特許第6482534号(P6482534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

特許6482534フライ食品用衣材、これを用いた食品およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482534
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】フライ食品用衣材、これを用いた食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20190304BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20190304BHJP
【FI】
   A23L7/157
   A23L5/10 E
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-514748(P2016-514748)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2015053602
(87)【国際公開番号】WO2015162972
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-88318(P2014-88318)
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野上 弘文
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−303457(JP,A)
【文献】 特開平6−30713(JP,A)
【文献】 特開平4−8253(JP,A)
【文献】 特開平4−8255(JP,A)
【文献】 特開2011−103837(JP,A)
【文献】 特開2013−118819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/10
A23L 7/157
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する、フライ食品用衣材。
【請求項2】
前記酸処理アセチル化澱粉中のアセチル基含量が0.1質量%以上2.5質量%以下である、請求項1に記載のフライ食品用衣材。
【請求項3】
前記酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉中のヒドロキシプロピル基含量が0.1質量%以上7.0質量%以下である、請求項1または2に記載のフライ食品用衣材。
【請求項4】
前記酸処理アセチル化澱粉および/または前記酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の粘度が、無水物換算で40質量%の水懸濁液を40℃で1分間保持した後、6℃/分で95℃まで昇温し、95℃で10分間保持した際に、100cP以上3500cP以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載のフライ食品用衣材。
【請求項5】
前記酸処理アセチル化澱粉または前記酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の原料澱粉が、タピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉、馬鈴薯澱粉、コーン澱粉からなる群から選択される一種以上である、請求項1乃至4いずれか一項に記載のフライ食品用衣材。
【請求項6】
当該フライ食品用衣材の全体に対する前記酸処理アセチル化澱粉および前記酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量が、合計で3質量%以上90質量%以下である、請求項1乃至5いずれか一項に記載のフライ食品用衣材。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のフライ食品用衣材を含む、バッター。
【請求項8】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のフライ食品用衣材を含む、フライ食品。
【請求項9】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のフライ食品用衣材を加熱調理する工程を含む、フライ食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ食品用衣材、これを用いた食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらや唐揚げなどフライ食品の衣材としては、グルテンの少ない小麦粉や片栗粉を主体として用いられてきたが、揚げたての好ましいサクミを長時間維持することは難しかった。
【0003】
これらの点を解決するために、衣材に酸処理澱粉やアセチル化澱粉を用いることが提案されている。
【0004】
しかし、上述した加工澱粉を衣材として用いた場合でも、サクミの長時間の維持においては、改善の余地があった。
【0005】
ここで、澱粉を用いた衣材の食感改良技術として特許文献1〜5に記載のものがある。
特許文献1(特開平4−8253号公報)には、焙焼デキストリン、酸化澱粉、低粘性酸処理澱粉、エーテル化澱粉またはエステル化澱粉と膨剤とを含む天ぷらに関する技術が記載されている。
特許文献2(特開平6−30713号公報)には、次亜塩素酸処理加工澱粉、焙焼デキストリン、酸化澱粉、低粘性酸処理澱粉、エーテル化澱粉またはエステル化澱粉を含む衣材を用いた乾燥天ぷらに関する技術が記載されている。
特許文献3(特開平7−303457号公報)には、酸処理澱粉、湿熱処理澱粉または架橋処理済みα化澱粉を配合した揚げ物衣用ミックスに関する技術が記載されている。
特許文献4(特開平8−131109号公報)には、酸化澱粉およびワキシー澱粉を含有する揚げ物用衣組成物に関する技術が記載されている。
特許文献5(特開2011−254785号公報)には、特定の酸化澱粉および膨潤抑制澱粉を含有する揚げ物用衣材に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−8253号公報
【特許文献2】特開平6−30713号公報
【特許文献3】特開平7−303457号公報
【特許文献4】特開平8−131109号公報
【特許文献5】特開2011−254785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜5に記載の技術においては、食感のバランスの良さと食感の維持の面でなお、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する、フライ食品用衣材が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記本発明におけるフライ食品用衣材を含む、バッターが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記本発明におけるフライ食品用衣材を含む、フライ食品が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明におけるフライ食品用衣材を加熱調理する工程を含む、フライ食品の製造方法が提供される。
【0011】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する組成物の、フライ食品用衣材としての使用が提供される。
また、本発明によれば、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する組成物を準備する工程と、
前記組成物を用いてフライ食品用衣材を調製する工程と、
前記フライ食品用衣材を加熱調理する工程と、
を含む、フライ食品の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明におけるフライ食品用衣材で種物を被覆する工程と、前記フライ食品用衣材で被覆された前記種物を加熱処理する工程と、を含む、フライ食品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食感のバランスの良さと食感の維持に優れたフライ食品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本実施形態における衣材について詳細に説明する。
本実施形態における衣材は、フライ食品に用いられ、特定のエステル化またはエーテル化と酸処理とがなされた澱粉を含む。すなわち、本実施形態におけるフライ食品用衣材は澱粉を含むものであり、かかる澱粉として、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する。
【0014】
また、本実施形態におけるフライ食品は、フライ食品用衣材を含むものであり、種物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
たとえば、フライ食品には、揚げ玉のように種物を含まず、衣材のみを単独で調理した食品も含まれる。
また、フライ食品が種物を含むとき、本実施形態におけるフライ食品用衣材とは、たとえば、食品中の種物を被覆する衣の材料、すなわち食品用被覆材として用いられ、さらに具体的には種物の表面に付着させる材料として用いられる。
フライ食品が種物を含むとき、フライ食品用衣材は、種物の一部を被覆していてもよいし、種物全体を被覆していてもよい。また、フライ食品用衣材は、種物の一部に付着していてもよいし、種物全体に付着していてもよい。
【0015】
本実施形態におけるフライ食品の種物として、たとえばエビ等の海産物;鶏肉等の肉類;イモ類等の野菜類などが挙げられる。
フライ食品の調理形態の具体例としては、種物に衣材を被覆した後、100℃〜200℃程度の食用油中で油ちょうされた食品、薄く油をひいたフライパンや鉄板上で加熱された食品が挙げられる。また、本実施形態のフライ食品の製造方法は、たとえばフライ食品用衣材を加熱調理する工程を含む。
フライ食品として、たとえば天ぷら、から揚げ、竜田揚げなどが挙げられ、とんかつのようにパン粉やブレッダーをまぶしたものでもよい。また、本実施形態におけるフライ食品には、衣材で被覆をした後に、オーブン等で乾熱調理、マイクロ波加熱調理または過熱水蒸気調理されたフライ様食品も含まれる。フライ様食品では、油脂を含む衣材で種物の被覆をすることや衣材に油脂をまぶすことがさらに好ましい。
【0016】
以下、本実施形態における衣材に用いられる酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉について、さらに説明する。
【0017】
酸処理アセチル化澱粉は、酸処理およびアセチル化がなされた澱粉である。
本実施形態における酸処理アセチル化澱粉としては、酸処理澱粉をアセチル化したもの、およびアセチル化澱粉を酸処理したもの、のいずれも使用できる。アセチル化澱粉を酸処理した場合、酸処理中にアセチル基が一部脱離する場合があるため、反応効率などを考慮すると、酸処理をした後、アセチル化して得られる酸処理アセチル化澱粉を用いることが好ましい。
【0018】
酸処理アセチル化澱粉中のアセチル基含量の下限値は、食感の改良効果をさらに安定的に得る観点から、たとえば0.1質量%以上であり、0.3質量%以上とすることが好ましく、0.8質量%以上とすることがより好ましい。また、酸処理アセチル化澱粉のアセチル基含量の上限値は、反応の効率性を考慮するとたとえば2.5質量%以下であることが好ましい。なお、酸処理アセチル化澱粉のアセチル基含量の測定方法は実施例の項で後述する。
【0019】
また、酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉は、酸処理およびヒドロキシプロピル化がなされた澱粉である。
ヒドロキシプロピル化澱粉のヒドロキシプロピル基は酸処理に対する安定性が高いため、本実施形態における酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉については、酸処理澱粉をヒドロキシプロピル化したもの、およびヒドロキシプロピル化澱粉を酸処理したもの、のいずれも使用できる。
【0020】
酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉中のヒドロキシプロピル基含量の下限値は、食感の改良効果をさらに安定的に得る観点から、たとえば0.1質量%以上であり、0.2質量%以上とすることが好ましい。また、酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のヒドロキシプロピル基含量の上限値は、反応の効率性の観点からたとえば7.0質量%以下であり、5.0質量%以下であることが好ましい。なお、酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のヒドロキシプロピル基含量の測定方法は実施例の項で後述する。
【0021】
ここで、アセチル化澱粉(酢酸澱粉)とは、エステル化澱粉の一種であり、澱粉の酢酸ビニル処理等により得られる。たとえば、アセチル化澱粉は、澱粉に水を添加し、20〜45質量%程度の澱粉スラリーを調製した後、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を澱粉スラリーに添加して、pHをアルカリ性に調整した後、酢酸ビニルや無水酢酸を添加した後、10〜120分間、pH8〜10で反応させる。その後、中和、洗浄して得られる。
【0022】
ヒドロキシプロピル化澱粉とは、エーテル化澱粉の一種であり、澱粉のプロピレンオキサイド処理等により得られる。たとえば、ヒドロキシプロピル化澱粉は、澱粉に水を添加し、20〜45質量%程度の澱粉スラリーを調製した後、水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を澱粉スラリーに添加して、pHをアルカリ性に調製した後、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを添加し、さらにプロピレンオキサイドを添加した後、12〜24時間、pH10〜12で反応させる。その後、中和、洗浄して得られる。
【0023】
また、酸処理澱粉は、原料澱粉または加工澱粉を塩酸や硫酸など酸性水溶液に浸漬して、糊化開始温度以下で数時間〜数日間放置し、次いで、中和、水洗、ろ過、乾燥して得られる。水溶液に対する澱粉の割合の違いから、湿式酸処理澱粉および乾式の酸焙焼澱粉が存在するが、本実施形態ではそのいずれも使用できる。
【0024】
本実施形態においては、酸処理のみ、アセチル化処理のみ、ヒドロキシプロピル化処理のみを単独で施された澱粉を衣材中に配合しても、衣の食感改良効果および保存後の食感の維持効果は十分ではない。これに対し、酸処理とアセチル化処理の両方または酸処理とヒドロキシプロピル化処理の両方を施すことにより、衣の食感を改良し維持する効果を相乗的に高めることができる。
【0025】
本実施形態において、酸処理アセチル化澱粉と酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のいずれも使用可能であるが、製造の容易さの面からは、酸処理アセチル化澱粉を用いることがより好ましい。
【0026】
また、本実施形態において、衣材の必須成分として用いる澱粉としては、酸処理アセチル化澱粉と酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のいずれか一方で効果が得られるが、両者を併用することも可能である。
【0027】
また、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉はアルファ化など物理的処理を施されたものでもよく、この際、各種澱粉やデキストリン等の他原料と混合された後、物理的処理を施されたものでもよい。
【0028】
次に、酸処理アセチル化澱粉および/または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の粘度について説明する。
まず、酸処理澱粉の酸処理程度は粘度にて示すのが一般的であり、RVA(ラピッド・ビスコ・アナライザー)による測定が簡便である。
そして、本実施形態において、酸処理アセチル化澱粉および/または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のRVAによる粘度の上限値は、食感の改良効果をより安定的に得る観点からは、酸処理アセチル化澱粉または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の無水物換算で40質量%の水懸濁液を40℃で1分間保持した後、6℃/分で95℃まで昇温し、95℃で10分間保持した際の粘度が、3500cP以下であることが好ましく、より長時間食感を維持させる観点から、3000cP以下であることがより好ましく、1000cP以下であることがさらに好ましい。
また、酸処理アセチル化澱粉および/または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉のRVAによる粘度の下限値は、食感の改良効果および反応の効率性を加味すると、上記測定条件においてたとえば100cP以上であり、150cP以上であることが好ましく、200cP以上であることがより好ましい。なお、RVAによる粘度のさらに具体的な測定方法は実施例の項で後述する。
また、本実施形態において、酸処理アセチル化澱粉または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の粘度が上記範囲にあることが好ましい。さらに具体的には、フライ食品用衣材が酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉から選ばれる二種以上の澱粉を含むとき、一種以上の当該澱粉の粘度が上記範囲にあることが好ましく、二種以上の当該澱粉の粘度が上記範囲にあることがさらに好ましく、フライ食品用衣材中に含まれる全種類の当該澱粉の粘度がいずれも上記範囲にあることがよりいっそう好ましい。
【0029】
次に、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の原料として用いる澱粉について説明する。
フライ食品用衣材中の酸処理アセチル化澱粉または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の原料として、たとえば、ワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉およびサゴ澱粉からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。原料の入手容易性の観点から、フライ食品用衣材中の酸処理アセチル化澱粉または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の原料澱粉が、タピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉、馬鈴薯澱粉およびコーン澱粉からなる群から選択される一種以上であることが好ましく、フライ後の食感の維持の点で、タピオカ澱粉およびワキシーコーン澱粉からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。これらの原料は、本願発明の効果が発揮される範囲で、化学的、物理的または酵素的に加工してもよい。
また、フライ食品用衣材が酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉を含むとき、フライ食品用衣材中の酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の少なくとも一方の原料が上記群から選択される一種または二種以上であることが好ましく、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の原料がいずれも上記群から選択される一種または二種以上であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態におけるフライ食品用衣材は、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上から構成されていてもよいし、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上と他の成分とを含む組成物であってもよい。さらに具体的には、フライ食品用衣材には、小麦粉や米粉等の穀粉および酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉以外の各種澱粉やデキストリンの他、食塩や砂糖等の調味料、粉末油脂や固形脂等の食用油脂、乾燥全卵、乾燥卵白、増粘多糖類、乳化剤や膨張剤等の各種改良剤、その他の通常のフライ食品用衣材に用いられる材料を使用することができる。本実施形態におけるフライ食品用衣材には、さらに、リン酸架橋澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の合計量100質量部に対し、リン酸架橋澱粉および酸処理澱粉の合計量が50質量部以上500質量部以下であることがより好ましく、80質量部以上400質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
フライ食品用衣材の全体に対する酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、食感の好ましさの観点から、たとえば合計で3質量%以上であり、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、18質量%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
また、フライ食品用衣材の全体に対する酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、合計で100質量%以下である。食感の好ましさの観点から、フライ食品用衣材の全体に対する酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、合計で90質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましい。
【0033】
本実施形態において、フライ食品用衣材の具体的な形態として粉体等の固形状のものが挙げられる。また、本実施形態のフライ食品用衣材に水;卵液等の液状の食材;醤油等の液体調味料等の液体成分を配合してバッターとして用いることもでき、バッターには食用油脂、乳化剤等を加えてもよい。前記液体成分は、衣材100質量部に対して90質量部以上450質量部以下加えることが好ましい。
また、本実施形態におけるバッターは、本実施形態におけるフライ食品用衣材を含む。
【0034】
本実施形態においては、酸処理アセチル化澱粉または酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉をフライ食品用衣材に用いることにより、フライ食品における食感のバランスの良さと保存後の食感の維持を向上させることができる。たとえば、本実施形態によれば、フライ食品の衣の硬さとサクミのバランスを向上させるとともに、保存による硬さやサクミの劣化を抑制することができる。また、本実施形態によれば、揚げ直後の、硬さ、サクミ、ドライ感、口溶けといった食感をバランスよく向上し、さらに長時間経過後も硬さ、サクミ、ドライ感、口溶けに優れ、ヘタリの少ないフライ食品製品を得ることも可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、たとえば得られたフライ食品を冷凍・解凍した場合、もしくはマイクロ波加熱した場合も、硬さ、サクミ、ドライ感、口溶けに優れた良好な食感を維持することも可能となる。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0037】
また、実施例に使用した酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉は、それぞれ以下の試験例により得られたものを用いた。なお、試験例の説明において、特に断りの無い場合、「部」とは「質量部」である。
【0038】
(RVAによる粘度の測定方法)
(1)澱粉試料を、水分計(研精工業社製、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から無水物質量を算出した。
(2)専用のアルミニウム容器中で澱粉試料と水とを混合し、スラリーを調製した。この際、水20gに対し、スラリー中の澱粉試料が無水物換算で40質量%となるように澱粉試料を混合した。専用のパドルを入れ、RVA(ニューポート サイエンティフィック社製;型番RVA4)にセットし、160rpmにて撹拌しながら40℃で1分間撹拌した後、40℃から95℃まで6℃/分の昇温速度で加熱し、その後95℃で10分間維持した時点の粘度を読み取り、試料の粘度とした。
【0039】
(アセチル基含量の定量方法)
(1)澱粉試料を水分計(研精工業社製、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から無水物質量を算出した。
(2)無水物換算で5gの澱粉試料に水50mLおよび数滴の1.0w/v%フェノールフタレインエタノール溶液を加えた。
(3)0.1N水酸化ナトリウム水溶液を液が赤色になるまで加えた後、0.45N水酸化ナトリウム水溶液25mLを加え、室温で30分間激しく撹拌した。
(4)0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値A(mL)を求めた。
(5)ブランクとして25mLの0.45N水酸化ナトリウム水溶液を同様に0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値B(mL)を求めた。
(6)アセチル基含量(質量%:以下単に「%」ともいう。)は次式より算定した。
アセチル基含量(質量%)=[(滴定値B−滴定値A)×塩酸規定度×0.043×100]÷試料無水物換算質量(g)
【0040】
(ヒドロキシプロピル基含量の定量方法)
(1)澱粉試料を水分計(研精工業社製、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から無水物質量を算出した。
(2)無水物換算で0.1gの澱粉試料に1N硫酸水溶液25mLを加えて、湯浴中で澱粉を溶解した。冷却後、蒸留水で100mLに定容し試料液とした。ヒドロキシプロピル基含量が高い場合は、必要に応じて試料液を希釈した。
(3)試料液1mLを試験管に量り、冷水で冷却しながら濃硫酸8mLを滴下した。
(4)十分に撹拌した後、湯浴中で3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却した。
(5)ニンヒドリン1.5gを5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に溶解し、50mLに定容した試薬0.6mLを加え、25℃水浴中で100分間反応させた。
(6)濃硫酸で全量を25mLとしたものを検液とし、5分後に590nmの吸光度を測定した。
(7)ブランクとして、同じ植物源の未加工澱粉を試料と同様の操作をおこない、吸光度を測定した。
(8)標準液として、プロピレングリコールの10、20、30、40、50μg/mL水溶液を試料液と同様の操作をおこなって吸光度を測定し、標準液の吸光度から検量線を作成した。
(9)検量線から検液中のプロピレングリコール濃度を求めた。
(10)ヒドロキシプロピル基含量(質量%:以下単に「%」ともいう。)は次式より算定した。
ヒドロキシプロピル基含量(質量%)
=(検液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)×0.7763×希釈率)/試料無水物換算質量(g)×100
【0041】
(試験例1)アセチル基含量を変えた酸処理アセチル化タピオカ澱粉の製造
タピオカ澱粉(水分13%)200部に水300部を加えて懸濁液とした。これに19%塩酸水溶液34部(無水物換算澱粉質量に対する塩酸濃度;3.72%)を攪拌しながら加えて、40℃で24時間反応させた。反応後、澱粉を洗浄、ろ過により回収した後、乾燥し酸処理タピオカ澱粉を得た。この酸処理タピオカ澱粉200部に水275部を加えて懸濁液とした。3%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.4とした後、酢酸ビニルモノマーを3〜12部の範囲で加えて1時間反応させた。反応中の懸濁液のpHは、pHコントローラーにより8.4に維持した。反応後、3%塩酸水溶液でpH6に中和した。澱粉を洗浄、ろ過により回収した後、乾燥し酸処理アセチル化タピオカ澱粉AA−1〜AA−3を得た(表1)。
【0042】
【表1】
【0043】
(試験例2)酸処理程度を変えた酸処理アセチル化タピオカ澱粉の製造
タピオカ澱粉(水分13%)200部に水300部を加えて懸濁液とした。これに19%塩酸水溶液34部(無水物換算澱粉質量に対する塩酸濃度;3.72%)を攪拌しながら加えて、40℃で6時間および48時間反応させた。反応後、澱粉を洗浄、ろ過により回収した後、乾燥し酸処理程度を変えたタピオカ澱粉を得た。これらの酸処理タピオカ澱粉200部に水275部を加えて懸濁液とした。3%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.4とした後、酢酸ビニルモノマーを9部加えて1時間反応させた。反応中の懸濁液のpHは、pHコントローラーにより8.4に維持した。反応後、3%塩酸水溶液でpH6に中和した。澱粉を洗浄、ろ過により回収した後、乾燥し酸処理アセチル化タピオカ澱粉AA−4およびAA−5を得た(表2)。
【0044】
【表2】
【0045】
(試験例3)
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉(株式会社J−オイルミルズ社製)を使用して、試験例1の方法に準じて酸処理をおこない、酸処理ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を得た(ヒドロキシプロピル基含量2.5%、粘度450cP)。
【0046】
(試験例4)酸処理アセチル化ワキシーコーン澱粉の製造
ワキシーコーン澱粉(株式会社J−オイルミルズ社製)を使用して、試験例1のAA−2の製造方法に準じて酸処理アセチル化ワキシーコーン澱粉を得た(アセチル基含量1.8%、粘度282cP)。
【0047】
(試験例5)酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉の製造
馬鈴薯澱粉(株式会社J−オイルミルズ社製)を使用して、試験例1のAA−2の製造方法に準じて酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉を得た(アセチル基含量1.8%、粘度1317cP)。
【0048】
(試験例6)酸処理アセチル化コーン澱粉の製造
コーン澱粉(株式会社J−オイルミルズ社製)を使用して、試験例1のAA−2の製造方法に準じて酸処理アセチル化コーン澱粉を得た(アセチル基含量1.8%、粘度1813cP)。
【0049】
(実施例1〜8、比較例1〜8)
表3に示す配合で澱粉試料、薄力粉および他の原材料を混合して衣材を調製した。澱粉試料として、試験例1または3〜6で得られた澱粉、未加工澱粉、あるいは各加工澱粉を用いた。なお、比較例1では、表3の澱粉試料20質量部にかえて薄力粉20質量部を用いた。また、比較例2〜8で使用した澱粉は、いずれも株式会社J−オイルミルズ社製のものである。
調製した衣材100質量部に対して冷水120質量部を加えてバッターを調製した。このバッターを用いてサツマイモを種として170℃の菜種油中にて6分間フライし、イモ天ぷらを得た。
【0050】
【表3】
【0051】
得られたイモ天ぷらのフライ1時間後(フライ直後)および4時間後の食感評価をおこなった。食感評価は、5名のパネルによりおこなった。「衣の硬さ」「衣のサクミ」「衣のドライ感」「衣の口溶け」および「総合評価」の項目について以下に示す5段階で評価をおこない、平均値を評価点とした。これらの評価点がすべて2.5点以上となる衣が、「衣の硬さ」「衣のサクミ」「衣のドライ感」「衣の口溶け」のバランスに優れた衣とした。
結果を表4に示す。
【0052】
(衣の硬さ)
5:とても硬い
4:硬い
3:少し硬い
2:あまり硬さを感じない
1:ほとんど硬さを感じられない
【0053】
(衣のサクミ)
5:サクサク感が強い
4:適度にサクサク感がある
3:少しサクサク感がある
2:サクサク感があまりなく、ひきがある
1:サクサク感がほとんどなく、ひきが強い
【0054】
(衣のドライ感)
5:カラッとしている
4:適度にカラッとしている
3:少しカラッとしている
2:少しベチャついている
1:ベチャついている
【0055】
(衣の口溶け)
5:とても良好
4:良好
3:やや良好
2:やや不良
1:不良
【0056】
(総合評価)
5:非常に好ましい食感
4:好ましい食感
3:やや好ましい食感
2:あまり好ましくない食感
1:好ましくない食感
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示すように、薄力粉のみを用いた比較例1ではフライ直後の時点でも衣の硬さやサクミ、ドライ感、口溶けが好ましくなく、フライ4時間後の評価ではさらに食感が悪くなった。
【0059】
また未加工のタピオカ澱粉やアセチル化またはヒドロキシプロピル化のみの加工を施した加工タピオカ澱粉を配合した比較例2〜4でも、同様に衣の硬さやサクミ、ドライ感が十分ではなかった。
酸処理澱粉、酸化アセチル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ならびに、酸化アセチル化澱粉およびリン架橋タピオカ澱粉を1:1で混合したものを用いた比較例5〜8では、フライ直後の食感が比較例1よりは改善されるものの十分とはいえなかった。また、4時間後には衣が硬い一方、サクミ、ドライ感、口溶けが悪いなど、食感のバランスが悪いため、ぼそぼそとして引きがある好ましくない食感になった。
【0060】
一方、酸処理アセチル化タピオカ澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を用いた実施例1および2では、フライ直後の衣の硬さ、サクミ、ドライ感および口溶けのバランスに優れ、4時間後も良好な食感を有していた。
澱粉種を変えた実施例3〜5や、酸処理澱粉またはリン酸架橋澱粉と併用した実施例6〜8においても、良好なサクミおよび食感のバランスを有しており、保存後の劣化も抑制されていた。また、酸処理澱粉またはリン酸架橋澱粉を併用することで、特にフライ4時間後の食感のバランスが向上することが判った。
【0061】
(実施例9〜13)
澱粉試料として試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2を用い、表3に示す配合において、澱粉試料および薄力粉について、澱粉試料を5〜80部、薄力粉を10〜85部と変更した。この他の原材料については実施例1の配合で混合して衣材を調製した。調製した衣材100質量部に対して冷水120質量部を加えてバッターを調製した。このバッターを用いてサツマイモを種として170℃の菜種油中にて6分間フライし、イモ天ぷらを得た。食感評価は、実施例1〜8に準じておこなった。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5より、実施例9〜13の割合で澱粉試料と薄力粉とを混合した場合においても、フライ直後および保存後の食感のバランスに優れていた。
【0064】
また、実施例1、11、12および比較例1のイモ天ぷらについて、フライ1時間後にチャック付のポリエチレン袋に入れて密封後、−20℃の冷凍庫で3週間冷凍保管した。室温で解凍した後、食感評価をおこなった(室温解凍)。また、同様に冷凍保管した後、イモ天ぷら3つをマイクロ波(出力500W)で2分間加熱して解凍し、食感評価をおこなった(マイクロ波解凍)。解凍後の評価結果を表4および5に示したフライ直後の評価結果とともに表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
表6に示すように、薄力粉のみを使用した比較例1では、冷凍後に室温で解凍すると硬さやサクミが無く、ドライ感の無いベチャっとした食感となった。また、マイクロ波加熱で解凍した場合にも、衣の硬さやドライ感に劣る歯応えの無い食感となった。一方、実施例1、11および12では、いずれも、室温で解凍しても硬さ、サクミ、ドライ感、口溶けのバランスに優れた良好な食感であった。また、マイクロ波加熱による解凍の後でも同様に良好な食感であった。
【0067】
(実施例14および15)
澱粉試料として試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−1〜AA−3を用い、表3に示す配合で澱粉試料と他の原材料とを混合して衣材を調製した。調製した衣材100質量部に対して冷水120質量部を加えてバッターを調製した。このバッターを用いてサツマイモを種として170℃の菜種油中にて6分間フライし、イモ天ぷらを得た。食感評価は、実施例1に準じておこなった。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
表7より、アセチル基含量を変更した実施例14および15においても良好な食感を示し、アセチル基含量1.8%以上で保存後の食感のバランスにさらに優れていた。
【0070】
(実施例16および17)
澱粉試料として試験例1および2で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2、4または5を用い、表3に示す配合で澱粉試料と他の原材料とを混合して衣材を調製した。調製した衣材100質量部に対して冷水120質量部を加えてバッターを調製した。このバッターを用いてサツマイモを種として170℃の菜種油中にて6分間フライし、イモ天ぷらを得た。食感評価は、実施例1に準じて実施した。結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
表8より、実施例1で用いた酸処理アセチル化澱粉とアセチル基含量が同じで粘度の異なる酸処理アセチル化澱粉を用いた実施例16および17においても、良好な食感を示した。
【0073】
(実施例18、比較例9)
表9に示す配合で、薄力粉と試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2と他の原材料とを混合して衣材を調製した。調製した衣材100質量部に対して冷水120質量部を加えてバッターを調製した。このバッターを用いて、調味料で下味をつけた鶏モモ肉(15g/個)を種として170℃の菜種油中にて3分間フライし、鶏唐揚げを得た(実施例18)。また、酸処理アセチル化澱粉AA−2の代わりに、薄力粉を使用したものを比較例9とした。これらの鶏唐揚げのフライ1時間後(フライ直後)、フライ4時間後、および、フライ4時間後に鶏唐揚げ3個を500Wのマイクロ波で1分間再加熱した後(マイクロ波再加熱)の食感評価をおこなった。食感評価は、フライ直後およびフライ4時間後について4名のパネルで官能評価をおこない、マイクロ波再加熱後について3名のパネルで官能評価をおこなった。評価項目については実施例1に準じた。結果を表10に示す。
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
表10に示す通り、薄力粉のみを用いた比較例9の唐揚げの衣は、フライ直後においても硬さ、サクミおよびドライ感に欠けた噛み応えの弱い衣であった。フライ4時間後にはさらにサクミやドライ感が低下しており、マイクロ波再加熱後も食感は優れなかった。一方、澱粉試料として酸処理アセチル化澱粉AA−2を用いた実施例18の唐揚げの衣は、フライ直後の硬さ、サクミ、ドライ感および口溶けに優れたバランスの良い食感の衣であった。さらに、フライ4時間後も良好であり、マイクロ波再加熱後であっても良好な食感を維持していた。
【0077】
(実施例19、比較例10)
調味料で下味をつけた鶏モモ肉(15g/個)に試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2と馬鈴薯澱粉とを1:1(質量比)で混合した衣材を打ち粉として付着させた。得られた鶏モモ肉を170℃の菜種油中にて3分間フライし、鶏の竜田揚げを得た(実施例19)。また、実施例19の衣材を馬鈴薯澱粉のみとした他は実施例19に準じた方法で作成した鶏の竜田揚げを比較例10とした。これらの鶏の竜田揚げのフライ1時間後(フライ直後)、フライ4時間後、および、フライ4時間後に鶏の竜田揚げ3個を500Wのマイクロ波で1分間再加熱した後(マイクロ波再加熱)の食感評価をおこなった。食感評価は、実施例18に準じて実施した。結果を表11に示す。
【0078】
【表11】
【0079】
実施例19の鶏の竜田揚げの衣は、硬さ、サクミ、ドライ感および口溶けに優れ、フライ4時間後およびマイクロ波再加熱後も良好な食感であった。
【0080】
(実施例20、比較例11)
鶏モモ肉(30g/個)300質量部に、表12に示す配合で、薄力粉と試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2により構成される衣材と他の原材料とを混合して調製したバッターをよく絡めた。その後、表面に薄く薄力粉をまぶし、スチームコンベクションオーブンで180℃、13分間過熱水蒸気にて加熱し、鶏唐揚げ様食品を得た(実施例20)。また、酸処理アセチル化澱粉AA−2の代わりに薄力粉を使用したものを比較例11とした。
【0081】
【表12】
【0082】
薄力粉のみを使用した比較例11の鶏唐揚げ様食品の衣は、硬いがひきが強くて口溶けが悪く、好ましくない食感であった。一方、実施例20の鶏唐揚げ様食品の衣は、硬さ、サクミ、ドライ感および口溶けの良い良好な食感であった。
【0083】
(実施例21、比較例12)
鶏モモ肉(30g/個)300質量部に、表13に示す配合で、薄力粉および試験例1で得られた酸処理アセチル化澱粉AA−2から構成される衣材と、他の原材料とを混合して調製したバッターをよく絡めた。その後、表面に薄く薄力粉をまぶして、マイクロ波(出力500W)で4分間加熱し、鶏唐揚げ様食品を得た(実施例21)。また、酸処理アセチル化澱粉AA−2の代わりに薄力粉を使用したものを比較例12とした。
【0084】
【表13】
【0085】
比較例12の鶏唐揚げ様食品の衣は軟らかく、べたついた好ましくない食感であった。一方、実施例21の鶏唐揚げ様食品の衣は、硬さ、サクミ、ドライ感および口溶けに優れていた。
【0086】
この出願は、2014年4月22日に出願された日本出願特願2014−088318号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。