【文献】
Sujii Chen, Roger Ceng,Clustering for Interference Alignment in Multiuser Interference Network,IEEE Transactions on Vehicular Technology, Vol.63 No6. July 2014,IEEE,2014年 7月,Vol.63 No.6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】V. Cadambe and S. Jafar,“Interference alignment and degrees of freedom of the K-user interference channel, ” IEEE Trans. Infomation Theory, vol.54, no.8, pp.3425-3441, Aug. 2008
【非特許文献2】K. Gomadam, V. R. Cadambe and S. A. Jafar,“A Distributed Numerical Approach to Interference Alignment and Applications to Wireless Interference Networks,”IEEE Trans. Inf. Theory, vol.57, no.6, pp.3309-3322, June 2011
【非特許文献3】C. Suh, M. Ho, and D. Tse,“Downlink interference alignment,” IEEE Trans. Commun., vol.59, no.9, pp.2616-2626, Sep. 2011
【非特許文献4】W. Shin, W. Noh, K. Jang, and H.-H. Choi, “Hierarchical interference alignment for downlink heterogeneous networks,” IEEE Trans. Wireless Communication, vol.11, no.12, pp.4549-4559, Dec. 2012
【非特許文献5】Q. Niu, Z. Zeng, T. Zhang, Q. Gao, and S. Sun,“Joint Interference Alignment and Power Allocation in Heterogeneous Networks,” IEEE International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC), pp.811-815, Sep. 2014
【非特許文献6】Sujie Chen, Roger S. Cheng, "Clustering for Interference Alignment in Multiuser Interference Networks", IEEE Transaction on Vehicular Technology, vol.63, No.6, July 2014
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の無線通信システムの構成例1を示す。
図1において、セル1〜セル8は、それぞれ基地局11と、基地局11と通信する少なくとも1つの端末局12により構成される。各セルが互いに同一周波数および同一時刻に通信を行う場合に、セルとセルとの間にセル間干渉が生じるため干渉制御が必要になる。その干渉制御に必要な計算処理量や共有情報量を低減するために、本発明の技術を用いて各セルのクラスタリング処理が行われる。
【0025】
構成例1におけるクラスタリング処理では、セル1〜セル8の各基地局11が干渉制御に必要な伝搬路情報などを有線または無線経路を介して中央処理機100に収集し、中央処理機100はそれらの情報に基づいていくつかのセルを束ねたクラスタパターンを決定し、セル1〜セル8の各基地局11に通知する。ここでは、個々のクラスタを点線で示す。なお、中央処理機100は一部あるいは全部のセル基地局の内部に配備することも可能である。その場合、
図1の一部の経路を省くことができる。
【0026】
図2は、本発明の無線通信システムの構成例2を示す。
図2において、小セル1〜小セル8は、それぞれ小セル基地局21と、小セル基地局21と通信する少なくとも1つの小セル端末局22により構成される。大セルは、小セル1〜小セル8を包含する大きなエリアを有し、大セル基地局31と、大セル基地局31と通信する少なくとも1つの大セル端末局32により構成される。各小セルおよび大セルが互いに同一周波数および同一時刻に通信を行う場合に、セルとセルとの間にセル間干渉が生じるため干渉制御が必要になる。その干渉制御に必要な計算処理量や共有情報量を低減するために、本発明の技術を用いて各セルのクラスタリング処理が行われる。
【0027】
構成例2におけるクラスタリング処理では、各小セル基地局21および大セル基地局31が干渉制御に必要な伝搬路情報などを有線または無線経路を介して中央処理機100に収集し、中央処理機100はそれらの情報に基づいていくつかの小セルを束ねたクラスタパターンを決定し、小セル1〜小セル8の各小セル基地局21および大セル基地局31に通知する。ここでは、個々のクラスタを点線で示す。なお、中央処理機100は一部あるいは全部のセル基地局の内部に配備することも可能である。その場合、
図2の一部の経路を省くことができる。
【0028】
以下、
図1に示す構成例のように、セルが全部でB個ある通信ネットワークにおける干渉環境での通信を例に、本発明のクラスタリング処理について説明する。
【0029】
まず、以下の各数式における数学シンボルの定義を示す。
A(a:b,c:d) は行列Aのaからbまでの行、cからdまでの列の要素を意味する。
A
T は行列Aの転置を意味する。
A
* は行列Aの共役転置を意味する。
det(A)は行列Aの行列式を意味する。
‖A‖
2 は行列Aのノルムを意味する。
su(A)は行列Aに含まれるすべての要素の合計値を意味である。
diag(x
1,x
2,…,x
N)はx
1,x
2,…,x
Nを対角成分とする対角行列を意味する。
blockdiag(x
1,x
2,…,x
M)はx
1,x
2,…,x
M をブロック対角成分とするブロック対角行列を意味する。
【0030】
各セルには1個の基地局およびL個の端末局がある。各基地局は、N
T 個の通信自由度がある。すなわち、空間アンテナ数T
S と、時間スロット数T
T と、周波数サブキャリア数T
F の合計でN
T =T
S・T
T・T
F である。同様に、各端末局は、N
R 個の通信自由度がある。すなわち、空間アンテナ数R
S と、時間スロット数R
T と、周波数サブキャリア数R
F の合計でN
R =R
S・R
T・R
F である。
【0031】
ただし、各セルに含まれる端末数L=1の場合では、上記の通信構成は、B個の無線局とB個の無線局との干渉環境での構成と同じくなる。従って、本発明は両方の通信構成において適用可能である。
【0032】
以下、表記を簡単にするために、各セルが同じ端末数Lを有し、各基地局が同じ通信自由度N
T を有し、各端末局が同じ通信自由度N
R を有するものとする。ただし、本発明は、各セルが異なる端末数を有する場合、各基地局および各端末局がそれぞれ異なる通信自由度を有する通信ネットワークにも適用できる。その場合は、各セルの端末数、各基地局の通信自由度、各端末局の通信自由度を、L
b ,N
b,T ,N
b,R のようにセルごとに定義すればよい。
【0033】
各セルにおける受信信号yは、送信信号s= [s
T1 …s
TB]
T 、雑音および送信信号以外の信号源による干渉成分n= [n
T1 …n
TB]
T 、全部でB個あるセルが互いのセル対セル間の伝搬路応答係数を含む伝搬路応答行列ρを用いて、次のように表される。
【数1】
【0034】
伝搬路応答行列ρは次のように表記される。ここで、ρ
lb,a(i,j) は、セルaの基地局のj番目の送信自由度と、セルbの端末lのi番目の受信自由度との間の伝搬路応答係数を示す。ただし、a=1,…,B、b=1,…,B、l=1,…,L、i=1,…,N
R 、j=1,…, N
T とする。
【数2】
【0035】
上記以外には、各基地局の全部N
T 個の自由度の伝搬路応答係数の値は同じか近い場合、また各端末の全部N
R 個の自由度の伝搬路応答係数の値も同じか近い場合では、伝搬路応答行列を次のように簡略化できる。ここでは、伝搬路応答係数は基地局と端末がもつ個々の通信自由度に依存せず、送信セル、受信セル、および受信端末のみに依存する。
【数3】
【0036】
なお、ここでの伝搬路応答は、物理伝搬路だけによる応答あるいは物理伝搬路と送信側の信号処理および受信側の信号処理が合成された実効伝搬路による応答でもよい。また、ここでの伝搬路応答は様々な定義が存在する。例えば、距離の観点から送信側と受信側間の広域における伝搬パスロスあるいは局域におけるフェージング減衰がある。また、時間の観点から送信側と受信側間の長期間平均応答或いは短期間瞬時応答がある。本発明では、適切な定義によって得られた伝搬路応答行列に基づいて実施可能であり、本発明の実施範囲もそれらの定義によって制限されるものではない。
【0037】
本発明におけるクラスタリングとは、
図1および
図2に示すように、いくつかのセルを束ねて個々のクラスタを形成することにより、多数のセルが有する1つの干渉通信ネットワークを、クラスタごとに少数のセルしか含まない(規模縮小した)複数の干渉通信ネットワークに分解する処理である。
【0038】
図1および
図2に示すように、クラスタリングはたくさんあるクラスタパターンの中から特定のクラスタパターンを決定する処理でもある。
図1および
図2の例では、全部で4つのクラスタを形成し、個々のクラスタには3個,2個,3個,1個の要素(セル)が含まれる構成となる。また、この構成においては、個々のクラスタには{1,3,6}、{2,5}、{4,7}、{8}番目のセルが含まれている。
【0039】
このように、任意のクラスタパターンには、クラスタ構成およびクラスタ要素という2種類の情報が含まれる。クラスタ構成とは、すべてのクラスタの数(以下、「クラスタ数」という。)と、個々のクラスタに含まれる要素(本発明の場合はセルに相当する。)の数(以下、「クラスタサイズ」という。)の情報である。クラスタ要素とは、個々のクラスタに含まれる要素の情報である。クラスタパターンを決定するには、このクラスタ構成およびクラスタ要素を決定すればよいことになる。
【0040】
数式で整理すると、Cはクラスタ構成およびクラスタ要素などの情報が含まれるある特定のクラスタパターンを意味する。Ωは全てのクラスタパターンCの集合を表している。NはクラスタパターンCにおけるクラスタ数を意味する。
【数4】
【0041】
C
n はn番目のクラスタを意味し、|C
n |はC
n に含まれる要素の数、すなわちC
n のクラスタサイズを意味する。b
mn はクラスタC
n に属するm番目の要素を表している。ただし、以下では表示の簡易化のため、前後の文脈でb
mn はクラスタC
n に属していることが分かる限り、b
mn =b
m (m=1,2,…,|C
n|)と表記する。
【0042】
クラスタリングの目標は、クラスタリングしない時に比べ、所要の信号処理量や共有情報量やハードウェア規模などを低減させることと、クラスタリングによって生じるクラスタ間干渉を最小限に抑えることとの両立である。
【0043】
そのクラスタリング処理に向けて、ここでは、まず上記伝搬路係数行列に基づいて、あるセルb(b=1,2,…,B)が他のセルからの干渉が受けない場合、そのセルbの通信伝送レートR
b を次のように定義する。
【数5】
【0044】
P
b は、セルbの各通信自由度における送信電力制限値P
b1, …,P
bNTを含む送信電力制御行列を表す。
なお、式中ではPを太字で表記し、P を細字で表記する。P
bはセルbの各通信自由度における送信電力制限値P
b1, …,P
bNTの合計であり、送信電力上限値 P
T以下になることを仮定する。
【0045】
一方、セルbがある他のセルa(a≠b, a=1,2,…,B) からの干渉が受ける場合、そのセルbの通信伝送レートを次のように定義する。
【数6】
【0046】
次に、セルbが通信する時にセルaからの干渉を受けることによって生じた伝送レートの損失Δ
b,a を以下のように定義する。なお、式(6) を使い、セルbでの伝送レートR
b 、R
b,a を以下のように表す。
【数7】
【0047】
同様に、上記セルbの干渉源であるセルaについて、セルaが他のセルからの干渉が受けない場合、そのセルaの通信伝送レートは次のように定義する。
【数8】
【0048】
P
a は、セルaの各通信自由度における送信電力制限値P
a1, …,P
aNTを含む送信電力制御行列を表している。P
aはセルbの各通信自由度における送信電力制限値P
a1, …,P
aNTの合計であり、送信電力上限値P
T以下になることを仮定する。
【0049】
一方、セルaがある他のセルb(b≠a) からの干渉が受ける場合、そのセルaの通信伝送レートは次のように定義する。
【数9】
【0050】
次に、セルaが通信する時にセルbからの干渉を受けることによって生じた伝送レートの損失Δ
a,b を以下のように定義する。なお、式(6) を使い、セルaでの伝送レートR
a 、R
a,b を以下のように表す。
【数10】
【0051】
ただし、伝送レートの定義や干渉による伝送レート損失の定義はほかにも多様な形式ができるが、本発明方法は適切な定義によって得られた伝送レート損失に基づいて実施可能である。本発明方法の実施範囲もそれらの定義によって制限されるものではない。
【0052】
(実施例1)
実施例1では、レート損失行列Δを構築し、それに基づいて、全クラスタに関する全域最大化による一括的なクラスタ決定を行う。
【0053】
ここでは全部でB個のセルにおいて、上記のように2つのセル間における(干渉に起因する)伝送レート損失に基づいて、以下のレート損失行列Δが構築できる。Δの行インデックスは通信したいセルを、Δの列インデックスは干渉を与えるセルを表している。ここで、Δ
b,b =0(b=1,2,…,B) である。各セルは自身の通信へ干渉を与えることはないと仮定しているため、自干渉による伝送レートの損失はない。
【数11】
【0054】
次に、セルaとセルbとの間の相互干渉量を表す指標である相互レート損失w(a,b)を以下のように定義する。
【数12】
【0055】
w(a,b)は、セルaとセルbが異なるクラスタに配属された場合の互いの伝送レート損失の合計値を表している。各クラスタの要素を決定する際に、w(a,b)は重要な判断指標となる。また、w(a,b)の値はセルaとセルbに関連する行列成分だけに依存し、それらの行列成分はΔの対角線において対称に位置する。上記のw(a,b)と行列Δとの構造上の関係に着目して、Δのすべての成分の合計値su(Δ)は、以下の式(24)のようにΔの対角線に沿ったw(a,b)のa=1からb−1までの累加で表すことができる。
【数13】
【0056】
次に、前記のレート損失行列Δにある特定のクラスタパターンCを反映させると、以下のような行列Δ(C)が得られる。
【数14】
【0057】
Δ
D(C) はブロック対角構造のΔ(C)の部分行列であり、Δ
D(C) に含まれる対角ブロックの数はクラスタ数Nとなる。また、Δ
D(C) のn番目の対角ブロックΔ
D(C
n)はn番目のクラスタC
n に対応し、そのΔ
D(C
n)に含まれるレート損失値に関連するセルの数はクラスタC
n に含まれる要素の数(クラスタサイズ)|C
n |となる。
【0058】
このように、ある特定のクラスタパターンCは、そのパターンを反映したレート損失行列Δ (C) のブロック対角部分行列Δ
D(C) と完全に対応付けることができる。CをΔに反映するには、Δの行と列をCに基づいて並び替えればよい。従って、クラスタリング処理の最適化、すなわち最適なクラスタパターンを決定する処理は、レート損失行列Δに基づいて行うことができる。
【0059】
一方、Δ
D-(C)はΔ(C)からΔ
D(C) を取り除いたΔ(C)の部分行列(式の×部分)であり、Δ
D(C) の補行列である。
【0060】
Δ
D(C) に含まれる成分は、各クラスタ内干渉による伝送レート損失(以下、「内部干渉レート損失」という。)を示す。個々のクラスタ内では干渉アライメントなどの干渉制御技術の適用が可能であり、結果的に内部干渉レート損失を大幅に低減することができる。
【0061】
一方、Δ
D-(C)に含まれる成分はクラスタ間干渉による伝送レート損失(以下、「外部干渉レート損失」という。)を示し、個々のクラスタ内での干渉対策では十分に制御できない。従って、前記のようにクラスタリング処理では、クラスタリングによって生じるクラスタ間干渉を抑え、それに起因する外部干渉レート損失を最小にしたい。
【0062】
ここで、次の関係に注意を要する。
【数15】
【0063】
su(Δ)は全部B個のセルが同時通信する時に、他のセルから受ける干渉による伝送レート損失の合計量を表している。行列Δ(C)と行列Δに含まれる成分(レート損失値)は、クラスタパターンCを反映するための並び替えによって行列内での位置は異なるが、レート損失値の値自体はまったく同じであるので、それらの成分の合計によるレート損失の合計量su(Δ(C))は、クラスタリング処理に依存しない固定値である。
【0064】
一方、su(Δ
D(C)) は内部干渉レート損失の合計量を表し、su(Δ
D-(C))は外部干渉レート損失の合計量を表している。su(Δ(C))は固定値であるため、su(Δ
D(C)) の最大化とsu(Δ
D-(C))の最小化とは、以下のように等価になる。
【数16】
【0065】
したがって、以下では、su(Δ
D(C)) の最大化をクラスタリング基準として、外部干渉レート損失の最小化を図る。
【0066】
さらに、本発明のクラスタリングの最適化、つまり最適なクラスタパターンの決定においては、クラスタ構成とクラスタ要素を分けて決定する。まず、クラスタ構成に相当するクラスタ数およびクラスタサイズを決め、次に決めたクラスタ構成に基づいて適したクラスタ要素を探索し、最適なクラスタパターンを見つける。従って、式(29)のsu(Δ
D(C))の最大化は、さらに以下のように書き換えられる。
【数17】
【0067】
ここでは、クラスタ構成に相当するクラスタ数Nおよび個々のクラスタサイズ|C
1 |, …, |C
N |は実システムの構成に合わせて事前に決めた上、式(31)のように、すべてのクラスタに対応するsu(Δ
D(C)) に関する全域最大化問題を通して、全クラスタに対して一括に要素探索を行う。
【0068】
図3は、実施例1の処理手順を示す。
まず、レート損失行列、候補要素のリスト、クラスタ数N、クラスタサイズ|C
1 |〜|C
N |を事前に決定する。次に、それらの情報に基づいて、すべてのクラスタに関する全域最大化による一括的なクラスタ決定を実施する。すなわち、1番目のクラスタC
1 からN番目のクラスタC
N において、クラスタ数およびクラスタサイズを満たすすべてのクラスタパターンの中から、全クラスタの内部干渉によるレート損失の合計量が最大となるクラスタパターンを選択する。最後に、決定したクラスタパターンを出力してクラスタリング処理を終了する。
【0069】
図3右側に示す正方形は、レート損失行列に基づくクラスタリング処理の動作イメージを示す。クラスタ数およびクラスタサイズを事前に決めた上、式(30)あるいは式(31)に対応した処理を実施し、与えられたクラスタ数およびクラスタサイズを満たすすべてのクラスタパターンを探索することにより、一括してすべてのクラスタの要素決定を行っていることがわかる。
【0070】
(実施例2)
実施例2では、各クラスタに関する局域最大化による逐次的なクラスタ決定を行う。
実施例1では、レート損失行列を構築し、それ基づいてクラスタリングの最適化問題を、クラスタ構成を事前に決めた上、全クラスタに対応するsu(Δ
D(C)) に関する全域最大化問題(つまり全クラスタの一括要素探索問題)へ簡易化した。さらに、式(31)を次のように書き換える。
【数18】
【0071】
式(32)では、全クラスタに対応するsu(Δ
D(C)) に関する1回の全域最大化を、(1番目からN番目までの)各クラスタに対応するsu(Δ
D(C
n))に関するN 回の局域最大化で近似している。すなわち、一括に全部N個のクラスタ(Δ
D(C) のN個の対角ブロックに対応)の要素決定をする代わりに、逐次に個々のクラスタ(Δ
D(C) の各対角ブロックに対応)の要素決定をすることになる。
【0072】
ここで、クラスタC
1 からクラスタC
N-1 までが決まれば、最後のクラスタC
N に入る要素(セル)はまだ選ばれていない残りの候補要素のすべてと一意に決まるので、最適化の余地がなくなる。従って、クラスタC
1 からクラスタC
N-1 まで逐次に各クラスタの局域最大化処理と、クラスタC
1 からクラスタC
N まで逐次に各クラスタの局域最大化処理とは等価であり、式(32)を式(33)のように、局域最大化の実施回数をN回からN−1回へと減らした。このような近似により、所要の探索量が大幅に削減できる。
【0073】
また、クラスタリング処理は早い段階では選択できる候補要素の数が多く最適化の自由度が高いが、遅い段階では選択できる候補要素の数が少なくなり最適化の自由度が低くなる。従って、要素の数(クラスタサイズ)が大きいクラスタは、なるべく自由度の高い段階で要素最適化を実施したい。また、要素の数が大きいクラスタは、他のクラスタへ与える干渉量も比較的に大きいと考えられる。これらの考えにそって、個々のクラスタを逐次に要素最適化を行う実施例2では、クラスタサイズの大きいクラスタを優先的に要素最適化を実施する。
【0074】
図4は、実施例2の処理手順を示す。
まず、入力として、レート損失行列、候補要素のリスト、クラスタ数N、大から小のクラスタサイズ|C
1 |〜|C
N |を事前に決定する。次に、それらの情報に基づいて、クラスタサイズの大きい順にクラスタC
1 からクラスタC
N-1 まで、各クラスタに関する局域最大化による逐次的なクラスタ決定を行う。すなわち、クラスタサイズの大きい順に、n番目のクラスタC
n において、|C
n |個の候補要素を含むすべての要素パターンの中から、クラスタC
n の内部干渉によるレート損失の合計量が最大となる要素パターンを選択する。さらに、クラスタC
N-1 の決定後に、残りの候補要素のすべてをN番目のクラスタC
N の要素とする。最後に、決定したクラスタパターンを出力してクラスタリング処理を終了する。
【0075】
図4右側に示す正方形は、レート損失行列に基づくクラスタリング処理の動作イメージを示している。クラスタサイズの大きい順にクラスタごとに逐次処理が実施されることがわかる。
【0076】
(実施例3)
実施例3では、クラスタの各要素に関する更なる局域最大化による逐次的なクラスタ要素の決定を行う。
【0077】
実施例2では、まず、クラスタリングの最適化問題を、クラスタ構成を事前に決めた上、su(Δ
D(C)) に関する全域最大化問題(つまり全クラスタの一括要素探索問題)へ簡易化した。次に、su(Δ
D(C)) に関する1回の全域最大化問題を更にsu(Δ
D(C
n))に関するN−1回の局域最大化問題(つまり各クラスタの逐次要素探索問題)へ簡易化した。
【0078】
さらに、T
n を定義し、式(33)に含まれる各対角ブロックΔ
D(C
n)における局域最大化を次のように書き換える。
【数19】
【0079】
式(36)は式(24)から容易に得られる。また、Δの対角成分は0であるため、式(37)と式(38)が等価になる。従って、各クラスタの2番目から|C
n |番目までの要素決定は上記の方法で逐次的に最適化できる。
【0080】
式(38)では、あるクラスタC
n に対応するsu(Δ
D(C
n))に関する1回の局域最大化を、C
n の(2番目から|C
n |番目までの)各要素に対応する相互レート損失合計量
Σw(a,b
m)(a=T
n-1+1からT
n-1+m−1までの累算)
に関する|C
n |−1回の更なる局域最大化で近似している。すなわち、一括にクラスタC
n の全部の要素を決定する代わりに、逐次にクラスタC
n の2番目から|C
n |番目までの各要素を決定することになる。
【0081】
具体的には、まず、クラスタ内の1番目の要素との相互レート損失が最大なものを2番目の要素にする。次に、1番目の要素および2番目の要素との相互レート損失の合計が最大なものを3番目の要素にする。このように類推して最後の|C
n |番目の要素は、1番目の要素から|C
n |−1番目の要素までとの相互レート損失の合計値が最大なものを|C
n |番目の要素にする。この更なる局域近似により、所要の探索量がさらに大幅に削減できる。
【0082】
ただし、式(38)から分かるように、上記方法はクラスタC
n の2番目から|C
n |番目までの各要素の決定に適用できるが、1番目の要素の決定には適用できない。そこで各クラスタの1番目の要素の決定について、以下の考え方を適用する。
【0083】
前記のように、本発明のクラスタ要素の最適化はレート損失合計量su(Δ
D(C)) の最大化を通じて実現している。したがって、他の要素との相互レート損失の合計が大きい要素を優先的に選び、その要素を始点としてクラスタ内の残りの要素を逐次に決定して行けば、su(Δ
D(C)) の最大化に寄与できる。
【0084】
その考え方に沿って、式(39)では、各クラスタにおいて、まだ選ばれていない残りの候補要素の中から、自分と他のすべての残りの候補要素との相互レート損失の合計量
Σw(a,b
m)(a=T
n-1+1からBまでの累算)
が最大となるものを1番目の要素として選択する。
【数20】
【0085】
上記方法以外には、各クラスタの1番目要素の最適化をせずに、まだ選ばれていない残りの候補要素の中から任意に1つの要素を選択してもよい。
【0086】
上記のように、クラスタC
n に含まれる要素を逐次に決定していく際に、ある要素b
m が決定されれば次の要素の決定に混乱が生じないように、選択された要素に関連するΔの行と列がΔのb
m 番目の行と列となるように、Δの行と列の並び替えを実施する。
【0087】
また、クラスタリング処理は早い段階では選択できる候補要素の数が多く最適化の自由度が高いが、遅い段階では選択できる候補要素の数が少なくなり最適化の自由度が低くなる。従って、要素の数(クラスタサイズ)が大きいクラスタは、なるべく自由度の高い段階で要素最適化を実施したい。また、要素の数が大きいクラスタは、他のクラスタへ与える干渉量も比較的に大きいと考えられる。これらの考えにそって、個々のクラスタを逐次に要素最適化を行う実施例2では、クラスタサイズの大きいクラスタを優先的に要素最適化する。
【0088】
図5は、実施例3の処理手順を示す。
まず、入力として、レート損失行列、候補要素のリスト、クラスタ数N、大から小のクラスタサイズ|C
1 |〜|C
N |を事前に決定する。次に、それらの情報に基づいて、クラスタサイズの大きい順にクラスタC
1 からクラスタC
N-1 まで、各クラスタに関する局域最大化による逐次的なクラスタ決定を行う。ここで、各クラスタの決定において、1番目から|C
n |番目までの各要素に関する更なる局域最大化による逐次的なクラスタ要素決定を行う。
【0089】
すなわち、クラスタサイズの大きい順にn番目のクラスタC
n において、残りの候補要素の中から、自/他の全ての残りの候補要素との相互レート損失の合計量が最大となるものを1番目の要素として選択する。さらに、既に決定した1番目からm−1番目までの要素との相互レート損失の合計量が最大となるものをm番目の要素として選択する。そして、クラスタ要素が決定されるたびにその順番を反映するように、選択した要素が関連するレート損失行列Δの行と列がレート損失行列のm番目の行と列となるように、行と列の並び替えを行う。さらに、クラスタC
N-1 の決定後に、残りの候補要素のすべてをN番目のクラスタC
N の要素とする。最後に、決定したクラスタパターンを出力してクラスタリング処理を終了する。
【0090】
図5右側の正方形は、レート損失行列に基づくクラスタリング処理の動作イメージを示している。クラスタごとおよび要素ごとに逐次処理が実施されることがわかる。
【0091】
本発明の無線通信システムにおいて、レート損失行列、候補要素のリスト、クラスタ数N、大から小のクラスタサイズ|C
1 |〜|C
N |に基づくクラスタリング処理は、コンピュータと上記の処理を行うコンピュータプログラムにより実現することができる。このコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することも、ネットワークを介して提供することも可能なものである。