特許第6479880号(P6479880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6479880チューブが反射または放出した放射を測定するためのセンサを用いて、レーザ切断機械上で加工されるチューブを走査する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479880
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】チューブが反射または放出した放射を測定するためのセンサを用いて、レーザ切断機械上で加工されるチューブを走査する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20190225BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190225BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20190225BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20190225BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20190225BHJP
【FI】
   B23K26/38
   B23K26/00 M
   B23K26/02 A
   B23K26/08 Z
   B23K26/046
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-75714(P2017-75714)
(22)【出願日】2017年4月6日
(62)【分割の表示】特願2014-509885(P2014-509885)の分割
【原出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2017-148870(P2017-148870A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年5月8日
(31)【優先権主張番号】TO2011A000425
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508138955
【氏名又は名称】アディジェ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ガルヴァニーニ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・ニコレッティ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・ブリガドゥエ
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−224665(JP,A)
【文献】 特開2000−117468(JP,A)
【文献】 特開昭63−242480(JP,A)
【文献】 実開昭64−042788(JP,U)
【文献】 特表2014−522318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ切断機械上で加工されるチューブ(T)を走査する方法であって、
レーザ切断機械は、レーザ光源(52)で発生したレーザビームをチューブ(T)に集光するように構成された切断ヘッド(50)と、
切断ヘッド(50)によって集光されたレーザビームがチューブ(T)に当った場合、チューブ(T)によって反射または放出された放射を検出し、こうした放射を示す信号を提供するように構成されたセンサ手段(56)と、を含み、
この方法は、
a)切断ヘッド(50)のノズルがチューブ(T)に確実に面するサンプリング位置で、チューブ(T)の軸(x)に対して垂直なサンプリング方向(z)に沿って位置サンプリングを実行する工程であって、位置サンプリングは、容量センサを使用し、ノズルがチューブ(T)から所定の距離に到達するまで、切断ヘッド(50)を前記サンプリング方向(z)に沿って移動させることによって実行する工程と、
b)チューブ(T)の材料を切断またはエッチングしないように、切断ヘッド(50)を介して集光されたレーザビームを放出する工程と、
c)切断ヘッド(50)を所定の走査方向に沿って移動させる工程と、
d)切断ヘッド(50)が走査方向に沿って移動しながら、前記センサ手段(56)を介してチューブ(T)によって反射または放出された放射を検出し、前記センサ手段(56)によって提供された信号に基づいてチューブ(T)の材料の存在または不存在をポイントごとに確立する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にチューブのレーザ切断方法に関し、詳細には、独立請求項1の前文に規定されたように、レーザ切断機械上でチューブを走査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの方法が、特開2010−125517号公報から知られている。
【0003】
下記の説明および請求項において、用語「チューブ」は、細長い3次元物体、即ち、主要な方向(以下、長手軸と称する)に沿って延びており、長手軸に沿って均等な断面(通常、開放または閉止している)を有する任意の物体を識別するために用いられる。
【0004】
チューブのレーザ切断は周知の産業用途であるが、特に、加工すべきチューブの断面の性質に起因して、そして、公称加工位置と、チューブがその動きの終わりに実際に到達する位置との間の差に起因して、幾つかの困難さに悩まされる。
【0005】
チューブの断面の性質に関する限り、チューブの実際の断面は、幾何形状の誤差に起因して公称のものとは相違する。種々のタイプのチューブ断面は、レーザによって加工でき、最もありふれたものを添付図面の図1に示している。特に下記のタイプの断面がある。
・円形断面(図1a)
・正方形断面(図1b)
・長方形断面(図1c)、丸みを帯びたエッジまたは鋭利なエッジを持つ。
・長円形断面(図1d)
・半長円形断面(図1e)
・楕円形断面または圧縮円形形状の断面(図1f)
・U字状またはC字状の断面(図1g) 曲げまたは押出成形によって得られる。丸みを帯びたエッジとしての外エッジまたは内エッジ、あるいは鋭利なエッジとしての外エッジまたは内エッジを持つ。
・L字状断面(図1h) 曲げまたは押出成形によって得られる。丸みを帯びたエッジ面または鋭利なエッジ面を持つ。
・平板状断面(図1i) 鋭利なエッジまたは面取りしたエッジを持つ。
・H字状断面(図1j)またはI字状断面(図1k)
【0006】
断面が少なくとも1つの平坦面を明らかに有しないケース(円形断面または楕円形断面のケース)は別にして、エッジまたは基準面、フィレット(fillet)半径または面取り、および加工面を定義することが可能である。換言すると、例えば、切断作業がチューブのある面(加工面)で行われる場合、この面が開始または終了する場所を、基準として他の面を用いることによって、典型的には、加工面に対して垂直で、フィレットによって加工面と連結した面を用いることによって定義することが可能である。
【0007】
種々のタイプの断面に関して上述したフィレットは、図2に示すように、鋭利なエッジ、四分の一円または面取りの形態でもよい。
【0008】
図2aは、チューブの長方形断面の角度部分を示しており、加工面2および基準面4が、四分の一円の形態をなすフィレット6aによって互いに連結されている。フィレットの位置を決定するための基準としてレーザ加工装置が用いる、即ち、基準面のチェックポイントを符号8aで示している。図2bは、鋭利なエッジのフィレット6bおよび2つの関連したチェックポイント8bを持つチューブの長方形断面の角度部分を示す。図2cは、第1面取りフィレット6cおよびチェックポイント8cを持つチューブの長方形断面の角度部分を示す。図2dは、2つの円弧状部分6d’および直線部分6d”を含む第2面取りフィレット6dと、チェックポイント8dとを持つチューブの長方形断面の角度部分を示す。図2eは、中間ゾーン9で互いに連結した四分の一円の形態をなす2つのフィレット6e’,6e”および2つのチェックポイント8e’,8e”を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
測定、例えば、位置測定を実行するために、フィレットの形状が所望のものと同一であることを必要とする各手順が、失敗したり、あるいは少なくとも正確でなくなる。
【0010】
更なる問題が、チューブの実際の断面の寸法が公称のものと相違することである。知られているレーザ切断機械には、僅かな寸法変化を補償できる自己適応機械システムが設けられるが、加工すべきチューブの位置を識別しようとした場合、こうした変化が問題を引き起こす可能性がある。チューブの加工面の位置を決定するために、今日、典型的に用いられる方法の1つは、例えば、チューブを90度ずつ回転することと、相対基準面に接触することである。測定した寸法と公称寸法との差が、この場合、対象となる面の剛体変位として解釈できるが、断面の寸法が公称寸法と相違するということに起因するであろう。
【0011】
他の問題が、上述したように、加工されるチューブの公称位置と、その動きの終わりに実際に到達するものとの間の差である。
【0012】
ここで、図3を参照して、チューブを切断するためのレーザ切断機械においてチューブを移動させるために用いたアーキテクチャの幾つかのサンプルを説明する。
【0013】
図3aは、スピンドル−ベアリングのアーキテクチャを概略的に示す。チューブTがその軸に沿ってシフトし、その軸の周りに回転するように構成されたスピンドルを符号10で示す。他方、チューブTが通過し、水平位置に保持されたベアリングを符号12で示す。レーザ切断機械は、それ自体知られているように、ベアリング12の直ぐ上流側(ゾーン14a)または下流側(ゾーン14b)で加工できる切断ヘッド(不図示)をさらに備える。切断ヘッドは、特殊な駆動機構を用いて、あるいはベアリング12の並進運動の結果としてゾーン14aとゾーン14bとの間で移動可能である。代替として、切断ヘッドの移動は、それ自体の駆動機構によって生ずる運動と、ベアリング12によって生ずる運動との組合せから生じるものでもよい。
【0014】
図3bは、3つベアリングのアーキテクチャを概略的に示す。図3aに示したもののタイプのスピンドルを符号10で示す。25kg/mより大きい線重量(linear weight)を有するチューブの場合、スピンドル10は、加工プロセスの際にチューブを支持したり取り扱う機能に加えて、加工プロセスの終わりにチューブを取り出す機能を有する。貫通スピンドルとして製作された2つの追加スピンドルを符号16,18で示す。切断ヘッド(不図示)には、2つの貫通スピンドルの上流側(ゾーン14a)、2つの貫通スピンドルの下流側(ゾーン14b)、または2つの貫通スピンドルの間(ゾーン14c)で加工できるように特殊な駆動機構が設けられる。
【0015】
図3cは、4つベアリングのアーキテクチャを概略的に示すもので、非貫通スピンドルとして製作され、チューブの引き出し、回転および支持を行う機能を有する第4のスピンドル20をさらに備える点で、図3bのアーキテクチャとは相違する。この場合も、切断ヘッド(不図示)には、2つの貫通スピンドルの上流側(ゾーン14a)、2つの貫通スピンドルの下流側(ゾーン14b)、または2つの貫通スピンドルの間(ゾーン14c)で加工できるように特殊な駆動機構が設けられる。
【0016】
図3dは、チューブのシフト、回転および引き出しを行う機能を有する2つの貫通スピンドル10,20だけを備えたアーキテクチャを概略的に示す。この場合も、切断ヘッド(不図示)には、2つの貫通スピンドルの上流側(ゾーン14a)、2つの貫通スピンドルの下流側(ゾーン14b)、または2つの貫通スピンドルの間(ゾーン14c)で加工できるように特殊な駆動機構が設けられる。
【0017】
上述した全てのアーキテクチャが、スピンドルで形成されたチューブ駆動システムによって定義される基準軸に対して、加工されるチューブの位置を把握することを要求する。こうした要求が、レーザ切断機械のチューブ駆動システムが、それ自体の対称性に起因して加工されるチューブを中心合わせすることが可能で、即ち、チューブの偏向または捩れを低減するのに充分な力を印加することが可能である場合に適用される。しかしながら、こうした要求は、一般に、チューブに加わる応力に起因して、スピンドルとチューブとの間の接触ポイントの近くだけで満される。これらの接触ポイントからの距離が増加するほど、チューブは基準軸に対して徐々に中心から外れる。切断ヘッドがスピンドルとのチューブの接触ポイントのより近くで加工を行うほど、チューブはより中心に位置し、一般に、切断ヘッドが、2つのスピンドルの間に含まれるゾーン(図3b〜図3d中の符号14cで示したゾーン)で加工を行う場合、チューブはより正確に中心に位置する。いずれの場合も、特に薄くて可撓性のあるチューブ、または大きな線重量(例として、20kg/mより大きい値)を有するチューブで加工を行う場合、チューブが正しく中心に位置決めされるのを確保することは困難である。
【0018】
チューブのレーザ加工に関連した他の問題が、加工されるチューブの終わりまたは先端の位置を決定することである。その位置は、チューブ上で実行される加工の位置について正しい基準を提供するために必要である。この場合も、空間内の理想ポイントに対してではなく、むしろ、加工を実行するツールの実際の加工位置に対して、この場合は切断ヘッドの実際の位置に対して、加工されるチューブの位置のための基準を確立することが必要である。
【0019】
幾つかの場合、チューブの終わりを表面またはラインとしてではなく、むしろ、ポイントまたは面のエリアとして探すことが重要であり、これはチューブ上で実行される加工のための基準として採用される。これは、例えば、チューブの終わりに角度が付いている場合(図4a)、または複雑な輪郭を有する場合(図4b)に起こる。
【0020】
他の場合、チューブは、前回の加工、例えば、穿孔動作が既に施されており、レーザ切断またはトリミング動作を受ける必要がある。図5は、事前に穿孔が施されたチューブの2つの例(図5a),(図5b)を示す。これらの場合、レーザ切断機械は、実行するレーザ加工動作を前回の加工に参照する必要があり、後者の位置を探索する必要がある。
【0021】
いったんレーザ切断を実行すると、例えば、円形状の孔、正方形状または矩形状のスロットが形成されると、こうした加工の特徴的寸法を測定する必要があるであろう。これは、例えば、レーザ切断によって作られた切り口(kerf)の実際の幅を考慮して、加工の寸法を評価する場合に生ずる。
【0022】
本発明の目的は、レーザ切断機械を用いて、加工されるチューブを走査する方法を提供することであり、レーザ切断機械でのチューブの位置およびチューブ形状の両方から独立して、チューブのある面上のポイントの位置を測定することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的および他の目的は、添付の独立請求項1の特徴部に記載されたステップを含むチューブ走査方法によって達成される。
【0024】
本発明に係る走査方法を実施する有利な態様は従属請求項の主題であり、その内容は、下記の説明の全体および統合部分として認められる。
【0025】
本発明の特徴および利点は、添付図面を参照し、非限定的な例によって与えられる下記の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1b】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1c】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1d】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1e】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1f】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1g】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1h】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1i】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1j】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図1k】レーザ切断動作を受けることが可能なチューブの断面の例を示す。
図2a】チューブの近接する2つの平坦な面の間にあるフィレット(fillet)ゾーンの例を示す。
図2b】チューブの近接する2つの平坦な面の間にあるフィレットゾーンの例を示す。
図2c】チューブの近接する2つの平坦な面の間にあるフィレットゾーンの例を示す。
図2d】チューブの近接する2つの平坦な面の間にあるフィレットゾーンの例を示す。
図2e】チューブの近接する2つの平坦な面の間にあるフィレットゾーンの例を示す。
図3a】レーザ切断機械においてチューブを移動させるために使用できる幾つかのアーキテクチャの概略側面図である。
図3b】レーザ切断機械においてチューブを移動させるために使用できる幾つかのアーキテクチャの概略側面図である。
図3c】レーザ切断機械においてチューブを移動させるために使用できる幾つかのアーキテクチャの概略側面図である。
図3d】レーザ切断機械においてチューブを移動させるために使用できる幾つかのアーキテクチャの概略側面図である。
図4a】チューブの形状の2つの例を示す斜視図である。
図4b】チューブの形状の2つの例を示す斜視図である。
図5a】加工すべきチューブの2つの例を示す斜視図である。レーザ加工の前に、加工、特に穿孔が既に実行されている。
図5b】加工すべきチューブの2つの例を示す斜視図である。レーザ加工の前に、加工、特に穿孔が既に実行されている。
図6】本発明に係る走査方法が実施できるチューブ・レーザ切断機械の概略図である。
図7】本発明に係る走査方法のブロック図である。
図8a】丸みを帯びた角部を持つ矩形断面を有するチューブの場合、本発明に係る走査方法の予備位置サンプリング段階を概略的に示す。
図8b】丸みを帯びた角部を持つ矩形断面を有するチューブの場合、本発明に係る走査方法の予備位置サンプリング段階を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図6を参照して、チューブのレーザ切断用のレーザ切断機械が、最初に、それ自体の軸(xで示す)に沿ってチューブTをシフトさせ、それ自体の軸の周りに回転させるチューブ駆動システムを備える。図に示す例では、駆動システムは、1つのスピンドル10だけを備える。代替として、図3a〜図3dを参照して上述した既知のアーキテクチャのいずれかを使用することが可能である。
【0028】
レーザ切断機械は、切断ヘッド50と、レーザ光源52とをさらに備える。切断ヘッド50は、とりわけ、レーザ光源52から到来するレーザビームをチューブTに集光するためのレンズのセットと、アシストガスを配給するためのノズルとを備える。切断ヘッド50は、それ自体既知のタイプであり、従ってここでは詳細に説明しない。ヘッド駆動システム(不図示)もそれ自体既知のタイプであり、切断ヘッド50を移動するために切断ヘッド50に取り付けられる。レーザ光源52は、レーザビームを、例えば、ミラーシステムまたは光ファイバなど、それ自体既知のタイプであるビーム伝送システム54を経由して切断ヘッド50に送るように配置される。
【0029】
レーザ切断機械は、チューブTが、切断ヘッド50によって集光されたレーザビームに露光された場合、反射した放射(レーザビームと同じ波長を有する)、または放出された放射(入射ビームによる励起の結果、チューブの材料またはチューブが没入したガス環境から到来する放射)を検出するように構成されたセンサ56をさらに備える。センサ56で検出された光信号(反射または放出された放射)は、180〜2000nmの範囲の波長を有する。センサ56は、図6に示す例のように、切断ヘッド50に固定でき、あるいはビーム伝送システム54に固定できる。
【0030】
本発明によれば、加工されるチューブTのある面上でのポイントの位置を測定するために、切断ヘッド50は、(レーザパワー、チューブからの距離、アシストガスの圧力の観点で)適切に動作し、チューブをエッチングまたは切断しないように、そして、チューブ表面によって放射を放出させるようにしてレーザビームをチューブに集光する。この放射は、センサ56によって検出されることになる。例えば、チューブTの表面を走査するための用いられるレーザビームは、レーザ光源52のパワーを200〜3000Wの範囲に設定し、0.5〜5barの範囲の圧力を有するアシストガスを使用し、そして、切断ヘッド50を、0.5〜4.5mmの範囲に含まれる、チューブからの距離に位置決めすることによって得られる。
【0031】
センサ56は、制御ユニット58と接続されており、センサによって供給される信号に基づいて、チューブでの入射ポイントでのレーザビーム半径(典型的には25〜80μmの範囲)に等しい横方向空間分解能で、チューブTの存在または不在を決定することができる。こうした横方向空間分解能は、最大パワー密度を持つゾーンだけが、無視できない信号の発光を生じさせるという事実に起因する。
【0032】
図6を参照して上述したような機械など、レーザ切断機械にあるチューブを走査するための本発明に係る方法について、図7のブロック図および図8a、図8bを参照して説明する。
【0033】
最初に(図7のブロック図のステップ200)、探索/測定すべき幾何学的特性が、オペレータによって与えられた指示に基づいて選択される。オペレータは、例えば、無線信号をリモート携帯通信装置を介してレーザ切断機械の制御ユニット58に送ることによって、または、制御ユニット58に接続された機械のインタフェースモジュールに直接作用することによって、その指示を提示できる。例えば、オペレータにとって利用可能なオプションは、下記のようなものである。
・基準面の探索
・2つの基準面の探索
・チューブの端部の探索
・特定ゾーンでの端部の探索
・チューブ内に既に存在する孔または空洞の探索
・孔または空洞の測定
【0034】
実行する探索または測定のタイプに応じて、さらに後述するように、チューブTの回転を引き起こさないように、切断ヘッド50だけを移動させるようにして、ある方向(通常は、チューブTの軸xと平行な方向、またはこの軸に対して垂直な方向)に走査が定義される。しかしながら、空洞を丸いチューブで探索する必要がある場合、チューブをその軸の周りに回転させる必要がある。
【0035】
図7のブロック図のステップ202では、位置予備サンプリングを、安全な方法、即ち、チューブへのダメージを回避するような方法で、そして、ある一定の方法、即ち、チューブの材料の存在が確実な位置で、チューブTの軸xに対して垂直な方向z(図6参照)に沿って実行する。図8aは、ノズルがチューブTに確実に面する位置での切断ヘッド50の初期位置決めを示す。詳細には、図8aは、チューブTの2つの横方向位置許容領域(field)を示し、その幅を符号tで示しており、切断ヘッド50は、ノズルがこれら2つの領域の間で最も近い領域から所定の最小距離lになるように、即ち、ノズルがチューブTに確実に面する位置(図示した例では、チューブTの上部平坦面に面する位置)に位置決めされることを示す。
【0036】
この初期位置からスタートして、切断ヘッド50は、図8bに示すように、軸zに沿って移動して位置予備サンプリングを実行する。位置予備サンプリングは、切断ヘッド50のノズルをチューブTと接触させることによって、あるいは、図8bに示すように、容量センサシステム(それ自体既知のタイプ)を使用し、切断ヘッド50のノズルをチューブTの表面に向けて、そこからある距離(ノズル自体の直径dに依存する)に達するまで移動させることによって実行できる。
【0037】
軸zに沿った位置予備サンプリング、即ち、切断ヘッド50のノズルとチューブTとの間の距離(焦点の位置)の設定は、材料の表面上に焦点を位置決めするのに可能な限り大いに役に立つものであり、測定の分解能を最大化し、レーザビームが材料に当る直径を可能な限り最小化するのを確保する。
【0038】
ステップ202で実行される位置予備サンプリングを用いて決定した位置を基準として用いて、制御ユニット58は、図7のブロック図に示したステップ204において、切断ヘッド50をチューブTから、あるいは、ともかく探すべき材料のエッジが位置決めされていると予想されるエリアから遠くへ移動させることによって、走査プロセスの準備をする。容量センサを用いて位置予備サンプリングを実行する場合、切断ヘッド50をチューブTから遠くへ移動させる際にもサンプリングを実行して、切断ヘッドをチューブのプロファイルに追従させることができる。切断ヘッドの移動の際、切断ヘッド50がチューブTの半径より大きい距離まで降下しないことが確保される。この目的のために、チューブの半径の値が、便宜上は公称値に等しくなるように設定される。このことは、測定の品質に悪影響を与えず、せいぜいその精度を低下させるだけである。
【0039】
図7のブロック図に示したステップ206において、レーザ光源52は、集光したレーザビームがチューブTの材料を切断またはエッチングしないようなパワーでオンになり、そして、材料がチューブから切断ヘッドの内側に向けて飛び散るのを回避するような圧力で、アシストガスが切断ヘッド50のノズルによって供給される。
【0040】
図7のブロック図に示したステップ208において、切断ヘッド50は、走査移動を開始し、材料の不存在が確実である位置からスタートし、材料Tに向けて移動し、レーザビームが集光するゾーンをこの方向に徐々にシフトさせる。光源52から到来する集光したレーザビームは、チューブTの材料に当ったときに反射するように、あるいは、チューブの材料またはチューブが集光ゾーン内に没入しているガスによる発光を生じさせるようになる。
【0041】
センサ56は、材料の存在と材料の不存在との間の信号ステップを検出し、四分の一円の形態をなすフィレット、鋭利なエッジのフィレットまたは面取りフィレットとは関係なく、切断ヘッド50を、図2a〜図2eに示すようなチェックポイント8a〜8eに位置決めするように自動的に導く。単にオペレータに固定オフセットを測定に追加する可能性を付与することによって、可能性のあるシステム位置決めオフセットが考慮できる。
【0042】
制御ユニット58は、チューブTの端部に到達するまで、走査プロセスの際に集光ゾーンによって反射または放出された光信号を監視し続ける。この時点で(図7のブロック図のステップ210)、制御ユニット58は、到達した位置を記録し、走査サイクルを停止する。
【0043】
他の2つの面によって範囲が定まる面で加工する場合、走査プロセスの際にチューブを静止したままで、2つの基準面を走査することによって、位置誤差と寸法誤差との間のデコンボリューションの問題が解決できる。オペレータは、こうして測定した面の中心、または、サンプリングした2つのエッジの1つを加工の基準とするか否かを選択する可能性を有することになる。
【0044】
本発明に係る走査方法は、チューブのエッジおよび端部だけでなく、任意形状の既存の加工(孔または空洞等)についての走査を可能にする。但し、走査プロセスの際に検出した位置に一義的な意味を与えることが可能であることを条件とする。
【0045】
最後に、走査プロセスは、得られたレーザ加工品について走査方向に沿って寸法を測定することも可能であり、例えば、品質チェックの目的で、次の加工のための基準を作成することができる。後者の場合、好ましくは、例えば、レーザ装置を調整するために、次の加工でスクラップになる予定のエリアの内側で、無駄なゾーンにおいて加工品が製作される。
【0046】
必要に応じて、走査プロセスは、より良い分解能が得られるように繰り返しが可能である。
【0047】
当然ながら、本発明の原理は不変のままで、実施形態および構成の詳細は、非限定的な例を用いて説明し図示したものから広範に変化することも可能である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図1i
図1j
図1k
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b