特許第6481681号(P6481681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6481681テトラフルオロフルオレンを有する液晶性化合物、液晶組成物、および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481681
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】テトラフルオロフルオレンを有する液晶性化合物、液晶組成物、および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 25/22 20060101AFI20190304BHJP
   C07C 25/24 20060101ALI20190304BHJP
   C07D 309/04 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20190304BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20190304BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C07C25/22CSP
   C07C25/24
   C07D309/04
   C09K19/32
   C09K19/12
   C09K19/42
   C09K19/30
   C09K19/34
   C09K19/14
   C09K19/20
   C09K19/18
   G02F1/13 500
【請求項の数】10
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2016-505125(P2016-505125)
(86)(22)【出願日】2015年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2015053070
(87)【国際公開番号】WO2015129412
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-37952(P2014-37952)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】平田 健治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 匡一
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−236992(JP,A)
【文献】 特表2004−529867(JP,A)
【文献】 特開2000−297051(JP,A)
【文献】 特開2000−178211(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01223210(EP,A1)
【文献】 特開2005−325110(JP,A)
【文献】 特開2001−106645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−5)〜(1−7)のいずれか1つで表される化合物。



式(1−5)〜(1−7)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;
式(1−6)において、
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
式(1−7)において、
環Aは、1,4−シクロへキシレンである。
【請求項2】
式(1−13)〜(1−17)のいずれか1つで表される、請求項に記載の化合物。



式(1−13)〜(1−17)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;LおよびLは独立して、水素である。
【請求項3】
式(1−23)〜(1−25)のいずれか1つで表される、請求項に記載の化合物。


式(1−23)〜(1−25)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜7のアルキルまたは炭素数2〜7のアルケニルである。
【請求項4】
請求項1〜に記載の化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【請求項5】
式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項に記載の液晶組成物。


式(2)〜(4)において、
11は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項6】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項または請求項に記載の液晶組成物。


式(5)において、
12は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
12は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Cは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14は、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項7】
式(6)〜(12)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(6)〜(12)において、
13およびR14は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
15は、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は水素またはメチルであり;
Xは、−CF−、−O−、または−CHF−であり;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
15、Z16、Z17、およびZ18は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項8】
式(13)〜(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(13)〜(15)において、
16およびR17は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【請求項9】
重合可能な化合物、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、および消泡剤の少なくとも1つをさらに含有する、請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性化合物、液晶組成物、および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、3,4,5,6−テトラフルオロ−9H−フルオレン−2,7−ジイル骨格を有し、誘電率異方性が負である化合物、この化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用されている。この素子は、液晶性化合物の光学的異方性、誘電率異方性などを利用したものである。液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、PSA(Polymer sustained alignment)モードなどが知られている。
【0003】
これらのうち、IPSモード、FFSモード、およびVAモードは、TNモード、STNモードなどの動作モードの欠点である視野角の狭さを改善できることが知られている。この種のモードを有する液晶表示素子では、負の誘電率異方性を有する液晶組成物が主に使われている。液晶表示素子の特性をさらに向上させるには、この組成物に含まれる液晶性化合物が、下記の(1)〜(8)で示す物性を有することが好ましい。
(1)熱、光などに対する高い安定性、
(2)高い透明点、
(3)液晶相の低い下限温度、
(4)小さな粘度(η)、
(5)適切な光学的異方性(Δn)、
(6)大きな負の誘電率異方性(Δε)、
(7)適切な弾性定数(K33:ベンド弾性定数)、
(8)他の液晶性化合物との優れた相溶性。
【0004】
液晶性化合物の物性が素子の特性に及ぼす効果は、次のとおりである。(1)のように、熱、光などに対する高い安定性を有する化合物は、素子の電圧保持率を大きくする。これによって、素子の寿命が長くなる。(2)のように、高い透明点を有する化合物は、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(3)のように、ネマチック相、スメクチック相などのような液晶相の低い下限温度、特にネマチック相の低い下限温度を有する化合物も、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(4)のように、粘度の小さな化合物は、素子の応答時間を短くする。
【0005】
(5)のように、適切な光学的異方性を有する化合物は、素子のコントラストを向上させる。素子の設計に応じて、大きな光学的異方性または小さな光学的異方性、すなわち適切な光学的異方性を有する化合物が必要である。素子のセルギャップを小さくすることにより応答時間を短くする場合には、大きな光学的異方性を有する化合物が適している。(6)のように大きな負の誘電率異方性を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。これによって、素子の消費電力が小さくなる。
【0006】
(7)に関しては、大きな弾性定数を有する化合物は、素子の応答時間を短くする。小さな弾性定数を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。したがって、向上させたい特性に応じて適切な弾性定数が必要になる。(8)のように他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物が好ましい。これは、異なった物性を有する液晶性化合物を混合して、組成物の物性を調節するからである。一般に化合物の融点と相溶性とは相関していることが知られており、融点の低い化合物が求められる。
【0007】
これまでに、大きな負の誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた(例えば、特許文献1)。特許文献1には、3,4,5,6−テトラフルオロ−9H−フルオレン−2,7−ジイル骨格と−CHO−結合基を有する化合物(S−1)および(S−2)が示されている。しかし、これらの化合物は、融点が高く、他の液晶性化合物との相溶性が十分に高くない。
【0008】
【0009】
このような状況から、上記の物性(1)〜(8)に関して優れた物性と適切なバランスを有する化合物の開発が望まれている。特に、大きな負の誘電率異方性を有し、かつ他の化合物との相溶性が優れている化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−236992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の課題は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。特に、大きな負の誘電率異方性を有し、かつ他の化合物との相溶性が優れている化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、式(1)で表される液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。

式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
、Z、およびZは独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0、1、または2である。
【0013】
式(1)で表される化合物は、3,4,5,6−テトラフルオロ−9H−フルオレン−2,7−ジイル骨格を持つことにより、大きな負の誘電率異方性を有する。さらに結合基には−CHO−または−OCH−などの酸素原子を含む基を持たず、末端基にはアルコキシなどの酸素原子を含む基を持たないことにより、融点が低く、他の液晶性化合物との相溶性が優れている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の長所は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。この長所は、特に大きな負の誘電率異方性を有し、かつ他の化合物との相溶性が優れている化合物を提供することである。第二の長所は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。第三の長所は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。透明点は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。液晶相の下限温度は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)、式(2)などにおいて、六角形で囲んだA、Dなどの記号はそれぞれ環A、環Dなどに対応する。複数の環Aを1つの式または異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つの環Aが表わす2つの基は、同じであってもよいし、または異なってもよい。このルールは、環A、Zなどの記号にも適用される。また、lが2のときに2つとなる環Aにも適用される。百分率で表した化合物の量は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
【0016】
「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられる場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0017】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称の二価の環にも適用される。
【0018】
本発明は、下記の項1〜13に記載された内容を包含する。
【0019】
項1. 式(1)で表される化合物。

式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
、Z、およびZは独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0、1、または2である。
【0020】
項2. 項1に記載の式(1)において、RおよびRが独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1〜10のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜10のアルケニルであり、Z、Z、およびZが独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−である、項1に記載の化合物。
【0021】
項3. 式(1−1)〜(1−4)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。

式(1−1)〜(1−4)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1〜10のアルキルであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
は、単結合、−(CH−、または−CH=CH−であり;
は、単結合、−(CH−、−(CH−、または−CH=CH−(CH−であり;
は、単結合、−(CH−、−(CH−、または−(CH−CH=CH−である。
【0022】
項4. 式(1−5)〜(1−12)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。

式(1−5)〜(1−12)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0023】
項5. 式(1−13)〜(1−22)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。

式(1−13)〜(1−22)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0024】
項6. 式(1−23)〜(1−25)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。

式(1−23)〜(1−25)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜7のアルキルまたは炭素数2〜7のアルケニルである。
【0025】
項7. 項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【0026】
項8. 式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7に記載の液晶組成物。

式(2)〜(4)において、
11は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【0027】
項9. 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7または項8に記載の液晶組成物。

式(5)において、
12は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
12は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Cは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14は、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0028】
項10. 式(6)〜(12)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7〜9のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(6)〜(12)において、
13およびR14は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
15は、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は水素またはメチルであり;
Xは、−CF−、−O−、または−CHF−であり;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
15、Z16、Z17、およびZ18は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0029】
項11. 式(13)〜(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7〜10のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(13)〜(15)において、
16およびR17は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0030】
項12. 重合可能な化合物、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、および消泡剤の少なくとも1つをさらに含有する、項7〜11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
項13. 項7〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0032】
本発明の化合物、液晶組成物、液晶表示素子について、順に説明する。
1−1.化合物(1)
本発明の化合物(1)について説明する。化合物(1)における末端基、環構造、結合基などの好ましい例、およびそれらの基が物性に及ぼす効果は、化合物(1)の下位式にも適用される。
【0033】
式(1)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの基は、直鎖または分岐鎖であり、シクロヘキシルのような環状基を含まない。これらの基において分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。
【0034】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327、に詳細な説明がある。
【0035】
またはRの好ましい例は、アルキル、アルケニル、および少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルである。RまたはRのさらに好ましい例は、アルキルおよびアルケニルである。
【0036】
アルキルの例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0037】
アルケニルの例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHである。
【0038】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの例は、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCH、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−CFCHCH、−CHCHFCH、−CHCFCH、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−CF(CHCH、−(CF−F、−(CH−F、−(CF−F、−CHCl、−CHCl、−CCl、−(CH−Cl、−CClCH、−CClCHCl、−CClCHCl、−CHCCl、−CClCCl、−(CH−Cl、−CClCHCH、−(CCl−Cl、−CClCHClCCl、−CHClCClCCl、−(CH−Cl、−(CCl−Cl、−CCl(CHCH、−(CH−Cl、および−(CCl−Clである。
【0039】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルケニルの例は、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、−CH=CHCFCF、−CH=CHCl、−CH=CCl、−CCl=CHCl、−CH=CHCHCl、−CH=CHCCl、−(CH−CH=CCl、−CHCH=CHCCl、および−CH=CHCClCClである。
【0040】
式(1)において、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0041】
環A、環A、または環Aの好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。さらに好ましい例は、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。1,4−シクロへキシレンには、シスおよびトランスの立体配置が存在する。高い上限温度の観点から、トランス配置が好ましい。
【0042】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンの好ましい例は、環(A−1)〜(A−17)である。負の大きな誘電率異方性を有するためには、基(A−1)、(A−5)、(A−6)、(A−7)、(A−8)、(A−9)、(A−10)、または(A−11)がより好ましい。
【0043】
式(1)において、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−である。Z、Z、およびZの好ましい例は、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−である。
【0044】
式(1)において、a、b、およびcは独立して、0または1であり、a、b、およびcの和は、0、1、または2である。a、b、およびcの好ましい組合せは、(a=b=c=0)、(b=1,a=c=0)、(b=c=1,a=0)、または(a=b=1,c=0)である。a、b、およびcのさらに好ましい組合せは、(b=1,a=c=0)、または(b=c=1、a=0)である。
【0045】
1−2.化合物(1)の物性
化合物(1)において、R、R、環A、環A、環A、Z、Z、およびZの種類、a、b、およびcの組合せを適切に選択することによって、透明点、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。Rなどの種類が化合物(1)の物性に及ぼす主要な効果を以下に説明する。
【0046】
またはRが直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。RまたはRが分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。RまたはRが光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。RまたはRが光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。RまたはRがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、小さい粘度、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0047】
環A、環A、および環Aの少なくとも1つが、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであるときは、特に大きな負の誘電率異方性を有する。
【0048】
a、b、およびcの組合せが、(b=1,a=c=0)であり、環Aが1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであるときは、透明点が高く、粘度が小さく、他の化合物との相溶性が優れている。(b=1,a=c=0)であり、環Aが1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、光学的異方性が大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が大きい。(b=1,a=c=0)であり、環Aがテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであるときは、他の化合物との相溶性が優れている。(b=c=1,a=0)または(a=b=1,c=0)であり、環A、環A、および環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、またはこれらの組み合わせであるときは、透明点が極めて高く、粘度が比較的小さい。(b=c=1,a=0)または(a=b=1,c=0)であり、環A、環A、および環Aが1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、またはこれらの組み合わせであるときは、透明点が高く、光学的異方性が極めて大きい。
【0049】
、Z、およびZの少なくとも1つが、単結合、−CHCH−、または−CH=CH−であるときは、粘度が小さい。Z、Z、およびZの少なくとも1つが、−(CH−、−CH=CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であるときは、弾性定数(K)が大きい。Z、Z、およびZの少なくとも1つが、−CH=CH−、−C≡C−、または−CF=CF−であるときは、光学的異方性が大きい。Z、Z、およびZが全て、単結合、−CHCH−、または−(CH−であるときは、化学的安定性が高い。
【0050】
a、b、およびcの組合せが、(a=b=c=0)であるときは、負の誘電率異方性が大きい。a、b、およびcの組合せが、(b=1,a=c=0)である時は、負の誘電率異方性が大きく、他の液晶性化合物との相溶性が良好である。a、b、およびcの組合せが、(b=c=1,a=0)であるときは、透明点が高く、他の液晶性化合物との相溶性が優れている。a、b、およびcの組合せが、(a=b=1,c=0)であるときは、透明点が極めて高い。
【0051】
1−3.好ましい化合物
好ましい化合物(1)の例として、項4に記載した化合物(1−5)〜(1−12)が挙げられる。

式(1−5)〜(1−12)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0052】
化合物(1)のより好ましい例は、項5に記載した化合物(1−13)〜(1−22)が挙げられる。

式(1−13)〜(1−22)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0053】
化合物(1)の最も好ましい例は、項6に記載した化合物(1−23)〜(1−25)が挙げられる。

式(1−23)〜(1−25)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜7のアルキルまたは炭素数2〜7のアルケニルである。
【0054】
1−4.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0055】
1−4−1.結合基の生成
化合物(1)における結合基を生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG(またはMSG)が表す一価の有機基は、同じであってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1G)は、化合物(1)または化合物(1)の中間体に相当する。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
(I) 単結合の生成
アリールホウ酸(21)と化合物(22)を、炭酸塩、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒の存在下で反応させ、化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒の存在下で化合物(22)を反応させても合成される。
【0062】
(II) −CH=CH−の生成
化合物(22)をn−ブチルリチウム、次いでDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)と反応させてアルデヒド(24)を得る。ホスホニウム塩(25)とカリウムtert−ブトキシドを反応させて発生させたリンイリドを、アルデヒド(24)と反応させて化合物(1B)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0063】
(III) −CHCH−の生成
化合物(1B)をパラジウム炭素触媒の存在下で水素化し、化合物(1C)を合成する。
【0064】
(IV) −C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとヨウ化銅の触媒存在下で、化合物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(25)を得る。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(25)を化合物(22)と反応させて、化合物(1D)を合成する。
【0065】
(V) −CF=CF−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(26)を得る。化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(26)と反応させて、化合物(1E)を合成する。
【0066】
(VI) −(CH−CH=CH−と−CH=CH−(CH−の生成
ホスホニウム塩(27)を用い、項(II)の方法に従って、化合物(1F)を合成する。この方法によって−CH=CH−(CH−を有する化合物も合成する。
【0067】
(VII) −(CH−の生成
化合物(1F)をパラジウム炭素触媒の存在下で水素化し、化合物(1G)を合成する。
【0068】
1−4−2.環Aおよび環Aの生成
1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0069】
1−4−3.合成例
化合物(1)を合成する方法の例は、次のとおりである。これらの化合物において、R、R、環A、環A、環A、Z、Z、Z、a、b、およびcの定義は、項1に記載の式(1)の定義と同じである。
【0070】
化合物(1)を合成する方法の例は、次のとおりである。公知の方法によって合成される化合物(51)に対してマグネシウムを作用させグリニャール試薬を調製した後、化合物(52)と反応させて、化合物(53)を得る。次に、化合物(53)に対してトリエチルシランおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を作用させることによって、化合物(54)を得る。得られた化合物(54)に、s−ブチルリチウム、塩化銅(II)、およびニトロベンゼンを作用させることによって、化合物(1)へと導くことができる。化合物(54)に対して、s−ブチルリチウムおよび塩化鉄(III)を作用させることによって、化合物(1)を合成することもできる。
【0071】
【0072】
【0073】
2.組成物(1)
本発明の液晶組成物(1)について説明をする。この組成物(1)は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含む。組成物(1)は、2つ以上の化合物(1)を含んでいてもよい。液晶性化合物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物(1)は、化合物(1)の少なくとも1つを1〜99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。誘電率異方性が正である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5〜60重量%の範囲である。誘電率異方性が負である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は30重量%以下である。組成物(1)は、化合物(1)と、本明細書中に記載しなかった種々の液晶性化合物とを含んでもよい。
【0074】
好ましい組成物は、以下に示す成分B、C、D、およびEから選択された化合物を含む。組成物(1)を調製するときには、例えば、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を適切に選択した組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。
【0075】
成分Bは、化合物(2)〜(4)である。成分Cは化合物(5)である。成分Dは、化合物(6)〜(12)である。成分Eは、化合物(13)〜(15)である。これらの成分について、順に説明する。
【0076】
成分Bは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)〜(2−16)、化合物(3−1)〜(3−113)、または化合物(4−1)〜(4−57)を挙げることができる。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
これらの化合物(成分B)において、R11およびX11の定義は、項11記載の式(2)〜(4)と同じである。
【0084】
成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、TFTモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Bの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、化合物(12)〜(14)(成分E)をさらに添加することにより粘度を調整することができる。
【0085】
成分Cは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(5)である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)〜(5−64)を挙げることができる。
【0086】
【0087】
【0088】
これらの化合物(成分C)において、R12およびX12の定義は、項12記載の式(5)と同じである。
【0089】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいのでSTNモード用、TNモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分Cは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学的異方性を調整する、という効果がある。成分Cは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0090】
STNモード用またはTNモード用の組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適しているが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、成分Eを添加することにより液晶相の温度範囲、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などを調整できる
【0091】
成分Dは、化合物(6)〜(12)である。これらの化合物は、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたベンゼン環を有する。成分Dの好ましい例として、化合物(6−1)〜(6−8)、化合物(7−1)〜(7−17)、化合物(8−1)、化合物(9−1)〜(9−3)、化合物(10−1)〜(10−11)、化合物(11−1)〜(11−3)、または化合物(12−1)〜(12−3)を挙げることができる。
【0092】
【0093】
【0094】
これらの化合物(成分D)において、R13、R14およびR15の定義は、項9記載の式(6)〜(12)と同じである。
【0095】
成分Dは、誘電率異方性が負の化合物である。成分Dは、主としてVAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Dのうち、化合物(6)は2環化合物であるので、主として、粘度の調整、光学的異方性の調整、または誘電率異方性の調整の効果がある。化合物(7)および(8)は3環化合物であるので、上限温度を高くする、光学的異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(9)〜(12)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0096】
VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量が組成物の全重量に対して30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0097】
成分Eは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Eの好ましい例として、化合物(13−1)〜(13−11)、化合物(14−1)〜(14−19)、または化合物(15−1)〜(15−7)を挙げることができる。
【0098】
【0099】
これらの化合物(成分E)において、R16およびR17の定義は、項10記載の式(13)〜(15)と同じである。
【0100】
成分Eは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(13)は、主として粘度の調整または光学的異方性の調整の効果がある。化合物(14)および(15)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学的異方性の調整の効果がある。
【0101】
成分Eの含有量を増加させると組成物の粘度が小さくなるが、誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。したがって、VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0102】
組成物(1)の調製は、必要な成分を高い温度で溶解させるなどの方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、泡消剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0103】
組成物(1)は、少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加することができる。このキラルド−プ剤は液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。キラルド−プ剤の好ましい例として、化合物(Op−1)〜(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R24は炭素数1〜10のアルキルである。
【0104】
【0105】
組成物(1)は、このような光学活性化合物を添加して、らせんピッチを調整する。らせんピッチは、TFTモード用およびTNモード用の組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STNモード用の組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。BTNモード用の組成物の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0106】
組成物(1)は、重合可能な化合物を添加することによってPSAモード用に使用することもできる。重合可能な化合物の例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどであり、好ましい例として、下記の化合物(M−1)〜(M−12)を挙げることができる。重合可能な化合物は、紫外線照射などにより重合する。光重合開始剤などの適切な開始剤の存在下で重合せさてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。
【0107】
化合物(M−1)〜(M−12)において、R20は水素またはメチルであり;sは0または1であり;tおよびuは独立して、1〜10の整数である。かっこに入れた記号Fは、水素またはフッ素を意味する。
【0108】
【0109】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、化合物(AO−1)または(AO−2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、またはIRGANOX 1098(商品名:BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO−3)または(AO−4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99−2(商品名:BASF社);または1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0110】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)または(AO−6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、またはTINUVIN 770DF(商品名:BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名:BASF社)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0111】
【0112】
化合物(AO−1)において、R25は炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOR26、または−CHCHCOOR26であり;R26は炭素数1〜20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R27は炭素数1〜20のアルキルである。化合物(AO−5)において、環Kおよび環Lは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、vは、0、1、または2であり、R28は、水素、メチル、またはOである。
【0113】
組成物(1)は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH(guest host)モード用に使用することもできる。
【0114】
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによって上限温度を70℃以上とすること、下限温度を−10℃以下とすることができるので、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この組成物を含む液晶表示素子は広い温度範囲で使用することが可能である。
【0115】
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによって、光学異方性を0.10〜0.13の範囲、または0.05〜0.18の範囲とすることができる。同様にして、誘電率異方性を−5.0〜−2.0の範囲に調整することができる。好ましい誘電率異方性は、−4.5〜−2.5の範囲である。この範囲の誘電率異方性を有する組成物(1)は、IPSモード、VAモード、またはPSAモードで動作する液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0116】
3.液晶表示素子
組成物(1)は、AM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、PSA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモード、またはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加状態での液晶分子の配列がパネル基板に対して並行あるいは垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【0117】
組成物(1)は、負の誘電率異方性を有するので、VAモード、IPSモード、またはPSAモードなどの動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に好適に用いることができる。この組成物は、VAモードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に、特に好適に用いることができる。
【0118】
TNモード、VAモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで動作する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997) に報告されている。IPSモードで動作する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:米国特許第5576867明細書)に報告されている。
【実施例】
【0119】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0120】
1−1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物の物性は、下記に記載した方法により測定した。
【0121】
NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0122】
測定試料
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0123】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物10重量%と母液晶90重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0124】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を5重量%:95重量%、3重量%:97重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、10重量%:90重量%である。
【0125】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で示す。
【0126】
【0127】
測定方法
物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下、JEITAと略す)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521A)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0128】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0129】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0130】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0131】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶(または、スメクチック相)が析出しているかどうか観察をした。
【0132】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。試料が化合物と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物と成分Bなどとの混合物であるときは、NIの記号で示した。
【0133】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0134】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0135】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30〜50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した値を用いた。
【0136】
(8)光学的異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学的異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0137】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0138】
(10)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN)
測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。静電容量(C)と印加電圧(V)の値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0139】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。
【0140】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0141】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
電圧保持率(VHR−2)は、80℃で測定した以外はVHR−1と同様の方法で求めた。
【0142】
原料
ソルミックスA−11(商品名)は、エタノール(85.5重量%)、メタノール(13.4重量%)とイソプロパノール(1.1重量%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
[実施例1]
【0143】
化合物(No.1−2−5)の合成
【0144】
第1工程
窒素雰囲気下、マグネシウム(20.8g)およびTHF(30.0ml)を反応器に入れて、45℃に加熱した。そこへ化合物(T−1)(150g)のTHF(150ml)溶液を45℃から55℃の温度範囲でゆっくりと加え、2時間撹拌した。次に0℃に冷却し、化合物(T−2)(127g)のTHF(200ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ2時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製して、化合物(T−3)(188g;95%)を得た。
【0145】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−3)(188g)およびジクロロメタン(750ml)を反応器に入れて、−50℃に冷却した。そこへトリエチルシラン(140ml)および三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(205ml)をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−4)(145g;82%)を得た。
【0146】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−4)(120g)およびTHF(1200ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.01M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;500ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次にDMF(77.4ml)をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、ヘプタン:トルエン=1:1)で精製して、化合物(T−5)(57.2g;43%)を得た。
【0147】
第4工程
窒素雰囲気下、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(286g)およびTHF(850ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(82.8g)をゆっくりと加え、30分間撹拌した。次に化合物(T−5)(165g)のTHF(800ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ2時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−6)(172g;100%)を得た。
【0148】
第5工程
化合物(T−6)(172g)、パラジウムカーボン触媒(5%Pd/CのNXタイプ(50%湿潤品);エヌ・イー・ケムキャット製;8.62g)、トルエン(500ml)、およびソルミックス(登録商標)A−11(500ml)を反応器に入れ、水素雰囲気下で12時間撹拌した。濾過により触媒を除去したのち、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−7)(170g;98%)を得た。
【0149】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(T−7)(135g)およびTHF(1000ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.01M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;500ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次に化合物(T−8)(96.6g)のTHF(350ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ3時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(T−9)(215g;100%)を得た。
【0150】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(T−9)(215g)、PTSA(パラトルエンスルホン酸一水和物)(6.47g)、およびトルエン(1000ml)を反応器に入れて、留出してくる水を除去しつつ、1時間加熱還流を行った。反応混合物を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−10)(244g;87%)を得た。
【0151】
第8工程
化合物(T−10)(244g)、ラネーニッケル(24.4g)、トルエン(200ml)、およびIPA(200ml)を反応器に入れ、水素雰囲気下で24時間撹拌した。濾過により触媒を除去したのち、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−11)(236g;96%)を得た。
【0152】
第9工程
窒素雰囲気下、化合物(T−11)(50.0g)およびTHF(2500ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.07M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;237ml)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。次に塩化銅(II)(35.6g)を加え、1時間撹拌した。次にニトロベンゼン(28.6ml)をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにヘプタンとIPAとの混合溶媒(容積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(1−2−5)(7.83g;16%)を得た。
【0153】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.10(d,J=5.4Hz,1H)、7.05(d,J=5.6Hz,1H)、3.85(s,2H)、2.89(tt,J=12.2Hz,J=3.0Hz,1H)、2.69(t,J=7.6Hz,2H)、1.95−1.85(m,4H)、1.73−1.63(m,2H)、1.55−1.44(m,2H)、1.38−1.20(m,9H)、1.17−1.05(m,2H)、0.98(t,J=7.3Hz,3H)、0.91(t,J=7.3Hz,3H).
【0154】
化合物(No.1−2−5)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 110 (S 100) I.
上限温度(TNI)=84.6℃;光学的異方性(Δn)=0.145;誘電率異方性(Δε)=−10.4;粘度(η)=117mPa・s.
[実施例2]
【0155】
化合物(No.1−2−6)の合成
【0156】
第1工程
窒素雰囲気下、実施例1の第7工程と同様の手法により合成した化合物(T−12)(196g)およびTHF(5000ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.01M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;1000ml)をゆっくりと加え、3時間撹拌した。次に塩化鉄(III)(92.1g)を加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を1N塩酸に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−2−6)(25.2g;13%)を得た。
【0157】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.09(d,J=5.4Hz,1H)、7.05(d,J=5.6Hz,1H)、3.83(s,2H)、2.89(tt,J=12.2Hz,J=3.0Hz,1H)、2.70(t,J=7.7Hz,2H)、1.95−1.85(m,4H)、1.68−1.58(m,2H)、1.55−1.44(m,2H)、1.44−1.20(m,11H)、1.16−1.05(m,2H)、0.98(t,J=7.3Hz,3H)、0.91(t,J=7.3Hz,3H).
【0158】
化合物(No.1−2−6)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 108 (S 102) I.
上限温度(TNI)=80.6℃;光学的異方性(Δn)=0.141;誘電率異方性(Δε)=−9.79;粘度(η)=120mPa・s.
[実施例3]
【0159】
化合物(No.1−2−15)の合成
【0160】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−4)(50.0g)およびTHF(900ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(0.97M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;215ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次に化合物(T−8)(42.0g)のTHF(100ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製して、化合物(T−13)(48.0g;56%)を得た。
【0161】
第2工程
化合物(T−13)(48.0g)を原料として用い、実施例1の第7工程と同様の手法により、化合物(T−14)(42.4g;93%)を得た。
【0162】
第3工程
化合物(T−14)(42.4g)を原料として用い、実施例1の第8工程と同様の手法により、化合物(T−15)(42.0g;99%)を得た。
【0163】
第4工程
化合物(T−15)(42.0g)を原料として用い、実施例1の第3工程と同様の手法により、化合物(T−16)(40.5g;90%)を得た。
【0164】
第5工程
窒素雰囲気下、化合物(T−17)(19.1g)およびTHF(150ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(4.80g)をゆっくりと加え、30分間撹拌した。次に化合物(T−16)(15.0g)のTHF(150ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−18)(17.5g;100%)を得た。
【0165】
第6工程
化合物(T−18)(17.5g)を原料として用い、実施例1の第5工程と同様の手法により、化合物(T−19)(17.1g;97%)を得た。
【0166】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(T−19)(17.1g)、ギ酸(85.5ml)、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)(3.36g)、およびトルエン(170ml)を反応器に入れて、12時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−20)(14.7g;94%)を得た。
【0167】
第8工程
窒素雰囲気下、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(14.6g)およびTHF(110ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(4.41g)をゆっくりと加え、30分間撹拌した。次に化合物(T−20)(14.7g)のTHF(110ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−21)(11.0g;75%)を得た。
【0168】
第9工程
化合物(T−21)(8.89g)を原料として用い、実施例1の第9工程と同様の手法により、化合物(No.1−2−15)(1.11g;13%)を得た。
【0169】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.10(d,J=5.4Hz,1H)、7.06(d,J=5.5Hz,1H)、5.92−5.80(m,1H)、5.09−4.98(m,2H)、3.85(s,2H)、2.89(tt,J=12.3Hz,J=3.0Hz,1H)、2.81(t,J=7.7Hz,2H)、2.45−2.36(m,2H)、1.95−1.85(m,4H)、1.55−1.44(m,2H)、1.38−1.20(m,9H)、1.17−1.06(m,2H)、0.90(t,J=7.2Hz,3H).
【0170】
化合物(No.1−2−15)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 111 (S 102 N 103) I.
上限温度(TNI)=90.6℃;光学的異方性(Δn)=0.150;誘電率異方性(Δε)=−8.76;粘度(η)=105mPa・s.
[実施例4]
【0171】
化合物(No.1−2−41)の合成
【0172】
第1工程
窒素雰囲気下、ブチルアルデヒド(9.45g)およびトルエン(200ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへジメチルアルミニウムクロリド(1.00M;n−ヘキサン溶液;19.7ml)を加え30分間撹拌した。次に化合物(T−22)(25.0ml)をゆっくりと加え、3時間撹拌した。次に−40℃に昇温した後、NBS(N−ブロモスクシンイミド)(46.6g)およびDMF(150ml)を加え、室温に戻しつつ1時間撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、ヘプタン:トルエン=1:9)で精製して、化合物(T−23)(9.40g;33%)を得た。
【0173】
第2工程
窒素雰囲気下、実施例1の第5工程と同様の手法により合成した化合物(T−24)(6.25g)およびTHF(100ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.01M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;21.8ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次に化合物(T−23)(4.90g)のTHF(50.0ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ3時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−25)(7.43g;69%)を得た。
【0174】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−25)(7.43g)、ジエチル亜鉛(1.00M;n−ヘキサン溶液;9.79ml)、およびトルエン(110ml)を反応器に入れ、75℃で3時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、ヘプタン:酢酸エチル=8:1)で精製して、化合物(T−26)(4.45g;71%)を得た。
【0175】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(T−26)(4.45g)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(2.21g)、およびエタノール(110ml)を反応器に入れ、60℃で3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製して、化合物(T−27)(4.33g;71%)を得た。
【0176】
第5工程
窒素雰囲気下、化合物(T−27)(4.12g)、水素化ホウ素ナトリウム(2.52g)、メタノール(40.0ml)、およびエタノール(80.0ml)を反応器に入れ、75℃で6時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、ヘプタン:酢酸エチル=10:1)で精製して、化合物(T−28)(1.25g;43%)を得た。
【0177】
第6工程
化合物(T−28)(1.25g)を原料として用い、実施例1の第9工程と同様の手法により、化合物(No.1−2−41)(0.36g;29%)を得た。
【0178】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.09−7.04(m,2H)、4.08−4.02(m,1H)、3.86(s,2H)、3.47(t,J=11.1Hz,1H)、3.40−3.33(m,1H)、3.26−3.18(m,1H)、2.70(t,J=7.5Hz,2H)、2.07−2.00(m,1H)、1.88−1.76(m,2H)、1.68−1.55(m,3H)、1.55−1.30(m,8H)、0.98−0.87(m,6H).
【0179】
化合物(No.1−2−41)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、光学的異方性、誘電率異方性、および粘度の測定には、化合物と母液晶との割合が5重量%:95重量%である試料を用いた。
転移温度:C 117 I.
上限温度(TNI)=54.6℃;光学的異方性(Δn)=0.129;誘電率異方性(Δε)=−11.4;粘度(η)=142mPa・s.
[実施例5]
【0180】
化合物(No.1−2−22)の合成
【0181】
第1工程
化合物(T−10)(10.0g)を原料として用い、実施例2の第1工程と同様の手法により、化合物(No.1−2−22)(4.43g;40%)を得た。
【0182】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.11(d,J=5.8Hz,1H)、7.05(d,J=5.6Hz,1H)、6.04−5.98(m,1H)、3.85(s,2H)、2.69(t,J=8.3Hz,2H)、2.54−2.29(m,3H)、1.94−1.80(m,2H)、1.73−1.58(m,3H)、1.43−1.25(m,9H)、0.98(t,J=7.4Hz,3H)、0.91(t,J=7.1Hz,3H).
【0183】
化合物(No.1−2−22)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 111 S 127 I.
上限温度(TNI)=99.6℃;光学的異方性(Δn)=0.187;誘電率異方性(Δε)=−10.0;粘度(η)=98.1mPa・s.
[実施例6]
【0184】
化合物(No.1−2−52)の合成
【0185】
第1工程
化合物(T−7)(20.7g)を原料として用い、実施例1の第3工程と同様の手法により、化合物(T−29)(19.4g;85%)を得た。
【0186】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−30)(20.5g)およびTHF(100ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(4.34g)をゆっくりと加え、30分間撹拌した。次に化合物(T−29)(10.0g)のTHF(100ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−31)(9.23g;62%)を得た。
【0187】
第3工程
化合物(T−31)(9.23g)を原料として用い、実施例1の第5工程と同様の手法により、化合物(T−32)(8.61g;93%)を得た。
【0188】
第4工程
化合物(T−32)(8.61g)を原料として用い、実施例2の第1工程と同様の手法により、化合物(No.1−2−52)(3.16g;37%)を得た。
【0189】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.05(d,J=5.6Hz,2H)、3.84(s,2H)、2.76−2.65(m,4H)、1.85−1.62(m,6H)、1.56−1.47(m,2H)、1.35−1.10(m,10H)、1.02−0.82(m,10H).
【0190】
化合物(No.1−2−52)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、光学的異方性、誘電率異方性、および粘度の測定には、化合物と母液晶との割合が3重量%:97重量%である試料を用いた。
転移温度:C 121 (S 105 N 108) I.
上限温度(TNI)=97.9℃;光学的異方性(Δn)=0.187;誘電率異方性(Δε)=−11.1;粘度(η)=98.8mPa・s.
[実施例7]
【0191】
化合物(No.1−2−31)の合成
【0192】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−7)(17.7g)およびTHF(255ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.03M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;63.9ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次にヨウ素(19.1g)のTHF(100ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ3時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−33)(25.3g;99%)を得た。
【0193】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−33)(6.00g)、化合物(T−34)(3.53g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.170g)、炭酸カリウム(4.06g)、TBAB(0.948g)、トルエン(35.0ml)、IPA(35.0ml)、および水(35.0ml)を反応器に入れて、3時間加熱還流を行った。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−35)(4.70g;75%)を得た。
【0194】
第3工程
化合物(T−35)(4.70g)を原料として用い、実施例2の第1工程と同様の手法により、化合物(No.1−2−31)(1.84g;39%)を得た。
【0195】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.50(d,J=8.0Hz,2H)、7.33−7.26(m,3H)、7.08(d,J=5.4Hz,1H)、3.92(s,2H)、2.74−2.61(m,4H)、1.75−1.61(m,4H)、1.43−1.30(m,4H)、0.99(t,J=7.2Hz,3H)、0.91(t,J=6.7Hz,3H).
【0196】
化合物(No.1−2−31)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 97.1 S 132 I.
上限温度(TNI)=89.6℃;光学的異方性(Δn)=0.227;誘電率異方性(Δε)=−9.89;粘度(η)=103mPa・s.
[実施例8]
【0197】
化合物(No.1−1−3)の合成
【0198】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−29)(3.28g)およびn−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド(4.55g)を原料として用い、実施例6の第2工程と同様の手法により、化合物(T−36)(3.71g;88%)を得た。
【0199】
第2工程
化合物(T−36)(3.71g)を原料として用い、実施例6の第3工程と同様の手法により、化合物(T−37)(3.20g;84%)を得た。
【0200】
第3工程
化合物(T−37)(3.20g)を原料として用い、実施例2の第1工程と同様の手法により、化合物(No.1−1−3)(0.93g;29%)を得た。
【0201】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.05(d,J=5.6Hz,2H)、3.84(s,2H)、2.75−2.65(m,4H)、1.73−1.59(m,4H)、1.40−1.23(m,8H)、0.98(t,J=7.3Hz,3H)、0.88(t,J=7.0Hz,3H).
【0202】
化合物(No.1−1−3)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 90.9 I.
上限温度(TNI)=−15.7℃;光学的異方性(Δn)=0.147;誘電率異方性(Δε)=−10.0;粘度(η)=73.2mPa・s.
【0203】
既に記載した化合物(1)の合成法および実施例1〜6に記載した合成手順に従って、以下に示す化合物(1−1−1)〜(1−1−15)、化合物(1−2−1)〜(1−2−80)、化合物(1−3−1)〜(1−3−40)、または化合物(1−4−1)〜(1−4−76)を合成できる。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
[比較例1]
本願化合物が結合基に酸素原子を持たないことの効果を明らかにする為に、比較化合物として、−CHO−結合基を有する化合物(S−1−1)を合成した。この化合物は、特開平10−236992号公報に記載されているからである。なお、特開平10−236992号公報では両アルキル末端が共に−Cである対称形の化合物が記載されているが、ここでは融点等の比較を目的としている為、アルキル末端が−C11および−Cである非対称形の化合物を合成した。
【0216】
比較化合物(S−1−1)の合成
【0217】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−33)(10.0g)、炭酸カリウム(19.8g)、TBAB(3.09g)、およびDMF(150ml)を反応器に入れて、80℃で30分間撹拌した。次に化合物(T−34)(14.2g)のDMF(50.0ml)溶液をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−35)(17.8g;99%)を得た。
【0218】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−35)(17.8g)、およびジエチルエーテル(300ml)を反応器に入れ、−70℃に冷却した。そこへn−ブチルリチウム(1.57M;n−ヘキサン溶液;27.6ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。次に化合物(T−2)(5.62g)のジエチルエーテル(50.0ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ1時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製して、化合物(T−36)(16.1g;93%)を得た。
【0219】
第3工程
化合物(T−36)(16.1g)を原料として用い、実施例1の第2工程と同様の手法により、化合物(T−37)(13.7g;88%)を得た。
【0220】
第4工程
化合物(T−37)(13.7g)を原料として用い、実施例1の第3工程と同様の手法により、化合物(T−38)(11.0g;75%)を得た。
【0221】
第5工程
化合物(T−38)(6.00g)を原料として用い、実施例1の第4工程と同様の手法により、化合物(T−39)(6.09g;99%)を得た。
【0222】
第6工程
化合物(T−39)(6.09g)を原料として用い、実施例1の第5工程と同様の手法により、化合物(T−40)(5.48g;90%)を得た。
【0223】
第7工程
化合物(T−40)(5.48g)を原料として用い、実施例1の第9工程と同様の手法により、化合物(S−1−1)(1.03g;19%)を得た。
【0224】
化学シフトδ(ppm;CDCl3):7.03(d,J=5.6Hz,1H)、6.89(d,J=6.2Hz,1H)、3.87(d,J=6.4Hz,2H)、3.84(s,2H)、2.67(t,J=7.3Hz,2H)、1.97−1.90(m,2H)、1.88−1.77(m,3H)、1.72−1.63(m,2H)、1.36−1.16(m,9H)、1.15−1.02(m,2H)、1.01−0.86(m,8H).
【0225】
化合物(No.S−1−1)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、光学的異方性、誘電率異方性、および粘度の測定には、化合物と母液晶との割合が3重量%:97重量%である試料を用いた。
転移温度:C 157 I.
上限温度(TNI)=97.9℃;光学的異方性(Δn)=0.147;誘電率異方性(Δε)=−13.1;粘度(η)=98.9mPa・s.
【0226】
実施例1〜6で得られた化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、(1−2−41)、(1−2−22)、および(1−2−52)と比較化合物(S−1−1)の相転移温度を比較すると、化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、(1−2−41)、(1−2−22)、および(1−2−52)の方が、融点が低い。また、化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、(1−2−22)、および(1−2−52)は、降温過程で液晶相が発現するのに対し、比較化合物(S−1−1)は高い結晶性の影響で液晶相が発現しなかった。
【0227】
さらに、化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、(1−2−41)、(1−2−22)、および(1−2−52)と比較化合物(S−1−1)の他の化合物との相溶性を比較すると、化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、および(1−2−22)は母液晶に10%加えることが出来るのに対し、比較化合物(S−1−1)は3%しか加えることが出来なかった。以上の結果より、化合物(1−2−5)、(1−2−6)、(1−2−15)、(1−2−41)、(1−2−22)、および(1−2−52)の方が、低い融点と高い相溶性を有し、より広い温度範囲で使用可能な優れた化合物であることが分かった。
【0228】
1−2.組成物(1)の実施例
実施例により本発明の液晶組成物(1)を詳細に説明する。実施例における化合物は、下記の表2の定義に基づいて記号により表した。表1において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0229】
【0230】
[実施例7]
5−HFLF4−3 (1−2−5) 3%
3−HB−O2 (13−5) 10%
5−HB−CL (2−2) 13%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 7%
3−PyB(F)−F (2−15) 10%
5−PyB(F)−F (2−15) 10%
3−PyBB−F (3−80) 10%
4−PyBB−F (3−80) 10%
5−PyBB−F (3−80) 10%
5−HBB(F)B−2 (15−5) 10%
5−HBB(F)B−3 (15−5) 7%
NI=94.9℃;Δn=0.188;Δε=7.6;η=41.1mPa・s.
【0231】
[実施例8]
5−HFLF4−4 (1−2−6) 3%
2−HB−C (5−1) 5%
3−HB−C (5−1) 12%
3−HB−O2 (13−5) 15%
2−BTB−1 (13−10) 3%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−1 (14−1) 8%
3−HHB−O1 (14−1) 5%
3−HHB−3 (14−1) 14%
3−HHEB−F (3−10) 4%
5−HHEB−F (3−10) 4%
2−HHB(F)−F (3−2) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
NI=100.6℃;Δn=0.102;Δε=4.1;η=20.6mPa・s.
【0232】
[実施例9]
5−HFLF4−2V (1−2−15) 3%
5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (13−1) 12%
3−HH−5 (13−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
4−HHB(F)−F (3−2) 9%
5−HHB(F)−F (3−2) 9%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (15−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=112.1℃;Δn=0.091;Δε=3.2;η=20.0mPa・s.
【0233】
[実施例10]
3−DhFLF4−5 (1−2−41) 3%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 10%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−4 (15−1) 4%
1O1−HBBH−5 (15−1) 4%
NI=93.8℃;Δn=0.115;Δε=8.3;η=36.7mPa・s.
上記組成物100重量部に化合物(Op−05)を0.25重量部添加したときのピッチは64.3μmであった。
【0234】
[実施例11]
5−chFLF4−3 (1−2−22) 3%
5−HB−F (2−2) 12%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 7%
3−HHB−OCF3 (3−1) 7%
4−HHB−OCF3 (3−1) 7%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 5%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−23) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 9%
5−HBBH−3 (15−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (15−2) 3%
NI=85.7℃;Δn=0.094;Δε=3.9;η=16.9mPa・s.
【0235】
[実施例12]
5−H2FLF4−3 (1−2−52) 3%
5−HB−CL (2−2) 11%
3−HH−4 (13−1) 8%
3−HHB−1 (14−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
NI=77.4℃;Δn=0.104;Δε=8.0;η=23.3mPa・s.
【0236】
[実施例13]
5−dhFLF4−3 (1−2−48) 3%
3−HB−CL (2−2) 6%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 15%
V−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 5%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 7%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 10%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
【0237】
[実施例14]
5−B(F)FLF4−3 (1−2−37) 3%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (13−1) 9%
3−HH−EMe (13−2) 20%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (3−103) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 5%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
【0238】
[実施例15]
4−FLF4−3 (1−1−1) 3%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 18%
2−BTB−1 (13−10) 10%
5−HH−VFF (13−1) 30%
3−HHB−1 (14−1) 4%
VFF−HHB−1 (14−1) 8%
VFF2−HHB−1 (14−1) 8%
3−H2BTB−2 (14−17) 5%
3−H2BTB−3 (14−17) 4%
3−H2BTB−4 (14−17) 4%
【0239】
[実施例16]
5−HFLF4H−3 (1−3−1) 3%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−41) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 7%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 3%
3−HH−V (13−1) 41%
3−HH−V1 (13−1) 7%
3−HHB−1 (14−1) 4%
V−HHB−1 (14−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (14−6) 5%
1V2−BB―F (2−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 11%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
【0240】
[実施例17]
5−HHFLF4−3 (1−4−1) 3%
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−57) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 7%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(4−47) 3%
3−HH−V (13−1) 41%
3−HH−V1 (13−1) 7%
3−HHB−1 (14−1) 4%
V−HHB−1 (14−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (14−6) 5%
1V2−BB―F (2−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 6%
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (3−113) 5%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。この組成物は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する。したがって、この素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用できる。