【文献】
山崎慎太郎 他,伊勢湾底びき網漁業に用いられるオッターボードの性能評価と新型オッターボードの提案,日本水産学会誌,2007年 3月,Vol.73 No.2,pp.220-225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トロール船とトロール網とに連結された状態として前記トロール船によって前記トロール網とともに曳航されることにより、前記トロール網の網口を展開させる高揚力オッターボードであって、
前記トロール船による曳航にともなって前記網口の展開方向に移動する1枚の湾曲板のみを有し、
前記湾曲板は、曳航状態において曳航方向の前方側となる前側の端部から曳航状態において曳航方向の後方側となる後側の端部に向かって前記網口の展開方向に対応する湾曲方向に湾曲するような形状に形成され、
前記高揚力オッターボードは、
前記湾曲板における曳航状態において鉛直上方側となる上側の端部に、この上側の端部に対して前記湾曲板から前記湾曲方向およびこれに抗する方向に延出するように形成された天板と、
前記湾曲板における曳航状態において鉛直下方側となる下側の端部に、この下側の端部に対して前記湾曲板から前記湾曲方向およびこれに抗する方向に延出するように形成された底板とを備えており、
前記天板および底板は、それぞれ前記湾曲板からの前記湾曲方向への延出幅が前記湾曲板の前側から後側の全部の範囲において一定に形成されており、
前記天板および底板は、前記湾曲板からの前記湾曲方向に抗する方向への延出状態が前記湾曲板の前側端部と後側端部とを結ぶ直線と平行となるように形成されている
ことを特徴とする高揚力オッターボード。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るオッターボードの実施形態について、
図1乃至
図8を参照して説明する。
【0022】
本実施形態におけるオッターボードは、トロール船とトロール網とに連結された状態としてトロール船によってトロール網とともに曳航されることにより、トロール網の網口を展開させるように形成されている。
【0023】
すなわち、
図1乃至
図4は、本実施形態におけるオッターボード1として、トロール船の左舷側に連結される左舷側のオッターボードを示したものであり、このオッターボード1は、トロール船による曳航にともなってトロール網の網口の展開方向に移動可能とされた湾曲板2を有している。この湾曲板2は、曳航状態において曳航方向の前方側となる前側の端部(
図1乃至
図4における右端部)から曳航状態において曳航方向の後方側となる後側の端部(
図1乃至
図4における左端部)に向かって、トロール網の網口の展開方向に対応する湾曲方向(
図1乃至
図3における上方向、
図4における下方向)に湾曲するような平面形状が円孤を呈する形状に形成されている。ここで、「網口の展開方向に対応する」とは、湾曲板2が前記湾曲方向に湾曲されていることによって、曳航時に湾曲板2に作用する水圧によって湾曲板2が網口の展開方向に移動するような湾曲方向と網口の展開方向との対応関係があることを意味している。
【0024】
なお、湾曲板2は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されていてもよい。
【0025】
また、
図3に示すように、湾曲板2における湾曲方向側の表面2a(
図3における上面)には、この湾曲方向側の表面2aにおける前側(
図3における右側)の所定範囲の領域にわたって、この領域よりも湾曲方向側に膨出された膨出面3を有する膨出構造4が形成されている。
【0026】
より具体的には、膨出構造4は、前記所定範囲の領域として、湾曲板2の湾曲方向側の表面2aにおける前側の端部(
図3における右端部)から、この前側の端部と湾曲方向側の表面2aにおける後側の端部(
図3における左端部)との中間位置にわたる領域に形成されている。
【0027】
また、膨出面3は、その前側(
図3における右側)の一定範囲の部位が、膨出面3における前側の端部(
図3における右端部)側から膨出面3における後側の端部(
図3における左端部)側に向かって膨出方向(
図3における右上方向)に湾曲するような円弧状の湾曲面3aに形成されている。さらに、膨出面3は、前記前側の一定範囲の部位以外の部位、すなわち、その後側(
図3における左側)の一定範囲の部位が平面3bに形成されている。さらにまた、平面3bは、その面法線が湾曲板2の前記湾曲方向に平行となるように形成されている。なお、湾曲面3aと平面3bとの境界位置をどこに取るかについては、コンセプトに応じて種々変更することができ、例えば、湾曲面3aの後側の端部についての湾曲板2の弦方向(
図3の横方向)における位置を、湾曲板2の弦方向の長さに対して湾曲板2の前側の端部から測って1/4の長さとなるような位置にしてもよい。
【0028】
さらにまた、
図3に示すように、膨出構造4は、湾曲板2の湾曲方向側の表面2aの前記所定範囲の領域上にその前後の両端部を介して固定された曲板状の板状部材によって構成されている。この板状部材は、アルミニウム等の金属からなるものであってもよい。この場合、湾曲板2を金属によって形成する場合には、板状部材が溶接によって湾曲板2に安定的に固定されていてもよい。
【0029】
また、膨出構造4および膨出面3における高さ方向(
図1において縦方向、
図2において紙面垂直方向)の寸法は、湾曲板2における高さ方向の寸法と同一であってもよいし、あるいは、湾曲板2の高さ方向の寸法よりも短くてもよい。
【0030】
そして、このような構成によれば、膨出構造4の整流作用によってオッターボードに発生する渦を十分に低減させることができ、トロール網の拡網力を十分に向上させることができる。また、膨出構造4の形成領域を、渦の発生を低減させるために好ましい領域にすることができるとともに、膨出面3の形状を、渦の発生を低減させるために好ましい形状にすることができる。さらに、膨出構造を簡便に形成することができる。
【0031】
上記構成に加えて、さらに、本実施形態におけるオッターボード1は、
図1および
図2に示すように、湾曲板2における曳航状態において鉛直上方側となる上側の端部(
図1においては上端部、
図2においては紙面手前側の端部)に、湾曲板2に直交するような板状の天板5が形成されている。ここで、
図2に示すように、天板5は、湾曲板2における上側の端部に対して前記湾曲方向(
図2における上方向)およびこれに抗する方向(
図2における下方向)に延出するようにして、その全体的な平面形状がほぼ蒲鉾形状に形成されている。
【0032】
さらに、
図2に示すように、天板5における前記所定範囲の領域に対応する部位、すなわち、天板5における前側の半部(
図2における右半部)についての前記湾曲方向への延出幅は、天板5における前記所定範囲の領域に対応する部位以外の部位、すなわち、天板5における後側の半部(
図2における左半部)についての前記湾曲方向への延出幅以上とされている。なお、
図2に示すように、天板5における前側の半部は、その湾曲方向側の端部が、膨出面3に沿った形状を有するようにして膨出面3よりも前記湾曲方向側に延出されている。また、
図2に示すように、天板5における後側の半部は、その湾曲方向側の端部が、湾曲板2の表面2aにおける後側の半部に沿った形状を有している。さらに、天板5における前記湾曲方向に抗する方向側の端部(
図2における下端部)は、
図2において湾曲板2の弦をなしている。また、天板5は、湾曲板2と同一材料によって形成されたものであってもよい。
【0033】
このような構成によれば、天板5の整流作用によって渦の発生をさらに低減させることができ、トロール網の拡網力をより向上させることができる。
【0034】
上記構成に加えて、さらに、本実施形態におけるオッターボード1は、
図1および
図4に示すように、湾曲板2における曳航状態において鉛直下方側となる下側の端部(
図1においては下端部、
図2においては紙面奧側の端部)に、湾曲板2に直交するような板状の底板7が形成されており、この底板7は、
図1および
図2に示した天板5と平面形状が同一形状とされている。
【0035】
すなわち、底板7は、湾曲板2における下側の端部に対して前記湾曲方向(
図4における下方向)およびこれに抗する方向(
図4における上方向)に延出するようにして、その全体的な平面形状がほぼ蒲鉾形状に形成されている。さらに、
図4に示すように、底板7における前記所定範囲の領域に対応する部位、すなわち、底板7における前側の半部(
図4における右半部)についての前記湾曲方向への延出幅は、底板7における前記所定範囲の領域に対応する部位以外の部位、すなわち、底板7における後側の半部(
図4における左半部)についての前記湾曲方向への延出幅以上とされている。また、
図4に示すように、底板7における前側の半部は、その湾曲方向側の端部が、膨出面3に沿った形状を有するようにして膨出面3よりも前記湾曲方向側に延出されている。また、
図4に示すように、底板7における後側の半部は、その湾曲方向側の端部が、湾曲板2の表面2aにおける後側の半部に沿った形状を有している。さらに、底板7における前記湾曲方向に抗する方向側の端部(
図4における上端部)は、
図4において湾曲板2の弦をなしている。また、底板7は、湾曲板2と同一材料によって形成されたものであってもよい。
【0036】
上記に示した膨出構造4、天板5と底板7の整流作用の組み合わせにより、トロール網の拡網力を大幅に向上させることができる。
【0037】
その他の構成として、
図1および
図3に示すように、湾曲板2における前記湾曲方向側の表面2aに抗する方向側の表面2bであって、湾曲板2における上側の端部と下側の端部との中間位置よりも若干上側の位置には、天板5および底板7に平行な中板8が、前記湾曲方向に抗する方向に延出するように形成されている。この中板8には、
図3に示すように、中板8に直交し、かつ、前側に向かうにしたがって前記湾曲方向に抗する方向に向かうような傾きを有する板状のワープ取付部10が形成されており、このワープ取付部10には、ワープを取付けるための複数個(
図1においては3個)の貫通孔11が、互いに鉛直方向に所定の間隔を隔てるようにして穿設されている。なお、この貫通孔11は、曳航時におけるオッターボード1の曳点となるわけであるが、この貫通孔11についての湾曲板2の弦方向における位置は、湾曲板2の弦方向の長さ(すなわち湾曲板2の全長)に対して湾曲板2の前側の端部から測って30%〜40%の長さとなるような位置にすることが好ましい。
【0038】
また、
図2に示すように、天板5の後側の半部における前記湾曲方向側の端縁部上には、オッターペンネントを取付けるための複数個(
図2においては5個)の貫通孔12が、湾曲板2の孤に沿って所定の間隔を隔てるようにして穿設されている。なお、
図2に示すように、天板5の下面に補強板13を設け、この補強板13を貫通孔12が貫通するようにしてもよい。
【0039】
さらに、
図4に示すように、底板7の後側の半部における前記湾曲方向側の端縁部上にも、オッターペンネントを取付けるための複数個(
図4においては5個)の貫通孔14が、湾曲板2の孤に沿って所定の間隔を隔てるようにして穿設されている。
【0040】
さらにまた、
図1に示すように、底板7の上面には、オッターボード1を海中に沈降させるための板状の加重鋼15が着脱可能に配設されている。
【0041】
そして、このような本実施形態のオッターボード1は、
図5に示すように、トロール船17の左舷側から繰り出されるワープ18を貫通孔11に取付けることによってトロール船17と連結されるとともに、トロール網20に連結されたオッターペンネント22を貫通孔12,14に取付けることによってトロール網20と連結された状態としてトロール船17によって曳航されるようになっている。なお、
図5に示すように、オッターペンネント22とトロール網20との間には、ハンドロープ21およびオッターペンネント22とハンドロープ21とを中継するシャックル等からなる中継部材23が介在されている。
【0042】
また、
図5に示すように、曳航時には、本実施形態の左舷側のオッターボード1と
図2乃至
図4において上下に対称な形状を有する右舷側のオッターボード1’が、右舷側から繰り出されるワープ18を介してトロール船17と連結されるとともに、オッターペンネント22およびハンドロープ21等を介してトロール網20に連結された状態としてトロール船17によって曳航されるようになっている。
【0043】
そして、このようなトロール船17による曳航によって、左舷側のオッターボード1は、この左舷側のオッターボード1によるトロール網の網口25の展開方向となる左方向(曳航方向に向かって左側の方向)に移動することによって、網口25を左方向に展開させるようになっている。
【0044】
また、右舷側のオッターボード1’は、この右舷側のオッターボード1’によるトロール網の網口25の展開方向となる右方向に移動することによって、網口25を右方向に展開させるようになっている。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例として、本実施形態のオッターボード1に対して行った性能評価試験の試験結果について説明する。
【0046】
本実施例においては、本発明の二種類のオッターボードの模型として、前述した実施形態のオッターボード1(膨出構造4、天板5および底板7をすべて備えたもの)の模型と、天板5および底板7のみを備えたものの模型とを作成して拡網力(揚力)特性を調べ、その後、前述した実施形態のオッターボード1の実物を用いて従来のオッターボードとの比較試験(性能評価試験)を行った。
【0047】
ここで、まず、拡網力特性試験においては、回流水槽において、六分力検力計に本発明のオッターボードの模型を取り付け、流水中において当該模型にかかる揚力を計測した。この拡網力特性試験の結果として、流れに対する迎角(曳網方向となす角)と揚力係数の関係を
図6に示す。なお、
図6には、
図7に示す従来から採用されている複葉型のオッターボード27の模型に対して本発明の二種類のオッターボードの模型と同様の拡網力特性試験を行った試験結果の一例も同時に記している。
【0048】
オッターボードの拡網力は、次式の揚力として定義される。
L=(1/2)CLρSV2 (1)
但し、(1)式におけるLは拡網力(揚力)〔N〕である。また、(1)式におけるCLは揚力係数〔無次元量〕であり、この揚力係数は、オッターボードに固有の係数とみなすことができる。さらに、(1)式におけるρは水の密度〔kg/m
3〕である。さらにまた、(1)式におけるSは、オッターボードの投影面積〔m2〕であり、この投影面積Sは、湾曲板の表面積に比例した値とみなすことができる。また、(1)式におけるVは、流速〔m/s〕であり、この流速は、トロール船によるオッターボードの曳航速度と同一とみなすことができる。
【0049】
すなわち、トロール網の拡網力は、揚力係数に比例し、また、湾曲板の面積にも比例する。
【0050】
本発明によるオッターボードの揚力係数は、従来の複葉型オッターボードと比較してかなり大きな値を示している。
【0051】
また、
図6に示すように、本発明のオッターボードは、膨出構造7を設けない場合(天板5および底板7のみの場合)においても十分な効果があり、天板5および底板7に加えて膨出構造7を設ければ最も大きな効果が得られる。
【0052】
次に、本実施例においては、比較試験として、前述の拡網力特性試験と同様に、
図7に示す従来から採用されている複葉型のオッターボード27に対して、本実施形態のオッターボード1(膨出構造4、天板5および底板7をすべて備えたもの)との性能評価試験を実物により行った。なお、
図7のオッターボード27は、左舷側のオッターボードであり、右舷側のオッターボードは、図示はしないが、
図7に示すものと対称的な形状を有することになる。
【0053】
ここで、
図7に示すオッターボード27は、2枚の湾曲板28を有しており、これらの湾曲板28は湾曲方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。なお、これらの湾曲板28における
図7の紙面手前側の端部は、曳航状態において曳航方向の前方側となる前側の端部とされており、紙面奥側の端部は、曳航状態において曳航方向の後方側となる後側の端部とされている。また、両湾曲板28の
図7における上端部には、両湾曲板28の湾曲面に沿った外形を有する天板29が固定されている。さらに、両湾曲板28の
図7における下端部には、両湾曲板28の湾曲面に沿った外形を有する底板30が固定されている。さらに、両湾曲板28の互いに対向する湾曲面の間には、上下2枚の中板31,32が固定されている。さらに、中板31,32の前端部には、板状のワープ取付部34が形成されており、このワープ取付部34には、ワープ18(
図5参照)を取付けるための貫通孔35が穿設されている。さらにまた、中板31,32の後端部には、一対の板状のペンネント取付部36が形成されており、これらのペンネント取付部36には、オッターペンネント22(
図5参照)を取付けるための貫通孔37がそれぞれ穿設されている。このような比較例のオッターボード27は、
図5に示したオッターボード1と同様に、トロール船17の左舷側から繰り出されるワープ18を貫通孔35に取付けることによってトロール船17と連結されるとともに、トロール網20に連結されたオッターペンネント22を貫通孔37に取付けることによってトロール網20と連結された状態としてトロール船17によって曳航されるようになっている。
【0054】
また、本性能評価試験においては、本実施形態のオッターボード1および比較例のオッターボード27を、いずれもステンレス製とした。
【0055】
さらに、本性能評価試験において、本実施形態のオッターボード1は、湾曲板2の高さ方向(
図1における縦方向)の寸法を湾曲板2の弦方向(
図1における横方向)の寸法で除した値である湾曲板2のアスペクト比を1とした。具体的には、湾曲板2の高さ方向の寸法および弦方向の寸法をいずれも1000〔mm〕とした。なお、これによるオッターボード1の湾曲板2の前記湾曲方向への投影面積は1.0〔m
2〕となる。また、膨出面3における湾曲面3aの後側の端部についての湾曲板2の弦方向における位置を、湾曲板2の弦方向の長さに対して湾曲板2の前側の端部から測って1/4の長さとなるような位置に設定し、さらに、貫通孔11についての湾曲板2の弦方向における位置を、湾曲板2の前側の端部から測って325〔mm〕となるような位置に設定した。
【0056】
本性能評価試験において、比較例のオッターボード27は、2枚の湾曲板28のアスペクト比をいずれも2とした。具体的には、両湾曲板28とも、高さ方向の寸法を1200〔mm〕とし、弦方向の寸法を600〔mm〕とした。なお、これによるオッターボード27の両湾曲板28の湾曲方向への投影面積の合算値は1.44〔m
2〕となる。
【0057】
次に、本性能評価試験の具体的な内容について説明する。本実施例においては、
図5に示したようにオッターボード1(比較例のオッターボード27についても同様)をトロール網20とともに曳航する際における曳航速度〔knot〕と左舷側および右舷側の両オッターボード1,1’間の左右の間隔(以下、オッターボード間隔と称する)〔m〕との関係を調べる性能評価試験を行った。
【0058】
性能評価試験は、ワープ18の長さは100〔m〕とし、ワープ18の直径は12〔mm〕とした。
【0059】
次に、性能評価試験の試験結果を
図8に示す。
【0060】
図8に示すように、本実施形態のオッターボード1の方が、比較例のオッターボード27に比べて曳航速度に対応するオッターボード間隔の値が大きいことが分かった。ここで、オッターボード間隔の値が大きいほどトロール網20の網口25が左右に展開され易いことになるため、本実施形態のオッターボード1の方が、比較例のオッターボード27に比べて拡網力が大きく、トロール網20の拡網に適すると言うことができる。なお、一般的に、複葉型のオッターボードは、湾曲板が1枚のオッターボードに比べて拡網に適しているが、このような複葉型のオッターボード27よりも本実施形態のオッターボード1の方が性能評価試験において良好な結果が得られたのは、本実施形態におけるオッターボード1が、膨出面3によって剥離渦の発生を十分に抑制していることと、天板5および底板7による総合的な効果であると推定される。
【0061】
ここで、本実施形態におけるオッターボード1は、このオッターボード1から膨出構造4、天板5および底板7を除外した従来型のオッターボードに比べて、揚力係数が約1.6倍になることが分かっている。このことは、本実施形態のオッターボード1の方が、従来型のオッターボードに比べて所定の拡網力を得るために求められるオッターボードの湾曲板の面積が小さくて済むことを示している。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、拡網力の向上に加えて、更に、オッターボードの小型化を図ることができ、ひいては、トロール船のデッキにおける漁具の操作が容易となり、操業の効率化および省人省力化が可能となり、漁業経営の向上に寄与することができる。また、オッターボードの原材料の減少によってオッターボードを安価に製造することができ、コストを削減することができる。
【0063】
なお、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、前述した実施形態におけるオッターボード1は、膨出構造4、天板5および底板7のすべてを備えているが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、膨出構造4、天板5および底板7の少なくとも1つを備えればよく、例えば、
図6に示したように、天板5および底板7のみを備えるようにしてもよいし、あるいは、膨出構造4のみを備えるようにしてもよい。