(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る保護部材形成装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る保護部材形成装置の模式図である。なお、本実施の形態に係る保護部材形成装置は、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。また、本実施の形態では、板状ワークの一方の面に研削加工を施すために他方の面に保護部材を形成する構成について説明するが、この構成に限定されない。所定の加工を施すものであればよく、例えば、研削加工ではなく切削加工を施すために保護部材を形成してもよい。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る保護部材形成装置1は、液状樹脂Rが塗布された保護シートSを板状ワークWの被研削面(一方の面)とは反対の面(他方の面)に対して貼着するように構成されている。保護部材形成装置1は、ステージ2の上に載置された保護シートSの上に液状樹脂Rを塗布し、ステージ2の上方で押圧手段3に保持された板状ワークWを保護シートSに対して押し付けるように動作する。これにより、保護シートS上の液状樹脂Rが押し広げられ、板状ワークWの他方の面全体に保護シートSが貼着される。
【0014】
板状ワークWは、金属等の基板上に樹脂等を塗布したパッケージ基板や、基板の表面に複数の凸部が形成されたバンプウエーハで構成される。本実施の形態では、板状ワークWが平面視円形状ではなく平面視矩形状を有している(
図6参照)。具体的に本実施の形態では、中心(重心)から外周までの距離が一定でない板状ワークWを保護部材形成の対象としている。なお、板状ワークWは、これらの構成に限定されず、シリコン、ガリウムヒ素、セラミック、ガラス、サファイア等の材質で構成されるインゴットをワイヤーソーで薄くスライスして形成してもよい。また、板状ワークWは矩形状に限らず、適宜変更が可能である。
【0015】
保護シートSは、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチック材料で構成され、透光性を有している。保護シートSは、板状ワークWの外形より僅かに大きい矩形状に形成されている。また、液状樹脂Rは、光硬化型の樹脂であり、紫外線等の光が照射されることで光重合反応により硬化される。
【0016】
保護部材形成装置1は、保護シートSを吸引保持するステージ2と、保護シートSに対して液状樹脂を塗布する樹脂供給手段4と、板状ワークWを吸引保持し、当該板状ワークWを保護シートS上の液状樹脂Rに向かって押圧する押圧手段3とを備えている。ステージ2は、保護シートSや板状ワークWの外形より大きい矩形形状を有しており、石英ガラス等の透光性材料によって形成されている。ステージ2には、図示しない吸引源が接続されており、ステージ2の上面に発生する負圧によって、保護シートSがステージ2に吸引保持される。ステージ2の内部には、保護シートS上の液状樹脂Rに向かって紫外線等の光を照射する発光部5が設けられている。
【0017】
樹脂供給手段4は、ステージ2の上方からステージ2上の保護シートSに向けて液状樹脂を落下供給するノズル40と、ノズル40に液状樹脂Rを供給する液状樹脂供給源41とを有している。液状樹脂供給源41は図示しない配管を介してノズル40に接続されている。また、ノズル40は、図示しない移動機構により、ステージ2の上方において任意の位置に移動可能に構成される。これにより、保護シートS上の任意の箇所に液状樹脂Rを滴下することができる。
【0018】
押圧手段3は、上面視矩形状のベース部材30の下面側に板状のポーラス部材31を嵌め込んで構成される。ポーラス部材31は、板状ワークWと略同じ外形の矩形状を有しており、ベース部材30内の流路(不図示)を介して図示しない吸引源に接続されている。押圧手段3は、ポーラス部材31の露出面(下面)生じる負圧により、板状ワークWを吸引保持する。すなわち、ポーラス部材31の露出面が板状ワークWを保持する保持面32を構成する。また、押圧手段3は、ボールネジ式の昇降手段33によって鉛直方向に移動可能に構成されている。
【0019】
このように構成される保護部材形成装置1では、ステージ2上で保護シートSが吸引保持された後、保護シートSの上にノズル40から液状樹脂Rが塗布される。このとき、ステージ2の中心だけでなく、ステージ2の中心から離れた位置にも液状樹脂Rが塗布される。また、押圧手段3の保持面32には板状ワークWが吸引保持されている。押圧手段3が降下されて板状ワークWが液状樹脂Rに押し付けられることにより、液状樹脂Rが板状ワークWの全面に押し広げられる。そして、発光部5から液状樹脂Rに紫外線が照射されることで液状樹脂Rが硬化され、板状ワークWに保護部材P(
図5参照)が形成される。
【0020】
上記したように、パッケージ基板等の板状ワークWは、平面視矩形状を有しており、中心から外周までの距離が一定でない形状を有している。このため、円形状の板状ワークと同様に、保護シートS上の液状樹脂Rに対して板状ワークWの中央部分を接触させて液状樹脂Rを拡張させると、板状ワークWの長手方向の外縁部に液状樹脂Rが到達する前に、短手方向の外縁部から先に液状樹脂Rがはみ出てしまう。一方、短手方向の外縁部から液状樹脂Rがはみ出ないように液状樹脂Rの塗布量を調整すると、長手方向に液状樹脂が十分に行き渡らない。このように、板状ワークWの表面全体に液状樹脂Rを押し広げることができないという問題があった。
【0021】
そこで、本発明では、ステージ2の中心だけでなく、一箇所に塗布された液状樹脂R(後述する第1の液状樹脂R1)のみでは到達し得ない箇所にも液状樹脂R(後述する第2の液状樹脂R2)を塗布している。そして、これらの液状樹脂Rを押圧したときに、第1の液状樹脂R1と第2の液状樹脂R2とが結合される結果、第1の液状樹脂R1のみでは到達し得ないエリアにも第1の液状樹脂R1を流動させることができる。よって、板状ワークWの表面全体に液状樹脂Rの塗布することができる。
【0022】
次に、
図2から
図6を参照して、本実施の形態に係る保護部材の形成方法について説明する。
図2は、本実施の形態に係る樹脂供給工程の一例を示す模式図である。
図3は、本実施の形態に係る周辺樹脂配置工程の一例を示す模式図である。
図4は、本実施の形態に係る拡張工程の一例を示す模式図である。
図4Aから
図4Dは拡張工程における液状樹脂の流動状態の遷移図である。
図5は、本実施の形態に係る硬化工程の一例を示す模式図である。
図6は、本実施の形態に係る保護部材の形成方法の一例を示す上面図である。
図6Aは樹脂供給工程を示し、
図6Bは周辺樹脂配置工程を示し、
図6Cから
図6Eは拡張工程を示している。なお、
図2から
図6においては、説明の便宜上、一部の構成を省略しており、特に
図6では板状ワークを二点鎖線で示している。
【0023】
図2から
図6に示すように、本実施の形態に係る保護部材の形成方法(
図6参照)は、樹脂供給工程(
図2参照)と、周辺樹脂配置工程(
図3参照)と、拡張工程(
図4参照)と、硬化工程(
図5参照)とによって構成される。樹脂供給工程では、ステージの中心に第1の液状樹脂R1(以下、液状樹脂R1と記す)が落下供給される。周辺樹脂配置工程では、ステージ2上の液状樹脂R1の周辺において、液状樹脂R1とは異なる位置に第2の液状樹脂R2(以下、液状樹脂R2(周辺樹脂)と記す)が配置(供給)される。拡張工程では、ステージ2上の液状樹脂R1、R2が押圧手段3によって拡張される。硬化工程では、拡張された液状樹脂R1、R2が硬化される。以上の工程により、板状ワークWに樹脂層Lと保護シートSで構成される保護部材Pが形成される。以下、保護部材Pの形成方法の各工程について説明する。
【0024】
図2に示すように、ステージ2の上面には、保護シートSがステージ2の中心と保護シートSの中心とが一致するように載置され、ステージ2の上面に発生する負圧によって吸引保持されている。第1の液状樹脂供給工程では、ステージ2(保護シートS)の略中央上方にノズル40が位置付けられ、ノズル40の先端がステージ2(保護シートS)の中心に向けられる。そして、ノズル40から所定量の液状樹脂R1が滴下される。
【0025】
液状樹脂R1は、保護シートSの中心に滴下された後、自重により径方向外側に向かって流動する。この結果、液状樹脂R1は、
図6Aに示すように、所定の厚みを有した状態で上面視円形状に拡散される。なお、液状樹脂R1の滴下量は、保護シートS上に滴下された液状樹脂R1が保護シートS(板状ワークW)の短手方向の幅より小さい円形状に広がるように調整されることが好ましい。
【0026】
次に、周辺樹脂配置工程が実施される。周辺樹脂配置工程では、
図3に示すように、ノズル40がステージ2の中央上方から水平方向外側に移動され、ノズル40の先端がステージ2(保護シートS)の中心から外側にずれた位置に位置付けられる。そして、ノズル40から所定量の液状樹脂R2が滴下される。周辺樹脂配置工程では、
図6Bに示すように、円形状の液状樹脂R1の外周から離れた位置に液状樹脂R2(周辺樹脂)が4箇所において滴下される。
【0027】
より具体的には、保護シートSの長手方向における液状樹脂R1の最外縁部(直径)よりも外側であって、短手方向における液状樹脂R1の最外縁部(直径)よりも内側に液状樹脂R2が滴下される。また、液状樹脂R2の滴下量は、液状樹脂R1の滴下量に比べ十分に少ない。このため、液状樹脂R1の厚みT1に対して液状樹脂R2の厚みT2が小さくなると共に、液状樹脂R1の外径より液状樹脂R2の外径が小さくなるように、液状樹脂R2が円形状に広がる(
図3及び
図6B参照)。これにより、後述する拡張工程において、ステージ2中央の液状樹脂R1が先に押圧され、その後外周側の液状樹脂R2が押圧されることで液状樹脂が中央から外周側に向かって徐々に押し広げられる。このため、液状樹脂R1と液状樹脂R2との間に気泡が入り難くなっている。
【0028】
また、保護シートS上に滴下された液状樹脂R2の外縁と板状ワークWの中心との最短距離X1が、板状ワークWの中心から短手方向の外縁部までの距離X2より小さいことが好ましい。拡張工程において、液状樹脂R1が板状ワークWの外縁部(長辺部)からはみ出る前に液状樹脂R1と液状樹脂R2とを結合させることができるためである。さらに、板状ワークWの角部及び液状樹脂R2の外縁の距離X3と、板状ワークWの長辺部から液状樹脂R1の外縁までの距離X4との差が、より小さくなる位置に液状樹脂R2が滴下されることが好ましい。液状樹脂R1又は液状樹脂R2が板状ワークWの外縁部に到達するまで流動距離を、長手方向及び短手方向において可能な限り近づけるためである。これにより、拡張工程において、板状ワークWの短手方向における外縁部から液状樹脂R1、R2がはみ出るときに、板状ワークWの長手方向にも液状樹脂R1、R2を行き渡らせることができる。
【0029】
なお、本実施の形態においては、樹脂供給工程で供給された液状樹脂R1とは別に液状樹脂R1の周囲に周辺樹脂(液状樹脂R2)を配置(滴下)する構成としたが、この構成に限定されない。周辺樹脂は、拡張工程において液状樹脂R1の広がりを板状ワークWの長手方向にサポートするものであり、後述する変形例(
図9から
図13参照)のように、液状樹脂R1の一部を延ばすことで液状樹脂R1の周囲に配置される樹脂も周辺樹脂に含むものとする。
【0030】
次に、拡張工程が実施される。押圧手段3の保持面32に板状ワークWの一方の面(被研削面)が吸引保持され、他方の面が下方(ステージ2側)に向けられている(
図1参照)。また、ステージ2(保護シートS)の中心と板状ワークWの中心(重心)とが一致されている。拡張工程では、
図4に示すように、昇降手段33(
図1参照)によって押圧手段3が降下され、板状ワークWの下面中央が、液状樹脂R2に対して比較的厚みの大きい液状樹脂R1の上面に接触する(
図4A参照)。
【0031】
板状ワークWが液状樹脂R1に接触して押圧手段3が徐々に降下され、板状ワークWは液状樹脂R1を均一に押圧する。この結果、液状樹脂R1は径方向外側に向かって均一に押し広げられ、外径が大きくなる。そして、
図4B及び
図6Cに示すように、液状樹脂R2の上面が板状ワークWに接触する前であって(
図4B参照)、かつ液状樹脂R1の外縁が保護シートS(板状ワークW)の短手方向の外縁部に到達する前に(
図6C参照)、液状樹脂R1と液状樹脂R2とが結合(合流)する。このとき、板状ワークWの中央部分の液状樹脂R1が、押し広げられながら径方向外側の液状樹脂R2に合流するため、液状樹脂R1と液状樹脂R2との間に気泡が混入し難くなっている。
【0032】
液状樹脂R1は、液状樹脂R2に結合するまでは保護シートS(板状ワークW)の中心から径方向外側に均一に広がるように流動していた。しかしながら、液状樹脂R1が液状樹脂R2に結合することで、保護シートS(板状ワークW)の短手方向における液状樹脂R1の流れが崩されて、液状樹脂R1は、結合された液状樹脂R2に向かって流動する。すなわち、それまで短手方向に流動していた液状樹脂R1が、液状樹脂R2に結合することで長手方向に流動するようになる。
【0033】
さらに押圧手段3(板状ワークW)が降下されると、
図4C及び
図6Dに示すように、液状樹脂R1は液状樹脂R2に合流しながら長手方向に流動する一方、液状樹脂R2は、板状ワークWの下面が液状樹脂R2の上面に接触されることで径方向外側に押し広げられる。液状樹脂R1、R2は一体となって長手方向外側に向かって流動する。そして、
図4D及び
図6Eに示すように、板状ワークWの外周から液状樹脂R1、R2が僅かにはみ出るまで押圧手段3が降下されることにより、板状ワークWの下面全体に液状樹脂R1、R2が押し広げられる。
【0034】
このように、樹脂供給工程で液状樹脂R1をステージ2の中央に塗布し、周辺樹脂配置工程では、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリア(液状樹脂R1の周辺)に液状樹脂R2(周辺樹脂)を塗布している。そして、拡張工程によって液状樹脂R1、R2を押し広げ、液状樹脂R2によって液状樹脂R1の広がりを途中から長手方向にサポートしている。この結果、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、R2を行き渡らせることができる。このように、液状樹脂R2は、拡張工程における液状樹脂R1の広がりを案内する役割を果たす。
【0035】
次に、硬化工程が実施される。硬化工程では、
図5に示すように、板状ワークWの下面全体に押し広げられた液状樹脂R1、R2(
図4D参照)に向かって発光部5から光が照射される。光は、透光性のステージ2及び保護シートSを透過して液状樹脂R1、R2に吸収される。そして、液状樹脂R1、R2が光重合反応によって硬化され、板状ワークWと保護シートSとの間に均一な厚みの樹脂層Lが形成される。この結果、板状ワークWの下面全体に樹脂層L及び保護シートSで構成される保護部材Pが形成される。以上により、板状ワークWの凸凹面が平坦に均される。
【0036】
以上のように、本実施の形態に係る保護部材の形成方法によれば、樹脂供給工程によって板状ワークWの中心(重心)に液状樹脂R1が供給され、周辺樹脂配置工程によって板状ワークWの中心から離れた位置(液状樹脂R1の周辺)に液状樹脂R2(周辺樹脂)が配置(供給)される。拡張工程において、液状樹脂R1が押し広げられ、液状樹脂R1と液状樹脂R2とが結合することにより、液状樹脂R1の広がりが液状樹脂R2によってサポートされる。これにより、液状樹脂R1単体では到達しない板状ワークWの外周までのエリアにも液状樹脂R1を拡張することができる。そして、硬化工程によって第1の液状樹脂R及び第2の液状樹脂R1を硬化させることにより、板状ワークWの全面に保護部材Pを形成することができる。このように、板状ワークWの形状によらず、板状ワークWの全面に液状樹脂R1、R2を塗布して保護部材Pを形成することができる。
【0037】
次に、
図7を参照して、第1の変形例に係る保護部材の形成方法について説明する。
図7は、第1の変形例に係る保護部材の形成方法を示す模式図である。
図7Aは第1及び第2の液状樹脂が供給された直後の状態を示し、
図7Bは拡張工程の途中の状態を示している。
図7においては、第2の液状樹脂の供給方法が本実施の形態と異なる。以下、相違点を重点的に説明する。なお、本実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号で説明する。
【0038】
第1の変形例では、
図7Aに示すように、矩形状の保護シートSの中心(重心)には、樹脂供給工程によって液状樹脂R1が滴下され、液状樹脂R1は円形状に拡散されている。そして、周辺樹脂配置工程では、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリアに液状樹脂R2(周辺樹脂)が4箇所において塗布(供給)される。より具体的には、液状樹脂R1の外側に略楕円形状の液状樹脂R2が保護シートS(板状ワークW)の対角線上に沿って延在するように4箇所において塗布される。そして、
図7Bに示すように、拡張工程によって液状樹脂R1が押し広げられると、液状樹脂R1と液状樹脂R2とが結合されて、液状樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが長手方向にサポートされる。この結果、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、R2を行き渡らせることができる。
【0039】
次に、
図8を参照して、第2の変形例に係る保護部材の形成方法について説明する。
図8は、第2の変形例に係る保護部材の形成方法を示す模式図である。
図8Aは第1及び第2の液状樹脂が供給された直後の状態を示し、
図8Bは拡張工程の途中の状態を示している。
図8においては、板状ワーク及び保護シートの形状が矩形状ではなく、半円状(扇状)である点で本実施の形態と異なる。以下、相違点を重点的に説明する。なお、本実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号で説明する。
【0040】
第2の変形例では、
図8Aに示すように、保護シートS(板状ワークW)が半円状に形成されている。樹脂供給工程では、保護シートS(板状ワークW)の略中央に液状樹脂R1が滴下され、液状樹脂R1は円形状に拡散される。より具体的には、半円状の保護シートS(板状ワークW)の重心位置に液状樹脂R1が滴下(供給)される。そして、周辺樹脂配置工程では、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリアに液状樹脂R2(第2の液状樹脂)が2箇所において塗布される。
【0041】
第2の変形例では、液状樹脂R1の外側であって長手方向(直径方向)の両側に円形状の液状樹脂R2が塗布される。そして、
図8Bに示すように、拡張工程によって液状樹脂R1が押し広げられると、液状樹脂R1と液状樹脂R2とが結合されて、液状樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが長手方向(直径方向)にサポートされる。この結果、半円状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、R2を行き渡らせることができる。
【0042】
このように、第1及び第2の変形例においても、樹脂供給工程によって板状ワークWの重心(中心)に液状樹脂R1が供給され、周辺樹脂配置工程によって板状ワークWの中心から離れた位置に液状樹脂R2(周辺樹脂)が配置(供給)される。よって、拡張工程において、液状樹脂R1単体では到達しない板状ワークWの外周までのエリアにも液状樹脂R1、R2を拡張させることができる。そして、硬化工程によって液状樹脂R1、R2を硬化させることにより、板状ワークWの全面に保護部材Pを形成することができる。
【0043】
次に、
図9及び
図10を参照して、第3の変形例に係る保護部材の形成方法について説明する。
図9及び
図10は、第3の変形例に係る周辺樹脂配置工程を示す模式図である。
図9Aから
図9C及び
図10Aから
図10Cは側面から見た周辺樹脂配置工程の動作遷移図を示し、
図10Dは周辺樹脂配置工程が終了したときの上面模式図を示している。
図9及び
図10に示す第3の変形例では、樹脂供給工程で供給された液状樹脂を、周辺樹脂配置工程において延ばし部(後述するプレート60)で延ばすことにより周辺樹脂を形成する点で本実施の形態と異なる。以下、相違点を重点的に説明する。なお、本実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号で説明する。
【0044】
図9Aに示すように、上記した実施の形態と同様に樹脂供給工程でステージ2上の保護シートSの中心に液状樹脂R1が滴下(供給)された後、周辺樹脂配置工程が実施される。周辺樹脂配置工程では、ステージ2の上方に、液状樹脂R1を所定のエリアに引き延ばすプレート60が設けられている。プレート60は、鉛直方向に延びる側面視矩形状の板状体で形成され、水平移動手段61及び昇降手段62によって水平方向及び鉛直方向に移動可能に構成されている。また、ステージ2は、図示しない回転手段により、ステージ2の中心を軸に回転可能に構成されている。
【0045】
プレート60は、保護シートS上の液状樹脂R1の真上(中心)に位置付けられ、プレート60の短手方向が板状ワークW(保護シートS)の対角線上に向けられている(
図10D参照)。そして、
図9Bに示すように、昇降手段62によってプレート60が降下され、プレート60の下端が液状樹脂R1に接触(没液)する。さらに、プレート60が昇降手段62によって徐々に降下されプレート60の高さが微調整されながら、プレート60は、
図9Cに示すように、水平移動手段61によって板状ワークWの対角線に沿って水平移動される。これにより、保護シートS上の液状樹脂R1の液溜まりが崩され、プレート60によって液状樹脂R1は、板状ワークWの角部に向かって引き延ばされる。この結果、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。
【0046】
一方向において液状樹脂R1が引き延ばされると、
図10Aに示すようにプレート60が上昇され、ステージ2が所定角度回転される。そして、新たな方向において液状樹脂R1の引き延ばし(周辺樹脂R2の配置)が実施される。
図9と同様に、昇降手段62によってプレート60が降下され、プレート60の下端が液状樹脂R1に接触(没液)する(
図10B参照)。さらに、プレート60が昇降手段62によって徐々に降下されプレート60の高さが微調整されながら、プレート60は、水平移動手段61によって板状ワークWの対角線に沿って水平移動される(
図10C参照)。これにより、新たな方向においても、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。
【0047】
そして、再びステージ2を所定角度回転させ、残りの対角線上においてもプレート60を板状ワークWの中央からそれぞれの角部に向かって移動させて液状樹脂R1を引き延ばす。以上により、
図10Dに示すように、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの全ての対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。
【0048】
このように、第3の変形例では、周辺樹脂配置工程によって液状樹脂R1がステージ2の中央から板状ワークWの外側に向かって引き延ばされることにより、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリアにも周辺樹脂R2を形成(配置)することができる。そして、上記した実施の形態と同様に、拡張工程によって液状樹脂R1及び周辺樹脂R2が押し広げられる結果、周辺樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが板状ワークWの長手方向にサポートされる。よって、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、周辺樹脂R2を行き渡らせることができる(
図6E参照)。
【0049】
次に、
図11を参照して、第4の変形例に係る保護部材の形成方法について説明する。
図11は、第4の変形例に係る保護部材の形成方法を示す模式図である。
図11Aは樹脂供給工程を示し、
図11Bは第4の変形例に係る仕切板(延ばし部)の斜視図を示し、
図11Cは周辺樹脂配置工程の側面模式図を示し、
図11Dは周辺樹脂配置工程の上面模式図を示している。
図11に示す第4の変形例では、樹脂供給工程で供給された液状樹脂を、周辺樹脂配置工程において、十字状に形成される仕切板で押し付けて延ばすことにより周辺樹脂を形成する点で本実施の形態(第3の変形例)と異なる。以下、相違点を重点的に説明する。なお、本実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号で説明する。
【0050】
図11Aに示すように、樹脂供給工程では、ステージ2上の保護シートSの中心に液状樹脂R1が滴下(供給)される。そして、次に周辺樹脂配置工程が実施される。
図11Bに示すように、第4の変形例では、矩形状の板状ワークW(
図11D参照)の対角線に沿う十字状を有する仕切板70によって、周辺樹脂配置工程が実施される。仕切板70は、より具体的には、板状ワークWの対角線に沿って延びる2枚の矩形板を板状ワークWの中央でクロスさせた十字形状を有している。また、仕切板70は、昇降手段71により鉛直方向に移動可能に構成される。
【0051】
図11C及び
図11Dに示すように、ステージ2の上方には、液状樹脂R1を所定のエリアに流動させる仕切板70が設けられており、ステージ2の中心と仕切板70の交差部分が一致するように位置づけられている。周辺樹脂配置工程では、昇降手段71によって仕切板70が降下され、仕切板70の下端が液状樹脂R1に接触する。さらに仕切板70が降下されると、液状樹脂R1は、仕切板70により上面視において4つのエリアに仕切られるように押圧される(
図11D参照)。液状樹脂R1は、仕切板70によって押圧されると共に仕切板70の延在方向(板状ワークWの対角方向)に沿って流動する。これにより、保護シートS上の液状樹脂R1の液溜まりが崩され、
図11Dに示すように、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。
【0052】
このように、第4の変形例では、周辺樹脂配置工程によって液状樹脂R1がステージ2の中央から板状ワークWの外側に向かって流動して延ばされることにより、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリアにも周辺樹脂R2を形成(配置)することができる。そして、上記した実施の形態と同様に、拡張工程によって液状樹脂R1及び周辺樹脂R2が押し広げられる結果、周辺樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが板状ワークWの長手方向にサポートされる。よって、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、周辺樹脂R2を行き渡らせることができる(
図6E参照)。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0054】
例えば、上記した実施の形態では、液状樹脂が光硬化型の樹脂で構成されるとしたが、この構成に限定されない。液状樹脂は、熱硬化型の樹脂でもよい。この場合、硬化工程においては、発光部5の代わりにヒーター等を用いて液状樹脂を硬化させてもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、ステージ2に吸引保持された保護シートSの上に液状樹脂R1、R2を供給し、板状ワークWを吸引保持する押圧手段3によって液状樹脂を押し広げる構成としたが、この構成に限定されない。ステージ2及び押圧手段3のいずれか一方で板状ワークWを保持し、いずれか他方が板状ワークWに対向して、ステージ2上の板状ワークWの中心又はステージ2の中心に液状樹脂R1、R2を供給できればどのように構成されてもよい。例えば、ステージ2に吸引保持された板状ワークWの上に液状樹脂R1、R2供給し、その上から保護シートSを載置した後、押圧手段によって液状樹脂R1、R2を押し広げてもよい。この場合においても、液状樹脂R1が押し広げられた結果、液状樹脂R1と液状樹脂R2とが結合されて、液状樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが長手方向にサポートされる。よって、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの全面に液状樹脂R1、R2を行き渡らせることができる。このように、板状ワークWの形状によらず、板状ワークWの全面に液状樹脂R1、R2を塗布して保護部材Pを形成することができる。
【0056】
また、上記した実施の形態では、樹脂供給手段4によって保護シートS上に液状樹脂が供給される構成としたが、この構成に限定されない。作業者が直接、保護シートS上に液状樹脂R1、R2を滴下してもよい。
【0057】
また、上記した実施の形態では、保護シートSを介して液状樹脂R1、R2が板状ワークに塗布される構成としたが、この構成に限定されない。保護シートSは、必ずしも使用されなくてよい。
【0058】
また、上記した本実施の形態では、液状樹脂R1を円形状に塗布し、周辺樹脂R2を円形状に塗布する構成としたが、この構成に限定されない。塗布される液状樹脂R1、R2の形状は適宜変更が可能である。例えば、周辺樹脂R2をステージ2(保護シートS又は板状ワークW)の中心側の面積が大きく、外周に向かうほど面積が小さくなるように塗布してもよい。また、周辺樹脂R2の滴下箇所は4箇所に限らず、2箇所や5個所以上に点在させてもよい。
【0059】
また、上記した第3の実施の形態において、一枚のプレート60で液状樹脂R1を対角線上に引き延ばす構成としたが、この構成に限定されない。
図12及び
図13に示す構成も可能である。以下、
図12及び
図13を参照して、第5の変形例に係る保護部材の形成方法について説明する。
図12は、第5の変形例に係る周辺樹脂配置工程を示す上面模式図であり、
図13は、第5の変形例に係る周辺樹脂配置工程を示す側面模式図である。第5の変形例においては、一対のプレートを厚み方向に対向配置し、当該一対のプレートで液状樹脂を引き延ばす点で第3の変形例と異なる。以下、相違点を重点的に説明する。なお、上記した実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号で説明する。
【0060】
図12A及び
図13Aに示すように、樹脂供給工程でステージ2上の保護シートSの中心に液状樹脂R1が滴下(供給)された後、周辺樹脂配置工程が実施される。周辺樹脂配置工程では、ステージ2の上方に、液状樹脂R1を所定のエリアに引き延ばす一対のプレート80が設けられている。プレート80は、鉛直方向に延びる側面視矩形状の板状体で形成され、
図12Bに示すように、一対のプレート80は、厚み方向に対向し所定の隙間Dを空けて配置されている。また、一対のプレート80は、図示しない水平移動手段及び昇降手段によって水平方向及び鉛直方向に移動可能に構成されると共に、互いの対向間隔(上記した隙間D)を自由に調整可能に構成される。また、ステージ2は、図示しない回転手段により、ステージ2の中心を軸に回転可能に構成されている。
【0061】
図12B及び
図13Aに示すように、一対のプレート80は、保護シートS上の液状樹脂R1の上方に位置付けられ、一対のプレート80の短手方向が板状ワークW(保護シートS)の対角線上に向けられている。すなわち、一対のプレート80が対向する方向と対角線の方向とが直交する方向に向けられている。そして、
図13Bに示すように、昇降手段62によってプレート80が降下され、プレート80の下端が液状樹脂R1に接触(没液)する。このとき、液状樹脂R1は、粘性により一対のプレート80の隙間Dの間の空間に入り込み、所定量の液状樹脂R1が当該隙間D内に保持される。
【0062】
この状態で、一対のプレート80が板状ワークWの対角線に沿って(一対のプレート80が対向する方向に対して直交する方向に)水平移動される(
図12Cから
図12E及び
図13Cから
図13E参照)。これにより、保護シートS上の液状樹脂R1の液溜まりが崩され、プレート60によって液状樹脂R1は、板状ワークWの角部に向かって引き延ばされる。このとき、一対のプレート80が板状ワークWの角に近づくに従って、隙間Dが徐々に広げられる。これにより、隙間Dに保持される液状樹脂R1の量を調整しながら、液状樹脂R1を対角線に沿って引き延ばすことができる。
【0063】
このように、一対のプレート80の隙間Dに液状樹脂R1を保持させたことにより、プレート60が一枚の場合に比べてより多くの液状樹脂R1を保持することができる。よって、液状樹脂R1を保持した状態で2枚のプレート60を対角線上に移動させることで、一度により多くの液状樹脂R1を流動させて周辺樹脂R2を形成することができる。この結果、
図12E及び
図13Eに示すように、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。なお、上記したように、一対のプレート80が板状ワークWの角に近づくに従って、隙間Dを徐々に広げて隙間Dに保持される液状樹脂R1の量を調整したことにより、周辺樹脂R2は、液状樹脂R1から保護シートSの外周に向かって僅かに下方に傾斜するように形成(配置)される。
【0064】
一方向において液状樹脂R1が引き延ばされた後、ステージ2を所定角度回転させ、残りの対角線上においても一対のプレート80を板状ワークWの中央からそれぞれの角部に向かって移動させる。以上により、液状樹脂R1が引き延ばされた結果、液状樹脂R1の周辺に板状ワークWの全ての対角線上に沿う周辺樹脂R2が形成(配置)される。
【0065】
このように、第5の変形例では、周辺樹脂配置工程によって液状樹脂R1がステージ2の中央から板状ワークWの外側に向かって引き延ばされることにより、液状樹脂R1のみを押圧して拡径させた場合に当該液状樹脂R1が板状ワークWの外周まで到達しないエリアにも周辺樹脂R2を形成(配置)することができる。そして、上記した実施の形態と同様に、拡張工程によって液状樹脂R1及び周辺樹脂R2が押し広げられる結果、周辺樹脂R2により液状樹脂R1の広がりが板状ワークWの長手方向にサポートされる。よって、矩形状の板状ワークWであっても板状ワークWの下面全面に液状樹脂R1、周辺樹脂R2を行き渡らせることができる(
図6E参照)。
【0066】
また、上記した第3及び第5の変形例において、引き延ばし部として側面視矩形状のプレート60又は一対のプレート80を用いる構成としたが、この構成に限定されない。引き延ばし部は、液状樹脂R1を引き延ばすことができればよく、引き延ばし部として、例えば、円柱状の棒やパイプを用いてもよい。
【0067】
また、上記した第5の変形例において、一対のプレート80が板状ワークWの角に近づくに従って、隙間Dを徐々に広げる構成としたが、この構成に限定されない。例えば、隙間Dを広げる代わりに、一対のプレート80が板状ワークWの角に近づくに従って、一対のプレート80を徐々に上昇させてもよい。これによっても、隙間Dに保持される液状樹脂R1の量を微調整しながら引き延ばすことができる。パイプを用いて液状樹脂R1を引き延ばすときも同様に、パイプの移動に応じてパイプを上昇させてもよい。