特許第6472693号(P6472693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472693
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C25D17/00 C
   H01L21/306 J
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-60284(P2015-60284)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180144(P2016-180144A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】倉科 敬一
(72)【発明者】
【氏名】横山 俊夫
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070779(JP,A)
【文献】 特開2006−152415(JP,A)
【文献】 特開2012−046770(JP,A)
【文献】 特開2014−224300(JP,A)
【文献】 特開平06−061209(JP,A)
【文献】 実開平05−095076(JP,U)
【文献】 特開平02−090591(JP,A)
【文献】 特開2008−095160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00−21/22
C25D 5/00− 7/12
C25D 9/00− 9/12
C25D 11/00
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板を処理する処理液を貯留する外槽、および前記外槽内に収容され、前記基板ホルダに保持された基板を囲むように配置された内槽を備えた処理槽と、
一端が前記内槽の底部に接続され、他端が前記外槽に接続された液移送管と、
前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記内槽から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記外槽に送るポンプと、
前記基板ホルダが挿入可能な通孔を有するガイドカバーとを備え、
前記ガイドカバーは、前記外槽内の前記処理液の表面よりも下方であって、かつ前記内槽の上方に配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板ホルダは、前記通孔を塞ぐつば部を有していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、
前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板を向いて配置された複数の処理液ノズルと、
一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記複数の処理液ノズルに接続された液移送管と、
前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記複数の処理液ノズルに送るポンプとを備え、
前記複数の処理液ノズルは、斜め下方を向いて配置され
前記基板ホルダを上下方向に往復運動させるホルダ揺動装置をさらに備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、
前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板を向いて配置された複数の処理液ノズルと、
一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記複数の処理液ノズルに接続された液移送管と、
前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記複数の処理液ノズルに送るポンプとを備え、
前記複数の処理液ノズルは、斜め下方を向いて配置され、
前記複数の処理液ノズルは、前記基板ホルダに保持された前記基板の両側に配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
前記複数の処理液ノズルを揺動させるノズル揺動装置をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、
前記処理槽の上部に配置された、上面と下面とを有する多孔体と、
一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記多孔体の上方に位置する液移送管と、
前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記多孔体に供給するポンプとを備え、
前記多孔体は、前記処理液の液面が前記上面と前記下面との間に位置するように配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を処理する基板処理装置に関し、特に基板を処理液に浸漬させることで基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図17は従来の基板処理装置を示す図である。図17に示すように、基板処理装置は、基板Wを保持した基板ホルダ101と、処理液を内部に貯留する処理槽102とを備えている。処理槽102は、基板ホルダ101に保持された基板Wが配置される内槽103と、内槽103を取り囲むように配置された外槽104とを備えている。外槽104は内槽103に液移送管105によって接続されている。液移送管105の一端は外槽104の底部に接続され、他端は内槽103の底部に接続されている。液移送管105にはポンプPが取り付けられている。
【0003】
ポンプPが稼働されると、処理液は、液移送管105を通じて外槽104の底部から吸い込まれ、液移送管105を通じて内槽103内に供給される。処理液は、内槽103内を上昇して上昇流を形成し、内槽103の側壁を越流して外槽104内に流入する。さらに、処理液は、ポンプPの動作に伴って液移送管105を通って内槽103内に戻る。このように、処理液は、内槽103内に上昇流を形成しつつ、内槽103と外槽104との間を循環する。
【0004】
基板Wの処理レート(処理速度ともいう)を上げるためには、基板Wの表面に接触する処理液(つまり、内槽103内を上昇する処理液)の流速を上げることが必要である。しかしながら、内槽103内の処理液の流速を上げると、図17に示すように内槽103から処理液が噴き上がったり、処理液の上昇流によって基板ホルダ101が浮き上がってしまう。このため、内槽103内の処理液の流速を上げることは困難であった。
【0005】
一方、処理液が低い流速で内槽103内を流れるとき、処理液は内槽103内で層流を形成する。この場合、層流の状態にある処理液に基板Wが浸漬されると、基板Wが局所的に処理され、基板Wが不均一に処理されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−131995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、基板の処理レートを上げつつ、基板を均一に処理することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留する外槽、および前記外槽内に収容され、前記基板ホルダに保持された基板を囲むように配置された内槽を備えた処理槽と、一端が前記内槽の底部に接続され、他端が前記外槽に接続された液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記内槽から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記外槽に送るポンプと、前記基板ホルダが挿入可能な通孔を有するガイドカバーとを備え、前記ガイドカバーは、前記外槽内の前記処理液の表面よりも下方であって、かつ前記内槽の上方に配置されていることを特徴とする基板処理装置である。
本発明の好ましい態様は、前記基板ホルダは、前記通孔を塞ぐつば部を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板を向いて配置された複数の処理液ノズルと、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記複数の処理液ノズルに接続された液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記複数の処理液ノズルに送るポンプとを備え、前記複数の処理液ノズルは、斜め下方を向いて配置され、前記基板ホルダを上下方向に往復運動させるホルダ揺動装置をさらに備えたことを特徴とする基板処理装置である。
本発明のさらに他の態様は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板を向いて配置された複数の処理液ノズルと、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記複数の処理液ノズルに接続された液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記複数の処理液ノズルに送るポンプとを備え、前記複数の処理液ノズルは、斜め下方を向いて配置され、前記複数の処理液ノズルは、前記基板ホルダに保持された前記基板の両側に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の処理液ノズルを揺動させるノズル揺動装置をさらに備えたことを特徴とする
【0010】
一参考例は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記処理槽の内部に連通する液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記処理槽に戻すポンプと、前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板に隣接して配置された複数の邪魔板とを備えたことを特徴とする基板処理装置である。
上記参考例の好ましい態様は、前記基板ホルダを上下方向に揺動させるホルダ揺動装置をさらに備えたことを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記複数の邪魔板を揺動させる邪魔板揺動装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
参考例は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記処理槽の内部に連通する液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記処理槽に戻すポンプと、前記基板ホルダを上下方向に揺動させるホルダ揺動装置とを備え、前記基板ホルダは、前記処理液を撹拌する少なくとも1つのパドルを有していることを特徴とする基板処理装置である。
上記参考例の好ましい態様は、前記少なくとも1つのパドルは、前記基板ホルダに保持された基板の両側に配置された複数のパドルであることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記少なくとも1つのパドルは、前記基板ホルダに保持された基板を水平に横切る複数のパドルであることを特徴とする。
【0012】
らに他の参考例は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記処理槽の内部に連通する液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記処理槽に戻すポンプと、前記処理槽内に配置され、かつ前記基板ホルダに保持された基板を向いて配置された複数の不活性ガス供給ノズルとを備えたことを特徴とする基板処理装置である。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、前記処理槽の上部に配置された、上面と下面とを有する多孔体と、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記多孔体の上方に位置する液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記多孔体に供給するポンプとを備え、前記多孔体は、前記処理液の液面が前記上面と前記下面との間に位置するように配置されていることを特徴とする基板処理装置である。
【0014】
らに他の参考例は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板を処理する処理液を貯留し、前記基板ホルダが内部に配置される処理槽と、一端が前記処理槽の底部に接続され、他端が前記処理槽の内部に連通する液移送管と、前記液移送管に接続され、前記液移送管を通じて前記処理槽の底部から前記処理液を吸い込み、前記液移送管を通じて前記処理液を前記処理槽に戻すポンプと、前記処理槽の側壁に組み込まれた弾性膜とを備え、前記弾性膜は、前記基板ホルダに保持された基板の表面に対向して配置されていることを特徴とする基板処理装置である。
上記参考例の好ましい態様は、前記弾性膜は、流体が内部に供給される流体室の少なくとも一部を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内槽には処理液の下降流が形成されるので、処理液の流速を上げても処理液が噴き出すことはなく、また基板ホルダが浮き上がることもない。さらに高い流速で流れる処理液は処理槽内に乱流を形成し、基板の全体にむらなく接触する。したがって、基板の全体を均一に処理することができる。特に、処理液中に配置されるガイドカバーは、外槽を上昇する処理液を内槽にスムーズに導くことができるのみならず、処理液の表面での吸込渦の発生を防止することができる。結果として、処理液の流速をさらに高めることができる。
【0016】
処理液ノズル、邪魔板、パドル、不活性ガス供給ノズル、多孔体などの要素は、処理槽内の処理液を撹拌する機能を有する。したがって、基板の全体を均一に処理することができる。
【0017】
ポンプの稼働によって処理槽内の処理液が吸引されると、処理槽内の処理液の圧力が低下し、弾性膜は基板の表面に近接する方向に変形して処理槽の横断面積を小さくする。したがって、処理槽を下降する処理液の流速は上がり、処理液は乱流を形成しながら、基板に接触する。結果として、基板の全体を均一に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図2】基板ホルダを示す図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】保持アームのスリットに挟持された基板を示す図である。
図5図5(a)乃至図5(c)は基板の表面の断面を示す模式図である。
図6】他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図7】さらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図8】基板ホルダの変形例を示す図である
図9図8のB−B線断面図である。
図10】基板ホルダのさらなる変形例を示す図である
図11図10のC−C線断面図である。
図12】さらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図13】さらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図14】さらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図15】弾性膜がエッチング槽の内槽に設けられた構成例を示す図である。
図16】さらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。
図17】従来の基板処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。図1乃至図16において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
以下に説明するエッチング装置は、ウェハなどの基板を処理する基板処理装置の一例である。基板処理装置の他の例として、電解めっき装置、無電解めっき装置、電解エッチング装置が挙げられる。以下、基板処理装置の一実施形態であるエッチング装置について説明する。
【0020】
図1は一実施形態に係るエッチング装置を示す図である。図1に示すように、エッチング装置は、ウェハなどの基板Wを保持する基板ホルダ1と、基板Wの表面に形成されたレジストを除去するためのエッチング液(処理液)を貯留するエッチング槽(処理槽)2とを備えている。エッチング槽2は、エッチング液を内部に貯留する外槽3と、外槽3内に収容され、基板ホルダ1に保持された基板Wを囲むように配置された内槽4とを備えている。基板ホルダ1およびエッチング槽2(外槽3および内槽4)は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料から構成されている。あるいは、基板ホルダ1およびエッチング槽2は、Ti(チタン)やSUS(ステンレス鋼)などの金属材料にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料を被覆した材料から構成されてもよい。
【0021】
内槽4は液移送管10によって外槽3に接続されている。より具体的には、液移送管10の一端は内槽4の底部に接続され、他端は外槽3の底部に接続されている。液移送管10にはポンプPが接続されている。このポンプPが稼働されると、エッチング液は、液移送管10を通じて内槽4の底部から吸い込まれ、液移送管10を通じて外槽3内に移送される。エッチング液は、内槽4内に下降流を形成するとともに、外槽3内に上昇流を形成する。
【0022】
内槽4は、外槽3内に貯留されているエッチング液中に完全に没している。言い換えれば、外槽3の上端および外槽3内のエッチング液の表面は、内槽4の上端よりも上方に位置している。もし、内槽4内のエッチング液の表面が内槽4の上端より低い位置にあると、外槽3のエッチング液が内槽4の上端を越流して内槽4内に流れ込んだ時に空気を巻き込み、比較的大きな気泡が不均一に発生し、エッチング液のエッチング作用を不均一にするおそれがあり、好ましくない。
【0023】
エッチング装置は、外槽3内に形成された上昇流の方向を変えるガイドカバー11をさらに備えている。ガイドカバー11は外槽3の内面に固定されている。より具体的には、ガイドカバー11は、外槽3の上端および外槽3内のエッチング液の表面よりも下方であって、かつ内槽4の上方に位置している。ガイドカバー11には通孔11aが形成されており、基板ホルダ1はこの通孔11aを通じて内槽4内に挿入される。
【0024】
外槽3内に形成された上昇流は、ガイドカバー11の下面に衝突してその進行方向を変える。エッチング液はガイドカバー11と内槽4との間の隙間を通って内槽4内に流入し、内槽4内で下降流を形成する。内槽4内では、エッチング液は、基板ホルダ1に保持された基板Wの表面に接触しながら基板Wの表面に沿って下降し、基板Wに形成されているレジストを除去する。エッチング液は、内槽4の底部に接続されている液移送管10内に吸い込まれ、液移送管10を通って外槽3に移送され、外槽3内に上昇流を形成する。このように、エッチング液は、内槽4および外槽3に下降流と上昇流をそれぞれ形成しながら、内槽4と外槽3との間を循環する。内槽4の横断面積は外槽3の横断面積よりも小さくなっており、内槽4内に形成されるエッチング液の下降流の速度は、外槽3内に形成されるエッチング液の上昇流の速度よりも高くなっている。
【0025】
内槽4内ではエッチング液の下降流が形成され、外槽3内の上昇流はガイドカバー11に衝突するので、エッチング液の流速を上げても外槽3内のエッチング液は噴き上がらない。さらに、内槽4内では基板ホルダ1はエッチング液の下降流に接触しているので、基板Wを保持した基板ホルダ1が浮き上がることもない。
【0026】
ガイドカバー11がない場合、外槽3内のエッチング液の液面を内槽4の上端よりも高くしたとしても、エッチング液の流速を高くすると、内槽4の上方の液面が落ち込んで吸込渦が局所的に形成されるおそれがある。吸込渦が基板Wの表面に達すると、エッチング液のエッチング作用を不均一にするおそれがあり、好ましくない。そこで、ガイドカバー11を設けることにより、外槽3内を上昇したエッチング液がガイドカバー11に衝突して内槽4に流れ込む流れが形成されるので、吸込渦の発生が防止される。
【0027】
基板ホルダ1はその上部につば部12を有している。このつば部12は、基板ホルダ1がガイドカバー11の通孔11aを通じて内槽4内に挿入されたときに、通孔11aを塞ぐように構成されている。以下、つば部12を有する基板ホルダ1について図2および図3を参照して説明する。
【0028】
図2は基板ホルダ1を示す図であり、図3図2のA−A線断面図である。基板ホルダ1は、外側に突出する突出部13,13を有している。突出部13,13の間には支持アーム14が延びている。搬送装置(図示しない)は、支持アーム14を把持した状態で、基板ホルダ1を搬送する。支持アーム14には、基板Wを把持する2つの保持アーム15,15が固定されている。各保持アーム15は、第1のスリット15a、第2のスリット15b、および第3のスリット15cを有している。
【0029】
図4は保持アーム15のスリット15a〜15cに挟持された基板Wを示す図である。図4では1つの保持アーム15が示されている。図4に示すように、基板Wの周縁部がこれらスリット15a〜15cに挿入されることにより、基板Wが基板ホルダ1に保持される。図2に示すように、基板Wを点線で示す位置から実線で示す位置までスライドさせることにより、基板Wは2つの保持アーム15,15のスリット15a〜15cに挟持される。
【0030】
つば部12は、2つの保持アーム15,15に固定されている。図1に示すように、つば部12がガイドカバー11に接触するまで、基板Wを保持した基板ホルダ1は通孔11aを通じて内槽4内に挿入される。つば部12は、水平な下面を有する蓋である。つば部12の大きさはガイドカバー11の通孔11aよりも大きい。したがって、つば部12がガイドカバー11に接触すると、つば部12は通孔11aを閉塞する。
【0031】
ガイドカバー11および該ガイドカバー11上のつば部12は、エッチング液の表面よりも下方に位置している。図1から分かるように、つば部12は通孔11aを塞いでいるので、エッチング槽2内での吸込渦の発生を完全に防止することができる。さらに、基板Wのエッチング中は、内槽4内にはエッチング液の下降流が形成されているため、つば部12はガイドカバー11に押し付けられ、基板Wのエッチング中の基板ホルダ1の姿勢が安定する。
【0032】
図5(a)乃至図5(c)は基板Wの表面の断面を示す模式図である。図5(a)に示すように、絶縁層27の表面にはシード層などの導電層28が形成されている。さらに、導電層28上にレジスト29が形成されている。レジスト29の開口部内には金属30が堆積している。基板Wをエッチング槽2内のエッチング液に浸漬すると、図5(b)に示すように、レジスト29が除去され、導電層28が露出する。その後、基板Wを洗浄液で洗浄し、洗浄された基板Wを別のエッチング液に浸漬して、図5(c)に示すように、露出した導電層28を除去する。
【0033】
高い流速で内槽4内を下降するエッチング液は内槽4内で乱流を形成しながら、基板Wに接触する。乱流の状態にあるエッチング液は、レジスト29全体にむらなく接触する。したがって、エッチング液は、レジスト29の局所的な除去を防止しつつ、レジスト29を高い除去レートで均一に除去することができる。言い換えれば、基板Wを高い処理レートで処理しつつ、基板Wを均一に処理することができる。
【0034】
図6は他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。図6に示す実施形態では、エッチング槽2は外槽3および内槽4に分けられていないが、図1に示す実施形態と同じように外槽3および内槽4を備えてもよい。図6に示すエッチング装置は、エッチング槽2内に配置された複数のエッチング液ノズル(処理液ノズルともいう)16と、一端がエッチング槽2の底部に接続され、他端がエッチング液ノズル16に接続された液移送管10と、液移送管10に接続されたポンプPとを備えている。エッチング液ノズル16は、基板ホルダ1に保持された基板Wを向いて配置されている。好ましくは、図6に示すように、エッチング液ノズル16は斜め下方を向いて配置される。
【0035】
ポンプPは、液移送管10を通じてエッチング槽2の底部からエッチング液を吸い込み、液移送管10を通じてエッチング液を複数のエッチング液ノズル16に送る。前述の実施形態と同様に、ポンプPが稼働されると、エッチング槽2内にはエッチング液の下降流が形成される。したがって、エッチング槽2内に配置された基板ホルダ1の浮き上がりが防止される。
【0036】
複数のエッチング液ノズル16は、基板ホルダ1に保持された基板Wの両側に配置されており、基板Wに近接している。本実施形態では、8個のエッチング液ノズル16が設けられているが、エッチング液ノズル16の数はこの実施形態に限定されない。エッチング液ノズル16は、ノズル揺動装置18に連結されており、このノズル揺動装置18によってエッチング液ノズル16が揺動されるように構成されている。ノズル揺動装置18は、リンク機構18Aおよびアクチュエータ18Bなどから構成されている。
【0037】
ポンプPを稼働すると、エッチング液はエッチング槽2内に下降流を形成しながら、液移送管10内に吸い込まれる。さらに、エッチング液は、液移送管10を通過して各エッチング液ノズル16に送られ、エッチング液ノズル16から基板Wに向けて噴射される。エッチング液の噴流は基板Wに接触するエッチング液を攪拌するため、エッチング液はレジストの全体にむらなく接触することができる。このとき、ノズル揺動装置18によって各エッチング液ノズル16を揺動させてもよい。エッチング液ノズル16の揺動により、基板Wに接触するエッチング液をより効果的に攪拌することができる。
【0038】
図7はさらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。特に説明しない構成は、図6に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図7に示すように、液移送管10の一端(入口)は、エッチング槽2の底部に接続され、他端(出口)がエッチング槽2の内部に連通している。この液移送管10の上記他端(出口)は、エッチング槽2内のエッチング液の表面のやや下方であって、基板Wよりも上方に位置している。ポンプPは液移送管10に接続されており、液移送管10を通じてエッチング槽2の底部からエッチング液を吸い込み、液移送管10を通じてエッチング液をエッチング槽2に戻すように構成されている。
【0039】
エッチング槽2内には、エッチング液を攪拌するための複数の邪魔板20が配置されている。これら邪魔板20は、基板ホルダ1に保持された基板Wの両側に配置され、基板Wの両面に隣接している。本実施形態では、8個の邪魔板20が設けられているが、邪魔板20の数はこの実施形態に限定されない。エッチング槽2内を下降するエッチング液は、邪魔板20に衝突して乱流を形成しながら、基板Wに接触する。乱流の状態にあるエッチング液は、レジストの局所的な除去を防止する。したがって、レジストを高い除去レートで均一に除去することができる。
【0040】
邪魔板20は、邪魔板揺動装置21に連結されており、この邪魔板揺動装置21によって邪魔板20が揺動されるように構成されている。邪魔板揺動装置21は、リンク機構21Aおよびアクチュエータ21Bなどから構成されている。各邪魔板20の揺動により、基板Wに接触するエッチング液をより効果的に攪拌することができる。
【0041】
本実施形態のエッチング装置は、基板Wをエッチング液に浸漬させたまま基板Wを保持した基板ホルダ1を上下方向に揺動させるホルダ揺動装置22をさらに備えている。ホルダ揺動装置22は、エッチング槽2の上方に配置されており、基板ホルダ1の上部に連結されている。基板ホルダ1を上下方向に揺動させると、乱流状態のエッチング液が基板Wの全体にむらなく接触することができる。
【0042】
図8は基板ホルダ1の変形例を示す図である。図9図8のB−B線断面図である。図8および図9に示すように、基板ホルダ1はエッチング槽2内のエッチング液を攪拌する複数のパドル25を有してもよい。各パドル6は、水平なプレートである。パドル25は保持アーム15に取り付けられており、基板ホルダ1に保持された基板Wの両側に配置されている。図8において、基板ホルダ1は6個のパドル25を有しているが、パドル25の数はこの例に限定されない。ホルダ揺動装置22によって基板ホルダ1を上下方向に揺動させると、各パドル25はエッチング液を攪拌することができる。
【0043】
図10は基板ホルダ1のさらなる変形例を示す図である。図11図10のC−C線断面図である。図10および図11に示すように、保持アーム15,15との間に複数のパドル26を延ばしてもよい。図10および図11に示すパドル26は、基板ホルダ1に保持された基板Wを横切るように水平に延びている。図10において、基板ホルダ1は3個のパドル26を有しているが、パドル26の数はこの例に限定されない。
【0044】
図12はさらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。特に説明しない構成は、図7に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図12に示すように、エッチング装置は、エッチング槽2内に配置された複数の不活性ガス供給ノズル32を備えている。これらの不活性ガス供給ノズル32は、不活性ガス供給管31に接続されている。本実施形態では、8個の不活性ガス供給ノズル32が設けられているが、不活性ガス供給ノズル32の数はこの例に限定されない。
【0045】
各不活性ガス供給ノズル32は、エッチング槽2内に配置された基板Wに近接しており、基板Wを向いて配置されている。不活性ガス供給ノズル32から不活性ガスがエッチング槽2内のエッチング液に注入されると、不活性ガスはエッチング液中で気泡を形成し、この気泡がエッチング液を均一に攪拌する。したがって、エッチング液は、基板Wのレジストにむらなく接触し、レジストを均一に除去することができる。不活性ガスとして、窒素ガスを使用することができる。
【0046】
図13はさらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。特に説明しない構成は、図7に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図13に示すように、エッチング装置は、複数の微細な貫通孔35aを有する多孔体35を備えている。多孔体35はエッチング槽2の上部に配置され、エッチング液の全体の液量は、エッチング液の液面が多孔体35の上面35bと下面35cとの間に位置するように調整される。液移送管10の一端は、エッチング槽2の底部に接続され、他端は多孔体35の上方に配置されている。
【0047】
エッチング液は、ポンプPの稼働により液移送管10を通って多孔体35上に供給され、多孔体35の貫通孔35aを通過してエッチング槽2内に供給される。エッチング液が貫通孔35aを通過する際に、多孔体35の上方の空気はエッチング液内に取り込まれる。その結果、空気はエッチング槽2内のエッチング液中に均一に供給される。空気はエッチング液中で微細な気泡を形成し、エッチング液を攪拌する。
【0048】
図14はさらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。特に説明しない構成は、図7に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図14に示すように、エッチング装置は、エッチング槽2の両側壁2a,2aのそれぞれに組み込まれた弾性膜40,40を備えている。各弾性膜40は、側壁2aの一部として機能し、基板ホルダ1に保持された基板Wの表面に対向して配置されている。弾性膜40,40は、柔軟な材料から構成されている。柔軟な材料の例として、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やシリコンゴムなどの樹脂材料が挙げられる。
【0049】
ポンプPの稼働によってエッチング槽2内のエッチング液が吸引されると、エッチング槽2内のエッチング液の圧力が低下し、図14の想像線(一点鎖線)に示すように、弾性膜40,40は基板Wの表面に近接する方向に変形してエッチング槽2の横断面積を小さくする。したがって、エッチング槽2を下降するエッチング液の流速は上がり、エッチング液は乱流を形成しながら基板Wに接触する。
【0050】
図15は、弾性膜40,40がエッチング槽2の内槽4に設けられた構成例を示す図である。この構成例では、エッチング槽2は内槽4および外槽3を備えている。液移送管10は内槽4の底部から外槽3内のエッチング液の表面の下方位置まで延びている。弾性膜40,40は、内槽4の両側壁4a,4aにそれぞれ組み込まれている。各弾性膜40は、側壁4aの一部として機能し、基板ホルダ1に保持された基板Wの表面に対向して配置されている。各弾性膜40の一方の面は、内槽4内のエッチング液に接触し、他方の面は、外槽3内のエッチング液に接触する。
【0051】
外槽3内のエッチング液の表面は、内槽4内のエッチング液の表面よりも高い位置にある。ポンプPの稼働により内槽4内のエッチング液が液移送管10を通って外槽3内に流入すると、外槽3内のエッチング液は、内槽4の側壁4a,4aを越流して内槽4内に流入する。外槽3内のエッチング液の圧力は、内槽4内のエッチング液の圧力よりも高いので、弾性膜40,40は基板Wに近接する方向に変形して内槽4の横断面積を小さくする。したがって、内槽4を下降するエッチング液の流速は上がり、エッチング液は乱流を形成しながら基板Wに接触する。
【0052】
図16はさらに他の実施形態に係るエッチング装置を示す図である。特に説明しない構成は、図14に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図16に示すように、エッチング槽2の両側壁2a,2aには、箱体41,41がそれぞれ固定されている。各箱体41の内部には流体室42が形成される。箱体41は弾性膜40の外面を覆うように配置されており、流体室42の一部は弾性膜40で構成されている。箱体41,41には、流体室42,42に連通する流体ポート43,43がそれぞれ接続されている。箱体41,41を設けずに、流体室42,42のすべてを弾性膜40,40で構成してもよい。
【0053】
圧縮気体などの流体が流体ポート43,43を通じて流体室42,42内に導入されると、流体室42,42内の圧力が上昇し、弾性膜40,40は基板Wに近接する方向に変形してエッチング槽2の横断面積を小さくする。したがって、エッチング槽2を下降するエッチング液の流速は上がり、エッチング液は乱流を形成しながら基板Wに接触する。流体室42,42内に供給された流体は、流体ポート43,43を通じて排出することができる。
【0054】
図16に示す実施形態では、流体室42内への流体の導入により弾性膜40は基板Wに近接する方向に変形するが、他の実施形態としてエアシリンダなどのアクチュエータを使用して弾性膜40を変形させてもよい。
【0055】
図1に示す実施形態は、上述した実施形態と適宜組み合わせることができる。例えば、図1に示すガイドカバー11およびつば部12を、図7図12乃至図16に示す実施形態に組み合わせてもよい。
【0056】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよい。本発明に係る基板処理装置は、基板の表面に形成されたレジストを除去する上述したエッチング装置に限られず、電解めっき装置、無電解めっき装置、電解エッチング装置など処理液を使用する他の装置にも適用できる。本発明によれば、基板の表面の処理液の流速を上げることができるため、基板表面の境界層を薄くすることにより反応を促進したり、基板への気泡の付着を防止したりすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板ホルダ
2 エッチング槽(処理槽)
3 外槽
4 内槽
10 液移送管
11 ガイドカバー
12 つば部
13 突出部
14 支持アーム
15 保持アーム
15a 第1のスリット
15b 第2のスリット
15c 第3のスリット
16 エッチング液ノズル(処理液ノズル)
18 ノズル揺動装置
20 邪魔板
21 邪魔板揺動装置
22 ホルダ揺動装置
25,26 パドル
27 絶縁層
28 導電層
29 レジスト
30 金属
31 不活性ガス供給装置
32 不活性ガス供給ノズル
35 多孔体
35a 貫通孔
35b 上面
35c 下面
40 弾性膜
41 箱体
42 流体室
43 流体ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17