラフィ干渉装置は、前記投光装置から供給された前記レーザ光を、前記位置決め対象面に対して所定の角度で、前記位置決め対象面の同じ位置に入射させる
前記第1光学経路および
前記第2光学経路と、前記位置決め対象面で反射された前記レーザ光が投射される第1投射面および第2投射面と、を有し、さらに、前記第1投射面および前記第2投射面から等距離に配置されかつ基準ホログラムが記録された記録媒体と、前記第1投射面および前記第2投射面にそれぞれ配置されかつ前記第1投射面および前記第2投射面に投射された前記レーザ光を前記記録媒体に向けて反射させる一対の反射鏡と、一対の前記反射鏡で反射された前記レーザ光により生成される現在のホログラムと、前記記録媒体から再生される前記基準ホログラムとを重ね合わせて、前記位置決め対象面の位置信号を検出する検出装置と、を有すること
を特徴とする。
【0042】
このような本発明では、移動装置により位置決め対象物を配列方向へ移動させ、位置決め対象面を所定の目標位置に配置する。この際、ホログラフィ干渉装置および制御装置により、ホログラフィ干渉を利用した位置決めを行うことにより、目標位置に対する位置決め対象面の位置決めを正確に行うことができる。
とくに、本発明では、共通のレーザ光を供給する投光装置、および位置決め対象物の両側に配置された第1光学経路および第2光学経路を有するホログラフィ干渉装置を用いることで、各側のホログラムに生じる位置決め対象面の傾き誤差を相殺させることができ、更に高精度な位置決めを行うことができる。
本発明では、第1光学経路および第2光学経路により、位置決め対象面で反射された逆向き一対のレーザ光(信号光)が生成され、これらの信号光は第1投射面および第2投射面の反射鏡でそれぞれ反射され、反射された一対の信号光は、記録媒体において互いに重ね合わせられる。これにより記録媒体には現在のホログラムが生成され、記録媒体による基準ホログラムとの重ね合わせにより、検出装置において位置決め対象面の位置信号を検出することができる。
【0043】
このような本発明では、記録媒体および検出装置を1系統だけにすることができ、機械的な簡略化が図れる。そして、本発明においては、各側からの信号光を重ね合わせることで、各々に生じる位置決め対象面の傾き誤差を光学的に相殺することができる。また、基準ホログラムを用いることで、各側からの信号光を重ね合わせて生成した現在のホログラムに対して、変位を検出することができ、検出装置の簡略化も図れる。さらに、第1光学経路および第2光学経路、一対の反射鏡および記録媒体を、位置決め対象物を挟んで両側に配置することができ、機械的な簡略化を図りつつ、光学的な対称性を確保することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、多数の位置決め対象面が配列された位置決め対象物の位置決めを、ホログラフィ干渉を利用して高精度かつ効率よく行える、非接触位置決め方法および非接触位置決め装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1ないし
図6には、
本発明には含まれないが後述する本発明の
第2実施形態、第3実施形態、および第4実施形態の前提となる第1実施形態が示されている。
図1において、ステップゲージ測定装置1は、長尺の基準器であるステップゲージ2のピッチを測定するためのものである。
ステップゲージ2は、長尺のゲージホルダ2Hに、所定ピッチで多数のブロックゲージ2Bが配列されたものである。本実施形態においては、各ブロックゲージ2Bの同じ側にある測定面2Sの、ゲージホルダ2Hの長手方向(配列方向)の位置を決めることで、各ブロックゲージ2B間のピッチを測定する。
【0047】
このような測定を行うために、ステップゲージ測定装置1は、移動装置3、位置決めヘッド4、ヘッド機構5、非接触位置決め装置6、レーザ干渉測長機7および制御装置8を備えている。
制御装置8は、移動装置3、ヘッド機構5、非接触位置決め装置6およびレーザ干渉測長機7を連携させて制御することで、一連のステップゲージ2の測定面2S間つまりブロックゲージ2B間のピッチの測定を実行するものである。
【0048】
移動装置3は、ステップゲージ2を保持する移動台31と、移動台31を支持する基礎台32と、レーザ干渉測長機7の一部が設置される設置台33とを備えている。
移動台31および基礎台32は、ステップゲージ2の長手方向に沿って延びる長尺の部材で構成されている。
【0049】
基礎台32は、安定した定盤上に設置される。基礎台32と移動台31との間には、ボールねじ等を利用した高精度の送り機構(図示省略)が設置され、移動台31は基礎台32に対してステップゲージ2の長手方向に沿って移動可能である。
設置台33は、移動台31の端部に設置され、移動台31とは交差方向に延びている。設置台33の端部には、それぞれレーザ干渉測長機7の投光部71および受光部72(詳細は後述)が設置されている。
【0050】
移動装置3においては、測定対象であるステップゲージ2を移動台31に載置し、制御装置8からの動作指令により、ステップゲージ2を長手方向の任意の位置へと移動させることができる。
【0051】
具体的には、ステップゲージ2の基準位置から各測定面2Sまでの距離を測定するために、各測定面2Sが順次位置決めヘッド4に対して所定の目標位置にくるように、ステップゲージ2を移動させることになる。
なお、移動装置3の総移動量(基礎台32に対する移動台31の最大移動量)は、ステップゲージ2の全長に相当するものとされる。
【0052】
位置決めヘッド4は、ヘッド機構5により、移動装置3の上方に支持されている。位置決めヘッド4は、逆U字形で板状のプレート41を有している。移動装置3に載置されたステップゲージ2は、プレート41の中央の凹み(開口部)を通過することができる。
プレート41には、レーザ干渉測長機7の3つの反射鏡73,74,75(詳細は後述)が設置されている。
【0053】
プレート41の逆U字形の先端には、それぞれ平面L字状の延長プレート42が接続されている。各側の延長プレート42には、それぞれ非接触位置決め装置6のホログラフィ干渉装置61(詳細は後述)が設置されている。
一対のホログラフィ干渉装置61は、移動装置3に載置されたステップゲージ2に平行とされ、かつステップゲージ2を両側から挟むように配置されている。
【0054】
ホログラフィ干渉装置61は、ホログラフィ干渉によりステップゲージ2に対して位置決めヘッド4を高精度に位置決めするものであり、このホログラフィ干渉では基準ホログラムを利用する。この基準ホログラムを作製するために、ステップゲージ2に対して位置決めヘッド4を移動させるヘッド機構5が設置されている。
【0055】
ヘッド機構5は、ステップゲージ2に対して位置決めヘッド4を高精度に位置決めするものであり、基準ホログラムの作製時に光学系を微調整するときにのみ、ステップゲージ2の長手方向に沿って位置決めヘッド4を移動させることができる。
ヘッド機構5の総移動量は、高々数mm程度である。ただし、位置決めヘッド4の支持剛性、つまり位置決めヘッド4の位置の保持能力は高く設計される。
【0056】
本実施形態のステップゲージ測定装置1では、レーザ干渉測長機7を用いて、ステップゲージ2の各測定面2Sの位置(配列方向のピッチ)を順次測定する。
すなわち、測定面2Sと位置決めヘッド4とを高精度に位置合わせしておき、この状態で、レーザ干渉測長機7を用いて位置決めヘッド4の位置を測定する。つまり、位置決めヘッド4を介して間接的に、ステップゲージ2における各測定面2Sの位置を、レーザ干渉測長機7で高精度に測定する。
このような測定を、各測定面2Sに対して順次繰り返すことで、ステップゲージ2における各測定面2S間のピッチが測定できる。
【0057】
このような測定では、測定面2Sを位置決めヘッド4の測定位置に配置するために、移動装置3でステップゲージ2を移動させる。測定面2Sを移動させて、位置決めヘッド4の測定位置に配置した際に、各々の相対位置が高精度に配置されていることが重要である。
そこで、本実施形態では
、非接触位置決め装置6を用い、測定面2Sと位置決めヘッド4とを、全ての測定面2Sが互いに同じ条件となるように、ホログラフィ干渉を利用して高精度に位置決めする。
非接触位置決め装置6については、後に詳細に説明する。
【0058】
レーザ干渉測長機7は、非接触位置決め装置6により測定面2Sと位置決めヘッド4とが同じ条件で位置決めされた状態で、位置決めヘッド4の位置を高精度に測定することで、ステップゲージ2に配列された測定面2Sの位置を高精度に測定するものである。
【0059】
レーザ干渉測長機7は、レーザ光の投光部71および受光部72を有するとともに、光路を構成するための3つの反射鏡73,74,75を有する。
投光部71および受光部72は、移動装置3の設置台33の互いに反対側の端部にそれぞれ固定されている。
【0060】
3つの反射鏡73,74,75は、それぞれ位置決めヘッド4のプレート41に固定され、ステップゲージ2と一緒に移動する投光部71および受光部72と相対的な距離変化(長さ変化)を起こしたとき、レーザ干渉測長機7の反射体の機能を発揮する。
反射鏡73,74は、それぞれ移動装置3を挟んで反対側に配置されている。反射鏡75は、移動装置3の上方であって移動装置3の中心軸線上に配置されている。
【0061】
これらの投光部71、受光部72および反射鏡73,74,75は、次のような光路を構成するように、その位置および姿勢が調整されている。
図2(A)および
図2(B)に示すように、投光部71から出射されたレーザ光は、移動装置3に載置されたステップゲージ2の長手方向に沿って進み、反射鏡73に入射される。反射鏡73で反射されたレーザ光は、反射鏡75に入射され、さらに反射されて反射鏡74に入射される。反射鏡74で反射されたレーザ光は、移動装置3に載置されたステップゲージ2の長手方向に沿って先ほどとは逆向きに進み、受光部72で受光される。
【0062】
このような光路を有するレーザ干渉測長機7では、移動装置3の移動台31が移動することで、ステップゲージ2の長手方向に沿った区間である、投光部71から反射鏡73までの間および反射鏡74から受光部72までの間の光路長が変化する。
従って、受光部72で受光した測定レーザ光を、投光部71から受光部72に直接送られる参照レーザ光と干渉させることで、移動台31の変位を測定し、位置決めヘッド4までの距離の変化を測長することができる。
【0063】
また、3つの反射鏡73,74,75により、ステップゲージ2を片側から反対側へ跨ぐような光路を形成することができる。
すなわち、ステップゲージ2の両側の反射鏡73,74に対し、プレート41に装着した反射鏡75を高く配置することで、投光部71から反射鏡73までの間の光路および反射鏡74から受光部72までの間の光路を、それぞれ測長対象であるブロックゲージ2Bおよび測定面2Sの高さに維持することができる。
このような構成により、測定軸線を測定面2Sの高さにして、ステップゲージ2の姿勢変化に因る測定誤差、とくにピッチング誤差およびヨーイング誤差を解消することができる。
【0064】
さらに、
図2(A)および
図2(B)に示すように、反射鏡73,74,75の反射位置を点A,B,Cとし、点Aと点Cを結ぶ線分の中点を点N、測定面2Sの点Nと同じ高さでステップゲージ2の長手方向同軸線位置を点Mとすると、線分ABおよび線分BCの空間での長さの和は、線分MNの往復の長さに等しい。このことは、反射鏡73,74,75のような、直角三面鏡固有の光学的性質に基づく。
これにより、前述のような3つの反射鏡73,74,75によりステップゲージ2を跨ぐことができるとともに、測定面2S上の点Mでレーザ光を反射させるのと等価な光路(測定面2S上の点Mからステップゲージ2の長手方向に沿って投光部71および受光部72までの距離に等価な光路)を確保することができる。
【0065】
ここで、従来のステップゲージ測定装置1Pについて説明する。
図3において、従来のステップゲージ測定装置1Pでは、位置決めヘッド4、ヘッド機構5、接触式位置決め装置6P、レーザ干渉測長機7Pおよび制御装置8Pが設置される。このうち、位置決めヘッド4、ヘッド機構5は本実施形態のステップゲージ測定装置1と同様である。一方、接触式位置決め装置6P、レーザ干渉測長機7Pおよび制御装置8Pは、本実施形態のステップゲージ測定装置1とは異なる。
【0066】
接触式位置決め装置6Pは、位置決めヘッド4のプレート41に固定された接触式プローブ69Pを有し、位置決めヘッド4を移動させ、接触式プローブ69Pと測定面2Sとが接触したことを検知して移動を停止させることで、位置決めヘッド4と測定面2Sとの位置決めを行うものである。
ステップゲージ測定装置1Pでは、機械的な接触式プローブ69Pを用いることから、各ブロックゲージ2Bを位置決めする際には、ヘッド機構5により、位置決めヘッド4を昇降させて、相互の干渉を避ける必要がある。
【0067】
また、ステップゲージ測定装置1Pでは、測定対象物のステップゲージ2が静止しており、代わってヘッド機構5をステップゲージ2の長手測定方向の全長にわたって移動させる。
すなわち、ステップゲージ測定装置1Pでは、位置決めが一つの測定面2Sで終了した後、再びヘッド機構5により位置決めヘッド4を上昇させ、ヘッド機構5をステップゲージ2の長手測定方向に移動させ、次のブロックゲージ2Bの測定面2Sの近くで再び位置決めヘッド4を所望の測定面2Sの位置まで下降させ、安定状態を確認して位置決めする。
【0068】
したがって、位置決めヘッド4を、各ブロックゲージ2Bのところで繰り返し上下動させるとともに、ステップゲージ2の長手測定方向へ移動(コの字型に運動)させることになる。そのため、長尺化したステップゲージ2のピッチ測定は間欠的となり、連続測定ができず、全体の測定に長時間を要する。
【0069】
レーザ干渉測長機7Pは、ステップゲージ2の両側に投受光部76P,77Pを有する。投受光部76P,77Pは、それぞれ位置決めヘッド4に固定された反射鏡78P,79Pとの間でレーザ光の投光受光をそれぞれ行う。
【0070】
本実施形態のレーザ干渉測長機7では、投光部71から、3つの反射鏡73,74,75を経て受光部72に戻る光路構成となるが、レーザ干渉測長機7Pでは、ステップゲージ2の両側に一対の光路が構成され、投受光部76Pと反射鏡78Pとの間、および投受光部77Pと反射鏡79Pとの間で、それぞれレーザ光の投光受光が行われる。
【0071】
制御装置8Pは、接触式位置決め装置6Pを用いてヘッド機構5を移動させ、ステップゲージ2の位置決めを行うとともに、レーザ干渉測長機7Pにより、位置決めヘッド4の位置を測定する。
従来のステップゲージ測定装置1Pでは、接触式位置決め装置6Pを用いることで、ヘッド機構5の長手測定方向への移動、位置決めヘッド4の上下動と長手測定方向への移動、それらの位置決めの際の静止状態の保持、位置決め信号の発生、などの機能を得ている。
【0072】
このように、従来のステップゲージ測定装置1Pでは、本実施形態のステップゲージ測定装置1における効果が得られない。
とくに、本実施形態のステップゲージ測定装置1における特長は
、非接触位置決め装置6による効果である。
以下、本実施形態の非接触位置決め装置6について説明する。
【0073】
非接触位置決め装置6は、前述の通り、移動装置3に載置されたステップゲージ2を両側から挟むように配置された一対のホログラフィ干渉装置61を有し
、位置決め対象物であるステップゲージ2に配列された位置決め対象面である測定面2Sと、位置決めヘッド4との相対位置がそれぞれ同じ条件となるように、測定面2Sと位置決めヘッド4との位置決めを順次行うものである。
【0074】
本実施形態の非接触位置決め装置6は、位置決め対象面(前述した測定面2S)が所定の配列方向(測定面2Sと交差する方向、ゲージホルダ2Hの長手方向)に配列された位置決め対象物(ステップゲージ2)の測定面2Sを、所定の目標位置(前述したレーザ干渉測長機7の測長可能領域内の所定位置)に位置決めするものである。
【0075】
このために、非接触位置決め装置6は、前述した両側一対のホログラフィ干渉装置61と、ホログラフィ干渉装置61に共通のレーザ光源からのレーザ光を供給する投光装置62(
図4参照)と、ホログラフィ干渉装置61で得られた一対のホログラムに基づいてステップゲージ2の位置決めを行う制御装置(前述した制御装置8)と、を有する。
【0076】
図4において、投光装置62は、ステップゲージ2を保持する移動装置3の側方に配置されたレーザ光源621と、レーザ光源621からのレーザ光Loを分光する偏光ビームスプリッタ622とを有する。
偏光ビームスプリッタ622で反射されたレーザ光LA(s偏光)は、前述した配列方向つまりステップゲージ2と平行に送られ、一対のホログラフィ干渉装置61の一方(ホログラフィ干渉装置61A)に供給される。
【0077】
偏光ビームスプリッタ622を透過したレーザ光LB’(p偏光)は、反射鏡623で反射されて前述した配列方向つまりステップゲージ2と平行に送られる。そして、1/2波長板624を通る際にレーザ光LB(s偏光)に変換され、一対のホログラフィ干渉装置61のもう一方(ホログラフィ干渉装置61B)に供給される。
このように、投光装置62は、一対のホログラフィ干渉装置61に、それぞれ同じ特性のレーザ光LA,LBを供給する。
【0078】
ホログラフィ干渉装置61(61A,61B)は、それぞれ投光装置62から供給されたレーザ光LA,LBの光軸上に配列された集光レンズ611(611A,611B)、ビームスプリッタ612(612A,612B)、反射鏡613(613A,613B)を有する。
【0079】
集光レンズ611は、所定の焦点に向けてレーザ光LA,LBを絞る。
ビームスプリッタ612は、絞られたレーザ光LA,LBの一部を透過させ、他の一部を反射させる。
【0080】
ビームスプリッタ612は、反射されたレーザ光LA,LBが測定面2Sの所定位置に、所定角度で入射するように、その姿勢が調整されている。
また、集光レンズ611は、レーザ光LA,LBの焦点が、測定面2Sの所定位置に合焦するように調整されている。
【0081】
このような集光レンズ611およびビームスプリッタ612により、投光装置62から供給されたレーザ光LA,LBを、それぞれステップゲージ2を挟んで反対側から、測定面2Sに対して所定の角度で、測定面2Sの同じ位置に入射させる光学経路(第1光学経路619Aおよび第2光学経路619B)が形成される。
【0082】
前述したビームスプリッタ612を透過したレーザ光LA,LBは、反射鏡613で反射される。反射鏡613は、集光レンズ611の焦点より先に設定されている。
前述した測定面2Sに入射されたレーザ光LA,LBは、反対側のホログラフィ干渉装置61のビームスプリッタ612を透過して進む。
これらの光束(反射鏡613で反射されたレーザ光、および測定面2Sで反射されビームスプリッタ612を透過したレーザ光)は、各々の光軸が交差する投射面618(第1投射面618Aおよび第2投射面618B)で重ね合わせられ、ホログラムを生成する。
【0083】
すなわち、一方のホログラフィ干渉装置61Aに入射されたレーザ光LAは、集光レンズ611Aで集光され、ビームスプリッタ612Aに入射される。ビームスプリッタ612Aで反射されたレーザ光LAsは、測定面2Sで反射されて反対側のホログラフィ干渉装置61Bへ送られる(第1光学経路619A)。
ビームスプリッタ612Aを透過したレーザ光LArは、反射鏡613Aで反射され、第1投射面618Aに送られる。
【0084】
反対側のホログラフィ干渉装置61Bでは、第2光学経路619Bにより、レーザ光LBが分割され、レーザ光LBsが測定面2Sに入射されるとともに、レーザ光LBrが第2投射面618Bに送られる。
レーザ光LBsは、測定面2Sで反射され、反対側のホログラフィ干渉装置61Aのビームスプリッタ612Aを透過し、第1投射面618Aに送られる。
つまり、第1投射面618Aには、測定面2Sで反射されたレーザ光LBsと、参照光となるレーザ光LArとが重ね合わせられ、これにより測定面2SのホログラムHAが生成される。
【0085】
同様に、第2投射面618Bには、測定面2Sで反射されたレーザ光LAsと、参照光となるレーザ光LBrとが重ね合わせられ、これにより測定面2SのホログラムHBが生成される。
第1投射面618Aに生成されるホログラムHAと、第2投射面618Bに生成されるホログラムHBとは、光源が同じレーザ光Loから生成され、かつ測定面2Sの同じ位置に同じ角度で入射されており、従って向きが逆であるが他の条件は同一である。
【0086】
本実施形態の非接触位置決め装置6において、これらの第1投射面618Aおよび第2投射面618Bには、それぞれホログラムを記録可能な記録媒体63(第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63B)が設置されている。記録媒体63としては、既存のホログラム記録材料などを適宜利用することができる。
【0087】
第1投射面618Aに配置された第1記録媒体63Aには、予め第1基準ホログラムRHAが記録されている。
第2投射面618Bに配置された第2記録媒体63Bには、予め第2基準ホログラムRHBが記録されている。
これらの第1基準ホログラムRHAおよび第2基準ホログラムRHBは、測定面2Sが所期の位置に正確に位置決めされた基準状態において、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bに生成されるホログラムHA,HBを記録したものである。
【0088】
図5は、
図4の構成において、ステップゲージ2を移動させ、測定面2Sが所期の位置に正確に位置決めした状態を示す。
この状態で、投光装置62でレーザ光Loを発生させると、ホログラフィ干渉装置61A,61Bにそれぞれレーザ光LA,LBが供給され、第1投射面618AにはホログラムHAが生成され、第2投射面618BにはホログラムHBが生成される。
【0089】
この状態で、第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63Bにおいて書き込み動作を行うことで、各々には第1基準ホログラムRHAおよび第2基準ホログラムRHBが記録される(凍結ホログラム)。
【0090】
このようにして記録された第1基準ホログラムRHAおよび第2基準ホログラムRHBは、測定面2Sが所期の位置に正確に位置決めされた状態で、それぞれ第1投射面618Aおよび第2投射面618Bに生成されるホログラムとなっており、これらは測定面2Sの位置決め基準とすることができる。
【0091】
図4に戻って、非接触位置決め装置6は、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bに生成されるホログラム全体の画像による位置情報を集光レンズ66(第1集光レンズ66Aおよび第2集光レンズ66B)によって集め、検出素子64(第1検出素子64Aおよび第2検出素子64B)で位置情報を検出する。
【0092】
検出素子64としては、画像を検出して電気信号出力するものが望ましく、既存のイメージセンサ等が適宜利用できる。
検出素子64では、第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63Bのレーザ光入射側とは反対側の透過光を観測する。また、入射側を観測してもよい。
【0093】
第1検出素子64Aでは、第1投射面618Aに生成されるホログラムが観測される。
前述の通り、第1投射面618Aには、ホログラフィ干渉装置61Aからのレーザ光LAr,LBsにより、ホログラムHAが生成される。
【0094】
ここで、第1投射面618Aには第1記録媒体63Aが設置され、第1記録媒体63Aには第1基準ホログラムRHAが記録されている。そして、レーザ光LAr,LBsが入射されると、第1記録媒体63Aから第1基準ホログラムRHAが再生される。
従って、第1投射面618Aには、第1記録媒体63Aから再生された第1基準ホログラムRHAと、レーザ光LAr,LBsに基づく現在のホログラムHAとが重ね合わせられる。
【0095】
このようにして、第1検出素子64Aにおいては、第1基準ホログラムRHA(凍結ホログラム)および現在のホログラムHA(生のホログラム)を重ね合わせたとき、画像全体の透過光の強弱が観測される。
同様にして、第2検出素子64Bにおいては、第2基準ホログラムRHB(凍結ホログラム)および現在のホログラムHB(生のホログラム)を重ね合わせたとき、画像全体の透過光の強弱が観測される。
【0096】
このような第1検出素子64Aおよび第2検出素子64Bで観測される重ね合わせホログラムに基づいて、基準ホログラムRHA,RHBに記録された所期の位置に対する現在の測定面2Sのずれ量を検出することができる。
【0097】
つまり、所期の位置に対する現在の測定面2Sのずれ量がゼロつまり正確に一致している場合、現在のホログラムHA,HBと基準ホログラムRHA,RHBとが一致し、第1検出素子64Aおよび第2検出素子64Bで検出される信号レベルは最大となる。これに対し、所期の位置と現在の測定面2Sの位置とのずれ量が拡大するにつれ、ホログラフィ干渉により信号レベルは増減を繰り返し、ピーク値が漸減してゆく。
【0098】
従って、それぞれ第1検出素子64Aおよび第2検出素子64Bで重ね合わせホログラムを観測し、そこで検出されるそれぞれからの位置信号のずれ量の算術平均値の位置を正しいずれ量として検出し、測定面2Sの正確な位置決めを行うことができる。
これらのずれ量の検出ないし正しいずれ量による最終的な位置決め信号の位置決め動作制御は、制御装置8で一括して行われる。
【0099】
図6には、第1検出素子64Aまたは第2検出素子64Bで検出される位置決め信号と、その信号波形の整形処理の一例が示されている。
図6(A)に示す波形は、第1集光レンズ66Aまたは第2集光レンズ66Bで集光され、第1検出素子64Aまたは第2検出素子64Bで観測されるレーザ光の強弱信号を光電変換した位置決め信号波形を示す。
【0100】
図6(A)の信号波形は、現在のホログラムHAと基準ホログラムRHAとが一致したとき、または、現在のホログラムHBと基準ホログラムRHBとが一致したとき、すなわち測定面2Sの位置情報と位置決めすべき所期の位置情報とが最も合致したとき、強度変化が最大、最小となる。
【0101】
この状態から、ステップゲージ2を少しずつ移動させると、測定面2Sの所期の位置に対するずれ量が拡大するに従って、現在のホログラムHAと基準ホログラムRHAとが合致しなくなり、または、現在のホログラムHBと基準ホログラムRHBとが合致しなくなり、やがて強弱変化が無くなる。
ステップゲージ2が更に移動し、次のブロックゲージ2Bの測定面2Sに対してレーザ光LA,LBが入射されると、新たな測定面2Sについて同様な位置決め信号の強弱変化が繰り返される。
【0102】
図6(B)は、前述した
図6(A)の位置決め信号を、適当な電圧レベルでスライスした波形である。これを微分すると、
図6(C)に示す微分波形が得られる。この微分波形を矩形整形することで、
図6(D)に示す矩形波の位置決め信号が得られる。
【0103】
このような矩形波の位置決め信号においては、前述した
図6(A)における最大信号位置に対応した矩形波の位置を調べておくことで、何番目の矩形波を目標の位置決め信号として用いるか等の簡単な指定が可能となり、1ピッチの間隔測定などの演算処理を容易に実行することができる。
【0104】
本実施形態では、
図6の信号波形は、第1検出素子64Aおよび第2検出素子64Bの各々で検出される。制御装置8は、第1検出素子64Aから得られる信号波形と、第2検出素子64Bから得られる信号波形とを、互いに電子回路上の重ね合わせ(算術和)で平均位置を検知したうえで、最終的な位置決め信号を発生させる。各測定面2S間で発生させるこの最終的な位置決め信号間をレーザ干渉測長機7で測長すると、測長値には(自動的に)所定のピッチあるいは所定の間隔値との差異が反映される。したがって、測定対象物のステップゲージ2のピッチ誤差あるいは間隔の誤差がプラスかマイナスか判別され、測定できる。
【0105】
以上に述べた本実施形態では、一対のレーザ光LA,LBが、位置決め対象物であるステップゲージ2を挟んで反対側から、それぞれ位置決め対象面である測定面2Sの同じ位置に同じ角度で斜めに入射され、各々の反射光が、位置決め対象物を挟んで反対側に一対のホログラムHA,HBを生成する。
この際、一対のレーザ光が位置決め対象面に入射して反射される光路(第1光学経路619Aおよび第2光学経路619B)は、互いに同じ経路で逆向きとなり、ステップゲージ2の長手方向を基準として各側で対称形となる。
【0106】
ここで、ステップゲージ2を挟んで各側に得られた一対のホログラムHA,HBは、それぞれ測定面2Sの傾きの影響を受ける。しかし、本実施形態では、一対のホログラムHA,HBは測定面2Sの互いに反対側から同じ角度で入射された一対のレーザ光LA,LBに基づいているため、各側に得られる一対のホログラムHA,HBに生じる変化は互いに逆向きとなる。
従って、各側に得られた一対のホログラムHA,HBから位置情報(
図6参照)を検出し、得られた一対の位置情報を合成(算術和の平均値の位置を発生)することで、各々の傾きの影響による測定誤差を相殺することができる。
【0107】
このように、本実施形態では、ホログラフィ干渉を利用した位置決めにおいて、位置決め対象物であるステップゲージ2の各側でのホログラフィ測定を行い、その結果の「算術和の平均値」を求めることで、傾き等の誤差が相殺され、正しい位置に位置決めを行うことができる。
これにより、長尺で大型の位置決め対象物に適用した場合でも、位置決め対象物の測定軸方向のアライメントの狂いや移動台の姿勢変化(ピッチング、ヨーイング、ローリング、など)の影響を解消することができる。
【0108】
さらに、本実施形態においては、位置決め対象面である測定面2Sの正しい姿勢を反映した基準ホログラム(第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63B)を準備しておき、これらの基準ホログラムから再生されるホログラム(基準ホログラムRHA,RHB)と現在のホログラムHA,HBとを重ね合わせることで、測定面2Sの傾きおよび変位の情報を検出することができる。
【0109】
このようなホログラムの重ね合わせは、位置決め対象物であるステップゲージ2の互いに反対側で対称に行われる。各側のホログラムを相互に重ね合わせることで、各側のホログラムの重ね合わせで生じる情報のうち、測定面2Sの傾きは相殺され、測定面2Sの変位(所期の位置つまり基準値に対する測定面2Sの位置あるいは配列ピッチのずれ量)のみが検出される。従って、各側のホログラムの重ね合わせから検出される変位に基づいて、測定面2Sの位置決めを行うことで、測定面2Sの傾きの影響を受けない高精度な位置決めを行うことができる。
【0110】
このような基準ホログラムは、予め測定面2Sが所期の基準位置に配置された状態で、現在のホログラムHA,HBを記録することで得ることができる。従って、位置決めを行う実際の環境で基準ホログラムを作製することができ、基準位置を高精度に割り出しておけば、これを基準ホログラムとして繰り返し利用することができる。
【0111】
さらに、本実施形態の装置では、第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63Bに第1基準ホログラムRHAおよび第2基準ホログラムRHBを記録させておき、現在のホログラムHA,HBを重ね合わせるようにしたため、基準に対する変位として各側の位置信号を検出することができる。
【0112】
そして、第1検出素子64Aによる位置信号と、第2検出素子64Bによる位置信号とを、互いに合成することで、第1投射面618Aに生じるホログラムに含まれる傾き誤差と、第2投射面618Bに生じるホログラムに含まれる傾き誤差とが、互いに相殺される。その結果、前述した高精度の位置決めが実現できる。
【0113】
さらに、本実施形態においては、一対のホログラフィ干渉装置61(61A,61B)が対称に配置されることに加え、第1記録媒体63Aと第1検出素子64Aおよび第2記録媒体63Bと第2検出素子64Bが、すべて対称な2系統に形成されており、各側での誤差の相殺を確実に行うことができる。
【0114】
〔第2実施形態〕
図7および
図8には、本発明の第2実施形態が示されている。
前述した第1実施形態の非接触位置決め装置6では、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bにおいて、それぞれレーザ光LAr,LBsのホログラフィ干渉あるいはレーザ光LBr,LAsのホログラフィ干渉を生じさせてホログラムHA,HBを生成した。さらに、第1記録媒体63Aおよび第2記録媒体63Bに基準ホログラムRHA,RHBを記録しておき、それぞれと現在のホログラムHA,HBとの重ね合わせを第1検出素子64Aおよび第2検出素子64Bで観測した。
【0115】
これに対し、本実施形態では、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bまでの2系統の光路(第1光学経路619Aおよび第2光学経路619B)は共通であるが、それ以降は1系統とされ、測定面2Sで逆方向に反射されたレーザ光LAs,LBsどうしをホログラフィ干渉させることで、同様な効果を得つつ、構造の簡略化を図っている。
なお、本実施形態は非接触位置決め装置6の構成が異なるのみであり、ステップゲージ測定装置1と共通する構成についての重複した説明は省略する。
【0116】
図7(A)において、本実施形態の非接触位置決め装置6Aは、前述した第1実施形態と同様な投光装置62および両側一対のホログラフィ干渉装置61A,61Bを有する。
ただし、本実施形態では、第1実施形態のようなレーザ光LAr、LBrは用いない。
【0117】
本実施形態では、第1投射面618Aに記録媒体63が設置され、その背面側に集光レンズ66および検出素子64が設置される。これらの記録媒体63、集光レンズ66および検出素子64は、前述した第1実施形態の第1記録媒体63A、第1集光レンズ66Aおよび第1検出素子64Aと同様である。
本実施形態では、第2投射面618Bの位置に反射鏡65が設置され、測定面2Sで反射されたレーザ光LAsが第1投射面618Aの記録媒体63に向けて反射される。
【0118】
本実施形態のホログラフィ干渉装置61A,61Bでは、第1光学経路619Aおよび第2光学経路619Bにより、測定面2Sの同じ位置に、同じ角度で反対側からレーザ光LAs,LBsが入射され、反射される。
反射されたレーザ光LAsは、ビームスプリッタ612Bを透過し、第2投射面618Bの反射鏡65で反射され、第1投射面618Aの記録媒体63に入射される。
反射されたレーザ光LBsは、ビームスプリッタ612Aを透過し、第1投射面618Aの記録媒体63に入射される。
従って、第1投射面618Aにおいては、レーザ光LAsおよびレーザ光LBsが重ね合わせられ、これらによりホログラムHCが生成される。
【0119】
記録媒体63には、予め基準ホログラムRHCが記録されている。
図8(A)に示すように、測定面2Sを、前述した第1実施形態と同様に正確に位置決めしておき、その際のホログラムHCを記録媒体63に記録することで、基準ホログラムRHCが記録される。
【0120】
なお、
図7(B)および
図8(B)に示すように、レーザ光LAs、LBsの光路は、測定面2Sつまりブロックゲージ2Bの高さ範囲にあるが、測定面2Sを測定する状態では各ブロックゲージ2Bの間隙を通過するように配置されている。
【0121】
従って、検出素子64では、第1投射面618Aに生成される現在のホログラムHCと、予め記録媒体63に記録されている基準ホログラムRHCとの重ね合わせが生じ、その信号波形の最大、最小を検出することで、測定面2Sの位置決めを行うことができる。
この際、ホログラムHCは、互いに逆向きのレーザ光LAsおよびレーザ光LBsを重ね合わせたものであるため、測定面2Sの傾きの影響は各々に逆向きに生じ、重ね合わせに伴って互いに相殺される。
【0122】
このような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bまでの2系統の光路(第1光学経路619Aおよび第2光学経路619B)は共通であるが、それ以降の記録媒体63および検出素子64は1系統とされており、構造の簡略化およびコストの低減を図ることができる。
また、ホログラムHCとして、互いに逆向きのレーザ光LAsおよびレーザ光LBsを重ね合わせることで、ホログラム段階で測定面2Sの傾きの影響を相殺することができ、制御装置8における処理を簡略化することができる。
【0123】
〔第3実施形態〕
図9ないし
図12には、本発明の第3実施形態が示されている。
前述した第2実施形態の非接触位置決め装置6Aでは、互いに逆向きのレーザ光LAsとレーザ光LBsとのホログラフィ干渉によりホログラムHCを生成していた。
本実施形態でも、同様なホログラムHCを採用するが、逆向きのレーザ光LAsとレーザ光LBsの光路構成が異なる。
【0124】
前述した第2実施形態では、第1投射面618Aに記録媒体63が設置され、第2投射面618Bの位置に反射鏡65が設置され、第2投射面618Bのレーザ光LAsを第1投射面618A側に送り、第1投射面618Aのレーザ光LBsと重ね合わせていた。
つまり、本発明の必須構成としての第1光学経路619Aおよび第2光学経路619Bの対称性は確保されていたが、第1投射面618Aおよび第2投射面618B以降の光路構成が非対称になっていた。
これに対し、本実施形態の非接触位置決め装置6Bでは、第1投射面618Aおよび第2投射面618B以降の光路構成についても、対称性を確保する。
【0125】
図9に示すように、本実施形態では、第1投射面618Aおよび第2投射面618Bの位置に、それぞれ第1反射鏡65Aおよび第2反射鏡65Bが設置されている。測定面2Sで反射されたレーザ光LAs、LBsは、それぞれ第1反射鏡65Aおよび第2反射鏡65Bで反射され、ステップゲージ2の長手方向軸線上に配置された記録媒体63に送られる。
記録媒体63の背面側には集光レンズ66および検出素子64が設置され、記録媒体63の表面に生成されるホログラムHCおよび再生される基準ホログラムRHCの重ね合わせの観測が行われる。
【0126】
図10に示すように、記録媒体63、集光レンズ66および検出素子64は、ステップゲージ2の上方に支持されており、第1反射鏡65Aおよび第2反射鏡65Bから記録媒体63に送られるレーザ光LAs、LBsがステップゲージ2と干渉することがない。
なお、記録媒体63に予め記録しておく基準ホログラムRHCは、
図11および
図12に示す状態で記録される。
【0127】
このような本実施形態によれば、前述した第2実施形態と同様な効果が得られる。
さらに、本実施形態では、第1光学経路619Aおよび第2光学経路619Bの対称性に加えて、第1反射鏡65Aおよび第2反射鏡65Bから記録媒体63に至る光路構成についても対称性が確保されている。このため、レーザ光LAr、LBr(第1実施形態)の省略による簡略化の効果を得つつ、全体配置を対称にすることができ、簡略化と高精度とを両立することができる。
【0128】
〔第4実施形態〕
図13および
図14には、本発明の第4実施形態が示されている。
前述した
第2実施形態および第3実施形態の前提となる第1実施形態では、投光部71、受光部72および3つの反射鏡73,74,75を用いるレーザ干渉測長機7により、両側で投受光する従来のレーザ干渉測長機7Pでは得られない各効果を得ていた。
【0129】
すなわち、第1実施形態のレーザ干渉測長機7では、投光部71から反射鏡73までの間の光路および反射鏡74から受光部72までの間の光路を、それぞれ測長対象であるブロックゲージ2Bおよび測定面2Sの高さに維持している。このような構成により、測定軸線を近づけて誤差を抑制できるとともに、ステップゲージ2の姿勢変化とくにヨーイングに基づく誤差を解消することができる。
【0130】
また、反射鏡73から反射鏡75を経て反射鏡74に至る空間の全光路の長さと、反射鏡73または反射鏡74から測定面2Sまでの仮想的な往復光路の長さとが、一致するように設定されている。これにより、測定面2S上の点Mでレーザ光を反射させるのと等価な光路を確保することができる。
これに対し、本実施形態のレーザ干渉測長機7Aは、投光部71、受光部72および2つの反射鏡73,74を用いることで、光路構成の簡略化が図られている。
【0131】
図13において、レーザ干渉測長機7Aは、前述した第1実施形態のレーザ干渉測長機7と同様に、非接触位置決め装置6により測定面2Sと位置決めヘッド4とが同じ条件で位置決めされた状態で、位置決めヘッド4の位置を高精度に測定することで、ステップゲージ2に配列された測定面2Sの位置を高精度に測定するものである。
【0132】
投光部71および受光部72は、移動装置3の設置台33の両端部に設置され、移動台31およびこれに保持されたステップゲージ2とともに移動する。投光部71および受光部72は、設置台33の両端部に設置され、移動台31を挟んで等距離の反対側に設置されている。このような光路構成により、測長時に移動装置3およびステップゲージ2にヨーイング誤差が発生しても、これを相殺することができる。
2つの反射鏡73,74は、それぞれ位置決めヘッド4に固定され、投光部71および受光部72との相対的な距離変化の測長を可能にする。
【0133】
反射鏡73,74は、それぞれ、移動装置3を挟んで等距離の反対側に配置されている。
この際、反射鏡73,74は、ステップゲージ2よりも高い位置に支持されており、反射鏡73,74の間の光路がブロックゲージ2B等と干渉することがない。
また、投光部71および受光部72も設置台33に載せ、反射鏡73,74に対応した高さでステップゲージ2と共通の移動台31に固定されており、投光部71から反射鏡73までの間および反射鏡74から受光部72までの間の各光路は、それぞれステップゲージ2の長手方向(ブロックゲージ2Bの配列方向)と平行とされている。
【0134】
これらの投光部71、受光部72および反射鏡73,74は、次のような光路を構成するように、その位置および姿勢が調整されている。
図14(A)および
図14(B)に示すように、投光部71から出射されたレーザ光は、移動装置3に保持されたステップゲージ2の長手方向に沿って進み、反射鏡73に入射される。反射鏡73で反射されたレーザ光は、直交方向に向きを変え、ステップゲージ2の上方を横断して反射鏡74に入射される。反射鏡74で反射されたレーザ光は、移動装置3に保持されたステップゲージ2の長手方向に沿って先ほどとは逆向きに進み、受光部72で受光される。
【0135】
このような光路を有するレーザ干渉測長機7Aでは、位置決めヘッド4や前述の移動台31が移動することで、ステップゲージ2の長手方向に沿った区間である、投光部71から反射鏡73までの間および反射鏡74から受光部72までの間の光路長が変化する。従って、受光部72で受光した測定レーザ光を、投光部71から受光部72に直接送られる参照レーザ光と干渉させることで、位置決めヘッド4や前述の移動台31の変位を測定し、位置決めヘッド4までの距離を測長することができる。
【0136】
また、
図14(A)および
図14(B)に示すように、反射鏡73,74の反射位置を点A,点Cとし、点Aと点Cを結ぶ線分の中点を点Nとする。ここで、非接触位置決め装置6によるレーザ光が入射される測定面2S上の点Mとして、点Nの直下で点Mと同じ高さの点N′、点Mの上方で点Nと同じ高さの点M’とすると、点Mと点M’および点Nと点N’とはそれぞれ高さhだけオフセットし、点M’および点Nはそれぞれレーザ干渉測長機7Aによるレーザ光の高さと同じとなる。このとき、線分ANと線分NCとの長さの和は2D、線分M′Nすなわち線分MN′の往復の長さも2Dとなる。このことは、反射鏡73,74のような直角二面鏡の光学的性質に基づく。
【0137】
これにより、前述のような2つの反射鏡73,74を用いて、測定面2S上の点Mでレーザ光を反射させるのと等価な光路(測定面2S上の点Mからステップゲージ2の長手方向に沿って投光部71および受光部72までの距離に等価な光路)を確保することができる。
【0138】
なお、前述した第1実施形態では、3つの反射鏡73,74,75によりステップゲージ2を跨ぐことで、投光部71から反射鏡73までの間の光路および反射鏡74から受光部72までの間の光路を、それぞれ測長対象であるブロックゲージ2Bおよび測定面2Sの高さに維持することができ、ステップゲージ2の姿勢変化とくにピッチング誤差およびヨーイング誤差を解消するようにしていた。
【0139】
これに対し、本実施形態では、測定面2Sのヨーイング誤差は解消できるが、ピッチング誤差が生じる可能性がある。
すなわち、本実施形態では、投光部71から反射鏡73までの間の光路および反射鏡74から受光部72までの間の光路が、ステップゲージ2よりも高い位置に設定されるため、測定軸線が高さhだけオフセットし、ピッチング誤差が生じる可能性がある。
【0140】
しかし、ピッチング誤差に関しては、高さhのオフセット量を予め小さく設計すること、また、移動装置3をはじめとする装置全体の基板の剛性を高めることで、その影響を十分に解消可能である。
従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0141】
〔変形例〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
前述した各実施形態では、本発明の適用対象を、長尺の基準器であるステップゲージ2のピッチを測定するためのステップゲージ測定装置1とした。
【0142】
しかし、本発明は、ステップゲージ2のような、多数の測定面2Sが所期のピッチで配列される基準器のほか、例えば、歯面が所期のピッチで配列されるラック、ねじ、ボールねじや、同様な表面が所期のピッチで配列されるコイルその他の部材など、多数の測定対象面が配列された測定対象物に対する測定装置に適用することもできる。
【0143】
図15において、ステップゲージ2は、前述した各実施形態で位置決め対象としたものであり、長尺のゲージホルダ2Hに、所定ピッチで多数のブロックゲージ2Bが配列されている。各ブロックゲージ2Bのピッチを測定するために、各ブロックゲージ2Bの同じ側にある測定面2Sの、ゲージホルダ2Hの長手方向(配列方向)の位置を測定する。この測定のための位置決めとして、本発明を適用することができる。
【0144】
前述したステップゲージ2等は、ブロックゲージ2Bもそのピッチも数mm以上のオーダーであるが、さらに微小なブロック等のピッチを測定するために、本発明に基づく位置決めを行うことができる。
【0145】
図16において、マイクロパターン21は、基材21Bの表面に凸部21Eが形成される。とくに所定ピッチで凸部21Eが配列される場合、そのピッチの測定のための位置決めに本発明を適用することができる。この場合、前述した各実施形態と同様に、凸部21Eが配列された方向の一方の側壁面21Sに順次レーザ光LAs,LBsを投受光し、ホログラフィ干渉による位置決めを行うことができる。
【0146】
前述した各実施形態では、ホログラムを生成するレーザ光LAs,LBsを平坦な測定面2Sに順次照射したが、これらの面は曲面であってもよい。
図17において、ボールねじ22は、所定ピッチでねじ山22Tが形成されている。ボールねじ22の長手方向に見ると、所定ピッチでねじ山22Tが繰り返し配列された状態となり、そのピッチの測定に本発明を適用することができる。
【0147】
ここで、ねじ山22Tの溝側面22Sは、ボールねじ22がボールを介してナット側に螺合するために、ボールと転動するための曲面となっている。しかし、溝側面22Sに順次照射されるレーザ光LAs,LBsを狭い照射領域に絞り、かつ表面反射光の光沢現象(sheen現象)を利用することで、平面と同様に処理することができる。
【0148】
前述した適用対象は、ステップゲージ2やボールねじ22のような直線的に延びるものであったり、マイクロパターン21のように平面上の所定方向に直線的に配列されたものに適用されるものであったりした。
しかし、本発明は、例えば歯車のように、円周面上に周方向に沿って複数の歯面が配列される形状に対して適用してもよい。
【0149】
図18において、歯車23は、周面に所定ピッチで歯23Tが形成されている。歯車23の周方向に見ると、所定ピッチで歯23Tが繰り返し配列された状態となり、そのピッチの測定に本発明を適用することができる。具体的には、歯車23を回転させ、各歯23Tを1ピッチずつ移動させ、各歯23Tの歯面23Sに順次レーザ光LAs,LBsを照射することで、前述した各実施形態と同様に処理することができる。
【0150】
さらに、本発明は、前述したステップゲージ2の測定面2S等のピッチ測定のための位置決めに限らず、各種の高精度移動機構の非接触位置決めなど、他の目的での位置決めにも利用でき、多数の位置決め対象面が配列された位置決め対象物に対して有効である。