特許第6482823号(P6482823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482823干渉計、干渉計を用いた分光光度計及び干渉計の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482823
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】干渉計、干渉計を用いた分光光度計及び干渉計の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/45 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   G01J3/45
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-227166(P2014-227166)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-90473(P2016-90473A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉健
【審査官】 平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−198864(JP,A)
【文献】 特開2003−088166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 − 3/51
G01N 21/00 − 21/01
G01N 21/17 − 21/61
G01B 9/02
G01B 11/00 − 11/30
H02P 7/02 − 7/025
H02P 25/032− 25/034
H02P 25/06 − 25/066
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ミラーと、前記移動ミラーを往復直線移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記移動ミラーの往復直線移動を等速となるようにする移動制御部と、前記移動ミラーの位置を測定する測定部とを具備したものであって、
前記移動制御部が、前記移動ミラーの目標位置を示す目標位置データを受け付けるとともに、その目標位置データの示す目標位置に、前記測定部が測定した移動ミラーの測定位置を近づけるべく前記移動機構を制御するものであり、
前記目標位置データが示す目標位置の時間変化波形が、三角波の頂点部分をカットした台形波状の波形をなすか、または、その台形波状の波形のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすように設定してあり、当該三角波のカットした頂点部分が、前記移動ミラーの往動と復動とが切り替わる部分であって、かつ前記移動ミラーの往復直線移動を等速とすべき所定等速区間を除く部分であることを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記移動制御部が、前記目標位置データを生成する目標位置データ生成部をさらに備え、
前記目標位置データ生成部が、三角波状の時間変化波形を有する原始目標位置に基づいて前記目標位置を算出し、その目標位置を示す目標位置データを出力することを特徴とする請求項1記載の干渉計。
【請求項3】
前記目標位置データ生成部が、前記原始目標位置を示す原始目標位置データを受け付け、前記原始目標位置データの示す三角波の頂点をカットすることにより時間変化波形が台形波状をなす中間目標位置を算出する前段リファレンスガバナ部と、前記中間目標位置の時間変化波形にローパスフィルタをかけ、そのコーナ部分を滑らかに変化させて前記目標位置データを算出する後段リファレンスガバナ部とを具備することを特徴とする請求項2記載の干渉計。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の干渉計を具備した分光光度計。
【請求項5】
移動ミラーと、前記移動ミラーを往復直線移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記移動ミラーの往復直線移動を等速となるようにする移動制御部と、前記移動ミラーの位置を測定する測定部とを具備する干渉計の制御プログラムであって、
前記移動ミラーの目標位置を示す目標位置データを受け付けて、その目標位置データの示す目標位置に、前記測定部が測定した移動ミラーの測定位置を近づけるべく前記移動機構を制御するとともに、前記目標位置データが示す目標位置の時間変化波形が、三角波の頂点部分をカットした台形波状の波形をなすか、または、その台形波状の波形のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすように設定する前記移動制御部としての機能を発揮させるものであって、
前記移動制御により設定される、前記三角波のカットした頂点部分が、前記移動ミラーの往動と復動とが切り替わる部分であって、かつ前記移動ミラーの往復直線移動を等速とすべき所定等速区間を除く部分である、干渉計の制御プログラム。
【請求項6】
移動ミラーと、前記移動ミラーを往復直線移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記移動ミラーの往復直線移動を等速となるようにする移動制御部と、前記移動ミラーの位置を測定する測定部とを具備する干渉計の制御方法であって、
前記移動ミラーの目標位置を示す目標位置データを受け付けて、その目標位置データの示す目標位置に、前記測定部が測定した移動ミラーの測定位置を近づけるべく前記移動機構を制御するとともに、前記目標位置データが示す目標位置の時間変化波形が、三角波の頂点部分をカットした台形波状の波形をなすか、または、その台形波状の波形のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすように設定し、当該三角波のカットした頂点部分が、前記移動ミラーの往動と復動とが切り替わる部分であって、かつ前記移動ミラーの往復直線移動を等速とすべき所定等速区間を除く部分である干渉計の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば赤外光源を用いた干渉計、干渉計を用いた分光光度計及び干渉計の制御プログラムに関するものである。
【0002】
例えばFTIRの分光部に用いられる干渉計は、赤外光源から射出された光を2つの光束に分割し、一方の光束を固定ミラーで反射させるとともに他方の光束を往復動する移動ミラーで反射させ、これらの光束を再度合成することにより光路差による干渉波を生成するものである。
この干渉計で合成された光の強度は、移動ミラーを連続的に動かすと、波長毎に異なるサインカーブを描くので、FTIRにおいては、この干渉計での合成光を高速フーリエ変換(FFT)して分光し、波長毎の光強度(スペクトル)を取得して測定対象物の組成比や濃度などを分析するようにしてある。
【0003】
このとき、この干渉計では、FFT演算に堪えうる正確な干渉波形の測定を必要とするため、移動ミラーの位置を精度良く把握しておくことが不可欠である。
【0004】
しかして、移動ミラーは、所定の移動機構によって往復動可能に支持されるとともに、この移動機構を制御する移動制御部によって所定区間を等速で往復動するように構成されている。
【0005】
前記移動機構とは、例えば、該移動ミラーが搭載される台車と、この台車を往復動可能に支持するリニアガイドと、この台車を往復動させるボイスコイルモータのような直動アクチュエータ等から構成されたものである。
【0006】
前記移動制御部は、例えば、レーザー測距計のような位置センサから台車の位置をサンプリング測定し、その測定位置が目標位置となるように、前記直動アクチュエータに指令信号を出して、台車(及び移動ミラー)の位置をフィードバック制御するものである。この目標位置は、等速往復動であるから、図1に示すように、横軸を時間としたときに、三角波(以下、目標位置三角波ともいう。)となるように設定されている。
【0007】
かかるシステムにおいては、等速往復動を目標にしているとはいえ、往動と復動が切り換わる目標位置三角波の頂点近傍において、台車及び移動ミラーを減加速させて反転させなければならないため、図1に示すように、等速を維持できない反転区間が生じる。
【0008】
ところで、近時、測定時間短縮の要求が高まり、それに伴ってミラーの往復動を高速化する必要が生じている。
【0009】
しかしながら、高速化すると、反転時の推力が大幅に増加し、ミラーの移動機構に過大な負荷がかかって短寿命化や故障頻度の増加を惹起するという問題が懸念されている。例えば従来の2倍〜3倍の高速化が要求されているが、その結果、ミラー反転に必要な瞬間最大推力も2倍〜3倍となり、移動機構を構成するボイスコイルの変形やリニアガイドの鋼球の磨耗等が顕著になって、製品寿命に悪影響が生じたり、故障が起き易くなったりする。
【0010】
また、高速になった分、反転にかけられる時間が短くなるので、台車が反転してから等速移動をするまでにかけられる時間も短くなり、台車の速度安定性が悪化し、ひいては測定精度の悪化をも招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−96038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであって、その主たる所期課題は、移動ミラーの往復動の高速化を実現しながらも、移動ミラーの速度安定性を担保でき、なおかつ、その反転にかかる瞬間最大推力の増加を可及的に抑制する干渉計等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明に係る干渉計は、移動ミラーと、前記移動ミラーを往復動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記移動ミラーの往復動が等速となるようにする移動制御部と、前記移動ミラーの位置を測定する測定部とを具備したものであって、前記移動制御部が、前記移動ミラーの目標位置を示す目標位置データを受け付けるとともに、その目標位置データの示す目標位置に、前記測定部が測定した移動ミラーの測定位置を近づけるべく前記移動機構を制御するものであり、前記目標位置データが示す目標位置の時間変化波形(目標位置を縦軸、時間を横軸にとったときのグラフ波形)が、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなすか、または、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすように設定してあることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の干渉計では、目標位置の時間変化波形が台形波をなすか又はその台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすので、減速開始のタイミングが、従来の目標位置であった三角波の頂点よりも手前となり、反転動作にかけられる時間が従来の干渉計よりも長くなる。そのため、加速後の速度安定性が向上し、移動ミラーの往復動高速化を図っても移動ミラーの速度安定性を担保でき、ひいては干渉計の測定精度に係る性能を維持できる。
【0015】
また、従来であれば、反転動作時の目標位置が三角波の頂点であったため、目標位置が急激に変化し、移動機構にこの反転動作による過大な負荷がかかっていたが、本発明によれば、目標位置の時間変化波形を、台形波状またはその台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすものにして、反転時での変化を穏やかにしているため、移動機構にかかる負荷を小さくすることができ、移動ミラーの往復動高速化による移動機構の短寿命化や故障頻度の増加を防止できる。特に、この効果は目標位置の時間変化波形の台形波のコーナ部分を滑らかにしたときに顕著となる。
【0016】
より具体的な実施態様としては、前記移動制御部に目標位置データを生成する目標位置データ生成部をさらに備え、該目標位置データ生成部が、三角波状の時間変化波形を有する原始目標位置に基づいて前記目標位置を算出し、その目標位置を示す目標位置データを出力するものを挙げることができる。
【0017】
このようなものであれば、目標位置データ生成部に、三角波状の時間変化波形の原始目標位置を示す原始目標位置データを入力するだけで、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなすか、または、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなす時間変化波形の目標位置データを生成することができ、目標位置データの生成を容易にすることができる。
【0018】
本発明の効果が特に顕著となる実施態様としては、前記目標位置データ生成部が、前記原始目標位置データを受け付け、該目標位置データの示す三角波の頂点をカットすることにより時間変化波形が台形波状をなす中間目標位置を算出する前段リファレンスガバナ部と、前記中間目標位置の時間変化波形にローパスフィルタをかけてそのコーナ部分を滑らかに変化させた前記目標位置を算出する後段リファレンスガバナ部とを具備したものを挙げることができる。
【0019】
このようなものであれば、前段リファレンスガバナ部によって、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなす時間変化波形の中間目標位置を算出することができるとともに、後段リファレンスガバナ部によって、中間目標位置の台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた時間変化波形をなす目標位置を容易に生成することができる。
【0020】
上述した干渉計を用いた分光光度計も本発明の1つである。
このような分光光度計であれば、移動ミラーの往復動高速化を図って測定時間の短縮化を図っても、移動ミラーの速度安定性を担保することができるので、信頼性の高いデータを得ることができる。
【0021】
また、上述した干渉計の制御プログラムは、移動ミラーと、前記移動ミラーを往復動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記移動ミラーの往復動を等速となるようにする移動制御部と、前記移動ミラーの位置を測定する測定部とを具備する干渉計の制御プログラムであって、前記移動ミラーの目標位置を示す目標位置データを受け付けて、その目標位置データの示す目標位置に、前記測定部が測定した移動ミラーの測定位置を近づけるべく前記移動機構を制御するとともに、前記目標位置データが示す目標位置の時間変化波形が、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなすか、または、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすように設定する前記移動制御部としての機能を発揮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の干渉計、干渉計を用いた分光光度計、干渉計の制御プログラムによれば、移動ミラーの往復動の高速化を実現しながらも、その反転にかかる瞬間最大推力の増加を可及的に抑制して寿命性能を維持したり故障を防止することができ、また、移動ミラーの速度安定性を担保して測定精度の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来の移動ミラーの目標位置と時間との関係を示すグラフ。
図2】本実施形態における分光光度計及び干渉計を示す概略図。
図3】本実施形態における目標位置データ生成部を示すブロック図。
図4】本実施形態における前段リファレンスガバナ部が生成する中間目標位置の時間変化波形を示すグラフ。
図5】本実施形態における後段リファレンスガバナ部が生成する目標位置の時間変化波形を示すグラフ。
図6】(a)(b)図5のA部分を拡大した拡大図。
図7】(a)従来の干渉計において、縦軸に移動ミラーの位置・速度、横軸に時間をとったときのグラフ。 (b)本実施形態の干渉計において、縦軸に移動ミラーの位置・速度、横軸に時間をとったときのグラフ。
図8】他の実施形態における分光光度計及び干渉計を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態について図を用いて説明する。
【0025】
本実施形態の分光光度計1は、例えばFTIRであって、図2に示すように、干渉計2で生成された波長毎に異なるサインカーブを描く干渉波を、試料台3に設置された測定試料に照射し、分析部4で測定試料を透過した光を高速フーリエ変換(FFT)して分光し、波長毎の光強度(スペクトル)を取得して測定試料の組成比や濃度などを分析するものである。
【0026】
波長毎に異なるサインカーブを描く干渉波を生成する構成として、本実施形態の干渉計2は、赤外光源5から射出された光をビームスプリッタ6で2つの光束に分割し、一方の光束を固定ミラー7で反射させるとともに、他方の光束を移動機構9によって往復動する移動ミラー8で反射させる。このとき、移動ミラー8を移動機構9によって連続的に移動させているので、固定ミラー7で反射した光束及び移動ミラー8で反射した光束を再度合成した干渉波は、波長毎に異なるサインカーブを描く。
【0027】
移動機構9は、ビームスプリッタ6で分岐された一方の光軸上に平行に配置されるリニアガイド9aと、リニアガイド9a上を移動する台車9cと、台車9cを往復動させる例えばボイスコイルモータ等の直動アクチュエータ9bとを具備する。この台車9c上には、光軸を遮るように移動ミラー8が搭載されている。
そして、直動アクチュエータ9bに流れる電流値によって台車9cの移動速度を変化させるとともに、電流の流れる向きによって台車9cの移動方向を変化させる。
なお、直動アクチュエータ9bは、ボイスコイルモータに限られず、台車9cを往復動させるものであれば何でもよい。
【0028】
移動機構9によって移動する移動ミラー8の位置を測定する測定部10は、例えば測定用光源10a及び光を受光する受光部10bを具備する位置センサである。この位置センサは、例えば移動ミラー8で反射された際に生じるドップラー効果によって、測定用光源10aからの光の周波数が変化することを利用して、移動ミラー8の位置を測定するものを挙げることができる。そして、測定部10は、測定した測定位置を示す実位置データを制御機構11へ送信する。
なお、測定部10としては上述の位置センサの他に、速度センサや加速度センサ等を用いることもできる。
【0029】
制御機構11は、移動機構9を制御するものであって、構造的には、CPU、内部メモリ、I/Oバッファ回路、ADコンバータ等を有した所謂コンピュータ回路である。そして、内部メモリの所定領域に格納した制御プログラムに従って動作することでCPU及び周辺機器が協働動作して、図3に示す移動制御部11aとしての機能を発揮するものである。
【0030】
移動制御部11aは、移動ミラー8が目標位置に移動するように制御信号を生成して、該制御信号を移動機構9に送信することによって移動機構9を制御するものであって、移動ミラー8の目標位置と測定部10が測定した測定位置との偏差を算出する偏差算出部16、該偏差を小さくして測定位置が目標位置に近づくように制御信号を算出する演算部17とを具備する。
【0031】
この目標位置は、目標位置データ生成部12を用いて生成されている。
目標位置データ生成部12は、目標位置を示す目標位置データを生成するものであって、原始目標位置から中間目標位置を算出する前段リファレンスガバナ部13と、中間目標位置から目標位置を算出する後段リファレンスガバナ部14とを具備するものである。
【0032】
本実施形態では、原始目標位置は、原始目標位置データ記録部15に格納されている。この原始目標位置を縦軸に位置、横軸に時間をとったグラフに表すと、その時間変化波形は、左右対称の三角波の波形となる。
【0033】
前段リファレンスガバナ部13は、図4に示すように、原始目標位置データ記録部15から原始目標位置を示す原始目標位置データを取得して、取得した原始目標位置の時間変化波形の三角波の頂点をカットして、時間変化波形が台形波状をなす中間目標位置を算出するものである。具体的に前段リファレンスガバナ部13は、原始目標位置データの三角波の頂点から、干渉計として測定を行うために移動ミラー8の等速移動を確保すべき区間との間をカットする。
【0034】
後段リファレンスガバナ部14は、図5に示すように、前段リファレンスガバナ部13が算出した中間目標位置の時間変化波形にローパスフィルタをかけて、その時間変化波形の台形波状のコーナ部分を滑らかに変化させた目標位置を算出するものである。このローパスフィルタとしては、FIRフィルタやIIRフィルタを用いることができる。
【0035】
また、ローパスフィルタをかけて算出された目標位置の時間変化波形は、図6(a)に示すように、中間目標位置の台形波状の水平部分が残るようにコーナ部分を滑らかにしたものであってもよいし、図6(b)に示すように、この水平部分が残らないようにコーナ部分を滑らかにしたものであっても構わない。
【0036】
上述の目標位置データ生成部12において前段リファレンスガバナ部13及び後段リファレンスガバナ部14を経て生成された目標位置データが示す目標位置の時間変化波形は、図7(b)に示すように、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなすとともに、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすものとなる。目標位置の時間変化波形を上述のようにすることで、図7(b)に示すように、移動ミラー8の減速開始タイミングを、図7(a)に示す従来の干渉計よりも早くして反転するのに必要な時間を確保できていることが分かる。また、このような目標位置に基づいて制御された移動ミラーの速度は、所定の等速度区間が設けられていることが分かる。
【0037】
上述のように構成した本実施形態の干渉計2は以下のような格別の効果を具備する。
【0038】
つまり、本実施形態の干渉計2では、目標位置の時間変化波形が台形波であって、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすので、減速開始のタイミングが、従来の目標位置であった三角波の頂点よりも手前となり、反転動作にかけられる時間が従来の干渉計よりも長くなる。そのため、加速後の速度安定性が向上し、移動ミラー8の往復動高速化を図っても移動ミラー8の速度安定性を担保でき、ひいては干渉計2の測定精度に係る性能を維持できる。
【0039】
また、目標位置の時間変化波形を、台形波状またはその台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなすものにして、反転時での変化を穏やかにしているため、移動機構9に無理がかかりにくく、移動ミラー8の往復動高速化による移動機構9の短寿命化や故障頻度の増加を防止できる。
【0040】
さらに、目標位置データ生成部12に、三角波状の時間変化波形の原始目標位置を示す原始目標位置データを入力するだけで、三角波の頂点部分を水平にカットした台形波をなすか、または、その台形波のコーナ部分を滑らかに変化させた形状をなす時間変化波形の目標位置データを生成することができるので、目標位置データの生成を容易にすることができる。
【0041】
次に、別の実施形態における分光光度計100について説明する。なお、上述の分光光度計1の説明と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
図8は、本実施形態における分光光度計100を示す概略図である。本実施形態における分光光度計100は、干渉計2と、測定試料が収容されるガスセル30と、ガスセル30を透過した光を検出する検出器40と、検出器40で検出された光の信号強度をフーリエ変換して測定試料の濃度を測定する測定部50とを具備する。なお、本実施形態においては、干渉計2の光源5は赤外波長領域の光を射出するものである。また、測定試料としては例えば自動車等の排ガスを挙げることができる。
【0043】
ガスセル30は、セル内で試料に干渉計2で生成された干渉光を透過させるものであって、筐体形状をなし、その一面に干渉計2で生成された干渉光が入射する入射窓と、試料を透過した光を出射する出射窓とが設けられている。
【0044】
検出器40は、ガスセル30内で試料を透過した光の信号強度を検出するものであって、例えば半導体型のセンサや焦電型のセンサ等が用いられる。
【0045】
測定部50は、検出器40が検出した光の強度信号をフーリエ変換して各波数成分の光の強度に分離するものである。そして、各波数の吸光度と濃度とが比例するランベルト・ベールの法則に基づいて、試料濃度を測定するものである。
【0046】
本発明は、上述した構成に限られるものではない。
【0047】
上記実施形態では、目標位置データ生成部を具備するが、目標位置データ生成部を用いずに目標位置データを生成してもよい。この場合は、例えば目標位置をテーブルに入力したり、目標位置を表す数式を用いて目標位置データを生成する。目標位置データ生成部を用いずに目標位置を生成する場合、所望の形状をなす時間変化波形の目標位置を生成することができる。
【0048】
また、目標位置データ生成部が前段リファレンスガバナ部のみで構成されていてもよい。これにより、目標位置の時間変化波形が台形波となるが、この場合であっても、減速開始のタイミングが従来の目標位置三角波の頂点よりも手前となるため、再加速に要する時間が短くなって加速後の速度安定性を維持することができる。
【0049】
なお、制御機構が移動機構(ひいては移動ミラー)の速度安定性を示す速度安定指標を算出する安定診断部を備えていてもよい。
この安定診断部は、測定部が測定した測定位置が等速移動開始位置に到達したと判断すると、その等速移動開始位置から所定区間において、測定部から送信される実位置データを用いて速度安定指標を算出するものである。
この速度安定指標は、以下の式で表される。
なお、本実施形態において、nは3が用いられている。
【0050】
このように安定診断部を備えることにより、移動機構(移動ミラー)の速度安定性を評価することができる。そのため、本実施形態のように目標位置の時間変化波形が三角波の頂点部分を水平にカットした台形波であって、そのコーナ部分が滑らかに変化する形状をなす場合に、移動機構(移動ミラー)の速度安定性を担保できているのか否か、ひいては干渉計の測定精度に係る性能を維持できているのか否かを確認することができる。
【0051】
本発明は、その他その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2・・・干渉計
8・・・移動ミラー
9・・・移動機構
10・・測定部
11a・・移動制御部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8