特許第6482444号(P6482444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482444ボンド磁石用フェライト粉末とその製造方法並びにフェライト系ボンド磁石
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482444
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ボンド磁石用フェライト粉末とその製造方法並びにフェライト系ボンド磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/11 20060101AFI20190304BHJP
   H01F 1/113 20060101ALI20190304BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20190304BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20190304BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H01F1/11
   H01F1/113
   H01F41/02 G
   C01G49/00 C
   H01F7/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-193724(P2015-193724)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72635(P2016-72635A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-202601(P2014-202601)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595156333
【氏名又は名称】DOWAエフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】坪井 禅
(72)【発明者】
【氏名】三島 泰信
(72)【発明者】
【氏名】綾部 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】千田 正康
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277792(JP,A)
【文献】 特開2004−327669(JP,A)
【文献】 特開2007−214510(JP,A)
【文献】 特開2002−175907(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/126352(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/117070(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/050119(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/11
C01G 49/00
H01F 1/113
H01F 7/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値が12体積%以上であるボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項2】
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
積算粒径分布曲線における粒径0.74μmでの積算分布値が17体積%以上であるボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項3】
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
頻度分布曲線における粒径0.40μmでの頻度分布が11以上であるボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項4】
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
頻度分布曲線における粒径0.48μmでの頻度分布が16以上であるボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項5】
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとしたとき、当該コンパウンドの流動性が42.5g/10min以上である、請求項1から4のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項6】
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満である、ボンド磁石用フェライト粉末であって、
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとし、当該コンパウンドを成形してボンド磁石としたとき、当該ボンド磁石のiHcが2,200Oe以上3,000Oe未満である、ボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項7】
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとし、当該コンパウンドを成形してボンド磁石としたとき、当該ボンド磁石のiHcが2,200Oe以上3,000Oe未満である、請求項1から5のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を成形して製造されたフェライト系ボンド磁石。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を含むフェライト系ボンド磁石。
【請求項10】
酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程と、
得られた第1の造粒物を、第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程と、
酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程と、
得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程と、
得られた粗粉と微粉とを混合して混合粉を得る工程と、
得られた混合粉へ、機械的粉砕力を加えて混合粉砕物を得、得られた混合粉砕物をアニールする工程と、を有するボンド磁石用フェライト粉末の製造方法であって、
前記第1の温度が1220℃以上1250℃未満であり、
前記第2の温度が900℃以上1000℃以下であり、
前記粗粉と前記微粉との混合比率を〔粗粉の質量/(粗粉+微粉)の質量〕×100%で表記したとき、65質量%以上75質量%未満である、ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
但し、前記機械的粉砕力とは、容量2〜4L、動力0.3〜0.5kWの振動ボールミルに、媒体として径8〜14mmのスチール製ボールを装填し、回転数1700〜1900rpm、振幅7〜9mm、処理時間20〜100分間である粉砕処理による粉砕力、または、それと同等の粉砕力である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石の製造に用いられるボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法、並びにこれを用いたフェライト系ボンド磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
高磁力が要求される磁石には、フェライト系焼結磁石(本発明において「焼結磁石」と記載する場合ある。)が使用されている。しかし、当該焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なため生産性に劣ることに加え、複雑な形状への加工が困難であるという固有の問題がある。最近では、当該焼結磁石をフェライト系ボンド磁石(本発明において「ボンド磁石」と記載する場合ある。)で代替したいという要請がある。しかし、ボンド磁石は、焼結磁石に比較すると、最大エネルギー積(BHmax)が劣るため、焼結磁石をボンド磁石へ代替するためには、ボンド磁石においてBHmaxの特性向上が求められ
る。
【0003】
一般に、BHmaxは、残留磁束密度(Br)と保磁力(Hc)とにより決まる。
ここで、Brは、磁石の密度(ρ)と磁粉の飽和磁化(σs)、配向度(Br/4πIs)により下式1で表される。
Br=4π×ρ×σ×(配向度)・・・式1
一方、Hcは、結晶異方性と形状異方性および単磁区構造の理論で説明されている。
【0004】
焼結磁石とボンド磁石との大きな違いは、ρである。焼結磁石のρは、5.0g/cm程度である。これに対しボンド磁石では、原料の混練物(コンパウンド)においてフェライト粉末に加えて、樹脂やゴム等のバインダーが入るため、当然密度はこれより低くなる。この為、ボンド磁石のBrは低下する。したがって、ボンド磁石の磁力を高くするには、コンパウンドにおけるフェライト粉末の含有率(F.C.)を増やすことが求められる。
しかしながら、コンパウンドにおけるフェライト粉末のF.C.を増やすと、フェライト粉末とバインダーとの混練時に、コンパウンドが高粘度となり、負荷が増大してコンパウンドの生産性が低下し、極端な場合には混練不可になる。そして、混練が出来たとしても、コンパウンドの成形時において流動性(MFR)の値が低いので、成形物の生産性が低下し、極端な場合には成形不可になる。
【0005】
このボンド磁石特有の課題を解決するために、バインダーの選定やフェライト粉末の表面処理等の観点から改良が行われている。しかし、基本的にはフェライト粉末自身のF.C.を高く確保することが最も重要である。フェライト粉末のF.C.は、当該フェライト粉末を構成するフェライト粒子の粒径分布や圧縮密度との関連性が高い。
【0006】
このようなボンド磁石用フェライト粉末(本発明において「フェライト粉末」と記載する場合がある。)の製造方法として、出願人は特許文献1を開示した。
特許文献1において、出願人は複数の粒径を有するフェライト粉末を混合して得たフェライト粉末を開示した。そして、当該フェライト粉末においては、粒径分布において複数のピークを有するものとなった。
また、フェライト粉末を構成する粒子において比表面積(SSA)の値が高いと、混練および成型時にフェライト粒子表面に吸着する樹脂(バインダー)量が増える。その結果、自由に動くことができる樹脂の割合が減少し、流動性の低下を招き、流動性の低下は磁場成型時の配向性の低下、すなわちBrの低下に結びつくことが考えられた。そこで、SSAは1.8m/g以下のものとした。
一方、圧粉体の保磁力(p−iHc)は、2100Oe以上のものを実現した。
また、無配向状態の飽和磁化値σsは55emu/g以上のものを実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−263201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが開示した特許文献1によれば、圧縮密度が高く、高充填性のフェライト粉末が得られた。
ところが近年、市場では、より高磁力のボンド磁石が求められている。この結果、フェライト粉末に対しても、より高いp−iHcを有するものが求められている。
【0009】
しかしながら、p−iHcが、例えば2750Oe以上のフェライト粉末を得ようとすると、フェライト粒子の分散性やMFRの値が低下し、成形体の成形が困難になったり、ペレットの混練が困難になったりした(例えば、特許文献1、比較例9、10参照。)。
【0010】
この為、BHmax=2.5〜4.0MGOe程度の高い磁力が要求される分野では、ボンド磁石は無く、焼結磁石が使用されている。しかし、上述したように、焼結磁石は欠け割れが発生したり、研磨が必要である為、生産性に劣り、複雑な形状への加工が困難であるという固有の問題がある。
一方、最近、希土類磁石を用いたボンド磁石がこの分野で一部使用されているが、希土類磁石はフェライト磁石の20倍のコスト高であり、また錆びやすいという問題がある。
【0011】
このような状況から、加工性が良好で安価なボンド磁石において、より高いBHmaxを達成することが、AV、OA機器、自動車の電装部品等の小型モーターや複写機のマグネットロールの用途分野で強く要望されている。
【0012】
本発明は上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、BHmaxの高いフェライト系ボンド磁石を製造出来、且つコンパウンド化をした際の流動性に優れ、且つ高いp−iHcの値を有するボンド磁石用フェライト粉末とその製造方法、並びに、当該ボンド磁石用フェライト粉末を用いたフェライト系ボンド磁石を提供すること
である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するため、本発明者らは研究を行い、ボンド磁石用フェライト粉末の製造工程において、当該製造工程段階にあるフェライト粉末へ機械的粉砕力を加え、製造されるボンド磁石用フェライト粉末の平均粒径、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)の値を所定範囲値とすることで、p−iHcが2750Oeを超えていながら、成形体の成形が容易で、ペレットの混練も容易なフェライト粉末を得ることが出来ることに想到し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値が12体積%以上であるボンド磁石用フェライト粉末である。
第2の発明は、
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
積算粒径分布曲線における粒径0.74μmでの積算分布値が17体積%以上であるボンド磁石用フェライト粉末である。
第3の発明は、
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
頻度分布曲線における粒径0.40μmでの頻度分布が11以上であるボンド磁石用フェライト粉末である。
第4の発明は、
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満であり、
頻度分布曲線における粒径0.48μmでの頻度分布が16以上であるボンド磁石用フェライト粉末である。
第5の発明は、
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとしたとき、当該コンパウンドの流動性が42.5g/10min以上である、第1から第4の発明のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末である。
第6の発明は、
乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、
比表面積が1.90m/g以上3.00m/g未満であり、
圧縮密度が3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、
圧粉体の保磁力が2800Oe以上3250Oe未満である、ボンド磁石用フェライト粉末であって、
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとし、当該コンパウンドを成形してボンド磁石としたとき、当該ボンド磁石のiHcが2,200Oe以上3,000Oe未満である、ボンド磁石用フェライト粉末である。
第7の発明は、
前記ボンド磁石用フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該ボンド磁石用フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとし、当該コンパウンドを成形してボンド磁石としたとき、当該ボンド磁石のiHcが2,200Oe以上3,000Oe未満である、第1から第5の発明のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末である。
第8の発明は、
第1から第7の発明のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を成形して製造されたフェライト系ボンド磁石である。
第9の発明は、
第1から第7の発明のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を含むフェライト系ボンド磁石である。
第10の発明は、
酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程と、
得られた第1の造粒物を、第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程と、
酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程と、
得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程と、
得られた粗粉と微粉とを混合して混合粉を得る工程と、
得られた混合粉へ、機械的粉砕力を加えて混合粉砕物を得、得られた混合粉砕物をアニールする工程と、を有するボンド磁石用フェライト粉末の製造方法であって、
前記第1の温度が1220℃以上1250℃未満であり、
前記第2の温度が900℃以上1000℃以下であり、
前記粗粉と前記微粉との混合比率を〔粗粉の質量/(粗粉+微粉)の質量〕×100%で表記したとき、65質量%以上75質量%未満である、ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法である。
但し、前記機械的粉砕力とは、容量2〜4L、動力0.3〜0.5kWの振動ボールミルに、媒体として径8〜14mmのスチール製ボールを装填し、回転数1700〜1900rpm、振幅7〜9mm、処理時間20〜100分間である粉砕処理による粉砕力、または、それと同等の粉砕力である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末は、高いiHcの値と高いMFR値とを有しているので、BHmaxの値の高いボンド磁石を製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を示すグラフである。尚、縦軸は頻度分布を、横軸は粒径(μm)を表している。
図2】本発明に係るフェライト粉末の積算粒径分布曲線を示すグラフである。尚、縦軸は積算粒径分布(体積%)を、横軸は粒径(μm)を表している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、ボンド磁石において高磁力化を達成する構成について鋭意研究を行い、乾式レーザー回折式測定による平均粒径が5μm以下であり、SSAが1.90m/g以上3.00m/g未満であり、CDが3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、p−iHcが2800Oe以上3250Oe未満であるボンド磁石用フェライト粉末に想到した。
そして本発明者らは、当該構成を有する本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末と、樹脂とを混練混合して得られたコンパウンドにより、高磁力のボンド磁石を容易に製造できることを知見した。
さらに本発明者らは、当該構成を有する本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末の製造方法について研究を行い、製造工程段階にある粉末へ機械的粉砕力を加え、製造されるボンド磁石用フェライト粉末の平均粒径、SSA、CDを所定範囲値とすることで、p−iHcが2750Oeを超えていながら、成形体の成形が容易で、ペレットの混練も容易なフェライト粉末を得ることが出来ることに想到し、本発明を完成した。
【0018】
以下、1.)本発明に係るフェライト粉末、2.)本発明に係るフェライト粉末の製造方法、3.)本発明に係るフェライト粉末が充填されたコンパウンド、4.)本発明に係るコンパウンドが成形されたボンド磁石の順で、本発明について説明する。
【0019】
1.)本発明に係るフェライト粉末
上述したように、本発明に係るフェライト粉末は、乾式レーザー回折式測定による平均粒径が5μm以下、1μm以上であり、SSAが1.90m/g以上3.00m/g未満であり、CDが3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、p−iHcが2800Oe以上3250Oe未満であるとの構成を有する。
ここで、フェライト粉末における(1)平均粒径、(2)SSA、(3)CD、(4)p−iHc、(5)圧粉体の残留磁束密度、の各々の構成とその効果について説明する。
【0020】
(1)平均粒径
本発明に係るフェライト粉末は、乾式レーザー回折式測定による平均粒径が5μm以下1μm以上のフェライト粉末に係るものである。平均粒径が5μm以下であれば、ボンド磁石化後の配向度や保磁力が担保出来ることによる。また、平均粒径が1μm以上であれば、CDの値が担保出来ることによる。
【0021】
本発明に係るフェライト粉末の積算粒径分布曲線において、粒径0.62μmでの積算分布値が12体積%以上、そして、粒径0.74μmでの積算分布値が17体積%以上であることが好ましい。
換言すれば、当該粒径分布曲線において、粒径0.40μmのときの頻度分布が11以上、そして、粒径0.48μmのときの頻度分布が16以上、であることが好ましい。
これは、フェライトと樹脂とを混ぜて混練する際に、(粗大な)フェライト粒子の間隙に樹脂だけでなく、樹脂と微細なフェライト粒子が混合した状態で充填することができるからである。この結果、フェライトの充填率を上げた際にも、高い流動性を得ることができる。
【0022】
(2)比表面積(SSA)
本発明者らは、SSAが1.90m/g以上であることが好ましいことを知見した。
これは、フェライト粉末を構成する粒子が、配向するためには単分散していることが好ましいところ、SSAが1.90m/g以上であることにより、フェライト粒子が単分散した微粒子となっていることによると考えられる。
【0023】
一方、SSAが3.00m/g未満であることにより、混練および成型時にフェライト粉末を構成する粒子表面に吸着する樹脂(バインダー)量が増え、その分自由に動くことができる樹脂の割合が減少し、流動性の低下を招く事態を回避出来ると考えられる。この傾向は、コンパウンド中のフェライト粉末のF.C.が高く、磁場成型中の配向磁場が低い場合は顕著になりやすいため、SSAは3.00m/g未満が良いことに想到したものである。
【0024】
以上より、本発明に係るフェライト粉末において、SSAが、1.90m/g以上、3.00m/g未満である構成に想到したものである。
【0025】
(3)圧縮密度(CD)
CDは、ボンド磁石の最小構成単位であるフェライト粒子を限られた体積にどれだけ充填することができるかを示す指標であり、飽和磁束密度(Bs)との相関性が高い。一方、CDが高いと、粒子間隙の容積が小さくなるため、当該フェライト粉末と、例えばナイ
ロン−6樹脂とを混合し、混錬して得られたコンパウンドにおいて、当該フェライト粉末の間隙に入り込む樹脂量は見かけ上減少する。そこで、CDは、3.40g/cm以上であることが好ましいことに想到した。
【0026】
一方、後工程にて製造される、ボンド磁石(成形体)の保磁力(inj−iHc)が高い値を担保する観点からは、CDが3.73g/cm以下であることが好ましい。
【0027】
以上より、本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末において、CDが3.40g/cm以上3.73g/cm未満とする構成に想到したものである。
【0028】
(4)圧粉体の保磁力(p−iHc)
p−iHcは、2ton/cmの高圧力下で圧縮され機械的ストレスの履歴がある状態における、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力である。なお、「ton」は1000kgの意である。一般に、ボンド磁石を製造する際の混練および成形時において、ボンド磁石用フェライト粉末は機械的ストレスを受ける為、その保磁力はストレスの掛かっていない粉体状態のときより低下する。
【0029】
ここで、p−iHcと、ボンド磁石(成形体)の保磁力(inj−iHc)とは高い相関がある為、p−iHcの値はinj−iHcの値を推定する為の有効な指標となる。したがって、p−iHcは高い方が良いと考えられ、さらに低温減磁を予め考慮しておく観点から、p−iHcは2800Oe以上あることが好ましい構成であることに想到した。
【0030】
一方、ボンド磁石を製造する為に、成形された成形品を着磁する際、当該着磁の容易性を担保する観点から、p−iHcは3250Oe未満であることが好ましい。
【0031】
以上より、本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末を用いた圧粉体のp−iHcが、2800Oe以上3250Oe未満である構成に想到したものである。
【0032】
(5)圧粉体の残留磁束密度(p−Br)
p−Brは、2ton/cmの高圧力下で圧縮され、機械的ストレスの履歴がある状態における、ボンド磁石用フェライト粉末の残留磁束密度である。
【0033】
以上、説明したように本発明に係るフェライト粉末は、乾式レーザー回折式測定での平均粒径が5μm以下であり、SSAが1.90m/g以上3.00m/g未満であり、CDが3.40g/cm以上3.73g/cm未満であり、p−iHcが2800Oe以上3250Oe未満であるとの構成を有している。この構成により、当該フェライト粉末を成形することにより、BHmax=2.5〜3.0MGOe程度の高い磁力を有するボンド磁石が得られる。
【0034】
フェライト粒子の各粒子の表面性を示すSSAと、ボンド磁石用フェライト粉末の粉体物性としてのCDとには、密接な相互影響がある。さらにはフェライト粒子の配向や分散状態によって磁性へ影響もあり、SSAとCDとp−iHcとの関係は密接であり、上記の構成を満たすことが肝要である。
【0035】
上述した構成において、フェライト粒子のSSAが1.9m/g以上3.00m/g未満であることにより、ボンド磁石用フェライト粉末においてCDを3.40g/cm以上3.73g/cm未満にすることが可能となり、フェライト粒子のp−iHcと相俟ってBHmax=2.5〜3.0MGOe程度の高い磁力を示すボンド磁石が得られる。
一方、p−iHcが2800Oe以上3250Oe未満であれば、BHmax=2.5〜3.0MGOeを有するボンド磁石が得られる。尤も、当該p−iHcも、フェライト粒子のSSAとCDとの作用も受けて、フェライト粒子が配向されてなるものである。この場合も、SSAとCDとは密接に影響しあう構成である。
【0036】
2.)本発明に係るフェライト粉末の製造方法
本発明に係るフェライト粉末の製造方法は、(1)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程、(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程、(3)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程、(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程、(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程、(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程、と、を有する。ここで、各工程について説明する。
【0037】
(1)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとをモル比で、酸化鉄:炭酸ストロンチウム=5.50〜6.00:1になるように秤量する。
当該秤量物に対して、0.10〜3.0質量%の融剤(酸化物、無機酸、または、その塩)、および1.00〜5.00質量%の塩化物を加えて混合し混合物とする。当該混合物を直径3〜10mm程度に造粒することで第1の造粒物を得た。
ここで、酸化物、無機酸、または、その塩としては、酸化ビスマス、ホウ酸、ホウ酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ケイ酸、ケイ酸塩等を好ましく挙げることが出来、これらのうちの2種以上を組み合わせて使用することも出来る。塩化物としては、KCl、NaCl、LiCl、RbCl、CsCl、BaCl、SrCl、CaCl、MgCl等を好ましく挙げることが出来、これらのうちの2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0038】
(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程
得られた第1の造粒物を、大気の流通雰囲気下において1220〜1250℃、10〜120分間焼成し焼成物を得る。当該焼成物を、ローラーミルまたはハンマーミルにより粉砕処理することで、粗粉の原料粗砕粉末を得る。
【0039】
(3)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄:炭酸ストロンチウム=5.20〜6.00:1になるように秤量し混合する。混合した後、直径3〜10mm程度に造粒する。
【0040】
(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程
得られた第2の造粒物を、好ましくは大気の流通雰囲気下において前記第1の温度より低温である900℃〜1000℃にて、30〜120分間焼成し焼成物を得る。当該焼成物をハンマーミルで粉砕処理することで、微粉の原料粗砕粉末を得る。
【0041】
(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程
上記(2)で得られた粗粉の原料粗砕粉(65〜75重量部)と、上記(4)で得られた微粉の原料粗砕粉(35〜25重量部)とを秤量する(このとき、粗粉の原料粗砕粉と微粉の原料粗砕粉との合計は100重量部とする。)。得られた秤量物を湿式粉砕機に装填し、溶媒として水を混合し、分散処理してスラリーを得る。
【0042】
得られた粗粉と微粉とを混合する際、粗粉の混合比率が65重量部以上(微粉の混合比率が35重量部以下)であれば、後工程にて得られるボンド磁石において、所定のCDを担保することができる。一方、粗粉の混合比率が75重量部未満(微粉の混合比率が25重量部以上)であれば、後工程にて得られるボンド磁石において、所定のHcが得られる。
【0043】
得られたスラリーをろ過もしくは脱水してケーキを得、当該ケーキを大気中で乾燥させて乾燥ケーキを得る。当該乾燥ケーキを解砕処理することで混合粉を得る。
【0044】
(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程
前記乾燥ケーキを解砕処理することで得られた混合粉へ機械的粉砕力を加える。具体的には、容量2〜4L好ましくは3L、動力0.3〜0.5kW好ましくは0.4kWの振動ボールミルに、媒体として径8〜14mm、好ましくは径12mmのスチール製ボールを装填し、回転数1700〜1900rpm好ましくは1800rpm、振幅7〜9mm好ましくは8mm、処理時間20〜100分間である粉砕処理による粉砕力、または、それと同等の粉砕力である。そして、振動ボールミルの材質はステンレススチール製であることが好ましい。好ましい具体例として、村上精機製:Uras Vibrator KE
C−8−YHを上げることが出来る。
尚、粉砕機としては、上記と同様の粉砕強度を得られる振動ボールミルであれば、その型式、バッチ方式であるか連続方式であるかの指定は特にない。
【0045】
振動粉砕機として例えば振動ミルを用い、得られた混合粉を20分間以上乾式粉砕することにより、意外にも前記第2の温度(低い温度)で焼成された微粉の粒子の形状を均一化出来たものと考えている。そして当該粒子形状の均一化が、フェライト粉の向上やコンパウンドの流動性向上に寄与していると考えられる。一方、当該乾式粉砕時間が100分間以下であれば、当該粉砕に起因する混合粉末の粒子(粗粉粒子および微粉粒子)における結晶歪みが過大にならず、後工程にて結晶歪みを除去することが容易である。
【0046】
当該乾式粉砕は、バッチ式でも連続式でも良い。当該乾式粉砕を連続式で行う場合には、バッチ式と同等の粉砕力強度が得られるように、振動数・振幅・供給量・粉砕助剤などの調整を行なえば良い。
【0047】
粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加えた後は、さらに当該混合粉を940〜990℃の温度で、5〜60分間アニールし、本発明に係るフェライト粉末を得る。
【0048】
3.)本発明に係るフェライト粉末が充填されたコンパウンド
本発明者らは、当初の目的であるフェライト系ボンド磁石において高磁力化を達成するには、フェライト粉末と樹脂との混合物であるコンパウンドにおけるMFRの値が重要であることに想到した。
これは、コンパウンドにおけるフェライト粉末のF.C.を高めると、当該コンパウンドのMFRが低下し、磁石を製造する際の成形性が悪化する場合がある、という課題を本発明者らが知見したことによる。
そして、当該フェライト粉末と、ナイロン樹脂とを混合し混錬して得られた、例えばF.C.92.7質量%という高充填率のコンパウンドにおいて、40g/10min以上という高いMFR値が得られることを知見した。
【0049】
以下、コンパウンドの製造工程について説明する。
フェライト粉末と、カップリング剤、滑剤、樹脂を所定量秤量し、ミキサー等に装填し混合し混合物を得る。
このとき、フェライト粉末は所望のF.C.値となる量を秤量する。カップリング剤は、例えばシランカップリング剤を好ましく使用出来、0.5〜1.0質量%程度を秤量する。滑剤は、例えば、VPN―212P(ヘンケル製)を好ましく使用出来、0.5〜1.0質量%程度を秤量する。樹脂としては、例えば、ナイロン−6等を好ましく使用出来る。
【0050】
得られた混合物を加熱して樹脂を加熱溶融させ、当該混合物を混練してコンパウンドを得る。当該コンパウンドは、所定サイズの混練ペレット化するのが便宜である。
【0051】
4.)本発明に係るコンパウンドが成形されたボンド磁石
上述した本発明に係るコンパウンドを成形することで、容易に本発明に係るフェライト粉末が高充填された成形品を得ることが出来た。
この結果、BHmaxが2.4MGOe以上の値を示す高磁力のボンド磁石を、容易に製造できることを知見した。
また、フェライト粉末とナイロン樹脂粉末とを混錬して、当該フェライト粉末の含有率が92.7質量%であるコンパウンドとし、当該コンパウンドを成形してボンド磁石としたとき、当該ボンド磁石のiHcは2,200Oe以上3,000Oe未満を示し、フェライト粉末が高充填された成形品においても、高いiHcが得られることを知見した。
【0052】
以下、ボンド磁石の製造工程について説明する。
所定サイズの混練ペレットを射出成形機に装填し、磁場を付与しながら、所定温度、成形圧力に下で、所望サイズの成形品を射出成型することにより、本発明に係るボンド磁石を得る。
【0053】
本発明では、微粒粉の製造時における焼成温度を低くし、且つ乾式粉砕を強化したことに製法上の特徴がある。微粒粉の製造時において焼成温度を低くしたことにより、得られる磁性粉末の保磁力を高めることが出来た。また、乾式粉砕を強化したことで微粒粉の形状を均一化することが実現出来、その結果ボンド磁石作成時のコンパウンド流動性や配向性を高めることが出来た。以上の結果、高いBHmaxと高いMFRとの両立が可能となった。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
1.)実施例1に係るフェライト粉末の製造
(1)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第1の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄5.87:炭酸ストロンチウム1になるように秤量した。当該秤量物に対して、0.17質量%のホウ酸、および2.36質量%の塩化カリウムを加えて混合後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒し第1の造粒物を得た。
【0055】
(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程
当該造粒物をロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、1240℃で20分間焼成し、焼成物を得た。焼成物のカサ密度1.6g/cmであり、粒子間の焼結がほとんど進んでいないことを確認した。
【0056】
当該焼成物をローラーミルで処理することで、焼成物の粗粉を得た。
【0057】
(3)酸化鉄を含む、複数のフェライト原料を造粒し、第2の造粒物を得る工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1になるように秤量および混合した後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒し第2の造粒物を得た。
【0058】
(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程
当該第2の造粒物を、ロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、970℃で20分間焼成し、焼成物を得た。当該焼成物をローラーミルで処理することで焼成物の微粉を得た。
【0059】
(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程
上記で得られた粗粉(70重量部)、得られた微粉(30重量部)、および水道水(150重量部)とを秤量し、攪拌翼を有する容器に投入して20分間攪拌混合し、粗粉および微粉の粒子が分散したスラリーを得た。そして、当該スラリーをろ過、乾燥(大気中150℃で10時間)させて乾燥ケーキを得た。当該乾燥ケーキを解砕処理することで混合粉を得た。
【0060】
(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、さらにアニールする工程
得られた混合粉を、振動ボールミル(村上精機製:Uras Vibrator KEC−8−YH)で粉砕処理した。粉砕処理条件としては、媒体に径12mmのスチール製ボールを用い、回転数1800rpm、振幅8mmの条件で28分間実施した。当該粉砕処理した混合粉を大気中950℃にて30分間アニール(焼鈍)して、実施例1に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0061】
得られた実施例1に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Aに、積算粒径分布曲線を図2Aに、夫々実線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。
尚、本発明において、粒径分布曲線とは、粒径分布測定装置を用いて得られた頻度分布曲線の事を指す。
また、本発明に係る実施例・比較例において、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。即ち、ピークの裾部分においてショルダー(肩)が存在する場合は、当該ショルダーを別のピークとして考える。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径(ピーク粒径(1)、ピーク粒径(2))、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、p−iHcの値を表2に記載する。尚、表2には、圧粉体の残留磁束密度(p−Br)、フェライト粉末の飽和磁化(σs)、フェライト粉末の保磁力(Hc)の値も記載した。
そして、表2の値より、実施例1に係るフェライト粉末は、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0062】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
実施例1に係るフェライト粉末91.7重量部,シランカップリング剤0.8重量部,滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)6.7重量部を秤量し、ミキサーに装填して混合し、混合物を得た。得られた混合物を230℃で混練して、コンパウンドの破砕物である平均径2mmの混練ペレット(1)を得た。当該ペレットにおける(フェライト粉末/ナイロン−6)の質量比は13.7となった。
このとき混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0063】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例1に係るフェライト粉末92.7重量部,シランカップリング剤0.8重量部,滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)5.7重量部を秤量し、ミキサーに装填して混合し、混合物を得た。得られた混合物を、230℃で混練して平均径2mmの実施例1に係る混練ペレット(2)を得た。当該ペレットにおける(フェライト粉末/ナイロン−6)の質量比は16.3となった。
このとき実施例1に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0064】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
得られた混練ペレット(1)を射出成形機(住友重機製)へ装填し、4.3kOeの磁場中において、温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向)の実施例1に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc(inj−iHc)、BHmaxの値を表3に記載する。
【0065】
(2)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例1に係る混練ペレット(2)を使用した以外は同様の操作を行って、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石
(2)のBr、iHc(inj−iHc)、BHmaxの値を表3に記載する。
【0066】
(3)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例1に係る混練ペレット(2)を使用し、射出成型時の磁場を12kOeとした以外は、同様の操作を行って、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例1に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc(inj−iHc)、BHmaxの値を表3に記載する。
【0067】
4.)測定方法
実施例1において製造したフェライト粉末、ペレット、ボンド磁石に係る各種特性の測定方法について説明する。以下、実施例2〜7、比較例1〜5も同様である。
【0068】
<粒径分布>
フェライト粉末の粒径分布は、乾式レーザー回折式粒径分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用い、focallength=20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarの条件にて、体積基準での粒径分布を測定することが出来る。
【0069】
また、粒径分布曲線における極大値近傍の3計測点に対して二次関数で近似し、その二次関数の極大値となる粒径をピーク粒径とした。
【0070】
<比表面積(SSA)>
フェライト粉末のSSAは、BET法に基づいて、ユアサアイオニクス株式会社製のモノソーブを用いて測定した。
【0071】
<圧縮密度(CD)>
フェライト粉末のCDは、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉末10gを充填した後、1ton/cmの圧力で圧縮した。このときのフェライト粉末の密度をCDとして測定した。
【0072】
<圧粉体の保磁力(p−iHc)>
フェライト粉末のp−iHcは、次の手順により測定した。
(1)フェライト粉末8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製P−レジン)0.4ccを乳鉢中で混練する。
(2)混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2ton/cmの圧力で40秒間圧縮した。
(3)成型品を金型より抜取り、150℃で30分間乾燥した後、BHトレーサー(東英工業製TRF−5BH)により測定磁場10kOeで測定した。
【0073】
<磁気特性>
フェライト粉末の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSMP−7−15)を用い、フェライト粉末20mgとパラフィン30mgを装置付属のセルに充填し、80℃に過熱してパラフィンを解かした後、室温に冷却することでサンプル粒子をランダムに固定化し、測定磁場10kOeにて測定し、σs(emu/g)、iHc(Oe)を算出した。なお、1Oeは1/4π×10[A/m]である。
【0074】
<流動性(MFR)>
混練ペレットのMFRは、メルトフローインデクサー((株)東洋精機製作所製メルトフローインデクサーC−5059D2(JISK−7210準拠))に供し、270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、これを10分間あたりの押し出し量に換算することで、MFR(単位g/10min)とした。
【0075】
尚、本明細書において、MFRとは、以下の(1)乃至(3)の手順で測定した値であるとする。
(1)被測定磁性粉末91.7重量部、シランカップリング剤0.8重量部、滑剤0.8重量部およびナイロン−6(粉末状)6.7重量部をミキサーにてかき混ぜる。
(2)得られた混合物を230℃で混練して、コンパウンドの破砕物である平均径2mmのペレットにする。
(3)前記(2)で得られたペレットをメルトフローインデクサーに供し、270℃荷重10kgで、10分間に押し出された重量を測定し、これをMFR(単位g/10min)とする。
【0076】
<成形品の磁気特性>
成形品の磁気特性は、次の手順により評価した。
(1)混練ペレットを、射出成形機(住友重機製)を用い4.3kOeの磁場中にて、温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状の成形品(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向)を得た。
(2)円柱状の成形品の磁気特性を、BHトレーサー(東英工業製TRF−5BH)にて測定磁場10kOeで測定した。
【0077】
(実施例2)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とし、アニール温度を980℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例2に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0078】
得られた実施例2に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Aに、積算粒径分布曲線を図2Aに、夫々短破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。尚、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0079】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
実施例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、実施例2に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき実施例2に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0080】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例2に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例2に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0081】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0082】
(2)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0083】
(3)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例2に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0084】
(実施例3)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(65重量部)、微粉(35重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とし、アニール温度を980℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例3に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0085】
得られた実施例3に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Aに、積算粒径分布曲線を図2Aに、夫々長破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。尚、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0086】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例3に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例3に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0087】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0088】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例2に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0089】
(実施例4)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した第1の焼成温度を1220℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とし、アニール温度を980℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例4に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0090】
得られた実施例4に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Aに、積算粒径分布曲線を図2Aに、夫々2点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。尚、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0091】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例4に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例2に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例4に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0092】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例4に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0093】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例4に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例4に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0094】
(実施例5)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を940℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とし、アニール温度を980℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例5に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0095】
得られた実施例5に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Bに、積算粒径分布曲線を図2Bに、夫々短破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。尚、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0096】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例5に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例5に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例5に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0097】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例5に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0098】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例5に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例5に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0099】
(実施例6)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(73重量部)、微粉(27重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とし、アニール温度を980℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例6に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0100】
得られた実施例6に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Bに、積算粒径分布曲線を図2Bに、夫々破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0101】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例6に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例6に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例6に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0102】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例6に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0103】
(3)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例6に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例6に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0104】
(実施例7)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を21分間とした以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例7に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0105】
得られた実施例7に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Bに、積算粒径分布曲線を図2Bに、夫々長破線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。尚、ピークとは、ピークの極大値が完全に独立峰となっていなくても良い。
当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。当該値より、平均粒径、SSA、CD、p−iHcの値を確保していることが確認できた。
【0106】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.92.7質量%のペレットの製造
実施例7に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、実施例7に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき実施例7に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0107】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
実施例7に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例7に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、実施例7に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0108】
(2)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
実施例7に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例7に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、実施例7に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0109】
(比較例1)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1235℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を1070℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を910℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例1に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0110】
得られた比較例1に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Cに、積算粒径分布曲線を図2Cに、夫々1点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。
【0111】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
比較例1に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例1に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例1に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0112】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例1に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例1に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき比較例1に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0113】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例1に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例1に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0114】
(2)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例1に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、比較例1に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0115】
(比較例2)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1235℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を1070℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した、得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を940℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例2に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0116】
得られた比較例2に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Cに、積算粒径分布曲線を図2Cに、夫々2点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。
【0117】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
比較例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例2に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例2に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0118】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例2に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例2に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき比較例2に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0119】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例2に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例2に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0120】
(2)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例2に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、比較例2に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0121】
(比較例3)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1280℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を1070℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を965℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例3に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0122】
得られた比較例3に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Cに、積算粒径分布曲線を図2Cに、夫々長1点鎖線で示すが、粒径分布曲線が2山のピークを持っていることが確認できた。また当該フェライト粉末の平均粒径、2山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。
【0123】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
比較例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例3に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例3に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0124】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例3に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例3に係る混練ペレット(2)を得た。
このとき比較例3に係る混練ペレット(2)のMFRの値を表3に記載する。
【0125】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例3に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例3に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石
(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0126】
(2)F.C.92.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)を得た。
このとき、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(2)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0127】
(3)F.C.92.7質量%・12kOe配向のボンド磁石の製造
比較例3に係る混練ペレット(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)を得た。
このとき、比較例3に係る(F.C.92.7質量%・12kOe配向)ボンド磁石(3)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0128】
(比較例4)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1210℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を1030℃とし、「(5)得られた粗粉と微粉とを混合する工程」にて説明した粗粉と微粉との混合比率を、粗粉(90重量部)、微粉(10重量部)とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を960℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例4に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0129】
得られた比較例4に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Cに、積算粒径分布曲線を図2Cに、夫々長2点鎖線で示すが、粒径分布曲線が1山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、1山のピーク粒径、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、SSA、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。
【0130】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
比較例4に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例4に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例4に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0131】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例4に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例4に係る混練ペレット(2)を得ようとしたが、混練不可であった。
【0132】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例4に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例4に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0133】
(比較例5)
1.)混合粉(フェライト粉末)の製造
実施例1の「(2)得られた第1の造粒物を第1の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得る工程」にて説明した粗粉の焼成温度を1210℃とし、「(4)得られた第2の造粒物を、前記第1の温度より低温である第2の温度で焼成して、焼成物の微粉を得る工程」にて説明したロータリーキルン中において、大気の流通雰囲気下における焼成温度を1100℃とし、「(6)粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を加え、アニールする工程」にて説明した得られた混合粉への振動ボールミルによる粉砕処理時間を14分間とし、アニール温度を960℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例5に係るフェライト粉末を得た。
上述した製造条件を表1に記載する。
【0134】
得られた比較例5に係るフェライト粉末の粒径分布曲線を図1Cに、積算粒径分布曲線を図2Cに、夫々短1点鎖線で示すが、粒径分布曲線が1山のピークを持っていることが確認できた。当該フェライト粉末の平均粒径、1山のピーク粒径SSA、積算粒径分布曲線における粒径0.62μmでの積算分布値、積算粒径分布曲線における粒径0.74μmの点での積算分布値、頻度分布曲線における粒径0.40μm、0.48μmのときの頻度分布、CD、σs、Hc、p−iHcの値を表2に記載する。
【0135】
2.)コンパウンドの製造
(1)F.C.91.7質量%のペレットの製造
比較例5に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(1)と同様の操作を行って、比較例5に係る混練ペレット(1)を得た。
このとき比較例5に係る混練ペレット(1)のMFRの値を表3に記載する。
【0136】
(2)F.C.92.7質量%のペレットの製造
比較例5に係るフェライト粉末を用いた以外は、実施例1に係る混練ペレット(2)と同様の操作を行って、比較例5に係る混練ペレット(2)を得ようとしたが、混練不可であった。
【0137】
3.)コンパウンドの成形およびボンド磁石の製造
(1)F.C.91.7質量%・4.3kOe配向のボンド磁石の製造
比較例5に係る混練ペレット(1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例5に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)を得た。
このとき、比較例5に係る(F.C.91.7質量%・4.3kOe配向)ボンド磁石(1)のBr、iHc、BHmaxの値を表3に記載する。
【0138】
(まとめ)
フェライト粉の焼成温度を制御して焼成物の粗粉や微粉の粒径を小さくし、かつ、粗粉と微粉との混合粉へ機械的粉砕力を長時間加えて分散性を高めた実施例1〜7に係るボンド磁石用フェライト粉末は、2.10〜2.64m/gのSSA、3.53〜3.64g/cmのCD、2810〜3140Oeのp−iHcを有していた。
この結果、実施例1〜7に係るボンド磁石用フェライト粉末と樹脂との混合物を混錬した場合、F.C.91.7質量%において、MFRは102〜146g/10minとなり、BHmaxが2.43〜2.50MGOeを示すフェライト系ボンド磁石を容易に製造することが出来た。また、F.C.92.7質量%において、MFRは42.5〜85.8g/10minとなり、BHmaxが2.29〜2.54MGOeを有するフェライト系ボンド磁石を容易に製造することが出来た。
【0139】
【表1】
【表2】
【表3】
図1
図2