(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端に測定子を有するプローブと、前記測定子を被測定物の表面に倣って移動させる移動機構とを備え、前記測定子と前記被測定物の表面との接触を検出して前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、
前記被測定物の形状データに基づいた設計輪郭を設定する輪郭設定手段と、
前記設計輪郭に沿って前記プローブを移動させる際に許容される許容誤差を設定する許容誤差設定手段と、
前記設計輪郭及び前記許容誤差に基づいて、前記設計輪郭に沿い、かつ複数のセグメントで構成される設計曲線を設定する経路設定手段と、
前記セグメントの数が所定の最大セグメント数を超えるか否かを判定するセグメント数判定手段と、
前記測定子の前記被測定物への押込み量を検出する押込み量検出手段と、
前記押込み量に基づいて測定エラーを検出するエラー検出手段と、を備え、
前記許容誤差設定手段は、前記セグメントの数が前記最大セグメント数を超える場合に前記許容誤差を増加させ、前記エラー検出手段により測定エラーが検出された場合に前記許容誤差を減少させる
ことを特徴とする形状測定装置。
先端に測定子を有するプローブと、前記測定子を被測定物の表面に倣って移動させる移動機構とを備え、前記測定子と前記被測定物の表面との接触を検出して前記被測定物の形状を測定する形状測定装置における形状測定方法であって、
前記被測定物の形状データに基づいた設計輪郭を設定し、前記設計輪郭に沿って前記プローブを移動させる際に許容される許容誤差を設定し、前記設計輪郭及び前記許容誤差に基づいて、前記設計輪郭に沿い、かつ複数のセグメントで構成される設計曲線を設定する設定工程と、
前記プローブの位置を検出して前記プローブの位置を測定するとともに、前記測定子の前記被測定物への押込み量を検出する測定工程と、
前記設定工程において設定された前記セグメントの数が所定の最大セグメント数を超えるか否かを判定するセグメント数判定工程と、
前記測定工程において検出される前記押込み量に基づいて測定エラーを検出するエラー検出工程と、を実施し、
前記設定工程は、前記セグメント数判定工程により前記セグメントの数が前記最大セグメント数を超えると判定された場合、前記許容誤差を増加させ、前記エラー検出工程により測定エラーが検出された場合に前記許容誤差を減少させる
ことを特徴とする形状測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の形状測定装置において、PCC曲線は、設計データから測定子の半径Rからプローブの基準押込み量Eを差し引いた設計輪郭(理想の設計値倣い軌道)に対して、所定の許容誤差(Allowed Deviation;AD値)を加味した曲線となる。ここで、AD値の大小により、プローブが被測定物から離脱する離脱エラーやプローブの押込み量が超過する押込みエラーが発生する。
この離脱エラーや押込みエラーの発生頻度は、AD値の大小により変化し、AD値を小さく設定することで、エラー発生頻度を抑制でき、AD値を大きくすると、エラー発生頻度が増加する。
【0005】
一方、PCC曲線を構成するPCCセグメントの数、つまり設定可能な最大セグメント数は限られており、最大セグメント数をオーバーするとセグメント数オーバーエラーとなる。
このセグメント数オーバーエラーは、AD値の大小により変化し、AD値を小さく設定すると、セグメント数が増加してエラー発生頻度が増加し、AD値を大きく設定すると、セグメント数が減少してエラー発生頻度が抑制される。
【0006】
上述のように、離脱エラー及び押込みエラーの発生頻度と、セグメント数オーバーエラーとは、ともにAD値により変化するが、それぞれAD値との関係が相反する。このため、従来では、エラー対策として、設計輪郭を分割する方法等が採用されていたが、この場合、測定結果を結合する際の処理が煩雑となるといった課題が生じていた。
【0007】
本発明は、測定処理の煩雑化を抑制可能な形状測定装置、及び形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形状測定装置は、先端に測定子を有するプローブと、前記測定子を被測定物の表面に倣って移動させる移動機構とを備え、前記測定子と前記被測定物の表面との接触を検出して前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、前記被測定物の形状データに基づいた設計輪郭を設定する輪郭設定手段と、前記設計輪郭に沿って前記プローブを移動させる際に許容される許容誤差を設定する許容誤差設定手段と、前記設計輪郭及び前記許容誤差に基づいて、前記設計輪郭に沿い、かつ複数のセグメントで構成される設計曲線を設定する経路設定手段と、前記セグメントの数が所定の最大セグメント数を超えるか否かを判定するセグメント数判定手段と、前記測定子の前記被測定物への押込み量を検出する位置検出手段と、前記押込み量に基づいて測定エラーを検出するエラー検出手段と、を備え、前記許容誤差設定手段は、前記セグメントの数が前記最大セグメント数を超える場合に前記許容誤差を増加させ、前記エラー検出手段により測定エラーが検出された場合に前記許容誤差を減少させることを特徴とする。
【0009】
本発明では、設計輪郭に対して、所定の許容誤差(AD値)を加味した設計曲線(PCC曲線)を設定し、そのPCC曲線を複数のセグメントに分割して、分割されたセグメントに沿ってプローブを移動させることで、倣い測定が実施される。
ここで、本発明では、セグメント数判定手段により、セグメントの数(セグメント数)が最大セグメント数であるか否かを判定し、セグメント数が最大セグメント数である場合、許容誤差設定手段は、AD値を増加させる。
また、実際に倣い測定が実施された際に、エラー検出手段は、測定子の押込み量が許容範囲を超える場合に測定エラーを検出する。すなわち、押込み量が所定の最小値よりも小さい場合は離脱エラーを、また、押込み量が所定の最大値よりも大きい場合は押込みエラーを検出する。そして、許容誤差設定手段は、このような測定時のエラーが検出された場合に、AD値を減少させる。
以上のように、本発明では、セグメント数オーバーエラーが発生せず、かつ、測定時の測定エラーも発生しないような最適なAD値を設定することができる。よって、設計輪郭の分割による測定処理の煩雑化を回避することができる。
【0010】
本発明の形状測定装置において、前記設計曲線は、前記設計輪郭から、前記測定子の半径から前記プローブの前記被測定物への押込み量を減算した値だけオフセットした曲線であり、前記エラー検出手段により前記測定エラーが検出された際に、前記押込み量を、所定の下限値から所定の上限値の間で調整する押込み量調整手段を備え、前記許容誤差設定手段は、前記
押込み量調整手段により調整された前記押込み量が、前記下限値又は前記上限値に達した場合で、かつ、前記エラー検出手段により前記測定エラーが検出される場合に、前記許容誤差を減少させることが好ましい。
【0011】
本発明では、プローブ位置の測定を実施して測定エラーが検出された場合に、まず、押込み量を調整する。このような構成では、上述のような許容誤差(AD値)の設定に加え、プローブの押込み量の調整により測定エラーを解消させることができる。また、設計輪郭を分割することで、測定エラーを回避する場合では、上述のように、分割した各設計輪郭に対してそれぞれ設計曲線(PCC曲線)やセグメントを設定した後、測定後に測定結果を結合する処理が煩雑となる。本発明では、AD値や押込み量の調節により、測定エラーが回避されるように調整するので、設計輪郭の分割による処理の煩雑化をより高い確率で回避することができる。
また、AD値を減少させると、セグメント数が増加することになり、セグメント数オーバーエラーが生じるおそれがある。これに対して、本発明では、AD値を減少させる前に、プローブの押込み量の調節を実施し、プローブの押込み量調節によって測定エラーを回避できない場合に、AD値を減少させる。このため、セグメント数オーバーエラーの発生を可能な限り抑制することができる。
【0012】
本発明の形状測定装置において、前記プローブを移動させる際の移動速度を設定する移動速度設定手段を備え、前記移動速度設定手段は、前記エラー検出手段によりエラーが検出され、かつ、前記
押込み量調整手段により調整された前記押込み量が、前記下限値又は前記上限値に達した場合に前記プローブの移動速度を低減させ、前記許容誤差設定手段は、前記移動速度設定手段により低減された前記プローブの移動速度が、所定の最低移動速度に達した場合で、かつ、前記エラー検出手段により前記測定エラーが検出される場合に、前記許容誤差を減少させることが好ましい。
【0013】
本発明では、上述した発明と同様、測定エラーが検出された際に、まず、押込み量を調整し、押込み量の調整により測定エラーが回避されなかった場合に、プローブの移動速度を減少させる。プローブの移動速度を減少させることは、測定時間の遅延を意味する。
本発明では、押込み量が調整された後に、測定エラーが検出される場合に、移動速度を減少させるため、測定時間の遅延を可能な限り回避することができる。また、本発明では、許容誤差の設定、プローブの押込み量の調節、及びプローブの移動速度の調節により、測定エラーが回避されるように調整するので、設計輪郭の分割による処理の煩雑化を可能な限り回避することができる。
また、上記発明と同様、AD値を減少させると、セグメント数が増加することになり、セグメント数オーバーエラーが生じるおそれがある。これに対して、本発明では、AD値を減少させる前に、プローブの移動速度を調節することで、セグメント数オーバーエラーの発生を可能な限り抑制することができる。
【0014】
本発明の形状測定装置において、前記輪郭設定手段は、前記許容誤差設定手段により設定された前記許容誤差が所定の最小値に達し、かつ、前記エラー検出手段により前記測定エラーが検出される場合に、前記設計輪郭を分割することが好ましい。
本発明では、上述のような許容誤差設定手段によるAD値の設定により測定エラーが回避できなかった場合に、輪郭設定手段により設定される設計輪郭を複数に分割する。設計輪郭を分割しない場合、高精度な形状測定を実施できないが、設計輪郭を分割することで、セグメント数及び各セグメントの長さをより短くでき、セグメント数オーバーエラー及び測定エラーの発生を抑制できる。
【0015】
本発明の形状測定方法は、先端に測定子を有するプローブと、前記測定子を被測定物の表面に倣って移動させる移動機構とを備え、前記測定子と前記被測定物の表面との接触を検出して前記被測定物の形状を測定する形状測定装置における形状測定方法であって、前記被測定物の形状データに基づいた設計輪郭を設定し、前記設計輪郭に沿って前記プローブを移動させる際に許容される許容誤差を設定し、前記設計輪郭及び前記許容誤差に基づいて、前記設計輪郭に沿い、かつ複数のセグメントで構成される設計曲線を設定する設定工程と、前記プローブの位置を検出して前記プローブの位置を測定するとともに、前記測定子の前記被測定物への押込み量を検出する測定工程と、前記
設定工程において設定された前記セグメントの数が所定の最大セグメント数を超えるか否かを判定するセグメント数判定工程と、前記測定工程において
検出される前記押込み量に基づいて測定エラーを検出するエラー検出工程と、を実施し、前記
設定工程は、前記セグメント数判定工程により前記セグメントの数が前記最大セグメント数を超えると判定された場合、前記許容誤差を増加させ、前記エラー検出工程により測定エラーが検出された場合に前記許容誤差を減少させることを特徴とする。
本発明では、上述した発明と同様、セグメント数オーバーエラーが発生せず、かつ、測定時のエラーも発生しないような最適な許容誤差を設定することができる。よって、設計輪郭の分割による測定処理の煩雑化を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明に係る一実施形態の形状測定装置である三次元測定機1を示す全体模式図である。
図2は、三次元測定機1の概略構成を示すブロック図である。
なお、
図1では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸及びY軸として説明する。なお、当該X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向により、マシン座標系が規定される。以下の図面においても同様である。
三次元測定機1は、
図1に示すように、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2の駆動制御を実行するモーションコントローラー3と、操作レバー等を介してモーションコントローラー3に指令を与え、三次元測定機本体2を手動で操作するための操作手段4と、モーションコントローラー3に所定の指令を与えるとともに、演算処理を実行するホストコンピューター5と、とを備える。
【0018】
〔三次元測定機本体の構成〕
三次元測定機本体2は、
図1に示すように、被測定物を測定するための球状の測定子211Aを有するプローブ21と、プローブ21を保持するとともに、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22が立設される定盤23とを備える。
プローブ21は、
図1に示すように、測定子211Aを先端側(−Z軸方向側)に有するスタイラス211と、スタイラス211の基端側(+Z軸方向側)を支持する支持機構212とを備える。
【0019】
支持機構212は、スタイラス211をX,Y,Z軸の各軸方向に付勢することで所定位置に位置決めするように支持する。そして、支持機構212は、外力が加わった場合、すなわち測定子211Aが被測定物に当接した場合には、スタイラス211を一定の範囲内でX,Y,Z軸の各軸方向に移動可能としている。
この支持機構212は、具体的な図示は省略したが、スタイラス211の各軸方向の位置をそれぞれ検出するためのプローブセンサーを備える。
なお、各プローブセンサーは、スタイラス211の各軸方向の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサーである。
【0020】
移動機構22は、
図1または
図2に示すように、プローブ21を保持するとともに、プローブ21のスライド移動を可能とするスライド機構24と、スライド機構24を駆動することでプローブ21を移動させる駆動機構25とを備える。
スライド機構24は、
図1に示すように、定盤23におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる2つのコラム241と、各コラム241にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム242と、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム242上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるスライダ243と、スライダ243の内部に挿入されるとともに、スライダ243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるラム244とを備える。
【0021】
駆動機構25は、
図1または
図2に示すように、各コラム241のうち、+X軸方向側のコラム241を支持するとともに、Y軸方向に沿ってスライド移動させるY軸駆動部251Yと、ビーム242上をスライドさせてスライダ243をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動部251X(
図2)と、スライダ243の内部をスライドさせてラム244をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動部251Z(
図2)とを備える。
【0022】
X軸駆動部251X、Y軸駆動部251Y、及びZ軸駆動部251Zには、具体的な図示は省略したが、スライダ243、各コラム241、及びラム244の各軸方向の位置を検出するためのスケールセンサーがそれぞれ設けられている。
なお、各スケールセンサーは、スライダ243、各コラム241、及びラム244の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサーである。
【0023】
〔モーションコントローラーの構成〕
モーションコントローラー3は、
図2に示すように、指令取得部31と、パラメータ設定部32と、駆動制御部33と、カウンタ部34と、位置測定部35と、エラー検出部36と、を備える。また、モーションコントローラー3は、
図1に示すように、操作手段4が設けられ、手動による三次元測定機本体2の操作も可能となる。
指令取得部31は、ホストコンピューター5から、プローブ21を駆動させるためのPCCデータを取得する。PCCデータには、プローブ21を移動させるための移動経路が含まれる。
パラメータ設定部32は、本発明における押込み量調整手段及び移動速度設定手段として機能し、PCCデータに基づいて、プローブ21を移動させる際の速度パターンを設定する。また、パラメータ設定部32は、エラー検出部36によりエラーが検出された際に、プローブ21の移動速度(倣い速度V)や、押込み量Eを調節する。
駆動制御部33は、パラメータ設定部32により設定された速度パターンに基づいて、駆動機構25を制御し、PCCデータにて指定された移動経路に沿ってプローブ21を移動させる。
カウンタ部34は、上述した各スケールセンサーから出力されるパルス信号をカウントしてスライド機構24の移動量を計測するとともに、上述した各プローブセンサーから出力されるパルス信号をカウントしてスタイラス211の移動量を計測する。
位置測定部35は、カウンタ部34にて計測されたスライド機構24及びスタイラス211の各移動量に基づいて、測定子211Aの位置(プローブ位置)を検出る。また、位置測定部35は、本発明の押込み量検出手段として機能し、プローブセンサーからの出力値に基づいて、プローブ21の押込み量(測定子211Aの被測定物Wに対する押込み量)を算出する。
エラー検出部36は、位置測定部35により算出されたプローブ21の押込み量に基づいて、測定エラー(離脱エラー及び押込みエラー)を検出する。すなわち、押込み量が所定の最小値より小さい場合に離脱エラーを、押込み量が所定の最大値より大きい場合に押込みエラーを出力する。
【0024】
〔ホストコンピューターの構成〕
ホストコンピューター5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備えて構成され、モーションコントローラー3に所定の指令を与えることで三次元測定機本体2を制御する。また、ホストコンピューター5は、入力手段61及び出力手段62を備える。なお、入力手段61は、三次元測定機1における測定条件等をホストコンピューター5に入力するものであり、出力手段62は、三次元測定機1による測定結果を出力するものである。
このホストコンピューター5は、
図2に示すように、情報取得部51と、輪郭設定部52と、AD設定部53と、経路設定部54と、経路判定部55と、形状解析部56と、記憶部57とを備える。
情報取得部51は、CADシステム(図示略)から被測定物Wの設計データ(CADデータや、NURBSデータ等)を取得する。
【0025】
輪郭設定部52は、本発明の輪郭設定手段であり、設計データ、測定子211Aの半径R、及びプローブ21の基準押込み量Eに基づいて、プローブ21を被測定物Wの表面に倣って移動させる際の理想の設計値倣いの軌道である設計輪郭を設定する。
図3は、本実施形態において設計データに対して設定される設計輪郭、PCC曲線(設計曲線)の一部、及び測定処理における実際の測定子211Aの移動軌跡の一例を示す図である。
輪郭設定部52は、
図3に示すように、測定子211Aの半径Rから基準押込み量Eを減じた値をオフセット量として、設計データから当該オフセット量だけ法線方向に移動した曲線を設定輪郭として設定する。
AD設定部53は、本発明の許容誤差設定手段であり、設計輪郭に対する、実際にプローブ21を移動させる際の軌道の許容誤差(AD値)を設定する。
経路設定部54は、本発明の経路設定手段であり、設計輪郭及びAD値に基づいて、PCC曲線(設計曲線)を算出する。このPCC曲線は、複数のセグメントで構成され、これらのセグメントは補間点により分割されている。実際の倣い測定では、補間点(i)と、補間点(i)に対応する補間点(i+1)とを結ぶ直線(補間直線(i))に沿ってプローブ21を移動させる。
経路判定部55は、本発明のセグメント判定手段であり、経路設定部54により設定されたPCC曲線に含まれるセグメントの数(セグメント数)が所定の最大セグメント数以下であるか否かを判定する。例えば、最大セグメント数に対する設定されたセグメント数の割合を算出し、100%以下であるか否かを判定する。
形状解析部56は、モーションコントローラー3から出力された測定データに基づいて被測定物の表面形状データを算出し、算出した被測定物の表面形状データの誤差や歪み等を求める形状解析を行う。
記憶部57は、ホストコンピューター5で用いられる各種データ、被測定物Wの形状に関する設計データ等が記憶されている。
【0026】
[三次元測定機の動作]
次に、上述したような三次元測定機1の動作について説明する。
図4は、本実施形態の形状測定方法における、プローブ21を被測定物Wの表面に倣って移動させる際のエラー回避方法を示すフローチャートである。
本実施形態では、被測定物Wの表面形状を測定する際、ホストコンピューター5の情報取得部51は、CADシステムから、被測定物Wの設定データであるNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline:非一様有理Bスプライン)データを取得する(ステップS1)。
次に、輪郭設定部52は、取得した設計データに基づいて、設計輪郭を算出(設定)する(ステップS2)。具体的には、上述したように、測定子211Aの半径をR、基準押込み量をEとした際に、オフセット量をR−Eとして算出する。そして、
図3に示すように、設計データの曲線を、算出されたオフセット量だけ法線方向にオフセットさせた曲線を設計輪郭として設定する。
また、AD設定部53は、AD値をデフォルト値(例えば、0.1mm)に設定し(ステップS3)、AD設定フラグ(AD_FLAG)を0に設定する(ステップS4)。このAD設定フラグは、AD値を変更する際のモードを示すフラグデータであり、本実施形態では、AD設定フラグが「0」である場合ではAD値を増加させるAD増加モード、「1」である場合ではAD値を減少させるAD減少モードを示す。
【0027】
この後、経路設定部54は、PCC計算を実行してPCCデータ(PCC曲線)を生成する(ステップS5)。
具体的には、経路設定部54は、設計輪郭とAD値とに基づいて、PCC曲線を算出する。ここで、AD値は、設計輪郭をPCC曲線に変換する際の最大許容偏差であり、経路設定部54は、AD値に基づいた所定寸法だけ設計輪郭の法線方向にオフセットさせたPCC曲線を算出する。なお、上述のように、PCC曲線は、複数の補間点を含み、これらの補間点により、当該PCC曲線は、複数のセグメントに分割されている。
そして、経路判定部55は、最大セグメント数に対するセグメント数の割合(セグメント数率(%))を算出し、100%以下であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0028】
ステップS6において、「No」と判定された場合は、経路判定部55によりセグメント数オーバーエラーが出力される。この場合、AD設定部53は、AD設定フラグが「1」であるか否か(AD減少モードであるか否か)を判定する(ステップS7)。
ステップS7において、「No」と判定された場合は、AD設定部53は、AD値が所定の最大AD値であるか否かを判定する(ステップS8)。
このステップS8で「No」と判定された場合、AD設定部53は、AD値を所定値増加させる(ステップS9)。増加させる値としては、予め設定された値であってもよく、セグメント数率を参照し、セグメント数率が100%以下となるように、AD値を算出してもよい。この後、ステップS5に戻り、PCCデータを再算出して、プローブ21の移動経路を再設定する。
一方、ステップS7及びステップS8において、「Yes」と判定された場合は、後述するステップS19に進む。
また、上記ステップS6において、「Yes」と判定された場合(セグメント数率が100%以下であると判定された場合)、設定されたPCCデータがモーションコントローラー3に出力される。
【0029】
モーションコントローラー3は、指令取得部31によりPCCデータを含む測定指令を受けると、パラメータ設定部32によりPCCデータに沿ってプローブ21を移動させるための速度パターンを決定する。速度パターンの設定方法としては、例えば、特開2014−21004号公報にて示される周知の方法等が挙げられ、この場合、ホストコンピューター5から出力される測定指令に、測定速度値を含ませておけばよい。
そして、モーションコントローラー3は、三次元測定機本体2の駆動機構25を制御し、設定された速度パターンで、PCCデータの各セグメントに沿ってプローブ21を移動させる。すなわち、倣い形状測定を実施する(ステップS10)。
【0030】
また、このステップS10では、位置測定部35は、例えば一定のサンプリング間隔でカウンタ部34にて計測されたスライド機構24及びスタイラス211の各移動量を取り込む。そして、位置測定部35は、取り込んだスライド機構24及びスタイラス211の各移動量に基づいて、プローブ位置、及びプローブ21の押込み量(測定子211Aの被測定物Wへの押込み量)を算出する。プローブの押込み量の算出としては、例えばプローブセンサーの出力値を(Px,Py,Pz)とした際に、押込み量を(Px
2+Py
2+Pz
2)
1/2として算出する。
【0031】
また、ステップS10の測定処理では、エラー検出部36は、算出されたプローブ21の押込み量に基づいて、測定エラーが発生したか否かを判定する。例えば、エラー検出部36は、押込み量E=(Px
2+Py
2+Pz
2)
1/2<0.05mmの場合に離脱エラーを検出し、押込み量E=(Px
2+Py
2+Pz
2)
1/2>0.7mmの場合に押込みエラーを検出する。
モーションコントローラー3の駆動制御部33は、ステップS10の測定処理において、上記のような測定エラー(離脱エラー及び押込みエラー)がエラー検出部36により検出されたか否を監視し、測定が成功したか否かを判定する(ステップS11)。
ステップS11において「Yes」と判定された場合(測定エラーが検出されなかった場合)は、測定結果をホストコンピューター5に出力し、ホストコンピューター5の形状解析部56により被測定物Wの形状解析処理が実施され、測定処理が終了される。
【0032】
一方、ステップS11において「No」と判定された場合(測定エラーが検出された場合)は、パラメータ設定部32は、プローブ21の被測定物Wへの押込み量Eが上限値または下限値であるかを判定する(ステップS12)。なお、ステップS10において、測定処理中に測定エラーが検出されると、即座にステップS11において「No」と判定して、ステップS12に移行してもよい。
ステップS12において「No」と判定された場合(押込み量Eが下限値から上限値までの間の値である場合)は、押込み量Eの調節により、測定エラーを回避できる可能性があるとして、パラメータ設定部32は、押込み量Eの調節を実施する(ステップS13)。例えば、エラー検出部36により離脱エラーが検出された場合、パラメータ設定部32は、押込み量Eを所定量加増補正し、補正された押込み量Eをホストコンピューター5に出力する。また、エラー検出部36により押込みエラーが検出された場合、パラメータ設定部32は、押込み量Eを所定量減少補正し、補正された押込み量Eをホストコンピューター5に出力する。
この後、ホストコンピューター5は、ステップS5の処理に戻る。すなわち、経路設定部54は、設計輪郭と、AD値と、補正された押込み量Eとに基づいて、PCCデータを再計算する。
【0033】
また、ステップS12において、「Yes」と判定された場合は、押込み量Eの調整による測定エラーの回避が不可能であると判定する。
この場合、パラメータ設定部32は、プローブ21の移動速度(倣い速度V)が減速可能であるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において、プローブ21の倣い速度Vが所定の最低速度ではない場合は、減速可能であると判定し(ステップS14;Yes)、パラメータ設定部32は、倣い速度Vを所定量減速させ(ステップS15)、減速された倣い速度Vをホストコンピューター5に出力する。
この後、ホストコンピューター5は、ステップS5の処理に戻る。
なお、本実施形態では、ステップS15の後、ステップS5に戻る例を示すが、パラメータ設定部32により、PCCデータに対する速度パターンを再計算し、ステップS10の処理に戻ってもよい。
【0034】
ステップS14において、「No」と判定された場合、モーションコントローラー3は、押込み量E及び倣い速度Vにより回避不可能な測定エラーが検出された旨をホストコンピューター5に返す。そして、ホストコンピューター5のAD設定部53は、AD値が予め設定された最小AD値であるか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16において、「No」と判定された場合、AD設定部53は、AD設定フラグをAD_FLAG=1(AD減少モード)に設定する(ステップS17)。この後、AD設定部53は、AD値を所定値減少させる(ステップS18)。減少させる値としては、予め設定された値であってもよく、セグメント数率を参照し、セグメント数率が100%以下となる範囲でAD値を算出してもよい。この後、ステップS5に戻り、PCCデータを再算出して、プローブ21の移動経路を再設定する。
【0035】
一方、ステップS16において「Yes」と判定された場合、また、ステップS7及びステップS8において「Yes」と判定された場合、AD設定部53は、AD設定フラグをAD_FLAG=0(AD増加モード)に設定する(ステップS19)。
そして、輪郭設定部52は、ステップS2により設定された設計輪郭を、N分割する(ステップS20)。分割数としては、ステップS20の処理を繰り返し実施することで、徐々に増加させる。例えば、最初に分割する際には2分割とし、再度ステップS5〜ステップS18の処理を実施することで、3分割にする等、分割数を増やしていく。
この後、押込み量E、倣い速度V、及びAD値をデフォルト値(又は初期値)に戻し、ステップS5の処理に戻る。
【0036】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の三次元測定機1では、輪郭設定部52は、設計データに基づいて設計輪郭を設定し、経路設定部54は、設計輪郭と、AD設定部53により設定されたAD値とに基づいて、複数のセグメントにより構成されたPCC曲線を設定する。そして、経路判定部55は、設定されたPCC曲線のセグメント数率が100%以下であるか否かを判定する。AD設定部53は、セグメント数率が100%を超える場合に、AD値を増大させ、経路設定部54は、設定されたAD値に基づいて再度PCCデータを生成する。これにより、セグメント数オーバーエラーを回避することができる。
また、測定処理において、位置測定部35は、プローブ位置と、プローブ21の押込み量とを算出し、エラー検出部36は、このプローブ21の押込み量に基づいて、測定エラーを検出する。そして、AD設定部53は、測定エラーが検出された場合に、AD値を減少させて、経路設定部54は、設定されたAD値に基づいて再度PCCデータを生成する。これにより、測定エラーが回避されるように、適切なAD値を設定することができる。
以上により、本実施形態では、セグメント数オーバーエラー、測定エラー(離脱エラー及び押込みエラー)が生じない最適なAD値を設定することができる。したがって、従来のように、設計輪郭の分割や、倣い速度の減速による測定時間の遅延を極力回避させることができ、三次元測定機1を最適な測定状態に設定することができる。
【0037】
本実施形態の三次元測定機1は、エラー検出部36により測定エラーが検出された場合に、パラメータ設定部32により、プローブ21の押込み量を調節し、それでも測定エラーが回避できない場合に、AD設定部53によりAD値を再設定する。
すなわち、AD値のみの設定により測定エラーを回避させる場合では限界があり、設計輪郭を分割する必要が早期に生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、上記のように、プローブ21の押込み量Eの調節と、AD値の調節との双方により測定エラーを回避させるため、設計輪郭の分割が必要な局面が生じるのを極力抑えることができる。
また、本実施形態では、測定エラーが生じた際に、AD値の再設定の前に、プローブ21の押込み量の調節を行う。AD値を減少させると、設定されるセグメント数が増加し、これに伴い、セグメント数オーバーエラーが発生する可能性がある。これに対して、プローブ21の押込み量Eの調節を先に実施し、プローブの押込み量Eの調整で測定エラーを回避できない場合に、AD値を減少させることで、セグメント数オーバーエラーの発生を極力抑えることができる。これにより、より早期に三次元測定機1を最適な測定状態に設定することができる。
【0038】
本実施形態では、測定エラーが検出された際に、押込み量Eの調節を行い、押込み量Eの調節により測定エラーが回避できなかった場合に、倣い速度Vを減少させる。倣い速度Vを減少させることで、測定時間の遅延が発生するが、先に押込み量Eの調節を実施することで、測定時間が遅延する可能性を可能な限り低減させることができる。
また、プローブ21の押込み量Eの調節と、倣い速度Vの調節と、AD値の調節との3つの方法により測定エラーを回避させるため、設計輪郭の分割が必要な局面が生じるのをさらに抑えることができる。
さらに、上記と同様、AD値を再設定することは、セグメント数オーバーエラーを発生させる可能性が生じる。これに対して、AD値の再設定の前に、倣い速度Vを減速させることで、セグメント数オーバーエラーの発生を抑制できる。
さらに、倣い速度Vを設定した後、ステップS10の測定処理に戻って測定処理を実施してもよく、この場合、AD値を再設定してPCCデータを再計算する等の処理を省略できる。
【0039】
本実施形態では、プローブ21の押込み量Eの調節、倣い速度Vの設定、及びAD値の設定により測定エラーを回避できなかった場合に、設定輪郭を分割する。このため、測定エラーが回避できなかった場合に、測定不能とすることがなく、分割された各設定輪郭に対するPCCデータに基づいて、測定処理が実施される。この場合、測定結果の結合に煩雑な処理が発生するが、被測定物の形状測定を高精度に行うことができる。
【0040】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0041】
例えば、上記実施形態では、測定エラーが発生した際に、プローブの押込み量Eの調節及び倣い速度Vの減速を行ったが、これらのいずれかの処理が行われなくてもよく、AD値の設定のみにより、測定エラーを回避させてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、測定エラーの発生時において、押込み量Eの調節、倣い速度Vを減速の後、それでも測定エラーが回避できない場合に、AD値を減少させたが、これに限定されない。例えば、測定エラーの発生時において、押込み量Eの調節を行った後、測定エラーが回避できない場合に、AD値を減少させ、それでも測定エラーが回避できない場合に、倣い速度Vを減速させる処理を実施してもよい。これにより、倣い速度Vの減少による測定時間の遅延をより抑えることができる。
また、押込み量の調節の前に、AD値を減少させて測定エラーを回避するように処理してもよい。
【0043】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。