(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の複合粉体、表面処理複合粉体、樹脂組成物、硬化体および光半導体発光装置を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
[複合粉体]
本実施形態の複合粉体は、フッ化物と、蛍光体とを含み、フッ化物の結晶子径が90nm以上かつ150nm以下、蛍光体の結晶子径が100nm以上かつ250nm以下であり、LEDパッケージにした場合における発光効率が90lm/W以上である。
【0022】
ここで、「LEDパッケージにした場合における発光効率」とは、以下の手順で測定した場合における発光効率を意味する。
【0023】
複合粉体0.4gと、2液タイプのシリコーン樹脂 OE6630(屈折率:1.53、東レダウ社製)4.6gとを、真空脱泡撹拌機にて混合し、樹脂組成物を得る。
次いで、容量計算式デジタル制御ディスペンサー(商品名:MEASURING MASTER MPP−1、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、得られた樹脂組成物で、青色ダイオードを封止する。これを150℃にて2時間熱処理して硬化させることにより、3030シリーズ(3.0mm×3.0mm)のLEDパッケージを作製する。
得られたLEDパッケージの発光効率を、全光束測定システム HMシリーズ(大塚電子社製、球サイズ3000mm)を用いて測定する。
【0024】
本実施形態の複合粉体中におけるフッ化物の結晶子径は、90nm以上かつ150nm以下であり、95nm以かつ140nm以下であることが好ましく、100nm以上かつ130nm以下であることがより好ましい。
フッ化物の結晶子径が上記範囲であることにより、本実施形態の複合粉体を波長変換材料として用いた場合に、発光効率に優れる。
【0025】
本実施形態の複合粉体中における蛍光体の結晶子径は、100nm以上かつ250nm以下であり、110nm以上かつ230nm以下であることが好ましく、120nm以上かつ200nm以下であることがより好ましい。
蛍光体の結晶子径が上記範囲であることにより、本実施形態の複合粉体を波長変換材料として用いた場合に、発光効率に優れる。
【0026】
本実施形態の複合粉体は、体積粒度分布において、粒子径が5μm以下の積算値が0%であることが好ましい。すなわち、本実施形態の複合粉体は、体積粒度分布において、粒子径が5μm以下の粒子を含まないことが好ましい。
ここで、「体積粒度分布において、粒子径が5μm以下の積算値が0%である」とは、本実施形態の複合粉体を水に分散させた分散液を、粒度分布計(型番:LA−920、堀場製作所製)で測定した場合に、5μm以下の積算値が0%であり、5μm以下の粒子が観測されないことを意味する。分散液の調製方法は、特に限定されず、水に複合粉体を分散することができる方法であれば特に限定されない。分散液の調製方法としては、例えば、本実施形態の複合粉体0.2gと、水20gとを混合し、この混合液を超音波装置で1分処理する方法が挙げられる。このようにして調製した分散液を、粒度分布計で測定することにより、本実施形態の複合粉体の体積粒度分布を測定することができる。
【0027】
本実施形態の複合粉体の平均体積粒子径は、10μm以上かつ50μm以下であることが好ましく、12μm以上かつ40μm以下であることがより好ましく、15μm以上かつ30μm以下であることがさらに好ましい。
なお、平均体積粒子径とは、上述のように測定した、本実施形態の複合粉体の分散液の体積粒度分布において、累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)を意味する。
複合粉体の平均体積粒子径が上記範囲であることにより、本実施形態の複合粉体を波長変換材料として用いた場合に、発光効率に優れる。また、本実施形態の複合粉体は、耐薬品性および耐水性に優れる。
【0028】
本実施形態の複合粉体の形状は特に限定されないが、球状であることが好ましい。
本実施形態の複合粉体は、球状であることにより、後述する樹脂に分散し易くなる。また、本実施形態の複合粉体は、球状であることにより、励起光を均一に受光し易く、発光効率が向上する。
また、本実施形態の複合粉体の屈折率は、光散乱を抑制する観点から、1.6以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態の複合粉体は、フッ化物と蛍光体が複合化された粒子(以下、「複合粒子」と略記することがある。)の集合体である。複合粒子は、空隙を有する粒子よりも、空隙を有さない粒子が多いことが好ましい。
複合粒子が空隙を有さないことにより、励起光が粒子内部に侵入したり、粒子1個あたりの発光効率が低下したりすることを抑制できる。
複合粒子の空隙の有無は、走査型電子顕微鏡で観察することができる。空隙は、複合粒子の内部に存在することが多いため、複合粒子の断面を走査型電子顕微鏡で観察することが好ましい。
本実施形態の複合粉体は、空隙を有さない粒子を50%以上含有することが好ましく、70%以上含有することがより好ましく、90%以上含有することがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の複合粉体において、フッ化物と蛍光体の質量比は、所望の特性に応じて適宜調整される。例えば、蛍光体の含有率は、本実施形態の複合粉体の全質量に対して20質量%以上かつ70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ60質量%以下であることがより好ましい。
蛍光体の含有率が上記範囲であることにより、本実施形態の複合粉体を波長変換材料として用いた場合に、発光効率に優れる。
【0031】
「フッ化物」
フッ化物は、蛍光体を変質させない材料であれば特に限定されない。フッ化物は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムおよびフッ化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、取り扱いが容易な点から、フッ化カルシウムがより好ましい。
これらのフッ化物は、非晶質シリカ等、他の材料を混合して用いてもよい。
【0032】
「蛍光体」
蛍光体は、特に限定されず、300nm〜400nmの波長帯域の紫外線、または400nm〜500nmの波長帯域の可視光線により励起され、350nm〜400nmの波長帯域の紫外線、400nm〜700nmの波長帯域の可視光線、または700nmを超える波長帯域の赤外線を発光するような蛍光体を用いることができる。
このような蛍光体としては、例えば、酸化物、ハロゲン化物、リン酸塩、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、硫化物等の母材中に、希土類イオンや遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体粒子を用いることができる。また、希土類金属酸化物からなる蛍光体粒子、希土類金属の複合化合物の蛍光体粒子等を用いてもよい。
本実施形態では、黄色蛍光体として、青色LEDに一般的に用いられるイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と言うことがある。)等のガーネット構造を有する蛍光体を例示して、この蛍光体について説明する。
【0033】
「ガーネット構造を有する蛍光体」
本実施形態において、ガーネット構造を有する蛍光体とは、希土類元素から選択される少なくとも1種の元素がドープされた、ガーネット構造を有する蛍光体を意味する。
ガーネット構造を有する化合物としては、例えば、イットリウムアルミニウムガーネット、テルビウムアルミニウムガーネット、カルシウムスカンジウムシリケートガーネット等を用いることができる。
希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
これらの蛍光体の中でも、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)にCeをドープした蛍光体(YAG:Ce)を用いることが好ましい。
【0034】
「複合粉体の製造方法」
本実施形態の複合粉体は、フッ化物コロイドと蛍光体の前駆体溶液を混合した混合液から造粒粒子を作製する工程と、得られた造粒粒子から熱処理により前駆体溶液に含まれる有機分を除去し、熱処理物を得る工程と、得られた熱処理物を焼成する工程と、を有する。
本実施形態では、蛍光体として、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)にCeをドープした蛍光体(YAG:Ce)を用いる場合について説明する。
【0035】
蛍光体(YAG:Ce)の前駆体溶液は、特開2014−62072号公報に開示されているケト酸金属錯体水溶液と同様の方法で得られる。
すなわち、水溶性ケト酸を含む水溶液と、Al、Y、Ceそれぞれの水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩等の塩、または酸化物とを混合することにより、蛍光体(YAG:Ce)の前駆体溶液を調製することができる。
水溶性ケト酸としては、例えば、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸等を用いることができる。
水溶性ケト酸は、Al、Y、Ceそれぞれに配位結合して錯体を形成するために十分な量を添加すればよい。すなわち、Alのモル数×価数3と、Yのモル数×価数3と、Ceのモル数×価数3を合計したモル数以上となるように、水溶性ケト酸を添加すればよい。
【0036】
平均粒子径が5nm〜100nmのフッ化物コロイドと、蛍光体(YAG:Ce)の前駆体溶液とを、撹拌機等の公知の方法で混合し、フッ化物コロイドと蛍光体の前駆体溶液を混合した混合液を調製する。
【0037】
(造粒粒子を作製する工程)
この混合液を、アトマイザー方式のスプレードライヤー装置を用いて、ゆっくり噴霧乾燥することにより、15μm〜90μm程度に造粒し、空気の含有が抑制された造粒粒子を作製する。
【0038】
空気の含有を抑制するためには、アトマイザー方式のスプレードライヤー装置における熱風温度と排風温度は低くすればよい。熱風温度と排風温度は作製量に応じて、適宜調整すればよい。
アトマイザー方式のスプレードライヤー装置を用いることにより、ミクロンサイズの造粒粒子を容易に形成できるため、複合粉体が、5μm以下の粒子を含まないようにすることもできる。すなわち、複合粉体が、体積粒度分布において、粒子径が5μm以下の積算値が0%となるようにすることもできる。
【0039】
(有機分を除去する工程)
次いで、この造粒粒子を大気中で熱処理して、造粒粒子中の有機分(ケト酸等)を除去し、熱処理物を得る。
この工程では、蛍光体の前駆体溶液に含有される水溶性ケト酸が除去されればよいので、使用するケト酸に応じて、熱処理温度を調整すればよい。例えば、造粒粒子を500℃〜700℃で熱処理することが好ましい。
【0040】
(焼成工程)
次いで、この熱処理物を、不活性雰囲気または還元性雰囲気のいずれかで、1200℃〜1500℃で焼成を行うことにより、複合粉体を得ることができる。上記範囲で焼成することにより、蛍光体の結晶性に優れ、かつ球状の複合粉体が得られる。
【0041】
以上説明した製造方法により、本実施形態の複合粉体を得ることができる。
【0042】
本実施形態の複合粉体によれば、フッ化物と蛍光体を複合化した粉体で、LEDパッケージにした場合における発光効率が90lm/W以上であるため、発光効率に優れる波長変換材料として用いることができる。
【0043】
[表面処理複合粉体]
本実施形態の表面処理複合粉体は、本実施形態の複合粉体がシランカップリング剤で表面処理されてなる。
本実施形態で用いられるシランカップリング剤は、後述する樹脂と混合しやすい(相溶性に優れる)ものであれば特に限定されない。
【0044】
このようシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
シランカップリング剤による表面処理量は、所望の特性に応じて適宜調整される。シランカップリング剤による表面処理量は、例えば、複合粉体に対して、シランカップリング剤の添加量が1質量%以上かつ50質量%となるようにすることが好ましく、1質量%以上かつ20質量%以下となるようにすることがより好ましく、1質量%以上かつ15質量%以下となるようにすることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態の複合粉体をシランカップリング剤で表面処理する方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の複合粉体と、シランカップリング剤と、溶媒とを混合し、これらを加熱混合することにより、本実施形態の表面処理複合粉体を得ることができる。
本実施形態の複合粉体をシランカップリング剤で表面処理する場合には、条件によっては、フッ化物が水と反応する場合があるため、水を添加しないことが好ましい。
【0047】
本実施形態の表面処理複合粉体によれば、本実施形態の複合粉体がシランカップリング剤で表面処理されているため、より発光効率に優れる波長変換材料として用いることができる。
【0048】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の複合粉体および本実施形態の表面処理複合粉体の少なくとも一方と、樹脂と、を含む。
樹脂組成物中における複合粉体および表面処理複合粉体の少なくとも一方の含有量は、所望の特性に応じて、適宜調整すればよい。例えば、複合粉体および表面処理複合粉体の少なくとも一方の含有量の下限値は、1質量%であってもよく、5質量%であってもよく、10質量%であってもよい。複合粉体および表面処理複合粉体の少なくとも一方の含有量の上限値は99質量%であってもよく、90質量%であってもよく、70質量%であってもよく、50質量%であってもよい。複合粉体および表面処理複合粉体の少なくとも一方が上記範囲で含有されることにより、発光効率に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0049】
「樹脂」
本実施形態における樹脂としては、目的とする光の波長帯域に対して透明性を有する樹脂であればよく、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、可視光線や紫外線や赤外線等により硬化する光(電磁波)硬化性樹脂、電子線照射により硬化する電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。特に、シリコーン樹脂は、耐熱性および耐光性に優れ、さらに本実施形態の複合粉体との親和性も高いので好ましい。
【0050】
このようなシリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂、ビニル基含有シリコーン樹脂、アミノ基含有シリコーン樹脂、メタクリル基含有シリコーン樹脂、カルボキシ基含有シリコーン樹脂、エポキシ基含有シリコーン樹脂、カルビノール基含有シリコーン樹脂、フェニル基含有シリコーン樹脂、オルガノハイドロジェンシリコーン樹脂、脂環式エポキシ基変性シリコーン樹脂、多環式炭化水素含有シリコーン樹脂、芳香環炭化水素含有シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらのシリコーン樹脂は、通常は単独で用いられるが、用途によっては2種類以上のシリコーン樹脂を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物は、所望の効果を阻害しない範囲で、蛍光体、溶媒、分散剤、硬化剤、酸化防止剤などの一般的に用いられる添加剤等が含有されていてもよい。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の複合粉体と、樹脂とを、公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物によれば、本実施形態の複合粉体および表面処理複合粉体の少なくとも一方を含んでいるため、発光効率に優れる波長変換材料として用いることができる。
【0054】
[硬化体]
本実施形態の硬化体は、本実施形態の樹脂組成物を硬化してなる。
本実施形態の硬化体は、例えば、基材の少なくとも一方の面に塗布して塗膜の形態としてもよく、また、金型等を用いて成型体の形態としてもよく、フィルム状に成形してフィルムの形態としてもよい。
基材の種類は、樹脂組成物を塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ガラス基材やプラスチック基材等を用いることができる。
【0055】
本実施形態の硬化体の厚さは、所望の特性と、所望の形状に応じて適宜調整すればよい。
【0056】
本実施形態の塗膜形態の硬化体の製造方法は、上記樹脂組成物を被塗布物上に塗工することで塗膜を形成する工程と、この塗膜を硬化させる工程とを有する。
塗膜を形成する塗工方法としては、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、グラビアコート法、吸上げ塗工法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
【0057】
塗膜を硬化させる硬化方法としては、樹脂の種類に応じて適宜選択され、熱硬化させるか光硬化させる方法が用いられる。
【0058】
本実施形態の成型体形態の硬化体の製造方法は、上記樹脂組成物を金型等の型を用いて成型したり、型状の容器に充填したりすることにより、硬化体として得たい形状に成形された成形体(成型体および充填物)を得る工程と、この成形体を硬化する工程と、を有する。
【0059】
本実施形態のフィルム形態の硬化体の製造方法は、上記樹脂組成物を公知の方法により、フィルム状の硬化物を作製する方法である。
【0060】
本実施形態の硬化体によれば、本実施形態の樹脂組成物を硬化してなるため、発光効率に優れる波長変換材料として用いることができる。
【0061】
[光半導体発光装置]
本実施形態の光半導体発光装置は、本実施形態の硬化体を備えてなる。
本実施形態の硬化体は、半導体発光素子が発光する光を受光できる位置に備えられていればよい。硬化体の発光装置への実装は、公知の方法を用いることができる。
半導体発光素子としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LED(light−emitting diode)またはLD(laser diode)が好ましい。
その理由は、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LEDと比べて、発光出力および外部量子効率が格段に大きく、本実施形態の硬化体と組み合わせることにより、従来よりも明るい発光が得られるからである。
【0062】
本実施形態の発光装置によれば、本実施形態の硬化体を備えているため、発光効率に優れる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(フッ化カルシウムコロイドの作製)
塩化カルシウム2水和物294.1gと純水2000gを混合して、塩化カルシウム水溶液を調製した。
フッ化アンモニウム148.2gと純水2000gを混合して、フッ化アンモニウム水溶液を調製した。
【0065】
次いで、得られた塩化カルシウム水溶液とフッ化アンモニウム水溶液を混合し、フッ化カルシウム粒子を作製した。
このフッ化カルシウム粒子を含む溶液を、限外ろ過装置を用いて洗浄、濃縮し、フッ化カルシウム粒子を2質量%含むフッ化カルシウムコロイド溶液を作製した。
【0066】
このフッ化カルシウムコロイド溶液の平均体積粒子径(D50)を粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定した結果、30nmであった。また、このフッ化カルシウム粒子の結晶子径を、X線回折装置(商品名:X'Pert PRO、PANalytical社製)により、CuKα線を用いて測定した。その結果、フッ化カルシウムの結晶子径は8nmであった。
【0067】
(ガーネット構造の蛍光体(YAG:Ce)前駆体溶液の作製)
炭酸水素アンモニウム72.03gと、純水1000gとを混合して、炭酸水素アンモニウム水溶液を調製した。
硝酸アルミニウム9水和物61.91gと、硝酸イットリウム6水和物34.89gと、硝酸セリウム6水和物4.74gと、純水1000gとを混合し、硝酸塩水溶液を調製した。
【0068】
次いで、得られた炭酸水素アンモニウム水溶液と、硝酸塩水溶液とを混合し、Al、Y、Ceのヒドロキシ炭酸塩の沈殿物を作製した。
この沈殿物を真空濾過装置で洗浄し、固液分離した。回収した固形物を120℃にて24時間乾燥することにより、Al、Y、Ceヒドロキシ炭酸塩の乾燥粉体を得た。
【0069】
次いで、この乾燥粉体33.9g(YAG:Ceに換算して20g)と、グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸58.6gと純水407.5gの混合液)466.1gとの混合液を24時間撹拌し、Al、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液(ガーネット構造の蛍光体(YAG:Ce)前駆体溶液)を作製した。
【0070】
(複合粉体の作製)
Al、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液150gと、上記フッ化カルシウムコロイド溶液200gとを混合した。この混合液を、アトマイザーノズル方式のスプレードライヤー装置を用いて、約35μmの造粒粒子となるように調整して噴霧乾燥した。なお、スプレードライヤー装置の熱風温度を80℃に、排風温度を50℃に設定した。
【0071】
(造粒粒子の評価)
噴霧乾燥により得られた造粒粒子の一部を採取し、エチレングリコール(屈折率1.4)を滴下し、光学顕微鏡で観察した。
この観察方法では、造粒粒子の屈折率が約1.4であるため、エチレングリコールで複合粉体を覆うことにより、造粒粒子中に空気が含まれている場合には、その部分が白くなる。そのため、造粒粒子中にどの程度空気が含まれているかを観察することができる。
このような手順で観察した実施例1の造粒粒子の光学顕微鏡像を
図1に示す。
実施例1の造粒粒子では、空気が含まれている造粒粒子は少なかった。
【0072】
次いで、得られた造粒粒子を大気雰囲気中、550℃にて2時間熱処理を行った。
次いで、この熱処理物を、5%水素−95%窒素の混合ガスの還元性雰囲気中で、1300℃にて10時間焼成し、実施例1の複合粉体を得た。
【0073】
(複合粉体の評価)
得られた複合粉体を走査型電子顕微鏡により観察した。得られた複合粉体は、形状がほぼ球状であり、空隙を有する複合粉体はほとんど観察されなかった。結果を
図2に示す。
【0074】
「結晶子径」
得られた複合粉体の結晶子径を、X線回折装置(商品名:X'Pert PRO、PANalytical社製)により、CuKα線を用いて測定した。その結果、フッ化カルシウムの結晶子径は109nmで、YAGの結晶子径は160nmであった。
【0075】
「体積粒度分布」
実施例1の複合粉体0.2gと、水を20gとを混合し、この混合液を超音波で1分処理した。得られた分散液を粒度分布計(型番:LA−920、堀場製作所製)で測定した結果を表1および
図3に示す。実施例1の複合粉体の体積粒度分布は、5μm以下の積算値が0%で、5μm以下の粒子は測定されなかった。粒度分布の測定結果を
図3に示す。
【0076】
「内部量子効率と外部量子効率」
実施例1の複合粉体の内部量子効率と外部量子効率を、量子効率測定システム QE−2100(大塚電子社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(樹脂組成物の作製)
実施例1の複合粉体0.4gと、2液タイプのシリコーン樹脂 OE6630(屈折率:1.53、東レダウ社製)4.6gとを、真空脱泡撹拌機にて混合し、実施例1の樹脂組成物を得た。
【0078】
容量計算式デジタル制御ディスペンサー(商品名:MEASURING MASTER MPP−1、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、実施例1の樹脂組成物で、青色発光ダイオードを封止した。樹脂組成物を150℃にて2時間熱処理して硬化させることで、3030シリーズ(3.0mm×3.0mm)のLEDパッケージを作製した。
【0079】
このLEDパッケージの発光効率を、全光束測定システム HMシリーズ(大塚電子社製、球サイズ3000mm)を用いて測定した。
その結果、実施例1のLEDパッケージの発光効率は、93.4lm/Wであった。
【0080】
[実施例2]
実施例1の複合粉体10gと、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gと、トルエン100gとを混合した。130℃に設定したオイルバスと還流装置を用いて、この混合液を6時間撹拌した。
次いで、この混合液を洗浄、固液分離し、回収した固形物を80℃にて6時間乾燥することにより、実施例2の表面処理複合粉体を得た。
【0081】
実施例1の複合粉体の替りに、実施例2の表面処理複合粉体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物、LEDパッケージを得た。
実施例1と同様に評価した結果、実施例2のLEDパッケージの発光効率は、97.3lm/Wであった。
【0082】
[比較例1]
(フッ化カルシウムコロイドの作製)
塩化カルシウム2水和物376.6gと純水9624gを混合して、塩化カルシウム水溶液を調製した。
フッ化アンモニウム190gと純水9810gを混合して、フッ化アンモニウム水溶液を調製した。
【0083】
次いで、得られた塩化カルシウム水溶液とフッ化アンモニウム水溶液を混合し、フッ化カルシウム粒子を作製した。
このフッ化カルシウム粒子を含む溶液を、限外ろ過装置を用いて洗浄、濃縮し、フッ化カルシウム粒子を2質量%含むフッ化カルシウムコロイド溶液を作製した。
【0084】
このフッ化カルシウムコロイド溶液の平均体積粒子径を実施例1と同様に測定した結果、80nmであった。また、フッ化カルシウム粒子の結晶子径を実施例1と同様に測定した結果、20nmであった。
【0085】
(ガーネット構造の蛍光体(YAG:Ce)前駆体溶液の作製)
炭酸水素アンモニウム72.03gと、純水1000gとを混合して、炭酸水素アンモニウム水溶液を調製した。
硝酸アルミニウム9水和物61.91gと、硝酸イットリウム6水和物34.89gと、硝酸セリウム6水和物4.74gと、純水1000gとを混合し、硝酸塩水溶液を調製した。
【0086】
次いで、得られた炭酸水素アンモニウム水溶液と、硝酸塩水溶液とを混合し、Al、Y、Ceのヒドロキシ炭酸塩の沈殿物を作製した。
この沈殿物を真空濾過装置で洗浄し、固液分離した。回収した固形物を120℃にて24時間乾燥することにより、Al、Y、Ceヒドロキシ炭酸塩の乾燥粉体を得た。
【0087】
次いで、この乾燥粉体33.9g(YAG:Ceに換算して20g)と、グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸58.6gと純水407.5gの混合液)466.1gの混合液とを24時間撹拌し、Al、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液(ガーネット構造の蛍光体(YAG:Ce)前駆体溶液)を作製した。
【0088】
(複合粉体の作製)
Al、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液150gと、上記フッ化カルシウムコロイド溶液200gとを混合した。この混合液を、二流体ノズル方式のスプレードライヤー装置を用いて、約9μmの造粒粒子となるように調整して噴霧乾燥した。スプレードライヤー装置の熱風温度を115℃に、排風温度を60℃に設定した。
次いで、この乾燥物を大気雰囲気中、550℃にて2時間熱処理を行った。
次いで、この熱処理物を、5%水素−95%窒素の混合ガスの還元性雰囲気中で、1200℃にて5時間焼成し、比較例1の複合粉体を得た。
【0089】
実施例1と同様にして、比較例1の造粒粒子を光学顕微鏡で観察した。その結果、比較例1の造粒粒子では、実施例1と同様に、空気が含まれている造粒粒子は少なかった。
【0090】
比較例1の複合粉体の走査型電子顕微鏡像、結晶子径、体積粒度分布、内部量子効率、外部量子効率を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
比較例1の複合粉体の大きさは小さく、また、結晶子径も小さかった。また、比較例1の体積粒度分布は、5μm以下の積算値が0%を超えており、5μm以下の粒子を含むことが確認された。比較例1の体積粒度分布を
図3に、走査型電子顕微鏡像を
図4に示す。
【0091】
実施例1の複合粉体の替りに、比較例1の複合粉体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の樹脂組成物、LEDパッケージを得た。
実施例1と同様に評価した結果、比較例1のLEDパッケージの発光効率は、35.4lm/Wであった。
【0092】
[比較例2]
実施例1の複合粉体の作製において、スプレードライヤー装置の熱風温度を120℃、排風温度を70℃にした以外は実施例1と同様にして、比較例2の複合粉体を得た。
【0093】
実施例1と同様にして、比較例2の造粒粒子を光学顕微鏡で観察した。結果を
図5に示す。比較例2の複合粉体では、多くの造粒粒子に空気が含まれている様子が観察された。
【0094】
比較例2の複合粉体の走査型電子顕微鏡像、結晶子径、体積粒度分布を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
体積粒度分布では、5μm以下の粒子は含まれていなかった。
比較例2の走査型電子顕微鏡像を
図6に示す。
【0095】
実施例1の複合粉体の替りに、比較例2の複合粉体を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例2の表面処理複合粉体を得た。
実施例1の複合粉体の替りに、比較例2の表面処理複合粉体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の樹脂組成物、LEDパッケージを得た。
実施例1と同様に評価した結果、比較例2のLEDパッケージの発光効率は、87.7lm/Wであった。
【0096】
[参考例1]
比較例1の複合粉体の作製において、1200℃にて5時間焼成する替りに、実施例1と同じ焼成条件である1300℃にて5時間焼成した以外は比較例1と同様にして、参考例1の複合粉体を得た。
【0097】
参考例1の複合粉体の走査型電子顕微鏡像を実施例1と同様にして測定した。その結果、参考例1の複合粉体の走査型電子顕微鏡像は、粒子同士が焼結し、いびつな形状を有するものが多かった。参考例1の複合粉体の走査型電子顕微鏡像を
図7に示す。
実施例1と同様にして、参考例1の内部量子効率と外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例1の複合粉体の替りに、参考例1の複合粉体を用いた以外は実施例1と同様にして、参考例1の樹脂組成物、LEDパッケージを得た。
実施例1と同様に評価した結果、参考例1のLEDパッケージの発光効率は、58.5lm/Wであった。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1と比較例1を比較することにより、5μm以下の粒子を含まず、結晶子径が一定以上の大きさを有する複合粉体は、量子効率に優れ、LEDパッケージにした時の発光効率に優れることが確認された。
実施例1と比較例2を比較することにより、空隙を有する粒子が少ない方が、量子効率に優れ、LEDパッケージにした時の発光効率に優れることが確認された。
また、実施例1と実施例2を比較することにより、シランカップリング剤で表面処理された複合粉体は、LEDパッケージにした時の発光効率により優れることが確認された。