特許第6475559号(P6475559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475559符号化装置、復号装置及びこれらのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475559
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】符号化装置、復号装置及びこれらのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/238 20110101AFI20190218BHJP
   H04N 19/68 20140101ALI20190218BHJP
   H04N 21/4425 20110101ALI20190218BHJP
【FI】
   H04N21/238
   H04N19/68
   H04N21/4425
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-92241(P2015-92241)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-213523(P2016-213523A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年2月26日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝典
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
【審査官】 富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5528811(JP,B2)
【文献】 特開2013−207322(JP,A)
【文献】 特開2007−068193(JP,A)
【文献】 特開2005−210426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0162852(US,A1)
【文献】 デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式,標準規格 ARIB STD−B32,日本,一般社団法人 電波産業会,2014年 7月,3.0版,pp. 69-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
H04N 19/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を符号化処理して実時間で伝送する符号化装置であって、
伝送する所定の情報に対して予め定めた符号化処理を施す符号化手段と、
前記符号化処理を施した情報と、該情報に一対一で関連付けられた所定のセッションIDを所定のストリームのパケットに格納して予め定めた送信タイミングで送信する送信手段と、
当該符号化処理及びパケット送信に関する設定及びその変更を制御するとともに、当該符号化処理及びパケット送信に関する設定に変更がある際に当該設定変更の前後で復号側が継続して復号動作可能なものであるか否かを予め定めた基準に基づいて判定し、継続して復号動作ができないと判定したときに、前記所定のセッションIDを異なる値に変更するよう更新する制御手段と、を備え
前記所定のセッションIDは、RTPヘッダのSSRCフィールドか、又はMPEG−2 TSのPATにおけるprogram_numberフィールドで伝送するよう構成されていることを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
前記所定のセッションIDは、復号側が継続して復号可能である旨を示す識別子として当該符号化処理及びパケット送信に関する設定に予め関連付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の符号化装置によって符号化された所定の情報を実時間で受信して復号する復号装置であって、
符号化された所定の情報と、該情報に一対一で関連付けられた前記所定のセッションIDが格納されてパケット送信された所定のストリームのパケットを受信して一時記憶するバッファ手段と、
当該一時記憶したパケット内の時刻情報を用いてクロック再生処理を行うクロック再生手段と、
当該パケットに格納されている符号化された所定の情報を前記バッファ手段から取り出し、符号化側で施されていた符号化処理に対応する復号処理を施して復元する復号手段と、
前記パケットの受信異常を監視するとともに、前記所定のセッションIDの値を監視し、前記パケットの受信異常がある際に当該受信異常が所定の閾値時間を超えて継続していないとき、又は前記パケットの受信異常がなく正常である際に前記所定のセッションIDの値に変更がない限り、前記クロック再生処理及び前記復号処理をリセットすることなく、当該復号処理を継続するよう制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする復号装置。
【請求項4】
ンピュータ請求項1又は2に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
ンピュータ請求項3に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号や音声信号などの情報を符号化処理して実時間で伝送する技術に関し、特に、映像信号や音声信号を符号化しMPEG−2 TS(moving picture experts group phase 2 Transport Stream)パケット伝送路やIP(Internet Protocol)パケット伝送路などを経て伝送する際に、動作タイミングや内部状態の異常による障害を軽減する符号化装置、復号装置及びこれらのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像・音声信号を符号化伝送する符号化装置は、映像信号や音声信号の情報を符号化し小容量の情報に圧縮して伝送し、受信側の復号装置で元の信号に復号させることで、伝送容量の小さい伝送路であっても映像・音声信号を伝送可能とする装置であり、放送番組などの映像・音声信号の伝送に広く用いられている。
【0003】
そして、映像信号や音声信号の情報を符号化する符号化装置はエンコーダ、これを復号して元の映像信号や音声信号を復元する復号装置はデコーダとそれぞれ呼ばれる。尚、エンコーダ、デコーダは、符号化もしくは復号を行う装置という意味でコーデックとも呼ばれている。
【0004】
コーデックは、符号化した情報を一旦蓄積し、蓄積した後で復号することも可能であるが、本願明細書中で対象とする形態は、エンコーダ側で、符号化した映像信号や音声信号の情報をパケットに格納して伝送し、デコーダ側で、これら情報を受信して実時間で復号し映像信号や音声信号を連続して出力する形態である。
【0005】
映像信号や音声信号を途切れることなく伝送するには、エンコーダとデコーダの動作タイミングや内部状態を同期させ、遅延時間が一定となるように動作させる必要がある。このため、IPネットワークを用いたコーデックでは、RTPプロトコルを用いて通信を行っている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、RTPプロトコルを用いた通信でも、映像信号や音声信号の連続的な伝送を実現する際に、デコーダが復号開始後に、エンコーダを別のエンコーダに切り替えると、変更前と変更後の情報がデコーダに混在し、デコーダの内部状態がミスマッチを起こして、不快な音声や異常な映像が出力されることがある。
【0007】
そこで、進行中の通信セッション中に着信メディアの送信元の変更(エンコーダの切り替え)を検出し、新たな着信メディアを復号する前に、このような検出された変更に応じてデコーダの内部状態をリセットすることで、状態不一致を回避し、不快な音声や異常な映像の出力を防止する技法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
そして、特許文献1に開示される技法では、RTPパケットのヘッダ内の2つのフィールド、即ちSSRC(synchronization source)フィールド及びCSRC(contributing source)フィールドを用いて個別の送信器(即ち、エンコーダ)を識別し、この変更を利用して送信元の変更を検出している。
【0009】
尚、デコーダは、エンコーダの切り替えに伴い、受信したIPパケットからクロック再生するには、例えばSMPTE 2022−3 Annex Cの技法を用いることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、エンコーダの切り替えにより不快な音声や異常な映像が出力される場合以外にも、無線伝送路やインターネット回線を用いた伝送では、伝搬環境の悪化や、輻輳などの理由により、符号化データを伝送するパケットが失われることや、一時的に中断する場合がある。このような状態が継続すると、内部状態の不一致が大きくなり不快な音声や異常な映像が出力される場合がある。
【0011】
そこで、デコーダ側の対策として、符号化データの受信異常が一定の閾値時間以上に継続した場合に、映像出力を停止し黒画像にすることや、映像をフリーズした上でデコーダをリセットし、受信開始動作を最初からやり直すことが広く行われている。
【0012】
一方、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)方式デジタル無線伝送システム(例えば、非特許文献3参照)では、IPパケットの伝送路を用いず、MPEG−2 TSパケットを直接伝送するパケット伝送路を用いてエンコーダ及びデコーダを接続する伝送形態となっており、RTPプロトコルを用いていないため、送信器(即ち、エンコーダ)の識別に、SSRCフィールドやCSRCフィールドを利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5528811号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“RFC3550 RTP: A Transport Protocol for Real-Time Applications”、[online]、2003年7月策定、[平成27年4月20日検索]、インターネット〈URL:http://tools.ietf.org/html/rfc3550〉
【非特許文献2】“SMPTE ST 2022-3:2010 SMPTE STANDARD Unidirectional Transport of Variable Bit Rate MPEG-2 Transport Streams on IP Networks,Annex C:Clock Recovery Method (Informative) ”、[online]、2010年4月30日発行、[平成27年4月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.google.co.jp/webhp?nord=1&gws_rd=cr&ei=e2M4VYqBHeXemAWX54D4Ag#nord=1&q=SMPTE+2022-3〉
【非特許文献3】“テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システム 標準規格 ARIB STD-B33 1.2版、[online]、平成23年3月28日改定、ARIB、[平成27年4月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B33v1_2.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述したように、デコーダが復号開始後に、エンコーダを別のエンコーダに切り替えると、変更前と変更後のデータがデコーダに混在し、デコーダの内部状態がミスマッチを起こして、不快な音声や異常な映像が出力されることがある。
【0016】
その他にも、無線伝送路やインターネット回線を用いた伝送では、伝搬環境の悪化や、輻輳などの理由により、符号化データを伝送するパケットが失われることや、一時的に中断する場合がある。このような状態が継続すると、内部状態の不一致が大きくなり不快な音声や異常な映像が出力される場合がある。
【0017】
従って、特許文献1に開示される技法ではエンコーダの切り替えによる内部状態の不一致を想定してその対策を講じているが、このような内部状態の不一致はエンコーダの符号化パラメータや設定変更によっても発生することから、十分な対策とは云えない。
【0018】
一方で、エンコーダの出力の中断については、エンコーダの設定変更を行いデコーダ側でリセットする場合にも発生することから、デコーダ側で受信異常が一定時間以上継続した場合にリセットを行うことは、当該設定変更時の障害の防止にも有効である。
【0019】
しかしながら、デコーダをリセットして映像・音声信号の符号化した情報の受信再開から映像・音声信号を復元し出力するまでに数秒の時間を要する場合がある。このため、パケット伝送路の中断時間が、受信異常を検出する閾値時間を超えると、伝送路の中断時間より長い間、映像の出力が停止する。特に、移動する中継車からの映像伝送や、無線LANや携帯データ通信による伝送では、伝送の中断が発生しやすく、この伝送の中断時間より更に長い時間がかかって映像が復元・出力されることが問題となる。
【0020】
逆に、この受信異常を検出する閾値時間を長く設定すると、エンコーダの設定を変更した場合に、その閾値時間以上にエンコーダの出力を中断しないと、デコーダがリセットされないという問題もある。
【0021】
また、非特許文献3に規定されるOFDM方式デジタル無線伝送システムのように、IPパケットの伝送路を用いず、MPEG−2 TSパケットを直接伝送するパケット伝送路を用いてエンコーダ及びデコーダを接続する場合には、RTPプロトコルを用いていないため、SSRCフィールドやCSRCフィールドを用いた送信器(即ち、エンコーダ)の識別を利用できないという問題もある。
【0022】
そこで、本発明は上述の問題に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、映像信号や音声信号を符号化しMPEG−2 TSパケット伝送路やIPパケット伝送路などを用いて伝送する際に、動作タイミングや内部状態の異常による障害を軽減する符号化装置、復号装置及びこれらのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の符号化装置は、所定の情報を符号化処理して実時間で伝送する符号化装置であって、伝送する所定の情報に対して予め定めた符号化処理を施す符号化手段と、前記符号化処理を施した情報と、該情報に一対一で関連付けられた所定のセッションIDを所定のストリームのパケットに格納して予め定めた送信タイミングで送信する送信手段と、当該符号化処理及びパケット送信に関する設定及びその変更を制御するとともに、当該符号化処理及びパケット送信に関する設定に変更がある際に当該設定変更の前後で復号側が継続して復号動作可能なものであるか否かを予め定めた基準に基づいて判定し、継続して復号動作ができないと判定したときに、前記所定のセッションIDを異なる値に変更するよう更新する制御手段と、を備え、前記所定のセッションIDは、RTPヘッダのSSRCフィールドか、又はMPEG−2 TSのPATにおけるprogram_numberフィールドで伝送するよう構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の符号化装置において、前記所定のセッションIDは、復号側が継続して復号可能である旨を示す識別子として当該符号化処理及びパケット送信に関する設定に予め関連付けられていることを特徴とする。
【0026】
更に、本発明の復号装置は、本発明の符号化装置によって符号化された所定の情報を実時間で受信して復号する復号装置であって、符号化された所定の情報と、該情報に一対一で関連付けられた前記所定のセッションIDが格納されてパケット送信された所定のストリームのパケットを受信して一時記憶するバッファ手段と、当該一時記憶したパケット内の時刻情報を用いてクロック再生処理を行うクロック再生手段と、当該パケットに格納されている符号化された所定の情報を前記バッファ手段から取り出し、符号化側で施されていた符号化処理に対応する復号処理を施して復元する復号手段と、前記パケットの受信異常を監視するとともに、前記所定のセッションIDの値を監視し、前記パケットの受信異常がある際に当該受信異常が所定の閾値時間を超えて継続していないとき、又は前記パケットの受信異常がなく正常である際に前記所定のセッションIDの値に変更がない限り、前記クロック再生処理及び前記復号処理をリセットすることなく、当該復号処理を継続するよう制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
更に、本発明のプログラムは、本発明の符号化装置又は復号装置としてコンピュータに機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、RTPパケットやMPEG−2 TSパケットなどのパケット種別の違いに依らず、受信異常の検出期間の閾値時間を大きくしても、デコーダはエンコーダの設定変更等を検出して直ちにリセットすることができ、このため、パケット伝送の短時間の中断であればリセットが起こらなくなり、長い時間で映像の中断が継続することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による一実施形態の符号化装置及び復号装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による一実施形態の符号化装置及び復号装置で利用可能なRTPヘッダの構造を示す図である。
図3】本発明による一実施形態の符号化装置及び復号装置で利用可能なPAT(Program Association Table)の構造を示す図である。
図4】本発明による一実施形態の符号化装置におけるエンコーダ制御部の動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明による一実施形態の復号装置におけるデコーダ制御部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の符号化装置1及び復号装置2を説明する。
【0031】
図1は、本発明による一実施形態の符号化装置1及び復号装置2の概略構成を示すブロック図である。以下、単に「符号化」と称するときは圧縮符号化を云う。符号化装置1は、入力された映像信号(又は音声信号)を符号化し、符号化した映像信号(又は音声信号)の情報を、該情報に一対一で関連付けられた所定の「セッションID」とともに、所定のストリーム(例えば、MPEG−2 IP又はTSのストリーム)のIPパケットもしくはTSパケットに格納し、IPパケットもしくはTSパケットのパケット伝送路を経て、復号装置2へと送信するよう構成されている。復号装置2は、IPパケットもしくはTSパケットを受信すると、デジッタバッファに格納し、クロック及びジッタの補正を行った上でIPパケットもしくはTSパケットを取り出し、これに格納された「セッションID」を抽出して記録・監視した上で、映像信号(又は音声信号)の情報を取り出して復号し出力するよう構成されている。
【0032】
ここで、「セッションID」とは、復号側が継続して復号可能である旨を示す識別子である。符号化装置1は、符号化処理に関する設定(例えば、符号化パラメータや符号化処理の種別の設定)と、パケット送信に関する設定(例えば、パケット送信の停止や再開を行うタイミング設定)について(以下、総括して「符号化処理及びパケット送信に関する設定」とも称する。)、映像信号(又は音声信号)の情報を符号化・送信する度に監視している。そして、符号化装置1は、復号側が継続して復号可能であるとして、映像信号(又は音声信号)の情報の予め定めた符号化処理及びパケット送信に関する設定については同一の値でセッションIDを補助情報として割り当て、その他の場合には、異なる値でセッションIDを補助情報として割り当てるよう構成されている。
【0033】
以下、本実施形態の符号化装置1及び復号装置2を順に説明する。尚、以下の説明では、主に、映像信号の情報の伝送を説明する。
【0034】
(符号化装置の構成)
図1に示すように、符号化装置1は、符号化部11、パケット送信部12、エンコーダ制御部13、及びセッションID管理部14を備える。
【0035】
符号化部11は、エンコーダ制御部13の制御により、伝送する映像信号を入力し、この伝送のために予め定めた符号化パラメータで符号化処理を施し、パケット送信部12に出力する。
【0036】
パケット送信部12は、エンコーダ制御部13の制御により、符号化及びパケット送信の停止や再開を制御可能とする態様で、符号化部11により符号化した映像信号の情報と、セッションID管理部14から得られるセッションIDを、所定のストリームのIPパケットもしくはTSパケットに格納し、パケット伝送路を経て復号装置2へと送信する。
【0037】
エンコーダ制御部13は、符号化部11に対しては当該符号化処理に関する設定及びその変更を制御し、パケット送信部12に対しては当該パケット送信に関する設定及びその変更を制御する機能部である。
【0038】
特に、エンコーダ制御部13は、当該符号化処理及びパケット送信に関する設定に変更がある場合、例えば符号化処理又は符号化パラメータの設定変更や、パケット送信の停止・再開(符号化の停止・再開を含めることも可)を行う場合、その旨をセッションID管理部14に通知する。
【0039】
セッションID管理部14は、エンコーダ制御部13からの通知を受けて、映像信号の情報を符号化・送信する度にその設定変更を監視することができ、復号側が継続して復号可能であるとして、映像信号の情報の予め定めた符号化処理及びパケット送信に関する設定については継続して同一の値のセッションIDを割り当てパケット送信部12に出力し、その他の場合には、異なる値のセッションIDを割り当てパケット送信部12に出力する。
【0040】
従って、セッションIDの更新は必須ではなく、復号側が継続して復号可能であるとして、復号処理に影響を及ぼさない設定変更やパケット送信の停止・再開の場合では、セッションID管理部14からセッションIDの更新がないとき、パケット送信部12が継続して同一の値のセッションIDを用いるよう構成してもよい。
【0041】
このようなセッションIDの割り当ては、その符号化処理及びパケット送信に関する設定の内容ごとに復号側が継続して復号可能であるかを基に当該設定変更の前後で復号側が継続して復号動作可能なものであるか否かに関する基準を予め定めておくことができる。尚、復号側が継続復号可能であるか否かの設定変更に関する判定に関して、例えば復号側が継続復号可能な符号化パラメータの変更の場合でも、符号化処理を一旦停止しないと変更ができないような設定変更については、一連の設定変更として判定するのが好適である。従って、エンコーダ制御部13は、設定変更の前後で復号側が継続して復号動作できる設定変更であるか否かを判定し、継続復号可能であると判定すれば、セッションIDを変更させないようセッションID管理部14に通知し、符号化処理及びパケット送信に関する設定の変更を行う。一方、設定変更の前後で復号側が継続して復号動作できない設定変更であると判定すれば、符号化及びパケット送信を停止して、符号化処理及びパケット送信に関する設定の変更を行い、セッションIDを変更するようセッションID管理部14に通知し、符号化処理及びパケット送信を開始する。
【0042】
このため、セッションID管理部14は、エンコーダ制御部13からセッションIDの更新が指示されると、現在のセッションIDとは異なる値の新たなセッションIDを選定し、パケット送信部12に出力する。そして、パケット送信部12は、符号化処理の設定変更以後もしくはパケット送信の再開以後に伝送するパケットに対しては、セッションID管理部14から得た新たなセッションIDを付加して送信する。
【0043】
ここで、IPパケットのパケット伝送路で復号装置2と接続する場合は、符号化した映像信号の情報をRTPパケットに格納する。この場合、セッションIDは、RTPパケットのSSRCフィールド(例えば非特許文献1、又は図2参照)に格納して伝送する。このときのセッションIDは、32ビットの値から選択することができる。
【0044】
一方、RTPパケットを用いず、TSパケットのパケット伝送路で復号装置2と接続する場合は、符号化した映像信号の情報をMPEG−2 TSパケットに格納する。この場合、セッションIDはMPEG−2 TSのPAT(Program Association Table)におけるprogram_numberフィールド(例えば図3参照)に格納して伝送する。このときのセッションIDは、0以外の16ビットの値(1〜65535)から選択することができる。
【0045】
更に、符号化した映像信号の情報をMPEG−2 TSパケットに格納した後、RTPパケットに格納して、IPパケットの伝送路で復号装置2と接続する場合は、セッションIDをMPEG−2 TSのPAT(Program Association Table)におけるprogram_numberフィールド及び、RTPパケットのSSRCフィールドに格納して伝送してもよい。このときのセッションIDは、0以外の16ビットの値(1〜65535)から選択し、SSRCの上位16ビットには、任意の値を格納してもよい。ただし、この上位16ビットの値はセッションIDに変更がない場合には変更しないようにして、継続して復号する際の動作を簡便にするのが好適である。
【0046】
尚、上述の例では、本発明の理解を高めるために、エンコーダ制御部13、及びセッションID管理部14を区別して説明したが、エンコーダ制御部13がセッションID管理部14の機能を具備するよう構成することができる。
【0047】
(エンコーダ制御部の動作)
次に、図4を参照して、エンコーダ制御部13の動作について説明する。図4は、本実施形態の符号化装置1におけるエンコーダ制御部13の動作例を示すフローチャートである。まず、エンコーダ制御部13は、符号化部11による符号化処理の実行前に、セッションIDの初期値を設定するようセッションID管理部14に通知する(ステップS11)。
【0048】
続いて、エンコーダ制御部13は、符号化部11及びパケット送信部12を制御して、伝送する映像信号について予め定めた符号化・送信制御を開始する(ステップS12)。即ち、符号化部11は、伝送する映像信号を入力し、この伝送のために予め定めた符号化パラメータで符号化処理を施し、パケット送信部12に出力する。そして、パケット送信部12は、符号化及びパケット送信の停止や再開を制御可能とする態様で、符号化部11により符号化した映像信号の情報と、セッションID管理部14から得られるセッションIDを、所定のストリームのIPパケットもしくはTSパケットに格納し、パケット伝送路を経て復号装置2へと送信する。
【0049】
続いて、エンコーダ制御部13は、現在、符号化・送信中の映像信号に対して、「符号化処理及びパケット送信に関する設定」の設定変更の実行を決定するとする(ステップS13)。例えば、予め定めたサービス計画に基づいて連続して異なる映像を配信する場合や、操作者(サービス事業者)の指示により映像や符号化パタメータを変更する場合、或いはオンデマンド形式で復号側からの指示を受け付けた場合などで、エンコーダ制御部13は、「符号化処理及びパケット送信に関する設定」の設定変更の実行を決定する。
【0050】
続いて、エンコーダ制御部13は、現在、符号化・送信中の映像信号に対して当該設定変更が、復号側にとって継続して復号可能であるか否かを判定する(ステップS14)。符号化処理に関する設定は、例えば符号化パラメータや符号化処理の種別の設定とし、パケット送信に関する設定は、例えばパケット送信の停止や再開を行うタイミング設定とすると、その設定変更が、復号側にとって継続して復号可能であるか否かの基準を予め定めておくことができる。そして、この基準に基づいて、エンコーダ制御部13は、現在、符号化・送信中の映像信号に対して当該設定変更が、復号側にとって継続して復号可能であるか否かを判定する。
【0051】
継続して復号可能であると判定したとき(ステップS14:「可能」)、エンコーダ制御部13は、セッションIDを変更させないようセッションID管理部14に通知し、当該符号化処理及びパケット送信に関する設定の変更処理を実行し(ステップS15)、その後、この設定状態を更なる設定変更の実行まで維持する(ステップS13)。
【0052】
一方、継続して復号不可能であると判定したとき(ステップS14:「不可能」)、エンコーダ制御部13は、符号化及びパケット送信を停止して符号化処理及びパケット送信に関する設定の変更を行い(ステップS16)、セッションIDを変更するようセッションID管理部14に通知し(ステップS17)、その後、符号化処理及びパケット送信を再開する(ステップS12)。
【0053】
以上のようにして、符号化装置1は、入力された映像信号(又は音声信号)を符号化し、符号化した映像信号(又は音声信号)の情報を所定のセッションIDとともに、所定のストリームのIPパケットもしくはTSパケットに格納し、IPパケットもしくはTSパケットのパケット伝送路を経て、復号装置2へと送信する。
【0054】
(復号装置の構成)
次に、復号装置2の構成について説明する。図1に示すように、復号装置2は、デジッタバッファ21、クロック再生部22、復号部23、デコーダ制御部24、及びセッションID記録部25を備える。
【0055】
デジッタバッファ21は、符号化装置1から送信された所定のストリームのIPパケットもしくはTSパケットを受信すると、一時的に格納する記憶部である。
【0056】
クロック再生部22は、IPパケットもしくはTSパケットのビットレート及びクロックを再生する機能部である。受信したIPパケットから、そのビットレート及びクロックを再生するクロック再生処理には、例えば非特許文献2の技法を用いるなど、受信したIPパケット内の時刻情報を利用することができる。また、TSパケットの伝送路からTSパケットを受信してそのビットレート及びクロックを再生するクロック再生処理には、その現在時刻情報を格納したTSパケット(即ち、PCRパケット)のタイムスタンプ値と、連続するPCRパケット間のTSパケット数とからビットレートを再生することができ、PCRパケットのタイムスタンプ値と、その受信時刻との差からクロックを再生することができる。
【0057】
復号部23は、デコーダ制御部24の制御により、デジッタバッファ21からIPパケットもしくはTSパケットに格納された映像信号の情報を取り出し、符号化装置1によって施されていた符号化処理に対応する復号処理を施して、映像信号を復元し外部装置(例えば図示しない表示装置等)に出力する。
【0058】
デコーダ制御部24は、デジッタバッファ21に一時記憶したIPパケットもしくはTSパケットからセッションIDを取得し、セッションID記録部25にて最近時に記録していたセッションIDと比較し、一致する値の場合は復号部23の復号処理を継続するよう制御し、一致しない値の場合には、クロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)して復号部23の復号処理を再開するとともに、新たに取得したセッションIDで更新するようセッションID記録部25に記録する機能を有する。
【0059】
セッションID記録部25は、デコーダ制御部24の制御により、IPパケットもしくはTSパケットからセッションIDが取得される度に、そのセッションIDの値を記録する。
【0060】
そして、デコーダ制御部24は、パケットの入力エラー(受信異常)が所定の閾値時間を超えて継続した場合もクロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)して復号部23の復号処理を再開するとともに、そのリセット後に最初に取得したセッションIDの値をセッションID記録部25に記録する機能を有する。
【0061】
尚、クロック再生部22は、伝送エラーなどにより、IPパケットもしくはTSパケットの入力エラー(受信異常)があると、このときのビットレートとクロック周波数の更新処理を直ちに停止し、当該入力エラー(受信異常)が生じる前の値を維持する。
【0062】
即ち、復号装置2は、IPパケットもしくはTSパケットの受信を一旦開始すると、IPパケットもしくはTSパケットの入力エラー(受信異常)が所定の閾値時間を超えて継続しておらず、又はセッションIDの値の変更がない限り、クロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)することはなく、受信したIPパケットもしくはTSパケットに格納された映像信号の情報の復号処理を継続する。
【0063】
(デコーダ制御部の動作)
次に、図5を参照して、デコーダ制御部24の動作について説明する。図5は、本実施形態の復号装置2におけるデコーダ制御部24の動作例を示すフローチャートである。まず、デコーダ制御部24は、IPパケットもしくはTSパケットの受信準備として、クロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)する(ステップS21)。
【0064】
続いて、デコーダ制御部24は、デジッタバッファ21に一時記憶したIPパケットもしくはTSパケットに、入力エラー(受信異常)やセッションIDの値の変更の有無を検出する処理を開始する(ステップS22)。
【0065】
IPパケットもしくはTSパケットの受信結果として入力エラー(受信異常)がない正常時には(ステップS23:「正常」)、続いてセッションIDの値の変更の有無を検出する(ステップ24)。そして、セッションIDの値の変更が無いと判定するときは(ステップS24:「変更なし」)、復号部23の復号処理を継続するよう制御し、ステップS22に移行する。一方、セッションIDの値の変更が有ると判定するときは(ステップS24:「変更検出」)、ステップS21に移行してクロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)して復号部23の復号処理を再開する。
【0066】
また、IPパケットもしくはTSパケットの受信結果として入力エラー(受信異常)があるときには(ステップS23:「異常」)、クロック再生部22におけるビットレートとクロック周波数の更新処理を直ちに停止し、この入力エラー(受信異常)が所定の閾値時間を超えて継続するかを監視し、所定の閾値時間を超えて継続しないときは(ステップS25:「閾値以下」)、復号部23の復号処理を継続するよう制御し、ステップS22に移行する。一方、入力エラー(受信異常)が所定の閾値時間を超えて継続するときは(ステップS25:「閾値超」)、ステップS21に移行してクロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)して復号部23の復号処理を再開する。
【0067】
このように、復号装置2は、IPパケットもしくはTSパケットの受信を一旦開始すると、IPパケットもしくはTSパケットの入力エラー(受信異常)が所定の閾値時間を超えて継続しておらず、又はセッションIDの値の変更がない限り、クロック再生部22と復号部23をリセット(初期化)することはなく、受信したIPパケットもしくはTSパケットに格納された映像信号の情報の復号処理を継続することができる。
【0068】
即ち、従来技法のコーデックでは、符号化側から得られるパケットに関する受信異常を検出すると、その検出期間の閾値時間より長い時間、復号処理を停止させた後、復号処理をリセットし、ビットレートとクロック周波数の更新処理(クロック再生処理)を改めて行うよう制御するため、回復するのに時間がかかっていた。
【0069】
また、従来技法のコーデックでは、この回復するのに時間がかかる問題を軽減させようとしてその閾値時間を小さくすると、短時間にパケット伝送が中断しただけでも復号処理のリセットが発生し、結果として長い時間映像が停止してしまう。逆に、この閾値時間を大きくすると、例えば符号化処理に関する設定変更を反映させるために復号処理をリセットするため、長い時間伝送を中断することとなる。
【0070】
一方、本発明に係る符号化装置1及び復号装置2では、受信異常に関する閾値時間を大きくしても、復号装置2は符号化装置1の設定変更を検出して直ちにクロック再生処理を停止して事前の状態を維持可能とし、復号部23をリセットすることができる。従って、この閾値時間を大きな値に設定することが可能になる。このため、短時間にパケット伝送が中断しても当該リセットが起こらなくなり、映像の中断が長い時間継続することを防ぐことができる。
【0071】
そして、従来の特許文献1の技法では、RTPパケットでSSRCフィールドやCSRCフィールドの値の変更の観測により、復号処理のリセットを行っていたため、RTPパケットを用いないパケット伝送路でコーデックを接続する場合には、エンコーダの変更やエンコーダの設定変更を検出することができなかった。
【0072】
一方、本発明に係る符号化装置1及び復号装置2では、MPEG−2 TSのパケット伝送路であっても符号化処理の変更や符号化パラメータの設定変更を検出し、復号部23の復号処理をリセットしエラーを復元するよう構成することができる。
【0073】
以上、特定の実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述の実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施形態の例では、主に、エンコーダ制御部13及びセッションID管理部14、並びに、デコーダ制御部24及びセッションID記録部25を個別の構成要素として説明したが、それぞれセッションID管理部14の機能を有するエンコーダ制御部13、セッションID記録部25の機能を有するエンコーダ制御部13として構成することができる。
【0074】
そして、本実施形態の符号化装置1又は復号装置2をコンピュータとして機能させることができ、当該コンピュータに、本発明に係る各構成要素を実現させるためのプログラムは、当該コンピュータの内部又は外部に備えられるメモリ(図示せず)に記憶される。コンピュータに備えられる中央演算処理装置(CPU)などの制御で、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、メモリから読み込んで、本実施形態の符号化装置1又は復号装置2の各構成要素の機能をコンピュータに実現させることができる。ここで、各構成要素の機能をハードウェアの一部で実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、RTPパケットやMPEG−2 TSパケットなどのパケット種別の違いに依らず、受信異常の検出期間の閾値時間を大きくしても、デコーダはエンコーダの設定変更等を検出して直ちにリセットすることができ、このため、パケット伝送の短時間の中断であればリセットが起こらなくなり、長い時間で映像の中断が継続することを防ぐことができるので、映像又は伝送の中断が発生しうる無線伝送路を用いて映像伝送を行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 符号化装置
2 復号装置
11 符号化部
12 パケット送信部
13 エンコーダ制御部
14 セッションID管理部
21 デジッタバッファ
22 クロック再生部
23 復号部
24 デコーダ制御部
25 セッションID記録部
図1
図2
図3
図4
図5