特許第6475168号(P6475168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475168エポキシ樹脂組成物、半導体封止剤および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475168
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、半導体封止剤および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20190218BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20190218BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20190218BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20190218BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08L63/00 Z
   C08K3/36
   C08L101/00
   C08K9/06
   C08G59/20
   C08G59/40
   C08J3/22CFC
   H01L23/30 R
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-550571(P2015-550571)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2014005967
(87)【国際公開番号】WO2015079708
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-247567(P2013-247567)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山澤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】小原 和之
(72)【発明者】
【氏名】小越 弘大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信幸
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−54951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08G 59/20
C08G 59/40
C08J 3/22
C08K 3/36
C08K 9/06
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)0.1〜10質量%の、平均粒径10nm以上100nm以下のシリカフィラーと、
(D)55〜75質量%の、平均粒径0.3μm以上2μm以下のシリカフィラーと、
(E)0.1〜8質量%のエラストマーと
を含み、
前記(C)成分および前記(D)成分を、合計で55.1〜77質量%含む
ことを特徴するエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分および前記(D)成分のうちの少なくとも一方が、シランカップリング剤で表面処理されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、次式(1)に示す構造式で表されるアミノシランにより、表面処理されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】
【請求項4】
前記(A)成分のエポキシ基1当量に対し、前記(B)成分が、0.5〜1.8当量含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤、またはアミン硬化剤である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(E)成分が、ブタジエン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリルコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー、ブタジエン・アクリロニトリル・2,3−エポキシプロピルメタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物、ブタジエン・アクリロニトリル・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物、アミノ基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物、およびカルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物、のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)成分の少なくとも一部に前記(C)成分を混合することにより、マスターバッチを生成し、当該マスターバッチに他の成分を混合して製造される
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体封止剤。
【請求項10】
2種以上の金属または合金により形成された、半導体装置の導通部分を封止する
ことを特徴とする請求項9に記載の半導体封止剤。
【請求項11】
前記2種以上の金属または合金が、Au,Ag,Cu,Sn,Pb,Ni,Pd,Co,Cd,Bi,In,Sb,およびZnのうちから選択される、2種以上の金属または当該金属を基にする合金である
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体封止剤。
【請求項12】
封止する前記半導体装置の導通部分が、2種の金属または合金であり、
前記導通部分を封止した前記エポキシ樹脂組成物の断面を、前記2種の金属または合金の間の境界に基づいて2つの領域に区画し、当該各領域における前記(C)成分および前記(D)成分の占有率を用いて、次式により算出されるフィラー分散指数が50以上150以下である
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体封止剤。
フィラー分散指数=100×(領域Raの占有率)/(領域Rbの占有率)
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一項に記載の半導体封止剤を用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<クロス・リファレンス>
本願は、2013年11月29日に出願された日本特許出願「特願2013−247567」に基づく優先権を主張すると共に、参照によりその内容を組み込む。
【0002】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、半導体封止剤、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体チップ(半導体素子)を配線基板に実装する技術に、フリップチップ実装がある。フリップチップ実装は、半導体チップの表面に突起状電極(バンプ)を形成することにより、この表面を配線基板に向けて直接接続させる実装方法である。接続した半導体チップおよび配線基板、およびバンプを保護するため、アンダーフィル剤と呼ばれる封止樹脂が半導体チップと配線基板との間に充填される。
【0004】
アンダーフィル剤には主にエポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂、半導体チップ、および配線基板は、それぞれ異なる線膨張係数を有する。そのため、接続部が応力を吸収できないと、当該接続部にクラックが発生することがある。このクラックの発生を抑えるため、アンダーフィル剤には、二酸化ケイ素などの線膨張係数の比較的小さいフィラーを分散させている。
【0005】
ところで、近年では、フリップチップ実装において、金属ピラーによるバンプが用いられるようになった。例えば銅ピラーバンプは、従来のハンダバンプと比較して、以下のような種々の利点を有する。すなわち、銅ピラーバンプは、バンプのピッチを小さくでき、鉛の使用量を低減できるので環境に与える影響が小さく、熱伝導性が高いので放熱特性に優れており、さらに電気伝導度が高いので寄生抵抗を低減できる。しかし、金属ピラーバンプを用いると、アンダーフィル剤中のフィラーが分離することがある。これは、ピラーに用いる金属と、ハンダに用いる金属との間に生じた電位差により、アンダーフィル剤中をフィラーが泳動することにより、フィラーの分離が生じるもの、と考えられている。
【0006】
そこで、アンダーフィル剤におけるフィラーの分離を抑える(フィラーの分散を促す)技術が検討されている。特許文献1では、金属ピラーの表面がハンダで被膜される。これにより、アンダーフィル中のフィラーの分散を促進し、かつ、フリップチップ実装の接続信頼性を向上する、電子部品の実装方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/103934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、例えば、金属ピラーの表面をハンダで被膜するような特別な工程を用いずに、フィラーの分散を促進する樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)0.1〜10質量%の、平均粒径10nm以上100nm以下のシリカフィラーと、(D)47〜75質量%の、平均粒径0.3μm以上2μm以下のシリカフィラーと、(E)0.1〜8質量%のエラストマーとを含み、前記(C)成分および前記(D)成分を、合計で50.1〜77質量%含むことを特徴とする。
【0010】
前記(C)成分および前記(D)成分のうちの少なくとも一方がシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0011】
前記(D)成分が、次式(1)に示す構造式で表されるアミノシランにより、表面処理されていてもよい。
【化1】
【0012】
前記(A)成分のエポキシ基1当量に対し、前記(B)成分が、0.5当量以上1.8当量以下含まれてもよい。
【0013】
前記(B)成分が、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤、またはアミン硬化剤であってもよい。
【0014】
前記(A)成分が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂のうちの少なくともひとつを含んでもよい。
【0015】
また、上述の態様において、前記(E)成分が、ブタジエン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリルコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー、ブタジエン・アクリロニトリル・2,3−エポキシプロピルメタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物、ブタジエン・アクリロニトリル・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物、アミノ基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物、およびカルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
この樹脂組成物は、前記(A)成分の少なくとも一部に前記(C)成分を混合することにより、マスターバッチを生成し、当該マスターバッチに他の成分を混合して製造されてもよい。
【0017】
また、本発明は、上述のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体封止剤を提供する。
【0018】
上記半導体封止剤は、2種以上の金属または合金により形成された、半導体装置の導通部分を封止してもよい。
【0019】
前記2種以上の金属または合金が、Au,Ag,Cu,Sn,Pb,Ni,Pd,Co,Cd,Bi,In,Sb,およびZnのうちから選択される、2種以上の金属または当該金属を基にする合金であってもよい。
【0020】
封止する前記半導体装置の導通部分が、2種の金属または合金であり、前記導通部分を封止した前記エポキシ樹脂組成物の断面を、前記2種の金属または合金の間の境界に基づいて2つの領域に区画し、当該各領域における前記(C)成分および前記(D)成分の占有率を用いて、次式により算出されるフィラー分散指数が50以上150以下であってもよい。
フィラー分散指数=100×(領域Raの占有率)/(領域Rbの占有率)
【0021】
さらに、本発明は、上述の半導体封止剤を用いた半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、フィラーの分散を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、フィラーの分散指数の評価を説明するための図である。
図2図2は、図1に示す領域IIを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)小径シリカフィラー、(D)大径シリカフィラー、および(E)エラストマーを含む。
【0025】
(A)成分の例として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シロキサン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、およびナフタレン環含有エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。
【0026】
(B)成分の例として、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、およびアミン系硬化剤が挙げられる。(B)成分は、(A)成分のエポキシ基1当量に対し、0.5当量以上1.8当量以下含まれていることが好ましい。
【0027】
(C)成分および(D)成分の例として、非晶質シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、粉砕シリカ、およびナノシリカが挙げられる。(C)成分および(D)成分の形状は、特に限定されず、粒状、粉末状、およびりん片等のうちのいずれの形態であってもよい。そして、本発明におけるシリカフィラーの平均粒径とは、シリカフィラーの形状にかかわらず、レーザー回折法または電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)によって測定した体積基準のD50(メジアン径)をいう。
【0028】
(C)成分の平均粒径は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。(D)成分の平均粒径は、0.3μm以上2μm以下であることが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)成分を、0.1質量%以上10質量%以下含み、かつ、(D)成分を、47質量%以上75質量%以下含むことが好ましい。さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)成分および(D)成分を、合計で50.1質量%以上77質量%以下含むことが好ましい。より好ましい(C)成分と(D)成分との合計の範囲は、52質量%以上77質量%以下の範囲である。
【0029】
なお、(C)成分および(D)成分のうちの少なくとも一方が、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、ビニル系、グリシドキシ系、およびメルカプト系など各種のシランカップリング剤が挙げられる。このうち、(D)成分の表面処理には、次式(1)に示す構造のアミノシランが用いられることが好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
(E)成分の例として、ブタジエン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリルコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー、ブタジエン・アクリロニトリル・2,3−エポキシプロピルメタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物、ブタジエン・アクリロニトリル・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物、アミノ基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物、およびカルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物が挙げられる。(E)成分として、ここで例示した化合物が単独で用いられてもよいし、2つ以上の化合物が混合して用いられてもよい。つまり、(E)成分は、上述した化合物のうちの少なくともひとつを含むエラストマーであればよい。(E)成分は0.1質量%以上8質量%以下含まれることが好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)成分に加えて、イオントラップ剤、顔料、染料、消泡剤、応力緩和剤、pH調整剤、促進剤、界面活性剤、およびカップリング剤等の添加剤を含んでもよい。
【0033】
エポキシ樹脂組成物は、半導体素子等の電子デバイスをフリップチップ実装またはBGA(Ball Grid Array)/CSP(Chip Size Package)実装する際の、半導体封止剤(アンダーフィル剤)として用いられる。このエポキシ樹脂組成物は、電子デバイスを基板やパッケージに接着する際の、接着剤として用いられてもよい。
【0034】
フリップチップ実装またはBGA/CSP実装の際、まず半導体素子と基板(またはパッケージ)とが接合される。次に、半導体素子と基板との隙間に、半導体封止剤が注入される。具体的には、半導体素子の外周に沿って半導体封止剤が塗布される。半導体封止剤は、毛細管現象により間隙内に広がる。したがって、半導体封止剤はこのプロセスが行われる温度で液状であることが好ましい。注入された半導体封止剤は、加熱(例えば80〜165℃)により熱硬化させる。
【0035】
図1は、本発明に係る半導体封止剤を用いて封止された、半導体装置を例示する図である。図1には、金属ピラーを用いたフリップチップ実装の例が示されている。なお図1は、半導体装置の断面を示している。
【0036】
基板1の上には、電極2が形成されている。電極2以外の箇所には、絶縁膜3が形成されている。電極2の上に、ハンダバンプ4が配置される。また、半導体チップ5の上(図では下向き)には、電極7が形成されている。半導体チップ5の全体はパッシベーション9で覆われている。電極7に相当する位置には、開口が設けられている。電極7の上には、金属ピラーの一種である銅ピラー8が形成されている。
【0037】
銅ピラー8は銅(Cu)または銅を主体とする合金で形成されている。ハンダバンプ4は、錫(Sn)を主体とする合金で形成されている。なお、ハンダバンプおよび金属ピラーの材料は、ここで例示したものに限定されない。ハンダバンプおよび金属ピラーは、例えば、Au,Ag,Cu,Sn,Pb,Ni,Pd,Co,Cd,Bi,In,Sb,およびZnから選択される2種以上の金属、またはその金属を基にした合金、により形成される。このように、本実施形態に係る半導体封止剤は、導通部分が2種以上の金属、またはその金属を基にした合金、により形成される、半導体装置の導通部分の封止に用いられる。
【0038】
エポキシ樹脂組成物は、例えば、(A)成分〜(E)成分およびその他の添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、あるいは分散させることにより製造される。これらの混合、撹拌、および分散等の方法は、特に限定されるものではない。撹拌および加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、あるいはビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を組み合わせて使用してもよい。ここで、(A)成分と(C)成分とを混合することにより、マスターバッチを調製してもよい。得られたマスターバッチを他の成分と混合することにより、エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【実施例】
【0039】
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
表1〜10は、実施例1〜37および比較例1〜9で、封止剤として用いられたエポキシ樹脂組成物の組成を示す。また、これらの表は、後述する、封止剤としてのエポキシ樹脂組成物の評価結果をも示す。表1〜10において、エポキシ樹脂組成物の組成は、等量比を除いて、質量部(質量部の合計が100なので質量%に相当)で表されている。
【0040】
表中の(A)成分としては、エポキシ樹脂a1〜a5のうちの少なくとも1つが用いられた。エポキシ樹脂a1として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の一種である新日鐵住金化学株式会社製のYDF8170が用いられた。エポキシ樹脂a2として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の一種であるDIC株式会社製の850CRPが用いられた。エポキシ樹脂a3として、ナフタレン型エポキシ樹脂の一種であるDIC株式会社製のHP−4032Dが用いられた。エポキシ樹脂a4として、アミノフェノール型エポキシ樹脂の一種である三菱化学株式会社製のjer630が用いられた。エポキシ樹脂a5として、環状脂肪族型エポキシ樹脂の一種である新日鐵住金化学株式会社製のZX1658GSが用いられた。
【0041】
表中の(B)成分としては、硬化剤b1〜b5のうちの少なくとも1つが用いられた。硬化剤b1として、アミン硬化剤である日本化薬株式会社製のカヤハードAAが用いられた。硬化剤b2として、アミン硬化剤である株式会社アデカ製のEH105Lが用いられた。硬化剤b3として、アミン硬化剤であるアルベマール(Albermarle)社製のETHACURE100が用いられた。硬化剤b4として、酸無水物硬化剤である三菱化学株式会社製のYH307が用いられた。硬化剤b5として、フェノール樹脂硬化剤である明和化成株式会社製のMEH−8005が用いられた。
【0042】
表中の(C)成分としては、株式会社アドマテックス製のYA010C(平均粒径:10nm)、YA050C(平均粒径:50nm)、およびYC100C(平均粒径:100nm)のうちのいずれかが用いられた。上記フィラーの平均粒径は、メジアン径(D50)である。また、この平均粒径は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)によって測定された値である。
【0043】
表中の(D)成分としては、宇部エクシモ株式会社製のハイプレシカ 0.2μm(平均粒径:0.2μm)、株式会社アドマテックス製のSE−1050(平均粒径:0.3μm)、SE−2300(平均粒径:0.6μm)、SE−4050(平均粒径:1μm)、およびSE−6050(平均粒径:2μm)のうちのいずれかが用いられた。上記平均粒径は、メジアン径(D50)である。また、この平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布計によって測定された値である。
【0044】
上記(D)成分の表面処理剤としては、表面処理剤f1〜f3のうちのいずれかが用いられた。表面処理剤f1としては、信越化学工業株式会社製のKBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が用いられた。表面処理剤f2としては、信越化学工業株式会社製のKBM503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)が用いられた。表面処理剤f3としては、信越化学工業株式会社製のKBE9103(3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、式(1)の化合物)が用いられた。
【0045】
表中の(E)成分としては、エラストマーe1〜e9のうちの少なくとも1つが用いられた。エラストマーe1として、ブタジエン系エラストマーの一種である、株式会社カネカ製MX137が用いられた。エラストマーe2として、シリコーン系エラストマーの一種である、株式会社カネカ製MX965が用いられた。エラストマーe3として、スチレンブタジエン系エラストマーの一種である、株式会社カネカ製MX135が用いられた。エラストマーe4として、アクリルコポリマーの一種である、ARKEMA株式会社製M52Nが用いられた。エラストマーe5として、ブタジエン・アクリロニトリル・2,3エポキシプロピルメタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物の一種である、JSR株式会社製XER−81が用いられた。エラストマーe6として、ブタジエン・アクリロニトリル・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物の一種である、JSR株式会社製XER−91が用いられた。エラストマーe7として、アミノ基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物の一種である、宇部興産株式会社製ATBNが用いられた。エラストマーe8として、カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物の一種である、宇部興産株式会社製CTBNが用いられた。エラストマーe9として、シリコーン系エラストマーの一種である、信越シリコーン株式会社製KMP−605が用いられた。
【0046】
上記(A)〜(E)成分のほか、硬化促進剤として、四国化成株式会社製の2P4MZが用いられた。
【0047】
(2)評価
実施例1〜37および比較例1〜9で用いられたエポキシ樹脂組成物を試料として、以下の評価を行った。
【0048】
(2−1)分散指数の評価
図2は、半導体装置の断面写真を例示する図である。この図は、図1に「II」で示された領域(領域II)の断面写真である。図1の領域IIには、配線基板1、チップ基板5、銅ピラー8、およびハンダ4に挟まれた空間に流し込まれたのち、硬化したアンダーフィル剤10の断面が含まれる。この領域IIを走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて撮影した。その撮影画像を、画像処理ソフトウェアによって、以下のようにコンピュータにより分析する。すなわち、まず、この撮影画像のうち、アンダーフィル剤10の領域がユーザなどによって指定される。指定されたその領域の輝度分布の中央値を基準として、二値化処理が行われる。ここで、二値化された画像のうち、白い部分がフィラーを示しており、黒い部分がフィラー以外の樹脂成分を示している。次に、指定された領域は、銅ピラー8とハンダ4との境界線Lの延長線を境として、銅ピラー8側の領域Ra、およびハンダ4側の領域Rbの2つに区画される。そして、銅ピラー8側の領域Ra、およびハンダ4側の領域Rbの各画像に基づいて、それぞれの領域中のシリカフィラーの占有率が算出される。分散指数は次式によって算出される。
分散指数=100×(領域Raの占有率)/(領域Rbの占有率)
【0049】
分散指数は、100のとき各領域で均一にフィラーが分布していることを示す。分散指数が100より小さいときは、フィラーが領域Rbに偏っていることを示す。分散指数が小さいとフィラーが領域Rbに大きく偏っていることを示す。分散指数が大きくなって100に近づいていくと、フィラーの分布がより均一な状態に近づいていることを示す。ここでは、分散指数が50以下のとき、その試料のフィラー分布の均一性を不良と判断した。なお、画像処理には、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)のImageJが用いられた。
【0050】
(2−2)粘度の評価
ブルックフィールド回転粘度計を用いて、50rpmで、25℃における、上記エポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。
【0051】
(2−3)TI(チクソトロピックインデックス)値
5rpmおよび50rpmで、上記エポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。測定された5rpmにおける粘度の値を50rpmにおける粘度の値で除した値をTI値とした。
【0052】
(2−4)注入性の評価
110℃において、20μmのギャップ(間隙)に評価用試料を注入した。注入された評価用試料が入口から20mmの位置に到達するまでの時間を測定した。到達までの時間が短いほど注入性が良いことを示している。なお、表中の注入性の欄にある「−」の記載は、評価用試料が20mmの位置まで到達しなかったこと(すなわち不良であること)を意味する。
【0053】
(2−5)接着強度の評価
FR−4上に評価用試料を約0.5mgポッティングした。この上に2mm角シリコンチップを載せ、室温で5分間放置した。その後、送風乾燥機を用いて、150℃で120分の条件で、評価用試料を硬化させた。このようにして得られた試験片について、接着強度を卓上型強度測定機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605HTP)を用いて測定した。なお、10回の測定により得られた測定値の平均値を検査値とした。
【0054】
(3)評価結果
(3−1)エラストマー量について
表1は、実施例1〜5、並びに比較例1および2のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。以下、表において、エポキシ樹脂組成物の組成は質量部(質量%)で表されている。表1は、(E)成分の含有量が変化している例を示している。(C)成分および(E)成分のうちのいずれをも含まない比較例1では、分散指数が38であった。一方、(C)成分および(E)成分を含む実施例1〜5では、分散指数が50以上となった。(E)成分の含有量が増えると、分散指数が100に近づいていった。すなわち、(E)成分の含有量が増えると、フィラー分布の均一性が改善された。ただし、(E)成分の含有量が8.3質量%(比較例2)になると注入性試験で不良が発生した。
【表1】
【0055】
(3−2)エラストマーの種類について
表2は、実施例3および6〜13のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表2は、(E)成分の種類が変化している例を示している。(E)成分としてエラストマーe1〜e9のいずれを用いても、フィラー分布の均一性が改善されている。
【表2】
【0056】
(3−3)小径シリカフィラーの量について
表3は、実施例3および14〜16、並びに比較例3および4のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表3は、(C)成分の含有量が変化している例を示している。(C)成分の含有量が0.05質量%(比較例3)だと、分散指数が44であり、フィラー分布の均一性が不良であった。(C)成分の含有量が増えると、分散指数が100に近づいていき、フィラー分布の均一性が改善された。したがって、(C)成分の含有量は0.1質量%以上であることが好ましい。ただし、(C)成分の含有量が11質量%になると、粘度が132Pa・sとなった。よって、封止剤としての適度な粘度の観点から(C)成分の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
【表3】
【0057】
(3−4)小径シリカフィラーの平均粒径について
表4は、実施例3,17,18および比較例5のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表4は、(C)成分の平均粒径が変化している例を示している。なお比較例5においては、(C)成分の代わりに平均粒径0.2μm(すなわち200nm)の(D)成分を用いている。(C)成分が含まれない場合(比較例5)、分散指数で不良が発生する。(C)成分が含まれると、分散指数が改善する。このとき、(C)成分の平均粒径が小さくなるほど、分散指数がより改善する。すなわち、(C)成分の平均粒径が10〜100nmの範囲で、分散指数が改善した。
【表4】
【0058】
(3−5)大径シリカフィラーの平均粒径について
表5は、実施例3,19,20および比較例6のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表5は、(D)成分の平均粒径が変化している例を示している。(D)成分の平均粒径が0.2〜2μmの範囲では、分散指数試験で不良は観測されなかった。(D)成分の平均粒径が小さくなるにつれ分散指数は改善する。逆に、粘度は悪化する。(D)成分の平均粒径が0.2μm(比較例6)のとき、195Pa・sの高い粘度を示した。したがって封止剤としての適度な粘度の観点から、(D)成分の平均粒径は0.3μm以上であることが好ましい。
【表5】
【0059】
(3−6)大径シリカフィラーの量について
表6は、実施例3、22、24および比較例7〜9のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表6は、(D)成分の含有量が変化している例を示している。(D)成分の含有量が52〜75質量%の範囲では分散指数が改善した。しかし、(D)成分の含有量が多くなると注入性が悪化した。特に、(D)成分の含有量が76質量%(比較例9)になると、注入性試験で不良が観測された。したがって、封止剤としての適度な注入性の観点から、(D)成分の含有量は75%以下であることが好ましい。 なお、(C)成分の含有量と、(D)成分の含有量と、の合計が50.1質量%よりも少ない場合(比較例7および8)、エポキシ樹脂組成物の分散指数の値が50よりも小さくなることが確認された。
【表6】
【0060】
(3−7)大径シリカフィラーの表面処理について
表7は、実施例3および25〜27のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表7は、(D)成分の表面処理が変化している例を示している。(D)成分が、エポキシ基、メタクリル基、およびアミノ基のうちのいずれかを有するシランカップリング剤を用いて表面処理されても、また、表面処理されていなくても、分散指数試験で不良は発生しなかった。
【表7】
【0061】
(3−8)硬化剤の当量比について
表8は、実施例3、28および29のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表8は、(A)成分に対する(B)成分の当量比が変化している例を示している。(A)成分のエポキシ基1当量に対する(B)成分の当量比が0.5当量以上1.8当量以下の範囲で、分散指数試験に不良は発生しなかった。
【表8】
【0062】
(3−9)エポキシ樹脂の種類について
表9は、実施例3および30〜33のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表9は、(A)成分の種類、および、(A)成分と(B)成分との含有比が変化している例を示している。(A)成分がエポキシ樹脂a1〜a5のうちのいずれであっても、分散指数試験で不良は観測されなかった。
【表9】
【0063】
(3−10)硬化剤の種類について
表10は、実施例3、および実施例34〜37のエポキシ樹脂組成物の組成、並びに評価の結果を示す。表10は、(B)成分の種類、および、(A)成分と(B)成分との含有比が変化している例を示している。(B)成分が硬化剤b1〜b5のうちのいずれであっても、分散指数試験で不良は発生しなかった。
【表10】
【0064】
さらに、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、以下の第1ないし8のエポキシ樹脂組成物であってもよい。
【0065】
上記第1のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)0.1〜10質量%の、平均粒径10nm以上100nm以下のシリカフィラーと、(D)47〜75質量%の、平均粒径0.3μm以上2μm以下のシリカフィラーと、(E)0.1〜8質量%のエラストマーとを有し、前記(C)成分および前記(D)成分を、合計で47.1〜77質量%含むことを特徴するエポキシ樹脂組成物である。
【0066】
上記第2のエポキシ樹脂組成物は、上記(C)成分および上記(D)成分の少なくとも一方がシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする上記第1のエポキシ樹脂組成物である。
【0067】
上記第3のエポキシ樹脂組成物は、上記(D)成分が、次式(1)に示す構造のアミノシランで表面処理されていることを特徴とする上記第1または2のエポキシ樹脂組成物である。
【化3】
【0068】
上記第4のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)成分のエポキシ基1当量に対し、上記(B)成分が、0.5〜1.8当量含まれることを特徴とする上記第1ないし3のいずれかのエポキシ樹脂組成物である。
【0069】
上記第5のエポキシ樹脂組成物は、前記(B)成分が、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤、またはアミン硬化剤であることを特徴とする上記第1ないし4のいずれかのエポキシ樹脂組成物である。
【0070】
上記第6のエポキシ樹脂組成物は、前記(A)成分が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂の少なくとも一つを含むことを特徴とする上記第1ないし5のいずれかのエポキシ樹脂組成物である。
【0071】
上記第7のエポキシ樹脂組成物は、上記(E)成分が、ブタジエン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリルコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー、ブタジエン・アクリロニトリル・2,3−エポキシプロピル=メタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物、ブタジエン・アクリロニトリル・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物、アミノ基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、の少なくとも一つを含むことを特徴とする上記第1ないし6のいずれかのエポキシ樹脂組成物である。
【0072】
上記第8のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)エポキシ樹脂の少なくとも一部に上記(C)平均粒径10〜100nmのシリカフィラーを混合してマスターバッチを生成し、当該マスターバッチに他の成分を混合して製造されることを特徴とする上記第1ないし7のいずれかのエポキシ樹脂組成物である。
【0073】
さらに、本発明に係る半導体封止剤は、以下の第1ないし4の半導体封止剤であってもよい。
【0074】
上記第1の半導体封止剤は、上記第1ないし8のいずれかのエポキシ樹脂組成物を用いた半導体封止剤である。
【0075】
上記第2の半導体封止剤は、封止する前記半導体装置の導通部分が、2種以上の金属または合金であることを特徴とする上記第1の半導体封止剤である。
【0076】
上記第3の半導体封止剤は、封止する前記半導体装置の導通部分が、Au,Ag,Cu,Sn,Pb,Ni,Pd,Co,Cd,Bi,In,Sb,Znから選択される2種以上の金属または当該金属を基にする合金により形成されることを特徴とする上記第2の半導体封止剤である。
【0077】
上記第4の半導体封止剤は、封止する前記半導体装置の導通部分が、2種の金属または合金であり、前記導通部分を封止した前記エポキシ樹脂組成物の断面を、前記2種の金属または合金の境界に沿って2つの領域に区画し、当該各領域における前記(C)成分および前記(D)成分の面積の比に応じて算出されるフィラー分散指数が50以上150以下であることを特徴とする上記第1の半導体封止剤である。
【0078】
さらに、本発明に係る半導体装置は、上記第1ないし4のいずれかの半導体封止剤を用いた半導体装置である。
【符号の説明】
【0079】
1…配線基板、10…アンダーフィル剤、2…電極端子、3…絶縁膜、4…ハンダ、5…チップ基板、7…電極端子、8…銅ピラー、9…パッシベーション、L…境界線。
図1
図2