(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウレタン樹脂(A)と、1種以上のラジカル重合性単量体混合物Xを重合して、重合体Pを含む分散液を得る工程(1)と、前記重合体Pを含む分散液に、1種以上のラジカル重合性単量体混合物Yを加えて重合を行って、重合体Zを含む分散液を得る工程(2)とを含み、
前記ラジカル重合性単量体混合物Xを重合して得られる重合体の、FOXの式から求められるガラス転移温度をTg(X)[単位:℃]、Fedors法による溶解性パラメーター(SP値)をSP(X)[単位:(J/cm3)1/2]とするとき、該Tg(X)およびSP(X)が下記式(1)を満たし、
前記ラジカル重合性単量体混合物Yが、カルボキシ基含有ラジカル重合性単量体を含む、重合体分散液の製造方法。
SP(X)≧−0.0125Tg(X)+19.875・・・(1)
ただし、−60≦Tg(X)≦170である。
前記ラジカル重合性単量体混合物Xが、ラジカル性重合性基を2つ以上有する単量体(x1)と、前記単量体(x1)以外のラジカル重合性単量体(x2)とを含む混合物である請求項1に記載の重合体分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、重合体分散液の製造方法、重合体分散液を用いた被覆材および塗装物について、順次詳細に説明する。
【0009】
<重合体分散液の製造方法>
ウレタン樹脂(A)と、1種以上のラジカル重合性単量体混合物X(以下、単に混合物Xということもある。)を重合して、重合体Pを含む分散液を得る工程(1)と、前記重合体Pを含む分散液に、1種以上のラジカル重合性単量体混合物Yを加えて重合を行い、重合体Zを含む分散液を得る工程(2)とを含む製造方法である。
本発明の製造方法により得られる重合体Zは重合体Pを含み、重合体Pはウレタン樹脂(A)を含む。
本明細書において「ラジカル重合性単量体混合物」とは、前述のラジカル重合性単量体を1種以上含むことを意味する。すなわち、ラジカル重合性単量体混合物の中には、ラジカル重合性単量体を1種類しか含まないものも包含される。
【0010】
[ウレタン樹脂(A)]
本発明において、ウレタン樹脂(A)とは、ジオールと多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる樹脂のことを指す。
ジオールとは、1分子中に2つのヒドロキシ基を有する有機化合物である。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のジオール類;これらのジオール類の少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種とを重縮合して得られるポリエステルジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエーテルジオール類;ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等が挙げられる。ウレタン樹脂(A)の製造時において、これらジオールを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0011】
多価イソシアネート化合物とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物をいい、脂肪族、脂環式、芳香族等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。ウレタン樹脂(A)の製造時において、これら多価イソシアネート化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、脂肪族または脂環式のイソシアネートは、得られるウレタン樹脂(A)の黄変が少ないため好ましい。
【0012】
ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、ジオキサン等のエーテル類中で、上述のジオールと、イソシアネートとを、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒を用いて反応させる方法が挙げられる。
このような方法によって得られたウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、ラジカル重合性単量体の反応性が向上する点から、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。上限としては、50万以下であることが好ましく、40万以下であることがより好ましい。すなわち、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、500〜50万であることが好ましく、1000〜40万であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算によって算出した値のことを意味する。
【0013】
また本発明においては、ウレタン樹脂(A)を水に分散させた水分散液の状態で用いることが好ましい。この場合、ウレタン樹脂(A)にカルボキシ基、および/またはスルホン酸基を導入しておくと、水への分散性が良好となる点で好ましい。
ウレタン樹脂(A)の水分散液中で、ラジカル重合性単量体混合物を安定に重合できる点から、スルホン酸基を導入しておくことがより好ましい。その結果、スルホン酸基を有するウレタン樹脂(A)と、ラジカル重合性単量体混合物から得られた重合体とを同一粒子内に含む重合体粒子の分散液(重合体分散液)を安定に得ることができる。特に、ラジカル重合性単量体混合物がカルボキシ基等の酸基を有する酸基含有ラジカル重合性単量体を含む場合において、乳化重合時の重合安定性が良好となる。また、重合体分散液の貯蔵安定性、被覆材とした際の貯蔵安定性が良好となり、耐水性および耐加水分解性に優れる塗膜を形成できる。
【0014】
スルホン酸基を有するウレタン樹脂(A)は、ジオール等のポリオール、多価イソシアネート化合物と、スルホン酸基またはその塩を有する化合物とを反応させる方法;スルホン酸基を有するポリオールと、多価イソシアネート化合物とを反応させる方法;などで製造できる。
スルホン酸基またはその塩を有する化合物とは、例えば、1,7−ジヒドロキシナフタリンスルホン酸等のヒドロキシスルホン酸;2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等のアミノスルホン酸などが挙げられる。スルホン酸基を有するウレタン樹脂(A)の製造時において、これらスルホン酸基またはその塩を有する化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
スルホン酸基を有するポリオールとしては、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類;スルホン酸塩含有ポリエステルポリオール、スルホン酸塩含有ポリエーテルポリオール、スルホン酸塩含有ポリカーボネートポリオール等のスルホン酸塩含有ポリオール等が挙げられる。スルホン酸基を有するウレタン樹脂(A)の製造時において、これらスルホン酸基を有するポリオールを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ウレタン樹脂(A)は、上述のとおり水分散液の形態であると、ラジカル重合性単量体混合物Xを安定に重合できる点で好ましい。水分散液中におけるウレタン樹脂(A)の平均粒子径は、キュムラント解析結果による平均粒子径として、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが好ましい。このような平均粒子径であれば、例えば水分散液および被覆材の貯蔵安定性、塗膜の耐水性および耐溶剤性がより向上する。平均粒子径は、被覆材に用いた際の塗料粘度特性および貯蔵安定性の点から、10nm以上が好ましい。
水分散液中におけるウレタン樹脂(A)の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。このような含有量であれは、該水分散液中でラジカル重合性単量体混合物Xを重合して得られる重合体分散液の固形分濃度を10〜80質量%の範囲に調整できる。重合体分散液の固形分濃度が上記範囲内であれば、これを被覆材として使用した場合の塗装性が良好となる。なお、重合体分散液の固形分濃度とは、重合体Zの量である。
【0016】
このようなウレタン樹脂(A)の水分散液としては、市販のウレタン水性重合体分散液(ウレタンディスパージョン:PUD)をそのまま用いることもできる。具体的には、第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス110、スーパーフレックス150、スーパーフレックス210、スーパーフレックス300、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470、スーパーフレックス500M、スーパーフレックス620、スーパーフレックス650、スーパーフレックス740、スーパーフレックス820、スーパーフレックス840、F−8082D、F−2951D、住化バイエルウレタン(株)製:バイヒドロールUH2606、バイヒドロールUH650、バイヒドロールUHXP2648、バイヒドロールUHXP2650、インプラニールDLC−F、インプラニールDLN、インプラニールDLP−R、インプラニールDLS、インプラニールDLU、インプラニールXP2611、インプラニールLPRSC1380、インプラニールLPRSC1537、インプラニールLPRSC1554、インプラニールLPRSC3040、インプラニールLPDSB1069、大日本インキ化学工業(株)製:ハイドランHW−301、HW−310、HW−311、HW−312B、HW−333、HW−340、HW−350、HW−375、HW−920、HW−930、HW−940、HW−950、HW−970、AP−10、AP−20、ECOS3000、三洋化成工業(株)製:ユーコートUWS−145、パーマリンUA−150、パーマリンUA−200、パーマリンUA−300、パーマリンUA−310、ユーコートUX−320、パーマリンUA−368、パーマリンUA−385、ユーコートUX−2510、日華化学(株)製:ネオステッカー100C、エバファノールHA−107C、エバファノールHA−50C、エバファノールHA−170、エバファノールHA−560、(株)ADEKA製:アデカボンタイターUHX−210、アデカボンタイターUHX−280等が挙げられる。
【0017】
[ラジカル重合性単量体混合物Xおよびラジカル重合性単量体混合物Y]
ラジカル重合性単量体とは、ラジカル性重合性基を有する単量体であり、ラジカル性重合性基とは、ラジカル重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合、ラジカル重合可能な炭素−炭素不飽和三重結合、ラジカル開環重合可能な環などを含む基である。
ラジカル重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体等のラジカル性重合性基を2つ以上有する単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等の酸基含有ラジカル重合性単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ラジカル重合性単量体、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体;メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体;ダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等の光安定化作用を有する(メタ)アクリレート;2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレート;2−アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ラジカル重合性単量体;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体等が挙げられる。これらは1種単独で使用して、2種以上を併用してもよい。
【0018】
[ラジカル重合性単量体混合物X]
本発明のラジカル重合性単量体混合物Xは、重合体分散液の低温での貯蔵安定性が向上する観点から、ラジカル重合性単量体混合物Xを重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)をTg(X)(℃)、Fedors法による溶解性パラメーター(SP値)をSP(X)(J/cm
3)
1/2とした場合、下記式(1)の条件を有することが必要である。
SP(X)≧−0.0125Tg(X)+19.875・・・式(1)
ただし−60≦Tg(X)(℃)≦170
ここでTg(X)とは下記式(2)のFoxの式により求められる値を意味する。
1/(273+Tg(X))=Σ(Wi/(273+Tgi)) (2)
式中、Wiはラジカル重合性単量体iの質量分率、Tgiはラジカル重合性単量体iの単独重合体のTg(℃)を示す。
ここでFedors法によるSP(X)とは下記式(3)により求められる値を意味する。
SP(X)=1/Σ(Wi/SPi) (3)
式中、SPiは、ラジカル重合性単量体iのSP値((J/cm
3)
1/2)、Wiはラジカル重合性単量体iの質量分率を示す。
式(2)、(3)において、ラジカル重合性単量体混合物Xがn種の単量体からなる場合iは1〜nである。
例えば、ラジカル重合性単量体混合物XのTgが−50℃であれば、ラジカル重合性単量体混合物XのSP値を20.500(J/cm
3)
1/2以上とすることが必要であり、同Tgが0℃であればSP値を19.875(J/cm
3)
1/2以上、Tgが50℃であれば19.250(J/cm
3)
1/2以上、Tgが100℃であれば18.625(J/cm
3)
1/2以上、Tgが150℃であれば18.000(J/cm
3)
1/2以上であることが必要である。
【0019】
前記式(1)は、以下の方法で求められた。
(i)ラジカル重合性単量体混合物Xを構成する単量体の種類および/または含有量(質量分率)を変更して複数種のラジカル重合性単量体混合物Xを用意する。
(ii)前記(i)で得た複数種のラジカル重合性単量体混合物Xのそれぞれについて、該ラジカル重合性単量体混合物Xを重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)である「Tg(X)(℃)」、およびFedors法による溶解性パラメーター(SP値)である「SP(X)(J/cm
3)
1/2」をそれぞれ上記式(2)、(3)により求める。
(iii)横軸を「Tg(X)(℃)」、縦軸を「SP(X)(J/cm
3)
1/2」とする座標に、前記(i)で得た複数種のラジカル重合性単量体混合物Xのそれぞれをプロットしたグラフを作成する。
(iv)前記(i)で得た複数種のラジカル重合性単量体混合物Xをそれぞれ用いて、本発明の重合体分散液を製造する。
(v)前記(iv)で得た、複数の重合体分散液について、後述の[低温貯蔵安定性の評価方法]によりそれぞれ低温貯蔵安定性を評価し、粘度変化率が150%未満であるものを安定性良好、150%以上であるものを安定性不良と判定する。
(vi)前記(iii)で作成したグラフにおいて、安定性良好と判定された重合体分散液の製造に用いられたラジカル重合性単量体混合物Xの(Tg(X)、SP(X))が下式(4)を満たし、かつ安定性不良と判定された重合体分散液の製造に用いられたラジカル重合性単量体混合物Xの(Tg(X)、SP(X))が下式(5)を満たすように、式(4)、(5)中のaおよびbの値を決定することにより、前記式(1)が得られる。
SP(X)≧a・Tg(X)+b (4)
SP(X)<a・Tg(X)+b (5)
【0020】
こうしてa、bを決定して得られた前記式(1)を用いて、該式(1)満たすように、ラジカル重合性単量体混合物Xの組成(単量体の種類および含有量)を設計し、該設計された組成のラジカル重合性単量体混合物Xを用いて本発明の重合体分散液を製造することにより、低温貯蔵安定性に優れた重合体分散液が得られる。
かかる効果が得られる理由は明確ではないが、本発明者等は、重合体分散液中に存在しているラジカル重合性単量体混合物Xの重合体における分子の柔軟性(低温下での分子の動きやすさ)が、該重合体分散液の低温保存時における粘度増加に影響すると考えた。そして重合体の分子の柔軟性を評価する指標として、重合体のガラス転移温度(Tg)と、重合体の分子間の凝集力(極性)の大きさに関連するSP値とに着目し、上記の(i)〜(v)の工程を行ったところ、後述の実施例、比較例に示されるように、ラジカル重合性単量体混合物Xの(Tg(X)、SP(X))と低温貯蔵安定性の評価結果との間に相関関係が認められた。
したがって、かかる相関関係に基づいて求めた式(1)を用いれば、ラジカル重合性単量体混合物Xの組成(単量体の種類および含有量)が式(1)を満たすかどうかによって、該ラジカル重合性単量体混合物Xを用いて本発明の重合体分散液を製造したときに低温貯蔵安定性が良好かどうかを予測することができる。また式(1)を満たさず低温貯蔵安定性が不良と予測される場合には、式(1)を満たすように単量体の種類および/または含有量(質量分率)を調整することによって、本発明の重合体分散液の製造に適したラジカル重合性単量体混合物Xを得ることができる。
【0021】
[単量体(x1)・単量体(x2)]
ラジカル重合性単量体混合物Xが、ラジカル性重合性基を2つ以上有する単量体(x1)と、前記単量体(x1)以外のラジカル重合性単量体(x2)とを含む混合物Xであることが好ましい。
前記混合物とすることで、工程(1)において、ウレタン樹脂(A)内に含浸した、単量体(x1)および単量体(x2)が共重合することにより、ウレタン樹脂(A)とラジカル重合性単量体混合物Xを重合して得られる重合体Pの内部に架橋構造を導入することができる。重合体Pが架橋構造を有することにより、これら重合体Pの重合中、または重合後、あるいは最終的に得られる塗膜において、単量体(x1)と単量体(x2)を含むラジカル重合性単量体混合物Xから得られる共重合体とウレタン樹脂(A)が、層分離を起こすことを防止することができる。その結果、ウレタン樹脂(A)の特長である成膜性、耐溶剤性を低下させることなく、塗膜の耐水性、耐吸水性、耐加水分解性を向上させることが可能となる。
また、重合体Pが架橋構造を有する高分子量体であれば、後述するラジカル重合性単量体混合物Yが、重合体Pの内部に含浸重合することを抑制することができる。その結果、重合体Pの表面をラジカル重合性単量体混合物Yの重合体で被覆した重合体Zを調製することが可能となる。これにより、最終的に得られる塗膜の耐水性、耐吸水性、耐加水分解性、樹脂相溶性、塗装機洗浄性がさらに向上するため好ましい。
【0022】
単量体(x1)の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
なかでも、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基を有するラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。このような、アリル基を有するラジカル重合性単量体はラジカル重合反応性が比較的低く、そのため、ラジカル重合性単量体混合物Yとの間にグラフト架橋を生じることができる。その結果、工程(1)で得られた重合体Pをラジカル重合性単量体混合物Yの重合体で被覆することが可能となる。これにより、最終的に得られる塗膜の耐溶剤性、耐水性がより向上する。
単量体(x1)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
混合物X中の単量体(x1)の含有量は、混合物Xの総質量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが更に好ましく、2〜4質量%であることが最も好ましい。
混合物X中の単量体(x1)の含有量が、0.1質量%以上であれば、耐溶剤性、耐水性に優れた塗膜が得られるため好ましい。また、混合物X中の単量体(x1)の含有量が、10質量%以下であれば、柔軟性、耐凍害性、耐チッピング性を低下させることなく、耐溶剤性、耐水性に優れた塗膜が得られるため好ましい。
【0024】
単量体(x1)以外のラジカル重合性単量体(x2)としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、上述のラジカル重合性単量体の例示から単量体(x1)を除いた残りのラジカル重合性単量体が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
混合物X中の、単量体(x1)および単量体(x2)の合計100質量%に対する、単量体(x2)の含有量は、90〜99.9質量%であることが好ましく、92〜99.5質量%であることがより好ましく、94〜99質量%が更に好ましく、96〜98質量%が最も好ましい。単量体(x1)および単量体(x2)の合計100質量%に対する、単量体(x2)の含有量が、90質量%以上であれば、塗膜の柔軟性、耐凍害性、耐チッピング性が向上し、単量体(x2)の含有量が99.9質量%以下であれば、塗膜の耐溶剤性、耐水性、耐吸水性、耐加水分解性を低下させることなく柔軟性、耐凍害性、耐チッピング性が向上する。
【0025】
[ラジカル重合性単量体混合物Y]
ラジカル重合性単量体混合物Yとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、上記[ラジカル重合性単量体混合物Xおよびラジカル重合性単量体混合物Y]において例示した単量体を好ましく用いることができる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。工程(1)で使用したラジカル重合性単量体混合物Xを用いてもよい。
ラジカル重合性単量体混合物Yは、さらに水酸基含有ラジカル重合性単量体を含むことが以下の点から好ましい。
重合体Zに水酸基を含有させることによって、例えばメラミン架橋剤、イソシアネート硬化剤等の硬化剤と架橋反応することができ、得られる塗膜の耐水性および耐溶剤性等が向上する。また得られた重合体分散液の水性媒体中での安定性、すなわち、本発明の被覆材中での重合体Zの安定性が向上するため好ましい。
このような水酸基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;前記(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水酸基含有ラジカル重合性単量体としては、なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0026】
本発明において、水酸基含有ラジカル重合性単量体の使用割合は、得られる重合体分散液の水性媒体中における安定性、および得られる塗膜の耐水性、耐溶剤性の観点から、ウレタン樹脂(A)と、工程(2)までに使用するラジカル重合性単量体全量の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜8質量部がより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。
また、重合体分散液の貯蔵安定性および機械的安定性のために、ラジカル重合性単量体混合物Yとして、カルボキシ基含有ラジカル重合性単量体を含有することが好ましい。
カルボキシ基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2−アクリロイルオキシプロピオン酸等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが、重合性の観点から好ましい。
カルボキシ基含有ラジカル重合性単量体の使用割合は、得られる重合体分散体の水性媒体中における安定性の観点から、ウレタン樹脂(A)と、工程(2)までに使用するラジカル重合性単量体全量の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.2〜3質量部であることが特に好ましい。
【0027】
<工程(1)>
工程(1)はウレタン樹脂(A)に、ラジカル重合性単量体混合物Xを重合させて、重合体Pを得る工程である。
ラジカル重合性単量体混合物の重合は、例えば、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により行える。特に、被覆材の貯蔵安定性、塗膜の耐水性、耐溶剤性等の諸物性の点から、乳化重合法によりエマルション形態の重合体分散液を得ることが望ましい。
乳化重合は、例えば、界面活性剤の存在下、ラジカル重合性単量体混合物を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合を行わせる公知の方法を採用できる。
重合系中へのラジカル重合性単量体混合物の供給手法としては、特に限定されず、ラジカル重合性単量体混合物を滴下する手法;ラジカル重合性単量体混合物を一括で投入する手法;界面活性剤および水を使用して、ラジカル重合性単量体混合物をあらかじめ乳化分散させたプレ乳化液を調製し、該プレ乳化液を滴下する手法;該プレ乳化液を一括で投入する手法;が挙げられる。
なかでも工程(1)では、ラジカル重合性単量体混合物Xを一括で投入する手法を採用することが好ましい。
ラジカル重合性単量体混合物Xを一括で投入して乳化重合することで、滴下重合と比較して、ウレタン樹脂(A)内部で均一に重合体が生成し、更に一括重合であることによりこの重合体を高分子量体とすることができるため、塗膜の耐水性および耐溶剤性が向上する。
【0028】
<工程(2)>
工程(2)は工程(1)で得られる重合体Pに、ラジカル重合性単量体混合物Yを重合させて重合体Zを得る工程である。
工程(1)と同様に、重合系中へのラジカル重合性単量体混合物の供給手法としては、特に限定されず、ラジカル重合性単量体混合物を滴下する手法;ラジカル重合性単量体混合物を一括で投入する手法;界面活性剤および水を使用して、ラジカル重合性単量体混合物をあらかじめ乳化分散させたプレ乳化液を調製し、該プレ乳化液を滴下する手法;該プレ乳化液を一括で投入する手法;が挙げられる。
なかでも工程(2)では、プレ乳化液を滴下する手法で乳化重合することで、重合安定性が向上する。
以上から、工程(1)ではラジカル重合性単量体混合物Xを一括で投入する手法を採用し、工程(2)ではプレ乳化液を滴下する手法を採用することが好ましい。
工程(1)と工程(2)は、使用するラジカル重合性単量体混合物の組成、またはラジカル重合性単量体混合物の供給方法の、少なくとも一方が異なることが好ましい。
【0029】
<重合体Z>
重合体Zは、重合体Pにラジカル重合性単量体混合物Yを重合して得られる重合体粒子である。
本発明の製造方法において、ウレタン樹脂(A)とラジカル重合性単量体混合物XおよびYの質量比は、ウレタン樹脂(A)/ラジカル重合性単量体混合物XおよびY=(10〜90)/(90〜10)であることが好ましく、(20〜80)/(80〜20)であることがより好ましく、(30〜70)/(70〜30)であることが特に好ましい。なお、この場合、ウレタン樹脂(A)とラジカル重合性単量体混合物XおよびYの総質量を100とする。
ウレタン樹脂(A)の質量割合が、前述の総質量100質量%中、10〜90質量%の範囲であれば、樹脂相溶性、塗装機洗浄性を低下させることなく、塗膜の密着性、および耐水性、耐溶剤性が向上する。特に20〜70質量%の範囲であれば、塗膜の密着性がより向上する。
【0030】
<重合開始剤>
ラジカル重合性単量体混合物XおよびYの重合に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)およびその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類が挙げられる。
【0031】
これらの開始剤は、1種のみを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
工程(1)において用いるラジカル重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性単量体混合物Xの総質量100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましい。重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.005〜10質量部であることがより好ましい。また、最終的に得られる重合体粒子(重合体Z)の高分子量化による耐水性、耐溶剤、耐候性の向上の観点から0.005〜1質量部であることが更に好ましい。また、最終的に得られる重合体分散液の粗粒率を低減させるという観点から、より好ましくは0.005〜0.5質量部、更に好ましくは0.005〜0.2質量部、特に好ましくは0.005〜0.09質量部である。
ここで、「粗粒率」とは、重合中に重合体が合一などを起こし、平均粒子径が1μmを超える粒子状になったものなどを意味し、例えば粒子径の測定や、重合後にメッシュ等でろ過した後に、メッシュ上に残った粒子状の重合体の重量を測定することによって、評価することができる。
工程(2)以降において用いるラジカル重合開始剤の添加量は、各段に供されるラジカル重合性単量体混合物の総質量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。このうち、重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.02〜5質量部であることがより好ましい。
【0032】
<添加剤>
重合においては、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤を前述のラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることが好ましい。
このうち、重合の進行、被覆材を塗装する際の基材に対する濡れ性、塗膜の耐水性、耐候性、耐溶剤性の点から、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類と硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の組み合わせを採用することがより好ましい。
重合においては、必要に応じて乳化剤を使用できる。乳化剤を使用すると、乳化重合時の重合安定性を向上でき、凝集物を低減させることができる。この場合、得られた重合体分散液は、乳化剤を含有することになる。
乳化剤の含有量は、通常、各段に供されるラジカル重合性単量体混合物の総質量100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0033】
乳化剤としては、以下の、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の界面活性剤や、反応性界面活性剤を用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル燐酸エステル等の非反応性界面活性剤、およびアルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば三洋化成(株)製:エレミノール(登録商標)JS−2、JS−20、花王(株)製:ラテムル(登録商標)S−180A、S−180等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)HS−10,HS−5,BC−10,BC−5等が挙げられる)、α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば、旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(登録商標)SE−10,SE−1025A等が挙げられる)、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)KH−10等が挙げられる)、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば、旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(登録商標)SR−10,SR−1025等が挙げられる)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩(例えば、花王(株)製:ラテムル(登録商標)PD−104等が挙げられる)等の反応性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等の非反応性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性界面活性としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピルブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非反応性界面活性剤、α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル))(旭電化工業(株)製:アデカリアソープER−10,ER−20,ER−30,ER−40)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬(株)製:アクアロンRN−20,RN−30,RN−50)、ポリオキシアルキルアルケニルエーテル(花王(株)製:ラテムルPD−420,PD−430,PD−450)等の反応性界面活性剤等が挙げられる。
また、両イオン性成分として、両イオン性の界面活性剤を用いることもできる。
これらの乳化剤は、1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明の重合体分散液は、重合後、塩基性化合物を添加して、pH6.0〜11.0程度に調整することが好ましい。これにより重合体分散液の安定性および被覆材の貯蔵安定性が向上する。
このような塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。このうち、重合体分散液の安定性の観点から、アミン系の化合物が好ましく、2−ジメチルアミノエタノールを用いることが好ましい。
【0034】
<重合体分散液>
本発明の重合体分散液は、前述の重合体(Z)と分散媒とを含む。
分散媒としては、後述の水性被覆材で用いるものと同様のものを使用できる。
本発明の重合体分散液中の固形分濃度(重合体粒子の濃度)は、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。重合体分散液中の固形分濃度が、10〜80質量%であれば、被覆材とする際の粘度調整や、最終固形分を調整し易いため好ましい。
【0035】
重合体(Z)は好ましくは粒子状である。粒子状の重合体(Z)(重合体粒子)の平均粒子径は、塗膜の成膜性、密着性、耐水性、耐吸水性、耐加水分解性、および耐溶剤性の観点から、10〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましく、30〜400nmであることが更に好ましい。
なお、本明細書において重合体粒子の平均粒子径は、大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000を用いて室温下にて測定を行い、キュムラント解析により算出した値である。
【0036】
<被覆材>
本発明の被覆材は、重合体分散液を含み、好ましくは更に各種添加剤を含む。
添加剤としては、例えば、各種顔料、樹脂ビーズ、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、硬化触媒、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、増粘剤、濡れ剤、溶剤等の各種添加剤などが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
また、被覆材には、他の重合体粒子(例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂等の他の重合体からなる分散粒子)、水溶性樹脂・粘性制御剤、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等の硬化剤が混合されていてもよい。
【0037】
前記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等が挙げられる。
これらは1種以上を使用できる。
【0038】
本発明の被覆材は、更に溶剤を含んでもよい。
溶剤としては、水性塗料に通常用いられているものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、炭素原子数5〜14の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族アルコール類;芳香族基を含有するアルコール類;一般式HO−(CH
2CHXO)
p−R
4(R
4は炭素原子数1〜10の直鎖または分岐状のアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、pは5以下の整数である。)で表される(ポリ)エチレングリコール、または(ポリ)プロピレングリコール等のモノエーテル類;一般式R
5COO−(CH
2CHXO)
q−R
6(R
5、R
6は炭素原子数1〜10の直鎖または分岐状のアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、qは5以下の整数である。)で表される(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル、または(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのモノまたはジイソブチレート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノールアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールアセテート等が挙げられる。
【0039】
これらのうち、炭素原子数5〜14の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族アルコール類が好ましく、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が更に好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−メチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒が特に好ましい。
被覆材における重合体粒子の濃度は、1〜80質量%であることが好ましく、2〜70質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、塗料粘度特性、塗膜の耐水性および耐溶剤性に優れる。
また、被覆材が、本発明の重合体粒子以外の他の重合体粒子を含む場合、重合体粒子100質量部に対して、5000質量部以下であることが、塗料粘度特性、塗膜の耐水性および耐溶剤性の点で好ましい。
【0040】
<塗装物>
本発明の塗装物とは、本発明の重合体分散液を含有する被覆材が塗布された塗膜を有する塗装物である。
被覆材を塗布して塗膜を形成させる箇所に特に制約はなく、種々の物品(以下、便宜的に「基体」と称する。)に成膜して塗装物とすることができる。
基体としては、例えば、自動車車体の外板部、自動車内装基材、家庭電気製品の外板部、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材、塩ビシート、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、天然皮革、合成皮革、繊維等が挙げられる。
本発明の被覆材を塗布することにより得られる塗膜を有する塗装物の具体例としては、例えば、乗用車・トラック・オートバイ・バスの内外装、建材、建物内外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、板材、機械装置や物品の外装、橋梁、ガードレール、テント、ビニールハウス、ブラインド、屋根材、住宅設備、冷蔵庫、エアコン、テレビ、照明器具、台所用品、機能性繊維、等が挙げられる。
【0041】
<塗膜の形成方法>
被覆材を各種基体の表面に塗布する方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装、ローラーコート塗装、バーコート塗装、エアナイフコート塗装、刷毛塗り塗装、ディッピング塗装等の各種塗装法を適宜選択することができる。
本発明の被覆材の塗布量は、前記被覆材を塗布して得られる塗膜の乾燥後の膜厚で、通常約0.1〜100μmとなる量が好ましく、1〜50μmとなる量がより好ましく、10〜40μmとなる量が特に好ましい。
また、塗布後の乾燥温度は、常温乾燥(5〜35℃)、または40〜200℃で行うことが好ましい。
【0042】
被覆材を加熱硬化によって成膜する場合は、「ワキ」等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、あるいはエアブロー等を行うことが好ましい。このうち、より速く成膜できる観点から、プレヒートを行うことがより好ましい。
プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が特に好ましい。
またプレヒートを行う時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が特に好ましい。
前記条件でプレヒートを行った後、既知の加熱手段により被覆材を加熱硬化して、塗膜を形成することができる。既知の加熱手段としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は通常40〜200℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、80〜160℃が特に好ましい。加熱時間は、本発明の効果を有する限り特に制限されるものではないが、通常10〜60分間程度、特に20〜40分間程度が好ましい。
以上説明した方法によって、本発明の被覆材により塗膜が形成された塗装物は、優れた塗膜外観、および耐溶剤性、耐水性、耐吸水性、耐加水分解性を発現することができる。
【0043】
<重合体分散液から得られる塗膜>
本発明の重合体分散液から得られる塗膜は、塗膜の硬度、耐水性、耐溶剤性の観点から下記条件により熱流速示差走査熱量計(DSC)にて測定した際、少なくとも1つ以上の吸熱ピークを有することが好ましい。
(測定方法)
重合体Zを含む分散液から得られる塗膜を用い、熱流速示差走査熱量系(DSC)を用いて、−100℃から100℃まで10℃/分の昇温速度で測定する。
この吸熱ピークは、結晶の融点ピークを意味し、例えば、結晶性を有するウレタン樹脂(A)を使用した場合に観測される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、特にことわりのない限り、本実施例における「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。また、本実施例における重合体分散液および被覆材についての測定、評価等は、以下に示す方法で行った。
また、各例において重合体分散液を製造した際の各成分の配合部数等および各例での評価結果を表1〜3に示した。
【0045】
[低温貯蔵安定性の評価方法]
予め粘度を測定した重合体分散液を、5℃雰囲気下で1ヶ月間静置後、25℃の恒温槽に3時間放置して、温度が25℃になったところで、B型粘度計で60rpmの粘度を測定し、下記式(3)より粘度変化率を算出した。
A={(η2−η1)/η1}×100
ここで、式中の記号は以下の値を示す。
A:粘度変化率(%)
η1:初期粘度(mPa・s,60rpm)
η2:5℃×1ヶ月静置後の粘度(mPa・s,60rpm)
なお、低温貯蔵安定性は以下の基準により判定した。
(粘度変化率)
「◎」:100%未満
「○」:100%以上150%未満
「×」:150%以上
【0046】
[実施例1]
(重合体分散液の調製)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに、ウレタン樹脂(A)としてポリエステル系ウレタン重合体(商品名:インプラニール LP RSC 3040、住化バイエルウレタン(株)製、固形分40%):75部(固形分30部)、脱イオン水:72.3部、ネオコールSWC(アニオン系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、固形分70%):0.44部(固形分0.31部)、アデカリアソープER−10(ノニオン系界面活性剤、(株)ADEKA製):0.44部、ラジカル重合性単量体混合物Xとして、エチルアクリレート:49.4部を仕込み、フラスコを50℃に昇温した。その後、重合開始剤として、t−ブチルヒドロパーオキサイド水溶液(商品名;カヤブチルH70、化薬アクゾ(株)製):0.014部、脱イオン水:0.7部と、還元剤として、硫酸第一鉄:0.00014部、エチレンジアミン四酢酸(EDTA):0.00019部、アスコルビン酸ナトリウム:0.014部、脱イオン水:0.7部を添加した。また、重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を75℃に昇温して20分間保持した。
次いで、前記分散液に、還元剤として、アスコルビン酸ナトリウム:0.07部、脱イオン水:3.51部を添加して、75℃で10分間保持した後、メチルメタクリレート:11部、2−エチルヘキシルアクリレート:7.4部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:1部、アリルメタクリレート:0.7部、80%アクリル酸:0.5部、ネオコールSW−C:0.33部(固形分0.23部)、アデカリアソープER−10:0.33部、脱イオン水:18.61部を含む予めラジカル重合性単量体混合物Yを乳化分散させたプレ乳化液と、t−ブチルヒドロパーオキサイド水溶液:0.021部、脱イオン水:6.31部とを含む重合開始剤水溶液を1時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を75℃に保持し、滴下が終了してから75℃で1.5時間保持した。その後、反応液を室温まで冷却し、アミン水溶液としてジメチルアミノエタノール:0.52部と脱イオン水:4.21部とを添加し、本発明の重合体分散液を得た。得られた重合体分散液の低温貯蔵安定性試験結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2〜14、比較例1〜3]
表1〜3に示す通りに、各成分を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、重合体分散液を調製した。得られた重合体分散液の低温貯蔵安定性試験結果を表3に示す。
【0048】
ただし、表1〜3の略号は、以下の化合物を示す。
・ウレタン樹脂(A1):インプラニールLP RSC 3040(住化バイエルウレタン(株)製,結晶性あり)。
・ウレタン樹脂(A2):インプラニールXP2772(住化バイエルウレタン(株)製,結晶性あり)。
・AMA:アリルメタクリレート(Tg:52℃,SP値:23.09)。
・IBXMA:イソボルニルメタクリレート(Tg:155℃,SP値:18.87)。
・tBMA:t−ブチルメタクリレート(Tg:107℃,SP値:18.32)。
・MMA:メチルメタクリレート(Tg:105℃,SP値:20.15)。
・MA:メチルアクリレート(Tg:8℃,SP値:21.38)。
・EA:エチルアクリレート(Tg:−22℃,SP値20.48)。
・BA:n−ブチルアクリレート(Tg:−52℃,SP値:19.73)。
・2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃,SP値:18.83)。
・2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:55℃,SP値:24.98)。
・AA:アクリル酸(Tg:106℃,SP値:25.70)。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
図1は、実施例および比較例で用いたラジカル重合性単量体混合物XのTg(X)およびSP(X)をプロットしたグラフである。グラフ中の直線の式はSP(X)=−0.0125Tg(X)+19.875である。
表1〜3および
図1の結果より、実施例1〜14は、重合体分散液の製造に用いたラジカル重合性単量体混合物XのTg(X)およびSP(X)が、SP(X)≧−0.0125Tg(X)+19.875(式1)を満たす例であり、得られた重合体分散液は低温貯蔵安定性に優れていた。
比較例1〜3は、重合体分散液の製造に用いたラジカル重合性単量体混合物XのTg(X)およびSP(X)が、SP(X)≧−0.0125Tg(X)+19.875(式1)を満たさない例であり、低温貯蔵安定性が劣っていた。