特許第6481710号(P6481710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6481710
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20190304BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190304BHJP
【FI】
   H01L33/54
   H01L33/56
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-94926(P2017-94926)
(22)【出願日】2017年5月11日
(62)【分割の表示】特願2016-120074(P2016-120074)の分割
【原出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2017-135427(P2017-135427A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-292204(P2010-292204)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅信
【審査官】 島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−086846(JP,A)
【文献】 特開2002−141557(JP,A)
【文献】 国際公開第03/092082(WO,A1)
【文献】 特開2009−185120(JP,A)
【文献】 特開2009−016779(JP,A)
【文献】 特開2010−093185(JP,A)
【文献】 特開2000−022221(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01962350(EP,A1)
【文献】 特開2007−273562(JP,A)
【文献】 特開2010−004035(JP,A)
【文献】 特開2009−302587(JP,A)
【文献】 特開2008−288409(JP,A)
【文献】 特表2008−541411(JP,A)
【文献】 特開2005−294484(JP,A)
【文献】 特開2007−157943(JP,A)
【文献】 特開2005−093896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体上に載置された発光素子と、前記発光素子を封止する、一つまたは複数の層からなる封止部材と、を備え、
前記封止部材の少なくとも一つの層は、該封止部材中に、充填剤の粒子であって粒径が該少なくとも一つの層の底面から上面までの厚みよりも小さい該粒子を含有し、かつ、該粒子は該封止部材の表面側に偏在しており、
前記充填剤の粒子は、中空の粒子であり、
前記封止部材の表面は、粒径が該少なくとも一つの層の底面から上面までの厚みよりも小さい前記充填剤の粒子に起因して形成された凹凸を有する発光装置。
【請求項2】
前記封止部材の表面は、周縁部から中央部にかけて窪む凹面であって、
前記充填剤の粒子は、封止部材の周縁部側に偏在している請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
基体と、前記基体上に載置された発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、該封止部材の表面側に偏在する充填剤の粒子を含有しており、
前記充填剤の粒子は、中空の粒子であり、
前記封止部材の表面は、前記充填剤の粒子に起因して形成された凹凸を有し、
前記封止部材の表面は、周縁部から中央部にかけて窪む凹面であって、
前記充填剤の粒子は、封止部材の周縁部側に偏在している発光装置。
【請求項4】
前記封止部材の母材は、前記充填剤の粒子を被覆している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記充填剤の粒子が前記封止部材の母材から露出されて、前記封止部材の母材の表面と前記充填剤の粒子の表面により、前記封止部材の表面の凹凸が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記充填剤の粒子は、前記封止部材の表層に略局在している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記封止部材の母材と前記充填剤の粒子との屈折率差は、0.1以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基体は、凹部を有し前記発光素子を支持するリード電極を該凹部内に含むパッケージであって、
前記封止部材は、前記凹部から該パッケージの上面の少なくとも一部に這い上がって形成されており、
前記パッケージの上面を被覆する封止部材の表面において、前記充填剤の粒子に起因する凹凸が形成されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記封止部材の母材は、カチオン系硬化剤で硬化させるエポキシ樹脂である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記封止部材の母材は、付加重合型のシリコーン樹脂である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記充填剤の粒子は、シリカである請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記充填剤の粒子は、第1充填剤の粒子であって、
前記封止部材は、該封止部材の底面側に偏在する第2充填剤の粒子を含有している請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第2充填剤の粒子は、蛍光体の粒子である請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光素子は、赤色系の光を発する発光素子と、緑色系の光を発する発光素子と、青色系の光を発する発光素子とを含む請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記基体は、凹部を有し前記発光素子を支持するリード電極を該凹部内に含むパッケージであって、
前記封止部材は、前記パッケージの凹部に充填されている請求項1乃至14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記パッケージの上面の少なくとも一部、及び前記凹部の内壁は、暗色である請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記中空の粒子の粒径は、1〜40μmである請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記封止部材は、該封止部材中における前記充填剤の粒子の浮上または沈降を利用した偏在が形成される請求項1乃至17のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、より詳細には発光素子を封止部材により封止した発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)素子を搭載した発光装置をマトリックス状に配置してなる、大型の街頭ディスプレイ等の表示装置が実用化されている。このような表示装置において、発光装置の周囲を封止する封止部材の表面の光沢により、その表面で太陽光や照明光等の外来光が全反射して、間接グレアが発生したり、表示コントラストが低下したりする問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、枠体状のケースと、ケースに収納されたLED基板と、LED基板に導通固定したLEDランプと、ケースに注入されLED基板及びLEDランプの樹脂ヘッドの基端部を含んで封止する防水性合成樹脂の封止樹脂と、を備え、封止樹脂の生地表面に、ガラスビーズを露出させることによって、入射する外光を散乱光として反射する微小な凹凸面を形成してなるLED表示器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−114605号公報
【特許文献2】特開2007−234767号公報
【特許文献3】特開2003−086846号公報
【特許文献4】特開2001−077433号公報
【特許文献5】特開平10−284759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近では、このような表示装置において、表示画像の高精細化に伴い、発光装置の配列間隔が狭くなってきており、発光装置自体の表面の光沢が間接グレアや表示コントラストの低下を招く大きな要因になっている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、発光素子を封止する封止部材の表面の光沢が抑えられた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基体と、前記基体上に載置された発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、前記封止部材は、該封止部材の表面側に偏在する充填剤の粒子を含有しており、前記封止部材の表面は、前記充填剤の粒子に起因して形成された凹凸を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充填剤の粒子を効率良く利用して、発光素子を封止する封止部材の表面の光沢を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略上面図(a)と、そのA−A断面における概略断面図(b)である。
図2】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに限定しない。特に、以下に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0011】
<実施の形態1>
図1(a)は、実施の形態1に係る発光装置100の概略上面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。図1に示す例の発光装置100は、基体10と、この基体10上に載置された発光素子20と、この発光素子20を封止する封止部材30と、を備えている。より詳細には、基体10は、上面が開口し内側壁と底面を有する凹部12が形成されたパッケージ11であり、その凹部12の底面には正負一対のリード電極13が3組設けられている。発光素子20(20a,20b,20c)は各々、このリード電極13に、接着剤により接着され且つワイヤ14により接続されている。
【0012】
封止部材30は、充填剤の粒子(第1充填剤の粒子)40を含有しパッケージの凹部12に充填され、その表面35が本発光装置100の発光面を構成している。この封止部材の表面35は、主として発光素子20の実装面に対向する面であり、通常、封止部材の上面であるが、上面に連続して側面の一部を含んでもよい。そして、この封止部材の表面35は、充填剤の粒子40に起因して形成された凹凸を有している。つまり、封止部材の表面35は、この凹凸により、外来光を散乱させる光散乱面を有しており、光沢が抑えられている。これにより、封止部材の表面35における間接グレアの発生が抑制され、表示コントラストの高い発光装置とすることができる。また、封止部材30が含有する充填剤の粒子40は、封止部材の表面35側に偏在しているため、封止部材の表面35に該粒子40に起因する凹凸を効率良く形成することができる。この凹凸の形成領域は、封止部材の表面35の一部であってもよいが、封止部材の表面35の略全域であることが最も好ましい。なお、本明細書において、「充填剤の粒子40が封止部材30のX側に偏在する」とは、封止部材30内をX側とその反対のY側の2つの領域に分けたとき、領域Xの体積に対する領域Xに存在する充填剤の粒子40の体積(総和)の割合が、領域Yの体積に対する領域Yに存在する充填剤の粒子40の体積(総和)の割合より大きい状態、と定義することができる。
【0013】
このように、封止部材に添加される充填剤の粒子を利用して、封止部材の表面に凹凸を形成し、その光沢を抑えることができる。これは、封止部材の表面にブラスト加工や艶消し剤を塗布するのに比べ、非常に簡便である。また、ブラスト加工等により封止部材を構成する樹脂等の母材の表面を直接的に粗面化する場合、封止部材の表面が白濁しやすく、表示コントラストを低下させる虞がある。これに対して、充填剤の粒子に起因して形成される本発明の凹凸構造は、封止部材の母材の表面自体は比較的滑らかであるため、そのような表面の白濁を抑制することができ、また発光素子からの光を効率良く外部に取り出すことができる。また、この凹凸構造は、封止部材の表面の凹凸によって外来光を散乱させるとともに、封止部材内に入射した外来光を表層に存在する充填剤の粒子によって散乱させることができる。
【0014】
封止部材の表層に充填剤の粒子を配置するために、充填剤の粒子が封止部材中に分散し封止部材の表層まで堆積するように充填剤の粒子を大量に添加してもよいが、これでは封止部材の粘度が増して成形性が低下したり、封止部材の光透過率が低下して光度が低下したりする虞がある。そこで、本発明では、封止部材中における充填剤の粒子の浮上や沈降を積極的に利用することにより、比較的少ない添加量でも封止部材の表層に充填剤の粒子を配置することができる。なお以下、充填剤の粒子の添加量の単位である「部」とは、封止部材の母材の重量100gに対する充填剤の粒子の重量(g)に相当するものである。
【0015】
一般に、封止部材30の母材に対して、比重(以下、充填剤の粒子40が多孔質の場合は「嵩密度」とする)の小さい充填剤の粒子40は浮上しやすく、逆に比重の大きい充填剤の粒子40は沈降しやすい。したがって、例えば、充填剤の粒子40の比重が封止部材30の母材に対して小さい場合、基体10上面すなわち凹部12の開口が仰向けられた状態で封止部材30を硬化させれば、充填剤の粒子40を封止部材の表面35側に、浮上させ、偏在させることができる。且つ、封止部材の表面35が露出された状態で、すなわち封止部材の表面35が金型等に接することなく、封止部材30を硬化させることで、封止部材の表面35に充填剤の粒子40に起因する凹凸を形成することができる。なお、このように、基体10上面が仰向けられた状態で封止部材30を硬化させる場合、逆に俯けられた状態で硬化させるのに比べ、封止部材30中にボイドが発生するのを抑制することができる。また、封止部材30は、1回のポッティングで簡便に形成できる単層で構成されていることが好ましいが、複数の層で構成されていてもよい。
【0016】
また特に、充填剤の粒子40を封止部材の表面35側に浮上させて表面35に凹凸を形成する場合、充填剤の粒子40は、浮きやすい多孔質又は中空の粒子であることが好ましい。充填剤の粒子40が多孔質又は中空の粒子の場合、粒径は、比較的大きいものでもよく、1〜40μm程度が好ましい。なかでも、封止部材の表面に凹凸を好適に形成するために、粒径は1μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましく、5μm以上10μm以下が最も好ましい。比重は、小さいほうが浮きやすいが、小さ過ぎると充填剤の粒子40がディスペンサ内で偏在するなど作業性が悪くなるため、0.4〜1.0程度が好ましい。なかでも、封止部材の表面に凹凸を好適に形成するために、比重は0.4以上0.8以下が好ましく、0.5以上0.6以下がより好ましい。またこのため、作業性の観点では、多孔質の粒子のほうがより好ましい。例えば、エポキシ樹脂に、このような比重・粒径の多孔質又は中空の粒子40を1部以上添加することで、封止部材の表面35に凹凸を形成し光沢を抑えることができる。充填剤の粒子40の形状は、球状でもよいが、破砕状など不定形のほうが低密度で堆積するので、充填剤の粒子40を少ない添加量で封止部材30の表層に配置しやすい。また、充填剤の粒子40は、複数種の粒子が混合されたものでもよい。
【0017】
充填剤の粒子40が無孔質である場合、粒径・比重が大きいものは沈降しやすく、粒径が小さいもの(例えば粒径がnmオーダーのもの)は少量の添加でも封止部材30を増粘させやすい。このため、粒径は1〜3μm程度が好ましく、比重は1.3〜2.7程度が好ましい。なかでも、粒径は1μm以上1.5μm以下がより好ましく、比重は2.2以上2.6以下がより好ましい。例えば、エポキシ樹脂に、このような比重・粒径の無孔質の粒子40を15部以上添加することで、封止部材の表層まで粒子を堆積させて封止部材の表面35に凹凸を形成することができる。また、実施の形態2にて後述するように、基体10上面が俯けられた状態で封止部材30を硬化させる場合には、このような無孔質の粒子が好適に利用できる。この場合、充填剤の粒子40の比重は大きいほど良い。
【0018】
上述のように、第1充填剤の粒子40は、封止部材の表面35に凹凸を形成し光沢を抑える目的で添加されるものである。少ない添加量の充填剤の粒子40で封止部材の表面35に凹凸を形成できれば、充填剤の粒子40の利用効率が高められるとともに、封止部材30の増粘が抑えられ、成型性が良く、また封止部材30の基体10との密着性を高めることができる。このため、充填剤の粒子40は、封止部材30の表層に略局在していることが好ましい。なお、この「表層に略局在している」とは、「表面側に偏在している」場合の極端な事例であって、充填剤の粒子40が該粒子1〜3個の堆積に相当する厚さの表層内に偏在している状態を指すものとする。
【0019】
封止部材の表面35は、封止部材30の硬化収縮により、中央部(又は中心部)が窪み、周縁部が這い上がって、凹面となる傾向がある。このように、封止部材の表面35が周縁部から中央部にかけて窪む凹面である場合、間接グレアは、特にその周縁部の表面において発生しやすい。したがって、このような場合、充填剤の粒子40は、封止部材30の周縁部側に偏在していることが好ましい。封止部材30の硬化により、その表面35がこのような凹面になる際、充填剤の粒子40は、封止部材の表面35側への浮上又は沈降によって、封止部材30内の空間がより広い周縁部側に集まりやすい。これにより、封止部材の表面35の周縁部において、充填剤の粒子40に起因する凹凸が形成されやすく、間接グレアの原因となる外来光を効果的に散乱させることができる。なお、この封止部材の表面35の窪み量は、通常10μm以下程度であり、最大でも150μm程度である。
【0020】
封止部材30の母材は、充填剤の粒子40を被覆していることが好ましい。すなわち、封止部材30の母材の表面が充填剤の粒子40の形状に略沿って起伏することで、封止部材の表面35の凹凸が形成されることが好ましい。これにより、充填剤の粒子40が封止部材30から離脱するのを抑制することができ、装置の信頼性を高められる。また、封止部材30の母材の表面の凹凸と、表層の充填剤の粒子40と、により外来光を効果的に散乱させることができる。なお、これに限らず、充填剤の粒子40が封止部材30の母材から露出されて、封止部材30の母材の表面と充填剤の粒子40の表面により、封止部材の表面35の凹凸が形成されてもよい。また、この両形態が混在していてもよい。
【0021】
封止部材30の母材と充填剤の粒子40との屈折率差が小さいと、封止部材30中の充填剤の粒子40の遮光性を低減し、発光素子20からの光を効率良く外部に取り出せるので、光度を高めることができる。このため、封止部材30の母材と充填剤の粒子40との屈折率差は、0.1以下であることが好ましい。例えば、封止部材30の母材にエポキシ樹脂を使用する場合、充填剤の粒子40にシリカ(ガラス)を使用することが好ましい。
【0022】
封止部材30には、複数種の充填剤の粒子を添加でき、封止部材の表面35の光沢を抑えるための第1充填剤の粒子40のほかに、別の目的で第2充填剤の粒子45が添加されてもよい。発光装置100において、第2充填剤の粒子45は、凹部12の底面側すなわち封止部材30の底面側に偏在しており、主として光拡散剤として機能し、配光を制御するために添加されるものである。また、ワイヤ14周辺の封止部材30の熱伸縮を抑え、ワイヤ14にかかる応力を軽減する効果もある。なお、第2充填剤の粒子45として、カーボンブラック等の暗色の粒子を用いることで、表示コントラストを高めることができる。このように、浮上しやすい第1充填剤の粒子40と、沈降しやすい第2充填剤の粒子45と、を封止部材30に添加する場合でも、第1充填剤の粒子40の一部は第2充填剤の粒子45により浮上を抑止され第2充填剤の粒子45とともに存在するが、第2充填剤の粒子45の隙間を抜けて封止部材30の表層に浮上した第1充填剤の粒子40によって、表面35に凹凸を形成することが可能である。特に、このような場合、封止部材30内に、第1充填剤の粒子40が偏在する第1領域と、第2充填剤の粒子45が偏在する第2領域と、の間に、略封止部材30の母材のみで構成される第3領域が設けられていることが好ましい。これにより、第3領域を光透過領域として機能させ、光度を高めることができる。封止部材30内に、この第1〜3領域が各々、面内略全域に及ぶ層状の領域として設けられていると、なお良い。
【0023】
封止部材30は、凹部12からパッケージ11の上面の少なくとも一部に這い上がって形成されてもよく、このようにパッケージ11の上面を被覆する封止部材30の表面において、充填剤の粒子40に起因する凹凸が形成されてもよい。これにより、パッケージ11の上面における間接グレアの発生を抑制することができる。なお、パッケージ11の上面は、凹部12に連続する段差を有するものでもよく、封止部材30はその段差上を覆って形成されてもよい。
【0024】
<実施の形態2>
図2は、実施の形態2に係る発光装置200の概略断面図である。発光装置200において、実施の形態1と実質上同様の構成については適宜説明を省略する。図2に示す例の発光装置200において、基体10は上面に導体配線を有する配線基板15であって、この導体配線に発光素子20が導電性接着剤によりフリップチップ実装されている。封止部材31は、充填剤の粒子41を含有し、発光素子20を封止して配線基板15上に成型されている。この封止部材31は、略直方体で、その表面(上面)35と側面から発光可能となっている。そして、充填剤の粒子41は封止部材の表面35側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子41に起因して形成された凹凸を有し、光沢が抑えられている。
【0025】
このような封止部材31は、配線基板15上に、発光素子20を取り囲む枠体16を設けて、その枠体16の内側に、充填剤の粒子41を含有する封止部材31を滴下して硬化させることで形成される。このとき、充填剤の粒子41の比重が封止部材31の母材に対して大きい場合、基体10上面が俯けられ且つ封止部材の表面35が露出された状態で、封止部材31を硬化させる。これにより、充填剤の粒子41を封止部材の表面35側に沈降させて、表面35に充填剤の粒子41に起因する凹凸を形成することができる。また、充填剤の粒子41を光拡散剤として機能させることもできる。なお、このように封止部材の表面35側に沈降させる第1充填剤の粒子41や上述の第2充填剤の粒子45は、比較的比重の大きい、YAG等の蛍光体の粒子であってもよい。枠体16は、封止部材31が形成された後、本例のように取り外されてもよいし、残存させて上述のパッケージのように機能させてもよい。また、内側壁に凹凸が形成された枠体16を用いて封止部材31の側面を成型すれば、封止部材31の側面を光散乱面とすることができる。
【0026】
以下、本発明の発光装置の各構成要素について詳述する。
【0027】
(基体)
基体は、発光素子を支持する支持体であって、パッケージや配線基板等を含む。パッケージは、発光素子を支持するリード電極を凹部内に含み、発光素子を外部環境から保護する機能を有する。パッケージは、機械的強度が高く、発光素子からの光や外来光が透過しにくいものが好ましい。具体的には、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、フェノール樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セラミックス(Al、AlN等)などが挙げられる。パッケージは、光の取り出し効率に優れる白色のものでもよいが、パッケージの上面の少なくとも一部は、外来光に対する反射率を低下させるため、黒色など暗色であることが好ましく、外来光を散乱させる凹凸が形成されていてもよい。また、凹部内壁も暗色として表示コントラストを高めてもよいし、凹部内壁は白色として光の取り出し効率を高めてもよい。配線基板は、ガラスエポキシ、セラミックス、アルミニウム等の各種基板に、発光素子及び外部端子と接続する導体配線が形成されたものを利用できる。
【0028】
(発光素子)
発光素子は、半導体発光素子、例えば可視光を発する、LED素子や半導体レーザ(LD;LASER Diode)素子を用いることができる。発光素子は、例えば、基板上に、窒化物、III−V族化合物、II−VI族化合物など種々の半導体によって、p型半導体層、活性層、n型半導体層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。また、蛍光体を含有する波長変換部材が組み合わされたものでもよい。フルカラー表示装置用の発光装置の場合、1つの発光装置に、赤色系、緑色系、青色系の光を各々発する3個以上の発光素子が搭載されていることが好ましい。但し、1つの発光装置における発光素子の搭載個数は、この限りではなく、1個であってもよい。また、発光素子の組み合わせについても、この限りではなく、白色系発光の発光素子を用いてもよい。
【0029】
(封止部材)
封止部材は、発光素子やワイヤなどを保護するために設けられる。封止部材の母材は、透光性を有するものであれば特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリル樹脂(PMMA等)、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリノルボルネン樹脂、フッ素樹脂の1種又は2種以上の樹脂や、液晶ポリマー、ガラス等から選択することができる。なかでも、耐光性や耐熱性に優れる、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、酸無水物系硬化剤、カチオン系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤などを用いて硬化させることができる。特に、透光性に優れる酸無水物系硬化剤で硬化させるもの、又は低揮発性で生産性に優れるカチオン系硬化剤で硬化させるものが好ましい。酸無水物系硬化剤を用いるものは、カチオン系硬化剤を用いるものに比べて粘度が低く、充填剤の粒子の浮上又は沈降が強調されやすいので、好ましい。シリコーン樹脂は、付加重合型又は縮合重合型のジメチルシリコーンやフェニルシリコーンなどを用いることができる。特に、硬化時の脱アルコール反応等による体積や表面形状の変化が少ない付加重合型が好ましい。なお、封止部材には、表示コントラストを高めるために顔料や染料が添加されてもよいし、耐光性を高めるために酸化防止剤や紫外線吸収剤が添加されてもよい。
【0030】
(充填剤の粒子)
充填剤の粒子は、例えば、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウムなどが利用できる。なかでも、封止部材の表面の凹凸形成に好適な比重、粒径、封止部材の母材との屈折率差などの観点において、シリカが最も好ましく、次いでケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムが好ましい。これらのほか、シリコーン樹脂など熱硬化性樹脂の粒子を用いて封止部材の表面に凹凸を形成することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0032】
<実施例1>
実施例1の発光装置は、実施の形態1に係る発光装置100の一例であって、外形が縦3.0mm×横3.0mm×高さ1.8mmの略直方体の表面実装型LEDである。基体10は、その上面の略中央に凹部12を有するパッケージ11である。パッケージ11は、外側がカーボンブラックを含有するPPA樹脂、凹部12内が酸化チタンを含有するPPA樹脂により形成されている。凹部12は、平面視において角部が丸められた正方形状(縦2.6mm×横2.6mm×深さ0.8mm)で、且つ内側壁が底面から上面側に向かって広がるように傾斜している。パッケージの凹部12の底面には、銀でメッキされた鉄入り銅板の正負一対のリード電極13が3組設けられており、パッケージ11の側面及び下面(裏面)に沿うように屈曲しながら各々延出している。3個の略矩形状の発光素子20a,20b,20cは、発光色(発光波長)がそれぞれ赤(630nm)、緑(550nm)、青(460nm)のLED素子であって、リード電極13に各々、接着剤(20aは銀ペースト、20b,20cはエポキシ樹脂)で接着され且つワイヤ14により電気的に接続されている。
【0033】
パッケージの凹部12に充填された封止部材30は、芳香族スルホニウム塩が添加された脂環式のエポキシ樹脂(比重1.14)であり、第1充填剤の粒子40として平均粒径4.5μm、嵩密度0.51、球状の多孔質のシリカを1部と、第2充填剤の粒子45として平均粒径7μm、比重2.65、破砕状の無孔質のシリカを20部と、を含有している。なお、使用するエポキシ樹脂の屈折率(波長589nm)は1.52であり、シリカの屈折率は1.55である。この封止部材30において、第1充填剤の粒子40は封止部材30の表層に略局在しており、第2充填剤の粒子45は封止部材30の底面側に偏在している。そして、封止部材の表面35は、第1充填剤の粒子40を被覆する樹脂の表面が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。このような封止部材30は、液状のエポキシ樹脂中に第1充填剤の粒子40及び第2充填剤の粒子45をほぼ均一に分散するように混ぜてパッケージの凹部12内に滴下(ポッティング)し、これを140℃にて4時間、基体10上面が仰向けられ且つ樹脂の表面が露出された状態で硬化させることにより形成できる。なお、このとき、封止部材の表面35は、周縁部から中心部にかけて5μm程度窪んだ凹面となっている。
【0034】
<実施例2>
実施例2の発光装置は、充填剤の粒子を除く他の構成は実施例1の発光装置と同様である。実施例2の発光装置の封止部材30は、実施例1と同様のエポキシ樹脂に、充填剤の粒子40として平均粒径4.0μm、嵩密度0.5、球状の多孔質のシリカを10部含有している。そして、充填剤の粒子40は封止部材30の表面側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子40を被覆する樹脂が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。
【0035】
<実施例3>
実施例3の発光装置は、充填剤の粒子を除く他の構成は実施例1の発光装置と同様である。実施例3の発光装置の封止部材30は、実施例1と同様のエポキシ樹脂に、充填剤の粒子40として平均粒径40μm、比重0.35、球状の中空のシリカを10部含有している。そして、充填剤の粒子40は封止部材30の表面側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子40を被覆する樹脂が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。
【0036】
<実施例4>
実施例4の発光装置は、充填剤の粒子を除く他の構成は実施例1の発光装置と同様である。実施例4の発光装置の封止部材30は、実施例1と同様のエポキシ樹脂に、充填剤の粒子40として平均粒径7μm、比重2.65、破砕状の無孔質のシリカを20部含有している。そして、充填剤の粒子40は封止部材30の表面側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子40を被覆する樹脂の表面が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。この封止部材30は、液状のエポキシ樹脂中に充填剤の粒子40をほぼ均一に分散するように混ぜてパッケージの凹部12内に滴下し、これを140℃にて4時間、基体10上面が俯けられ且つ樹脂の表面が露出された状態で硬化させることで形成される。
【0037】
<実施例5>
実施例5の発光装置は、封止部材の母材を除く他の構成は実施例2の発光装置と同様である。実施例2の発光装置の封止部材30は、主剤(脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はその混合物)と、酸無水物のヘキサヒドロ無水フタル酸に硬化促進剤として4級ホスホニウム塩を添加した硬化剤と、により作製されるエポキシ樹脂(比重1.1〜1.2)に、充填剤の粒子40として平均粒径4.0μm、嵩密度0.5、球状の多孔質のシリカを10部含有している。そして、充填剤の粒子40は封止部材30の表面側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子40を被覆する樹脂が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。
【0038】
<実施例6>
実施例6の発光装置は、封止部材の母材と、充填剤の粒子と、を除く他の構成は実施例1の発光装置と同様である。実施例6の発光装置の封止部材30は、付加重合型のジメチルシリコーン樹脂(比重1.02)に、充填剤の粒子40として平均粒径18μm、比重0.32、球状の中空シリカを10部含有している。そして、充填剤の粒子40は封止部材30の表面側に偏在しており、封止部材の表面35は、充填剤の粒子40を被覆する樹脂が該粒子の形状に略沿って起伏して形成された凹凸を有し、光沢が略無い。
【0039】
<比較例1>
比較例1の発光装置は、充填剤の粒子を除く他の構成は実施例1の発光装置と同様である。比較例1の発光装置の封止部材は、充填剤の粒子として実施例4と同様のものを含有しているが、基体上面が仰向けられた状態で硬化され、充填剤の粒子が封止部材の底面側に偏在している。このため、封止部材の表面は、略平坦で光沢がある。
【0040】
<光度比較>
以下、実施例1,2と比較例1の発光装置を、電流値20mAで各々点灯させ、その光度を比較検証する。比較例1の発光装置の各発光色における光度を1.00とすると、実施例1の発光装置の光度は、赤1.00、緑1.03、青1.01であり、実施例2の発光装置の光度は、赤1.03、緑1.08、青1.02である。このように、実施例1,2の発光装置は、高い光度を維持しながら、封止部材の表面の光沢を抑えることができる。また、実施例1,2の発光装置の光度は比較例1の発光装置のそれより高くなっており、充填剤の粒子により封止部材の表面に凹凸が形成されることで、光の取り出し効率を高めることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の発光装置は、広告、行き先案内や道路情報等の表示装置、信号機、小型乃至大型ディスプレイなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…基体(11…パッケージ(12…凹部、13…リード電極)、15…配線基板) 14…ワイヤ、16…枠体
20(20a,20b,20c)…発光素子
30,31…封止部材、35…封止部材の表面
40,41…充填剤の粒子(第1充填剤の粒子)、45…第2充填剤の粒子
100,200…発光装置
図1
図2