(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含フッ素ポリマー(H)が、スルホン酸基を有し、環構造を有しない構成単位(A)と、スルホン酸基を有さず、環構造を有する構成単位(B)とを有する、請求項1または2に記載の液状組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書においては、式(A1)で表される構成単位を、構成単位(A1)と記す。他の式で表される構成単位も同様に記す。
また、式(a1)で表されるモノマーを、モノマー(a1)と記す。他の式で表されるモノマーも同様に記す。
【0020】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「ポリマー」とは、複数の構成単位から構成された構造を有する化合物を意味する。
「含フッ素ポリマー」とは、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたポリマーを意味する。
「構成単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。構成単位は、モノマーの重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「モノマー」とは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「スルホン酸基」は、−SO
3−H
+および−SO
3−M
+(ただし、M
+は、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。)を包含する。
【0021】
<液状組成物>
本発明の液状組成物は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の電極を構成する触媒層の形成に用いられる液状組成物である。
本発明の液状組成物は、液状媒体と、スルホン酸基および環構造を有する含フッ素ポリマー(H)と、3価または4価のセリウムイオンとを含む。
【0022】
(液状媒体)
液状媒体は、室温(25℃)にて液体であり、他の成分と反応することがなく、かつ含フッ素ポリマー(H)を分散または溶解し得る化合物である。
【0023】
液状媒体は、水酸基を有する有機溶媒を含むことが好ましい。
水酸基を有する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。
水酸基を有する有機溶媒の炭素数は1〜4であることが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール等が挙げられる。
水酸基を有する有機溶媒の炭素数は2〜3であることがより好ましく、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールがさらに好ましい。
水酸基を有する有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
液状媒体は、さらに水を含むことが好ましい。
水の割合は、液状媒体(100質量%)のうち、10〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましい。水の割合を増やすことにより、液状媒体に対する含フッ素ポリマー(H)の分散性を向上できる。
水酸基を有する有機溶媒の割合は、液状媒体(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
【0025】
(含フッ素ポリマー(H))
含フッ素ポリマー(H)は、スルホン酸基および環構造を有する含フッ素ポリマーである。含フッ素ポリマー(H)としては、化学的な耐久性に優れる点から、炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたペルフルオロポリマーが好ましい。
含フッ素ポリマー(H)としては、スルホン酸基の陽イオンがH
+である酸型と、スルホン酸基の陽イオンが金属イオン、アンモニウムイオン等である塩型とがある。触媒層に含まれる含フッ素ポリマー(H)の場合、通常、酸型の含フッ素ポリマー(H)が用いられる。スルホン酸基の陽イオンの一部は2価以上の金属イオンで置換されていてもよい。
【0026】
含フッ素ポリマー(H)としては、たとえば、下記の含フッ素ポリマー(H1)、含フッ素ポリマー(H2)、含フッ素ポリマー(H3)、含フッ素ポリマー(H4)、含フッ素ポリマー(H5)等が挙げられる。本発明の効果が充分に発揮される点から、含フッ素ポリマー(H1)が好ましい。
含フッ素ポリマー(H1):構成単位(A)および構成単位(B)を必須の構成単位として有し、必要に応じて構成単位(D)を有する共重合体。
含フッ素ポリマー(H2):構成単位(C)を必須の構成単位として有し、必要に応じて構成単位(D)を有する共重合体。
含フッ素ポリマー(H3):構成単位(A)および構成単位(C)を必須の構成単位として有し、必要に応じて構成単位(D)を有する共重合体。
含フッ素ポリマー(H4):構成単位(B)および構成単位(C)を必須の構成単位として有し、必要に応じて構成単位(D)を有する共重合体。
含フッ素ポリマー(H5):構成単位(A)、構成単位(B)および構成単位(C)を必須の構成単位として有し、必要に応じて構成単位(D)を有する共重合体。
構成単位(A):スルホン酸基を有し、環構造を有しない構成単位。
構成単位(B):スルホン酸基を有さず、環構造を有する構成単位。
構成単位(C):スルホン酸基および環構造を有する構成単位。
構成単位(D):スルホン酸基および環構造を有しない構成単位。
【0027】
含フッ素ポリマー(H)のイオン交換容量は、0.5〜2.8ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.9〜2.2ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。イオン交換容量が0.5ミリ当量/g乾燥樹脂以上であれば、プロトン伝導性が高くなるため、充分な電池出力を得ることできる。イオン交換容量が2.8ミリ当量/g乾燥樹脂以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、含フッ素ポリマー(H)が過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
【0028】
(構成単位(A))
構成単位(A)は、スルホン酸基を有し、環構造を有しない構成単位である。構成単位(A)としては、含フッ素ポリマー(H)の化学的な耐久性に優れる点から、炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたものが好ましい。
構成単位(A)としては、後述する構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(A3)等が挙げられる。本発明の効果が充分に発揮される点から、構成単位(A2)が好ましい。
【0029】
構成単位(A1): 構成単位(A1)は、下式で表される。
【0031】
ただし、Q
1は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Y
1は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。単結合は、CFY
1の炭素原子とSO
3の硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0032】
Q
1のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、含フッ素ポリマー(H)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
Y
1としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0033】
構成単位(A1)としては、モノマー(a1)の合成が容易であり、工業的実施が容易である点から、構成単位(A1−1)〜(A1−4)が好ましい。
【0035】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A1)を有する場合、構成単位(A1)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0036】
構成単位(A2): 構成単位(A2)は、下式で表される。
【0038】
ただし、Q
21は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q
22は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Y
2は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。単結合は、CY
2の炭素原子とSO
3の硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0039】
Q
21、Q
22のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、含フッ素ポリマー(H)のイオン交換容量の増加が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
【0040】
Q
22は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。Q
22がエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であれば、Q
22が単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
Q
21、Q
22の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
Y
2としては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0041】
構成単位(A2)としては、モノマー(a2)の合成が容易であり、工業的実施が容易である点から、構成単位(A2−1)〜(A2−3)が好ましく、本発明の効果が充分に発揮される点から、構成単位(A2−1)がより好ましい。
【0043】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A2)を有する場合、構成単位(A2)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0044】
構成単位(A3): 構成単位(A3)は、下式で表される。
【0046】
ただし、Q
3は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Y
3は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、uは、0または1であり、dは、1〜4の整数であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。単結合は、CFY
3の炭素原子とSO
3の硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0047】
Q
3のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。炭素数が10以下であれば、含フッ素ポリマー(H)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
Y
3としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
dは、モノマー(a3)の合成が容易であり、イオン交換容量の高い含フッ素ポリマー(H)が得られる点から、2が特に好ましい。
【0048】
構成単位(A3)としては、モノマー(a3)の合成が容易であり、工業的実施が容易である点から、構成単位(A3−1)〜(A3−4)が好ましい。
【0050】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A3)を有する場合、構成単位(A3)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0051】
(構成単位(B))
構成単位(B)は、スルホン酸基を有さず、環構造を有する構成単位である。構成単位(B)としては、含フッ素ポリマー(H)の化学的な耐久性に優れる点から、炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたものが好ましい。
環構造としては、含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の一部が酸素原子に置換されていてもよい。含フッ素脂肪族環は、4〜7員環が好ましく、本発明の効果が充分に発揮される点から、5員環がより好ましい。
【0052】
5員環の含フッ素脂肪族環を有する構成単位(B)としては、後述する構成単位(B1)、構成単位(B2)、構成単位(B3)、構成単位(B4)等が挙げられ、本発明の効果が充分に発揮される点から、構成単位(B2)が好ましい。
【0053】
構成単位(B1):構成単位(B1)は、下式で表される。
【0055】
ただし、R
11〜R
16は、それぞれ独立にエーテル性の酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。R
15およびR
16は、重合反応性が高い点から、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、両方がフッ素原子であることがより好ましい。
【0056】
ペルフルオロアルキル基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0057】
構成単位(B1)としては、構成単位(B1−1)〜(B1−2)が挙げられ、モノマー(b1)の合成が容易であり、重合反応性が高い点から、構成単位(B1−1)が好ましい。
【0059】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B1)を有する場合、構成単位(B1)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0060】
構成単位(B2): 構成単位(B2)は、下式で表される。
【0062】
ただし、R
21〜R
22は、それぞれ独立にフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキレン基であり、R
23〜R
24は、それぞれ独立にフッ素原子、炭素数1〜5のペルフルオロアルキレン基または炭素数1〜5のペルフルオロアルコキシ基である。
ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0063】
構成単位(B2)としては、構成単位(B2−1)〜(B2−8)が挙げられ、モノマー(b2)の合成が容易であり、重合反応性が高く、本発明の効果が充分に発揮される点から、構成単位(B2−1)が好ましい。
【0065】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B2)を有する場合、構成単位(B2)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0066】
構成単位(B3):構成単位(B3)は、下式で表される。
【0068】
ただし、R
31〜R
35は、それぞれ独立にフッ素原子、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基である。R
36は、単結合、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基である。
【0069】
R
31〜R
35のペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
R
36のペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0070】
構成単位(B3)としては、構成単位(B3−1)〜(B3−2)が挙げられる。
【0072】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B3)を有する場合、構成単位(B3)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0073】
構成単位(B4): 構成単位(B4)は、下式で表される。
【0075】
R
41〜R
46は、それぞれ独立にエーテル性の酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。
ペルフルオロアルキル基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子はペルフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
R
41〜R
44は、重合反応性が高い点から、フッ素原子であることがより好ましい。
【0076】
構成単位(B4)としては、構成単位(B4−1)〜(B4−3)が挙げられ、モノマー(b4)の合成が容易である点から、構成単位(B4−1)が好ましい。
【0078】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B4)を有する場合、構成単位(B4)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0079】
構成単位(B5):
構成単位(B1)〜(B4)以外の他の構成単位(B)としては、後述する重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を2個以上有し、かつ5員環を有するペルフルオロモノマー(モノマー(b5))に由来する構成単位(B5)が挙げられる。構成単位(B5)を有することにより、含フッ素ポリマー(H)の分子量を上げることができる。
【0080】
(構成単位(C))
構成単位(C)は、スルホン酸基および環構造を有する構成単位である。構成単位(C)としては、含フッ素ポリマー(H)の化学的な耐久性に優れる点から、炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたものが好ましい。
環構造としては、含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の一部が酸素原子に置換されていてもよい。含フッ素脂肪族環は、4〜7員環が好ましく、本発明の効果が充分に発揮される点から、5員環がより好ましい。
【0081】
5員環の含フッ素脂肪族環を有する構成単位(C)としては、後述する構成単位(C1)、構成単位(C2)、構成単位(C3)等が挙げられ、本発明の効果が充分に発揮される点から、構成単位(C2)が好ましい。
【0082】
構成単位(C1): 構成単位(C1)は、下式で表される。
【0084】
ただし、R
51は、エーテル性の酸素原子を有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R
52、R
53、R
55、R
56は、それぞれ独立にエーテル性の酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子であり、R
54は、エーテル性の酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基、フッ素原子、または−R
51SO
3−Z
+基であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0085】
R
51の2価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0086】
R
52、R
53、R
55、R
56の1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。R
55およびR
56は、重合反応性が高い点から、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、両方がフッ素原子であることがより好ましい。
【0087】
R
54の1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。構成単位(C1)が2個のR
51を有する場合、R
51は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
【0088】
構成単位(C1)としては、構成単位(C1−1)〜(C1−4)が挙げられ、モノマー(c1)の合成が容易であり、工業的実施が容易である点から、構成単位(C1−1)が好ましい。
【0090】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C1)を有する場合、構成単位(C1)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0091】
構成単位(C2):構成単位(C2)は、下式で表される。
【0093】
ただし、R
61は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基であり、R
62は、フッ素原子、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基、または−R
61SO
3−Z
+基であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0094】
R
61のペルフルオロアル
キレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアル
キレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0095】
R
62のペルフルオロアルキル基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。構成単位(C2)が2個のR
61を有する場合、R
61は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
【0096】
構成単位(C2)としては、構成単位(C2−1)、(C2−2)が挙げられる。
【0098】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C2)を有する場合、構成単位(C2)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0099】
構成単位(C3): 構成単位(C3)は、下式で表される。
【0101】
ただし、R
71は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基であり、R
72〜R
75は、それぞれ独立にフッ素原子、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基であり、R
76は、単結合、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基または炭素−炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0102】
R
71のペルフルオロアル
キレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアル
キレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0103】
R
72〜R
75のペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0104】
R
76のペルフルオロアル
キレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアル
キレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0105】
構成単位(C3)としては、構成単位(C3−1)、(C3−2)が挙げられる。
【0107】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C3)を有する場合、構成単位(C3)は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0108】
(構成単位(D))
構成単位(D)は、スルホン酸基および環構造を有しない構成単位である。構成単位(D)としては、含フッ素ポリマー(H)の化学的な耐久性に優れる点から、炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたものが好ましい。
構成単位(D)としては、後述するモノマー(a)〜(c)以外のモノマー(d)に由来する構成単位が挙げられ、機械的強度および化学的な耐久性の点から、TFEに由来する構成単位が好ましい。
【0109】
(含フッ素ポリマー(H)の製造方法)
含フッ素ポリマー(H)の製造方法としては、たとえば、下記の工程(I)〜(III)を有する方法が挙げられる。
(I)−SO
2F(スルホン酸基の前駆体基)を有する前駆体ポリマー(以下、ポリマー(F)と記す。)を得る工程。
(II)ポリマー(F)を加水分解処理して−SO
2Fを−SO
3−M
+(ただし、M
+は、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。)に変換し、塩型の含フッ素ポリマー(H)を得る工程。
(III)必要に応じて、塩型の含フッ素ポリマー(H)を酸型化処理して−SO
3−M
+を−SO
3−H
+に変換し、酸型の含フッ素ポリマー(H)を得る工程。
【0110】
(工程(I))
ポリマー(F)の製造方法は、目的とする含フッ素ポリマー(H)が有する構成単位に応じて、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0111】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A1)を有する場合:
構成単位(A1)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(a1)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0113】
モノマー(a1)としては、モノマー(a1−1)〜(a1−4)が好ましい。
【0115】
モノマー(a1)は、たとえば、D.J.Vaugham著,”Du Pont Inovation”,第43巻、第3号,1973年、p.10に記載の方法、米国特許第4358412号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
【0116】
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。
重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。
【0117】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A2)を有する場合:
構成単位(A2)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(a2)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0119】
モノマー(a2)としては、モノマー(a2−1)〜(a2−3)が好ましい。
【0121】
モノマー(a2)は、たとえば、国際公開第2007/013533号に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0122】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(A3)を有する場合:
構成単位(A3)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、たとえば、下記の工程(i)、工程(ii)を経て製造できる。
(i)モノマー(a1)に由来する単位を有するポリマー(F)の−SO
2Fを−SO
2NH
2に変換し、ポリマー(G)を得る工程。
(ii)ポリマー(G)にFSO
2(CF
2)
dSO
2Fを反応させ、−SO
2NH
2を−SO
2N
−(H
+)SO
2(CF
2)
dSO
2Fに変換し、目的のポリマー(F)を得る工程。
【0123】
工程(i):
−SO
2Fを−SO
2NH
2に変換する方法としては、ポリマー(F)にアンモニアを接触させる方法が挙げられる。
ポリマー(F)にアンモニアを接触させる方法としては、たとえば、ポリマー(F)にアンモニアを直接接触させる方法、ポリマー(F)を溶解したポリマー溶液にアンモニアを吹き込んでバブリングする方法、ポリマー(F)を溶媒に膨潤させた状態でアンモニアと接触させる方法等が挙げられる。
【0124】
工程(ii):
FSO
2(CF
2)
dSO
2Fは、公知の方法で合成できる。合成方法としては、dが2の場合、たとえば、下記の方法が挙げられる。
(α)TFEとヨウ素の付加体である、ICF
2CF
2Iを出発物質とし、公知の方法でNaSO
2CF
2CF
2SO
2Naに変換した後、ClSO
2CF
2CF
2SO
2Clとし、最後にFSO
2CF
2CF
2SO
2Fに変換する方法。
(β)TFEと無水硫酸を反応させることによってテトラフルオロエタンサルトンとし、これを開環した後、加水分解することによってFSO
2CF
2COOHとし、さらにコルベ電解によりカップリングして合成する方法(特開2010−095470号公報)。
【0125】
工程(ii)においては、非プロトン性極性溶媒中でポリマー(F)を膨潤または溶解し、FSO
2(CF
2)
dSO
2Fと反応させることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル2イミダゾリジノン、N−メチル2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0126】
ポリマー(F)にFSO
2(CF
2)
dSO
2Fを反応させる際に、反応促進剤を用いることも好ましい。反応促進剤としては、3級有機アミンが好ましい。
工程(ii)においては、FSO
2(CF
2)
dSO
2Fの加水分解を抑制するために湿分を混入させないことが好ましい。
【0127】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B1)を有する場合:
構成単位(B1)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(b1)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0129】
モノマー(b1)としては、モノマー(b1−1)、(b1−2)が挙げられる。
【0131】
モノマー(b1)は、国際公開第2000/056694号パンフレット;Izvestiya Akademii Nauk SSSR、Seriya Khimicheskaya、1989年、第4巻,p.938−42等に記載された方法により合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0132】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B2)を有する場合:
構成単位(B2)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(b2)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0134】
モノマー(b2)としては、モノマー(b2−1)〜(b2−8)が挙げられる。
【0136】
モノマー(b2)は、Macromolecule、第26巻 第22号、1993年、p.5829−5834;特開平6−92957号公報等に記載された方法により合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0137】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B3)を有する場合:
構成単位(B3)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(b3)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0139】
モノマー(b3)としては、モノマー(b3−1)、(b3−2)が挙げられる。
【0141】
モノマー(b3)は、特開2006−241302号公報等に記載された方法により合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0142】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B4)を有する場合:
構成単位(B4)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(b4)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0144】
モノマー(b4)としては、モノマー(b4−1)〜(b4−3)が挙げられる。
【0146】
化合物(b4)は、Macromol.Symp.、第98巻、1995年、p.753−767等に記載された方法により合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0147】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(B5)を有する場合:
構成単位(B5)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(b5)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0149】
Q
4は、単結合、酸素原子、またはエーテル結合性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基である。モノマー(b5)としては、モノマー(b5−1)〜(b5−6)が挙げられる。
【0151】
重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0152】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C1)を有する場合:
構成単位(C1)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(c1)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0154】
モノマー(c1)としては、モノマー(c1−1)〜(c4−4)が挙げられる。
【0156】
モノマー(c1)は、国際公開第2003/037885号、特開2005−314388号公報、特開2009−040909号公報等に記載された方法によって合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0157】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C2)を有する場合:
構成単位(C2)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(c2)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0159】
モノマー(c2)としては、モノマー(c2−1)、(c2−2)が挙げられる。
【0161】
モノマー(c2)は、特開2006−152249号公報等に記載された方法によって合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0162】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(C3)を有する場合:
構成単位(C3)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(c3)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0164】
モノマー(c3)としては、モノマー(c3−1)、(c3−2)が挙げられる。
【0166】
モノマー(c3)は、特開2006−241302号公報等に記載された方法によって合成できる。重合法としては、上述した重合法と同様の方法が挙げられる。
【0167】
含フッ素ポリマー(H)が構成単位(D)を有する場合:
構成単位(C3)を有する含フッ素ポリマー(H)の前駆体ポリマーであるポリマー(F)は、モノマー(a)〜(c)以外のモノマー(d)および他のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0168】
モノマー(d)としては、たとえば、TFE、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレンン、ペルフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン類((ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン類(3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)、ペルフルオロビニルエーテル類(ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等)等が挙げられる。
【0169】
ポリマー(F)のフッ素化処理:
必要に応じて、ポリマー(F)とフッ素ガスとを接触させ、ポリマー(F)の不安定末端基をフッ素化してもよい。
不安定末端基とは、連鎖移動反応によって形成される基、ラジカル開始剤に基づく基等である。具体的には、−C(O)OH、−CF=CF
2、−C(O)F、−CF
2H等である。不安定末端基をフッ素化または安定化することにより、最終的に得られるポリマー(H)の分解が抑えられ、耐久性が向上する。
【0170】
フッ素ガスは、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いてもよく、希釈せずにそのまま用いてもよい。
ポリマー(F)とフッ素ガスとを接触させる際の温度は、室温〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましく、100〜220℃がさらに好ましく、150〜200℃が特に好ましい。ポリマー(F)とフッ素ガスとの接触時間は、1分〜1週間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
【0171】
(工程(II))
ポリマー(F)の−SO
2Fを加水分解して−SO
3−M
+とし、塩型の含フッ素ポリマー(H)を得る。なお、−SO
2N
−(H
+)SO
2(CF
2)
dSO
2Fを有するポリマー(F)の場合は、−SO
2N
−(H
+)SO
2(CF
2)
dSO
2Fが−SO
2N
−(M
+)SO
2(CF
2)
dSO
3−M
+に変換される。
【0172】
加水分解処理は、たとえば、溶媒中にてポリマー(F)と塩基性化合物とを接触させて行う。具体的には、ポリマー(F)を、塩基性化合物の溶液に撹拌等によって分散させることによって加水分解処理することが好ましい。
【0173】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
溶媒としては、水、水と極性溶媒との混合溶媒等が挙げられる。極性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0174】
塩基性化合物の濃度は、塩基性化合物の溶液中、25〜40質量%が好ましい。加水分解処理の温度は、80〜95℃が好ましい。加水分解処理の時間は、10〜20時間が好ましい。
【0175】
(工程(III))
塩型の含フッ素ポリマー(H)の−SO
3−M+を酸型化して−SO
3−H
+とし、酸型の含フッ素ポリマー(H)を得る。なお、−SO
2N
−(M
+)SO
2(CF
2)
dSO
3−M
+を有する塩型の含フッ素ポリマー(H)の場合は、−SO
2N
−(M
+)SO
2(CF
2)
dSO
3−M
+が−SO
2N
−(H
+)SO
2(CF
2)
dSO
3−H
+に変換される。
酸型化処理は、たとえば、塩型の含フッ素ポリマー(H)を、酸(硫酸、塩酸、硝酸等)の水溶液に接触させて行う。具体的には、塩型の含フッ素ポリマー(H)を、酸の水溶液に撹拌等によって分散させることによって酸型化処理することが好ましい。
【0176】
酸の水溶液における酸の濃度は、2〜3Nが好ましい。酸型化処理の温度は、80〜90℃が好ましい。酸型化処理の時間は、4〜7時間が好ましい。
【0177】
(セリウムイオン)
本発明の液状組成物がセリウムイオンを含むことによって、含フッ素ポリマー(H)の陽イオンの一部がセリウムイオンにイオン交換され、触媒層において、過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を効率よく抑制できる。また、触媒層においては、セリウムイオンが、含フッ素ポリマー(H)の分解物(硫酸イオン等)による触媒の被毒を抑制するため、膜電極接合体の出力電圧がさらに高く、かつ高い出力電圧を長期間にわたって維持できることを、本発明者らは新たに見出した。
【0178】
セリウムイオンは、+3価でもあってもよく、+4価であってもよい。
セリウムイオンを含む本発明の液状組成物を得るためのセリウム塩としては、炭酸セリウム、酢酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸四アンモニウムセリウム等が挙げられ、炭酸をガスとして本発明の液状組成物から容易に除去できる点から、炭酸セリウムが好ましい。セリウム塩は、有機金属錯塩でもよく、その例としては、セリウムアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0179】
なお、セリウム元素が本発明の液状組成物、触媒層中に難溶性セリウム化合物として含まれていても、過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を抑制できる。すなわち、難溶性セリウム化合物は、本発明の液状組成物、触媒層中にて部分的に解離または溶解することによって、セリウムイオンを発生させる。また、難溶性セリウム化合物自体は、過酸化水素または過酸化物ラジカルの分解触媒として機能する。
【0180】
難溶性セリウム化合物としては、リン酸セリウム、酸化セリウム、水酸化セリウム、フッ化セリウム、シュウ酸セリウム、タングステン酸セリウム、ヘテロポリ酸のセリウム塩等が挙げられる。過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を抑制する効果が高い点から、リン酸セリウム、酸化セリウム、フッ化セリウム、タングステン酸セリウムおよびヘテロポリ酸のセリウム塩から選ばれる1種以上が好ましい。本発明の液状組成物に添加した際の分散性に優れることから酸化セリウムが特に好ましい。
【0181】
(本発明の液状組成物の組成)
含フッ素ポリマー(H)の含有量は、本発明の液状組成物(100質量%)のうち、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0182】
3価または4価のセリウムイオンの含有量は、含フッ素ポリマー(H)のスルホン酸基(100モル%)に対して、1.6〜23.3モル%であり、3.3〜16.7モル%が好ましく、3.3〜10モル%がより好ましい。セリウムイオンの含有量が1.6モル%以上であれば、過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を抑制できる。また、含フッ素ポリマー(H)の分解物による触媒の被毒を抑制できる。セリウムイオンの含有量が23.3モル%以下であれば、イオン交換される含フッ素ポリマー(H)のプロトンの割合が減るため、触媒層のプロトン伝導性を充分に確保できる。
【0183】
(本発明の液状組成物の製造方法)
本発明の液状組成物の製造方法は、液状媒体と、含フッ素ポリマー(H)と、セリウム化合物とを混合する方法である。
【0184】
本発明の液状組成物の製造方法としては、たとえば、下記の工程(x)および工程(y)を有する方法が挙げられる。
(x)液状媒体に含フッ素ポリマー(H)を分散させて含フッ素ポリマー(H)分散液を調製する工程。
(y)含フッ素ポリマー(H)分散液にセリウム化合物を添加して液状組成物を調製する工程。
【0185】
工程(x):
液状媒体と含フッ素ポリマー(H)とを混合し、大気圧下またはオートクレーブ等で密閉した状態下において、液状媒体中の含フッ素ポリマー(H)に撹拌等のせん断を加える。液状媒体は、一度に全量を含フッ素ポリマー(H)と混合してもよく、複数回に分けて含フッ素ポリマー(H)と混合してもよい。調製温度は、0〜250℃が好ましく、20〜150℃がより好ましい。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
【0186】
含フッ素ポリマー(H)としては、残存する硫酸イオン濃度が30ppm以下のものを用いることが好ましく、10ppm以下のものを用いることがより好ましい。含フッ素ポリマー(H)に残存する硫酸イオン濃度が30ppm以下であれば、触媒の被毒をより効率よく抑制できる。
【0187】
含フッ素ポリマー(H)に残存する硫酸イオン濃度を低減する方法としては、含フッ素ポリマー(H)をあらかじめ水で洗浄する方法が好ましい。硫酸イオン濃度の低減効果が高い点から、含フッ素ポリマー(H)を予め50℃以上の水で洗浄する方法がより好ましく、含フッ素ポリマー(H)を予め70℃以上の水で洗浄する方法がさらに好ましい。
【0188】
工程(y):
含フッ素ポリマー(H)分散液にセリウム化合物を添加し、大気圧下またはオートクレーブ等で密閉した状態下において、含フッ素ポリマー(H)分散液中のセリウム化合物に撹拌等のせん断を加える。含フッ素ポリマー(H)分散液は、一度に全量をセリウム化合物と混合してもよく、複数回に分けてセリウム化合物と混合してもよい。調製温度は、0〜250℃が好ましく、20〜150℃がより好ましい。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
【0189】
本発明の液状組成物にあっては、液状媒体と、スルホン酸基および環構造を有する含フッ素ポリマー(H)と、3価または4価のセリウムイオンとを含み、セリウムイオンの含有量が、スルホン酸基(100モル%)に対して、1.6〜23.3モル%であるため、過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を効率よく抑制できる。また、触媒層においては、セリウムイオンが、含フッ素ポリマー(H)の分解物(硫酸イオン等)による触媒の被毒を抑制する。その結果、過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐性に優れ、膜電極接合体の出力電圧をさらに高くでき、かつ高い出力電圧を長期間にわたって維持できる触媒層を形成できる。このような効果は、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーが、環構造を有する含フッ素ポリマー(H)である場合に顕著に表れる。一方、従来のような環構造を有しない含フッ素ポリマーである場合には、この効果は小さい。
【0190】
<膜電極接合体>
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)の一例を示す模式断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置された固体高分子電解質膜15とを具備する。
【0191】
(触媒層)
触媒層11は、触媒と、イオン交換樹脂とを含む層である。触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられる。
【0192】
イオン交換樹脂としては、上述した含フッ素ポリマー(H)、公知のイオン交換樹脂が挙げられ、カソードおよびアノードの少なくとも一方の触媒層に含まれるイオン交換樹脂が、含フッ素ポリマー(H)であり、カソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂が、含フッ素ポリマー(H)であることが好ましく、カソードおよびアノードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂が、含フッ素ポリマー(H)であることがより好ましい。
【0193】
触媒層11は、フラッディングの抑制効果が高まる点から、撥水化剤を含んでいてもよい。撥水化剤としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。撥水化剤としては、触媒層11を撥水化処理しやすい点から、溶媒に溶解できる含フッ素ポリマーが好ましい。撥水化剤の量は、触媒層11(100質量%)中、0.01〜30質量%が好ましい。
【0194】
(ガス拡散層)
ガス拡散層12は、触媒層11に均一にガスを拡散させる機能および集電体としての機能を有する。ガス拡散層12としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
【0195】
(カーボン層)
膜電極接合体10は、
図2に示すように、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有してもよい。カーボン層16を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
【0196】
カーボン層16は、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。非イオン性含フッ素ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0197】
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜15は、イオン交換樹脂を含む膜である。
イオン交換樹脂としては、上述した含フッ素ポリマー(H)、公知のイオン交換樹脂が挙げられる。公知のイオン交換樹脂としては、化合物(a1)に由来する構成単位とTFEに由来する構成単位とを有するポリマーの−SO
2F基をスルホン酸基に変換した含フッ素ポリマー等が挙げられる。
【0198】
固体高分子電解質膜15は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0199】
固体高分子電解質膜15は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。セリウム、マンガンは、固体高分子電解質膜15の劣化を引き起こす原因物質である過酸化水素を分解する。セリウム、マンガンは、イオンとして固体高分子電解質膜15中に存在することが好ましく、イオンとして存在すれば固体高分子電解質膜15中でどのような状態で存在してもかまわない。
固体高分子電解質膜15は、乾燥を防ぐための保水剤として、シリカ、ヘテロポリ酸(リン酸ジルコニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸等)を含んでいてもよい。
【0200】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体10は、たとえば、下記の方法にて製造される。
(α)固体高分子電解質膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(β)ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、固体高分子電解質膜15を該電極で挟み込む方法。
【0201】
膜電極接合体10がカーボン層16を有する場合、膜電極接合体10は、たとえば、下記の方法にて製造される。
(γ)基材フィルム上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、カーボン層16上に触媒層11を形成し、触媒層11と固体高分子電解質膜15とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層16を有する膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(δ)ガス拡散層12上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、固体高分子電解質膜15上に触媒層11を形成した膜触媒層接合体を、カーボン層16を有するガス拡散層12で挟み込む方法。
【0202】
触媒層11の形成方法としては、下記の方法が挙げられる。
(ε)触媒層形成用塗工液を、固体高分子電解質膜15、ガス拡散層12、またはカーボン層16上に塗布し、乾燥させる方法。
(ζ)触媒層形成用塗工液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させ触媒層11を形成し、該触媒層11を固体高分子電解質膜15上に転写する方法。
【0203】
触媒層形成用塗工液は、イオン交換樹脂を含む液状組成物と、触媒の分散液とを混合することにより調製できる。
本発明においては、カソード14およびアノード13の少なくとも一方の触媒層11を形成する際に、本発明の液状組成物と触媒とを混合した触媒層形成用塗工液を用いる。カソード14の触媒層11を形成する際に、本発明の液状組成物と触媒とを混合した触媒層形成用塗工液を用いることが好ましく、カソード14およびアノード13の触媒層11を形成する際に、本発明の液状組成物と触媒とを混合した触媒層形成用塗工液を用いることがより好ましい。
【0204】
固体高分子電解質膜15は、たとえば、イオン交換樹脂を含む液状組成物を基材フィルムまたは触媒層11上に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)により形成できる。
本発明においては、固体高分子電解質膜15を形成する際に、液状媒体と、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーと、3価または4価のセリウムイオンとを含む液状組成物を用いることが好ましい。セリウムイオンの含有量は、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマー中のスルホン酸基(100モル%)に対して、1〜10モル%が好ましく、2〜5モル%がより好ましい。
【0205】
固体高分子電解質膜15を安定化させるために、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、イオン交換樹脂の種類にもよるが、130〜200℃が好ましい。熱処理の温度が130℃以上であれば、イオン交換樹脂が過度に含水しなくなる。熱処理の温度が200℃以下であれば、スルホン酸基の熱分解が抑えられ、固体高分子電解質膜15のプロトン伝導性の低下が抑えられる。固体高分子電解質膜15は、必要に応じて過酸化水素水で処理してもよい。
【0206】
本発明の膜電極接合体の製造方法にあっては、本発明の液状組成物と触媒とを混合して触媒層形成用塗工液を調製し、該塗工液を用いてカソードおよびアノードの少なくとも一方の触媒層を形成しているため、触媒層における過酸化水素または過酸化物ラジカルによる含フッ素ポリマー(H)の劣化を効率よく抑制できる。また、触媒層においては、セリウムイオンが、含フッ素ポリマー(H)の分解物(硫酸イオン等)による触媒の被毒を抑制する。その結果、過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐性に優れた触媒層を備え、出力電圧がさらに高く、かつ高い出力電圧を長期間にわたって維持できる膜電極接合体を製造できる。このような効果は、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーが、環構造を有する含フッ素ポリマー(H)である場合に顕著に表れる。一方、従来のような環構造を有しない含フッ素ポリマーである場合には、この効果は小さい。
【0207】
また、液状媒体と、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーと、3価または4価のセリウムイオンとを含む液状組成物を用いて固体高分子電解質膜を形成した場合、触媒層のセリウムイオンが固体高分子電解質膜に拡散しにくくなる。そのため、触媒層におけるセリウムイオンによる前記効果が低下しにくくなる。
【0208】
<固体高分子形燃料電池>
膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
【実施例】
【0209】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。なお、例1〜7、例13〜21は実施例であり、例8〜12、例22〜25は比較例である。
【0210】
(イオン交換容量)
スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーのイオン交換容量は、下記方法により求めた。
乾燥窒素を流したグローブボックス中にイオン交換樹脂を入れ、24時間後にイオン交換樹脂の乾燥質量を測定した。その後、イオン交換樹脂を2モル/Lの塩化ナトリウム水溶液に60℃で1時間浸漬した。イオン交換樹脂を超純水で洗浄した後、取り出し、イオン交換樹脂を浸漬していた液を0.1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定することによって、イオン交換樹脂のイオン交換容量を求めた。
【0211】
(含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオン濃度)
含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオン濃度は、下記方法により求めた。
乾燥窒素を流したグローブボックス中に含フッ素ポリマー(H)の1gを入れ、24時間後に含フッ素ポリマー(H)の乾燥質量を測定した。その後、含フッ素ポリマー(H)を80℃の温水25mLに48時間浸漬し、含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオンを抽出した。その抽出液中の硫酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィで定量し、含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオン濃度を求めた。
【0212】
(液状組成物中の硫酸イオン濃度)
液状組成物中の硫酸イオン濃度は、下記方法により求めた。
液状組成物をポリテトラフルオロエチレンシート上にキャストし、80℃で30分間加熱して溶媒を除去し、さらに180℃で30分間加熱し、フィルム状の含フッ素ポリマー(H)を得た。上記の含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオン濃度の測定方法と同様の方法で、フィルム状の含フッ素ポリマー(H)中の硫酸イオン濃度を定量した。そして、液状組成物の含フッ素ポリマー(H)濃度から、液状組成物中の硫酸イオン濃度を求めた。
【0213】
(発電特性)
膜電極接合体を発電用セルに組み込み、膜電極接合体の温度を80℃に維持し、アノードに水素(利用率70%)、カソードに空気(利用率50%)を、それぞれ151kPa(絶対圧力)に加圧して供給した。ガスの加湿度は水素、空気ともに相対湿度100%RHとし、電流密度が0.1A/cm
2のときのセル電圧を記録し下記基準にて評価した。
◎◎:セル電圧が0.845V以上である。
◎:セル電圧が0.835V以上0.845V未満である。
○:セル電圧が0.825V以上0.835V未満である。
×:セル電圧が0.815V以上0.825V未満である。
××:セル電圧が0.815V未満である。
【0214】
<含フッ素ポリマーの重合、および液状組成物の調製>
(ラジカル開始剤)
化合物(i−1):(C
3F
7COO)
2 ・・・(i−1)。
化合物(i−2):((CH
3)
2CHOCOO)
2 ・・・(i−2)。
(溶媒)
化合物(s−1):CClF
2CF
2CHClF ・・・(s−1)。
化合物(s−2):CH
3CCl
2F ・・・(s−2)。
【0215】
(例1)
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、モノマー(a1−1):PSVEの108.14g、モノマー(b2−1):PDDの16.02gおよび化合物(i−2)の37.7mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、TFEの3.69gを仕込んで、40℃に昇温して、24時間撹拌した後、オートクレーブを冷却して反応を停止させた。
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これにn−ヘキサンを添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーを撹拌し、n−ヘキサンで再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥し、ポリマー(F−1)を得た。収量は20.09gであった。
【0216】
ポリマー(F−1)を、20質量%のメタノールおよび15質量%の水酸化カリウムを含む水溶液に80℃で16時間浸漬し、ポリマー(F−1)中の−SO
2Fを加水分解し、−SO
3Kに変換した。ついで、該ポリマーを、3モル/Lの塩酸水溶液に2時間浸漬した。塩酸水溶液を交換し、同様の処理をさらに4回繰り返した。該ポリマーを50℃に加温した超純水で充分に水洗し、該ポリマー中の−SO
3Kがスルホン酸基に変換された酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得た。含フッ素ポリマー(H1−1)のイオン交換容量は、1.1ミリ当量/g乾燥樹脂であり、硫酸イオン濃度は19ppmであった。
【0217】
含フッ素ポリマー(H1−1)のスルホン酸基の数(100モル%)に対し、セリウムイオン(3価)を10モル%添加した液状組成物(L−1)を以下のように調製した。
含フッ素ポリマー(H1−1)に、エタノールと水との混合溶媒(エタノール/水=80/20質量比)を加え、オートクレーブを用い105℃で8時間、撹拌し、固形分濃度を10質量%に調整した含フッ素ポリマー(H1−1)分散液を得た。
【0218】
含フッ素ポリマー(H1−1)分散液の50gに、炭酸セリウム水和物(Ce
2(CO
3)
3・8H
2O)の0.166gを加え、50℃で24時間撹拌した。撹拌開始からCO
2発生による気泡が確認された。均一で透明な液状組成物(L−1)を得た。液状組成物(L−1)中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。結果を表1に示す。
【0219】
(例2)
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、モノマー(a2−1):BSVE2Eの132.71g、モノマー(b1−1):MMDの6.46gおよび化合物(i−1)の41.78mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、TFEの2.25gを仕込んで、21℃に昇温して、21時間撹拌した後、オートクレーブを冷却して反応を停止させた。
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これにn−ヘキサンを添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーを撹拌し、n−ヘキサンで再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥し、ポリマー(F−2)を得た。収量は12.15gであった。
【0220】
例1と同様に加水分解、酸型化処理を行い、含フッ素ポリマー(H1−2)を得た。含フッ素ポリマー(H1−2)のイオン交換容量は、1.5ミリ当量/g乾燥樹脂であり、硫酸イオン濃度は17ppmであった。
【0221】
例1と同様の方法で、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水=50/50質量比)、固形分濃度20質量%のポリマー(H1−2)分散液を得た。また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.453gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−2)を得た。液状組成物(L−2)中の硫酸イオン濃度は3.5ppmである。結果を表1に示す。
【0222】
(例3)
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、モノマー(a2−1):BSVE2Eの52.52g、モノマー(b2−1):PDDの9.04gおよび化合物(i−1)の18.7mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、TFEの2.53gを仕込んで、22℃に昇温して、24時間撹拌した後、オートクレーブを冷却して反応を停止させた。
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これにn−ヘキサンを添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーを撹拌し、n−ヘキサンで再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥し、ポリマー(F−3)を得た。収量は14.03gであった。
【0223】
例1と同様に加水分解、酸型化処理を行い、含フッ素ポリマー(H1−3)を得た。含フッ素ポリマー(H1−3)のイオン交換容量は、1.5ミリ当量/g乾燥樹脂であり、硫酸イオン濃度は16ppmであった。
【0224】
例1と同様の方法で、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水=40/60質量比)、固形分濃度10質量%のポリマー(H1−3)分散液を得た。また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.227gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−3)を得た。液状組成物(L−3)中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。結果を表1に示す。
【0225】
(例4)
例3において、炭酸セリウム水和物の添加量を0.378gに変えた以外は、同様の方法で液状組成物(L−4)を得た。液状組成物(L−4)中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。結果を表1に示す。
【0226】
(例5)
例1において、加水分解、酸型化処理後の洗浄に用いる超純水の温度を80℃に変更した以外は同様の方法で含フッ素ポリマー(H1−1’)を得た。含フッ素ポリマー(H1−1’)の硫酸イオン濃度は7ppmであった。
【0227】
また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.227gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−5)を得る。液状組成物(L−5)中の硫酸イオン濃度は0.7ppmである。結果を表1に示す。
【0228】
(例6)
例3において、加水分解、酸型化処理後の洗浄に用いる超純水の温度を80℃に変更した以外は同様の方法で含フッ素ポリマー(H1−3’)を得た。含フッ素ポリマー(H1−3’)の硫酸イオン濃度は8ppmであった。
【0229】
また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.378gに変えた以外は、例3と同様の方法で液状組成物(L−6)を得た。液状組成物(L−6)中の硫酸イオン濃度は0.8ppmであった。結果を表1に示す。
【0230】
(例7)
例6において炭酸セリウム水和物の添加量を0.076gに変えた以外は、例6と同様の方法で液状組成物(L−7)を得た。液状組成物(L−7)中の硫酸イオン濃度は0.8ppmであった。結果を表1に示す。
【0231】
(例8)
例1において炭酸セリウム水和物の添加量を0.014gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−8)を得た。液状組成物(L−8)中の硫酸イオン濃度は0.8ppmであった。結果を表1に示す。
【0232】
(例9)
例1において炭酸セリウム水和物の添加量を0.443gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−9)を調整した。しかし、炭酸セリウム水和物の添加量が多すぎ、ポリマーが液中に析出してしまい、安定した液状組成物を得ることができなかった。
【0233】
(例10)
例3において、加水分解、酸型化処理後の洗浄に用いる超純水の温度を20℃に変更した以外は同様の方法で含フッ素ポリマー(H1−3”)を得た。含フッ素ポリマー(H1−3”)の硫酸イオン濃度は50ppmであった。また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.019gに変えた以外は、例3と同様の方法で液状組成物(L−10)を得た。液状組成物(L−10)中の硫酸イオン濃度は5ppmであった。結果を表1に示す。
【0234】
(例11)
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、モノマー(a1−1)の49.64g、化合物(s−1)の28.22gおよび化合物(s−1)に3.2質量%の濃度で溶解した化合物(i−2)の38.9mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、30℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.37MPaGに保持した。4.8時間撹拌した後、オートクレーブを冷却して反応を停止させた。
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥し、ポリマー(F−4)を得た。収量は15.0gであった。
【0235】
例1と同様に加水分解、酸型化処理を行い、含フッ素ポリマー(H’−4)を得た。含フッ素ポリマー(H’−4)のイオン交換容量は、1.1ミリ当量/g乾燥樹脂であり、硫酸イオン濃度は17ppmであった。
【0236】
例1と同様の方法で、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水=60/40質量比)、固形分濃度20質量%のポリマー(H’−4)分散液を得た。また、炭酸セリウム水和物の添加量を0.554gに変えた以外は、例1と同様の方法で液状組成物(L−11)を得た。液状組成物(L−11)中の硫酸イオン濃度は3.5ppmであった。結果を表1に示す。
【0237】
(例12)
例11において炭酸セリウム水和物を添加しなかった以外は、例11と同様の方法で液状組成物(L−12)を得た。液状組成物(L−12)中の硫酸イオン濃度は3.5ppmであった。結果を表1に示す。
【0238】
【表1】
【0239】
(固体高分子電解質膜の調製)
ポリマー(H’−4)分散液をETFEシート上にダイコータにて塗布し、オーブン中で80℃で30分乾燥し、さらに190℃で30分の熱処理を施し、厚さ25μmの固体高分子電解質膜(M−1)を得た。乾燥、熱処理に使用したオーブン槽内の揮発性有機化合物(VOC)濃度は、300ppmであった。VOC濃度の測定には、光明理化学工業社製 VOC−1(触媒酸化−検知管方式)を使用した。
【0240】
ポリマー(H’−4)分散液に、セリウムイオンの含有量がポリマー(H’−4)中のスルホン酸基に対して2モル%となるように炭酸セリウム水和物の0.066gを加え、液状組成物を例1と同様の方法で調製した。上記と同様の方法で塗布、乾燥、熱処理を施し、厚さ25μmの高分子電解質膜(M−2)を得た。
【0241】
ポリマー(H’−4)分散液に、セリウムイオンの含有量がポリマー(H’−4)中のスルホン酸基に対して5モル%となるように炭酸セリウム水和物の0.166gを加え、液状組成物を例1と同様の方法で調製した。上記と同様の方法で塗布、乾燥、熱処理を施し、厚さ25μmの高分子電解質膜(M−3)を得た。
【0242】
(例13)
カーボン粉末に白金を20質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の24.2g、エタノールの12.5gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−1)の32.4gを加え、さらに水の17.2g、エタノールの11.6gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を8質量%とし、アノード用触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.05mg/cm
2のアノード用触媒層を形成する。
【0243】
カーボン粉末に白金を56.7質量%、コバルトを6.4質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の16.2g、エタノールの10.7g、液状組成物(L−1)の4.4gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−1)の10.3gを加え、さらに水の10.3g、エタノールの7.8gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を10質量%とし、カソード用触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.2mg/cm
2のカソード用触媒層を形成する。
【0244】
固体高分子電解質膜(M−1)をアノード用触媒層とカソード用触媒層で、それぞれ両側から挟み、プレス温度160℃、プレス時間2分、圧力3MPaの条件にて加熱プレスし、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を接合し、触媒層からETFEフィルムを剥離して、電極面積25cm
2の膜触媒層接合体を得る。
カーボン層付きガス拡散基材(NOK社製、商品名:X0086 IX92 CX320)をカーボン層と、膜触媒層接合体の触媒層とが接するようにアノードとカソードの両面に配置し、膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み、膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0245】
(例14)
カーボン粉末に白金を20質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の24.2g、エタノールの12.5gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−2)の16.0gを加え、さらに水の16.6g、エタノールの28.3gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を8質量%とし、アノード用触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.05mg/cm
2のアノード用触媒層を形成する。
【0246】
カーボン粉末に白金を56.7質量%、コバルトを6.4質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の16.1g、エタノールの13.0g、液状組成物(L−2)の2.2gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−2)の5.2gを加え、さらに水の10.1g、エタノールの13.2gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を10質量%とし、カソード用触媒層形成用塗工液を得た。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.2mg/cm
2のカソード用触媒層を形成する。
【0247】
前記アノード触媒層およびカソード触媒層を用いる以外は例13と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0248】
(例15)
カーボン粉末に白金を20質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の24.2g、エタノールの12.5gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得た。触媒の分散液に、液状組成物(L−3)の32.1gを加え、さらに水の5.7g、エタノールの23.2gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を8質量%とし、アノード用触媒層形成用塗工液を得た。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.05mg/cm
2のアノード用触媒層を形成した。
【0249】
カーボン粉末に白金を56.7質量%、コバルトを6.4質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の14.6g、エタノールの12.3g、液状組成物(L−3)の4.4gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得た。触媒の分散液に、液状組成物(L−3)の10.3gを加え、さらに水の6.6g、エタノールの11.5gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を10質量%とし、カソード用触媒層形成用塗工液を得た。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.2mg/cm
2のカソード用触媒層を形成した。
【0250】
前記アノード触媒層およびカソード触媒層を用いる以外は例13と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0251】
(例16)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−4)を用いた以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0252】
(例17)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−5)を用いる以外は例13と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0253】
(例18)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−6)を用いた以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0254】
(例19)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−7)を用いた以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0255】
(例20)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−7)を、固体高分子電解質膜として(M−2)を用いた以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0256】
(例21)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−7)を、固体高分子電解質膜として(M−3)を用いた以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0257】
(例22)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−8)を用いる以外は例13と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0258】
(例23)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−10)を用いる以外は例15と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0259】
(例24)
カーボン粉末に白金を20質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の24.2g、エタノールの12.5gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−11)の16.0gを加え、さらに水の17.9g、エタノールの27.0gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を8質量%とし、アノード用触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.05mg/cm
2のアノード用触媒層を形成する。
【0260】
カーボン粉末に白金を56.7質量%、コバルトを6.4質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の5gに水の16.3g、エタノールの12.8g、液状組成物(L−3)の2.2gを加え、遊星ボールミルを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、液状組成物(L−11)の5.2gを加え、さらに水の10.5g、エタノールの12.8gを加えて遊星ボールミルを用いて混合し、固形分濃度を10質量%とし、カソード用触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFEシート上にバーコーターで塗布し、80℃で10分乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.2mg/cm
2のカソード用触媒層を形成する。
【0261】
前記アノード触媒層およびカソード触媒層を用いる以外は例13と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価する。評価結果を表2に示す。
【0262】
(例25)
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いる液状組成物として(L−12)を用いた以外は例24と同様の方法で膜電極接合体を作製し、発電特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0263】
【表2】