(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479535
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】端子、端子付き電線、ワイヤハーネス構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-72402(P2015-72402)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192347(P2016-192347A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】横関 秀司
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−55874(JP,A)
【文献】
特開2014−116323(JP,A)
【文献】
特開2006−92992(JP,A)
【文献】
特開2010−73486(JP,A)
【文献】
仏国特許発明第1487997(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18 −4/20
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆導線と接続される端子であって、
前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、
前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部から露出する導線の先端側の一部を圧着する第1の圧着部と、前記被覆部と前記被覆部から露出する前記導線の一部とを圧着する第2の圧着部と、を有しており、
前記第1の圧着部はオープンバレル型であり、前記第2の圧着部は管状であることを特徴とする端子。
【請求項2】
被覆導線と端子とが接続された端子付き電線であって、
前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、
前記圧着部は、オープンバレル型の第1の圧着部と、管状の第2の圧着部と、を有しており、
前記第1の圧着部によって、前記被覆導線の被覆部から露出する導線の先端側の一部が圧着され、前記第2の圧着部によって、前記被覆部と、前記被覆部から露出する前記導線の一部とが圧着されることを特徴とする端子付き電線。
【請求項3】
請求項2記載の端子付き電線が複数束ねられたことを特徴とするワイヤハーネス構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に用いられる端子付き電線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ワイヤハーネスにおける電線と端子との接続は、オープンバレル型と呼ばれる端子で電線をかしめて圧着する圧着接合が一般的である。このようなオープンバレル型の端子は、導体のかしめ部と被覆部のかしめ部とを有する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−289558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のオープンバレル型の圧着端子は、導体圧着部の圧着強度を部位によって変えることで、接触抵抗と引張強度とを確保するものであるが、例えば被覆部に対しては十分な引張強度を確保することが困難であった。例えば、オープンバレル型の圧着端子では、圧着部の幅方向の端部が内側に巻き込まれる。このためオープンバレル型の圧着端子では、圧着強度を上げていくと、導線切れや被覆部の破れなどが発生するため圧着強度に上限があり、十分な引張強度を確保することが困難である。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、十分な接触抵抗と引張強度とを併せ持つ端子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達するために第1の発明は、被覆導線と接続される端子であって、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部から露出する導線の先端側の一部を圧着する第1の圧着部と、前記被覆部と前記被覆部から露出する前記導線の一部とを圧着する第2の圧着部と、を有しており、前記第1の圧着部はオープンバレル型であり、前記第2の圧着部は管状であることを特徴とする端子である。
【0007】
第1の発明によれば、導線の先端部をオープンバレル型の圧着部で圧着するため、導線と端子との接触抵抗が良好である。また、被覆部と導線との境界部を、被覆部と導線とを一括して管状の圧着部で圧着するため、通常のオープンバレル型の被覆圧着部と比較して、端子に対する被覆導線の十分な引張強度を確保することができる。この際、管状の圧着部では周方向全体から被覆を圧着するため被覆部の破れが起こりにくく、かつ導線をまとめて一体に圧縮するため導線切れも生じにくい。このため、接続信頼性の高い被覆導線と端子との接続状態を得ることができる。
【0008】
第2の発明は、被覆導線と端子とが接続された端子付き電線であって、前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、前記圧着部は、オープンバレル型の第1の圧着部と、管状の第2の圧着部と、を有しており、前記第1の圧着部によって、前記被覆導線の被覆部から露出する導線の先端側の一部が圧着され、前記第2の圧着部によって、前記被覆部と、前記被覆部から露出する前記導線の一部とが圧着されることを特徴とする端子付き電線である。
【0009】
第2の発明によれば、十分な接触抵抗を確保するとともに、十分な引張強度を確保することが可能な端子付き電線を得ることができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明にかかる端子付き電線が複数束ねられたことを特徴とするワイヤハーネス構造体である。
【0011】
本発明では、複数本の端子付き電線を束ねて用いることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な接触抵抗と引張強度とを併せ持つ端子等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は端子1の斜視図、(b)は端子1の長手方向断面図。
【
図2】(a)は端子1へ被覆導線13を挿入した状態の斜視図、(b)はその状態の長手方向断面図。
【
図3】(a)は端子付き電線10の斜視図、(b)は端子付き電線10の長手方向断面図。
【
図4】(a)は
図3(b)のA−A線断面における圧着部の形状を示す図、(b)は
図3(b)のB−B線断面における圧着部の形状を示す図、(c)は
図3(c)のC−C線断面における圧着部の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(a)は、本発明にかかる端子1を示す斜視図であり、
図1(b)は、端子1の長手方向断面図である。
【0015】
端子1は、例えば銅製であり、端子本体3と圧着部5とからなる。端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片11を有する。端子本体3は、前端部から雄端子などが挿入されて接続される。
【0016】
圧着部5は、被覆導線の導線部の先端側を圧着するオープンバレル型圧着部7と、被覆部および被覆部から露出する導線の一部を圧着する管状圧着部9とからなる。すなわち、端子本体3側にオープンバレル型圧着部7が形成され、端子1の端部側に管状圧着部9が設けられる。
【0017】
第1の圧着部であるオープンバレル型圧着部7は、従来のオープンバレル型圧着部におけるワイヤバレルと同様の形態である。すなわち、断面が略U字状に上方に向けて開口するように、一対の舌片が設けられ、これらの上端縁が中心側に折り込まれるようにしてかしめられる。
【0018】
なお、オープンバレル型圧着部7の内面には、例えば周方向に溝を設けることが望ましい。このように溝を形成することで、導線15を圧着した際に、導線15の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線15との接触面積を増加させることができる。
【0019】
第2の圧着部である管状圧着部9は、断面が円形の筒体となるように板状素材が丸められ、板状素材の側縁部同士を突き合わせ、または重ね合わせて接合して一体化することにより形成される。筒状に形成された管状圧着部9の後端部から、被覆導線が挿入される。なお、突合せ部の接合は、例えばレーザ溶接等によって行われる。
【0020】
前述した様に、管状圧着部9は、被覆導線の被覆部の先端部と、被覆部から露出する導線の一部とを一括して圧着する部位である。このため、導線が圧着される管状圧着部9の前方(オープンバレル型圧着部7側)が縮径され(縮径部9a)、被覆部が圧着される管状圧着部9の後方が拡径される(拡径部9b)。すなわち、管状圧着部9は前端側と後端側とで径が異なる。
【0021】
なお、導線15が圧着される縮径部9aの内面には、オープンバレル型圧着部7と同様に、溝を形成してもよい。また、被覆部17が圧着される拡径部9bの内面には、周方向に連続する凸部を形成してもよい。
【0022】
次に、端子付き電線を製造する工程について説明する。
図2(a)は、端子1へ被覆導線13を挿入した状態を示す斜視図であり、
図2(b)は、端子1の長手方向断面図である。
【0023】
まず、被覆導線13の先端の所定長さの被覆部17を除去して、導線15を露出させる。次に、筒状の管状圧着部9の後端から被覆導線13を挿入する。前述した様に、管状圧着部9の先端側は、径が小さい縮径部9aが設けられる。このため、被覆導線13の被覆部17が縮径部9aに突き当たるまで被覆導線13を挿入することで、被覆導線13の挿入量を一定にすることができ、端子1に対する被覆導線13の位置決めがなされる。
【0024】
被覆導線13を所定量挿入すると、被覆導線13の被覆部17から露出する導線15の一部は、管状圧着部9の縮径部9aに位置し、管状圧着部9から突出する導線15の先端部が、オープンバレル型圧着部7に位置する。
【0025】
図3(a)は、この状態から圧着部5を圧着した状態の斜視図、
図3(b)は、この状態の端子1の長手方向の断面図である。圧着部5の圧着は、例えば金型によって行われる。この際、オープンバレル型圧着部7と管状圧着部9は、一度に圧着することができる。なお、金型は、圧着前に前述した管状圧着部9の溶接をできるようにしたものであってもよい。
【0026】
図4(a)は、
図3(b)のA−A線断面図であり、
図4(b)は、
図3(b)のB−B線断面図であり、
図4(c)は、
図3(b)のC−C線断面図である。オープンバレル型圧着部7を圧着すると、舌片の上端縁同士が突き合わさり、導線15の中心方向に巻き込むように変形する。このように圧着することで、導線15とオープンバレル型圧着部7との十分な接触面積を確保し、接触抵抗が良好となる。
【0027】
一方、管状圧着部9は、前述した様に、導線15と被覆部17とが、一括して圧着される。
図4(b)に示すように、管状圧着部9で導線15を圧着すると、管状圧着部9(縮径部9a)は、断面が偏平形状となるように潰されて、管状圧着部9と導線15とが導通する。
【0028】
また、
図4(c)に示すように、被覆部17は、管状圧着部9の拡径部9bの断面円形を略維持したまま、全体で被覆部17を圧着する。このように、一つの管状圧着部9で、被覆部17と導線15の両方を一括して圧着することで、被覆部17と導線15とを別々に圧着する場合と比較して、より強い引張強度を確保することができる。特に、被覆部17が管状に全周方向から圧着されることで、被覆部17の破れなども生じることがない。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、導線15の先端をオープンバレル型圧着部7で圧着するため、例えば、全体を管状圧着部9で圧着する場合と比較して、端子1と導線15との接触面積が増加して、良好な接触抵抗を得ることができる。
【0030】
また、被覆部17と導線15の一部が、同一の管状圧着部9で圧着されるため、被覆部17をオープンバレル型の圧着部で圧着する場合と比較して、被覆部17の破れが生じにくく、十分な引張強度を得ることができる。
【0031】
また、オープンバレル型圧着部7と管状圧着部9とを併用するため、導線15と端子1との接触面積を増やすことができるとともに、表面積が増加するため、放熱性を高めることができる。
【0032】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0033】
前述した実施の形態では、雌端子について説明したが、雄端子でも同様に使用することができる。また、本発明にかかる端子付き電線を複数本束ねて使用することもできる。本発明では、このように複数本の端子付き電線が束ねられた構造体を、ワイヤハーネス構造体と称する。
【符号の説明】
【0034】
1………端子
3………端子本体
5………圧着部
7………オープンバレル型圧着部
9………管状圧着部
10………端子付き電線
11………弾性接触片
13………被覆導線
15………導線
17………被覆部