(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体素子を金型内に配置し、硬化性樹脂で封止して樹脂封止部を形成する半導体パッケージの製造方法において金型のキャビティ面に配置される、離型フィルムであって、
前記樹脂封止部の形成時に前記硬化性樹脂と接する第1面と、前記キャビティ面と接する第2面とを有し、
少なくとも前記第1面がフッ素樹脂からなり、
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンに基づく単位と、テトラフルオロエチレンおよびエチレン以外の第3のモノマーに基づく単位とからなるエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体であり、
前記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体における全単位中、テトラフルオロエチレンに基づく単位が40〜69.7モル%、エチレンに基づく単位が30〜59.7モル%、前記第3のモノマーに基づく単位が0.3〜1.2モル%であり、
下記試験法AにおけるF/Alが0.2〜4であるか、または、下記試験法BにおけるF/(C+F+O)が0.1〜0.3であることを特徴とする離型フィルム。
<試験法A>
厚さ1mmの厚紙と、離型フィルムと、厚さ0.1mm、JIS H4160におけるA1N30H−H18材からなるアルミニウム板と、厚さ1mmの厚紙とをこの順に、前記第1面と前記アルミニウム板とが接するように重ね、180℃、5MPaの条件で5分間プレスし、前記アルミニウム板から前記離型フィルムを剥離し、前記アルミニウム板の前記離型フィルムと接触していた表面をX線光電子分光分析により分析して、アルミニウム原子に対するフッ素原子の比(F/Al)を求める。
<試験法B>
厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第一の金属板の上に、厚さ100μm、大きさ15cm×15cmの正方形状のアルミニウム箔を乗せ、前記アルミニウム箔の上に、厚さ100mm、大きさ15cm×15cmの正方形状で、中央に10cm×8cmの長方形状の穴が開いたスペーサーを乗せ、その穴の中心付近に下記のエポキシ樹脂を2g乗せ、さらにその上に、大きさ15cm×15cmの正方形状の離型フィルムを、前記第1面を前記スペーサー側に向けて乗せ、その上に、厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第二の金属板を乗せて積層サンプルを作製する。前記積層サンプルを、180℃、10MPaの条件で5分間プレスして、前記エポキシ樹脂を硬化させる。プレス後、前記第二の金属板、前記離型フィルムおよび前記スペーサーを取り除き、前記エポキシ樹脂の硬化物の前記離型フィルムと接触していた表面をX線光電子分光分析により分析して、炭素原子とフッ素原子と酸素原子との和に対するフッ素原子の比(F/(C+F+O))を求める。
エポキシ樹脂:半導体封止用エポキシ顆粒樹脂、商品名:スミコンEME G770H type F ver. GR、住友ベークライト社製。
前記第3のモノマーがヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(ペルフルオロエチル)エチレンまたは(ペルフルオロブチル)エチレンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の離型フィルム。
半導体素子と、硬化性樹脂から形成され、前記半導体素子を封止する樹脂封止部と、前記樹脂封止部の表面に形成されたインク層とを有する半導体パッケージの製造方法であって、
金型の前記硬化性樹脂が接するキャビティ面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の離型フィルムを、前記第1面がキャビティ内の空間に向くように配置する工程と、
前記キャビティ内に、半導体素子が実装された基板を配置し、該半導体素子を硬化性樹脂で封止し、該硬化性樹脂を前記離型フィルムに接した状態で硬化させて樹脂封止部を形成することにより、基板と前記基板上に実装された半導体素子と前記半導体素子を封止する樹脂封止部とを有する封止体を得る工程と、
前記封止体を前記金型から離型する工程と、
前記封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書における「離型フィルム」は、半導体素子を金型内に配置し、硬化性樹脂で封止して樹脂封止部を形成する半導体パッケージの製造方法において、金型のキャビティ面に配置される離型フィルムである。たとえば、半導体パッケージの樹脂封止部を形成する際に、該樹脂封止部の形状に対応する形状のキャビティを有する金型のキャビティ面を覆うように配置され、形成した樹脂封止部とキャビティ面との間に位置されることによって、得られた半導体パッケージの金型からの離型性を高めるフィルムである。
樹脂における「単位」は、当該樹脂を構成する構成単位(モノマー単位)を示す。
「フッ素樹脂」とは、構造中にフッ素原子を含む樹脂を示す。
【0021】
本明細書における「算術平均粗さ(Ra)」は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mm、測定速度は1.5mm/秒とした。
本明細書における「メディアン径」は、JIS Z8825:2013(ISO13320:2009)に準拠して、レーザー回折粒度分布測定装置を用いて測定した粒子径の累積分布が50%となる粒子径の値である。
【0022】
離型フィルムの厚さは、ISO4591:1992(JIS K7130:1999のB1法、プラスチックフィルムまたはシートから採った試料の質量法による厚さの測定方法)に準拠して測定される。
【0023】
〔離型フィルム〕
本発明の離型フィルムは、半導体素子を硬化性樹脂で封止して樹脂封止部を形成する金型のキャビティ面に配置される離型フィルムであって、前記樹脂封止部の形成時に前記硬化性樹脂と接する第1面と、前記キャビティ面と接する第2面とを有する。
すなわち、本発明の離型フィルムは、第1面を前記金型のキャビティ内の空間に向けて配置され、樹脂封止部の形成時に硬化性樹脂と接触する。また、この時、第2面は金型のキャビティ面に密着する。そのため、この状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、金型のキャビティの形状に対応した形状の樹脂封止部が形成される。
【0024】
本発明の離型フィルムは、離型性の点から、少なくとも第1面がフッ素樹脂からなる。これにより、当該離型フィルムと接した状態で硬化した硬化性樹脂(樹脂封止部)を離型フィルムからスムースに剥離できる。
【0025】
第1面がフッ素樹脂からなる離型フィルムとしては、少なくとも第1面側の最外層にフッ素樹脂からなる層(以下、フッ素樹脂層ともいう。)を含むものであればよく、たとえば、フッ素樹脂からなるフィルム、1層以上のフッ素樹脂層と1層以上のフッ素樹脂以外の樹脂からなる層(以下、他の層ともいう。)とを含み、少なくとも第1面側の最外層にフッ素樹脂層が配置された多層構造のフィルム等が挙げられる。
他の層を含む多層構造のフィルムの例としては、第1面側からフッ素樹脂層と他の層とがこの順に積層したもの、第1面側からフッ素樹脂層、他の層、フッ素樹脂層がこの順に積層したもの等が挙げられる。
フッ素樹脂層、他の層についてはそれぞれ後で詳しく説明する。
【0026】
本発明の離型フィルムは、フッ素樹脂からなることが好ましい。フッ素樹脂からなる場合、本発明の離型フィルムは、離型性に優れ、また、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性、硬化性樹脂の流動や加圧力に耐え得る強度等を充分に有し、高温における伸びにも優れる。
フッ素樹脂からなる離型フィルムは、1層のフッ素樹脂層からなる単層構造のフィルムでも、複数のフッ素樹脂層からなる多層構造のフィルムでもよい。
離型フィルムが多層構造であると、単層構造に比べて、追従性、引張強伸度等の物性が低下し、離型フィルムとしての適性が低下する傾向がある。また、製造にコストもかかる。そのため、本発明の離型フィルムは、フッ素樹脂からなる単層構造のフィルムであることが特に好ましい。
【0027】
本発明の離型フィルムは、下記試験法AにおけるF/Alが0.2〜4であるか、または、下記試験法BにおけるF/(C+F+O)が0.1〜0.3である。
【0028】
<試験法A>
厚さ1mmの厚紙と、離型フィルムと、厚さ0.1mm、JIS H4160 におけるA1N30H−H18材からなるアルミニウム板と、厚さ1mmの厚紙とをこの順に、前記第1面と前記アルミニウム板とが接するように重ね、180℃、5MPaの条件で5分間プレスし、前記アルミニウム板から前記離型フィルムを剥離し、前記アルミニウム板の前記離型フィルムと接触していた表面をX線光電子分光分析により分析して、アルミニウム原子に対するフッ素原子の比(F/Al)を求める。
【0029】
F/Alは、離型フィルム中のフッ素樹脂に由来し、金型や樹脂封止部の汚染の原因となるオリゴマー等(以下、汚染成分ともいう。)の量を示す指標である。前記の条件でプレスを行うと、離型フィルム中に含まれる汚染成分が離型フィルムの表面に移行し、該表面からアルミニウム板に移行する。F/Alが小さいほど、プレス時に離型フィルムからアルミニウム板表面に移行する汚染成分の量、ひいては半導体素子を硬化性樹脂で封止して樹脂封止部を形成する際の高温環境下で離型フィルムから金型のキャビティ面や樹脂封止部表面に移行する汚染成分の量、が少ないことを示す。F/Alが4以下であれば、離型フィルムに由来する汚染成分によって金型のキャビティ面や樹脂封止部表面が汚染されることを充分に抑制できる。
汚染成分としては、フッ素樹脂に由来するオリゴマー等の低分子量の含フッ素化合物が挙げられる。
F/Alの上限値は、金型や樹脂封止部表面の汚染抑制効果の点から、3.5が好ましく、3.3がより好ましく、3が特に好ましい。F/Alの下限値は、0.2であれば汚染成分が金型との離型層としての効果を示す。
【0030】
前記試験法Aにより測定されるF/Alは、第1面におけるF/Alである。
離型フィルムが単層構造のフィルムである場合、第1面のF/Alと第2面のF/Alとは同じであることが好ましい。第1面のF/Alと第2面のF/Alとは異なってもよいが、フッ素樹脂に由来するオリゴマー等による金型汚染を防止する観点から、第2面のF/Alも4以下であることが好ましく、3.5以下がより好ましく、3.3以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。第2面の下限値は0であってもよいが、0.2であることが好ましい。
離型フィルムが多層構造のフィルムである場合、第1面のF/Alと第2面のF/Alとは同じでも異なってもよい。フッ素樹脂に由来するオリゴマー等による金型汚染を防止する観点から、第2面のF/Alも4以下であることが好ましく、3.5以下がより好ましく、3.3以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。第2面の下限値は0であってもよいが、0.2であることが好ましい。
【0031】
<試験法B>
厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第一の金属板の上に、厚さ100μm、大きさ15cm×15cmの正方形状のアルミニウム箔を乗せ、前記アルミニウム箔の上に、厚さ100mm、大きさ15cm×15cmの正方形状で、中央に10cm×8cmの長方形状の穴が開いたスペーサーを乗せ、その穴の中心付近に下記のエポキシ樹脂を2g乗せ、さらにその上に、大きさ15cm×15cmの正方形状の離型フィルムを、前記第1面を前記スペーサー側に向けて乗せ、その上に、厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第二の金属板を乗せて積層サンプルを作製する。前記積層サンプルを、180℃、10MPaの条件で5分間プレスして、前記エポキシ樹脂を硬化させる。プレス後、前記第二の金属板、前記離型フィルムおよび前記スペーサーを取り除き、前記エポキシ樹脂の硬化物の前記離型フィルムと接触していた表面をX線光電子分光分析により分析して、炭素原子とフッ素原子と酸素原子との和に対するフッ素原子の比(F/(C+F+O))を求める。なお、ここでC、F、OはそれぞれC1s、F1s、O1sのピークの面積から求める。
エポキシ樹脂:半導体封止用エポキシ顆粒樹脂、商品名:スミコンEME G770H type F ver. GR、住友ベークライト社製。
【0032】
F/(C+F+O)は、離型フィルム中のフッ素樹脂に由来し、樹脂封止部の汚染の原因となるオリゴマー等の量を示す指標である。前記の条件でプレスを行うと、前記積層サンプル内のエポキシ樹脂が硬化し、アルミニウム箔とスペーサーと離型フィルムとで囲まれた空間に対応する形状の硬化物(厚さ0.1mm、大きさ10cm×8cmのエポキシ樹脂板)が形成される。また、これとともに、離型フィルム中に含まれる汚染成分が離型フィルムの表面に移行し、該表面から、形成された硬化物の表面に移行する。
F/(C+F+O)は、0.15〜0.28が好ましく、0.18〜0.25が特に好ましい。
F/(C+F+O)が小さいほど、プレス時に離型フィルムから硬化物表面に移行する汚染成分の量、ひいては半導体素子を硬化性樹脂で封止して樹脂封止部を形成する際の高温環境下で離型フィルムから樹脂封止部表面に移行する汚染成分の量、が少ないことを示す。F/(C+F+O)が前記範囲の上限値以下であれば、離型フィルムに由来する汚染成分によって樹脂封止部表面が汚染されることを充分に抑制できる。
一方で、前記汚染成分は離型フィルムとエポキシ樹脂との離型性を向上させる、いわゆるWBL(Weak Boundary Layer)としても働くことができる。F/(C+F+O)を極端に減少させると、離型フィルムとエポキシ樹脂との離型性が不充分になる可能性がある。特にガラス転移点が低く、密着しやすいエポキシ樹脂では顕著である。F/(C+F+O)が前記範囲の下限値以上であれば、離型フィルムとエポキシ樹脂との離型性に優れる。
【0033】
前記試験法Bにより測定されるF/(C+F+O)は、第1面におけるF/(C+F+O)である。
離型フィルムが単層構造のフィルムである場合、第1面のF/(C+F+O)と第2面のF/(C+F+O)とは同じであることが好ましい。第1面のF/(C+F+O)と第2面のF/(C+F+O)とが異なってもよいが、フッ素樹脂に由来するオリゴマー等による金型のキャビティ面の汚染を防止する点から、第2面のF/(C+F+O)は0.3以下であることが好ましく、0.28以下がより好ましく、0.25以下が特に好ましい。下限値は0であってもよいが、0.1が好ましい。
離型フィルムが多層構造のフィルムである場合、第1面のF/(C+F+O)と第2面のF/(C+F+O)とは同じでも異なってもよい。フッ素樹脂に由来するオリゴマー等による金型のキャビティ面の汚染を防止する点から、第2面のF/(C+F+O)は0.3以下であることが好ましく、0.28以下がより好ましく、0.25以下が特に好ましい。下限値は0であってもよいが、0.1が好ましい。
【0034】
なお、試験法Bに使用する前記エポキシ樹脂(商品名:スミコンEME G770H type F ver. GR、住友ベークライト社製。)は、以下の原材料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合し、顆粒化したものである。
フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000。軟化点58℃、エポキシ当量277。):8質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YL6810。融点45℃、エポキシ当量172。):2質量部
フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(三井化学社製、XLC−4L。軟化点65℃、水酸基当量165。):2質量部
フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR−HF−3。軟化点80℃、水酸基当量105。):2質量部
硬化促進剤(トリフェニルホスフィン):0.2質量部
無機充填材(メディアン径16μmの溶融球状シリカ):84質量部
カルナバワックス:0.1質量部
カーボンブラック:0.3質量部
カップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):0.2質量部
【0035】
なお、メディアン径は以下の方法で測定することができる。
アズワン社製ラボランスクリュー管瓶50mL(商品名:口内径20.3mm、全長35mm)に、溶融球状シリカの0.08g、純水の40gを添加し、超音波分散を行う。超音波分散には、BRABSON社製SONIFIRE250(商品名)を使用し、先端径12.5mm、全長7cmのタップ型ホーンの先端から3cmを上記測定液に浸し、周波数20kHz、出力50Wで4分間分散を行う。この分散液をベックマン・コールター社製、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置「ベックマンコールターLS230(商品名)」を使用し、偏光散乱強度差計測により、0.04〜2,000μmの範囲で粒子径分布を測定する。測定した粒子径の累積分布が50%となる値をメディアン径とする。
【0036】
本発明の離型フィルムは、前記試験法AによるF/Alが0.2〜4と前記試験法BによるF/(C+F+O)が0.1〜0.3の少なくとも一方を満たす離型フィルムである。本発明の離型フィルムはこの両条件を満たすものであってもよい。多くの場合、この一方の条件を満たせば他方の条件も満たす。特に、F/(C+F+O)が0.1〜0.3である条件を満たす離型フィルムのほとんどはF/Alが4以下である。一方、F/Alが0.2〜4である条件を満たす離型フィルムは、場合によりF/(C+F+O)が0.1〜0.3ではないことがある。本発明の離型フィルムとしては、F/(C+F+O)が0.1〜0.3である離型フィルムがより好ましい。
【0037】
封止樹脂がエポキシ樹脂等のガラス転移点が低く、密着しやすい硬化性樹脂であり、かつ離型フィルムが接した樹脂封止部表面にインク層を形成する場合、インク層の密着性を高めるあまり離型フィルムから樹脂封止部表面に移行する汚染物質をあまりに少なくすると前記のように離型性が不充分となるおそれがある。試験法Bは離型フィルム上でエポキシ樹脂を硬化させ、その硬化したエポキシ樹脂表面に移行したフッ素原子の量を測定する試験であることより、ガラス転移点が低く、密着しやすい硬化性樹脂を封止樹脂として用い離型フィルムが接した樹脂封止部表面にインク層を形成する場合には、それに対応する試験法である試験法BによるF/(C+F+O)をパラメーターとして離型フィルムを評価すること適切と考えられる。
したがって、インク層の密着性と離型性の兼ね合いを充分考慮する必要がある場合には、前記試験法Aによる試験よりも試験法Bの試験による結果に従った離型フィルムの使用が好ましい。なお、離型性は後述の剥離力によって評価され、剥離力が高すぎると離型フィルムと硬化した封止樹脂との剥離が困難となる。
一方、試験法Aは試験法Bと比較すると簡便な試験法であり、F/Alが低くなりすぎない限り充分な離型性を有し、樹脂封止部のインク層の密着性も優れる。
【0038】
(表面形状)
第1面、第2面はそれぞれ、平滑でもよく凹凸が形成されていてもよい。たとえば第1面および第2面の両面が平滑でもよく、第1面および第2面の両面が凹凸が形成されていてもよく、第1面および第2面のうちの一方の面が平滑で他方の面が凹凸が形成されていてもよい。
平滑である場合の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01〜0.2μmが好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。
凹凸が形成されている場合の表面のRaは、1.5〜2.1μmが好ましく、1.6〜1.9μmが特に好ましい。
【0039】
凹凸が形成されている場合の表面形状は、複数の凸部および/または凹部がランダムに分布した形状でもよく、複数の凸部および/または凹部が規則的に配列した形状でもよい。また、複数の凸部および/または凹部の形状や大きさは、同じでもよく異なってもよい。
凸部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の凸条、離型フィルムの表面に点在する突起等が挙げられる。
凹部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の溝、離型フィルムの表面に点在する穴等が挙げられる。
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。離型フィルム表面においては、複数の凸条または溝が平行に存在して縞状をなしていてもよい。凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、三角形(V字形)等の多角形、半円形等が挙げられる。
突起または穴の形状としては、三角錐形、四角錐形、六角錐形等の多角錐形、円錐形、半球形、多面体形、その他各種不定形等が挙げられる。
第1面および第2面の両面に凹凸が形成されている場合、各面のRaや表面形状は同じでも異なってもよい。
【0040】
(厚さ)
本発明の離型フィルムの厚さは、16〜200μmが好ましく、25〜100μmが特に好ましい。厚さが前記範囲の下限値以上であれば、離型フィルムの取り扱いが容易であり、離型フィルムを引っ張りながら金型のキャビティを覆うように配置する際に、しわが発生しにくい。厚さが前記範囲の上限値以下であれば、離型フィルムが容易に変形でき、金型のキャビティの形状への追従性が向上するため、離型フィルムがしっかりとキャビティ面に密着でき、高品質な樹脂封止部を安定して形成できる。
本発明の離型フィルムの厚さは、金型のキャビティが大きいほど、前記範囲内において薄いことが好ましい。また、多数のキャビティを有する複雑な金型であるほど、前記範囲内において薄いことが好ましい。
【0041】
(剥離力)
本発明の離型フィルムは、第1面側における剥離力の最大値が、0.8N/25mm以下であることが好ましく、0.5N/25mm以下が特に好ましい。剥離力の最大値が前記範囲の上限値以下であれば、生産時、樹脂封止部(硬化性樹脂の硬化物)との剥離がより一層容易になる。離型フィルムと樹脂封止部とがうまく離れず装置が止まるといったようなことが起こりにくくなり、連続生産性に優れる。
本発明における「剥離力」は、JIS K6854−2:1999(ISO 8510−2:1990)に準拠し、以下の(a)〜(f)の手順で測定される値を示すものとする。
(a)離型フィルムと、離型フィルムの第1面側に配置されたアルミニウム板との間にエポキシ樹脂を適量配置する。
(b)エポキシ樹脂を挟み込んだ離型フィルムとアルミニウム板を180℃、10MPaで5分間プレスして、エポキシ樹脂を硬化させる。
(c)離型フィルムと硬化したエポキシ樹脂とアルミニウム板との積層体を25mm幅に切断し、5個の試験片を作製する。なお、積層体におけるエポキシ樹脂の厚さは100μmである。
(d)試験片について、常温における180度剥離力を、引張試験機を用いて100mm/分の速度で測定する。
(e)力(N)−つかみ移動距離曲線における、つかみ移動距離25mmから125mmまでの剥離力の平均値(単位はN/25mm)を求める。
(f)5個の試験片の剥離力の平均値の算術平均を求める。
【0042】
(フッ素樹脂層)
フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂としては、離型性と耐熱性に優れる点から、フルオロオレフィン系重合体等が挙げられる。フッ素樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フッ素樹脂層には、無機添加剤、有機添加剤等が配合されてもよい。
【0043】
フルオロオレフィン系重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位を有する重合体である。フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。フルオロオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フルオロオレフィン系重合体としては、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEともいう。)、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。これらの中では、高温での伸びが大きい点から、ETFEが特に好ましい。ETFEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ETFEは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう。)に基づく単位と、エチレン(以下、Eともいう。)に基づく単位とを有する共重合体である。
ETFEとしては、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位と、TFEおよびE以外の第3のモノマーに基づく単位とを有するものが好ましい。第3のモノマーに基づく単位の種類や含有量によって離型フィルム用樹脂の結晶化度、すなわち離型フィルムの引張弾性率を調整しやすい。また、第3のモノマー(特にフッ素原子を有するモノマー)に基づく単位を有することで、高温(特に180℃前後)における引張強伸度が向上する。
第3のモノマーとしては、フッ素原子を有するモノマーと、フッ素原子を有しないモノマーとが挙げられる。
【0045】
フッ素原子を有するモノマーとしては、下記のモノマー(a1)〜(a5)が挙げられる。
モノマー(a1):炭素数3以下のフルオロオレフィン類。
モノマ−(a2):X(CF
2)
nCY=CH
2(ただし、X、Yは、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)で表されるペルフルオロアルキルエチレン。
モノマー(a3):フルオロビニルエーテル類。
モノマー(a4):官能基含有フルオロビニルエーテル類。
モノマー(a5):脂肪族環構造を有する含フッ素モノマー。
【0046】
モノマー(a1)としては、フルオロエチレン類(トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン等)、フルオロプロピレン類(ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPともいう。)、2−ヒドロペンタフルオロプロピレン等)等が挙げられる。
【0047】
モノマー(a2)としては、nが2〜6のモノマーが好ましく、nが2〜4のモノマーが特に好ましい。また、Xがフッ素原子、Yが水素原子であるモノマー、すなわち(ペルフルオロアルキル)エチレンが特に好ましい。
モノマー(a2)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF
3CF
2CH=CH
2((ペルフルオロエチル)エチレン。)、
CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2((ペルフルオロブチル)エチレン。以下、PFBEともいう。)、
CF
3CF
2CF
2CF
2CF=CH
2、
CF
2HCF
2CF
2CF=CH
2、
CF
2HCF
2CF
2CF
2CF=CH
2等。
【0048】
モノマー(a3)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。なお、下記のうちジエンであるモノマーは環化重合し得るモノマーである。
CF
2=CFOCF
3、
CF
2=CFOCF
2CF
3、
CF
2=CF(CF
2)
2CF
3(ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)。以下、PPVEともいう。)、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFO(CF
2)
3O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
2(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFOCF
2CF=CF
2、
CF
2=CFO(CF
2)
2CF=CF
2等。
【0049】
モノマー(a4)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF
2=CFO(CF
2)
3CO
2CH
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
3CO
2CH
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2SO
2F等。
【0050】
モノマー(a5)の具体例としては、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0051】
フッ素原子を有しないモノマーとしては、下記のモノマー(b1)〜(b4)が挙げられる。
モノマー(b1):オレフィン類。
モノマー(b2):ビニルエステル類。
モノマー(b3):ビニルエーテル類。
モノマー(b4):不飽和酸無水物。
【0052】
モノマー(b1)の具体例としては、プロピレン、イソブテン等が挙げられる。
モノマー(b2)の具体例としては、酢酸ビニル等が挙げられる。
モノマー(b3)の具体例としては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
モノマー(b4)の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)等が挙げられる。
【0053】
第3のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第3のモノマーとしては、結晶化度の調整すなわち引張弾性率の調整がしやすい点、第3のモノマー(特にフッ素原子を有するモノマー)に基づく単位を有することで高温(特に180℃前後)における引張強伸度に優れる点から、モノマー(a2)、HFP、PPVE、酢酸ビニルが好ましく、HFP、PPVE、(ペルフルオロエチル)エチレン、PFBEがより好ましく、PFBEが特に好ましい。
すなわち、ETFEとしては、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位と、PFBEに基づく単位とを有する共重合体が特に好ましい。
【0054】
ETFE中のTFEに基づく単位の割合は、全単位中、40〜70モル%が好ましく、45〜65モル%がより好ましく、50〜60モル%が特に好ましい。TFEに基づく単位の割合の割合が前記範囲の下限値以上であれば、離型性に優れる。TFEに基づく単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、追従性に優れる。
【0055】
ETFE中のEに基づく単位の割合は、全単位中、30〜60モル%が好ましく、35〜55モル%がより好ましく、40〜50モル%が特に好ましい。Eに基づく単位の割合の割合が前記範囲の下限値以上であれば、機械的物性に優れる。Eに基づく単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、離型性に優れる。
【0056】
ETFEにおいて、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位とのモル比(TFE/E)は、80/20〜40/60が好ましく、70/30〜45/55がより好ましく、65/35〜50/50が特に好ましい。TFE/Eが前記範囲内であれば、ETFEの耐熱性および機械的物性に優れる。
【0057】
ETFE中の第3のモノマーに基づく単位の割合は、全単位中、0.3〜1.7モル%が好ましく、0.5〜1.5モル%がより好ましく、0.7〜1.2モル%が特に好ましい。第3のモノマーに基づく単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、高温での機械的強度に優れる。第3のモノマーに基づく単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、離型フィルムのF/Alが0.2〜4となりやすく、またF/(C+F+O)も0.1〜0.3となりやすい。
【0058】
以上のことから、ETFEとしては、TFEに基づく単位40〜69.7モル%と、Eに基づく単位30〜59.7モル%と、第3のモノマーに基づく単位0.3〜1.7モル%とからなるものが好ましく、TFEに基づく単位45〜64.5モル%と、Eに基づく単位35〜54.5モル%と、第3のモノマーに基づく単位0.5〜1.5モル%とからなるものがより好ましく、TFEに基づく単位50〜59.3モル%と、Eに基づく単位40〜49.3モル%と、第3のモノマーに基づく単位0.7〜1.2モル%とからなるものが特に好ましい。
【0059】
ETFEの溶融流量(MFR)は、2〜40g/10分が好ましく、5〜30g/10分がより好ましく、10〜20g/10分が特に好ましい。ETFEのMFRが前記範囲内であれば、ETFEの成形性が向上し、離型フィルムの機械特性に優れる。
ETFEのMFRは、ASTM D3159に準拠して、荷重49N、297℃にて測定される値である。
【0060】
フッ素樹脂の融点は200〜350℃が好ましく、220〜310℃が特に好ましい。フッ素樹脂の融点が前記範囲内であれば、耐熱性に優れ、かつ成形が容易である。
【0061】
フッ素樹脂のガラス転移温度は、60〜110℃が好ましく、70〜100℃が特に好ましい。フッ素樹脂のガラス転移温度が前期範囲内であれば、ロール・トゥ・ロールでのハンドリング性に優れ、かつ金型への追従性に優れる。
フッ素樹脂のガラス転移温度は、ISO6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき測定される貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”の比であるtanδ(E”/E’)が最大値を取る際の温度である。
【0062】
フルオロオレフィン系重合体としては、また、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体が好ましい。ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、前記モノマー(a3)として挙げた具体例のうち、ジエンを除く重合性二重結合を1つ有する化合物が挙げられる。そのうちでも、PPVEが特に好ましい。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体中のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の割合は、全単位中、0.5〜5モル%が好ましく、1.0〜3モル%がより好ましく、1.2〜2.0モル%が特に好ましい。ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、高温での機械的強度に優れる。第3のモノマーに基づく単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、離型フィルムのF/Alが0.2〜4となりやすく、またF/(C+F+O)も0.1〜0.3となりやすい。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体の溶融流量(MFR)は、2〜40g/10分が好ましく、5〜30g/10分がより好ましく、10〜20g/10分が特に好ましい。MFRが前記範囲内であれば、成形性が向上し、離型フィルムの機械特性に優れる。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体のMFRは、ASTM D3307に準拠して、荷重49N、372℃にて測定される値である。
【0063】
(他の層)
離型フィルムには、離型性、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性、硬化性樹脂の流動や加圧力に耐え得る強度が求められる。
本発明の離型フィルムがフッ素樹脂層と他の層とを含む多層構造のフィルムである場合、他の層としては、離型性、耐熱性、強度、高温における伸びの点から、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂からなる層が好ましい。他の層には、無機添加剤、有機添加剤等が配合されてもよい。
ポリオレフィンとしては、離型性および金型追随性に優れる点から、ポリメチルペンテンが好ましい。ポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルとしては耐熱性、強度の点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートが好ましい。ポリエステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアミドとしては耐熱性、強度、ガスバリア性の点からナイロン6、ナイロンMXD6が好ましい。ポリアミドは延伸されたものでもされていないものでもよい。ポリアミドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリスチレンは耐熱性、強度の点からシンジオタクチックポリスチレンが好ましい。ポリスチレンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい
【0064】
他の層として、ガスバリア層を有してもよい。ガスバリア層としては、たとえば、金属蒸着層、金属酸化物蒸着層、ポリビニリデンクロリド層、ポリビニルアルコール系樹脂層、メタキシレンジアミン系エポキシ樹脂層等が挙げられる。
【0065】
(離型フィルムの製造方法)
本発明の離型フィルムの製造方法としては、たとえば、以下の方法(I)〜(VI)等が挙げられる。方法(I)〜(VI)のいずれか2以上を組合わせてもよい。
これらの方法では、汚染成分(フッ素樹脂のオリゴマー等)の含有量が少ない原料を使用するか、成形時における該汚染成分の増加を抑えるか、該汚染成分を除去する処理を行って、所望のF/Alを満たすまたは所望のF/(C+F+O)を満たす(両方を同時に満たしてもよい)フッ素樹脂フィルムを得る。ただし本発明の離型フィルムの製造方法はこれらに限定されるものではない。またこれらの方法の複数を併用することもできる。
【0066】
(I)フッ素樹脂として、第3のモノマーに基づく単位の割合が0.3〜1.7モル%であるETFEを成形することにより、F/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3であるフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
(II)フッ素樹脂フィルムを溶媒に接触させることにより、溶媒により抽出される成分(汚染成分)を低減させる方法。すなわち、F/Alが4超のまたはF/(C+F+O)が0.3超のフッ素樹脂フィルムから汚染成分を適切な時間溶媒抽出することにより、F/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3のフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
(III)フッ素樹脂を減圧下で成形することにより、F/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3のフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
(IV)フッ素樹脂を、Tダイから押出された直後に、表面温度がガラス転移温度以上融点以下に加熱した金属鏡面の冷却ロールと、同様に表面温度がガラス転移温度以上融点以下に加熱したゴムの押し当てロールの間に通し、汚染成分を金属鏡面の冷却ロールに転写させることにより、F/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3のフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
(V)フッ素樹脂フィルムを、表面温度がガラス転移温度以上融点以下に加熱した金属鏡面の冷却ロールと、同様に表面温度がガラス転移温度以上融点以下に加熱したゴムの押し当てロールの間に通し、汚染成分を金属鏡面の冷却ロールに転写させることにより、F/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3のフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
(VI)フッ素樹脂フィルムの押出時に、押出機のスクリュー計量部の溝深さを深くし、溶融樹脂にかかるせん断速度を下げることで樹脂の発熱を減らし、分解を抑えることによりF/Alが0.2〜4またはF/(C+F+O)が0.1〜0.3のフッ素樹脂フィルム(離型フィルム)を得る方法。
【0067】
方法(I):
ETFE中の第3のモノマーに基づく単位の割合が0.3〜1.7モル%であれば、得られるフッ素樹脂フィルムは、汚染成分の含有量が少なく、F/Alが0.2〜4となりやすく、また同時にF/(C+F+O)が0.1〜0.3となりやすい。
フッ素樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を利用できる。
両面が平滑である離型フィルムの製造方法としては、たとえば、所定のリップ幅を有するTダイを具備する押出機で溶融成形する方法等が挙げられる。
片面または両面に凹凸が形成されている離型フィルムの製造方法としては、たとえば、熱加工でフッ素樹脂フィルムの表面に元型の凹凸を転写する方法が挙げられ、生産性の点から、下記の方法(i)、(ii)等が好ましい。
(i)樹脂フィルムを元型ロールである冷却ロールと押し当てロールとの間に通し、樹脂フィルムの表面に元型ロールの表面に形成された凹凸を連続的に転写する方法。
(ii)押出機のダイスから押し出された樹脂を元型ロールである冷却ロールと押し当てロールとの間に通し、該樹脂をフィルム状に成形すると同時に、該フィルム状の樹脂の表面に元型ロールの表面に形成された凹凸を連続的に転写する方法。
【0068】
方法(i)、(ii)では、ロール状の元型を用いることによって、連続した加工が可能となり、凹凸が形成された離型フィルムの生産性が著しく向上する。また、これと同時に、巻物の離型フィルムとなることから、半導体パッケージの製造に、汎用の離型フィルムの繰り出し機構および巻き取り機構を有する圧縮成形装置またはトランスファ成形装置を用いることができる。
なお、方法(i)、(ii)において、押し当てロールとして表面に凹凸が形成されたものを用いると、両面に凹凸が形成されている離型フィルムが得られる。
【0069】
方法(II):
溶媒としては、当該樹脂に対し膨潤率が高く、溶媒抽出処理前後でフッ素樹脂フィルムの厚さを変化させず、かつ汚染成分を溶解し得るものが用いられる。かかる溶媒中にフッ素樹脂フィルムを浸漬すると、フッ素樹脂フィルム中の汚染成分が溶媒に溶解してフッ素樹脂フィルムから除去され、F/Alが小さくなりかつ同時にF/(C+F+O)も小さくなる。
溶媒抽出処理されるフッ素樹脂フィルムとしては、市販のものを用いてもよく、前述のような公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
溶媒の具体例としては、アサヒクリンAK225(旭硝子社製、ジクロロペンタフルオロプロパン)、アサヒクリンAE−3000(旭硝子社製、CF
3CH
2OCF
2CF
2H)等のフッ素系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル等の炭化水素エーテル、エステル、ケトン系溶媒等が挙げられる。
処理温度(浸漬温度)は、23〜50℃が好ましい。
処理時間(浸漬時間)は、処理温度によっても異なるが、1〜240時間が好ましい。
【0070】
方法(III):
フッ素樹脂の成形を減圧下で行うと、フッ素樹脂中の汚染成分が揮発し、得られるフッ素樹脂フィルムのF/Alが小さくなりかつ同時にF/(C+F+O)も小さくなる。
フッ素樹脂のフィルム成形は、通常押出機にて行うが、最もせん断熱がかかる圧縮領域にて真空ベントラインを設け、揮発したガスを吸引する方法が好ましい。
ベントラインの気圧は、1〜1,000Paが好ましく、100〜1,000Paが特に好ましい。該気圧が前記範囲の下限値以上であると、真空ベントに溶融したフッ素樹脂が盛り上がる、いわゆるベントアップを防げる。該気圧が前記範囲の上限値以下であると、汚染成分が揮発しやすい。
フッ素樹脂の成形時の温度は、フッ素樹脂の流動性に優れる点と分解しにくい点から、280〜330℃が好ましく、300〜320℃が特に好ましい。前記範囲の下限値以上であると、フッ素樹脂が成形性に優れる。前記範囲の上限値以下であると、フッ素樹脂の分解が少ない。
【0071】
方法(IV):
フッ素樹脂を溶融押出直後に当該樹脂のガラス転移温度以上融点以下に加熱した金属鏡面の冷却ロールに押し当てることで、汚染成分がロール表面に移行し、得られるフッ素樹脂フィルムのF/Alが小さくなりかつ同時にF/(C+F+O)も小さくなる。
ロールの材質は、冷却ロールは金属の鏡面ロールが好ましく、押し当てロールはゴムロールが好ましい。金属鏡面の冷却ロールおよびゴムの押し当てロールの温度は、ガラス転移温度+30℃〜融点−40℃が好ましく、ガラス転移温度+50℃〜融点−60℃がより好ましい。ガラス転移温度+30℃であれば、フッ素樹脂フィルムから汚染成分が滲みだしやすく、かつロールに転写しやすい。融点−40℃以下であれば、押し当てロール通過後もフッ素樹脂フィルムの厚みに変化が起こりにくい。
金属鏡面ロールの算術平均粗さRaは0.01〜0.1が好ましい。前記範囲内であれば、フッ素樹脂フィルムとロールが適度に密着し、にじみ出た汚染成分が転写されやすい。
押し当てロールのゴム硬度は、ISO7169−1に準拠してタイプDデュロメーターで測定した硬度(以下、ショアD硬度ともいう。)がD60〜80であることが好ましく、かつ押し当てロールの線圧は49〜490N/cmが好ましい。ショアD硬度と線圧が前記範囲内であれば、フッ素樹脂フィルムに適当な圧力がかかり、フッ素樹脂フィルムからにじみ出た汚染成分が金属鏡面の冷却ロールに転写しやすく、かつフィルムの厚さが変化しにくい。
【0072】
方法(V):
フッ素樹脂を溶融押出し、フッ素樹脂フィルムを製膜後、当該フィルムをガラス転移温度以上融点以下に加熱した金属鏡面ロールに連続的に押し当てることで、汚染成分がロール表面に移行し、得られるフッ素樹脂フィルムのF/Alが小さくなりかつ同時にF/(C+F+O)も小さくなる。
ロールの材質は、元型ロールは金属の鏡面ロールが好ましく、押し当てロールはゴムロールが好ましい。
金属鏡面ロールおよびゴムの押し当てロールの温度は、ガラス転移温度+60℃〜融点−40℃が好ましく、ガラス転移温度+70℃〜融点−60℃がより好ましい。ガラス転移温度+60℃であれば、フッ素樹脂フィルムがよく予熱され、汚染成分が滲みだしやすく、かつロールに転写しやすい。融点−40℃以下であれば、押し当てロール通過後もフッ素樹脂フィルムの厚さが変化しにくい。
金属鏡面ロールの算術平均粗さRaは0.01〜0.1が好ましい。前記範囲内であれば、フッ素樹脂フィルムとロールが適度に密着し、にじみ出た汚染成分が転写されやすい。
押し当てロールのショアD硬度はD60〜80が好ましく、かつ押し当てロールの線圧は49〜490N/cmが好ましい。ショアD硬度と線圧が前記範囲内であれば、フッ素樹脂フィルムに適当な圧力がかかり、フッ素樹脂フィルムからにじみ出た汚染成分が金属鏡面ロールに転写しやすく、かつフィルムの厚さが変化しにくい。
金属鏡面ロールと押し当てロールとの間を通すプロセスは2回以上経てもよい。
金属鏡面ロールと押し当てロールとの間を通す前に、フッ素樹脂フィルムは予熱されてもよい。予熱の方法として、赤外線ヒーターによる加熱、加熱ロールに沿わせて加熱、が挙げられる。予熱はフィルムの表面温度がガラス転移温度以下までとなることが好ましい。表面温度がガラス転移温度以下であれば、搬送時にシワが発生しにくい。
【0073】
方法(VI):
フッ素樹脂フィルムを押出時に、押出機内で溶融したフッ素樹脂にかかるせん断速度を下げ、溶融樹脂の過熱を抑えて汚染成分の発生を抑えることで、得られるフッ素樹脂フィルムのF/Alが小さくなりかつ同時にF/(C+F+O)も小さくなる。
通常、押出機内の計量部で溶融した樹脂にかかるせん断速度は以下の式で表される。なお、以下、s
−1は1/秒を、rpmは1分間あたりの回転数を表す。
γ=π・D×N/(60・h)
γ:せん断速度(s
−1)
D:シリンダ直径(cm)
N:スクリュー回転数(rpm)
h:スクリュー計量部の溝深さ(cm)
せん断速度は5〜50s
−1であることが好ましい。せん断速度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂に充分なせん断熱が与えられ、充分に溶融する。せん断速度が前記範囲の上限値以下であれば過熱によるフッ素樹脂の分解が少なく、汚染物質の発生が少ない。
また、スクリューは導入部、圧縮部、計量部の主に3つに分かれ、せん断がかかるのは主に計量部である。スクリューの長さは通常、有効長L(スクリュー長さ)/D(押出機口径)で表すが、L/Dは20〜30が好ましい。また、計量部のみの長さ、L(計量部)/Dは6〜8が好ましい。この範囲であれば溶融樹脂の吐出量の変動が少なく、かつ溶融樹脂にかかるせん断熱を低減できる。
【0074】
〔半導体パッケージ〕
本発明の離型フィルムを用いて、後述の本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージとしては、トランジスタ、ダイオード等の半導体素子を集積した集積回路等が挙げられる。
集積回路のパッケージ形状としては、BGA(Ball Grid Array)、QFN(Quad Flat Non−leaded package)、SON(Small Outline Non−leaded package)等が挙げられる。
【0075】
半導体パッケージの製造方法の一つとして、基板に複数の半導体素子を実装し、それらの半導体素子を硬化性樹脂で一括封止して、基板と複数の半導体素子と樹脂封止部とを有する一括封止体を得る工程(一括封止工程)と、複数の半導体素子が分離するように一括封止体の樹脂封止部および基板を切断、個片化して複数の半導体パッケージを得る工程(シンギュレーション工程)とを経る方法がある。半導体パッケージとしては、生産性の点から、一括封止工程およびシンギュレーション工程を経て製造されるものが好ましく、たとえば、封止方式がMAP(Moldied Array Packaging)方式、またはWL(Wafer Lebel packaging)方式である集積回路等が挙げられる。
【0076】
図1は、半導体パッケージの一例を示す概略断面図である。この例の半導体パッケージ1は、いわゆるMAP−BGA形状の集積回路である。
半導体パッケージ1は、基板10と、基板10の上に実装された半導体チップ(半導体素子)12と、半導体チップ12を封止する樹脂封止部14と、樹脂封止部14の上面14aに形成されたインク層16とを有する。
半導体チップ12は、表面電極(図示なし)を有し、基板10は、半導体チップ12の表面電極に対応する基板電極(図示なし)を有し、表面電極と基板電極とはボンディングワイヤ18によって電気的に接続されている。
【0077】
樹脂封止部14の厚さ(基板10の半導体チップ12設置面から樹脂封止部14の上面14aまでの最短距離)は、特に限定されないが、「半導体チップ12の厚さ」以上「半導体チップ12の厚さ+1mm」以下が好ましく、「半導体チップ12の厚さ」以上「半導体チップ12の厚さ+0.5mm」以下が特に好ましい。
【0078】
〔半導体パッケージの製造方法〕
本発明の半導体パッケージの製造方法は、半導体素子と、硬化性樹脂から形成され、前記半導体素子を封止する樹脂封止部とを有する半導体パッケージの製造方法であって、
金型の前記硬化性樹脂が接するキャビティ面に、前述した本発明の離型フィルムを、前記第1面がキャビティ内の空間に向くように配置する工程と、
前記キャビティ内に、半導体素子が実装された基板を配置し、該半導体素子を硬化性樹脂で封止し、該硬化性樹脂を前記離型フィルムに接した状態で硬化させて樹脂封止部を形成することにより、基板と前記基板上に実装された半導体素子と前記半導体素子を封止する樹脂封止部とを有する封止体を得る工程と、
前記封止体を前記金型から離型する工程と、を有する。
さらに、インクを用いた印刷によりインク層を形成する本発明の半導体パッケージの製造方法では、上記離型する工程の後の工程として、
前記封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成する工程、を有する。
【0079】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、本発明の離型フィルムを用いること以外は、公知の製造方法を採用できる。
たとえば樹脂封止部の形成方法としては、圧縮成形法またはトランスファ成形法が挙げられ、この際に使用する装置としては、公知の圧縮成形装置またはトランスファ成形装置を用いることができる。製造条件も、公知の半導体パッケージの製造方法における条件と同じ条件とすればよい。
【0080】
(第1実施形態)
半導体パッケージの製造方法の一実施形態として、
図1に示した半導体パッケージ1を圧縮成形法により製造する場合について詳細に説明する。
本実施形態の半導体パッケージの製造方法は、下記の工程(α1)〜(α6)または工程(α1)〜(α7)を有する。
(α1)本発明の離型フィルムを、離型フィルムが金型のキャビティを覆い且つ離型フィルムの第1面がキャビティ内の空間に向くように(第2面がキャビティ面に向くように)配置する工程。
(α2)離型フィルムを金型のキャビティ面の側に真空吸引する工程。
(α3)キャビティ内に硬化性樹脂を充填する工程。
(α4)複数の半導体素子が実装された基板をキャビティ内の所定の位置に配置し、硬化性樹脂によって前記複数の半導体素子を一括封止して樹脂封止部を形成することにより、基板と前記基板上に実装された複数の半導体素子と前記複数の半導体素子を一括封止する樹脂封止部とを有する一括封止体を得る工程。
(α5)金型内から一括封止体を取り出す工程。
(α6)前記複数の半導体素子が分離するように、前記一括封止体の前記基板および前記樹脂封止部を切断することにより、基板と前記基板上に実装された少なくとも1つの半導体素子と前記半導体素子を封止する樹脂封止部とを有する個片化封止体を得る工程。
(α7)個片化封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、半導体パッケージを得る工程。
【0081】
金型:
第1実施形態における金型としては、圧縮成形法に用いる金型として公知のものを使用でき、たとえば、
図2に示すように、固定上型20と、キャビティ底面部材22と、キャビティ底面部材22の周縁に配置された枠状の可動下型24とを有する金型が挙げられる。
固定上型20には、基板10と固定上型20との間の空気を吸引することによって基板10を固定上型20に吸着するための真空ベント(図示略)が形成されている。また、キャビティ底面部材22には、離型フィルム30とキャビティ底面部材22との間の空気を吸引することによって離型フィルム30をキャビティ底面部材22に吸着するための真空ベント(図示略)が形成されている。
この金型においては、キャビティ底面部材22の上面および可動下型24の内側側面によって、工程(α4)で形成する樹脂封止部14の形状に対応する形状のキャビティ26が形成される。
以下、キャビティ底面部材22の上面および可動下型24の内側側面を総称してキャビティ面ともいう。
【0082】
工程(α1):
可動下型24上に、キャビティ底面部材22の上面を覆うように離型フィルム30を配置する。このとき離型フィルム30は、第2面を下側(キャビティ底面部材22方向)に向けて配置される。
離型フィルム30は、巻出ロール(図示略)から送られ、巻取ロール(図示略)で巻き取られる。離型フィルム30は、巻出ロールおよび巻取ロールによって引っ張られるため、引き伸ばされた状態にて、可動下型24上に配置される。
【0083】
工程(α2):
別途、キャビティ底面部材22の真空ベント(図示略)を通じて真空吸引し、キャビティ底面部材22の上面と離型フィルム30との間の空間を減圧し、離型フィルム30を引き伸ばして変形させて、キャビティ底面部材22の上面に真空吸着させる。さらに、キャビティ底面部材22の周縁に配置された枠状の可動下型24を締め、離型フィルム30を全方向から引っ張り、緊張状態にさせる。
なお、高温環境下での離型フィルム30の強度、厚さ、キャビティ底面部材22の上面と可動下型24の内側側面によって形成された凹部の形状によって、離型フィルム30は、キャビティ面に密着するとは限らない。工程(α2)の真空吸着の段階では、
図2に示すように、離型フィルム30とキャビティ面との間に空隙が少し残っていてもよい。
【0084】
工程(α3):
図2に示すように、硬化性樹脂40を、アプリケータ(図示略)によって、キャビティ26内の離型フィルム30の上に適量充填する。
また、別途、固定上型20の真空ベント(図示略)を通じて真空吸引し、固定上型20の下面に、複数の半導体チップ12が実装された基板10を真空吸着させる。
【0085】
硬化性樹脂40としては、半導体パッケージの製造に用いられている各種の硬化性樹脂を用いてよい。エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであり、その分子量、分子構造を特に限定されるものではない。たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
用いられる硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、以下の硬化剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族アミン系硬化剤:エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン。
芳香族アミン系硬化剤:メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン等。
フェノール樹脂系硬化剤:アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン樹脂等。
ポリカルボン酸無水物系硬化剤:ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等。
上記以外の硬化剤:ジシアンジアミド等のアミド化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類。
【0087】
また、これら硬化剤の内、半導体封止材料に用いる硬化剤としては、耐湿性、信頼性等の点から、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0088】
用いられる硬化促進剤としては、エポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に半導体封止材料に使用するものを用いることができる。たとえば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
硬化性樹脂40には、無機充填材を用いることができる。無機充填材としては、一般に半導体封止材料に用いられているものであれば、特に制限はなく、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。
【0090】
硬化性樹脂40には、上記の成分以外に、必要に応じて、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
なお、ここでは、硬化性樹脂40として固体のものを充填する例を示したが、本発明はこれに限定されず、液状の硬化性樹脂を充填してもよい。
これらの混合物として、たとえば前記試験法Bに使用する住友ベークライト社製のスミコンEME G770H type F ver. GRのほかに、たとえばナガセケムテックス社製のT693/R4719−SP10等のエポキシ樹脂の市販品が挙げられる。
シリコーン樹脂の市販品としては、信越化学工業社製のLPS−3412AJ、LPS−3412B等が挙げられる。
【0091】
工程(α4):
図3に示すように、キャビティ26内の離型フィルム30の上に硬化性樹脂40を充填した状態で、キャビティ底面部材22および可動下型24を上昇させ、固定上型20と型締めする。
次いで、
図4に示すように、キャビティ底面部材22のみ上昇させるとともに金型を加熱して硬化性樹脂40を硬化させ、半導体チップ12を封止する樹脂封止部14を形成する。
工程(α4)においては、キャビティ底面部材22を上昇させたときの圧力によって、キャビティ26内に充填された硬化性樹脂40がさらにキャビティ面に押し込まれる。これによって離型フィルム30が引き伸ばされて変形し、キャビティ面に密着する。そのため、キャビティ26の形状に対応した形状の樹脂封止部14が形成される。
【0092】
金型の加熱温度、すなわち硬化性樹脂40の加熱温度は、100〜185℃が好ましく、140〜175℃が特に好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、半導体パッケージ1の生産性が向上する。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、硬化性樹脂40の劣化が抑えられる。
硬化性樹脂40の熱膨張率に起因する樹脂封止部14の形状変化を抑制する点から、半導体パッケージ1の保護が特に求められる場合には、前記範囲内においてできるだけ低い温度で加熱することが好ましい。
【0093】
工程(α5):
固定上型20とキャビティ底面部材22と可動下型24とを型開きし、一括封止体を取り出す。
一括封止体を離型すると同時に、離型フィルム30の使用済み部分を巻取ロール(図示略)に送り、離型フィルム30の未使用部分を巻出ロール(図示略)から送り出す。
巻出ロールから巻取ロールへ搬送する際の離型フィルム30の厚さは16μm以上が好ましい。厚さが16μm未満では、離型フィルム30の搬送時にしわが生じやすい。離型フィルム30にしわが入ると、しわが樹脂封止部14に転写されて製品不良となるおそれがある。厚さが16μm以上であれば、離型フィルム30に張力を充分にかけることによって、しわの発生を抑えることができる。
【0094】
工程(α6):
金型内から取り出した一括封止体の基板10および樹脂封止部14を、複数の半導体チップ12が分離するように切断(個片化)して、基板10と少なくとも1つの半導体チップ12と半導体チップ12を封止する樹脂封止部とを有する個片化封止体を得る。
個片化は、公知の方法により行うことができ、たとえばダイシング法が挙げられる。ダイシング法は、ダイシングブレードを回転させながら対象物を切断する方法である。ダイシングブレードとしては、典型的には、ダイヤモンド粉を円盤の外周に焼結した回転刃(ダイヤモンドカッター)が用いられる。ダイシング法による個片化は、たとえば、切断対象物である一括封止体を、治具を介して処理台上に固定し、切断対象物の切断領域と前記治具の間にダイシングブレードを挿入する空間がある状態で前記ダイシングブレードを走行させる方法により行うことができる。
工程(α6)においては、前記のように一括封止体を切断する工程(切断工程)の後、前記ダイシングブレードを覆うケースから離れた位置に配置されるノズルから前記切断対象物に向かって液体を供給しながら前記処理台を移動させる異物除去工程が含まれてもよい。
【0095】
工程(α7):
工程(α6)で得られた個片化封止体の樹脂封止部14の上面(離型フィルム30と接していた面)14aに、任意の情報を表示するために、インクを塗布し、インク層16を形成して半導体パッケージ1を得る。
インク層16によって表示される情報としては、特に限定されず、シリアルナンバー、製造メーカに関する情報、部品の種別等が挙げられる。
インクの塗布方法は、特に限定されず、たとえばインクジェット法、スクリーン印刷、ゴム版からの転写等の各種印刷法が適用できる。
インクとしては、特に限定されず、公知のインクのなかから適宜選択できる。
インク層16の形成方法としては、硬化速度が速くパッケージ上での滲みが少ない、また熱風を当てないのでパッケージの位置ずれが少ない等の点で、光硬化型のインクを使用し、該インクをインクジェット法により樹脂封止部14の上面14aに付着させ、該インクを光の照射により硬化させる方法が好ましい。
【0096】
光硬化型のインクとしては、典型的には、重合性化合物(モノマー、オリゴマー等)を含むものが用いられる。インクには、必要に応じて、顔料、染料等の色材、液体媒体(溶媒または分散媒)、重合禁止剤、光重合開始剤、その他各種添加剤等が添加される。その他の添加剤としては、たとえば、スリップ剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、放射線吸収剤、キレート在、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
【0097】
光硬化型のインクを硬化する光としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、放射線等が挙げられる。
紫外線の光源としては、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード、紫外線レーザーダイオード、自然光等が挙げられる。
光の照射は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0098】
(第2実施形態)
半導体パッケージの製造方法の他の実施形態として、
図1に示した半導体パッケージ1をトランスファ成形法により製造する場合について詳細に説明する。
本実施形態の半導体パッケージの製造方法は、下記の工程(β1)〜(β6)または工程(β1)〜(β7)を有する。
(β1)本発明の離型フィルムを、離型フィルムが金型のキャビティを覆い且つ離型フィルムの第1面がキャビティ内の空間に向くように(第2面がキャビティ面に向くように)配置する工程。
(β2)離型フィルムを金型のキャビティ面の側に真空吸引する工程。
(β3)複数の半導体素子が実装された基板をキャビティ内の所定の位置に配置する工程。
(β4)キャビティ内に硬化性樹脂を充填し、該硬化性樹脂によって複数の半導体素子を一括封止して樹脂封止部を形成することにより、基板と前記基板上に実装された複数の半導体素子と前記複数の半導体素子を一括封止する樹脂封止部とを有する一括封止体を得る工程。
(β5)金型内から一括封止体を取り出す工程。
(β6)前記複数の半導体素子が分離するように、前記一括封止体の前記基板および前記樹脂封止部を切断することにより、基板と前記基板上に実装された少なくとも1つの半導体素子と前記半導体素子を封止する樹脂封止部とを有する個片化封止体を得る工程。
(β7)個片化封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、半導体パッケージを得る工程。
【0099】
金型:
第2実施形態における金型としては、トンラスファ成形法に用いる金型として公知のものを使用でき、たとえば、
図5に示すように、上型50と下型52とを有する金型が挙げられる。上型50には、工程(α4)で形成する樹脂封止部14の形状に対応する形状のキャビティ54と、キャビティ54に硬化性樹脂40を導く凹状の樹脂導入部60とが形成されている。下型52には、半導体チップ12を搭載した基板10を設置する基板設置部58と、硬化性樹脂40を配置する樹脂配置部62とが形成されている。また、樹脂配置部62内には、硬化性樹脂40を上型50の樹脂導入部60へと押し出すプランジャ64が設置されている。
【0100】
工程(β1):
図6に示すように、上型50のキャビティ54を覆うように離型フィルム30を配置する。離型フィルム30は、キャビティ54および樹脂導入部60の全体を覆うように配置することが好ましい。離型フィルム30は、巻出ロール(図示略)および巻取ロール(図示略)によって引っ張られるため、引き伸ばされた状態にて上型50のキャビティ54を覆うように配置される。
【0101】
工程(β2):
図7に示すように、上型50のキャビティ54の外部に形成した溝(図示略)を通じて真空吸引し、離型フィルム30とキャビティ面56との間の空間、および離型フィルム30と樹脂導入部60の内壁との間の空間を減圧し、離型フィルム30を引き伸ばして変形させて、上型50のキャビティ面56に真空吸着させる。
なお、高温環境下での離型フィルム30の強度、厚さ、またキャビティ54の形状によって、離型フィルム30は、キャビティ面56に密着するとは限らない。
図7に示すように、工程(β2)の真空吸着の段階では、離型フィルム30とキャビティ面56との間には、空隙が少し残る。
【0102】
工程(β3):
図8に示すように、複数の半導体チップ12を実装した基板10を、基板設置部58に設置して上型50と下型52とを型締めし、複数の半導体チップ12をキャビティ54内の所定の位置に配置する。また、樹脂配置部62のプランジャ64上には、硬化性樹脂40をあらかじめ配置しておく。
硬化性樹脂40としては、方法(α)で挙げた硬化性樹脂40と同様のものが挙げられる。
【0103】
工程(β4):
図9に示すように、下型52のプランジャ64を押し上げ、樹脂導入部60を通じてキャビティ54内に硬化性樹脂40を充填する。次いで、金型を加熱し、硬化性樹脂40を硬化させ、複数の半導体チップ12を封止する樹脂封止部14を形成する。
工程(β4)においては、キャビティ54内に硬化性樹脂40が充填されることによって、樹脂圧力によって離型フィルム30がさらにキャビティ面56側に押し込まれ、引き延ばされて変形することによってキャビティ面56に密着する。そのため、キャビティ54の形状に対応した形状の樹脂封止部14が形成される。
【0104】
硬化性樹脂40を硬化させる際の金型の加熱温度、すなわち硬化性樹脂40の加熱温度は、方法(α)における温度範囲と同じ範囲とすることが好ましい。
硬化性樹脂40の充填時の樹脂圧は、2〜30MPaが好ましく、3〜10MPaが特に好ましい。樹脂圧が前記範囲の下限値以上であれば、硬化性樹脂40の充填不足等の欠点が生じにくい。樹脂圧が前記範囲の上限値以下であれば、優れた品質の半導体パッケージ1が得られやすい。硬化性樹脂40の樹脂圧は、プランジャ64によって調整できる。
【0105】
工程(β5):
図10に示すように、一括封止体1Aを金型から取り出す。このとき、樹脂導入部60内で硬化性樹脂40が硬化した硬化物19が、一括封止体1Aに付着した状態で一括封止体1Aとともに金型から取り出される。そのため、取り出された一括封止体1Aに付着している硬化物19を切除して、一括封止体1Aを得る。
【0106】
工程(β6):
工程(β5)で得られた一括封止体1Aの基板10および樹脂封止部14を、複数の半導体チップ12が分離するように切断(個片化)して、基板10と少なくとも1つの半導体チップ12と半導体チップ12を封止する樹脂封止部とを有する個片化封止体を得る。
工程(β6)は、工程(α6)と同様にして行うことができる。
【0107】
工程(β7):
得られた個片化封止体の樹脂封止部14の上面(離型フィルム30の第1面と接していた面)14aに、任意の情報を表示するために、インクを塗布し、インク層16を形成して半導体パッケージ1を得る。
工程(β7)は、工程(α7)と同様にして行うことができる。
【0108】
以上、本発明の半導体パッケージの製造方法について、第1〜第2実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、第1実施形態においては、工程(α5)の後、工程(α6)、工程(α7)をこの順で行う例を示したが、工程(α6)、工程(α7)を逆の順番で行ってもよい。すなわち、金型から取り出した一括封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、その後、一括封止体の前記基板および前記樹脂封止部を切断してもよい。
同様に、第2実施形態においては、工程(β5)の後、工程(β6)、工程(β7)をこの順で行う例を示したが、工程(β6)、工程(β7)を逆の順番で行ってもよい。すなわち、金型から取り出した一括封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、その後、一括封止体の前記基板および前記樹脂封止部を切断してもよい。
離型フィルムから樹脂封止部を剥離するタイミングは、金型から樹脂封止部を取り出す時に限定されず、金型から離型フィルムとともに樹脂封止部を取り出し、その後、樹脂封止部から離型フィルムを剥離してもよい。
一括封止する複数の半導体チップ12それぞれの間の距離は均一でもよく均一でなくてもよい。封止が均質にでき、複数の半導体チップ12それぞれに均一に負荷がかかる(すなわち負荷が最も小さくなる)点から、複数の半導体チップ12それぞれの間の距離を均一にすることが好ましい。
【0109】
また、本発明の半導体パッケージの製造方法により製造する半導体パッケージは、半導体パッケージ1に限定されない。
たとえば樹脂封止部の形状は、
図1に示すような断面略矩形のものに限定されない。
第1〜第2実施形態において、工程(α5)または(β5)の後、工程(α6)または(β6)を行わず、金型から取り出した一括封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、これを半導体パッケージとしてもよい。
第1〜第2実施形態の工程(α3)または(β3)にて、複数の半導体素子が実装された基板の代わりに、1つの半導体素子が実装された基板を用いてもよい。この場合、工程(α4)または(β4)で得られた封止体を金型から取り出した後、この封止体の樹脂封止部の、前記離型フィルムに接していた面に、インクを用いてインク層を形成し、これを半導体パッケージとすることができる。
さらに、インク層を設けない態様においては、本発明における半導体パッケージは発光ダイオードであってもよい。発光ダイオードを製造する場合、樹脂封止部はレンズ部としても機能するため、通常、樹脂封止部の表面にはインク層は形成されない。レンズ部である場合、樹脂封止部の形状は、略半球型、砲弾型、フレネルレンズ型、蒲鉾型、略半球レンズアレイ型等の各種のレンズ形状が採用できる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
後述する例1〜10のうち、例1、2
および4
は実施例であり、
例8および10は
参考例であり、例3、5〜7および9は比較例である。
各例で使用した材料および評価方法を以下に示す。
【0111】
〔使用材料〕
フッ素樹脂(1):後述の製造例1で得た、E/TFE/PFBE=52.7/46.5/0.8(モル比)の共重合体(融点:260℃、ガラス転移温度95℃、MFR:10.1g/10分)。
フッ素樹脂(2):後述の製造例2で得た、E/TFE/PFBE=52.5/46.3/1.2(モル比)の共重合体(融点:255℃、ガラス転移温度90℃、MFR:12g/10分)。
フッ素樹脂(3):後述の製造例3で得た、E/TFE/PFBE=52.7/45.4/1.9(モル比)の共重合体(MFR:27.6g/10分)。
フッ素樹脂(4):後述の製造例4で得た、TFE/PPVE=98.5/1.5(モル比)の共重合体(融点:310℃、ガラス転移温度100℃、MFR:12g/10分)。
フッ素樹脂(5):後述の製造例5で得た、TFE/E/PFBE=52.7/47.1/0.2(モル比)の共重合体(融点265℃、ガラス転移温度100℃、MFR:10.6g/10分)。
フッ素樹脂(6):後述の製造例6で得た、TFE/E/PFBE=56.3/40.2/3.5(モル比)の共重合体(融点225℃、ガラス転移温度70℃、MFR:12.5g/10分)。
【0112】
<製造例1:フッ素樹脂(1)の製造>
内容積が1.3Lの撹拌機付き重合槽を脱気して、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの881.9g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(商品名「AK225cb」旭硝子社製、以下、AK225cbという。)の335.5g、CH
2=CHCF
2CF
2CF
2CF
3(PFBE)の3.9gを仕込み、TFEの165.2g、エチレン(以下、Eという。)の9.8gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤溶液としてターシャリーブチルパーオキシピバレート(以下、PBPVという。)の1質量%のAK225cb溶液の5.8mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力が一定になるようにTFE/E=54/46のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、モノマー混合ガスの仕込みに合わせて、TFEとEの合計モル数に対して0.8モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合開始から2.9時間後、モノマー混合ガスの100gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに重合槽の圧力を常圧までパージした。
その後、得られたスラリをガラスフィルタで吸引ろ過し、固形分を回収して150℃で15時間乾燥することにより、フッ素樹脂(1)の105gを得た。
【0113】
<製造例2:フッ素樹脂(2)の製造>
重合を開始させる前に仕込むPFBEの量を3.9gから7.0gに、PBPVの1質量%のAK225cb溶液の量を5.8mLから7.7mLにそれぞれ変更し、重合中に連続的に仕込むPFBEの量を、TFEとEの合計モル数に対して0.8モル%から1.4モル%に変更した以外は製造例1と同様にして、フッ素樹脂(2)の107gを得た。
【0114】
<製造例3:フッ素樹脂(3)の製造>
重合を開始させる前に仕込む1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの量を881.9ggから837.8gに、AK225cbの量を335.5gから376.4gに、PFBEの量を7.0gから9.3gに、PBPVの1質量%のAK225cb溶液の量を5.8mLから11.5mLにそれぞれ変更し、重合中に連続的に仕込むPFBEの量を(TFEとEの合計モル数に対して)0.8モル%から2.2モル%に変更し、重合開始からモノマー混合ガスの100gを仕込むまでの時間を2.9時間から2.7時間に変更した以外は製造例1と同様にして、フッ素樹脂(3)の99gを得た。
【0115】
<製造例4:フッ素樹脂(4)の製造>
内容積が1.3Lの撹拌機付き重合槽を脱気して、窒素置換を行ったイオン交換水の662.8g、AK225cbの377.5g、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3(PPVE)の28g、メタノールの61gを仕込み、TFEの105gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤溶液としてヘプタフルオロブチロイルパーオキサイド(以下、PFBという。)の0.05質量%のAK225cb溶液の3.8mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力が一定になるようにTFEのモノマーガスを連続的に仕込んだ。また、重合速度が一定となるように0.05質量%のPFBと2質量%のPPVEのAK225cb溶液を24mL連続的に仕込んだ。重合開始3.4時間後、モノマーガスの160gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに重合槽の圧力を常圧までパージした。
その後、得られたスラリをガラスフィルタで吸引ろ過し、固形分を回収して150℃で15時間乾燥することにより、フッ素樹脂(4)の170gを得た。
【0116】
<製造例5:フッ素樹脂(5)の製造>
重合槽の内容積を1.2Lにし、重合を開始させる前に仕込む1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの量を881.9gから0gに、AK225cbの量を335.5gから291.6gに、PFBEの量を7.0gから16.0gに、TFEの量を165.2gから186.6gに、Eの量を9.8gから6.4gに、PBPVの1質量%のAK225cb溶液の量を5.8mLから5.3mLにそれぞれ変更し、重合中に連続的に仕込むモノマー混合ガスのTFE/Eのモル比を54/46から58/42に、PFBEの量を(TFEとEの合計モル数に対して)0.8モル%から3.6モル%に変更し、重合開始から3時間後、モノマー混合ガス90gを仕込んだ時点で重合槽内温を室温まで降温した以外は製造例1と同様にして、フッ素樹脂(5)の90gを得た。
【0117】
<製造例6:フッ素樹脂(6)の製造>
重合を開始させる前に仕込むPFBEの量を16.0から1.1gに、TFEの量を186.6gから151.2gに、Eの量を6.4gから18.1gにそれぞれ変更し、重合中に連続的に仕込むモノマー混合ガスのTFE/Eのモル比を58/42から54/46に、PFBEの量を(TFEとEの合計モル数に対して)3.6モル%から0.2モル%に変更した以外は製造例5と同様にして、フッ素樹脂(6)の90gを得た。
【0118】
〔評価方法〕
(MFR)
フッ素樹脂(1)〜(3)、(5)、(6)のMFRは、ASTM D3159に準拠して、荷重49N、297℃にて測定した。
また、フッ素樹脂(4)のMFRは、ASTM D3307 に準拠して、荷重49N、372℃にて測定した。
(融点)
走査型示差熱分析器(SIIナノテクノロジーズ社製、DSC220CU)を用いて、各フッ素樹脂を空気雰囲気下に350℃まで10℃/分で加熱した際の吸熱ピークから求めた。
(ガラス転移温度)
ISO6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき測定される貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”の比であるtanδ(E”/E’)が最大値を取る際の温度とした。具体的には、動的粘弾性測定装置ソリッドL−1(東洋精機社製)で測定を行った。
サンプルサイズ:幅8mm×長さ20mm
測定周波数:10Hz
ひずみ:0.035%
昇温速度:2℃/分
(フィルムの厚さの測定)
ISO4591:1992(JIS K7130:1999のB1法)に準拠して測定した。
【0119】
<F/(C+F+O)の測定>
厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第一の金属板の上に、厚さ100μm、大きさ15cm×15cmの正方形状のアルミニウム箔を乗せ、前記アルミニウム箔の上に、厚さ100mm、大きさ15cm×15cmの正方形状で、中央に10cm×8cmの長方形状の穴が開いたスペーサー(材質:ポリイミド)を乗せ、その穴の中心付近に半導体封止用エポキシ顆粒樹脂(商品名:スミコンEME G770H type F ver. GR、住友ベークライト社製)を2g乗せ、さらにその上に、大きさ15cm×15cmの正方形状の離型フィルムを、第1面を前記スペーサー側に向けて乗せ、その上に厚さ3mm、大きさ15cm×15cmの正方形状の第二の金属板を乗せて積層サンプルを作製した。
この積層サンプルを、180℃で熱したプレス機(50tプレス機、プレス面積45cm×50cm)に入れ、10MPaの圧力で5分間プレスした。
プレス後、第二の金属板、離型フィルムおよびスペーサーを取り除いた。これにより、第一の金属板とアルミニウム箔とエポキシ樹脂板(硬化物)とが積層してなる評価サンプルを得た。
【0120】
得られた評価サンプルのエポキシ樹脂面(評価サンプル作製時に離型フィルムの第1面と接触していた面)をX線光電子分光分析により分析した。その分析結果から、該表面における炭素原子(atomic%)とフッ素原子(atomic%)と酸素原子(atomic%)との和に対するフッ素原子(atomic%)の比(F/(C+F+O))を求めた。
XPSには、ULVAC−PHI社製のQuanteraSXM型のX線光電子分光分析装置を用いた。X線源として単色化AlKα線を15kV、25Wで使用し、X線照射面光電子検出角を45度とし、光電子のPass Energyを224eVとした。なお、式F/(C+F+O)中のC、F、Oはそれぞれ、この方法で測定した、C1s、F1s、O1sのピーク面積の測定値から算出した。
【0121】
<インク密着性の評価>
アルミニウム箔の代わりに、厚さ125μm、大きさ15cm×15cmの正方形状のポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス 125S、宇部興産社製)を用いた以外は前記<F/(C+F+O)の測定>と同様にして、第一の金属板とポリイミドフィルムとエポキシ樹脂板とが積層してなる評価サンプルを作製した。
紫外線(UV)硬化型インク(品番:4466、マーケム・イマージュ製)を酢酸エチルで3倍に希釈した。希釈したインクを評価サンプルのエポキシ樹脂面(評価サンプル作製時に離型フィルムの第1面と接触していた面)にバーコーター#3を使用して塗布した。塗布量は1g/m
2とした。塗布後、評価サンプルを100℃の熱風オーブンに入れ、3分間、乾燥させた。
上述のインクを塗布し乾燥させた評価サンプルを、UV照射装置に10秒間、3kWの条件でUVを照射し、インクを硬化させてインク層を形成した。
形成したインク層のエポキシ樹脂面に対する密着性を、ISO2409(JIS K5600−5−6−2009)に基づいて評価した。その結果から、その結果から、以下の基準でインク密着性を評価した。◎および○が実用上許容できる評価基準である。
◎(優良):どの格子の目にも剥がれがない。
○(良好):格子の一部に剥がれが認められる。
△(不良):格子の50%以上に剥がれが認められる。
×(不可):全面に剥がれが認められる。
【0122】
<離型性の評価>
JIS K6854−2:1999に準拠し、以下のように、離型フィルムと熱硬化性エポキシ樹脂との180度剥離試験を行って剥離力を測定した。剥離力が小さいほど、離型性に優れる。
(a)<F/(C+F+O)の測定>と同様の方法で、第一の金属板とアルミニウム箔とエポキシ樹脂板(硬化物)とが積層してなる評価サンプルを得た。
(b)前記評価サンプルを、25mm幅に切断した。
(c)前記25mm幅の評価サンプルを用い、常温における離型フィルムと熱硬化性エポキシ樹脂との180度剥離力を引張試験機(オリエンテック社製RTC−131−A)を用いて100mm/分の速度で測定した。
(d)力(N)−つかみ移動距離曲線における、つかみ移動距離25mmから125mmまでの剥離力の平均値を求めた。
(e)評価サンプル5個の剥離力の平均値(単位はN/cm)の算術平均を求めた。
【0123】
(F/Alの測定)
厚さ1mmの厚紙(大きさ5cm×10cm)の上に、厚さ0.1mm、JIS H4160におけるA1N30H−H18材からなるアルミニウム板(大きさ5cm×10cm)を載せ、その上に、離型フィルム(大きさ5cm×10cm)を、第1面を下側(アルミニウム板側)に向けて乗せ、その上(第1面側)にさらに厚さ1mmの厚紙(大きさ5cm×10cm)を乗せて積層サンプルとした。該積層サンプルを、180℃で熱したプレス機(50tプレス機、プレス面積45cm×50cm)に入れ、5MPaの圧力で5分間プレスした。プレス後、両側の厚紙を取り除き、アルミニウム板から離型フィルムを剥離し、アルミニウム板の離型フィルムと接触していた表面をX線光電子分光分析(XPS)により分析した。その分析結果から、該表面におけるアルミニウム原子(atomic%)に対するフッ素原子(atomic%)の比(F/Al)を求めた。
XPSには、ULVAC−PHI社製のQuanteraSXM型のX線光電子分光分析装置を用いた。X線源として単色化AlKα線を15kV、25Wで使用し、X線照射面光電子検出角を45度とし、光電子のPass Energyを224eVとした。また、F/Alはこの方法で測定した、F1sおよびAl1sの測定値から算出した。
【0124】
(汚染性評価(代替試験))
厚さ1mmの厚紙(大きさ13cm×13cm)の上に、厚さ1mmのミラー加工されたステンレス板(SUS303製、13cm×13cm)を、ミラー加工面(60度鏡面光沢度が680)を上側(厚紙とは反対側)に向けて載せ、その上に、離型フィルム(大きさ13cm×13cm)を、第1面を下側(ステンレス板側)に向けて乗せ、その上(第1面側)にさらに厚さ1mmの厚紙(大きさ13cm×13cm)を乗せて積層サンプルとした。該積層サンプルを、180℃で熱したプレス機(50tプレス機、プレス面積45cm×50cm)に入れ、1MPaの圧力で5分間プレスした。プレス後、両側の厚紙を取り除き、ステンレス板から離型フィルムを剥離し、ステンレス板のミラー加工面(離型フィルムと接触していた面)の60度鏡面光沢度を測定した。
上記の試験を、ステンレス板のミラー加工面(離型フィルムと接触していた面)の60度鏡面光沢度が500以下になるまで繰り返した。試験回数が多いほど、当該離型フィルムが接する他の面(金型のキャビティ面や樹脂封止部の表面)が汚染されにくいことを示す。
ステンレス板のミラー加工面の60度鏡面光沢度は、ISO7668:1984に基づき、日本電色工業社製の光沢度計PG−1Mにより測定した。
【0125】
〔例1〕
フッ素樹脂(1)を、厚さ50μmになるようにリップを調整した押出機により、320℃で溶融押出しし、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例1の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
なお、フッ素樹脂フィルムの製造条件は次の通りである。
押出機条件:押出機シリンダ口径65mm、回転数20rpm、スクリュー計量部溝深さ0.5cm、計量部せん断速度14s
−1、L/D=26、L(計量部)/D=8。
引取条件:金属鏡面ロール(Ra0.05、表面温度180℃)、押し当てゴムロール(ショアD硬度70、表面温度180℃、押し圧98N/cm)
ベント条件:圧縮部にベントを設け、ベントラインの気圧を500Paとした。
【0126】
〔例2〕
フッ素樹脂としてフッ素樹脂(2)を用いた以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例2の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0127】
〔例3〕
フッ素樹脂としてフッ素樹脂(3)を用いた以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例3の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0128】
〔例4〕
例3のフッ素樹脂フィルムを、アサヒクリンAK225(旭硝子社製)に浸漬し、40℃の条件下で3日置いた後、さらに清浄なアサヒクリンAK225で洗浄し、60℃で1時間乾燥し、これを例4の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0129】
〔例5〕
フッ素樹脂としてフッ素樹脂(4)を用い、溶融押出温度を380℃にした以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例5の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0130】
〔例6〕
フッ素樹脂としてフッ素樹脂(5)を用いた以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例6の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
【0131】
〔例7〕
フッ素樹脂としてフッ素樹脂(6)を用いた以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例7の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
【0132】
〔例8〕
例5のフッ素樹脂フィルムに、例4と同様の処理をし、これを例8の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0133】
[例9]
フィルムの製造条件を以下に変更した以外は例1と同様にして、厚さ50μmのフッ素樹脂フィルムを製造し、これを例9の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
なお、フッ素樹脂フィルムの製造条件は次の通りである。
押出機条件:押出機シリンダ口径65mm、回転数40rpm、スクリュー計量部溝深さ0.2cm、計量部せん断速度:85s
−1、L/D=26、L(計量部)/D=8。
引取条件:金属鏡面ロール(Ra0.05、表面温度90℃)、押し当てゴムロール(ショアD硬度70、表面温度90℃、押し圧98N/cm)
ベント条件:ベントを設けなかった。
【0134】
[例10]
例3で製造したフィルムを繰り出し、以下に記載の条件のロール間に2度通して、巻取った。
金属鏡面ロール(Ra0.05、表面温度190℃)、押し当てゴムロール(ショアD硬度80、表面温度190℃、押し圧294N/cm)
これを例10の離型フィルムとした。該離型フィルムのF/(C+F+O)を測定し、結果を表1に示す。
また、該離型フィルムのF/Alを測定し、結果を表2に示す。
【0135】
例1〜7および9〜10で得た離型フィルムについてインク密着性および離型性の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中、「(3)
*1」はフッ素樹脂(3)を溶媒抽出処理したものを示し、「(1)
*2」は、フッ素樹脂(1)と同じモノマー単位組成のフッ素樹脂であるが、異なる製造条件で得られたフッ素樹脂を示し、「(3)
*3」はフッ素樹脂(3)のフィルムをロール転写処理したものを示す。
下記の結果に示すとおり、F/(C+F+O)が0.1〜0.3である例1、2、4および10の離型フィルムは、エポキシ樹脂板(硬化性樹脂の硬化物)との離型性に優れていた。また、これらの離型フィルムを用いて形成されたエポキシ樹脂板は、インク密着性に優れていた。対してF/(C+F+O)が0.3超である例3、5、7および9の離型フィルムを用いて形成されたエポキシ樹脂板は、インク密着性が不充分であった。F/(C+F+O)が0.1未満である例6の離型フィルムは、エポキシ樹脂板との離型性が不充分であった。
【0136】
【表1】
【0137】
例1〜5および8〜9で得た離型フィルムについて汚染性評価を行った。結果を表2に示す。
なお、表2中、「(3)
*1」はフッ素樹脂(3)を溶媒抽出処理したものを示し、「(4)
*1」はフッ素樹脂(4)を溶媒抽出処理したものを示し、「(1)
*2」はフッ素樹脂(1)と同じモノマー単位組成のフッ素樹脂であるが、異なる製造条件で得られたフッ素樹脂を示す。
下記の結果に示すとおり、F/Alが0.2〜4である例1、2、4、8の離型フィルムは、当該離型フィルムが接する他の面を汚染しにくいものであった。
【0138】
【表2】