(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル樹脂100質量部に対し、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを1〜5質量部含有するアクリル樹脂組成物の成形品であって、該アクリル樹脂が、メチルメタクリレート80〜100wt%、及び、炭素原子数2以上の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート20〜0wt%を重合して得られ、且つガラス転移温度が80℃以上であり、該アクリル樹脂組成物を、200〜260℃の温度範囲で溶融混練してなる成形品。
【背景技術】
【0002】
メチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂の成形品は、プラスチック材料の中でも特に透明性に優れており、この特徴を生かして、美的外観が重視される用途に用いられたり、各種プラスチック材料を被覆する保護シートとして用いられたりしている。
【0003】
保護シートには、耐候性や耐傷性、耐汚染性、表面の艶の調整等が要求されるが、特に、耐候性に優れることが重視されている。
【0004】
例えば、特許文献1において、照明カバー、ショーウィンドー、自動販売機全面板、グレージングにおいて害虫誘因阻止用の保護フィルムとして、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤等をアクリル樹脂に配合したフィルムを提案し、400nm以下の波長の紫外線をカットすることが示されているが、340nm以下の紫外線領域については、何ら記載されていなかった。また、特許文献1は、ポリカーボネート樹脂成形体の保護層としてアクリル樹脂組成物が用いられているが、保護層の着色防止効果は満足できるものではなかった。
【0005】
特許文献2において、トリアジン系紫外線吸収剤を0.1〜5重量%、且つ0.17〜2.28g/m
2の割合でアクリル樹脂に含有させたアクリルフィルムにより硬質PVC板をラミネートした保護フィルムが示されているが、該保護フィルムの着色防止効果は、未だ満足できるものではなかった。
【0006】
特許文献3において、ポリカーボネート樹脂基材の面上に被覆された紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂層と、該アクリル樹脂層上に、シリコーン含有高分子紫外線吸収剤とポリオルガノシロキサンを含む組成物を塗布して硬化させたものが記載されているが、塗膜物の着色防止効果は、未だ満足できるものではなかった。
【0007】
特許文献4において、ポリカーボネート樹脂基材の面上に被覆された紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂層と、該アクリル樹脂層上に、特定のアルキル基を有するオルガノトリアルコキシシランの混合物、無水珪酸を含有し粒径が4−20nmのコロイダルシリカ、アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート、シリコーン含有高分子紫外線吸収剤を特定の比率で配合した樹脂用コーティング組成物でコーティングして硬化させた硬化層からなる樹脂積層体を提案しているが、積層物の着色防止効果は未だ満足できるものではなかった。
【0008】
特許文献5において、シクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有するアクリル樹脂に対し、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含む紫外線吸収剤を含有し成形した化粧シートが示されている。シートの成膜方法としては、溶液流延成膜法と溶融流延成形法が挙げられるが、特許文献5の化粧シートは溶液流延成膜法によって成形されたものである。溶液流延成膜法は、溶剤にアクリル樹脂を溶解させたのちに溶剤を除去して成膜する製造方法であって、水洗や乾燥工程を要するため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
一方、溶融流延成形法とは、アクリル樹脂を加熱溶融した溶融物を支持体上で流延して冷却固化したのち、必要に応じて延伸又は圧延を行って成形する方法である。
特許文献5に記載のアクリル樹脂を溶融流延成形法で成形した場合、200℃未満の加工温度で溶融混練することにより造粒は可能であるが、成形した成形品の表面が荒れるという問題があった。成形品の表面荒れは、200℃以上の加工温度で溶融混練することで改善されるが、200℃以上の温度で溶融混練した場合、アクリル樹脂の溶融粘度が低下し成形できないという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明におけるアクリル樹脂は、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、メチルメタクリレートを80wt%以上含む共重合体である。
【0020】
前記共重合体において、メチルメタクリレートと共に含有することができるモノマーとしては、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリレート及びその他のモノマー成分が挙げられる。尚、本発明において(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及びアクリレート並びに双方の混合物を表す。
メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)クリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本発明において、前記メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリレートは、炭素原子数2以上の、特に、2以上〜8以下の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
前記その他のモノマー成分としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状基を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明において、アクリル樹脂が共重合体である場合、メチルメタクリレートと共に含有することができるモノマーの好ましい配合量は、アクリル樹脂中、0〜20wt%であり、好ましくは、0〜10wt%、より好ましくは、0〜5wt%である。モノマー成分の配合量が、20wt%を超えると、アクリル樹脂の耐熱性が不足する場合がある。
【0023】
本発明において、アクリル樹脂としては、メチルメタクリレートの単独重合体、及び、メチルメタクリレートと炭素原子数2以上〜8以下の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの共重合体が、顕著な耐熱性を有することから好ましい。
【0024】
本発明において、アクリル樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上であることを要する。ガラス転移温度が80℃未満のアクリル樹脂を用いた場合、200℃以上の温度で溶融混練するとアクリル樹脂の溶融粘度が低下し、フィルムを成形できない場合がある。尚、ガラス転移温度の上限は、105℃(モノマー成分の全量が、メチルメタクリレートであるアクリル樹脂)である。
【0025】
本発明において、ガラス転移温度とは、DSC(示差走査熱量計)を用いて窒素雰囲気下、試料の温度を10℃/minで上昇させながら吸熱量を測定し、温度変化グラフにおけるベースラインと試料のエンタルピー緩和に由来する変曲点での接線の交点をガラス転移温度とする。
尚、共重合体のガラス転移温度は、各モノマー成分のガラス転移温度及び重量分率をFOXの式に導入して算出した数値とする。
【0026】
本発明において、アクリル樹脂を構成するモノマー成分の硬化方法としては、一液硬化タイプ、硬化剤を用いる二液硬化タイプ、或いは紫外線や電離放射線等を照射して硬化する活性エネルギー線硬化タイプのいずれも使用可能であるが、耐侯性を考慮すると紫外線硬化タイプであるものが好ましく、各種基材に貼り合わせた後の加工性を考慮するならば、イソシアネート硬化によって架橋される二液硬化タイプが好ましい。
【0027】
前記アクリル樹脂を重合する際に、ラジカル重合開始剤を用いることができる。該ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0028】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等のケトン系化合物、オキシムエステル系化合物等、従来既知の化合物を用いることができる。
【0029】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p−ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0030】
前記ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル等が挙げられる。
【0031】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0032】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0033】
前記オキシム系化合物としては、例えば、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物が挙げられるほか、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0034】
その他の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)]チタニウム等のチタノセン系化合物等が挙げられる。
【0035】
前記熱ラジカル重合開始剤としては、公知の過酸化物系化合物やアゾ系化合物を用いることができる。
前記過酸化物系化合物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサンケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系;イソブチルパーオキサイド、m−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、α−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系;2,4,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系のものや、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系;1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシ吉草酸−n−ブチルエステル等のパーオキシケタール系;2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシフェノキシアセテート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシトリメチルオジペート等のアルキルパーエステル系;ジ−tert−メチキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート系;その他のアセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート等の他、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類が挙げられる。
【0036】
前記アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4,4−トリメチルペンタン2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(メチルイソブチレート)、α,α’−アゾビス−(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレイン酸)等が挙げられる。
【0037】
重合は、前記ラジカル重合開始剤を用いる場合、必要に応じて溶媒を混合し、活性光の照射や、80〜150℃の熱を与える条件によって重合反応を行うことができる。
前記溶媒としては、例えば、水、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルエーテルアセテート、エトキシエチルエーテルプロピオネート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株)製商品名)、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)製商品名)等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0038】
活性光の光源としては、波長300〜450nmの光を発光するものを用いることができ、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を用いることができる。
【0039】
前記重合反応で用いられる重合槽としては、既存の重合設備における連続反応槽をそのまま使用すればよく、サイズ、形状、材質等本発明が従来の重合設備に対して特に限定されることはない。
【0040】
重合して得られるアクリル樹脂の分子量は、GPCで測定した質量平均分子量が5万〜20万であることが好ましく、6万〜15万であることがより好ましい。アクリル樹脂の質量平均分子量が5万以上であれば成形体の強度や耐久性が良好であり、20万以下であれば流動性等の成形時の加工性が向上するので好ましい。
【0041】
本発明で用いるトリアジン系紫外線吸収剤について説明する。
本発明のアクリル樹脂組成物は、280−300nmの波長領域の吸収能が高いトリアジン系紫外線吸収剤を含有することに特徴を有する。トリアジン系紫外線吸収剤のうち、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールは前記波長領域における吸収能が高く、吸収能を長期に維持することができることから、本発明では、トリアジン系紫外線吸収剤は、必須成分として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含み、本発明で使用するトリアジン系紫外線吸収剤の80wt%以上、より好ましくは90wt%以上が、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールであることが好ましい。
【0042】
前記の2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール以外のトリアジン系紫外線吸収剤(以下、その他のトリアジン系紫外線吸収剤ともいう)としては、例えば、4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メトキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)フェノール、ビス(2−(4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル)アジペート、6−(4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキシルメタクリレート、ビス(2−(4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル)ドデカンジオエート、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシ)プロポキシ)フェノール、トリオクチル 2,2’,2”−(((1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリス(3−ヒドロキシベンゼン−4、1−ジイル))トリス(オキシ)トリプロピオネート、6,6’−(6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(3−ブトキシフェノール)、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((6−メチルヘプチル)オキシ)フェノール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0043】
前記トリアジン系紫外線吸収剤をアクリル樹脂に配合する方法としては、特に限定されず、公知の樹脂添加剤の配合技術を用いることができる。例えば、前記アクリル樹脂を重合する際に予め重合系に添加する方法、重合途中で添加する方法、重合後に添加する方法の何れも用いてもよい。また、アクリル樹脂の重合後に配合する場合、重合後のアクリル樹脂の粉末又はペレットとヘンシェルミキサー等で混合したものを押出機等の加工機器を用いて混練する方法、トリアジン系紫外線吸収剤をマスターバッチにしてアクリル樹脂に配合する方法等を挙げることができる。用いる加工機器の種類や加工温度、加工後の冷却条件等も特に制限なく用いることができ、得られるアクリル樹脂組成物の物性が所望の用途に適したものになるように条件を選択することができる。また、本発明のアクリル樹脂組成物を単独又は以下に列挙する他の樹脂添加剤或いは充填剤等と混合して顆粒にしたものをアクリル樹脂に配合することができる。
【0044】
本発明のアクリル樹脂組成物におけるトリアジン系紫外線吸収剤の配合量は、アクリル樹脂100質量部に対し、0.1〜8質量部であり、好ましくは、1〜5質量部である。この添加量は、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールとその他のトリアジン系紫外線吸収剤の合計量を表す。0.1質量部より少ない場合、紫外線領域の吸収能が不足する場合があり、8質量部より多すぎるとアクリル樹脂組成物を成形加工して得られる成形品の着色が顕著になる場合がある。
【0045】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、通常一般に用いられる樹脂添加剤をアクリル樹脂に添加することができる。前記樹脂添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、造核剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、充填材、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、帯電防止剤、顔料、染料等を挙げることができる。
【0046】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’−オキサミド−ビス[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−エチルヘキシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸及びC13−15アルキルのエステル、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(アデカパルマロール社製商品名AO.OH.998)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフォビン、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[モノエチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネートカルシウム塩、5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2(3H)−ベンゾフラノンとo−キシレンとの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、DL−a−トコフェノール(ビタミンE)、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、ビス[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’―tert−三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ステアリル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド等の3−(3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸誘導体等が挙げられる。前記フェノール系酸化防止剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部、より好ましくは、0.03〜3質量部である。
【0047】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキストリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピルグリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−tert−ブチル−4−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニル−テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2―tert−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、(1−メチル−1―プロペニル−3−イリデン)トリス(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9−ビス(4−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ポリ4,4’−イソプロピリデンジフェノールC12−15アルコールホスファイト等が挙げられる。
リン系酸化防止剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜0.5質量部である。
【0048】
前記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート]メタン、ビス(メチル−4−[3−n−アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5−tert−ブチルフェニル)スルファイド、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリル/ステアリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、ジステアリル−ジサルファイドが挙げられる。
チオエーテル系酸化防止剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜0.5質量部である。
【0049】
前記トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−tert−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−tert−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−tert−ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−tert−アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
前記トリアジン系紫外線吸収剤とは異なる他の紫外線吸収剤の使用量は、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
具体的には、アクリル樹脂100質量部に対し、トリアジン系紫外線吸収剤及びトリアジン系以外の紫外線吸収剤の合計量が、1〜5質量部であり、より好ましくは、トリアジン系以外の紫外線吸収剤の使用量が、アクリル樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部である。
【0050】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−tert−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN NOR 371等が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系光安定剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0051】
前記造核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4−tert−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム及び2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート及びリチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、及びビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキシル]−1,2,3−プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”−トリシクロヘキシル−1,3,5−ベンゼントリカルボキミド、N,N’−ジシクロヘキシルナフタレンジカルボキサミド、1,3,5−トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等を挙げることができる。
前記造核剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは、0.005〜0.5質量部である。
【0052】
前記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、(1−メチルエチリデン)−4,1−フェニレンテトラフェニルジホスフェート、1,3−フェニレンテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、株式会社ADEKA製商品名アデカスタブFP−500、株式会社ADEKA製商品名アデカスタブFP−600、株式会社ADEKA製商品名アデカスタブFP−800等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等を挙げることができる。これら難燃剤はフッ素樹脂等のドリップ防止剤や多価アルコール、ハイドロタルサイト等の難燃助剤と併用することが好ましい。
前記難燃剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、1〜50質量部、より好ましくは、10〜30質量部である。
【0053】
前記滑剤は、成形体表面に滑性を付与し傷つき防止効果を高める目的で加えられる。滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、ブチルステアレート、ステアリルアルコール、ステアリン酸モノグリセライド、ソルビタンモノパルミチテート、ソルビタンモノステアレート、マンニトール、ステアリン酸、硬化ひまし油、ステアリンサンアマイド、オレイン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
前記滑剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.03〜2質量部、より好ましくは、0.01〜0.5質量部である。
【0054】
前記充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス粉末、ガラス繊維、クレー、ドロマイト、マイカ、シリカ、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラステナイト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート等を挙げることができ、粒子径(繊維状においては繊維径や繊維長及びアスペクト比)を適宜選択して用いることができる。また、充填剤は、必要に応じて表面処理したものを用いることができる。
前記充填剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.01〜80質量部、より好ましくは、1〜50質量部である。
【0055】
前記金属石鹸としては、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属と、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の飽和又は不飽和脂肪酸の塩が用いられる。
前記金属石鹸の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対し、金属石鹸0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部である。
【0056】
前記ハイドロタルサイト類としては、天然物や合成物として知られるマグネシウム、アルミニウム、水酸基、炭酸基及び任意の結晶水からなる複合塩化合物であり、マグネシウム又はアルミニウムの一部をアルカリ金属や亜鉛等他の金属で置換したものや水酸基、炭酸基を他のアニオン基で置換したものが挙げられ、具体的には、例えば、下記一般式(2)で表されるハイドロタルサイトの金属をアルカリ金属に置換したものが挙げられる。また、Al―Li系のハイドロタルサイト類としては、下記一般式(3)で表される化合物も用いることができる。
【化1】
ここで、一般式(2)中、x1及びx2はそれぞれ下記式、
0≦x2/x1<10,2≦x1+x2≦20
で表される条件を満たす数を表し、pは0又は正の数を表す。
【化2】
ここで、一般式(3)中、A
q-は、q価のアニオンを表し、pは0又は正の数を表す。
また、前記ハイドロタルサイト類における炭酸アニオンは、一部を他のアニオンで置換したものでもよい。
【0057】
前記ハイドロタルサイト類は、結晶水を脱水したものであってもよく、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆されたものであってもよい。
【0058】
前記ハイドロタルサイト類は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。該化合物の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129合公報、特公平3−36839号公報、特開昭61−174270号公報、特開平5−179052号公報等に記載されている公知の方法が挙げられる。また、前記ハイドロタルサイト類は、その結晶構造、結晶粒子等に制限されることなく使用することができる。
前記ハイドロタルサイト類の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部、より好ましくは、0.05〜3質量部である。
【0059】
前記帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。係る帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。
前記帯電防止剤の好ましい使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.03〜2質量部、より好ましくは、0.1〜0.8質量部である。
【0060】
前記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリーン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0061】
前記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0062】
前記樹脂添加剤をアクリル樹脂に配合する方法としては、特に限定されず、公知の樹脂添加剤の配合技術を用いることができる。例えば、アクリル樹脂を重合する際に予め重合系に添加する方法、重合途中で添加する方法、重合後に添加する方法の何れも用いることができる。また、前記アクリル樹脂の重合後に配合する場合は、安定化するアクリル樹脂の粉末やペレットと混合したものを押出機等の加工機器を用いて混練する方法、本発明のアクリル樹脂組成物をマスターバッチにした後にアクリル樹脂に配合する方法等を挙げることができる。用いる加工機器の種類や加工温度、加工後の冷却条件等も特に制限なく用いることができ、得られる樹脂物性が用途に適したものになるように適宜、ブレンド条件を選択することができる。また、本発明のアクリル樹脂組成物を単独又は他の樹脂添加剤或いは充填剤等にまぶすことで顆粒にしたものをアクリル樹脂に配合することができる。
【0063】
本発明において、アクリル樹脂に、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含むトリアジン系紫外線吸収剤を添加して溶融混練する場合、押出温度が200℃〜260℃の範囲内で混練するのが好ましく、210℃〜250℃がより好ましい。
押出温度が200℃未満の場合、加工機器が受ける負荷が大きくなったり、アクリル樹脂組成物を成形して得られる成形品の表面が荒れたりする場合があり、押出温度が260℃を超えるとアクリル樹脂の分子量が低下して成形できなくなる場合がある。
【0064】
本発明の積層体は、支持材を本発明のアクリル樹脂組成物の成形品で被覆した構造のものを表す。
支持材を被覆する場合、本発明のアクリル樹脂組成物の成形品の厚みが30〜300μmのフィルム・シートが好ましく、より好ましい厚みは、30〜200μm、更に好ましくは、30〜100μmである。
アクリル樹脂組成物の成形品の厚みが30μmより薄い場合、強度が不足して破損しやすくなる場合があり、300μmより厚くなると、成形時の加熱時間が長くなり不経済である。
【0065】
本発明において前記支持材は特に限定されないが、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリエステル樹脂等が挙げられる。本発明においては、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリカーボネート樹脂が、本発明のアクリル樹脂組成物との接着性が良好であるため好ましく用いることができる。
【0066】
前記ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等、その重合方法には特に限定はなく、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂、及び、それら相互のブレンド品、或いは、他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品や、ブロック共重合体、グラフト共重合体等とのブレンド品を挙げることができる。
【0067】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば、支持材の樹脂と、本発明のアクリル樹脂組成物を同時に溶融押し出して成形する共押出法、支持材をシート状に押出成形し、本発明のアクリル樹脂組成物を溶融押出してラミネートする方法、予めシート状に成形した本発明のアクリル樹脂組成物を支持材の押出成形時に連続的に熱ラミネートする方法、シート状に成形された支持材に本発明のアクリル樹脂組成物をプレス機にて熱圧着する方法等が挙げられる。
【0068】
本発明のアクリル樹脂組成物の成形品の用途は特に限定されないが、特に、美的外観が重視される用途に好ましく用いられる。このような用途としては、例えば、建築、乗り物等の窓材、照明器具のカバ−、看板、道路標識、日用品、事務用品、風防、水槽、保護シート等が挙げられる。
【0069】
本発明の積層体の用途としては、支持材の用途と同じものが挙げられる。例えば、支持材が塩化ビニル系樹脂やポリカーボネート樹脂である場合、家電・電子機器類のハウジング、樹脂サッシ、窓枠、化粧シート、笠木、幅木、床材、壁材、天井材等の建材、パイプ、雨樋、ダクト類等が挙げられる。
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。本発明は、以下の実施例等により制限されるものではない。
【0071】
〔アクリル樹脂の製造〕
表1に記載のモノマー成分をキシレンに溶解し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加え、140℃で5時間重合反応を行い、アクリル樹脂を製造した。得られたアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)、及び分子量についてそれぞれ表1に示す。
【0072】
分子量は、日本分光株式会社製GPC装置を用いてゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)法によって、下記の測定条件にて測定した。
溶媒 :テトラヒドロフラン
基準物質 :ポリスチレン
検出器 :示差屈折計(RI検出器)
カラム固定相 :昭和電工(株)製Shodex KF−804L
カラム温度 :40℃,
サンプル濃度 :1mg/1mL
流量 :0.8mL/min.
注入量 :100μL
【0074】
〔実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−10〕
得られたアクリル樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を表2又は表3に記載の配合量にて混合し、二軸押出機(L/D=30)を用いて250℃で溶融混練して造粒し、ペレットを得た。但し、表1に記載のAC−3又はAC−4のアクリル樹脂を用いて溶融混練してみたところ、粘度低下が著しく、造粒できなかった。
得られたペレットを80℃で10時間以上乾燥させた後、Tダイを取り付けた単軸押出機(株式会社ディ・ディ・エム製商品名OEX3024)を用いて、溶融温度240℃、スクリュー速度30rpmの条件で溶融混練し、厚み50μmのアクリル樹脂シートを得た。
【0075】
(耐候性試験)
得られたアクリル樹脂シートを用いて、温度63℃、湿度50%RH、295−780nm、75mW/cm
2の紫外線照射条件で耐候性試験を行い、200時間照射後のアクリル樹脂シートのΔY.I.及び分子量を測定した。
【0076】
ΔY.I.は、スガ試験機株式会社製 多光源分光測色計を用いて反射法により200時間紫外線照射後の各アクリル樹脂成形品のY.I.を測定し、紫外線照射前のY.I.との差をΔY.I.として評価した。これらの結果について、表2及び表3に各々示す。
【0079】
〔実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−4〕
表1に記載のアクリル樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を表4又は表5に記載の配合量にて混合し、二軸押出機(L/D=30)を用いて250℃で溶融混練して造粒し、ペレットを得た。
得られたペレットを80℃で10時間以上乾燥させた後、Tダイを取り付けた単軸押出機(株式会社ディ・ディ・エム製商品名OEX3024)を用いて、押出温度240℃、スクリュー速度30rpmの条件で溶融混練し、厚み50μmのアクリル樹脂シートを得た。このアクリル樹脂シートを縦80mm×横40mm×厚み2mmの塩化ビニル樹脂製平板状成形品の面上で、プレス成形機を用いて140℃で熱圧着してラミネートした。ラミネートされた試験片を用いて下記の評価を行った。
【0080】
(耐侯性試験)
前記塩化ビニル樹脂製平板状成形品をラミネートした試験片を用いて、温度63℃、湿度50%RH、295−780nm、75mW/cmの紫外線照射条件で耐候性試験を行い、200時間後の塩化ビニル樹脂製試験片の色差(ΔE)を測定した。色差は、スガ試験機株式会社製「多光源分光測色計」を用いて反射法により測定した。これらの結果について、下記表4に各々示す。
【0082】
〔実施例3−1〜3−2、比較例3−1〜3−4〕
アクリル樹脂のAC−1をAC−2に置き換えて紫外線吸収剤を表5に記載の配合量で加え、縦80mm×横40mm×厚み2mmの塩化ビニル樹脂製平板状成形品を縦80mm×横40mm×厚み2mmのポリカーボネート樹脂製平板状成形品に置き換えた以外は、実施例2−1と同様にしてラミネートされた試験片を作製した。
【0083】
(耐侯性試験)
前記のポリカーボネート樹脂製平板状成形品をラミネートした試験片において、温度65℃、湿度50%RH、295―780nm、キセノンランプの紫外線照射条件で耐侯試験を行い、紫外線照射時間1080時間後、2040時間後の試験片片の色差(ΔE)を測定した。色差は、スガ試験機株式会社製「多光源分光測色計」を用いて反射法により測定した。これらの結果について、下記表5に各々示す。
【0085】
以上より、メチルメタクリレートを80wt%以上含有し、ガラス転移温度80℃以上のアクリル樹脂を用いることにより、250℃で溶融混練しても成形品を得ることが可能となる。本発明のアクリル樹脂組成物は、メチルメタクリレートを80wt%以上含有し、且つガラス転移温度80℃以上のアクリル樹脂100質量部に対して、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含むトリアジン系紫外線吸収剤1〜5質量部含有することを特徴とするものであり、本願実施例より、優れた耐侯性と着色を抑制できることが確認できた。
また、本発明のアクリル樹脂組成物を成形して塩化ビニル樹脂やポリカーボネート樹脂をラミネートした試験片に対しても、優れた耐侯性を示すことが確認できた。