特許第6483152号(P6483152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000002
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000003
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000004
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000005
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000006
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000007
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000008
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000009
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000010
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000011
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000012
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000013
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000014
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000015
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000016
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000017
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000018
  • 特許6483152-基板監視装置、および、基板監視方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483152
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】基板監視装置、および、基板監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/958 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   G01N21/958
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-562619(P2016-562619)
(86)(22)【出願日】2015年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2015083630
(87)【国際公開番号】WO2016088721
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-246984(P2014-246984)
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】阪上 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】東 基従
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−317500(JP,A)
【文献】 特開平06−258231(JP,A)
【文献】 特開平11−339042(JP,A)
【文献】 特開平11−242001(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0307236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像範囲からの光を受光する受光面を有した撮像部と、
前記撮像範囲内に基板を配置する配置部と、
前記撮像範囲内に配置された前記基板にレーザー光線を当てる照射部と、
前記撮像結果を監視する監視部と、を備え
前記基板は、四角形状を有し、
前記照射部は、前記基板の四隅の少なくとも1つに前記レーザー光線を照射することによって、前記基板の端部のなかで前記レーザー光線が導入された部位とは異なる部位から前記レーザー光線を導出し、
前記配置部は、前記撮像範囲内に前記基板の全体を配置し、
前記撮像部は、前記配置部によって配置された前記基板が広がる平面と対向し、前記基板の前記端部において生じた前記レーザー光線の散乱光による前記端部の像を撮像結果として前記受光面に形成する
基板監視装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記照射部が前記基板に前記レーザー光線を当てることによって、前記基板内前記レーザー光線透過、前記端部において前記レーザー光線散乱した散乱光による前記端部の像を前記撮像結果として前記受光面に形成する
請求項1に記載の基板監視装置。
【請求項3】
前記基板が載置される載置面を有する基板ステージと、
前記配置部を昇降させることにより、前記基板が前記載置面に接触する載置位置と、前記基板が前記載置面から上方に離間する上昇位置との間で前記基板の位置を変える昇降機構とをさらに備え、
前記監視部は、
前記基板が前記載置位置にあるとき、
前記基板が前記上昇位置にあるとき、およ
前記基板が前記載置位置と前記上昇位置との間を移動しているとき、
のうちの少なくとも一つで前記撮像部から得られた前記撮像結果に基づいて前記基板の前記端部の損傷有無を判断する、
請求項1または2に記載の基板監視装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記基板が前記載置位置と前記上昇位置との間を移動している間に前記基板の前記端部の損傷有無の判断を完了する、
請求項3に記載の基板監視装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記照射部が前記基板に前記レーザー光線を当てることによって、前記基板内での反射を通じ、前記基板内前記レーザー光線透過、前記端部において前記レーザー光線散乱した散乱光による前記端部の像を前記撮像結果として前記受光面に形成する
請求項2に記載の基板監視装置。
【請求項6】
前記照射部は、点光源である
請求項1から5のいずれか一項に記載の基板監視装置。
【請求項7】
前記照射部は、前記端部に沿って延びる帯形状を有した前記レーザー光線を前記端部に当てる
請求項1からのいずれか一項に記載の基板監視装置。
【請求項8】
撮像部の有する撮像範囲内に配置された基板にレーザー光線を当てることによって、前記基板の端部で前記レーザー光線の散光を生じさせて、前記端部の像を撮像結果として前記撮像部の受光面に形成する照射工程と、
前記端部を撮像する撮像工程と、
前記撮像結果を監視する監視工程と、を含み、
前記基板は、四角形状を有し、
前記照射工程は、前記基板の四隅の少なくとも1つに前記レーザー光線を照射することによって、前記端部のなかで前記レーザー光線が導入された部位とは異なる部位から前記レーザー光線を導出し、
前記撮像工程は、前記基板が広がる平面と対向する方向から、前記撮像範囲内に位置する前記基板の全体を撮像する
基板監視方法。
【請求項9】
前記レーザー光線を照射する照射部が、点光源である
請求項に記載の基板監視方法。
【請求項10】
前記照射部の有する照射口の直径が、前記基板の厚さよりも大きい
請求項に記載の基板監視方法。
【請求項11】
前記基板は、基板ステージの載置面に接触する載置位置と、前記載置面から上方に離間する上昇位置との間で昇降可能であり、
前記監視工程は、
前記基板が前記載置位置にあるとき、
前記基板が前記上昇位置にあるとき、およ
前記基板が前記載置位置と前記上昇位置との間を移動しているとき、
のうちの少なくとも一つで前記撮像部から得られた前記撮像結果に基づいて前記基板の前記端部の損傷有無を判断することを含む、
請求項に記載の基板監視方法。
【請求項12】
前記監視工程は、前記基板が前記載置位置と前記上昇位置との間を移動している間に前記基板の前記端部の損傷有無の判断を完了することを含む、
請求項1に記載の基板監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を監視する基板監視装置、および、基板監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの製造工程において、素子や配線などの形成される基板の割れや欠けを検出する基板監視装置が用いられている。基板監視装置は、基板の上方から基板に向けてレーザー光線を照射する照射部と、照射部と対向する撮像部とを備え、照射部と撮像部とが基板を挟んで位置している。撮像部は、基板を透過した透過光と、基板を透過せずに撮像部に到達した非透過光とを受け、基板監視装置は、透過光と非透過光との強度の違いに基づき、基板の割れや欠けを検出する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−149800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した基板監視装置が基板の割れや欠けを検出するためには、透過光と非透過光との両方を撮像部が受けなければならないため、透過光の光路上と非透過光の光路上とに1つの撮像部が位置するように、撮像部の位置が大きな制約を受けている。
【0005】
本発明は、照射部の位置に対する撮像部の位置の自由度を高めることのできる基板監視装置、および、基板監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する基板監視装置は、所定の撮像範囲からの光を受光する受光面を有した撮像部と、前記撮像範囲内に基板を配置する配置部と、前記撮像範囲内に配置された前記基板にレーザー光線を当てることによって、前記基板の端部において前記レーザー光線の反射光および散乱光の少なくとも一方を生じさせて、前記端部の像を撮像結果として前記受光面に形成するように構成された照射部と、前記撮像結果を監視する監視部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決する基板監視方法は、撮像部の有する撮像範囲内に配置された基板にレーザー光線を当てることによって、前記基板の端部で前記レーザー光線の反射光および散乱光の少なくとも一方を生じさせて、前記端部の像を撮像結果として前記撮像部の受光面に形成する照射工程と、前記端部を撮像する撮像工程と、前記撮像結果を監視する監視工程と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、撮像部の位置が、基板の端部におけるレーザー光線の反射光および散乱光の少なくとも一方によって撮像部の受光面に像が形成される位置であればよいため、照射部の位置に対して、撮像部の位置が1つの位置に限定されない。それゆえに、照射部の位置に対する撮像部の位置の自由度を高めることができる。
【0009】
上記基板監視装置において、前記照射部は、前記基板に前記レーザー光線を当て、前記基板内に前記レーザー光線を透過させて、前記端部において前記レーザー光線を散乱させるように構成されている。
【0010】
上記基板監視装置によれば、基板に当てられたレーザー光線が、基板の内部を透過し、かつ、端部において散乱される。そのため、基板の端部のうち、レーザー光線の当たった部分以外の部分の明度を高めることができる。
【0011】
上記基板監視装置において、前記照射部は、前記基板に前記レーザー光線を当て、前記基板内での反射を通じ、前記基板内に前記レーザー光線を透過させて、前記端部において前記レーザー光線を散乱させるように構成されている。
【0012】
上記基板監視装置によれば、レーザー光線が基板内にて反射されて、基板の端部にまで基板の内部を透過するため、基板の端部の像を撮像部の受光面に形成することができる。
上記基板監視装置において、前記基板の前記端部は、前記基板の端面を含み、前記照射部は、前記端面に前記レーザー光線を当てることによって、前記端面から前記基板の内部に前記レーザー光線を導入し、かつ、前記端面のなかで前記レーザー光線が導入された部位とは異なる部位から前記レーザー光線が導出されるように光軸が設定された前記レーザー光線を前記撮像部とは異なる位置に向けて照射する。
【0013】
上記基板監視方法において、前記基板の前記端部は、前記基板の端面を含み、前記照射工程において、前記端面にレーザー光線を当てることによって、前記端面に前記レーザー光線が導入され、かつ、前記端面のなかで前記レーザー光線が導入された部位とは異なる部位から前記レーザー光線が導出されるように光軸が設定された前記レーザー光線を前記撮像部とは異なる位置に向けて照射する。
【0014】
上記構成によれば、撮像部の撮像した画像には、基板の端面の明度が、基板における端面以外の部分の明度や、基板を保持する配置部の明度などよりも高められた状態で収められる。しかも、照射部は、撮像部とは異なる位置に向けてレーザー光線を照射するように構成されていればよいため、照射部の位置に対する撮像部の位置の自由度が高められた状態で、基板の端面の明度に基づいて端面の状態を監視することができる。
【0015】
上記基板監視装置において、前記照射部は、点光源である。
上記基板監視方法において、前記レーザー光線を照射する照射部が、点光源である。
上記構成によれば、照射部が点光源であるため、照射部の出力するレーザー光線の光量が同じであれば、線光源に比べて、基板の端面のうち、レーザー光線の当たる部位における単位面積当たりの光量が大きくなる。それゆえに、基板の内部に導入された光が、基板の外部に導出されるときの光量も大きくなる。結果として、基板における端面の明度と、基板における他の部分の明度や配置部の明度との差が大きくなる。
【0016】
上記基板監視装置において、前記照射部は、前記端部に沿って延びる帯形状を有する前記レーザー光線を前記端部に当てる。
上記基板監視装置によれば、レーザー光線が帯状に延びる分だけ、基板の端部のうち、撮像部の受光面に像として形成される部分が拡がる。
【0017】
上記基板監視方法において、前記基板は、四角形形状を有し、前記照射工程において、前記基板の四隅の少なくとも1つに前記レーザー光線が照射される。
上記基板監視方法によれば、レーザー光線が、基板の拡がる方向である2つの方向に対して傾いた方向から基板に入射する。そのため、レーザー光線が、基板の拡がる方向のうちの一方に直交し、かつ、他方に平行な方向から基板に入射する構成と比べて、基板に導入されたレーザー光線が、基板の内部で反射して、基板におけるより広い領域に拡がりやすい。それゆえに、基板の端面のうちで、レーザー光線の導出される部位の占める割合が大きくなる。
【0018】
上記基板監視方法において、前記照射部の有する照射口の直径が、前記基板の厚さよりも大きい。
上記基板監視方法によれば、照射口の直径が基板の厚さ以下である構成と比べて、レーザー光線が端面における厚さ方向の全体に当たりやすい。これにより、基板の端面から基板の内部に導入される光量が大きくなるため、基板の端面から基板の外部に導出されるレーザー光線の光量も大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】基板監視装置をスパッタ装置に適用した第1実施形態におけるスパッタ装置の模式的な構造を示すブロック図である。
図2】スパッタ装置の内部の構造を基板とともに模式的に示すブロック図である。
図3】スパッタ装置の内部を基板と対向する方向から見たときの構造を模式的に示すブロック図である。
図4】レーザー照射部の備える照射口の位置と基板の端面の位置との関係、および、レーザー光線の透過経路と撮像部の撮像方向との関係を模式的に示すブロック図である。
図5】撮像部の撮像範囲を説明するためのブロック図である。
図6】スパッタ装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図7】基板監視方法を具体化した1つの実施形態における処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図8】スパッタチャンバの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】スパッタ装置の作用を説明するための図である。
図10】基板の端面において光が散乱される状態を模式的に示す図である。
図11】変形例における撮像工程を説明するための工程図である。
図12】基板監視装置をスパッタ装置に適用した第2実施形態においてスパッタチャンバを上面視した平面構造を示す平面図である。
図13】昇降ピンによって支持された基板と撮像部の撮像範囲との関係を模式的に示す図である。
図14】レーザー照射部が基板の端部に対してレーザー光線を照射している状態を示す図である。
図15】レーザー照射部が基板の端部に対してレーザー光線を照射している状態を示す図である。
図16】基板の端部にてレーザー光線が反射される状態および散乱される状態を模式的に示す図である。
図17】基板の端部にてレーザー光線が反射される状態を模式的に示す図である。
図18】変形例において基板の端部にてレーザー光線が反射される状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1から図10を参照して、基板監視装置をスパッタ装置に適用した第1実施形態、および、基板監視方法を具体化した第1実施形態を説明する。以下では、スパッタ装置の構成、スパッタチャンバの構成、基板監視方法、および、スパッタ装置の作用を順に説明する。
【0021】
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成を説明する。
図1が示すように、スパッタ装置10は、1つの搬送チャンバ11と、搬送チャンバ11に接続する2つのロードロックチャンバ12と、搬送チャンバ11に接続する2つのスパッタチャンバ13とを備えている。なお、各ロードロックチャンバ12と搬送チャンバ11との間、および、各スパッタチャンバ13と搬送チャンバ11との間には、仕切弁が配置され、各仕切弁は、搬送チャンバ11と対応するチャンバとを連通した状態と、連通していない状態との間で変える。
【0022】
ロードロックチャンバ12は、スパッタ装置10での処理の対象である基板Sをスパッタ装置10の外部からスパッタ装置10の内部に搬入し、かつ、スパッタ装置10の内部からスパッタ装置10の外部に搬出する。ロードロックチャンバ12は、基板Sを搬入するとき、および、基板Sを搬出するとき、搬送チャンバ11に連通していない状態で、ロードロックチャンバ12の内部を大気に開放する。一方で、ロードロックチャンバ12は、搬入した基板Sを搬送チャンバ11に受け渡すとき、および、搬出する基板Sを搬送チャンバ11から受け取るとき、搬送チャンバ11に連通した状態で、搬送チャンバ11とともに、所定の圧力に減圧された空間を形成する。
【0023】
なお、スパッタ装置10は、1つのロードロックチャンバ12を備える構成であってもよいし、3つ以上のロードロックチャンバ12を備える構成であってもよい。
スパッタチャンバ13は、カソード14を備え、カソード14によって基板Sの1つの面に所定の膜を形成する。スパッタチャンバ13において基板Sに形成される膜は、ITO膜やIGZO膜などの透明導電膜であってもよいし、アルミニウム、銅、モリブデン、モリブデンタングステン、および、チタンなどの金属膜であってもよい。あるいは、スパッタチャンバ13において基板Sに形成される膜は、シリコン酸化物やチタン酸化物などの酸化物膜、および、チタン窒化物などの窒化物膜などの化合物膜であってもよい。スパッタチャンバ13は、基板Sに膜が形成されるとき、搬送チャンバ11の内部と同じ圧力、あるいは、搬送チャンバ11の内部よりも低い圧力に減圧された空間を形成する。
【0024】
なお、各スパッタチャンバ13は、他の残りのスパッタチャンバ13と相互に同じ膜を基板Sに形成するためのカソード14を備えていてもよいし、相互に異なる膜を基板Sに形成するためのカソード14を備えていてもよい。また、スパッタ装置10は、1つのスパッタチャンバ13を備える構成であってもよいし、3つ以上のスパッタチャンバ13を備える構成であってもよい。
【0025】
搬送チャンバ11は、基板Sを搬送する搬送ロボット15を備えている。搬送ロボット15は、搬送チャンバ11を通ってロードロックチャンバ12からスパッタチャンバ13に成膜前の基板Sを搬送し、かつ、搬送チャンバ11を通ってスパッタチャンバ13からロードロックチャンバ12に成膜後の基板Sを搬送する。
【0026】
なお、スパッタ装置10は、上述したロードロックチャンバ12、および、スパッタチャンバ13以外のチャンバ、例えば、基板Sに膜を形成する前の処理を行うための前処理チャンバや、基板Sに膜を形成した後の処理を行うための後処理チャンバなどを備えていてもよい。
【0027】
[スパッタチャンバの構成]
図2から図5を参照して、スパッタチャンバ13の構成を説明する。なお、図2には、スパッタチャンバ13の構成を説明する便宜上から、スパッタチャンバ13に接続している搬送チャンバ11の一部も示されている。また、図2では、搬送ロボット15が、搬送チャンバ11からスパッタチャンバ13に基板Sを搬入するときの基板ステージの状態が実線で示される一方で、基板Sに所定の膜を形成するときの基板ステージの状態が二点鎖線で示されている。
【0028】
図2が示すように、スパッタチャンバ13は、箱体形状を有したチャンバ本体21を備え、チャンバ本体21の1つの側壁であって、搬送チャンバ11に接続する側壁には、搬出入口21aが形成されている。搬出入口21aは、水平方向に沿って側壁を貫通する孔であって、チャンバ本体21の内部に対する基板Sの搬出入を行うための孔である。搬出入口21aには、上述した仕切弁が配置され、仕切弁は、スパッタチャンバ13と搬送チャンバ11との間とが連通されていない状態に維持することで、搬送チャンバ11に対してスパッタチャンバ13を気密された状態に維持する。チャンバ本体21の内壁面のうち、搬送チャンバ11に接続する側壁と対向する面には、カソード14が位置している。
【0029】
カソード14は、バッキングプレート22とターゲット23とを含んでいる。カソード14のうち、バッキングプレート22がチャンバ本体21に固定され、ターゲット23が、バッキングプレート22に固定されている。ターゲット23の形成材料は、上述した膜のいずれかを形成するための材料である。
【0030】
チャンバ本体21の内部には、基板Sが載置される基板ステージ24が位置し、基板ステージ24は、矩形板形状を有して、基板Sの載置される載置面24aを備えている。基板ステージ24は、基板ステージ24の姿勢を変更する姿勢変更部25に接続している。
【0031】
姿勢変更部25は、基板ステージ24の姿勢を水平姿勢と起立姿勢との間で変える。基板ステージ24の姿勢が水平姿勢であるとき、基板ステージ24は、チャンバ本体21の内壁面の一部である下面とほぼ平行な状態であり、かつ、ターゲット23に対してほぼ垂直な状態である。一方で、基板ステージ24の姿勢が起立姿勢であるとき、基板ステージ24は、下面とほぼ垂直な状態であり、かつ、基板ステージ24は、ターゲット23に対してほぼ平行な状態である。
【0032】
基板ステージ24の姿勢のうち、水平姿勢は、成膜前の基板Sがスパッタチャンバ13に搬入されるとき、および、成膜後の基板Sがスパッタチャンバ13から搬出されるときの基板ステージ24の姿勢である。一方で、起立姿勢は、成膜前の基板Sに対して膜が形成される間にわたる基板ステージ24の姿勢である。
【0033】
スパッタチャンバ13は、基板ステージ24の載置面24aに対する基板Sの位置を変える昇降装置26を備えている。昇降装置26は、基板Sの位置を載置位置と上昇位置との間で変える。基板Sが載置位置に位置するとき、基板Sは基板ステージ24の載置面24aに接触している一方で、基板Sが上昇位置に位置するとき、基板Sは、載置面24aから所定の距離だけ上方に位置している。
【0034】
昇降装置26は、複数の昇降ピン26aと、昇降機構26bとを含んでいる。各昇降ピン26aは、基板Sに接触する先端部を有する。各昇降ピン26aは、基板Sに接触して載置面24aよりも上方に基板Sを位置させ、かつ、基板Sを上昇位置に位置させた状態で基板Sの姿勢を保持する。昇降ピン26aは、配置部の一例である。昇降機構26bは、重力方向に沿って基板ステージ24の載置面24aに対する昇降ピン26aの先端部の位置を変える。
【0035】
昇降機構26bは、成膜前の基板Sが搬送ロボット15から基板ステージ24に受け渡されるとき、および、成膜後の基板Sが基板ステージ24から搬送ロボット15に受け渡されるとき、昇降ピン26aを上昇させて、昇降ピン26aに基板Sを上昇位置にて支持させる。昇降機構26bは、基板Sの位置を上昇位置から載置位置に変えるとき、昇降ピン26aを下降させて、昇降ピン26aの先端部を載置面24a以下の位置に位置させる。
【0036】
スパッタチャンバ13の上壁には、撮像窓21bが形成されている。撮像窓21bは、チャンバ本体21の上壁を重力方向に沿って貫通する孔に嵌め込まれた所定の透過性を有する透明部材で構成されている。チャンバ本体21の外部であって、撮像窓21bと重なる位置には、所定の撮像範囲を有する撮像部27が配置されている。
【0037】
撮像部27は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラなどである。撮像部27は、複数の受光素子が並ぶ受光面を有し、撮像部27は、複数の受光素子が認識した光の強度の並びを像、言い換えれば光学像として認識する。撮像部27は、撮像部27の受光面に形成された光学像を電気信号に変換する、すなわち、撮像部27に向けて光を射出する物体を撮像する。
【0038】
図3を参照してスパッタチャンバ13の構成をさらに説明する。なお、図3には、スパッタチャンバ13の状態のうち、複数の昇降ピン26aが、基板Sの姿勢を上昇位置で保持している状態が示されている。また、図3では、チャンバ本体21の外部に配置される撮像部27の位置が破線で示されている。
【0039】
図3が示すように、基板ステージ24は、複数のクランプ28を備え、各クランプ28は、退避位置と固定位置との間で位置を変える。クランプ28は、基板Sが上昇位置に位置するとき、退避位置に位置する一方で、基板Sが載置位置に位置するとき、固定位置に位置して、基板Sを基板ステージ24の載置面24aに固定する。
【0040】
基板Sは、矩形板形状を有し、基板Sの外表面は、所定の膜が形成される表面と、表面とは反対側の面である裏面と、表面と裏面との間に位置して矩形環形状を有する端面Se1とから構成されている。基板Sは、表面と対向する方向から見て、四角形形状を有している。基板Sの端面Se1における四隅の各々が、基板Sの角部Scである。また、基板Sのうち、表面における縁、裏面における縁、および、端面Se1を含む部分が、基板Sの端部である。
【0041】
基板Sの形成材料は、可視光に対する光透過性を有する材料であって、例えばガラスである。なお、基板Sの形成材料は、膜の形成時に生じる熱に対する耐性を有していれば、各種の合成樹脂であってもよい。この場合には、後述するレーザー照射部29には、可視光領域に含まれる波長を有したレーザー光線を照射する可視光レーザーを選択することができる。可視光レーザーを用いる場合には、レーザー光線の照射位置、すなわち基板においてレーザー光線が照射される位置を目視により確認しながら、レーザー光線が照射される位置を調整することが可能となる。また、可視光レーザーであれば、照射対象である基板のサイズ、配置の状態、および、チャンバ内の明るさなどの撮像環境や撮像部の性能に応じて、赤色、緑色、および、青色などの色を有したレーザー光線を照射するレーザーを選択することが可能である。
【0042】
撮像部27は、水平姿勢である基板ステージ24と対向する平面視において、基板ステージ24の中央と重なる。また、昇降ピン26aによって基板Sが支持されているとき、撮像部27は、基板ステージ24と対向する平面視において、基板Sの中央と重なる。
【0043】
チャンバ本体21の四隅のうちの1つには、照射窓21cが形成されている。照射窓21cは、チャンバ本体21の1つの隅を水平方向に沿って貫通する孔に嵌め込まれた所定の透過性を有する透明部材で構成されている。チャンバ本体21の外部であって、照射窓21cと重なる位置には、チャンバ本体21の内部に向けてレーザー光線Lを照射するレーザー照射部29が位置している。レーザー照射部29、撮像部27、および、昇降ピン26aが、基板監視装置の一部を構成している。
【0044】
レーザー照射部29は、レーザー光線Lを照射するための照射口29aを備え、レーザー照射部29は、後に説明する図5が示すように、チャンバ本体21の内部における所定の位置である照射位置P1に向けてレーザー光線Lを照射する点光源である。照射位置P1は、例えば、チャンバ本体21の内壁面21dのなかで、レーザー照射部29の照射口29aと対向する部位である。
【0045】
一方で、基板Sが上昇位置に位置しているとき、レーザー照射部29の照射したレーザー光線Lは、基板Sの角部Scのうちの1つに当たる。このとき、レーザー光線Lの光軸Laは、基板Sの角部Scから、基板Sの内部に導入され、かつ、端面Se1のうち、レーザー光線Lの導入された部位とは異なる位置から、レーザー光線Lが導出されるように設定されている。
【0046】
これにより、レーザー光線Lの少なくとも一部が、基板Sの角部Scから基板Sの内部に導入される。そして、基板Sに導入された光が、基板Sの端面Se1のうち、基板Sの角部Scとは異なる部位である導出部Soから導出される。導出部Soは、例えば、基板Sの端面Se1のうちレーザー光線Lの照射された角部Scを除く、端面Se1の全体である。そのため、基板Sの端面Se1のうちレーザー光線Lの当たる角部Scの明度、および導出部Soの明度が、基板Sの他の部分よりも高くなる。
【0047】
すなわち、端面Se1は、レーザー光線Lから散乱光を生じさせる。そして、端面Se1で散乱したレーザー光線Lの少なくとも一部が撮像部27の受光素子によって受光されることによって、端面Se1の位置が、高明度の位置として撮像部27に把握される。撮像部27は、撮像部27の受光面に形成された端面Se1の光学像を電気信号に変換する。すなわち、撮像部27は、撮像部27に向けて光を射出する端面Se1を撮像する。
【0048】
言い換えれば、昇降ピン26aが、基板Sの端面Se1を目標位置P2に位置させる。目標位置P2は、チャンバ本体21の内部空間の中で、基板Sが上昇位置に位置するときに、基板Sの端面Se1が位置する領域である。これにより、昇降ピン26aは、基板Sの端面Se1のうち1つの角部Scに設定された被照射位置P3とは異なる位置に設定されている導出位置P4からレーザー光線Lを導出させる。導出位置P4は、チャンバ本体21の内部空間の中で、基板Sが上昇位置に位置するときに、端面Se1のうち導出部Soが位置する領域である。
【0049】
図4が示すように、レーザー光線Lが基板Sの内部を透過する経路が透過経路PPであり、撮像範囲を含む平面から撮像部27を見た方向が撮像方向Diである。このうち、透過経路PPは、ほぼ水平方向に沿って延びる方向である。一方で、撮像方向Diは、ほぼ重力方向に沿う方向である。すなわち、スパッタチャンバ13では、透過経路PPと撮像方向Diとがほぼ直交している。
【0050】
そのため、透過経路PPと撮像方向Diとが形成する角度がより小さい構成と比べて、基板Sにおける端面Se1の光学像が、基板Sの端面Se1とほぼ同等の形状で撮像部27の受光面に形成される。それゆえに、端面Se1の像である撮像結果の監視が行いやすくなる。
【0051】
照射口29aが直径Dを有し、基板Sが厚さTを有するとき、直径Dは厚さTよりも大きい。これにより、照射口29aの直径Dが基板Sの厚さT以下である構成と比べて、レーザー光線Lが端面Se1における厚さ方向の全体に当たりやすい。そのため、基板Sの端面Se1から基板Sの内部に導入されるレーザー光線Lの光量が大きくなるため、基板Sの導出部Soから基板Sの外部に導出されるレーザー光線Lの光量も大きくなる。
【0052】
ここで、フラットパネルディスプレイなどの表示装置の軽量化や薄型化が進むにつれて、表示装置に用いられる基板の薄型化も進んでいる。そして、近年では、厚さTが1mmに満たない基板Sも表示装置を構成する基板Sとして用いられている。基板Sの厚さTが、例えば、0.1mm以上0.7mm以下であるとき、直径Dは、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。
【0053】
昇降ピン26aは、基板Sを上昇位置に保持するとき、重力方向において、基板Sの端面Se1をレーザー照射部29の照射口29aと重なる位置に配置する。昇降ピン26aが、基板Sを上昇位置に保持するとき、重力方向において、基板Sの端面Se1をレーザー照射部29の照射口29aと重なる位置に配置する構成であれば、レーザー照射部29は、基板Sの端面Se1に対してほぼ垂直な方向からレーザー光線Lを照射する。そのため、基板Sの端面Se1により多くのレーザー光線Lが導入される。
【0054】
このような構成であれば、基板Sの表面あるいは裏面に金属膜が形成されている構成であっても、金属膜が付着していない、もしくは、金属膜の付着が少ない基板Sの端面Se1からレーザー光線Lを基板Sに導入することができるため、基板Sの内部に対してより確実にレーザー光線Lを導入することができる。結果として、金属膜を有した基板Sであっても、基板Sの端面Se1の全体の明度が高くなりやすい。
【0055】
なお、昇降ピン26aは、基板Sを上昇位置に保持するとき、重力方向において、基板Sの端面Se1をレーザー照射部29の照射口29aよりも上に配置してもよい。あるいは、昇降ピン26aは、基板Sを上昇位置にて保持するとき、重力方向において、基板Sの端面Se1をレーザー照射部29の照射口29a以下の位置に配置してもよい。
【0056】
図5が示すように、撮像部27は、所定の撮像範囲Cを有している。撮像部27は、基板Sの端面Se1の全体であって、レーザー光線Lの照射された角部Scおよび導出部Soを含む領域である高明度部Shの全体を含む部分が撮像範囲Cに含まれるように、レーザー光線Lの照射先である照射位置P1とは異なる位置に配置されている。すなわち、撮像部27は、チャンバ本体21の内部空間のうち、被照射位置P3と導出位置P4とから構成される高明度位置P5の全体が撮像範囲Cに含まれるように配置されている。言い換えれば、重力方向において、撮像部27の位置と基板Sが載置される基板ステージ24の位置とは、撮像部27の撮像範囲Cに基板Sの端面Se1の全体が含まれる程度に離れている。
【0057】
[スパッタ装置の電気的構成]
図6を参照して、スパッタ装置10の電気的構成を説明する。以下では、スパッタ装置10の電気的構成のうちで、撮像部27による撮像、レーザー照射部29によるレーザー光線Lの照射、および、基板Sの監視に関わる部分についてのみ説明する。
【0058】
スパッタ装置10は、スパッタ装置10の駆動を制御する制御部40を備えている。制御部40は、搬送ロボット15、姿勢変更部25、昇降機構26b、撮像部27、クランプ28、および、レーザー照射部29の各々に電気的に接続されている。制御部40は、搬送ロボット15、姿勢変更部25、昇降機構26b、および、クランプ28の駆動を制御して、スパッタ装置10の内部における基板Sの位置を変える。また、制御部40は、撮像部27、および、レーザー照射部29の駆動を制御して、基板Sの端面Se1における状態の監視に関わる動作を行わせる。制御部40は、撮像部27が制御部40に向けて出力した撮像結果、例えば、画像を取得する。
【0059】
制御部40は、記憶部40aと、監視部31とを含む。記憶部40aは、制御部40によって解釈されるプログラムであって、スパッタチャンバ13内での基板Sの監視処理を含む成膜処理に関するプログラムを記憶している。
【0060】
制御部40が成膜処理に関するプログラムを解釈して実行することにより、制御部40は、搬送ロボット15、姿勢変更部25、昇降機構26b、撮像部27、クランプ28、および、レーザー照射部29の各々を駆動させるための信号や、駆動を停止させるための信号を出力する。そして、搬送ロボット15、姿勢変更部25、昇降機構26b、撮像部27、および、レーザー照射部29の各々は、制御部40からの信号を受けて、動作を開始する、あるいは、動作を停止する。
【0061】
監視部31は、撮像部27の撮像結果である画像を監視している。監視部31は、画像に基づいて、基板Sの端面Se1における割れや欠け、さらに、基板Sの端面Se1から内部に向けて延びるひびであるクラックなどの損傷が形成されているか否かを判断する。制御部40は、上述した監視部31を含んでいるが、監視部31とは別にスパッタ装置10に設けられてもよい。レーザー照射部29、撮像部27、昇降ピン26a、および、監視部31が、基板監視装置の一例を構成している。
【0062】
なお、制御部40は、スパッタチャンバ13における基板Sの位置に関する情報として、例えば、搬送ロボット15の位置に関する情報と、昇降ピン26aを昇降させるためのモーターの回転数に関する情報とを取得してもよい。
【0063】
こうした構成では、制御部40は、取得した情報から基板Sの位置が上昇位置であると判断したとき、レーザー照射部29にレーザー光線Lの照射を開始させるための信号を生成して、レーザー照射部29に向けて出力し、制御部40からの信号を取得したレーザー照射部29がレーザー光線Lの照射を開始する。そして、制御部40は、撮像部27に撮像させるための信号を生成して、撮像部27に向けて出力し、制御部40からの信号を取得した撮像部27が、撮像範囲Cに含まれる基板Sを撮像する。
【0064】
[基板監視方法]
図7および図8を参照して基板監視方法を説明する。
図7が示すように、基板監視方法は、照射工程(ステップS11)、撮像工程(ステップS12)、および、監視工程(ステップS13)を備えている。照射工程では、レーザー照射部29が、基板Sの1つの角部Scにレーザー光線Lを照射し、レーザー光線Lの当たった角部Scから基板Sの内部にレーザー光線Lの少なくとも一部が導入される。これにより、基板Sの端面Se1のうち、レーザー光線Lの当たる角部Scの明度と、基板Sに導入されたレーザー光線Lを導出する導出部Soの明度とが、基板Sの他の部分よりも高くなる。
【0065】
撮像工程では、撮像部27が、基板Sの端面Se1の全体を撮像する。
監視工程では、監視部31が、撮像部27の撮像結果を監視する。監視部31は、例えば、撮像部27の撮像結果でもある画像において、互いに平行な複数の検出用ラインであって、基板Sの端面Se1を横切る検出用ラインを設定し、各検出用ライン上で他の部分よりも明度の高い部分の位置を検出する。監視部31は、これにより得られた明度の高い部分の位置情報を、監視対象としている基板Sの外縁、すなわち、検出用ライン上における基板Sの端面Se1の位置情報として取り扱う。
【0066】
ここで監視部31は、監視部31が基板Sの端面Se1の状態を監視する上で、撮像範囲の一部として画像処理の範囲を設定し、画像処理の範囲内に、予め端面Se1における損傷の検出において基準となる2本の基準ラインを有している。配置部により保持される基板Sの外縁が2本の基準ラインの間に含まれるように、画像処理の範囲内における各基準ラインの位置や、2本の基準ラインの間の幅である設置幅が予め設定されている。そして、監視部31は、これら2本の基準ラインによって挟まれる領域内に、各検出ライン上で検出された明度の高い位置が所定数以上入っていない場合に、割れや欠けなどの損傷が基板Sの端面Se1に形成されていると判断する。
【0067】
また、監視部31は、基準となる外縁の形状に囲まれる位置であって、かつ、外縁の形状から所定の距離だけ離れた位置に明度の高い部分が位置するとき、基板Sの端面Se1から基板Sの内部に向けてクラックが形成されていると判断する。
【0068】
なお、上述したスパッタ装置10では、基板監視方法が、例えば、以下のような手順で実施される。
すなわち、図8が示すように、第1照射工程(ステップS21)、第1撮像工程(ステップS22)、成膜工程(ステップS23)、第2照射工程(ステップS24)、および、第2撮像工程(ステップS25)が順番に実施される。なお、第1照射工程が開始される前に、制御部40が、搬送ロボット15に、基板Sを搬送チャンバ11からスパッタチャンバ13に搬入させる。
【0069】
また、第1照射工程が開始される前に、制御部40が、昇降機構26bに、昇降ピン26aを上昇させる。そして、昇降ピン26aの先端部が基板Sの裏面に接触し、搬送ロボット15に、基板Sを昇降ピン26aに受け渡させて、スパッタチャンバ13の外部に移動させる。これにより、制御部40は、昇降ピン26aに、基板Sを上昇位置にて保持させる。
【0070】
そして、第1照射工程では、制御部40が、レーザー照射部29に、レーザー光線Lの照射を開始させ、レーザー光線Lが、基板Sの1つの角部Scに当たる。これにより、基板Sの内部にレーザー光線Lが導入されることで、基板Sの導出部Soからレーザー光線Lが導出される。結果として、基板Sの端面Se1の明度が、基板Sの他の部分、および、昇降ピン26aの明度よりも高くなる。
【0071】
次いで、第1撮像工程では、制御部40が、撮像部27に、基板Sの端面Se1の全体を撮像させる。なお、撮像部27による端面Se1の撮像が終了すると、制御部40は、レーザー照射部29に、レーザー光線Lの照射を終了させる。このとき、例えば、制御部40が、撮像部27の撮像結果を取得することで、撮像部27による撮像の終了を判断し、レーザー照射部29がレーザー光線Lの照射を終了するための信号を生成して、レーザー照射部29に向けて出力してもよい。
【0072】
成膜工程では、まず、制御部40が、昇降機構26bに昇降ピン26aを下降させて、基板Sを基板ステージ24の載置面24aに載置する。次いで、制御部40が、クランプ28を退避位置から固定位置に移動させて、基板Sを載置面24aに固定する。基板Sがクランプ28によって固定されると、制御部40は、姿勢変更部25に、基板ステージ24の姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変えさせる。
【0073】
そして、姿勢変更部25が、基板ステージ24の姿勢を起立姿勢に維持した状態で、ターゲット23がスパッタされることにより、基板Sの表面に膜が形成される。膜の形成が終了すると、姿勢変更部25が、基板ステージ24の姿勢を起立姿勢から水平姿勢に変え、クランプ28が、固定位置から退避位置に移動する。
【0074】
次いで、第2照射工程が開始される前であって、成膜工程と第2照射工程との間では、制御部40が、昇降機構26bに、昇降ピン26aを上昇させる。これにより、昇降ピン26aが、基板Sを上昇位置に保持する。そして、第2照射工程において、制御部40が、レーザー照射部29に、レーザー光線Lの照射を開始させ、レーザー光線Lが、基板Sの1つの角部Scに当たる。
【0075】
その後、第2撮像工程において、制御部40が、撮像部27に、基板Sの端面Se1の全体を撮像させる。なお、撮像部27による端面Se1の撮像が終了すると、制御部40は、レーザー照射部29に、レーザー光線Lの照射を終了させる。
【0076】
また、レーザー光線Lの照射が終了すると、制御部40は、搬送ロボット15に、搬送チャンバ11からスパッタチャンバ13の内部に進入させ、昇降ピン26aから成膜後の基板Sを受け取らせる。そして、制御部40は、搬送ロボット15に、成膜後の基板Sをスパッタチャンバ13から搬出させる。
【0077】
なお、監視工程は、例えば、以下のタイミングで実施される。監視工程は、第1撮像工程での処理が行われてから、基板ステージ24の姿勢が起立姿勢に変えられる前までの間に行われる。そして、監視部31が、基板Sに損傷が形成されていると判断したときには、制御部40は、成膜工程以降の処理を中止することが好ましい。こうした構成によれば、損傷を有した基板Sへの成膜が行われないため、ターゲット23の無駄な消費を抑えることができる。
【0078】
また、損傷を有した基板Sへ成膜が行われた場合には、基板Sの割れや欠けに向けて飛行した成膜種が、基板ステージ24の載置面24aに付着する。そして、基板ステージ24に付着した膜が剥がれることによって、スパッタチャンバ13の内部にパーティクルが発生してしまう。この点で、本実施形態のように、基板Sに割れや欠けが生じているときに、成膜工程以降の処理が中止される構成であれば、上述のような不要な領域に膜が形成されることが抑えられるため、スパッタチャンバ13内でパーティクルの発生する量を小さくすることも可能である。
【0079】
さらに、損傷を有する基板Sが、基板ステージ24の姿勢が変わることに伴って、搬送ロボット15によって回収できない程度に小さい複数の断片に分かれることも抑えられるため、割れた基板を回収するためにスパッタチャンバ13を開放する頻度を低くすることが可能である。
【0080】
また例えば、監視工程は、第2撮像工程での処理が行われてから、基板Sがスパッタチャンバ13から搬出される前までの間に行われる。
ここで、スパッタ装置10が、2つのスパッタチャンバ13において相互に異なる膜を形成する構成であって、かつ、1番目のスパッタチャンバ13において基板Sに対して成膜を行った後に、2番目のスパッタチャンバ13において基板Sに対して成膜を行う構成であれば、以下の作用および効果を得ることができる。
【0081】
すなわち、1番目のスパッタチャンバ13の備える監視部31が、基板Sに損傷が形成されていると判断したときには、制御部40は、1番目のスパッタチャンバ13から2番目のスパッタチャンバ13への搬送を中止することが好ましい。これにより、損傷を有する基板Sが2番目のスパッタチャンバ13に搬送されることが回避され、結果として、基板Sが、搬送ロボット15の搬送によって割れること、および、2番目のスパッタチャンバ13の備えるターゲット23が無駄に消費されることが抑えられる。また、こうした構成によれば、1番目のスパッタチャンバ13と搬送チャンバ11との間の仕切弁が閉じた状態で、作業者が1番目のスパッタチャンバ13を大気に開放することによって、損傷を有した基板Sを回収することができる。
【0082】
また、スパッタ装置10が、2つのスパッタチャンバ13において相互に同じ膜を形成する構成であれば、以下の作用および効果を得ることができる。
すなわち、一方のスパッタチャンバ13の備える監視部31が、基板Sに損傷が形成されていると判断したときには、制御部40は、一方のスパッタチャンバ13から搬送チャンバ11への搬送を中止することが好ましい。加えて、制御部40は、一方のスパッタチャンバ13と搬送チャンバ11との間の仕切弁が閉じた状態に維持し、かつ、一方のスパッタチャンバ13における基板Sへの成膜を中止し、他方のスパッタチャンバ13のみを用いて基板Sに対する成膜を行ってもよい。
【0083】
なお、第1撮像工程の撮像結果に対する監視工程と、第2撮像工程の撮像結果に対する監視工程とは、成膜後の基板Sがスパッタチャンバ13から搬送された後に行われてもよい。
【0084】
また、第1撮像工程と第2撮像工程とのうち、いずれかの工程が割愛されてもよい。ここで、基板Sの損傷は、例えば、基板Sが搬送チャンバ11を通ってスパッタチャンバ13に搬入されるまでの間に形成されることがある。そのため、撮像工程が1回のみ行われる場合であって、基板Sに膜が形成されるよりも前に形成された損傷を検出したい場合には、成膜工程よりも前に撮像工程が行われることが好ましい。
【0085】
また、例えば、基板Sの損傷は、カソード14から基板Sへの入熱によって、成膜工程の間に形成されることがある。そのため、撮像工程が1回のみ行われる場合であって、成膜工程中に基板Sに形成された損傷を検出したい場合には、成膜工程よりも後に撮像工程が行われることが好ましい。
【0086】
また、レーザー照射部29によるレーザー光線Lの照射は、第1照射工程で開始されてから、第2撮像工程が終わるまでの間にわたって続けられてもよい。この場合には、成膜工程の前にレーザー光線の照射を終了するための処理と、第2照射工程での処理とが割愛されればよい。あるいは、レーザー光線Lの照射は、基板Sがスパッタチャンバ13に搬入されるよりも前の時点で開始され、かつ、複数の基板Sがスパッタチャンバ13の内部で処理される間にわたって続けられてもよい。この場合には、第1照射工程での処理、および、第2照射工程での処理が割愛されればよい。
【0087】
[スパッタ装置の作用]
図9を参照してスパッタ装置10の作用を説明する。
スパッタチャンバ13において、撮像部27が、レーザー光線Lの照射先である照射位置P1とは異なる部位に位置している。これにより、基板Sのうち、割れや欠けなどの損傷が形成される部分である基板Sの端面Se1の少なくとも一部を撮像することができる。そして、被照射位置P3と導出位置P4とを含む高明度位置P5では、レーザー照射部29の照射によって、他の位置よりも明度が高められているため、撮像部27の撮像した画像には、高明度位置P5に位置する基板の端面Se1の状態が収められる。すなわち、レーザー光線Lの照射によって撮像部27に写った端面Se1の光学像が、撮像部27の撮像した画像に収められる。結果として、レーザー照射部29の位置に対して撮像部27の位置の自由度を高めた状態で、基板Sの端面Se1を監視することができる。
【0088】
図9が示すように、レーザー照射部29の照射したレーザー光線Lは、基板Sの1つの角部Scから基板Sの内部に導入される。そのため、レーザー光線Lに含まれる光のうち、基板Sの内部に導入されたレーザー光線L1,L2,L3の各々は、基板Sに導入されたときに端面Se1と形成する角度に応じて、基板Sの内部で反射する。一方で、レーザー光線Lが、端面Se1のうち、角部Scとは異なる部分に対して、基板Sの端面Se1とほぼ垂直な方向から当てられたとき、基板Sに導入されたレーザー光線Lは、基板Sの内部でほとんど反射されない。こうした構成では、撮像部27で撮像された画像において、基板Sの端面Se1の全体が認識されることが可能な状態であるためには、スパッタ装置10が、複数の照射部を備える必要がある。そして、複数の照射部が、基板Sの端面Se1に向けてレーザー光線を同時に照射することによって、端面Se1の全体の明度が高くなるようにしなければならない。
【0089】
これに対して、本実施形態におけるレーザー照射部29によれば、基板Sに導入された光が、基板Sの内部で反射されて、基板Sにおけるより広い領域に拡がりやすい。それゆえに、基板Sの端面Se1のうち、基板Sの内部に入射した光を導出する導出部Soの領域が大きくなる。結果として、基板Sの端面Se1のうち、レーザー光線Lが当たる部分以外の全ての部分を導出部Soとする上で、レーザー照射部29の数を減らすことができる。
【0090】
図10が示すように、基板Sが光透過性を有するため、基板Sに当たったレーザー光線Lは、基板Sの内部に導入され、基板Sの内部に導入されたレーザー光線Lは、端面Se1に含まれる導出部Soから導出される。端面Se1は、端面Se1から導出されるレーザー光線Lを散乱させる程度の面粗さを有している。そのため、端面Se1からレーザー光線Lが導出されるとき、端面Se1においてレーザー光線Lが散乱される。これにより、端面Se1において散乱されたレーザー光線Lによって、基板Sの端面Se1における明度が高められる。また、レーザー光線Lが端面Se1において散乱されない構成と比べて、端面Se1から導出されるレーザー光線Lの射出角の範囲が大きくなる。
【0091】
以上説明したように、基板監視装置および基板監視方法の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)レーザー照射部29の位置に対する撮像部27の位置の自由度が高められた状態で、基板Sの端面Se1の状態を監視することができる。
【0092】
(2)レーザー照射部29が点光源であるため、基板Sにおける端面Se1の明度と、基板Sにおける他の部分の明度や、昇降ピン26aの明度との差が大きくなる。
(3)基板Sの角部Scにレーザー光線Lが当たるため、基板Sに導入されたレーザー光線Lが、基板Sの内部で反射して、基板Sにおけるより広い領域に拡がりやすい。それゆえに、基板Sの端面Se1のうちで、導出部Soの占める割合が大きくなる。
【0093】
(4)レーザー光線Lが端面Se1における厚さ方向の全体に当たりやすい。これにより、基板Sの端面Se1から基板Sの内部に導入される光量が大きくなるため、基板Sの導出部Soから基板Sの外部に導出されるレーザー光線Lの光量も大きくなる。
【0094】
(5)レーザー光線Lが基板S内にて反射されて、基板Sの端面Se1にまで基板Sの内部を透過するため、基板Sの端面Se1の像を形成することができる。
(6)透過経路PPと撮像方向Diとが形成する角度がより小さい構成と比べて、基板Sにおける端面Se1の像が、基板Sの端面Se1とほぼ同等の形状で撮像部27の受光面に形成される。それゆえに、撮像結果の監視が行いやすくなる。
【0095】
[第1実施形態の変形例]
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
[撮像工程の変形例]
[第1変形例]
・撮像工程において、撮像部27は、上昇位置から載置位置に向けて移動している基板Sを撮像してもよいし、載置位置から上昇位置に向けて移動している基板Sを撮像してもよい。
【0096】
図11を参照して、撮像部27が、上昇位置から載置位置に向けて移動している基板Sを撮像する撮像工程を説明する。なお、載置位置から上昇位置に向けて移動している基板Sを撮像する工程は、上昇位置から載置位置に向けて移動している基板Sを撮像する工程と比べて、重力方向において基板Sの移動する方向が異なるものの、撮像部27の動作、および、レーザー照射部29の動作は共通している。そのため、撮像部27が、載置位置から上昇位置に移動している基板Sを撮像する工程の説明を省略する。
【0097】
図11が示すように、チャンバ本体21に対する位置が固定されたレーザー照射部29の照射するレーザー光線Lの光軸Laに対して、昇降ピン26aが上昇位置から載置位置に向けて重力方向に沿って移動している。このとき、基板Sは、例えば、重力方向における上側から順番に、第1位置、第2位置、および、第3位置に位置する。
【0098】
以下では、第1位置に位置する基板Sを基板S1と呼び、第2位置に位置する基板Sを基板S2と呼び、第3位置に位置する基板Sを基板S3と呼ぶ。なお、基板Sの移動時には、基板Sが、例えば、重力方向において、複数の昇降ピン26aの各々の先端部と異なる位置で接する場合がある。この場合、基板Sは、レーザー光線Lの光軸Laに対して、傾きを有して配置されている。すなわち、基板Sの端面Se1に対してレーザー光線Lの光軸Laが傾きを有するため、レーザー光線Lは、基板Sの端面Se1に対して垂直に導入されにくい状態である。
【0099】
このような状態において、基板Sが第2位置まで下降したとき、初めて基板Sの端面Se1にレーザー光線Lが導入される。次に、基板Sが第3位置まで下降したときには、レーザー光線Lが、基板S3の端面Se1には照射されない一方で、基板Sの表面の一部に照射される。
【0100】
そして、昇降ピン26aが上昇位置から載置位置に向けて、重力方向に沿って基板Sを移動させているとき、撮像部27は、基板S1、基板S2、および、基板S3を撮像する。
【0101】
なお、こうした構成では、例えば、制御部40が、撮像部27の動作を以下のように制御すればよい。すなわち、制御部40は、重力方向における基板Sの位置に関する情報として、昇降ピン26aを昇降させるためのモーターの回転数に関する情報を取得する。そして、制御部40は、取得した情報から基板Sの位置が、第1位置、第2位置、および、第3位置のいずれかであると判断したときに、撮像部27に撮像させるための信号を生成して、撮像部27に向けて出力する。次いで、制御部40からの信号を取得した撮像部27が、撮像範囲Cに含まれる基板Sを撮像する。
【0102】
また、制御部40は、昇降ピン26aを昇降させるためのモーターが動作している期間にわたって、撮像部27に撮像させるための信号を所定の時間間隔で複数回生成して撮像部27に向けて出力し、撮像部27が撮像範囲Cに含まれる基板Sを撮像してもよい。撮像部27が所定の時間間隔で複数回撮像することにより、撮像部27が撮像した複数の画像には、基板S1を含む画像、基板S2を含む画像、および、基板S3を含む画像が含まれる。
【0103】
ここで、基板Sが第1位置に配置されるとき、基板S1にはレーザー光線Lが照射されないため、撮像された画像を用いて、上述した検出用ライン上における基板Sの端面Se1の位置情報を得ることはできない。
【0104】
次に、基板Sが第2位置に配置されるとき、基板S2の端面Se1に対してレーザー光線Lの光軸Laが傾いた状態で照射されるために、レーザー光線Lが端面Se1に対してほぼ垂直に照射される場合と比べて、基板S2の内部に導入されるレーザー光線Lの量が小さくなる可能性がある。この場合には、基板S2の端面Se1のうちレーザー光線Lが導出される導出部Soの領域が小さくなる、もしくは、導出部Soの明度が小さくなる部分が生じ、基板S2の端面Se1の全体において、検出用ライン上における端面Se1の位置情報を得ることが難しくなる場合がある。
【0105】
また、基板Sが第3位置に配置される場合も、レーザー光線Lは上述したように、基板S3の端面Se1から外れた位置に照射されるため、上述の基板S2の場合と同様に、基板S3の内部に導入されるレーザー光線Lの量は小さくなる。しかしながら、この場合でも、基板S3の表面の一部に照射されたレーザー光線Lが、基板S3の内部に導入されることで、基板S3の端面Se1に、少なからず導出部Soが得られる場合がある。
【0106】
そこで、監視部31は、基板S1を撮像した撮像結果、基板S2を撮像した撮像結果、および、基板S3を撮像した撮像結果を合成して、それぞれの撮像結果において、基板Sの端面Se1の全体に対して不足する部分を補うことで、基板Sの端面Se1の全体において、検出用ライン上における端面Se1の位置情報を得る。これにより、基板Sにおける損傷の有無を判断することが可能になる。
【0107】
ここで、基板Sの厚さTは、上述のように1mmにも満たない厚さである場合がある。このとき、昇降ピン26aに載置された基板Sは、昇降ピン26aの数や、昇降ピン26aに対する基板Sの位置によって、以下のような状態である場合がある。すなわち、基板Sの全体が1つの平面に沿った状態であることや、基板Sの外縁部が、基板Sの中央部と比べて、重力方向における下側に向けて垂れ下がっていることや、基板Sの中央部が、他の部分よりも重力方向の上側に向けて突き出ていることがある。このような場合には、基板Sの端面Se1は、図11が示すように、レーザー光線Lの光軸Laに対して傾きを有した状態となってしまう。この点で、撮像工程として、重力方向における複数の位置において基板Sを撮像する工程を採用すれば、基板Sにおける損傷の有無を判断することが可能になる。
【0108】
また、このような薄板の基板であって、複数の基板に対して連続して成膜処理が行われる場合には、各基板における変形の状態が、他の残りの基板における変形の状態と相互に異なる可能性が高い。そのため、レーザー光線Lと基板Sの撮像位置とが一対一で固定されると、基板における変形の状態により、基板Sに対してレーザー光線Lが導入されたり導入されなかったりする。
【0109】
このような場合でも、重力方向における複数の位置の各々において、基板Sを撮像する撮像工程を採用することで、基板Sに対してレーザー光線Lが導入された基板を撮像する機会を増やすことが可能となる。そして、複数の撮像結果の各々において、基板Sの端面Se1の全体に対する不足部分を複数の撮像結果を用いて補完することで、基板Sの端面Se1の全体において、検出用ライン上における端面Se1の位置情報を得ることができ、基板Sにおける損傷の有無を判断することが可能となる。
【0110】
・第1変形例では、撮像工程において、基板Sが上昇する間または下降する間に、撮像部27が複数の位置における基板Sを撮像するが、これに限らず、第1変形例は以下のように変更してもよい。すなわち、撮像部27が撮像する回数は1回であって、かつ、撮像部27の撮像時間、言い換えれば露光時間を、基板Sの上昇の開始から終了までの間、あるいは、下降の開始から終了までの間に設定してもよい。これにより、撮像時間内で得られる撮像結果の明度の積算値、もしくは、最大値を用いて明度の高い部分を得て、基板Sの端面Se1の全体において、検出用ライン上における端面Se1の位置情報を得ることが可能である。
【0111】
・第1変形例では、基板Sが載置位置から上昇位置に移動するまでの間、あるいは、上昇位置から載置位置に移動するまでの間に、監視部31が、基板Sにおける損傷の有無の判断を完了することが好ましい。これにより、基板Sの姿勢が水平姿勢から起立姿勢に変わる前、あるいは、基板Sが搬送ロボット15によって搬送される前に、基板Sにおける損傷の有無が判断される。それゆえに、損傷を有する基板Sが、基板Sの姿勢が変わることによって割れたり、搬送ロボット15によって搬送されることによって割れたりすることが抑えられる。
【0112】
・なお、第1実施形態における撮像工程と、第1変形例における撮像工程とを組み合わせて実施してもよい。
[第2変形例]
・撮像部27が、搬送ロボット15によって搬送されている基板Sを撮像してもよい。こうした構成では、例えば、撮像部27の撮像範囲Cには、スパッタチャンバ13の搬出入口21aが含まれる。そして、撮像部27は、搬出入口21aに対する搬送ロボット15、例えば、基板Sの搬送方向における搬送ロボット15の一端である先端の位置が、相互に異なる複数の位置の各々に位置するときに、基板Sを撮像する。
【0113】
そして、監視部31は、複数の撮像結果を用いて、検出ライン上における端面Se1の位置情報を得て、基板Sにおける損傷の有無を判断する。
なお、こうした撮像方法、および、撮像方法を実施するための構成は、上述した実施形態におけるスパッタ装置10、すなわち、マルチチャンバ式のスパッタ装置に限らず、基板Sをほぼ重力方向に沿って起立された状態で、基板Sの搬送、および、基板Sに対する処置を行う装置であるインライン型の装置にも適用することができる。
【0114】
[他の変形例]
・レーザー照射部29の照射口29aの直径Dは、基板Sの厚さT以下であってもよい。こうした構成であっても、上述した(1)から(3)、(5)、および、(6)に準じた効果を得ることはできる。
【0115】
・スパッタチャンバ13は、複数のレーザー照射部29を備えてもよい。こうした構成では、レーザー照射部29の数が4つ以下であるとき、各レーザー照射部29が、チャンバ本体21の四隅に1つずつ配置されることが好ましい。そして、昇降ピン26aが、基板Sの4つの角部Scを、各レーザー照射部29の被照射位置P3に配置することが好ましい。
【0116】
・レーザー照射部29は、基板Sの端面Se1のうち、基板Sの角部Scとは異なる部位にレーザー光線Lを当ててもよい。すなわち、昇降ピン26aは、基板Sの端面Se1のうち、基板Sの角部Scとは異なる部位を被照射位置P3に配置してもよい。こうした構成であっても、上述した(1)、(2)、および、(4)から(6)に準じた効果を得ることはできる。
【0117】
・レーザー照射部29は、線光源であってもよい。こうした構成であっても、上述した(1)、(3)、および、(4)から(6)に準じた効果を得ることはできる。
・基板Sの端面Se1のうちレーザー光線Lの当たる角部Scを除く、端面Se1の一部が導出部Soであってもよい。こうした構成では、撮像部27は、基板Sのうち、レーザー光線Lの照射される角部Scと、導出部Soとを撮像すればよい。これにより、撮像部27は、基板Sの端面Se1のうち、少なくとも撮像部27によって撮像された部分の監視をすることはできる。
【0118】
また、角部Scを除く端面Se1の一部が導出部Soであるときには、レーザー照射部29が、基板Sの端面Se1のなかで、レーザー光線Lの当たる部位を変えるための位置変更機構を備えることが好ましい。これにより、レーザー照射部29が、基板Sのなかでレーザー光線Lの当たる部位を変えることで、基板Sの端面Se1内において導出部Soの位置を変えることができる。そして、撮像部27の撮像範囲Cが、基板Sの導出部Soの位置を含むことによって、基板Sの端面Se1の全体を明度の高い状態で撮像することが可能にもなる。
【0119】
なお、角部Scを除く端面Se1の全ての部分が導出部Soであっても、レーザー照射部29が位置変更機構を備えてもよい。
・基板Sは四角形形状以外の形状を有してもよく、例えば、円板形状を有してもよいし、基板Sは、1つの方向に沿って延びる帯形状を有してもよい。こうした構成であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0120】
・撮像部27は、チャンバ本体21の上壁に限らず、チャンバ本体21のうち、例えば、側壁や下壁などの他の位置に配置されてもよい。また、レーザー照射部29は、チャンバ本体21の四隅のいずれかに限らず、チャンバ本体21のうち、例えば、側壁などの他の位置に配置されてもよい。要は、撮像部27が、高明度位置P5に配置された端面Se1の少なくとも一部を撮像範囲Cに含むように配置され、かつ、レーザー照射部29が、撮像部27とは異なる位置に向けてレーザー光線Lを照射する構成が満たされていればよい。
【0121】
・レーザー照射部29が基板Sにレーザー光線Lを当てるとき、基板Sの姿勢は、基板ステージ24によって保持されてもよい。こうした構成では、基板ステージ24が配置部の一例である。ただし、基板ステージ24は、載置面24aに基板Sの裏面が接触している状態で、基板Sの姿勢を保持するため、レーザー照射部29の照射したレーザー光線Lが、基板ステージ24にも当たりやすい。これにより、基板Sの端面Se1以外の部分が、基板Sの端面Se1と同じ程度の明度を有してしまうため、監視部31が、端面Se1以外の部分を端面Se1として誤って認識しやすい。この点で、レーザー照射部29が基板Sにレーザー光線Lを当てるとき、基板Sの姿勢は、基板ステージ24の載置面24aから離れた状態で、昇降ピン26aによって保持されることが好ましい。
【0122】
・基板ステージ24によって保持された基板Sにレーザー照射部29がレーザー光線Lを当てるときには、基板ステージ24の姿勢は水平姿勢であってもよいし、起立姿勢であってもよい。すなわち、レーザー照射部29は、ほぼ水平な状態で基板ステージ24に保持された基板Sに対してレーザー光線Lを当てるように構成されてもよいし、ほぼ垂直な状態で基板ステージ24に保持された基板Sに対してレーザー光線Lを当てるように構成されてもよい。
【0123】
なお、基板ステージ24は、いずれの構成においても、撮像部27の撮像範囲内に基板Sを配置していればよい。そして、レーザー照射部29が、撮像範囲内に配置された基板Sにレーザー光線Lを当て、端面Se1においてレーザー光線Lの散乱光を生じさせて、端面Se1の像を撮像結果として撮像部27の受光面に形成するように構成されていれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0124】
・レーザー照射部29が基板Sにレーザー光線Lを当てるとき、基板Sの姿勢は、搬送ロボット15によって保持されてもよい。こうした構成では、搬送ロボット15が配置部の一例である。ただし、搬送ロボット15は、基板ステージ24と同様、基板Sの裏面と接触した状態で、基板Sの姿勢を保持する。そのため、基板ステージ24が配置部である場合と同様の理由で、基板Sの姿勢は、昇降ピン26aによって保持されることが好ましい。
【0125】
・撮像部27が撮像する機能を保持することが可能であれば、撮像部27は、チャンバ本体21の内部に配置されてもよい。
・撮像部27と基板ステージ24との距離が、撮像部27の撮像範囲Cに基板Sの端面Se1の一部のみしか含まれない程度に小さいときには、撮像部27は、撮像範囲Cから撮像部27に対して光が入射する方向である撮像方向と基板Sの法線とが形成する角度である撮像角度を変えることのできる角度変更機構を備えることが好ましい。角度変更機構は、例えば、撮像角度を0°以上90°以下の範囲で変えることのできる構成であればよい。こうした構成によれば、撮像部27が、撮像角度を変えつつ基板Sの端面Se1を撮像することで、撮像部27が、基板Sの端面Se1の全体を撮像することができる。
【0126】
・撮像部27は、上述した角度変更機構に代えて、チャンバ本体21に対する撮像部27の位置を変えることのできる位置変更機構を備えていてもよい。位置変更機構が、撮像部27の位置を変更することで、基板Sのなかで、撮像部27の撮像範囲Cに含まれる部位を変えることができる。なお、撮像部27は、撮像角度を変更する角度変更機構と、位置変更機構との両方を備えていてもよい。
【0127】
・レーザー照射部29は、レーザー光線Lを照射する機能を保持することが可能であれば、チャンバ本体21の内部に配置されてもよい。
・監視部31は、以下に説明する第1の方法によって、基板Sの端面Se1が損傷を有するか否かを判断してもよい。すなわち、監視部31は、第1実施形態で述べた基板監視方法において、各検出ライン上で得られた明度の高い部分の位置情報に基づき、基板Sの端面Se1に沿う近似曲線を一次関数すなわち直線として算出し、これを基板Sの外縁に相当する近似直線に設定する。そして、監視部31は、この近似直線の少なくとも一部が、2本の基準ラインによって挟まれる領域内に入っていない場合に、基板Sの端面Se1が損傷を有すると判断する。
【0128】
・さらに、監視部31は、以下に説明する第2の方法によって、基板Sの端面Se1が損傷を有するか否かを判断してもよい。すなわち、監視部31は、上述した基板Sの外縁に相当する近似直線を基準に、近似直線と平行な2本の基準ラインであって、近似直線と直交する方向において近似直線を挟む2本の基準ラインを設定する。2本の基準ラインは、第1ラインと第2ラインとから構成され、第1ラインと第2ラインの各々は、近似直線と直交する方向において近似直線から所定値だけ離れている。
【0129】
そして、監視部31は、これら2本の基準ラインによって挟まれる領域内に、各検出ライン上で検出された明度の高い位置が所定数以上入っていない場合に、基板Sの端面Se1が損傷を有すると判断する。
【0130】
こうした第2の方法は、基板Sの外縁の位置が、撮像範囲内、特に、撮像範囲内の一部である画像処理の範囲内において不安定である場合であって、基準となる基板の外形の位置に対する基板Sの位置のずれが、基板Sの端面Se1が損傷を有すると判断するためのずれと同じ程度に大きくなる場合に有効である。
【0131】
こうした場合には、第1実施形態において説明された方法、および、第1の方法のように、監視部31が、基準となる基板の外縁の位置を設定し、これに基づき予め2本の基準ラインを設定したとしても、基準となる基板の外形の位置に対する基板Sの位置のずれが、端面Se1における損傷であると判断される場合がある。
【0132】
これに対して、第2の方法によれば、基板Sの外縁に相当する近似直線を基準に2本の基準ラインが設定されるため、基板Sの位置のずれが、基板Sの端面Se1における損傷であると誤判断されることが抑えられる。
【0133】
なお、基板Sの位置が撮像範囲内で不安定である場合とは、例えば、昇降ピン26aにより支持された基板Sにおける水平方向での位置が、基板Sの昇降を通じて撮像範囲内において変わる場合である。また例えば、基板Sの位置が撮像範囲内で不安定である場合とは、搬送ロボット15により基板Sがスパッタチャンバ13に搬入される際に、昇降ピン26aの位置に対する基板Sの位置が、基準となる位置に対してずれる頻度が高い場合などである。
【0134】
・監視部31は、第1実施形態において説明された方法、第1の方法、および、第2の方法を組み合わせて実施し、3つの方法のうち、2つ以上の方法によって、基板Sの端面Se1が損傷を有しないと判断された場合に、基板Sの端面Se1が損傷を有しないと判断してもよい。このように、複数の方法を組み合わせて端面Se1における損傷の有無を判断することで、基板Sの位置の不安定さや明度の高い位置の誤検出などの要因により誤った判断が生じる確率を低くことが可能となる。結果として、複数の方法の組み合わせによれば、より正確に、基板Sの端面Se1における損傷の有無を判断することが可能となる。
【0135】
なお、監視部31は、第1実施形態において説明された方法、第1の方法、および、第2の方法のうち、いずれか2つの方法を組み合わせて実施してもよい。この場合には、2つの方法によって基板Sの端面Se1が損傷を有していないと判断された場合に、基板Sの端面Se1が損傷を有しないと判断すればよい。こうした構成であっても、1つの方法によって基板Sの端面Se1における損傷の有無を判断するよりも、誤判断が生じる確率を低くすることができる。
【0136】
・基板監視装置を構成する要素であって、監視部31以外の要素、すなわち、撮像部27、レーザー照射部29、および、配置部は、スパッタチャンバ13でなく、搬送チャンバ11やロードロックチャンバ12に配置されてもよい。あるいは、スパッタ装置10が他のチャンバを備える構成であれば、基板監視装置のうち、監視部31以外の要素は、他のチャンバに配置されてもよい。
【0137】
・基板監視装置は、スパッタ装置10に限らず、基板Sに対して蒸着によって膜を形成する蒸着装置、基板Sに対してCVD法を用いて膜を形成するCVD装置、および、基板Sをエッチングするエッチング装置などの各種の基板処理装置に適用されてもよい。
【0138】
・上述した第1実施形態の構成、および、各変形例の構成は、適宜組み合わせて実施することも可能である。
[第2実施形態]
図12から図16を参照して、基板監視装置をスパッタ装置に適用した第2実施形態を説明する。第2実施形態のスパッタ装置は、第1実施形態のスパッタ装置と比べて、基板に対するレーザー光線の照射の仕方が異なる。そのため、以下では、第1実施形態との相違点を詳しく説明する一方で、第1実施形態と共通する構成には第1実施形態と同じ符号を付すことによってその説明を省略する。
【0139】
なお、以下では、スパッタチャンバの構成、スパッタ装置の作用、基板監視方法を順番に説明する。
[スパッタチャンバの構成]
図12から図15を参照してスパッタチャンバ13の構成を説明する。なお、図13では、図示の便宜上から、基板Sと、基板Sの上方に位置する撮像部であって、スパッタチャンバ13の外部に位置する撮像部との両方が実線で示されている。
【0140】
図12が示すように、スパッタチャンバ13の上面視において、チャンバ本体21の上壁21eであって、チャンバ本体21の外側には、4つの撮像部51と、4つのレーザー照射部52とが位置している。チャンバ本体21の上壁21eには、4つの撮像窓21bと、1つの照射窓21cとが形成され、4つの撮像窓21bのうち、2つの撮像窓21bの各々は、照射窓21cとしても機能する。重力方向と平行な方向がZ方向であり、各撮像窓21b、および、各照射窓21cは、Z方向に沿って上壁21eを貫通している。
【0141】
各撮像部51、および、各レーザー照射部52は、Z方向において、基板Sの一部と重なっている。Z方向と直交する1つの方向がX方向であり、X方向と直交する方向がY方向である。基板Sは、X方向とY方向とに沿って拡がる矩形形状を有している。スパッタチャンバ13の上面視において、基板Sは、矩形枠形状を有する縁Se2を有し、基板Sの縁Se2と、基板Sの端面Se1とが、基板Sの端部Seを構成している。基板Sの縁Se2は、基板Sの表面の一部であって、表面における外縁と、外縁よりも内側の部分とを含み、縁Se2は、例えば、表面における外縁から数十mm程度内側の部分までの領域である。
【0142】
各レーザー照射部52は、基板Sの端部Seにおける一部に向けてレーザー光線Lを照射し、基板Sの端部Seにおいて、各レーザー照射部52による被照射部は、残りのレーザー照射部52による被照射部とは相互に異なっている。基板Sの端部Seのうち、X方向に沿って延びる2つの部分の各々には、互いに異なるレーザー照射部52がレーザー光線Lを照射する。基板Sの端部Seのうち、Y方向に沿って延びる2つの部分の各々には、互いに異なるレーザー照射部52であって、かつ、端部Seのうち、X方向に沿って延びる部分にはレーザー光線Lを照射しないレーザー照射部52が、レーザー光線Lを照射する。
【0143】
図13が示すように、基板Sの表面と対向する平面視において、基板Sは、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、および、第4領域R4に等分されている。基板Sにおいて、第1領域R1と第2領域R2とがY方向に沿って並び、第3領域R3と第4領域R4とがY方向に沿って並んでいる。また、基板Sにおいて、第1領域R1と第3領域R3とがX方向に沿って並び、第2領域R2と第4領域R4とがX方向に沿って並んでいる。
【0144】
基板Sの表面と対向する平面視において、各領域の一部と、1つの撮像部51とが重なっている。各撮像部51は所定の撮像範囲Cを有し、昇降ピン26aは、基板Sのうち、各撮像部51と重なる領域のなかで、少なくとも基板Sの端部Seの全体が撮像範囲C内に含まれるように、基板Sを配置する。
【0145】
図14が示すように、各レーザー照射部52は、撮像範囲C内に配置された基板Sのうち、基板Sの端部Seにレーザー光線Lを照射する。これにより、レーザー照射部52は、基板Sの端部Seでレーザー光線Lを反射および散乱させて、端部Seの像を撮像部51の受光面に形成する。
【0146】
複数のレーザー照射部52のうち、レーザー光線LをX方向に沿って延びる端部Seに向けて照射するレーザー照射部52において、Z方向における照射口52aからの距離が大きくなるほど、X方向に沿うレーザー光線Lの幅である照射幅Wが大きくなる。これにより、レーザー照射部52は、基板Sの端部Seに沿って延びる帯形状を有したレーザー光線Lを、基板Sの端部Seのうち、X方向に沿って延びる部分の全体に当てる。レーザー光線Lの照射幅Wは、端部Seのうち、X方向に沿って延びる部分の長さ以上の長さである。
【0147】
レーザー照射部52によれば、レーザー光線Lが帯状に延びる分だけ、基板Sの端部Seのうち、撮像部51の受光面に像として形成される部分が拡がる。
図15が示すように、Z方向は、基板Sの表面における法線方向、および、基板ステージ24の載置面24aにおける法線方向と平行な方向であり、レーザー光線Lにおいて、レーザー光線Lの延びる方向と、Z方向とが形成する角度が照射角θである。照射角θは、0°よりも大きく90°未満である。すなわち、レーザー照射部52は、Z方向とは平行でない方向に沿って、レーザー光線Lを端部Seに向けて照射する。
【0148】
こうしたレーザー照射部52によれば、基板Sの端部Seに向けて照射されたレーザー光線Lの一部が、昇降ピン26aのうち、Z方向において基板Sの端部Seと重なる部分、および、基板ステージ24のうち、Z方向において基板Sの端部Seと重なる部分に当たることが抑えられる。そのため、撮像部51が撮像する像のなかで基板S以外の部分における明度が高められることが抑えられ、基板S以外の部分が、基板Sの端部Seとして誤認識されることが抑えられる。
【0149】
また、上述したレーザー照射部52によれば、Z方向に沿って基板Sの端部Seに向けてレーザー光線Lを照射する構成と比べて、Z方向における照射口52aと基板Sの端部Seとの間の距離を大きくすることなく、照射口52aと基板Sの端部Seとの間の距離を大きくすることができる。それゆえに、基板Sの端部Seに当たる位置でのレーザー光線Lの照射幅Wを大きくすることができる。
【0150】
[スパッタ装置の作用]
図16および図17を参照してスパッタ装置10の作用を説明する。なお、以下では、基板Sがレーザー光線Lに対する透過性を有した基板であり、成膜前の基板Sに対してレーザー光線Lが照射されるときの作用を説明する。
【0151】
図16が示すように、基板Sの端部Seに向けて照射されたレーザー光線Lの一部は、基板Sの縁Se2に当たり、基板Sの縁Se2にて反射される。また、基板Sの端部Seに向けて照射されたレーザー光線Lの他の一部は、基板Sの縁Se2から基板Sの内部に透過し、基板Sの端面Se1から導出される。上述したように、基板Sの端面Se1は、レーザー光線Lを散乱することができる程度の面粗さを有しているため、レーザー光線Lは、基板Sの端面Se1から導出されるときに散乱される。
【0152】
そのため、レーザー光線Lのうち、基板Sの縁Se2にて反射したレーザー光線L、および、基板Sの端面Se1にて散乱されたレーザー光線Lによって、基板Sの端部Seの像が撮像部51の受光面に形成される。
【0153】
それゆえに、撮像部51の位置は、基板Sの端部Seにおけるレーザー光線Lの反射および散乱によって撮像部51の受光面に像が形成される位置であればよいため、レーザー照射部52の位置に対して、撮像部51の位置が1つの位置に限定されない。それゆえに、レーザー照射部52の位置に対する撮像部51の位置の自由度を高めることができる。
【0154】
また、基板Sに当てられたレーザー光線Lが、基板Sの縁Se2から基板Sの内部を透過し、かつ、端面Se1において散乱される。そのため、基板Sの端部Seのうち、レーザー光線Lの当たった部分以外の部分の明度を高めることができる。
【0155】
図17が示すように、基板Sの端面Se1は、基板Sの縁Se2に対して外側に突き出る曲率を有した曲面である場合もある。こうした構成では、基板Sの端部Seに当たったレーザー光線Lのうち、基板Sの縁Se2に当たったレーザー光線Lが反射され、かつ、基板Sの端面Se1の一部に当たったレーザー光線Lも反射される。このうち、基板Sの端面Se1の一部に当たったレーザー光線Lは、端面Se1の面粗さのために、散乱光として端面Se1から射出される。
【0156】
また、基板Sの端面Se1が外側に突き出る曲面であれば、基板Sの端面Se1にレーザー光線Lが照射されたとき、同じ幅を有したレーザー光線Lが基板Sの平坦な部分に照射されたときに比べて、レーザー光線Lの照射される面積が広くなる。このため、レーザー光線Lが反射および散乱する確率が高まることから、撮像結果において明度の高い部分を得やすくなる。
【0157】
なお、図17に示される基板Sにおいても、図16を参照して先に説明された基板Sと同様、基板Sの縁Se2に当たったレーザー光線Lの一部は、基板Sの内部に透過して、基板Sの端面Se1から導出される。
【0158】
[基板監視方法]
第2実施形態における基板監視方法では、上述した第1実施形態の基板監視方法と同様、スパッタチャンバ13内における位置が固定された基板Sを各撮像部51によって撮像してもよい。この場合には、昇降ピン26aによって所定の位置に配置された基板Sに対して、各レーザー照射部52がレーザー光線Lを照射し、基板Sの端部Seの像を撮像部51の受光面に形成する。そして、各撮像部51が、基板Sの端部Seのうち、撮像範囲Cに含まれる部分に対応する像から画像を生成する。
【0159】
なお、各レーザー照射部52は、基板Sの端部Seに対して、ほぼ同時にレーザー光線Lを当ててもよいし、相互に異なるタイミングで端部Seに対してレーザー光線Lを当ててもよい。また、各撮像部51は、レーザー照射部52が、各撮像部51の撮像範囲Cに含まれる基板Sの端部Seに対してレーザー光線Lを当てている間に、端部Seを撮像すればよい。
【0160】
監視部31は、各撮像部51が生成した画像に基づき、基板Sの端部Seの全体が含まれる画像を生成する。そして、監視部31は、生成した画像に基づき、上述した第1実施形態と同様の方法によって、基板Sの端部Seが損傷を有するか否かを判断する。
【0161】
また、第2実施形態における基板監視方法では、上述した第1変形例の基板監視方法と同様、各撮像部51は、上昇位置から載置位置に向けて移動している基板Sであって、Z方向において相互に異なる複数の位置に配置された基板Sを撮像してもよい。
【0162】
以上説明したように、基板監視装置および基板監視方法の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(7)撮像部51の位置は、基板Sの端部Seにおけるレーザー光線Lの反射光および散乱光によって撮像部51の受光面に像が形成される位置であればよいため、レーザー照射部52の位置に対して、撮像部51の位置が1つの位置に限定されない。それゆえに、レーザー照射部52の位置に対する撮像部51の位置の自由度を高めることができる。
【0163】
(8)基板Sに当てられたレーザー光線Lが、基板Sの内部を透過し、かつ、端面Se1において散乱される。そのため、基板Sの端部Seのうち、レーザー光線Lの当たった部分以外の部分の明度を高めることができる。
【0164】
(9)レーザー光線Lが帯状に延びる分だけ、基板Sの端部Seのうち、撮像部51の受光面に像として形成される部分が拡がる。
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0165】
・レーザー照射部52は、レーザー光線Lの照射幅WがZ方向の全体にわたって同じである構成であってもよい。こうした構成であっても、レーザー光線Lが帯状を有していれば、上述した(9)に準じた効果を得ることはできる。
【0166】
・レーザー光線Lの照射幅Wは、X方向に沿う端部Seの幅よりも小さくてもよいし、Y方向に沿う端部Seの幅よりも小さくてもよい。こうした構成では、基板Sの端部Seのうち、X方向に沿って延びる1つの部分、または、Y方向に沿って延びる1つの部分に対して、複数のレーザー照射部を用いてレーザー光線Lを照射すればよい。
【0167】
あるいは、レーザー照射部52が、レーザー光線Lの照射方向を変えることができる機構を有し、変更機構が、端部Seのうち、レーザー光線Lの当たる位置を変えることによって、端部Seの全体にレーザー光線Lを照射することのできる構成であってもよい。なお、こうした構成では、レーザー光線Lの照射方向が変わるごとに撮像部51によって、端部Seの像を撮像すればよい。
【0168】
・撮像部51の個数は3以下であってもよいし、5以上であってもよい。要は、各撮像部51が撮像した画像を合成することによって、端部Seの全体に対応する画像を形成することができれば、撮像部51の個数は任意である。
【0169】
・レーザー照射部52の個数は3以下であってもよいし、5以上であってもよい。要は、基板Sの端部Seの全体にレーザー光線Lを当てることができれば、レーザー照射部52の個数は任意である。なお、レーザー照射部52の位置が固定された状態では基板Sの端部Seの全体にレーザー光線Lを当てることができない場合には、レーザー照射部52が、スパッタチャンバ13に対するレーザー照射部52の位置を変えることができる位置変更機構を備えてもよい。あるいは、上述したように、レーザー照射部52が、レーザー光線Lの照射方向を変える変更機構を備えてもよい。
【0170】
・レーザー光線Lの照射角θは0°であってもよい。すなわち、レーザー照射部52は、レーザー光線LをZ方向に沿って基板Sの端部Seに向けて照射する構成であってもよい。こうした構成であっても、基板Sの端部Seの像を撮像部51の受光面に形成することは可能である。
【0171】
・基板Sに形成される膜が光透過性を有する膜であれば、成膜後の基板Sにレーザー光線Lが照射されても、基板Sの端部、すなわち、膜の縁であって、Z方向において基板Sの縁Se2と重なる部分、膜の端面、および、基板Sの端面Se1を含む部分において、レーザー光線Lが反射または散乱される。
【0172】
図18が示すように、基板Sに形成される膜が金属膜Mであれば、光透過性を有する基板Sと比べて、金属膜Mの縁Me2であって、Z方向において基板Sの縁Se2と重なる部分において反射されるレーザー光線の光量が大きくなり、反射光によって撮像部51の受光面に像を形成することができる。
【0173】
この場合、レーザー光線Lが金属膜Mの縁Me2において反射されるが、基板Sが存在しない部分ではレーザー光線Lの反射は発生しない。そのため、撮像部51が受光する光のうち、金属膜Mの縁Me2からの光と、縁Me2の外側からの光との間において、撮像部51が受光する光の量に大きな差が生じ、これにより撮像結果において、明度の高い部分と、明度の低い部分との境界が明確になる。
【0174】
・基板Sに形成される膜が金属膜であるとき、金属膜のうち、基板Sの縁Se2に形成された部分おいて、基板Sにおける他の部分に形成された部分よりも厚さが小さい場合がある。そして、金属膜のうち、基板Sの縁Se2と重なる部分の厚さが、レーザー光線Lを透過する程度に小さいときには、基板Sの縁Se2から基板Sの内部に光が透過し、基板Sの端面Se1からレーザー光線Lが導出される。
【0175】
・第1実施形態と同様、レーザー照射部52が基板Sにレーザー光線Lを当てるとき、基板Sの姿勢は、基板ステージ24によって保持されてもよい。このとき、基板ステージ24の姿勢は水平姿勢であってもよいし、起立姿勢であってもよい。すなわち、レーザー照射部52は、ほぼ水平な状態で基板ステージ24に支持された基板Sに対してレーザー光線Lを当てるように構成されてもよいし、ほぼ垂直な状態で基板ステージ24に支持された基板Sに対してレーザー光線Lを当てるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0176】
10…スパッタ装置、11…搬送チャンバ、12…ロードロックチャンバ、13…スパッタチャンバ、14…カソード、15…搬送ロボット、21…チャンバ本体、21a…搬出入口、21b…撮像窓、21c…照射窓、21d…内壁面、21e…上壁、22…バッキングプレート、23…ターゲット、24…基板ステージ、24a…載置面、25…姿勢変更部、26…昇降装置、26a…昇降ピン、26b…昇降機構、27,51…撮像部、28…クランプ、29,52…レーザー照射部、29a,52a…照射口、31…監視部、40…制御部、40a…記憶部、C…撮像範囲、L,L1,L2,L3…レーザー光線、La…光軸、P1…照射位置、P2…目標位置、P3…被照射位置、P4…導出位置、P5…高明度位置、S…基板、Sc…角部、Se…端部、Se1…端面、Se2…縁、Sh…高明度部、So…導出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18