特許第6474047号(P6474047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474047気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474047
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20190218BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20190218BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20190218BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L21/68 F
   C23C16/52
   C30B25/12
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-236871(P2015-236871)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-103396(P2017-103396A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 孝樹
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−239093(JP,A)
【文献】 特開2010−157629(JP,A)
【文献】 特開2017−069414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/365
H01L 21/67−21/687
C23C 16/00−16/56
C30B 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面上に印部を有して軸線回りに回転可能なサセプタと、
前記軸線回りに前記サセプタが回転する周期に対応して信号を出力する出力部と、
前記軸線回り回転する前記サセプタとともに、前記軸線回りに回転する前記印部が周期的に通過する領域を撮像領域として撮像画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像領域を通過する前記印部を検出する検出部と、
前記出力部により前記信号が出力されるタイミングと、前記検出部により前記印部が検出されるタイミングとの時間差に基づき前記撮像領域の位置ずれを算出する算出部と、
を備えることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記サセプタは、基板が載置されるザグリ部を有し、
前記撮像装置は、前記ザグリ部に載置された前記基板と前記ザグリ部の隙間を含む領域を前記撮像領域とし、
前記軸線回りに前記サセプタを少なくとも1回転させて前記撮像領域を通過する前記隙間の前記撮像画像から測定した前記基板の位置と、前記算出部で算出された前記撮像領域の位置ずれに基づき前記ザグリ部に載置された前記基板の載置位置を計測する計測部と、
を備える請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記基板を前記サセプタの上方に搬送する搬送ロボットと、
前記搬送ロボットから前記サセプタに前記基板を搬送するために前記搬送ロボットが停止する停止位置を前記計側部で計測された前記載置位置に基づき制御する制御部と、
を備える請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記印部は、前記ザグリ部の内周部又は外周部に若しくは前記内周部と前記外周部に渡って位置する請求項2又は3に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記サセプタは、前記外面上に、前記印部と前記印部の周囲に位置して前記印部とは輻射率が異なる周辺部を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記印部は、石英又はカーボン製の部材である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記印部は、段状に形成される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項8】
外面上に印部を有するサセプタを軸線回りに回転させる工程と、
前記回転させる工程により前記サセプタが回転する周期に対応して信号を出力する工程と、
前記回転させる工程により前記サセプタとともに、前記軸線回りに回転する前記印部が周期的に通過する領域を撮像領域として撮像画像を撮像する工程と、
前記撮像領域を通過する前記印部を検出する工程と、
前記信号が出力されるタイミングと、前記撮像領域を通過する前記印部が検出されるタイミングとの時間差に基づき前記撮像領域の位置ずれを算出する工程と、
を備えることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記サセプタのザグリ部に載置された基板と前記ザグリ部の隙間を含む領域を前記撮像領域とし、前記軸線回りに前記サセプタを少なくとも1回転させて前記撮像領域を通過する前記隙間の前記撮像画像から測定した前記基板の位置と、前記算出する工程で算出された前記撮像領域の位置ずれに基づき前記ザグリ部に載置された前記基板の載置位置を計測する工程と、
を備える請求項8に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記基板を前記サセプタの上方に搬送する搬送ロボットから前記サセプタに前記基板を搬送させるために前記搬送ロボットが停止する停止位置を前記計測する工程で計測された前記載置位置に基づき制御する工程を備える請求項9に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項11】
前記制御する工程後に前記サセプタに搬送された前記基板にエピタキシャル層を成長する成長工程を備える請求項10に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項12】
前記ザグリ部の内周部又は外周部に若しくは前記内周部と前記外周部に渡って位置する前記印部を有した前記サセプタを使用する請求項9ないし11のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項13】
前記印部の周囲に位置して輻射率が前記印部と異なる周辺部が前記外面上に形成される前記サセプタを使用する請求項8ないし12のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項14】
石英又はカーボン製の前記印部を使用する請求項8ないし13のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項15】
段状に形成された前記印部を使用する請求項8ないし14のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項16】
前記回転させる工程は、前記サセプタを5rpm以下で回転させる請求項8ないし15のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータに備わるメモリ及び演算素子、並びに、デジタルカメラ及びビデオに備わる撮像素子等の様々な半導体デバイスがシリコンウェーハを用いて作製されている。特に先端向けの半導体デバイスを作製する場合には、シリコン基板の表面に気相成長でシリコン層を堆積させたシリコンエピタキシャルウェーハが用いられる。
【0003】
このようなエピタキシャルウェーハは、例えば、トリクロロシラン(TCS)等の原料を1100℃以上の高温で気相反応させ、シリコン基板の表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長して作製される。作製されたエピタキシャルウェーハをもとに半導体デバイスが作製されるため、エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層における膜厚と抵抗率は、半導体デバイスの特性に大きな影響を与える。それ故、半導体デバイスに用いるエピタキシャルウェーハにおいては、エピタキシャル層の膜厚と抵抗率がウェーハの面内方向において均一となる高品質なエピタキシャルウェーハが求められる。
【0004】
高品質なエピタキシャル層を成長する装置として、1枚の基板毎に基板の表面にエピタキシャル層を成長する枚葉式の気相成長装置が知られる。このような気相成長装置においては、例えば、石英製のブレードに基板を載置した状態で基板を搬送する搬送ロボットが用いられ、搬送ロボットにより基板が反応炉内に搬送される。反応炉内に搬送された基板は、例えば、リフトピンで搬送ロボットのブレード上からサセプタに向けて搬送され、基板はサセプタ上に載置される。
【0005】
基板が載置されるサセプタには、基板より直径が大きい円盤状にサセプタの表面が窪んだザグリ部が形成され、ザグリ部の内側に基板が載置される。ザグリ部に載置される基板は、基板とザグリ部の中心を一致させ、基板とザグリ部との間に環状の隙間ができるように載置することが望ましい。しかし、気相成長装置によりエピタキシャルウェーハを製造する場合には、反応炉内に基板を搬入出する搬送時に炉内が約500℃に加熱され、その基板に気相成長をする成長時には炉内が1100℃以上に加熱されるとの工程を繰り返す。そのため、反応炉内の部材の熱膨張に起因してサセプタの位置が経時的に変化し、基板の中心がザグリ部の中心からずれた状態で基板がザグリ部に載置されることがある。この場合、基板とザグリ部との間に幅が不均一な環状の隙間が形成され、この状態で基板にエピタキシャル層を成長すると、基板に供給される原料ガス等の流れが隙間に起因して基板の周方向で不均一となる。その結果、成長させるエピタキシャル層の外周部で膜厚が不均一となり、膜厚の均一性が悪化する。
【0006】
そのため、ザグリ部に載置された基板の位置を測定する装置が、例えば、特許文献1及び2に開示されている。また、例えば、特許文献3及び4には、サセプタ上のマーキングをカメラで認識する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−199586号公報
【特許文献2】特開2010−153769号公報
【特許文献3】特開2009−123860号公報
【特許文献4】特開2014−239093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4のような基板等の位置を測定する装置において、例えば、カメラ等の撮像装置は、サセプタに載置される基板の上方に位置するランプ、リフレクタ等の加熱用モジュールの筐体に設置される。例えば、筐体には貫通孔が形成され、貫通孔に撮像装置が挿入された状態で撮像装置が筐体に固定される。一方、筐体は、反応炉に接続するように取付けられるものの、反応炉とのクリアランスが大きいため、精度よく取付けられない。したがって、反応炉のメンテナンスにより筐体の取外し及び取付けが繰り返される度に筐体が取付けられる位置が異なる。その結果、メンテナンスの度に筐体に設置される撮像装置の位置が変化することで、撮像装置が撮像する撮像領域が一定にならない。よって、このような撮像装置を用いて基板の位置を計測すると計測精度が悪化するとの問題がある。
【0009】
本発明の課題は、撮像装置が撮像する撮像領域の位置ずれを算出可能な気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の気相成長装置は、
外面上に印部を有して軸線回りに回転可能なサセプタと、
軸線回りにサセプタが回転する周期に対応して信号を出力する出力部と、
軸線回り回転するサセプタとともに、軸線回りに回転する印部が周期的に通過する領域を撮像領域として撮像画像を撮像する撮像装置と、
撮像領域を通過する印部を検出する検出部と、
出力部により信号が出力されるタイミングと、検出部により印部が検出されるタイミングとの時間差に基づき撮像領域の位置ずれを算出する算出部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
出力部により信号が出力されるタイミングは、軸線回りに回転するサセプタの周期に対応するため、撮像装置の撮像領域に位置ずれがあるか否かに影響を受けず、サセプタの周期に対応して画一的に出力される。それに対して、検出部が印部を検出するタイミングは、撮像領域を通過する印部に対応するため、撮像領域に位置ずれがあると、撮像領域の位置がずれた量に対応してタイミングが変化する。よって、両タイミングの時間差は、撮像領域の位置ずれの指標となる。そのため、この指標に基づき撮像領域の位置ずれを算出することが可能となる。
【0012】
本発明の実施態様では、サセプタは、基板が載置されるザグリ部を有し、撮像装置は、ザグリ部に載置された基板とザグリ部の隙間を含む領域を撮像領域とする。更に、軸線回りにサセプタを少なくとも1回転させて撮像領域を通過する隙間の撮像画像から算出した基板の位置と、算出部で算出された撮像領域の位置ずれに基づきザグリ部に載置された基板の載置位置を計測する計測部を備える。
【0013】
基板を載置したサセプタを少なくとも1回転させることで、基板の周囲に位置する隙間を撮像でき、撮像した隙間から基板の周方向における隙間の幅の変動を取得できる。例えば、基板とザグリ部の中心が一致する場合は基板の周方向で隙間の幅は変動しない。よって、例えば、基板の周方向における隙間の幅の変動量などからザグリ部の中心に対する基板の中心の位置ずれを算出できる。そして、算出した位置ずれに撮像領域の位置ずれを加味することにより、ザグリ部に載置された基板の載置位置を精度よく計測することが可能となる。
【0014】
本発明の実施態様では、基板をサセプタの上方に搬送する搬送ロボットと、搬送ロボットからサセプタに基板を搬送するために搬送ロボットが停止する停止位置を計側部で計測された載置位置に基づき制御する制御部と、を備える。
【0015】
これによれば、精度よく計測された基板の載置位置により搬送ロボットの停止位置が制御されるため、搬送ロボットの停止位置をより適切な位置に制御することが可能となる。
【0016】
本発明の実施態様では、印部は、ザグリ部の内周部又は外周部に若しくは内周部と外周部に渡って位置する。サセプタは、外面上に、印部と印部の周囲に位置して印部とは輻射率が異なる周辺部を有する。これによれば、撮像装置を用いて印部を明確に検出することが可能となる。具体的には、印部は、石英又はカーボン製の部材である。また、印部は、段状に形成してもよい。これによれば、段状の印部により影ができ、撮像装置を用いて印部を明確に検出できる。
【0017】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、
外面上に印部を有するサセプタを軸線回りに回転させる工程と、
回転させる工程によりサセプタが回転する周期に対応して信号を出力する工程と、
回転させる工程によりサセプタとともに、軸線回りに回転する印部が周期的に通過する領域を撮像領域として撮像画像を撮像する工程と、
撮像領域を通過する印部を検出する工程と、
信号が出力されるタイミングと、撮像領域を通過する印部が検出されるタイミングとの時間差に基づき撮像領域の位置ずれを算出する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法として構成した発明である(前述の発明は気相成長装置として構成した発明である)。前述の気相成長装置の発明と同様に、撮像領域の位置ずれを算出可能となる。
【0019】
本発明の実施態様では、サセプタのザグリ部に載置された基板とザグリ部の隙間を含む領域を撮像領域とし、軸線回りにサセプタを少なくとも1回転させて撮像領域を通過する隙間の撮像画像から測定した基板の位置と、算出する工程で算出された撮像領域の位置ずれに基づきザグリ部に載置された基板の載置位置を計測する工程と、を備える。
【0020】
これによれば、前述の気相成長装置の発明の実施態様と同様に、ザグリ部に載置された基板の載置位置を精度よく計測できる。
【0021】
本発明の実施態様では、基板をサセプタの上方に搬送する搬送ロボットからサセプタに基板を搬送させるために搬送ロボットが停止する停止位置を計測する工程で計測された載置位置に基づき制御する工程を備える。

【0022】
これによれば、前述の気相成長装置の発明の実施態様と同様に、搬送ロボットの停止位置をより適切な位置に制御することが可能となる。
【0023】
本発明の実施態様では、制御する工程後にサセプタに搬送された基板にエピタキシャル層を成長する成長工程を備える。
【0024】
これによれば、膜厚の均一性のよい高品質なエピタキシャルウェーハを製造することが可能となる。
【0025】
本発明の実施態様では、ザグリ部の内周部又は外周部に若しくは内周部と外周部に渡って位置する印部を有したサセプタを使用する。具体的には、印部の周囲に位置して輻射率が印部と異なる周辺部が表面上に形成されるサセプタを使用する。これによれば、撮像装置を用いて印部を明確に検出することが可能となる。なお、印部としては、石英又はカーボン製の印部を使用する。また、使用する印部としては、段状に形成された印部を使用してもよい。これによれば、段状の印部により影ができ、撮像装置を用いて印部を明確に検出できる。
【0026】
本発明の実施態様では、回転させる工程は、サセプタを5rpm以下で回転させる。
【0027】
これによれば、撮影領域を通過する印部を検出する精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の気相成長装置の一例を示す模式断面図。
図2A図1のサセプタに基板を載置した一例を示す模式平面図。
図2B図2Aのサセプタを軸線回りに回転させて印部が撮像領域に到達した状態を示す模式平面図。
図2C図2Aのサセプタを軸線回りに回転させた場合における印部の位置関係を示す模式平面図。
図3図1の気相成長装置の搬送ロボットの一例を示す模式図。
図4図1の気相成長装置の制御部の一例を示すブロック図。
図5A】ザグリ部の中心と基板の中心が一致するようにサセプタに基板を載置した状態を示す模式平面図。
図5B】ザグリ部の中心と基板の中心がずれるようにサセプタに基板を載置した状態を示す模式平面図。
図6A図2Aのサセプタの変形例1を示す模式平面図。
図6B図2Aのサセプタの変形例2を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の気相成長装置1の一例を示す。気相成長装置1により、例えば、成長用基板となるシリコン単結晶ウェーハ(基板W)にシリコン単結晶膜(エピタキシャル層)を気相成長させ、シリコンエピタキシャルウェーハが製造される。
【0030】
気相成長装置1は、透明石英製の天板2aを有する反応炉2を備える。反応炉2の内部には、サセプタ3とサセプタ3を支持する支持部4が配置される。また、支持部4にはサセプタ3を駆動させる駆動機構5が接続する。
【0031】
サセプタ3は円盤状に形成され、鉛直方向に伸びる軸線O回りに回転可能に反応炉2内に配置される。サセプタ3を上から見た図2Aに示すように、サセプタ3は、サセプタ3の表面が円盤状に窪んだザグリ部3aと、ザグリ部3aの外周部に位置する印部3bを備える。サセプタ3は、印部3bを除く部分が、炭化ケイ素(SiC)製の部材により形成される。
【0032】
ザグリ部3aは、基板Wの直径より大きな円盤状にサセプタ3の表面が窪むように形成される。図2Aにおいて、ザグリ部3aとサセプタ3は、軸線O及びザグリ部3aの中心Cを中心とするように同心円状に位置する。ザグリ部3aには基板Wが載置され、ザグリ部3aは、載置された基板Wの外周Waに対向する環状の内壁3a1を有する。ザグリ部3aに基板Wが載置された状態で基板Wの中心C1から外周Waに向かう方向に位置する外周Waとザグリ部3aの内壁3a1の間には幅W1の隙間Sが形成される。図2Aでは、隙間Sは、基板Wの周囲において幅W1が不均一となる環状に形成される。
【0033】
ザグリ部3aの外周部には印部3bが位置する。印部3bは、サセプタ3が軸線O回りに回転を開始する前の状態では、図2Aに示す位置(後述する気相成長ガスGの上流側の位置)を初期位置とする。印部3bは、石英又はカーボン製で菱形の板状に形成され、サセプタ3の表面が面一状になるようにザグリ部3aの外周部に埋め込まれる。なお、ザグリ部3aに埋め込まれた印部3bの周囲に位置する周辺部(炭化ケイ素)と、印部3b(石英又はカーボン)との間で輻射率が異なる。
【0034】
図1に戻って、支持部4はサセプタ3の裏面側からサセプタ3を水平又は略水平に支持するように配置される。支持部4は、サセプタ3の裏面に接続してサセプタ3を支持するアーム4aと、上端部がアーム4aに接続して鉛直方向の下方に伸びる支柱4bを備える。
【0035】
支柱4bの下端部には駆動機構5が接続する。駆動機構5は、支柱4bを上下動可能及び支柱4bを軸線O回りに回転可能な駆動部5aと、軸線O回りに回転する支柱4bの回転の変位を検出することで、サセプタ3の回転の変位を検出するホームセンサ5bを備える。駆動部5aは、例えば、モーター等を有し、駆動部5aが軸線O回りに支柱4bを回転させると、支柱4bと一緒にサセプタ3が軸線O回りに回転する。ホームセンサ5bは、図2Aに示す位置からサセプタ3が回転を開始し、再び図2Aに示す位置にサセプタ3が復帰する度に信号を出力する。
【0036】
図1に戻って、反応炉2の外部には、反応炉2の左右にガス供給管6及びガス排出管7が配置されるとともに、反応炉2を収容するように反応炉2を覆うケース8が配置される。
【0037】
ガス供給管6は、反応炉2の水平方向の一端側(図1左側)に位置し、反応炉2内に各種のガスを略水平に供給する。ガス供給管6は、例えば、気相成長時には反応炉2内に気相成長ガスGを供給する。気相成長ガスGは、シリコン単結晶膜の原料となる原料ガスと、原料ガスを希釈するキャリアガスと、単結晶膜に導電型を付与するドーパントガスを有する。
【0038】
ガス排出管7は、反応炉2の水平方向の他端側(図示右側)に位置し、反応炉2内のガスを反応炉2外に排出する。ガス排出管7からは、基板Wを通過した気相成長ガスG等が排出される。
【0039】
ケース8は、内部に反応炉2を収容するように反応炉2を覆って位置し、反応炉2に接続するように取付けられる。ケース8と反応炉2の間に形成される空間には、ランプ9とリフレクタ10が配置される。また、ケース8の上面には貫通孔8aが形成され、貫通孔8aには撮像装置11が挿入される。貫通孔8aに撮像装置11が挿入された状態で撮像装置11がケース8に取付けられる。
【0040】
ランプ9は、反応炉2の上下に複数配置され、気相成長時に反応炉2内を加熱して反応炉2内に位置する基板W等の温度を調節する熱源である。
【0041】
リフレクタ10はランプ9と反応炉2を取り囲むように反応炉2の上下に位置し、ランプ9からの光を反応炉2内に導く。リフレクタ10には、表裏を貫通する開口10aが形成される。
【0042】
撮像装置11は、カメラ11aと、カメラ11aを保護する保護管11bを備える。カメラ11aは、反応炉2の上側に位置するリフレクタ10の上方に位置し、反応炉2内を撮像する。カメラ11aは、リフレクタ10の開口10aと反応炉2の透明な天板2aを通して反応炉2内を撮像する。図2Aにおいて四角で囲まれた領域Rがカメラ11aにより撮像される撮像領域Rの一例である。撮像領域Rは、ザグリ部3aに載置した基板Wの中心C1から外周Waに向かう方向に位置する隙間S並びにザグリ部3aの内周部及び外周部を含む領域となる。また、撮像領域Rは、軸線O回りにサセプタ3が回転すると、サセプタ3とともに回転する印部3bが周期的に通過する領域である。撮像領域Rは、図1に示すように撮像装置11をケース8に設置する際にその位置が設定される。図1の撮像装置11では、図2Aの破線の四角で囲まれた領域(気相成長ガスGの下流に位置する領域)を目標とする撮像領域R1としている。しかし、ケース8に撮像装置11を設置する際の設置誤差等から目標とする撮像領域R1から位置がずれた撮像領域Rが実際にカメラ11aで撮像する領域とされる。撮像領域Rをカメラ11aが撮像することで、隙間Sの幅W1を測定可能な撮像画像(動画等)が撮像される。なお、図示省略してあるが、カメラ11aのレンズの前には過剰な光がカメラ11aに入射するのを防止するために減衰フィルタが設けられる。
【0043】
図1に戻って、カメラ11aを保護する保護管11bは筒状に形成され、カメラ11aを囲むように位置する。保護管11bは、反応炉2を加熱する熱等からカメラ11aを保護する。保護管11b内には冷却用の空気又は窒素が流通することで、反応炉2を加熱する熱等によりカメラ11aの温度上昇を抑制する。
【0044】
また、カメラ11a等が取付けられるケース8の外部には、ケース8の側方(図示右側)にダクト12と冷却部13が配置される。
【0045】
ダクト12はケース8の側方(図示右側)に位置し、反応炉2の外壁に沿って冷気Cを導入可能、かつ、その導入した冷気Cをケース8の内壁に沿って排出可能な通路である。ダクト12の一方にはケース8が接続され、ダクト12の他方にはブロワ、コンプレッサ及び熱交換器等を有する冷却部13が接続される。
【0046】
冷却部13は、ケース8と反応炉2の間に形成される空間にダクト12を通じて冷気Cを導入し、反応炉2の外壁とリフレクタ10等を冷却する冷却手段として機能する。冷気Cは、例えば、ダクト12から反応炉2の外壁に沿って導入された後、ケース8と反応炉2の間の空間を流通してケース8の内壁に沿うようして冷却部13に戻り、反応炉2及びケース8等を冷却する。
【0047】
また、図3に示すように気相成長装置1には、反応炉2内に基板Wを搬入する搬送ロボット14が備わる。搬送ロボット14は、例えば、基板Wを載置するブレード14aと、ブレード14aに接続するアーム14bと、アーム14bを伸縮させる伸縮機構14cと、アーム14bを回転させる回転機構14dを備える。ブレード14aは、例えば、二股状に形成され、ブレード14aの上面に基板Wが載置される。アーム14bは、伸縮機構14cにより水平方向に伸縮可能となるとともに、回転機構14dにより軸線O1回りに回転可能となる。搬送ロボット14は、アーム14bの伸縮、回転を駆使してブレード14aに載置した基板Wをサセプタ3の上方に搬送する。
【0048】
また、図4に示すように駆動部5a、ホームセンサ5b、カメラ11a及び搬送ロボット14は、それらを制御するための制御部15に電気的に接続される。制御部15は、上記各部を制御するコンピュータとして構成される。制御部15は、CPU15aと、RAM15bと、ROM15cを備え、それらがバス15dでI/Oポート15eに接続される。また、I/Oポート15eには、駆動部5a、ホームセンサ5b、カメラ11a及び搬送ロボット14が接続される。
【0049】
CPU15aは、駆動部5a、ホームセンサ5b、カメラ11a及び搬送ロボット14とのデータ通信及びデータ通信で取得したデータ等の情報処理の全般を司る。例えば、サセプタ3が軸線O回りに回転する場合は、図2Aに示す初期位置に印部3bが復帰する毎にホームセンサ5bからCPU15aに信号が出力される。図4に戻って、RAM15bはCPU15aの作業領域として機能する揮発性の記憶部である。ROM15cは、駆動部5a、ホームセンサ5b、カメラ11a及び搬送ロボット14とのデータ通信及び通信したデータを処理するために必要なデータ及びソフトウェア(プログラム)を記憶する不揮発性の記憶部である。
【0050】
ROM15cには、次の駆動プログラム16a、検出プログラム16b、算出プログラム16c、計測プログラム16d、位置プログラム16eが主に格納される。
【0051】
駆動プログラム16aは、サセプタ3を回転させる駆動部5aを制御する。後述する検出プログラム16bにより図2Aに示す撮像領域Rを通過する印部3bを検出する際には、例えば、5rpm以下の一定の回転速度でサセプタ3を回転させる。また、ザグリ部3aに載置された基板Wの外周Waと内壁3a1の隙間Sをカメラ11aに撮像させる場合には所定の回転速度でサセプタ3を少なくとも1回転させる。一方、気相成長時にサセプタ3を回転させる際には、例えば、50rpmの回転速度でサセプタ3を回転させる。
【0052】
図4に戻って、検出プログラム16bは、一定の回転速度でサセプタ3を回転させた状態で、カメラ11aが撮像する撮像領域Rを通過する印部3bを検出する。例えば、図2Bに示すように印部3bが撮像領域Rに到達する毎に検出プログラム16bが印部3bを検出する。検出プログラム16bが印部3bを検出する際に一定の回転速度でサセプタ3が回転すると、印部3bが図2Aに示す初期位置に復帰する毎に図4のホームセンサ5bからCPU15aに信号が出力される。
【0053】
算出プログラム16cは、検出プログラム16bが印部3bを検出したタイミングと、印部3bが図2Aに示す初期位置に復帰するのを通知するホームセンサ5bから出力される信号のタイミングの時間差に基づき撮像領域Rの位置ずれを算出する。例えば、図2Aに示す初期位置に軸線O回りに回転する印部3bが到達する毎に、ホームセンサ5bからCPU15aに信号が出力され、CPU15aは、印部3bが初期位置に到達するタイミングを取得する。一方で、図2Bに示すように印部3bが撮像領域Rに到達する毎に、検出プログラム16bが印部3bを検出する。例えば、CPU15aは、検出プログラム16bが印部3bを検出したタイミングを印部3bが撮像領域Rに到達するタイミングとして取得する。
【0054】
ここで、印部3bが図2Aの初期位置に到達するタイミングと、図2Bの撮像領域Rに到達するタイミングとの時間差TLは、図2Aから図2Bに軸線O回りにサセプタ3が回転する時間となる。軸線Oを基点にサセプタ3が反時計回りに一定の速度で回転する場合には、時間差TLをサセプタ3の周期で除法した値に360を乗じた値が、図2Aの初期位置の印部3bが軸線Oを基点に反時計回りに移動した回転角θ1(図2C)となる。よって、カメラ11aがケース8に正常に設置された場合における撮像領域R1で同様に印部3bを検出した際の回転角θ2を予め設定しておくと、回転角θ1と回転角θ2との角度のずれ(角度θ3)を算出できる。算出プログラム16cは、例えば、上記の回転角θ1、θ2から撮像領域Rの位置ずれ(撮像領域Rと撮像領域R1の位置ずれである角度θ3)を算出する。
【0055】
図4に戻って、計測プログラム16dは、算出プログラム16cで算出した撮像領域Rと撮像領域R1の位置ずれを利用してザグリ部3aに載置された基板Wの載置位置を計測する。計測プログラム16dは、駆動プログラム16aによりザグリ部3aに基板Wを載置したサセプタ3を少なくとも1回転させる。そして、カメラ11aが撮像した基板Wの周方向に位置する隙間Sの撮像画像から隙間Sの幅W1の変動(幅W1の長さの変動)を取得する。例えば、図5Aに示すように基板Wとザグリ部3aの互いの中心C1、Cが一致する場合には基板Wとザグリ部3aが同心円状に位置し、基板Wとザグリ部3aとの隙間Sの幅W1は一定となる。この状態から基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cから距離Dずれると(図5B)、基板Wがずれた方向に形成される隙間Sの幅W1は距離D狭くなり最小値となる。逆に基板Wがずれた方向と反対方向に位置する隙間Sの幅W1は距離D広くなり最大値となる。計測プログラム16dは、カメラ11aの撮像画像から取得した幅W1の最大値を最小値で減算した値を2で除法し、基板Wの中心C1とザグリ部3aとの中心Cのずれ(距離D)を算出する。
【0056】
また、計測プログラム16dは、基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cからずれた方向を次のようにして計測する。計測プログラム16dは、幅W1が最小となる隙間Sが撮像領域Rを通過したタイミングと、ホームセンサ5bが信号を出力したタイミングとの時間差TLに基づいて基板Wの中心C1がザグリ部3bの中心Cからずれた方向を算出する。例えば、カメラ11aから撮像領域Rを通過する隙間Sの幅W1が最小となる箇所を検出したt秒後にホームセンサ5bから信号が出力された場合、軸線O回りにt秒分だけ基板Wの位置がずれている。よって、t秒をサセプタ3の周期で除法した値に360を乗じることで、ザグリ部3aの中心Cから基板Wの中心C1がずれた方向(角度)が算出される。ここで、算出プログラム16cにより撮像領域Rに位置ずれ(図2Cの角度θ3)が算出された場合には、その位置ずれを加味(減算又は加算)することで、基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cの位置ずれの方向が計測される。以上のようにして計測プログラム16dにより基板Wがザグリ部3aに載置される載置位置(ザグリ部3aの中心Cと基板Wの中心C1がずれた距離と方向)が計測される。
【0057】
図4に戻って、位置プログラム16eは、搬送ロボット14の動きを制御する。図3に示すように基板Wを保持して反応炉2内に進入した搬送ロボット14からサセプタ3に基板Wを搬送するために搬送ロボット14が停止する停止位置を調節する。搬送ロボット14は、ブレード14aに載置した基板Wをサセプタ3に搬送する場合、サセプタ3上方に停止する。そして、停止した搬送ロボット14のブレード14aから基板Wがリフトピンに受け渡され、リフトピンにより基板Wがサセプタ3に搬送される。位置プログラム16eは、計測プログラム16dにより計測された基板Wの載置位置を利用して搬送ロボット14が停止する停止位置を調節する。計測プログラム16dが計測した基板Wの載置位置から、次にザグリ部3aに基板Wを載置する際に、基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cに載置されるように搬送ロボット14がサセプタ3の上方に停止する停止位置を調節する。
【0058】
以上、気相成長装置1の主要な各部について説明した。気相成長装置1によりエピタキシャルウェーハを作製する場合には、図2Aに示すように目標とする撮像領域R1と、カメラ11aが実際に撮像する撮像領域Rの位置ずれを最初に算出する。例えば、基板Wがザグリ部3aに載置されていない状態で、駆動部5aにより一定の回転速度(例えば、5rpm)でサセプタ3を軸線O回りに回転させる。そして、図2Aの開始位置に印部3bが復帰するタイミングと、図2Bの撮像領域Rを印部3bが通過するタイミングとの時間差TLに基づいて撮像領域Rの位置ずれを算出する。図2Cに示すように、例えば、時間差TLから算出した回転角θ1と予め設定した回転角θ2(開始位置Pに印部3bが復帰するタイミングと、撮像領域R1を印部3bが通過するタイミングとの時間差TLから算出した回転角θ2)から撮像領域Rの位置ずれ(角度θ3)を算出する。
【0059】
撮像領域Rの位置ずれ(角度θ3)を算出した後は、反応炉2内に基板Wを搬入し、サセプタ3に基板Wを載置する。その後、駆動部5aによりサセプタ3を回転させ、回転するサセプタ3に載置した基板Wの周囲の隙間Sをカメラ11aで撮像する。そして、カメラ11aの撮像画像から、例えば、図5Bに示す基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれを暫定的に算出し、算出した位置ずれに撮像領域Rの位置ずれ(図2Cの角度θ3)を加味して基板Wの載置位置を計測する。基板Wの載置位置の計測が終了すると、サセプタ3に載置された基板Wにエピタキシャル層を成長させ、エピタキシャルウェーハを作製する。作製されたエピタキシャルウェーハは、リフトピンによりサセプタ3から搬送ロボット14に運ばれ、反応炉2の外に搬送される。その後、新たな基板Wが搬送ロボット14によりサセプタ3上方に搬送される。この際、先に計測した基板Wの載置位置を加味し、基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cと一致するように搬送ロボット14の停止位置を制御する。そして、先と同様にして基板Wをザグリ部3aに載置し、載置された基板Wの載置位置を計測し、基板Wにエピタキシャル層を成長する。このような工程を繰り返すことで複数の基板Wにエピタキシャル層を成長し、複数のエピタキシャルウェーハを作製する。
【0060】
エピタキシャルウェーハを作製する際にサセプタ3に載置する基板Wは、ザグリ部3aと中心を一致させ、基板Wとザグリ部3aの間に環状の隙間Sができるように載置することが望ましい。しかし、基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cからずれて基板Wがザグリ部3aに載置されることがある。このような場合、例えば、直前に載置された基板Wの載置位置を目安にサセプタ3上方で停止する搬送ロボット14の停止位置を補正する。しかし、停止位置を補正する目安となる基板Wの載置位置はカメラ11aの撮像画像に基づき計測され、カメラ11aは、図1に示すようにケース8に設置される。ここで、ケース8は、反応炉2に接続するように取付けられる一方で、反応炉2とのクリアランスが大きいため、精度よく取付けられない。よって、反応炉2のメンテナンス等によりケース8の取外しと取付けが繰り返される度にケース8が取付けられる位置が異なり、ケース8に設置されるカメラ11aの設置位置にも誤差が生じてしまう。それ故、図2Aに示すようにカメラ11aが実際に撮像する撮像領域Rと目標とする撮像領域R1の間に位置ずれが生じ、カメラ11aを利用して計測される基板Wの載置位置の精度が悪化する。
【0061】
そのため、本実施態様では、カメラ11aの撮像領域Rと撮像領域R1の位置ずれ(図2Cの角度θ3)を算出する。これによりカメラ11aを設置する際の位置ずれ、カメラ11aが設置されるケース8の位置ずれ等による撮像領域Rと撮像領域R1の位置ずれ(角度θ3)を補正可能となる。具体的には、ホームセンサ5bからの信号で印部3bが初期位置Pに到達するタイミングを取得し、検出プログラム16bが撮像領域Rで印部3bを検出するタイミングから印部3bが撮像領域Rに到達するタイミングを取得する。この両タイミングの時間差TLは、図2Aから図2Bに軸線O回りにサセプタ3が回転する時間となる。そのため、軸線Oを基点にサセプタ3が反時計回りに一定の速度で回転する場合には、時間差TLをサセプタ3の周期で除法した値に360を乗じた値が、図2Cに示す回転角θ1となる。よって、カメラ11aがケース8に正常に設置された場合(撮像領域R1の場合)の回転角θ2を予め設定することで、回転角θ1と回転角θ2とのずれ(角度θ3)を算出できる。このように算出した位置ずれ(角度θ3)によりカメラ11aの撮像領域Rと目標とする撮像領域R1との位置ずれを算出できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0063】
(実施例)
実施例では、ザグリ部3aの外周部から外側に20mmの位置に深さ2mmの菱形の溝を形成し、その溝にその溝と同形状の石英製の印部3bを埋め込んだサセプタ3を備えた気相成長装置1を用意した。具体的には、図2Cの回転角θ2が90度となるように目標とする撮像領域R1を設定し、撮像装置11をケース8に取付けた気相成長装置1を用意した。そして、基板Wをザグリ部3aに載置させずにサセプタ3をランプ9で1150℃に加熱し、5rpmでサセプタ3を反時計回りに回転させ、カメラ11aで撮像領域Rを連続的に撮像し、撮像領域Rの位置ずれ(図2Cの角度θ3)を算出した。
【0064】
実施例では、サセプタ3の回転周期(12秒)と同じ周期で撮像領域Rに印部3bが検出された。撮像領域Rを通過する印部3bが検出されるタイミングとホームセンサ5bから出力される信号のタイミングを比較すると、ホームセンサ5bの信号が約3.1秒早く、周期的に検出された。サセプタ3を反時計回りに回転させたため、360×(3.1/12)=93から図2Cのθ1が93度に対応する位置が撮像領域R(印部3bが検出される位置)であると算出された。ここで、カメラ11aは、図2Cのθ2が90度に対応する位置が撮像領域R1(目標とする撮像領域)となるようにケース8に取付けられている。そのため、3度の組み付け誤差(撮像領域Rと撮像領域R1との位置ずれ)があることが算出された。
【0065】
次に撮像領域Rの位置ずれ(図2Cの角度θ3=3度)を算出した気相成長装置1の反応炉2に直径300mmの基板Wを搬入し、ザグリ部3aに基板Wを載置した。そして、ザグリ部3aに基板Wを載置させた状態でサセプタ3を軸線O回りに回転させ、カメラ11aで基板Wとザグリ部3aの間の隙間Sの撮像画像を連続して撮像した。撮像した撮像画像から基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれの距離と方向(補正前の方向)を算出したところ、距離が1.5mm、方向のずれが98.1度と算出された。ここで、カメラ11aの組み付け誤差が3度であることから、正確な位置ずれの方向(角度)が101.1度と計測された。その後、基板Wにエピタキシャル成長を行った。
【0066】
以上により印部3bをサセプタ3に設け、カメラ11aの撮像領域Rの位置を正確に算出することでザグリ部3aに載置される基板Wの載置位置(位置がずれた方向)を高精度に求めることができた。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0068】
上記の説明では、図2Aに示すように印部3bはザグリ部3aの外周部に形成される例を説明した。印部3bとしては、図6Aに示すようにザグリ部3bの内周部又は図6Bに示すように内周部と外周部に渡って形成されてもよい。図6Bのように形成される場合には印部3bは、段状に形成されることで、段部3bがランプ9等に照らされて印部3bの影が生じる。そのため、カメラ11aで印部3bを検出し易くなる。
【符号の説明】
【0069】
1 気相成長装置 2 反応炉
3 サセプタ 3a ザグリ部
3b 印部 4 支持部
5a 駆動部 5b ホームセンサ
6 ガス供給管 7 ガス排出管
9 ランプ 11 撮像装置
11a カメラ 14 搬送ロボット
15 制御部 R 撮像領域
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B