特許第6473971号(P6473971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6473971フォトルミネッセンス測定治具及びこれを用いたフォトルミネッセンス測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473971
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】フォトルミネッセンス測定治具及びこれを用いたフォトルミネッセンス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20190218BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
   G01N21/01 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-236902(P2015-236902)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-102064(P2017-102064A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】相良 和広
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−025549(JP,A)
【文献】 特開2005−077176(JP,A)
【文献】 特開2003−073839(JP,A)
【文献】 特開平04−109169(JP,A)
【文献】 特開平04−269646(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0157288(US,A1)
【文献】 THOMPSON J D, HABBAL F,A stress-free sample holder for low-temperature studies,Journal of Physics E,英国,1979年,Vol.12 No.5,352-353
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G02B 21/00−21/36
H01L 21/66−21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトルミネッセンス測定装置において測定対象となる短冊状のサンプルを固定するフォトルミネッセンス測定治具であって、
前記サンプルを載置するサンプル保持台と、前記サンプルの短辺側表面の外周部を押さえ込んで固定する一対の固定治具と、該固定治具を前記サンプル保持台に固定する固定ネジとを有することを特徴とするフォトルミネッセンス測定治具。
【請求項2】
前記固定治具は、
前記固定ネジで前記サンプル保持台に固定されるL字型のベース部位と、該ベース部位から断面がくさび形の支え板が多数延伸する櫛部とを有し、
前記支え板が前記サンプルの短辺側表面の外周部に接触することで、前記サンプルを押さえ込んで固定するものであることを特徴とする請求項1に記載のフォトルミネッセンス測定治具。
【請求項3】
フォトルミネッセンスの測定方法であって、
請求項1又は請求項2に記載のフォトルミネッセンス測定治具を用いて、測定対象となる短冊状のサンプルを固定してフォトルミネッセンスを測定することを特徴とするフォトルミネッセンスの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトルミネッセンス測定治具及びこれを用いたフォトルミネッセンス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、半導体デバイスのさらなる微細化、高性能化のため、より高品質な半導体基板が求められている。そのための物理・化学分析を用いた多種多様の手法が知られており、それらの範囲や手法は極めて広い。具体例として、最も工業的に重要であるシリコン基板の評価法を挙げて説明する。
【0003】
電気特性評価は、実際のデバイスに近い方法であり、感度が優れた評価法である。デバイス材料としてのシリコンウェーハの電気特性評価法としては、四探針法等が知られている。四探針法は4本の探針をシリコン基板表面に接触させて、シリコン基板表層の抵抗率を測定する方法である。しかしながら、この方法は空間分解能という点で必ずしも充分でない。たとえばシリコンウェーハのエッジ部10mmの領域を、精度よく測定することが困難である。
【0004】
また最近のデバイス材料として、N型シリコンウェーハ(Siの主成分にリン(P)を加えた半導体)に、ホウ素(B)やアルミニウム(Al)などの成分を加えることで、より高度な特性のシリコン半導体が生産されている。このような多成分系シリコン結晶は四探針法の電気特性評価から各成分の不純物濃度を特定することはできない。
【0005】
フォトルミネッセンス(Photoluminescence:以下、PLともいう)評価は、レーザー光にて励起されたPL発光を利用した分光分析法の一つである。これによって、高い空間分解能で試料内の、ドーパント濃度・不純物欠陥を評価することができる。従って、半導体基板の評価にPL評価を利用することで、ウェーハ表面ミクロ領域の不純物濃度やデバイス活性領域の欠陥を評価することができる。
【0006】
ここで、PL法による測定の原理について示す。Si結晶に禁制帯幅よりも大きなエネルギーを照射すると、伝導体、価電子帯には、それぞれ過剰の自由電子、自由正孔が生じる。これらが各種の電子状態を経由して再結合する際に放出される光がPLである。シリコン結晶中の電気的に活性なホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)の不純物の濃度と、特定のPLスペクトル線の強度比に相関があることが知られている。
【0007】
半導体ウェーハのPL評価を目的として、非特許文献1(フォトルミネッセンスによるシリコン結晶中の不純物濃度測定方法)、特許文献1、2のような装置・評価法が考案されてきた。
【0008】
非特許文献1では、10K以下の超低温下におけるPL測定で、上記の不純物濃度を決定できることが記載されている。また、非特許文献1には、シリコン片に応力が加わるとPLスペクトルが歪む・2つに分離するなどの異常が発生することが記載されている。
【0009】
特許文献1はPLスペクトルのシフト量から半導体にかかるストレス量を評価する手法である。シリコンウェーハではスペクトルが分離することがある為に、精度の良いストレス評価は難しい。
【0010】
特許文献2は半導体材料の妨害不純物の測定精度を向上する為に、焦点ぼかし平行レーザービームや、放射状に設定された2つ以上の突出部がある回転可能な試料ホルダーを使用して、縁部方向のフォトルミネセンスを測定する手法を論じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−19693号公報
【特許文献2】特表2013−528808号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】JIS H 0615−1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般的にPL測定で用いるフォトルミネッセンス測定治具は、小さく割ったサンプル片(例えば、シリコン片)を板ばねで固定している。図8に従来の板ばね式のフォトルミネッセンス測定治具の概略図を示す。図8に示すように、従来のフォトルミネッセンス測定治具21では、まず、小さく割ったサンプル22の測定を行う側の表面を上にしてサンプル保持台23の上に置く。このサンプル22を板ばね24で固定し、板ばね24を固定ネジ25でサンプル保持台23に固定する。このようにしてフォトルミネッセンス測定治具21で固定したサンプル22に、レーザー26からレーザー光を照射して、PL測定を行う。
【0014】
このような従来のフォトルミネッセンス測定治具による固定方法は、板ばね24直下のサンプル22に応力が加わり、PLスペクトルが歪む・2つに分離するなどの異常が発生しやすい。
【0015】
また、サンプルの裏面にシリコングリースなど塗って、接着保持台に押しつけて固着する方法がある。しかしながら、PL測定時には接着保持台・測定サンプルを液体ヘリウムにつけて冷却する必要がある。一方でサンプルを交換する時等には、液体ヘリウム温度まで冷却されているサンプルやサンプル保持台などを、装置から室温の大気中に取り出す必要がある。この時に、サンプル等に急激な温度上昇や大気に触れることによる結露が発生する。
【0016】
シリコングリースなどでサンプルを固着した場合、上記のようなサンプルやフォトルミネッセンス測定治具の冷却や、サンプル交換の過程において、サンプルがフォトルミネッセンス測定治具からはがれやすくなってしまう。これによりPL測定時に装置内にサンプルが落下するなどの問題が発生していた。
【0017】
しかしながら、上記の非特許文献1、特許文献1、2には、これらの問題を解決するようなサンプルの具体的な固定法に関する記載はない。
【0018】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、フォトルミネッセンス測定時に、フォトルミネッセンススペクトルを安定して高感度に測定することができ、かつ、サンプルが装置内へ落下することを防止することができるフォトルミネッセンス測定治具及びフォトルミネッセンスの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明によれば、フォトルミネッセンス測定装置において測定対象となる短冊状のサンプルを固定するフォトルミネッセンス測定治具であって、
前記サンプルを載置するサンプル保持台と、前記サンプルの短辺側表面の外周部を押さえ込んで固定する一対の固定治具と、該固定治具を前記サンプル保持台に固定する固定ネジとを有することを特徴とするフォトルミネッセンス測定治具を提供する。
【0020】
このようものであればフォトルミネッセンス測定時に、サンプル中央部の測定エリアに応力が加わらないので、フォトルミネッセンススペクトルを安定して高感度に測定することができ、さらに、サンプルが装置内へ落下することを防止することができる。
【0021】
このとき、前記固定治具は、
前記固定ネジで前記サンプル保持台に固定されるL字型のベース部位と、該ベース部位から断面がくさび形の支え板が多数延伸する櫛部とを有し、
前記支え板が前記サンプルの短辺側表面の外周部に接触することで、前記サンプルを押さえ込んで固定するものであることが好ましい。
【0022】
このようなものであれば、サンプルを多数の点で応力をかけずに支持することができる。そのため、フォトルミネッセンススペクトルの測定感度を従来に比べて向上させることがより確実にできる。さらに、フォトルミネッセンス測定時にサンプルが装置内へ落下することをより確実に防止することができる。
【0023】
また本発明によれば、フォトルミネッセンスの測定方法であって、
上記本発明のフォトルミネッセンス測定治具を用いて、測定対象となる短冊状のサンプルを固定してフォトルミネッセンスを測定することを特徴とするフォトルミネッセンスの測定方法を提供する。
【0024】
このようなフォトルミネッセンスの測定方法であれば、フォトルミネッセンス測定時に、サンプル中央部の測定エリアに応力が加わらないので、フォトルミネッセンススペクトルを安定して高感度に測定することができ、さらに、サンプルが装置内へ落下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のフォトルミネッセンス測定治具は、フォトルミネッセンス測定時に、サンプル中央部の測定エリアに応力を加えることなく確実に固定することができるので、フォトルミネッセンススペクトルを安定して高感度かつ高精度で測定することができ、さらに、サンプルが装置内へ落下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のフォトルミネッセンス測定治具の一例を示した概略図である。
図2】フォトルミネッセンス測定治具における固定治具の部分を拡大した模式図である。
図3】フォトルミネッセンス測定治具における固定治具の部分の断面を示した模式図である。
図4】実施例において測定地点1、2、3、4で測定されたスペクトルを示したグラフである。
図5】比較例において測定地点1、4で測定されたスペクトルAを示したグラフである。
図6】比較例において測定地点2で測定されたスペクトルBを示したグラフである。
図7】比較例において測定地点3で測定されたスペクトルCを示したグラフである。
図8】従来の板バネ式のフォトルミネッセンス測定治具を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、フォトルミネッセンス測定の際にサンプルを板ばねで固定すると、板ばね直下のシリコン片に応力が加わり、PLスペクトルが歪む・2つに分離するなどの異常が発生しやすかった。また、板ばねを用いずに、サンプルの裏面にシリコングリースなどを塗って、接着保持台に押しつけて固着する方法の場合には、サンプルが治具からはがれやすく、これによりPL測定時に装置内にサンプルが落下するなどの問題が発生していた。
【0028】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、サンプルの短辺側表面の外周部を押さえ込んで固定する一対の固定治具であれば、フォトルミネッセンス測定時に、サンプル中央部の測定エリアに応力が加わらないので、PLスペクトルを安定して高感度に測定することができ、さらに、サンプルが装置内へ落下することを防止することができることに想到した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0029】
まず、本発明のフォトルミネッセンス測定治具について図1〜3を参照して説明する。
図1に示すように本発明のフォトルミネッセンス測定治具1は、サンプル2を載置するサンプル保持台3と、サンプル2の短辺側表面の外周部を押さえ込んで固定する一対の固定治具4と、該固定治具4をサンプル保持台3に固定する固定ネジ5とを有する。
【0030】
測定対象となるサンプル2は短冊状のものであればよく、特に限定されない。例えば、半導体基板としてシリコン基板の場合には、PW(Polished Wafer)、エピタキシャルウェーハ又はSOIウェーハ等から切断、へき開等して得られたサンプルの測定を行うことができる。
【0031】
サンプル保持台3はレーザー6(励起レーザー)・検出器に対して平行に保持されており、傾斜機構はついていないものとすることができる。また、サンプル保持台3におけるサンプル2の固定は1面固定のみではなく、サンプル保持台3の裏面部でも、同じように固定治具4でサンプル2を固定してもよい。そして、例えば回転機構を設けて、サンプル保持台3の裏面部側のサンプル2の測定を行うこともできる。
【0032】
サンプル保持台3は上下方向に移動可能とし、サンプル保持台3の中央部をライン状に測定可能とすることができる。
【0033】
フォトルミネッセンス測定治具1は測定時に液体ヘリウムで冷却される。固定治具4はサンプル2の落下を防止するためのガイドであるので、この時にサンプルを十分に保持することができる強度と弾性が必要である。そのため、固定治具4の材質は各種金属製が好ましい。また、サンプルを交換する際に固定治具4を液体ヘリウムからの取り出しを行うと、大気と触れることによる水分の結露などが発生しやすい。この点から固定治具4は鉄など錆びやすい材質は避けて、真鍮やアルミ等を用いることが望ましい。
【0034】
図2図3に示すように、固定治具4は、固定ネジ5でサンプル保持台3に固定されるL字型のベース部位7と、該ベース部位7から断面がくさび形の支え板8が多数延伸する櫛部9とを有し、支え板8がサンプル2の短辺側表面の外周部に接触することで、サンプル2を押さえ込んで固定するものであることが好ましい。なお、図2は、図1において点線で囲った部分の拡大図である。
【0035】
このようなものであれば、サンプル2を支え板8によって多数の点で余り応力をかけずに支持することができる。そのため、PLスペクトルの測定感度を従来に比べて向上させることがより確実にできる。さらに、PL測定時にサンプルが装置内へ落下することをより確実に防止することができる。
【0036】
サンプル2の短辺側表面の外周部には、支え板8の櫛状の部分のみが接触している。そして、サンプル2がずれないように、各々の支え板8は弾性変形して、サンプル2を多数の点でほとんど応力をかけずに支持することができる。このような形状であれば、サンプル中央部の測定エリアに応力が加わらない最適な形状とすることができる。
【0037】
なお、固定治具4はL字型に限定されない。固定治具4は、サンプル2の短辺側表面の外周部を押さえ込んで固定できるものであればよく、例えば、単純なストレート形状であっても、コの字型の一対の固定治具であっても同様の効果を奏することができる。
【0038】
このような本発明のフォトルミネッセンス測定治具であれば、フォトルミネッセンス測定時に、サンプル中央部の測定エリアに応力が加わらないので、PLスペクトルを安定して高感度に測定することができ、さらに、サンプルが装置内へ落下することを防止することができる。
【0039】
次に、上記したような本発明のフォトルミネッセンス測定治具を用いた本発明のフォトルミネッセンス測定方法について説明する。ここでは、図1に示すようなフォトルミネッセンス測定治具1を用いる場合について述べる。
【0040】
まず、測定対象となる短冊状に小さく割ったサンプル2を準備する。サンプル2の測定を行う側の表面を上にして、サンプル保持台3上に載置する。そして、一対の固定治具4で、サンプル2の短辺側表面の外周を押さえ込んで固定し、固定ネジ5で固定治具4をサンプル保持台3に固定する。このようにして、本発明のフォトルミネッセンス測定治具1を用いてサンプル2を固定してフォトルミネッセンスの測定を行う。
【0041】
このようなフォトルミネッセンスの測定方法であれば、フォトルミネッセンス測定時に、サンプル2中央部の測定エリアに応力が加わらないので、PLスペクトルを安定して高感度かつ高精度で測定することができ、さらに、サンプル2が装置内へ落下することを防止することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(実施例)
【0044】
以下に示すような条件で、フォトルミネッセンスの測定を行った。
・フォトルミネッセンス測定装置:Photoluminor−D(株式会社堀場製作所製)
・測定温度:液体ヘリウム冷却(温度4K)
・測定対象:シリコンウェーハ
【0045】
測定対象のシリコンウェーハとして、CZ法により製造した導電型N型、直径300mm、結晶方位<100>、厚さ0.775mmのPWシリコンウェーハを用意した。なお、ウェーハをN型にするためのドーパントとしてリン(P)を用いた。このウェーハ中のリン濃度は8×1013atoms/cm、酸素濃度は1.3×1018atoms/cmであった。そして、このウェーハから、10mm×70mmの短冊状のサンプルをへき開面で割り出した。
【0046】
そして、図1及び図2、3に示すような本発明のフォトルミネッセンス測定治具を用いて、サンプルの固定を行った。そして、図1の矢印方向に移動して、測定地点1、2、3、4におけるPL測定を行った。このとき測定されたPLスペクトルの結果を図4に示した。なお、PL測定時に装置内にサンプルが落下するようなことはなかった。
【0047】
図4に示したように、測定地点を変えても、測定されたPLスペクトルは極めて一致して重なり、1本のスペクトルに見える。測定地点1、2、3、4では、波長1077.95nmリン(P)のPLスペクトルが検出された。
【0048】
(比較例)
フォトルミネッセンス測定治具として、図8に示すような従来の板ばね式のフォトルミネッセンス測定治具を用いたこと以外は、実施例と同様にしてフォトルミネッセンスの測定を行った。
【0049】
その結果、測定地点により、以下の3種類(スペクトルA、B、C)のPLスペクトル(波長1077.8nmリン(P)のPLスペクトル)が検出された。図5、6、7はこの時のPLスペクトルである。
【0050】
比較例における測定地点1、測定地点4では、図5に示すようなスペクトルAが検出された。図5に示すように、波長1077.95nmリン(P)のPLスペクトルが検出された。なお、測定地点1・測定地点4のスペクトルは極めて一致して重なっている。
【0051】
比較例における測定地点2では、図6に示すようなスペクトルBが検出された。図6に示すように、リン(P)スペクトルが1078.02nmにシフトして歪んで検出された。スペクトルBは、スペクトルAに比べるとS/N比が劣っていた。
【0052】
比較例における測定地点3では、図7に示すようなスペクトルCが検出された。図6に示すように、リン(P)スペクトルが異常で、2つに分離して検出されなかった。
【0053】
このように、比較例では、測定地点1、4においては、PLスペクトルを正常に測定することができた。しかしながら測定地点2、3では、PLスペクトルが歪んだり、2つに分離するなどの異常が発生した。
【0054】
一方、実施例では上記したように、全ての測定地点においてPLスペクトルを安定して高感度に測定することができた。特に比較例のスペクトルB・Cと比べると、実施例の全ての測定地点においてS/N比が大幅に改善された。以上のように、実施例では、本発明によるフォトルミネッセンス測定治具を使用して、サンプルを固定することで、S/N比が高いPL測定を行うことが可能となった。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1…フォトルミネッセンス測定治具、 2…サンプル、 3…サンプル保持台、
4…固定治具、 5…固定ネジ、 6…レーザー、 7…ベース部位、 8…支え板、
9…櫛部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8