特許第6476937号(P6476937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476937
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】コンロッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 7/02 20060101AFI20190225BHJP
   C21D 8/00 20060101ALI20190225BHJP
   F16C 7/02 20060101ALI20190225BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20190225BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20190225BHJP
   B21K 1/14 20060101ALI20190225BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   C21D7/02 D
   C21D8/00 A
   F16C7/02
   C22C38/00 301Z
   C22C38/60
   B21K1/14 Z
   B21J5/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-20092(P2015-20092)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-141864(P2016-141864A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上西 健之
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−014080(JP,A)
【文献】 特開平02−137636(JP,A)
【文献】 特開2006−300081(JP,A)
【文献】 特開平09−310146(JP,A)
【文献】 特開2005−014078(JP,A)
【文献】 特開2005−121056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 7/00−8/08
F16C 3/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.15〜0.60%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.30〜2.00%、Cr:1.50%以下、Al:0.001〜0.060%、V:0〜0.50%、N:0.0250%以下、S:0.10%以下、Ca:0〜0.01%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼材を準備し、
該鋼材を熱間鍛造して、大端部と小端部とそれらの間に位置するコラム部とを有するコンロッドを形成し、
その後、上記コラム部の軸方向に冷間又は温間において圧縮加工を施して、2%以上10%未満の軸方向永久歪みを上記コラム部に付与することを特徴とするコンロッドの製造方法。
【請求項2】
上記圧縮加工の後に、上記コンロッドを50℃以上300℃以下の温度に15〜60分間保持する時効処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のコンロッドの製造方法。
【請求項3】
上記圧縮加工は、上記熱間鍛造後に上記コンロッドが200〜400℃の範囲に冷却された状態の際に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンロッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた座屈強度を備えたコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるコンロッドには、燃費向上のための軽量化が要求されている。軽量化は、薄肉化することによって実現可能であるが、単純な薄肉化は座屈強度を低下させてしまう。そのため、従来から、素材の鋼の高強度化を図った上で、薄肉化することが検討されてきた。
【0003】
一方、鋼の高強度化は、通常、製造時の被削性の低下に繋がるため、V(バナジウム)等の高価な合金元素の添加により、高強度化と被削性の確保が模索されてきた。しかしながら、高価な合金元素の添加は、当然、コストの増加に繋がり、得られるコンロッドは従来よりも高価なものになってしまう。そこで、コスト増を押さえつつ、座屈強度の確保と製造時の被削性を確保することが可能なコンロッドの製造方法が検討されてきた。従来のコンロッド製造方法としては、例えば、次の先行技術文献に記載のように、コンロッド部品形状に鍛造した後、コンロッド部品の中でも最も強度が要求される部位であるIセクション部(コラム部)に、冷間又は温間にて断面形状の矯正加工としてのコイニングを施し、当該コイニングによってIセクション部の強度も向上させる試みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−14078号公報
【特許文献2】特開平10−168540号公報
【特許文献3】特開平9−310122号公報
【特許文献4】特開2003−55714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術文献に記載されたコンロッドの製造方法にて提案されているコイニングによる強度向上方法は、コンロッドの軸方向に対して直角方向への加工によって行うものである。即ち、前記特許文献1の図3に記載されているように、軸方向に直交する方向の断面積が減少する方向への加工を施すものである。このような方向への加工を行った場合、加工硬化等の強度向上効果が若干得られるものの、その効果はコンロッドの厚み方向の表層部分に限定されることとなる。即ち、図8に示すごとく、コイニング加工による強度向上効果は、コラム部13の断面形状で示すと、コイニング加工前の状態(A)からコイニング加工後の状態(B)になった際に強く加工を受ける部位である表層部分(ハッチング領域S)及びその近傍に限定されることとなる。この結果、この表層部分の加工硬化によって耐力向上効果は若干得られるものの、断面積の減少の影響により、部品自体が耐えうる最大軸方向力(座屈しない限界の軸方向力)は、期待通りに向上させることができなかった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、コストの大幅増を伴うことなく、製造時の被削性を十分に確保し、かつ、座屈強度に優れたコンロッドを製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、質量%で、C:0.15〜0.60%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.30〜2.00%、Cr:1.50%以下、Al:0.001〜0.060%、V:0〜0.50%、N:0.0250%以下、S:0.10%以下、Ca:0〜0.01%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼材を準備し、
該鋼材を熱間鍛造して、大端部と小端部とそれらの間に位置するコラム部とを有するコンロッドを形成し、
その後、上記コラム部の軸方向に冷間又は温間において圧縮加工を施して、2%以上10%未満の軸方向永久歪みを上記コラム部に付与することを特徴とするコンロッドの製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記コンロッドの製造方法においては、高価な合金元素をあまり多く含まない上記特定の化学成分を有する鋼材を用いて製造することによって、製造コストの増加を防止することができる。さらに、上記特定の化学成分を採用することによって、切削加工時における被削性の悪化を防止することができる。
【0009】
そして、注目すべきことは、成形後のコンロッドのコラム部に、その軸方向に冷間又は温間において圧縮加工を施して、2%以上10%未満の軸方向の永久歪みを上記コラム部に付与することである。この圧縮加工は、前述した特許文献に記載された方法とは異なり、断面全体に永久歪みを与えるものであるため、断面全体の加工硬化による強度向上効果を得ることができる。それに加え、圧縮加工によって断面積も若干増加させることができるため、コラム部の最大軸方向力を確実に向上させることができる。
【0010】
それ故、本発明によれば、コスト増を押さえつつ、座屈強度の確保と製造時の被削性を確保することが可能なコンロッドの製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における、コンロッド及びその圧縮加工方法を示す説明図。
図2】実施例1における、永久歪み(%)と0.2%耐力(MPa)との関係を示す説明図。
図3】実施例1における、永久歪み(%)と0.2%耐力向上率(%)との関係を示す説明図。
図4】実施例2における、時効温度(℃)と0.2%耐力(MPa)との関係を示す説明図。
図5】実施例2における、時効温度(℃)と0.2%耐力向上率(%)との関係を示す説明図。
図6】実施例3における、温間加工温度(℃)と0.2%耐力(MPa)との関係を示す説明図。
図7】実施例3における、温間加工温度(℃)と0.2%耐力向上率(%)との関係を示す説明図。
図8】従来における、コイニング処理によるコラム部の断面形状について、(a)コイニング前の状態、(b)コイニング後の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のコンロッドの製造方法に適用すると効果的な上記コンロッド用の鋼材の各化学成分の限定理由について説明する。
C:0.15〜0.60%、
C(炭素)は、強度の確保のために必要な元素であり、特にVを添加する場合には、熱間鍛造後の冷却時にVと結合して炭化物となってフェライト中に析出し、析出強化により強度を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、C含有量が上記上限値よりも多い場合には、被削性が低下し、鍛造後の所定形状への機械加工が困難になるおそれがある。一方、C含有量が上記下限値よりも少ない場合には、上述したC含有による効果が十分に得られないおそれがある。
【0013】
Si:0.01〜1.50%、
Si(ケイ素)は、製鋼時の脱酸材として不可欠な元素であり、0.01%以上の含有が必要である。しかしながらSiの含有量が上記上限値よりも多い場合には、硬さが高くなり過ぎて被削性が悪化するおそれがあるだけでなく、表面が脱炭されやすくなり、疲労強度低下の原因となる。一方、Siの含有量が上記下限値よりも低い場合には、上述したSi含有による効果が十分に得られないおそれがある。
【0014】
Mn:0.30〜2.00%、
Mn(マンガン)は、製鋼時の脱酸並びに鋼の強度、靱性バランスを調整するために有効な元素であり、0.30%以上の含有が必要である。しかし、Mn含有量が上記上限値よりも多い場合には、ベイナイト組織が生じやすくなり、ベイナイト組織が生じると耐力が低下し、最大軸方向力低下の原因となる。したがって、その上限を2.00%とした。
【0015】
Cr:1.50%以下、
Cr(クロム)は、Mnと同様に鋼の強度、靱性バランスを調整するために有効な元素である。Cr含有量が上記上限値よりも多い場合には、Mnの場合と同様にベイナイト組織が生じやすくなり、耐力低下の原因となるおそれがある。
【0016】
Al:0.001〜0.060%、
Al(アルミニウム)は、脱酸材として必要な元素である。しかしながら、Al含有量が上記上限値よりも多い場合には、アルミナ系の介在物が増加し、被削性が低下するおそれがある。一方、Al含有量が上記下限値よりも少ない場合には、上記の効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0017】
V:0〜0.50%(0%を含む)、
V(バナジウム)は、熱間鍛造後の冷却時に炭化物となってフェライト中に析出し、析出強化により耐力を向上させる効果のある元素である。したがって、特に強度要求レベルの高い用途に適用する際に添加すると好ましい任意添加元素である。ただし、Vは高価な元素であるため、その効果は狙いの強度を確保可能な範囲で少量とするのが望ましい。そして、0.50%を超えるとコスト増に見合う強度向上効果が得られなくなるので、上限を0.50%とした。
【0018】
N:0.0250%以下、
N(窒素)は、大気中に多く存在し、大気溶解時の混入が避けられない元素であるが、その量が多いと強度向上に効果のないV窒化物が増加し、V添加による強度向上効果が小さくなる。したがって、Vを添加する場合にはその含有量を低め(0.0100%以下)とするのが好ましい。Vを添加しない場合でも極端にN量が多い場合には鋼塊品質上好ましくないため、上限を0.0250%とした。
【0019】
S:0.10%以下、
S(硫黄)は被削性向上に有効であるため、本発明の成分範囲の中でもC、Mn、Cr、V等の強度向上に寄与する元素を多く添加し高強度を得ようとする場合には、少なくとも0.03%以上添加して、必要とする被削性が得られるように調整することが好ましい。ただし、S含有量が多すぎる場合には、熱間鍛造後に割れが生じるおそれがあるため、上限は0.10%とするのがよい。
【0020】
Ca:0〜0.01%(0%を含む)、
Ca(カルシウム)は、被削性向上に有効であるため、Sだけでなく、Caの被削性向上効果も同時に得たい場合に加えることができる任意添加元素である。ただし、0.01%を超えてCaを含有させても効果が飽和するため、上限を0.01%とした。
【0021】
次に、上記鋼材をコンロッドに成形する熱間鍛造は、通常行われる条件で実施することができる。たとえば、鋼材の加熱温度は、1150℃以上とし、鍛造時の鋼材の温度は900℃以上とすることが好ましい。
【0022】
また、熱間鍛造後のコンロッドの冷却過程においては、コンロッドの温度が800℃〜600℃の範囲にある間の平均冷却速度を300℃/分以下に制御することが好ましい。これにより、冷却速度が速すぎることによって生じるベイナイト組織の生成を抑制することができ、ベイナイト組織の存在に起因する耐力の低下や被削性の劣化を防止することができる。一方、冷却速度が遅すぎると、生産性が低下するだけでなく、強度が低下するので、使用する鋼の成分と狙いとする強度に応じて適切な速度に調整して製造することが好ましく、具体的には、上記平均冷却速度を5℃/分以上とすることが好ましい。
【0023】
次に、上記圧縮加工は、冷間又は温間において、コンロッドのコラム部の軸方向に向けて行う。すなわち、コンロッド使用時において最も荷重がかかる方向に沿って、コラム部に圧縮加工を施す。また、圧縮加工は、コラム部に付与される軸方向永久歪みが2%以上10%未満となるように行う。これにより、コンロッドの座屈強度を向上させることが可能となる。この永久歪みが2%未満の場合には、座屈強度向上効果が十分に得られないおそれがあり、一方、10%を超える永久歪みを得ようとする場合には圧縮加工時にコラム部に座屈が生じてしまうおそれがある。
【0024】
ここで、本願における軸方向永久歪みは、圧縮加工前のコンロッドのコラム部の軸方向における大端部に近い位置と小端部に近い位置とにそれぞれ標点を設け、その標点間距離の変化量を測定することによって求めた値とする。
【0025】
また、上記圧縮加工は、上述したごとく、冷間又は温間で行うことができ、最終的に上記範囲の永久歪みが生じる種々の条件を選択可能である。温間加工の例としては、例えば、上記熱間鍛造後、室温まで冷却される途中の上記コンロッドの温度が200〜400℃の範囲の状態にある際に行うことができる。この場合には、冷間加工の場合と比べると、圧縮加工による効果に加えて鍛造熱による時効効果による強度向上効果を同時に得ることができるため、座屈強度の向上効果を高めることができる。
【0026】
また、圧縮加工を行う際には、例えば、後述する実施例に示したような治具を用いて行うことが好ましい。
【0027】
また、上記圧縮加工の後に、上記コンロッドを50℃以上300℃以下の温度に15〜60分間保持する時効処理を行うことが好ましい。これにより、コンロッドの座屈強度をさらに向上させることができる。
【0028】
なお、切削加工は、通常最終工程で実施する。例えば、上記時効処理を追加した場合には、その後に実施する。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
上記コンロッドの製造方法に係る実施例につき、比較例と共に説明する。本例では、表1に示すごとく、成分組成が異なる3種類の鋼材を準備して、表2に示す複数の製造条件でコンロッドを作製し、その機械的性質を評価した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
本例の基本的な製造工程は、準備した鋼材を1150℃〜1250℃に加熱後、1000℃以上の状態で鋼材に熱間鍛造を施して、図1に示すごとく、大端部11と小端部12とそれらの間に位置するコラム部13とを有するコンロッド1を形成し、室温まで放冷後、治具21、22を介して、コラム部13の軸方向に冷間において圧縮加工を施して、所定の軸方向永久歪みをコラム部13に付与するというものである。
【0033】
本例での圧縮加工は、上述したごとく冷間(室温)で行い、圧縮加工によって与えた永久歪みが表2に示す値となる条件とした。治具21、22は、それぞれ、大端部11、小端部12を収容可能な挿入穴210、220を有するものであり、これらの挿入穴210、220にコンロッド1を挿入した状態で、プレス装置(図示略)によって圧縮する。その結果、コラム部13には、その軸方向に圧縮加工が加えられることとなる。この場合、圧縮方向の歪みは断面全体に均一に付与され、均等に加工硬化による強度向上効果が得られる。
【0034】
なお、従来例のC10〜C12の条件は、コラム部13に対して軸方向の圧縮加工ではなく、従来と同様の軸方向に直交する方向の圧縮加工を加えた。なお、この場合には、本発明の実施例とは異なり、断面内の圧縮歪み分布は一様ではなく、表面近くに偏った分布となる。
【0035】
圧縮加工を終えた各コンロッドには、切削加工を施すことなく、圧縮加工後の永久歪みの測定、及び機械的性質の評価を行った。
【0036】
永久歪みの測定は、E1〜E9及びC1〜C9については、コラム部13の軸方向における大端部11に近い位置と小端部12に近い位置とにそれぞれ標点を設け、その標点間距離の変化量を測定することによって求めた。また、C10〜C12については、コラム部13の軸方向に直交する方向の歪みを採用し、具体的には、高さ変化(図8におけるH1からH2への減少率)を永久歪みの値とした。これらの値は、表2に示す。
【0037】
機械的性質は、コンロッド1の大端部11と小端部12に機械加工を施し、これら大端部11及び小端部12をそれぞれ治具21及び22に挿入し、圧縮試験を行うことによって評価した。圧縮試験によって得られた0.2%耐力は、コンロッドの座屈強度に直接的に影響する特性である。さらに、0.2%耐力の値については、同じ鋼種の比較例における圧縮加工を行わなかった例(C1、C4またはC7)の結果を基準にして向上率を計算した。0.2%耐力の値と向上率とは、表2に示した。
【0038】
また、0.2%耐力の値と向上率とは、図2及び図3にも示した。これらの図は、横軸に軸方向の永久歪み(圧縮率)%をとり、縦軸に、0.2%耐力または向上率をとったものである。
【0039】
表2並びに図2及び図3から知られるごとく、永久歪みが2%以上10%未満となるように圧縮加工を施したE1〜E9の条件の場合には、比較例(C1、C4またはC7)と比べて20%以上の耐力向上率が見られ、十分に座屈強度が向上していることが分かる。また、表及び図には示していないが、軸方向に圧縮加工することにより断面積が若干増加するため、0.2%耐力を示した際の荷重で比較すると30%以上の向上が見られた。
【0040】
一方、永久歪みが2%未満あるいは10%以上の比較例(C1〜C9)や従来例(C10〜C12)は、耐力の向上があまり見られなかった。
【0041】
より具体的には、C2、C5及びC8の場合には、圧縮加工による永久歪みが2%未満であるため、耐力向上効果が十分に得られなかった。また、C3、C6及びC9の場合には、圧縮加工による永久歪みが10%以上となったことにより、座屈が生じた影響で耐力向上効果が半減することがわかった。また、C10〜C12は、前記した特許文献に記載の通り、コイニングと呼ばれる軸方向に直交する圧縮加工を行ったものであるが、この場合、上述の通り、塑性歪みはコラム部の厚み方向の表層部分に集中し、かなり大きな加工を加えないと断面全体が加工硬化しないこと、大きな加工を加えると断面積が減少してしまうことから、座屈しない限界の軸方向荷重はほとんど増加しないか、場合によっては減少する場合もある(C12の場合には6%減少)。したがって、従来のコラム部の軸方向に直交する方向への圧縮加工では、耐力向上効果があまり得られず、座屈強度を向上させることが困難であることが分かった。
【0042】
以上説明した通り、本発明ではコンロッド部品において、最も強度を必要とする部位であるコラム部を軸方向に圧縮加工するが、コンロッドの製造時にコラム部は圧縮加工後に機械加工することはない。機械加工される部位はクランクやピストン部品を固定する大端部と小端部に限定される。したがって、上記圧縮加工によりコラム部が加工硬化した場合でも、コラム部の機械加工は不要であるため切削性への影響がなく、また、機械加工される大端部や小端部には、上記圧縮加工により塑性変形しないため、加工硬化により被削性が低下することがない。そのため、本発明の方法により製造したコンロッド部品は優れた強度を有する割に製造上問題とならない被削性を容易に確保することができる。
【0043】
(実施例2)
本例では、実施例1と同じ基本的な製造工程の採用し、圧縮加工の後に、コンロッドを所定温度に30分間保持する時効処理を追加したものである。時効処理の温度条件は、表3に示す。その他の製造条件及び評価方法は実施例1の場合と同じであり、これらの結果は、表3並びに図4及び図5に示す。これらの図は、横軸に時効温度(℃)をとり、縦軸に、0.2%耐力または向上率をとったものである。
【0044】
【表3】
【0045】
表3並びに図4及び図5から知られるごとく、時効温度が300℃以下で適正な場合には、時効処理がない場合と比べてさらに耐力の向上が見られる。一方、時効温度が300℃を超えるC13については、耐力向上効果が低下した。これは、時効温度が高すぎることにより回復・再結晶が生じたためと考えられる。この結果から、300℃以下の温度で時効処理を追加することが有効であることが分かる。
【0046】
(実施例3)
本例では、実施例1の基本的な製造工程における圧縮加工を、熱間鍛造後の冷却過程で行い、所定の温度の温間加工に変更した例である。温間加工の温度条件は、表4に示す。その他の製造条件及び評価方法は実施例1の場合と同じであり、これらの結果は、表4並びに図6及び図7に示す。これらの図は、横軸に温間加工温度(℃)をとり、縦軸に、0.2%耐力または向上率をとったものである。
【0047】
【表4】
【0048】
表4並びに図6及び図7から知られるごとく、温間加工の温度が少なくとも200℃〜400℃の範囲内である場合には、冷間加工(室温)で圧縮加工する場合よりも耐力向上効果が高まることがわかる。一方、圧縮加工の温度が500℃のC14については、耐力向上効果が大幅に低下した。これは、温間加工の温度が高すぎることにより回復・再結晶が生じたためと考えられる。この結果から、圧縮加工を温間加工で行う場合には、少なくとも、200℃〜400℃の範囲内で行うことが好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0049】
1 コンロッド
11 大端部
12 小端部
13 コラム部
21、22 治具
210、220 挿入穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8