【実施例】
【0054】
(実施例1)
1.)実施例1に係るフェライト粉末の製造
(1)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄5.87:炭酸ストロンチウム1になるように秤量した。当該秤量物に対して、0.17質量%のホウ酸、および2.36質量%の塩化カリウムを加えて混合後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒し第1の造粒物を得た。
【0055】
(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程
当該造粒物を、ロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、1265℃で20分間焼成し、焼成物を得た。焼成物のカサ密度1.6g/cm
3であり、粒子間の焼結がほとんど進んでいないことを確認した。
【0056】
当該焼成物をローラーミルで処理することで、焼成物の粗粉を得た。
【0057】
(3)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1になるように秤量および混合した後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒し第2の造粒物を得た。
【0058】
(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程
当該第2の造粒物を、ロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、970℃で20分間焼成し、焼成物を得た。当該焼成物をローラーミルで処理することで焼成物の微粉を得た。
【0059】
(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程
上記で得られた粗粉(80重量部)、得られた微粉(20重量部)、および水道水(150重量部)とを秤量し、攪拌翼を有する容器に投入して20分間攪拌混合し、粗粉および微粉の粒子が分散したスラリーを得た。そして、当該スラリーをろ過、乾燥(大気中150℃で10時間)させて乾燥ケーキを得た。
【0060】
(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程
得られた乾燥ケーキを、振動ボールミル(村上精機製:Uras Vibrator KEC−8−YH)で粉砕処理した。粉砕処理条件としては、媒体に径12mmのスチール製ボールを用い、回転数1800rpm、振幅8mmの条件で28分間実施した。当該粉砕処理した混合粉を大気中950℃にて30分間アニール(焼鈍)して、実施例1に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0061】
得られた実施例1に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Aに、積算粒径分布曲線を
図2Aに、夫々実線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。
尚、本発明において、粒径分布曲線とは、粒径分布測定装置を用いて得られた頻度分布曲線の事を指す。
また、本発明に係る実施例・比較例において、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。即ち、ピークの裾部分においてショルダー(肩)が存在する場合は、当該ショルダーを別のピークとして考える。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径(ピーク粒径(1)、ピーク粒径(2))、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、p−iHcの値を表2に記載する。尚、表2には、圧粉体の残留磁束密度(p−Br)、フェライト粉末の飽和磁化(σs)、フェライト粉末の保磁力(Hc)の値も記載した。
そして、表2の値より、実施例1に係るフェライト粉末は、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0062】
2.)コンパウンドの製造
【0063】
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例1に係るフェライト粉末92.7重量部,シランカップリング剤0.8重量部,滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)5.7重量部を秤量し、ミキサーに装填して混合し、混合物を得た。得られた混合物を230℃で混練して、コンパウンドの破砕物である平均径2mmの実施例1に係る混練ペレット(1)を得た。当該ペレットにおける(フェライト粉末/ナイロン−6)の質量比は16.3となった。
このとき実施例1に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0064】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
得られた混練ペレット(1)を射出成形機(住友重機製)へ装填し、4.3kOeの磁場中において、温度290℃、成形圧力8.5N/mm
2で射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向)の実施例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0065】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例1に係る混練ペレット(1)を使用し、射出成型時の磁場を12kOeとした以外は、同様の操作を行って、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0066】
(3)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例1に係るフェライト粉末93.3重量部,シランカップリング剤0.7重量部,滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)5.2重量部を秤量し、ミキサーに装填して混合し、混合物を得た。得られた混合物を、230℃で混練して平均径2mmの実施例1に係る混練ペレット(2)を得た。当該ペレットにおける(フェライト粉末/ナイロン−6)の質量比は17.9となった。
このとき実施例1に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0067】
3)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例1に係る混練ペレット(2)を使用し、射出成型時の磁場を4.3kOeとした以外は、同様の操作を行って、実施例1に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0068】
4.)測定方法
実施例1において製造したフェライト粉末、ペレット、ボンド磁石に係る各種特性の測定方法について説明する。以下、実施例2〜6、比較例1〜3も同様である。
【0069】
<粒径分布>
フェライト粉末の粒径分布は、乾式レーザー回折式粒径分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用い、focallength=20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarの条件にて、体積基準での粒径分布を測定することが出来る。
【0070】
また、頻度分布曲線における極大値近傍の3計測点に対して二次関数で近似し、その二次関数の極大値となる粒径をピーク粒径とした。
【0071】
<比表面積(SSA)>
フェライト粉末のSSAは、BET法に基づいて、ユアサアイオニクス株式会社製のモノソーブを用いて測定した。
【0072】
<圧縮密度(CD)>
フェライト粉末のCDは、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉末10gを充填した後、1ton/cm
2の圧力で圧縮した。このときのフェライト粉末の密度をCDとして測定した。
【0073】
<圧粉体の保磁力(p−iHc)>
フェライト粉末のp−iHcは、次の手順により測定した。
(1)フェライト粉末8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製P−レジン)0.4ccを乳鉢中で混練する。
(2)混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2ton/cm
2の圧力で40秒間圧縮した。
(3)成型品を金型より抜取り、150℃で30分間乾燥した後、BHトレーサー(東英工業製TRF−5BH)により測定磁場10kOeで測定した。
【0074】
<磁気特性>
フェライト粉末の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSMP−7−15)を用い、フェライト粉末20mgとパラフィン30mgを装置付属のセルに充填し、80℃に過熱してパラフィンを解かした後、室温に冷却することでサンプル粒子をランダムに固定化し、測定磁場10kOeにて測定し、σs(emu/g)、iHc(Oe)を算出した。なお、1Oeは1/4π×10
3[A/m]である。
【0075】
<流動性(MFR)>
混練ペレットのMFRは、メルトフローインデクサー((株)東洋精機製作所製メルトフローインデクサーC−5059D2(JISK−7210準拠))に供し、270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、これを10分間あたりの押し出し量に換算することで、MFR(単位g/10min)とした。
【0076】
尚、本明細書において、MFRとは、以下の(1)乃至(3)の手順で測定した値であるとする。
(1)被測定磁性粉末92.7または93.3重量部、シランカップリング剤0.7重量部、滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)5.7または5.2重量部をミキサーにてかき混ぜる。
(2)得られた混合物を230℃で混練して、コンパウンドの破砕物である平均径2mmのペレットにする。
(3)前記(2)で得られたペレットをメルトフローインデクサーに供し、270℃荷重10kgで、10分間に押し出された重量を測定し、これをMFR(単位g/10min)とする。
【0077】
<成形品の磁気特性>
成形品の磁気特性は、次の手順により評価した。
(1)混練ペレットを、射出成形機(住友重機製)を用い4.3kOeの磁場中にて、温度290℃、成形圧力8.5N/mm
2で射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状の成形品(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向)を得た。
(2)円柱状の成形品の磁気特性を、BHトレーサー(東英工業製TRF−5BH)にて測定磁場10kOeで測定した。
【0078】
(実施例2)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した、粗粉の比率を75重量部、微粉の比率を25重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例2に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0079】
得られた実施例2に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Aに、積算粒径分布曲線を
図2Aに、夫々短破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0080】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例2に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例2に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0081】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例2に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例2に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0082】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0083】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0084】
(3)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.93.3質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.93.3質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0085】
(実施例3)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1280℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(75重量部)、微粉(25重量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例3に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0086】
得られた実施例3に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Aに、積算粒径分布曲線を
図2Aに、夫々長破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0087】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例3に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例3に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0088】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例3に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例3に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0089】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例3に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0090】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例3に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0091】
(3)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例3に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0092】
(実施例4)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1250℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(75重量部)、微粉(25重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程」にて説明したアニール温度を970℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例4に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0093】
得られた実施例4に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Bに、積算粒径分布曲線を
図2Bに、夫々短破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0094】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例4に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例4に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例4に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0095】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例4に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例4に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例4に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0096】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例4に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0097】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例4に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0098】
(3)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例4に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例4に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0099】
(実施例5)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1250℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(75重量部)、微粉(25重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程」にて説明したアニール温度を955℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例5に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0100】
得られた実施例5に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Bに、積算粒径分布曲線を
図2Bに、夫々破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0101】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例5に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例5に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例5に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0102】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例5に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例5に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例5に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0103】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例5に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0104】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例5に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0105】
(3)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例5に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例5に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0106】
(実施例6)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1250℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(75重量部)、微粉(25重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程」にて説明したアニール温度を940℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例6に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0107】
得られた実施例6に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Bに、積算粒径分布曲線を
図2Bに、夫々長破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0108】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例6に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例6に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例6に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0109】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
実施例6に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例6に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例6に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0110】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例6に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0111】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例6に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0112】
(3)F.C.93.3質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例6に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例6に係る(F.C.93.3質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0113】
(比較例1)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1235℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、焼成温度を1070℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した、粗粉の比率を70重量部、微粉の比率を30重量部とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた乾燥ケーキへの振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を910℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例1に係るフェライト粉末を
得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0114】
得られた比較例1に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Cに、積算粒径分布曲線を
図2Cに、夫々1点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0115】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例1に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例1に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例1に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0116】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
比較例1に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例1に係る混練ペレット(2)を得ようとしたが、混練不可であった。
【0117】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例1に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0118】
(比較例2)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1235℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、焼成温度を1070℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した、粗粉の比率を70重量部、微粉の比率を30重量部とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた乾燥ケーキへの振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を940℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例2に係るフェライト粉末
を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0119】
得られた比較例2に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Cに、積算粒径分布曲線を
図2Cに、夫々2点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0120】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例2に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例2に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0121】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
比較例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例2に係る混練ペレット(2)を得ようとしたが、混練不可であった。
【0122】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例2に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0123】
(比較例3)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1280℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、焼成温度を1070℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した、粗粉の比率を70重量部、微粉の比率を30重量部とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた乾燥ケーキへの振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を965℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例3に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0124】
得られた比較例3に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を
図1Cに、積算粒径分布曲線を
図2Cに、夫々短2点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。また当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、SSA、CD、σs、Hc、p−iHc、p−Brの値を表2に記載する。
【0125】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例3に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例3に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0126】
(2)F.C.93.3質量%のペレットの製造
比較例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例3に係る混練ペレット(2)を得ようとしたが、混練不可であった。
【0127】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例3に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0128】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
比較例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BH
maxの値を表3に記載する。
【0129】
(まとめ)
フェライト粉の焼成温度を制御して焼成物の粗粉や微粉の粒径を小さくし、かつ、粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を長時間加えて分散性を高めた実施例1〜6に係るボンド磁石用フェライト粉末は、1.93〜2.41m
2/gのSSA、3.58〜3.66g/cm
3のCD、2340〜2640Oeのp−iHcを有していた。
この結果、実施例1〜6に係るボンド磁石用フェライト粉末と樹脂との混合物を混錬した場合、F.C.92.7質量%において、MFRは68.9〜101.7g/10minとなり、BH
maxが2.57〜2.68MGOeを示すフェライト系ボンド磁石を容易に製造することが出来た。また、F.C.93.3質量%において、MFRは30.2〜50.7g/10minとなり、BH
maxが2.78〜2.83MGOeを有するフェライト系ボンド磁石を容易に製造することが出来た。
【0130】
【表1】
【表2】
【表3】