(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、理解を容易にする等のために誇張している場合がある。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0011】
本開示に係る発光装置は、発光ピーク波長が430nm以上490nm未満の範囲にある第1発光素子(青色発光素子)に加えて、発光ピーク波長が490nm以上570nm以下の範囲にある第2発光素子(緑色発光素子)を有している。さらに第1発光素子の少なくとも一部と第2発光素子の少なくとも一部とを覆い、かつ赤色蛍光体を含む透光性部材を有している。
そして、透光性部材において、第1発光素子と第2発光素子の間における赤色蛍光体の含有密度(分布密度)が、第2発光素子の上面の高さから上の部分よりも、当該上面の高さから下の部分のほうが高くなっている。
【0012】
これにより、第1発光素子と第2発光素子の間に壁等を配置する必要なく相互吸収を低減できる。
青色発光素子と緑色発光素子との間の光の吸収は、青色発光素子が発する青色光の一部が緑色発光素子の半導体に吸収されることが主であり、これに比べ、青色発光素子の半導体による緑色発光素子が発する緑色光の吸収はかなり少ない。
このため、青色発光素子と緑色発光素子の間の緑色発光素子の上面の高さよりも下側の部分において、透光性部材中の赤色蛍光体の含有密度を高めることで、緑色発光素子に向かう青色光の多くを赤色蛍光体により赤色光に変換することで、緑色発光素子における青色光の吸収を低減することができる。
一方、透光性部材全体で赤色蛍光体の含有密度が高くなり過ぎると、発光装置の光取り出し面から出る青色光が少なくなり、赤色光が過剰となってしまう。そこで、透光性部材において、第1発光素子と第2発光素子の間における赤色蛍光体の含有密度(分布密度)を緑色発光素子の上面の高さよりも上側の部分においては小さくしてある。この結果、上述のように透光性部材において、第1発光素子と第2発光素子の間における赤色蛍光体の含有密度(分布密度)は、第2発光素子の上面の高さより上側の部分と比べ、第2発光素子の上面の高さよりも下側の部分の方が高くなっている。
【0013】
このような構成を有する本開示に係る発光装置は、青色光に加えて緑色光も、発光素子による鋭いピークを有する発光を得ることができる。さらに、緑色発光素子における青色光の吸収を抑制できる。このため、優れた色再現性を達成することができるとともに、従来の発光装置と比較して小型化を容易に行うことができる。
以下に本発明の実施形態に係る発光装置の詳細を説明する。
【0014】
1.実施形態1
図1(a)は、実施形態1に係る発光装置100の模式上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のIb−Ib線断面を示す模式断面図である。
図2(a)は、発光装置100の変形例に係る発光装置100Aを示す模式斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb−IIb線断面を示す模式断面図である。
図1(a)、
図2(a)では、透光性部材3内に配置した青色発光素子1bと緑色発光素子1gが容易に認識できるように、赤色蛍光体4の記載を省略している。
【0015】
発光装置100は、樹脂パッケージ2のキャビティの底面に配置された第1リード36aの上面に、少なくとも1つの青色発光素子(第1発光素子)1bを有している。発光装置100は、樹脂パッケージ2のキャビティの底面に配置された第2リード36bの上面に、少なくとも1つの緑色発光素子(第2発光素子)1gを有している。
すなわち、発光装置100は、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gをそれぞれ、少なくとも1つ以上有している。得ようとする光量等に応じて発光装置100は、2つ以上の青色発光素子1bを有してよく、また2つ以上の緑色発光素子1gを有してよい。また、
図1(a)に示す実施形態では、青色発光素子1bの個数と緑色発光素子1gの個数は同じであるがこれに限定されるものではない。得ようとする発光特性に応じて、青色発光素子1bの個数の方が、緑色発光素子1gの個数よりも多くてよく、また緑色発光素子1gの個数の方が、青色発光素子1bの個数よりも多くてよい。
【0016】
発光装置100Aは、第1リード36a上に青色発光素子1bと緑色発光素子1gと有している。
図2(a)に示す実施形態では、第1リード36a上に2つの青色発光素子1bと2つの緑色発光素子1gとを有している。そして、下から1列目には左から順に青色発光素子1bと緑色発光素子1gとが並んで配置され、下から2列目には左から順に緑色発光素子1gと青色発光素子1bとが並んで配置されている。なお、以下の説明では、発光装置100を中心に詳細に説明するが、発光装置100Aの構成のうち、発光装置100Aについて特に限定して説明する場合を除き、発光装置100と発光装置100Aとで符号が同じ要素については、発光装置100Aでも発光装置100と同じ構成であってよい。
【0017】
青色発光素子1bは、その発光のピーク波長が430nm以上490nm未満の範囲(青色領域の波長範囲)にあり、440nm以上470nm以下の範囲にあることが好ましい。また、緑色発光素子1gは、その発光のピーク波長が490nm以上570nm以下の範囲(緑色領域の波長範囲)にあり、520nm以上550nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0018】
青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gは、それぞれ、例えば、実装基板の配線層のような外部の回路と電気的に接続されており、当該外部回路を介して供給された電力により発光する。発光装置100の
図1(a)、(b)に示す実施形態では、青色発光素子1bの正電極および負電極の一方が、ワイヤ6を介して第1リード36aに接続され、青色発光素子1bの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、緑色発光素子1gの正電極および負電極の一方と接続され、緑色発光素子1gの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、第2リード36bと接続されている。なお、
図1(a)、(b)に示される発光装置100の例では、青色発光素子1bの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、緑色発光素子1gの正電極および負電極の一方と接続されているが、このような接続に限定されることなく、青色発光素子1bの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、第2リード36bに接続され、さらに緑色発光素子1gの正電極および負電極の一方が、ワイヤ6を介して、第1リード36aに接続されていてもよい。第1リード36aを例えば実装基板の配線層と接続し、第2リード36bを例えば実装基板の別の配線層と接続することで、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gを外部回路と電気的に接続できる。
【0019】
発光装置100Aの
図2(a)、(b)に示す実施形態において、下から1列目に配置された青色発光素子1bと緑色発光素子1gについては、青色発光素子1bの正電極および負電極の一方が、ワイヤ6を介して第1リード36aに接続され、青色発光素子1bの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、緑色発光素子1gの正電極および負電極の一方と接続され、緑色発光素子1gの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、第2リード36bと接続されている。
一方、下から2列目に配置された緑色発光素子1gと青色発光素子1bについては、緑色発光素子1gの正電極および負電極の一方が、ワイヤ6を介して第1リード36aに接続され、緑色発光素子1gの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、青色発光素子1bの正電極および負電極の一方と接続され、青色発光素子1bの正電極および負電極の他方が、ワイヤ6を介して、第2リード36bと接続されている。
なお、青色発光素子1bの電極と緑色発光素子1gの電極との間を直接ワイヤ6で接続する方法に限定されることなく、上述した発光装置100の例と同様に、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの電極は、それぞれ両極性の電極ともワイヤ6を介して第1リード36aまたは第2リード36bに接続されてもよい。
【0020】
なお、発光装置100、100Aでは、樹脂パッケージ2と第1リード36aと第2リード36bとを総称して支持体7という。本明細書において支持体とは、青色発光素子1bおよび緑色発光素子を配置するための部材であって、例えば、樹脂パッケージまたは基板等の基体と、当該基体の表面または内部に配置され、発光素子に電力を供給するための導電部材とを含む。この導電部材として、例えば、リード、ビアまたは配線層が挙げられる。
【0021】
樹脂パッケージ2のキャビティ内には透光性部材3が配置されている。透光性部材3は、例えば、封止樹脂またはガラス等であってよい。透光性部材3は、赤色蛍光体4を含んでいる。赤色蛍光体4は、青色発光素子1bの発光する青色光の一部を吸収して赤色光を発光する。すなわち、赤色蛍光体4は青色光を赤色に波長変換する。
【0022】
青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間において、赤色蛍光体4の含有密度は、緑色発光素子1gの上面の高さより上側よりも、緑色発光素子1gの上面の高さより下側の方が高くなっている。例えば、青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間において、緑色発光素子1gの上面の高さより
下側の赤色蛍光体4の含有密度は、緑色発光素子1gの上面の高さより
上側の赤色蛍光体4の含有密度の2倍以上であってよい。すなわち、青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間において、緑色発光素子1gの上面の高さから透光性部材3の
下面までの間の部分の赤色蛍光体4の含有密度は、緑色発光素子1gの上面の高さから透光性部材3の
上面までの間の部分の赤色蛍光体4の含有密度の2倍以上であってよい。
「青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間」とは、透光性部材3の部分であって、隣り合って配置された青色発光素子1bと緑色発光素子1gの対向する端面間の部分および当該端面間の部分の直上部分を意味する。
【0023】
例えば、
図1(b)および
図2(b)に示す実施形態では、青色発光素子1bの右側端面とこれに対向する、緑色発光素子1gの左側端面の間およびこの端面間の上の部分である。すなわち、左右方向の位置が青色発光素子1bの右側端面と緑色発光素子1gの左側端面との間であり、上下方向の位置が緑色発光素子1gよりも上の部分である。しかし、発光装置100Aでは、これ以外にも
図2(a)に示すように、図の左側に位置する青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間、図の上側に位置する青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間、図の右側に位置する青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間にも、「青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間」が存在する。このように、複数の「青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間」が存在する場合、少なくとも1つ、好ましくは全ての「青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間」において、赤色蛍光体4の含有密度は、緑色発光素子1gの上面の高さより上側の部分よりも、緑色発光素子1gの上面の高さより下側の方が高くなっている。
【0024】
なお、透光性部材3における赤色蛍光体4の含有密度とは、単位体積の透光性部材3に含まれる赤色蛍光体3の体積を意味する。実用上、容易に評価できるように、赤色蛍光体の含有密度は、断面観察により求めてもよい。具体的には、断面おける単位面積の透光性部材3に含まれる赤色蛍光体3の面積により評価してよい。
【0025】
上述の赤色蛍光体3の含有密度(分布密度)を制御する手法としては、沈降法を例示できる。沈降法では、例えば、溶融した樹脂またはガラスのような、溶融した透光性部材形成材料中に赤色蛍光体を分散させる。そして、例えば、樹脂パッケージ2のキャビティのような、透光性部材3を形成する部位に、この溶融した透光性部材形成材料を配置した後、重力により赤色蛍光体4が沈降し、緑色発光素子1gの上面より下の部分の赤色蛍光体4の含有密度が、緑色発光素子1gの上面より上の部分の赤色蛍光体4の分布密度より高い状態で、透光性形成材料を硬化させて、所望の赤色蛍光体4の含有密度分布を有する透光性部材3を得るものである。さらに、赤色蛍光体4は、遠心力を利用して強制的に沈降させることが好ましい。例えば、透光性部材形成材料が硬化前の発光装置を遠心分離機にかけることにより赤色蛍光体4を強制的に沈降させることができる。
沈降法により形成した透光性部材3の赤色蛍光体4の含有密度分布の好ましい実施形態の1つとして、
図1(b)および
図2(b)に示すように、青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間において、透光性部材3の上面近傍では、赤色蛍光体4がほとんど存在せず、緑色発光素子1gの上面よりも上の部分から、下方に向かって徐々に赤色蛍光体4の分布密度が高くなり、樹脂パッケージ2のキャビティの底部近傍(透光性部材3の下面近傍)が赤色蛍光体4の分布密度が最も高くなる形態を挙げることができる。青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間に、本発明の効果を有する高さで赤色蛍光体4が沈降し易いように、青色発光素子1bと緑色発光素子1gは、一定の間隔、例えば、赤色蛍光体の平均粒径よりも大きい間隔を空けて支持体に配置されることが好ましい。ここで、赤色蛍光体の平均粒径は、例えば、体積平均粒径として1μm以上100μm以下であり、5μm以上70μm以下が好ましく、20μm以上70μm以下がより好ましい。赤色蛍光体の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MALVERN社製MASTER SIZER 2000)により測定される粒径(メジアン径)である。
【0026】
赤色蛍光体4は、CASN系またはSCASN系の赤色蛍光体の1種以上であってよい。
好ましくは、赤色蛍光体4は緑色光を吸収して赤色光を発光することがほとんどない。すなわち、赤色蛍光体4は緑色光を赤色に実質的に変換しない。そして、赤色蛍光体4の緑色光に対する反射率は、緑色光の波長の範囲で平均して70%以上であることが好ましい。赤色蛍光体4を緑色光に対する反射率が高い、すなわち、緑色光を吸収することが少ない蛍光体、すなわち緑色光を波長変換することが少ない蛍光体とすることにより、発光装置の設計を容易にすることができる。
緑色光の吸収が大きい赤色蛍光体を使うと、青色発光素子1bだけでなく、緑色発光素子1gについても赤色蛍光体4による波長変換を考慮して発光装置の出力バランスを検討しなければない。一方、緑色光をほとんど波長変換しない赤色蛍光体4を用いると、青色発光素子1bの発光する青色の波長変換のみを考慮するだけで発光装置の出力バランスを設計することができる。
【0027】
このような好ましい赤色蛍光体4として以下の赤色蛍光体を挙げることができる。赤色蛍光体4はこれらの少なくとも1つ以上である。
第1の種類は、その組成が以下の一般式(I)で示される赤色蛍光体である。
A
2MF
6:Mn
4+ (I)
ただし、上記一般式(I)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH
4+からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0028】
第4族元素はチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)である。第14族元素は、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)および鉛(Pb)である。
第1の種類の赤色蛍光体の具体例として、K
2SiF
6:Mn
4+、K
2(Si,Ge)F
6:Mn
4+、K
2TiF
6:Mn
4+を挙げることができる。
【0029】
第2の種類は、その組成が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn
4+で表される赤色蛍光体または、その組成が以下の一般式(II)で示される赤色蛍光体である。
(x−a)MgO・a(Ma)O・b/2(Mb)
2O
3・yMgF
2・c(Mc)X
2・(1−d−e)GeO
2・d(Md)O
2・e(Me)
2O
3:Mn
4+ (II)
ただし、上記一般式(II)中、Maは、Ca,Sr,Ba,Znから選択された少なくとも1種であり、Mbは、Sc,La,Luから選択された少なくとも1種であり、Mcは、Ca,Sr,Ba,Znから選択された少なくとも1種であり、Xは、F,Clから選択された少なくとも1種であり、Mdは、Ti,Sn,Zrから選択された少なくとも1種であり、Meは、B,Al,Ga,Inから選択された少なくとも1種である。また、x、y、a、b、c、d、eについて、2≦x≦4、0<y≦2、0≦a≦1.5、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦0.5、0≦e<1である。
【0030】
上記二つの赤色蛍光体のうち、上記一般式(I)で示される赤色蛍光体のほうが、上記一般式(II)で示される赤色蛍光体よりも、青色発光素子の光で励起され易い点で好ましい。また、上記一般式(I)で示される赤色蛍光体のほうが、上記一般式(II)で示される赤色蛍光体よりも、発光ピーク波長が視感度曲線のピークに近いので、赤味成分を維持しつつ光束を上げることができる。
【0031】
第2の種類の赤色蛍光体の他の具体例として、緑色の光に対する反射率が比較的高い、Y
2O
2S:Eu
3+、La
2O
2S:Eu
3+、AEu
XLn
(1−X)M
2O
8(0<X≦1、Aは、Li,Na,K,PbおよびCsから選択される少なくとも一種であり、Lnは、Y,La,CdおよびLuから選択される少なくとも一種であり、Mは、WまたはMoである。)を挙げることができる。
【0032】
このような透光性部材3は、青色発光素子1bの少なくとも一部と緑色発光素子1gの少なくとも一部とを覆う。また、透光性部材3は、その少なくとも一部が、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの間に位置するように配置されている。好ましくは青色発光素子1bと緑色発光素子1gの上に跨って、それらに接触して配置される。
図1(a)、1(b)に示すように、青色発光素子1bは第1リード36aまたは第2リード36bと接触している底面以外の面(すなわち、上面および側面)全体が実質的に透光性部材3により覆われてよい。同様に、緑色発光素子1gは第1リード36aまたは第2リード36bと接触している底面以外の面(すなわち、上面および側面)全体が実質的に透光性部材3により覆われてよい。
【0033】
透光性部材3が青色発光素子1bを覆うことにより、青色発光素子1bから発光された青色光の一部は透光性部材3中の赤色蛍光体4により吸収され、赤色蛍光体4は赤色光を発光する。そして赤色蛍光体4により波長変換されなかった青色光と、赤色蛍光体4が発光した赤色光が透光性部材3を通り透光性部材3の上面(発光装置100の光取り出し面)から外側に出て行く。一方、緑色発光素子1gから発光された緑色光は、一部は赤色蛍光体4により赤色光に波長変換され、(好ましくは赤色蛍光体4により赤色光に変換されることはなく(またはほとんど変換されることなく))透光性部材3を通り透光性部材3の上面から外側に出て行く。そして、透光性部材3の外側で青色光と赤色光と緑色光が混色され、例えば白色光のような所望の色の光を得ることができる。
【0034】
発光装置100では、緑色光を緑色発光素子1gの発光により得ている。このため、緑色蛍光体を用いて緑色光を得る場合と比べ、緑色光が容易に鋭いピークを持つことができる。この結果、発光装置100を備えた液晶表示装置は、高い色再現性を達成することができる。
【0035】
さらに、緑色発光素子1gから発光された緑色光の一部は、好ましくは、波長が変わることなく赤色蛍光体4により散乱される。この場合、透光性部材3の外側における緑色光の強度分布が均一になり、色むらの発生を抑制することができる。さらに、例えば、透光性部材3を封止樹脂として、青色発光素子1bを覆う樹脂と緑色発光素子1gを覆う樹脂を同じ透光性部材3とすることは、生産性の観点からも好都合である。
【0036】
以下に発光装置100を構成する要素の詳細を説明する。
・発光素子
青色発光素子1bと緑色発光素子1gは、任意の形態で配置してよい。以下に好ましい配置をいくつか例示する。
図1(a)、(b)に示すように青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの長手方向を支持体7の長手方向(
図1(a)、
図1(b)の左右方向)と平行にしてよい。これに加えてまたはこれに代えて、
図1(a)、(b)に示すように、青色発光素子1bの長手方向と緑色発光素子1gの長手方向が1つの直線上に整列するように配置してよい。これらにより発光装置100全体に亘り、より均一に発光素子からの発光が分散されるからである。
また、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの長手方向を支持体7の発光素子載置面の長手方向と平行にしてよい。ここで、支持体7の発光素子載置面とは、支持体7において、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの少なくとも一方が載置されている面である。
【0037】
発光装置100Aのように、複数の青色発光素子1bと複数の緑色発光素子1gとを用いる場合、
図2(a)に示すように、青色発光素子1bと緑色発光素子1gとを交互に配置してよい。すなわち、青色発光素子1bの最も近くに配置されている(例えば、発光素子の中央同士の距離がもっとも短い)発光素子は緑色発光素子1gであり、緑色発光素子1gの最も近くに配置されている発光素子は青色発光素子1bである。このように配置することで、色むら発生を抑制できる。
また
図2(a)に示すように、1つの列に青色発光素子1bの長手方向と緑色発光素子1gの長手方向が1つの直線上に整列するように配置し、このような列を複数設けてよい。すなわち、青色発光素子1bの長手方向と緑色発光素子1gの長手方向が1つの直線上に整列し、別の青色発光素子1bの長手方向と別の緑色発光素子1gの長手方向が別の1つの直線上に整列してよい。
以上に述べた好ましい配置は、互いに組み合わせてよい。
【0038】
青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gは、電圧を印加することで自発発光する、例えば発光ダイオード(LED)のような半導体素子であってよい。青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gに用いる半導体として、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等を用いることができる。すなわち、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gは、窒化物半導体素子であってよい。このように半導体の材料を窒化物系半導体で揃えることにより、発光素子の順方向電圧(順電圧)Vfを揃えることができるので、発光素子を駆動する条件を別々に設定する必要性が少なくなる点で好ましい。支持体7に配置する青色発光素子1bの個数は単数でも複数でもよく、支持体7に配置する緑色発光素子1gの個数は単数でも複数でもよい。また、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gの平面形状は、正方形でも長方形でもよく、あるいはそれらを組み合わせて複数配置してもよい。支持体7の形状や大きさに合わせて、発光素子の個数や形状は適宜選択することができる。
【0039】
青色発光素子1bと緑色発光素子1gの光出力は、同じであってもよい。また、色再現性等の得ようとする特性に応じて、青色発光素子1bの光出力が、緑色発光素子1gの光出力と異なってもよい。優れた色再現性を得る1つの実施形態として、青色発光素子1bに対する緑色発光素子1gの光出力の比を、0.3以上0.7以下としてよい。
発光素子の光出力の比は、分光光度計により発光スペクトルを測定し、青色発光素子と緑色発光素子の発光ピークの高さの比から算出することができる。
【0040】
なお、
図1(b)および
図2(b)に示す実施形態では、青色発光素子1bの上面と緑色発光素子1gの上面は同じ高さの位置にあるがこれに限定されるものではない。青色発光素子1bの上面よりも緑色発光素子1gの上面が上側になるように配置してよい。すなわち、緑色発光素子1gの上面が、青色発光素子1bの上面よりも発光装置100の光取り出し面(透光性部材3の上面)の近くに配置されてよい。例えば、緑色発光素子1gをサブマウントに配置して、その上面が青色発光素子1bの上面よりも高くなるように支持体に配置させたり、緑色発光素子1gまたは青色発光素子1bについて、支持体の素子配置面に段差を形成させたり、それらの方法を組み合わせたりすることできる。このような配置を行うことで、例えば、緑色発光素子1gの光出力が青色発光素子1bの光出力よりもある程度低い場合でも優れた色再現性を得ることができる。
【0041】
・透光性部材
透光性部材3は、樹脂またはガラス材料等の任意の材料により形成されてよい。樹脂により透光性部材3を形成する場合、任意の樹脂を用いてよい。好適な例の1つは透明な樹脂である。青色発光素子1、緑色発光素子1gおよび赤色蛍光体4が発する光が吸収されるのを抑制するためである。好適な別の例は、透明な樹脂にTiO
2またはSiO
2などの拡散材を含有させた半透明な樹脂である。青色発光素子1b、緑色発光素子1gおよび赤色蛍光体4が発する光が吸収されるのをある程度抑制し、かつこれらの光を十分に拡散できるからである。
【0042】
このような好適な樹脂として、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などを例示できる。このような樹脂を溶融状態にして赤色蛍光体4を混合および分散させた後、この赤色蛍光体4が分散した樹脂を樹脂パッケージ2のキャビティに充填し、樹脂を硬化させることにより透光性部材3を形成できる。
【0043】
・樹脂パッケージ
樹脂パッケージ2は、任意の樹脂により形成してよい。好ましい樹脂として、ナイロン系樹脂、エポキシ系樹脂およびシリコーン系樹脂を例示できる。
必要に応じて、樹脂パッケージ2のキャビティ表面に、例えば銀(Ag)などの金属めっきのような反射材を配置するまたはキャビティの表面を白色等の明るい色にしてよい。これによりキャビティの表面の光の反射率を向上でき、キャビティの表面に到達した光を出射方向により多く反射することで、発光装置100の効率をより高くできる。
【0044】
キャビティを有する樹脂パッケージに代えて、例えば、セラミック、樹脂、誘電体、ガラスまたはこれらの複合材料より成る絶縁基板の表面に接続端子を配置した支持体とすることもできる。この支持体に青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gを配置し、例えば、モールド成形により、赤色蛍光体4を含む透光性部材3を、青色発光素子1bおよび緑色発光素子1gを被覆するように形成してもよい。
【0045】
発光装置100は、以下の製造方法により製造してよい。
金型内に第1リード36aと第2リード36bとを配置した後、金型内に樹脂を充填し、樹脂パッケージ2と第1リード36aと第2リード36bを一体的に形成する。第1リード36aの樹脂パッケージ2のキャビティの底面から露出している部分に青色発光素子1bを配置する。第2リード36bの樹脂パッケージ2のキャビティの底面から露出している部分に緑色発光素子1gを配置する。その後、ワイヤ6により、リード36aと青色発光素子1b、青色発光素子1bと緑色発光素子1g、および緑色発光素子1gと第2リード36bをそれぞれ接続する。
次に赤色蛍光体4を含む溶融状態の樹脂を樹脂パッケージ2のキャビティ内へ青色発光素子1bと緑色発光素子1gに少なくとも一部が接触するように充填し、赤色蛍光体4を沈降させた後、樹脂を硬化させることにより透光性部材3を形成する。
【0046】
なお、以上に説明した発光装置100は、発光装置の上面を光り取り出し面とし、下面を実装面とする、トップビュー型と呼ばれる発光装置である。しかし、これに限定されるものでなく、本開示に係る発光装置は、光取り出し面に隣接する面を実装面とし、実装面に平行な方向に光を発する、いわゆるサイドビュー型と呼ばれる発光装置も包含する。
【0047】
2.実施形態2
図3は、実施形態2に係るバックライト200を示す模式上面図である。バックライト200は、以下に説明するように発光装置100を含んでいる。しかし、以下の説明で用いる発光装置100は、発光装置100Aに置換してもよい。
バックライト200は、ケース20と、ケース20内に配置された導光板22と、ケース20内に配置されると共に導光板22に向かって光を発する発光装置100とを有する。バックライト200は、発光装置100からの光を、導光板22を介して、例えば液晶パネル等の所望の装置に光を照射する。
【0048】
ケース20は、その内面が光を反射するように形成されてよい。例えば、内面を白色にしてよい。
【0049】
導光板22の4つの側面の少なくとも1つを入射面(入光部)として用いる。
図3に示す実施形態では下方に位置する側面を入射面としている。発光装置100は、その光取り出し面が入射面に対向するように配置されている。好ましくは、発光装置100は、入射面に沿って複数配置されている。発光装置100から出た光は入射面から導光板22の内部に入る。複数の発光装置100を用いた場合、異なる発光装置100から出た光は、導光板22の内部で混合される。
導光板22の上面は出射面となる。出射面の上に例えば液晶パネル等の所望の装置を配置することで導光板22から出た光は、これらの装置に向かって進む。
【0050】
発光装置100の光取り出し面と、導光板22の入光部(入射面)が、その長手方向を一致させて配置されてよい。発光装置100の光取り出し面の長手方向と導光板の入光面の長手方向を平行にすることで、より高い効率で発光装置100の光を導光板22に導入できる。
【実施例】
【0051】
1.実施例1
実施例1の発光装置として、上述の発光装置100を用いた。発光装置100では、1つの青色発光素子1bと1つの緑色発光素子1gがそれぞれ支持体7の長辺方向(支持体の発光素子載置面の長辺方向)に平行になるように配置されている。赤色蛍光体4としてK
2SiF
6:Mn
4+を用いた。沈降法を用いて、青色発光素子1bと緑色発光素子1gとの間において、赤色蛍光体4の含有密度が、緑色発光素子1gの上面の高さより上側よりも、緑色発光素子1gの上面の高さより下側の方が高くなるようにした。この構成により、青色発光素子1bから緑色発光素子に向かう青色光の多くを赤色蛍光体により赤色光に変換することで、相互吸収を低減できる。
【0052】
比較例1の発光装置として、発光装置100の緑色発光素子1gを青色発光素子1bに置き換え、合計で2つの青色発光素子1bとし、透光性部材3が赤色蛍光体4に加えて緑色蛍光体としてβ−サイアロンを含む発光装置を用いた。実施例1で用いたのと同じ樹脂量と同じ赤色蛍光体量に緑色蛍光体を追加した透光部材形成材料を用意して透光性部材3とした。
図4に実施例1の発光装置100の発光スペクトルを示し、
図5に比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す。実施例1の発光装置と比較例1の発光装置は、以下に示すカラーフィルターを透過した後のホワイトポイント(Wの色度点)ができるだけ近くなるようなものを用いた。
【0053】
実施例1の発光装置と比較例1の発光装置のそれぞれにカラーフィルターを装着し、それぞれの発光装置からの光についてカラーフィルターを透過させた。より詳細には、透過後の色域が高色域仕様のカラーフィルターを用いた液晶パネルを使用した。
図6に用いたカラーフィルターの透過スペクトルを示す。
【0054】
表1に、カラーフィルターを透過する前後の発光装置の色度点を示した。実施例1の発光装置と比較例1の発光装置では色度点が近いことが分かる。
【0055】
【表1】
【0056】
表2に、カラーフィルターを透過する前後の輝度の比を示した。カラーフィルター透過前は、実施例1の発光装置の輝度よりも比較例1の発光装置の輝度の方が高い値となっている。一方、カラーフィルター透過後は、実施例1の発光装置の輝度と比較例1の発光装置の輝度は同等となっている。この結果は、比較例1の発光装置から発せられた光が、実施例1の発光装置から発せられた光よりもカラーフィルター透過時に多く吸収されたことを意味しており、実施例1の発光装置の発光が比較例1の発光装置の発光よりも、高い効率でカラーフィルターを透過していることを示している。
【0057】
【表2】
【0058】
表3にカラーフィルター透過後の各色域規格の面積比及びカバー率を示した。また、
図7には、この結果をグラフで示した。高色域仕様のカラーフィルターを用いた液晶パネル使用しているため、比較例1の発光装置でも、Adobe RGB規格のカバー率がほぼ100%示しており、実施例1の発光装置を使用した場合と同等のカバー率を示している。
しかし、Adobe RGBよりも色域の広いBT2020規格で比べると、比較例1の発光装置を使用した場合はカバー率が77.9%であるのに対し、実施例1の発光装置を用いた場合は、カバー率が82.6%と4.7パーセントポイント向上している。この結果から、高色域仕様のパネルを用いた場合、実施例1の発光装置を用いた場合は、比較例1の発光装置を用いた場合と比較してパネル輝度は維持したまま、より高色域のカバーが可能であることが分かる。
図7からも実施例1の発光装置を用いた場合、比較例1の発光装置を用いた場合と比較して、緑色の色度点が深くなりBT2020規格のカバー率を拡大できることが分かる。
【0059】
【表3】
【0060】
2.実施例2
実施例1の発光装置と同様の構成を有する発光装置を実施例2の発光装置として用い、比較例1の発光装置と同様の構成を有する発光装置を比較例2の発光装置として用いた。実施例2の発光装置と比較例2の発光装置は、以下に示すカラーフィルターを透過した後のホワイトポイント(Wの色度点)ができるだけ近くなるようなものを用いた。
【0061】
実施例2の発光装置と比較例2の発光装置のそれぞれにカラーフィルターを装着し、それぞれの発光装置からの光についてカラーフィルターを透過させた。
より詳細には、バックライト用途に多く使用されている青色発光素子とYAG蛍光体を組み合わせた発光装置を用いた場合に、カラーフィルター透過後の色域が、sRGB規格のカバー率が高くなるよう設計されたカラーフィルターを用いた液晶パネルを使用した。
図8に用いたカラーフィルターの透過スペクトルを示す。
【0062】
表4に、カラーを透過する前後の発光装置の色度点を示した。実施例2と比較例2では色度点が近いことが分かる。
【0063】
【表4】
【0064】
表5に、カラーフィルターを透過する前後の放射束及び輝度の比を示した。カラーフィルター透過前は、実施例2の発光装置の輝度よりも比較例2の発光装置の輝度の方が高い値となっている。カラーフィルター透過後でも、実施例2の発光装置の輝度よりも比較例2の発光装置の輝度の方が高い値となっているが、その差はカラーフィルターの透過前と比べると小さくなっている。この結果は、比較例2の発光装置から発せられた光が、実施例2の発光装置から発せられた光よりもカラーフィルター透過時に多く吸収されたことを意味しており、実施例2の発光装置の発光が比較例2の発光装置の発光よりも、高い効率でカラーフィルターを透過していることを示している。
【0065】
【表5】
【0066】
表6にカラーフィルター透過後の各色域規格の面積比及びカバー率を示した。sRGB規格のカバー率が高くなるように設計されたカラーフィルターを用いた液晶パネル使用しているため、比較例2の発光装置でもsRGB規格のカバー率がほぼ100%示しており、実施例2の発光装置を使用した場合と同等のカバー率を示している。
しかし、
図8に示すような、実施例1と比較して各色のカラーフィルターの透過率が低く、緑色カラーフィルターの透過スペクトルの半値幅が広いカラーフィルターを用いた場合、sRGBよりも色域の広い、Adobe RGB規格で比べると、比較例2の発光装置を使用した場合はカバー率が93.7%であるのに対し、実施例2の発光装置を用いた場合は、カバー率が99.0%となっており、Adobe RGB規格をほぼカバーできており、比較例2の発光装置を使用した場合と比較して、5.3パーセントポイント向上している。この結果から、sRGB規格のカラーフィルターを用いた液晶パネルを使用すると、実施例2の発光装置を用いた場合は、比較例2の発光装置を用いた場合と比較してパネル輝度は若干の低下はあるものの、Adobe RGB規格のカバー率を顕著に向上できることが確認できた。
図9からも実施例2の発光装置を用いた場合、比較例2の発光装置を用いた場合と比較して、緑色の色度点が深くなりAdobe RGB規格のカバー率を拡大できることが分かる。
【0067】
【表6】