(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1プレートと前記アノードユニット内における前記筐体の内壁との間の空間領域を、前記第1プレートの周方向の全体にわたり前記アノードユニットの外部から区画する区画部をさらに備える
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図9を参照して、基板処理装置の一実施形態を説明する。以下では、基板処理装置の構成、基板処理装置が備える洗浄チャンバの構成、洗浄チャンバの作用、および、実施例を順に説明する。
【0017】
[基板処理装置の構成]
図1を参照して基板処理装置の構成を説明する。
図1が示すように、基板処理装置10は、搬出入チャンバ11、洗浄チャンバ12、および、スパッタチャンバ13を備え、搬出入チャンバ11、洗浄チャンバ12、および、スパッタチャンバ13は、1つの方向である連結方向に沿ってこの順に並んでいる。
【0018】
連結方向において、搬出入チャンバ11と洗浄チャンバ12との間、および、洗浄チャンバ12とスパッタチャンバ13との間には、ゲートバルブ14が位置している。各ゲートバルブ14は、連結方向においてそのゲートバルブ14を挟む2つのチャンバに接続されている。ゲートバルブ14が開くことによって、連結方向において隣り合う2つのチャンバが1つの内部空間を形成し、ゲートバルブ14が閉じることによって、連結方向において隣り合う2つのチャンバの各々が、個別の内部空間を形成する。
【0019】
各チャンバは、排気部15を備え、排気部15は、対応するチャンバの内部空間を減圧する。例えば、排気部15は、対応するチャンバの内部空間を真空にする。基板処理装置10は、連結方向に沿って搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ13まで伸びる搬送部16を備えている。搬送部16は、基板処理装置10における処理の対象である基板Sを支持しているトレイTを搬送する。また、搬送部16は、連結方向の所定の位置において、トレイTを固定することもできる。
【0020】
搬出入チャンバ11は、処理前の基板Sを支持しているトレイTを基板処理装置10の外部から搬入して、洗浄チャンバ12に搬出する。また、搬出入チャンバ11は、処理後の基板Sを支持しているトレイTを洗浄チャンバ12から搬入して、基板処理装置10の外部に搬出する。
【0021】
洗浄チャンバ12は、基板処理装置10の1つの内側面に固定されたアノードユニット17と、アノードユニット17と対向するカソードステージ18とを備えている。洗浄チャンバ12は、処理前の基板Sを洗浄して、基板Sの面に付着した付着物を除去する。
【0022】
スパッタチャンバ13は、カソードユニット19を備え、カソードユニット19は、所定の材料から形成されたターゲットを備えている。スパッタチャンバ13は、ターゲットのスパッタによって、洗浄処理後の基板Sの面に所定の膜を形成する。
【0023】
なお、基板処理装置10は、上述した3つのチャンバ11〜13が行う処理以外の処理を行うチャンバを備えてもよいし、複数のスパッタチャンバ13を備えてもよい。また、基板処理装置10は、少なくとも洗浄チャンバ12を備えていればよく、スパッタチャンバ13と搬出入チャンバ11との少なくとも一方を備えていなくてもよい。
【0024】
[洗浄チャンバの構成]
図2から
図7を参照して洗浄チャンバ12の構成を説明する。
図2が示すように、洗浄チャンバ12は、接地された筐体21およびガス供給部22を備えている。カソードステージ18およびアノードユニット17は、筐体21内に配置されている。カソードステージ18は、基板Sを支持するように構成され、カソードステージ18には、プラズマを生成するための電圧が印加される。
【0025】
アノードユニット17は、第1プレート23と第2プレート24とを含み、筐体21に固定されている。第1プレート23には、複数の第1貫通孔23a(
図4参照)が形成されている。ガス供給部22は、第1プレート23に向けてガスを流す。第1プレート23は、第1貫通孔23aを通じてガスを流すことによって、ガスを第1プレート23の面方向へ拡散させる。
【0026】
第2プレート24は、第1プレート23とカソードステージ18との間に位置し、第2プレート24には、第1貫通孔23aよりも大きい複数の第2貫通孔24a(
図5参照)が形成されている。第2プレート24は、第1貫通孔23aを通過したガスを第2貫通孔24aを通じて第2プレート24とカソードステージ18との間に流す。各第2貫通孔24aは、各第2貫通孔24aの内部におけるプラズマの発光強度が、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマの発光強度よりも高められる形状を有している。なお、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマとは、アノードユニット17とカソードステージ18との間に生成されるプラズマ、すなわち、アノードユニット17の外側(したがって、各貫通孔24aの外側)に生成されるプラズマをいう。
【0027】
洗浄チャンバ12によれば、第1プレート23を介して第2プレート24にガスが供給されている状態でカソードステージ18に電圧が印加されると、アノードユニット17とカソードステージ18との間にプラズマが生成される。さらに、第2プレート24に形成された各第2貫通孔24aの内部にもプラズマを生成することができる。
【0028】
これにより、アノードユニット17の第2プレート24の周囲におけるプラズマの密度が高まり、基板Sに向けて飛行する粒子の密度も高まる。結果として、基板Sに付着した付着物を除去する速度が高まる。
【0029】
カソードステージ18は、導電部18aと絶縁部18bとを備え、導電部18aは基板Sに接する接触面を有し、絶縁部18bは、導電部18aのうち接触面以外の部分を覆っている。導電部18aには、カソードステージ18に電圧を印加する電源25が接続されている。電源25は、例えば高周波電源であるが、他の電源、例えば直流電源などであってもよい。
【0030】
アノードユニット17とカソードステージ18とが向かい合う方向が対向方向であり、対向方向において、搬送部16が、アノードユニット17とカソードステージ18との間に位置している。
【0031】
カソードステージ18は、対向方向において、第1位置と第2位置とに位置することができるように構成されている。第1位置は、カソードステージ18における導電部18aの接触面が基板Sに接する位置(
図2に2点鎖線で示す)であり、第2位置は、カソードステージ18が搬送部16や搬送部16によって支持されたトレイTに接しない(干渉しない)位置である。
【0032】
筐体21には、供給ポート21aが形成され、供給ポート21aには、ガス供給部22が接続されている。ガス供給部22は、供給ポート21aからアノードユニット17の内部にガスを供給する。ガス供給部22は、例えば、基板処理装置10の外部に配置されたガスボンベに接続されたマスフローコントローラである。ガス供給部22は、筐体21の内部にプラズマを生成するためのガスとして、例えば、アルゴンガスなどの希ガスを供給する。
【0033】
図3から
図7を参照して、アノードユニット17の構成をより詳しく説明する。
図3が示すように、アノードユニット17は、対向方向に沿って並ぶ第1プレート23と第2プレート24とを備えている。対向方向において、筐体21に形成された供給ポート21a、第1プレート23、および、第2プレート24がこの順で並び、第1プレート23は、供給ポート21aと第2プレート24との間に位置している。対向方向において、第1プレート23と第2プレート24との間の距離は、例えば、10mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0034】
第1プレート23の各第1貫通孔23aは、対向方向に第1プレート23を貫通している。第2プレート24の各第2貫通孔24aは、対向方向に第2プレート24を貫通している。
【0035】
ガス供給部22が供給ポート21aからアノードユニット17にガスを供給すると、第1プレート23は、複数の第1貫通孔23aを通じて、ガスを第1プレート23の面方向に拡散させるとともに、第2プレート24に向けてガスを流す。そして、第2プレート24は、第1貫通孔23aを通過したガスを複数の第2貫通孔24aを通じて、第2プレート24とカソードステージ18との間に流す。
【0036】
第2プレート24の複数の第2貫通孔24aは、第2プレート24におけるカソードステージ18と対向する面に生成されたプラズマが、各第2貫通孔24aに入り込むような形状を有している。
【0037】
第2貫通孔24aには、アノードユニット17の外部に生成されたプラズマが入り込むため、第2貫通孔24a内のプラズマが、第2貫通孔24aを流れるガスに接触する。それゆえに、第2プレート24の内部にも新たなプラズマが生成される。
【0038】
第2プレート24を対向方向から見たときの平面視において、各第2貫通孔24aは、複数の第1貫通孔23aのうちの少なくとも1つと重なっている。
こうしたアノードユニット17によれば、各第2貫通孔24aに対してガスが供給されやすくなるため、複数の第2貫通孔24aの全てもしくはほとんど全てで、各第2貫通孔24aの内部にプラズマを生成することができる。
【0039】
アノードユニット17は、対向方向に延びる筒形状を有した支持部17aを備えている。支持部17aは、閉塞部および区画部の一例であって、第1筒端17a1と第2筒端17a2とを有し、第1筒端17a1が筐体21に固定されている。支持部17aは第1プレート23と第2プレート24とを支持し、支持部17aの第2筒端17a2における開口が第2プレート24によって塞がれている。
【0040】
第1プレート23は、支持部17aと第2プレート24と筐体21の内壁とで囲まれたアノードユニット17の内部空間に位置している。第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域は、第1プレート23の周方向の全体にわたり、支持部17aによって閉じられている。さらには、第1プレート23とアノードユニット17内における筐体21の内壁(供給ポート21aが位置する内壁)との間の空間領域も、第1プレート23の周方向の全体にわたり、支持部17aによって閉じられている。
【0041】
このように、支持部17aが第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域の周囲を閉じる閉塞部として機能することで、第2貫通孔24aの内部における圧力を容易に高めることができる。また、支持部17aは、第1プレート23とアノードユニット17内における筐体21の内壁との間の空間領域をアノードユニット17の外部から区画する区画部として機能する。このため、第1プレート23に向けて供給されたガスは、第1貫通孔23aを通じて第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域へ流れやすくなる。ひいては、第2貫通孔24aの内部における圧力を容易に高めることができる。
【0042】
アノードユニット17において、第1プレート23、第2プレート24、および支持部17aの形成材料は金属である。そして、アノードユニット17の支持部17aの第1筒端17a1が筐体21に固定されているため、アノードユニット17の電位も接地電位である。
【0043】
図4が示すように、第1プレート23を対向方向から見たときの平面視において、複数の第1貫通孔23aは第1プレート23の面内に規則的に並んでいる。なお、複数の第1貫通孔23aは、第1プレート23の面内に平面視において不規則に並んでいてもよい。
【0044】
例えば、複数の第1貫通孔23aは、第1プレート23の面内に、X方向と、X方向と直交するY方向との各々に沿って、規則的に並んでいる。複数の第1貫通孔23aは、X方向およびY方向の各々に沿って所定の第1周期P1で並んでいる。第1周期P1は、例えば、1.5mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0045】
各第1貫通孔23aは、円形孔状を有し、各第1貫通孔23aの直径が第1径Dia1であり、第1径Dia1は、例えば、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
第1径Dia1が0.5mm以上5mm以下であれば、第2貫通孔24aに入り込んだプラズマPが第1貫通孔23aにまで入り込むことが抑えられるため、第1プレート23に必要とされるプラズマ耐性を軽減することが可能である。
【0046】
第1プレート23の面内において、第1プレート23の面積に対する第1貫通孔23aの面積の総和の百分率が第1開口率(%)であり、第1開口率は、5%以上50%以下であることが好ましい。
【0047】
図5が示すように、第2プレート24を対向方向から見たときの平面視において、複数の第2貫通孔24aは第2プレート24の面内に規則的に並んでいる。なお、複数の第2貫通孔24aは、第2プレート24の面内に平面視において不規則に並んでいてもよい。
【0048】
例えば、複数の第2貫通孔24aは、第2プレート24の面内に、X方向とY方向との各々に沿って規則的に並んでいる。複数の第2貫通孔24aは、X方向およびY方向の各々に沿って所定の第2周期P2で並んでいる。第2周期P2は、例えば、9mm以上60mm以下であることが好ましい。
【0049】
各第2貫通孔24aは、円形孔状を有し、各第2貫通孔24aの直径が第2径Dia2であり、第2径Dia2は、第1径Dia1よりも大きく、例えば、3mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0050】
第2径Dia2が3mm以上20mm以下であれば、各第2貫通孔24aの内部においてガスの電離効率が高まるため、第2プレート24の周囲(各第2貫通孔24aの周囲)に密度の高いプラズマPを生成することができる。
【0051】
第2プレート24の面内において、第2プレート24の面積に対する第2貫通孔24aの面積の総和の百分率が第2開口率(%)であり、第2開口率は、20%以上99%以下であることが好ましい。
【0052】
図6が示すように、第1貫通孔23aにおいて、対向方向に沿う長さが第1深さDep1であり、第1貫通孔23aにおいて、第1深さDep1に対する第1径Dia1の比が第1アスペクト比AR1である。第1アスペクト比AR1は、例えば、0.1以上5以下であることが好ましい。
【0053】
図7が示すように、第2貫通孔24aにおいて、対向方向に沿う長さが第2深さDep2であり、第2貫通孔24aにおいて、第2深さDep2に対する第2径Dia2の比が第2アスペクト比AR2である。第2アスペクト比AR2は、例えば、0.5以上15以下であることが好ましい。
【0054】
[洗浄チャンバの作用]
図8および
図9を参照して洗浄チャンバ12の作用を説明する。
図8が示すように、洗浄チャンバ12において基板Sの洗浄処理が行われるときには、まず、搬送部16が、搬出入チャンバ11から洗浄チャンバ12に搬入したトレイTをアノードユニット17と対向する処理位置まで搬送し、処理位置にてトレイTの位置を固定する。なお、トレイTが洗浄チャンバ12内に搬入されるとき、筐体21の内部は、排気部15によって所定の圧力まで減圧されている。
【0055】
次いで、カソードステージ18が第2位置から第1位置(
図8の位置)に移動し、導電部18aの接触面が基板Sの面に接する。そして、ガス供給部22が、筐体21の内部の圧力が所定の圧力になるようにアルゴンガスを供給する。なお、ガス供給部22によるアルゴンガスの供給は、カソードステージ18の移動よりも前に行われてもよいし、カソードステージ18の移動とほぼ同時に開始されてもよい。
【0056】
その後、電源25がカソードステージ18に電圧を印加することによって、筐体21の内部にプラズマPが生成される。そして、プラズマPに含まれる正イオンが、基板Sに向けて飛行して、基板Sのうちアノードユニット17と対向する面に衝突する。これにより、基板Sのうちアノードユニット17と対向する面に付着した付着物が、基板Sから除去される。
【0057】
このとき、筐体21の内部の圧力は、例えば、0.1Pa以上30Pa以下であることが好ましく、カソードステージ18に供給される電力は、0.04W/cm
2以上4W/cm
2以下であることが好ましい。また、電源25が供給する電力の周波数は、1MHz以上40MHz以下であることが好ましい。また、1MHz以上40MHz以下の周波数を有する電力に対して、100Hz以上2MHz以下の周波数を有する電力を重畳してもよく、この場合には、100Hz以上2MHz以下の周波数を有する電力は、0.02W/cm
2以上0.8W/cm
2以下であることが好ましい。
【0058】
図9が示すように、供給ポート21aからアノードユニット17内にアルゴンガスGが供給されると、アルゴンガスGは、第1プレート23に形成された複数の第1貫通孔23aを通ることで、第1プレート23の面方向に沿って拡散される。
【0059】
各第2貫通孔24aの内部の圧力がアノードユニット17の外部の圧力よりも高いため、アノードユニット17の外部(アノードユニット17とカソードステージ18との間)で生成されて第2貫通孔24a内に入り込んだプラズマPは、第2貫通孔24a内を流れるガスと接触しやすく、結果として第2貫通孔24a内でも新たなプラズマが生成される。
【0060】
なお、筐体21の内部において、アノードユニット17とカソードステージ18との間の空間であって、第2プレート24から離れた箇所にもプラズマは生成される。この場合にも、各貫通孔24a内で新たなプラズマが生成されることにより、複数の第2貫通孔24aを含む第2プレート24の周囲に形成されたプラズマの発光強度が、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマの発光強度よりも高くなる。
【0061】
これに対して、上述したアノードユニット17に代えて、筐体21の一部がアノードとして機能する構成、あるいは、カソードステージ18と対向する位置に金属製のプレートをアノードとして備える構成でも、筐体21の内部においてプラズマが生成される。しかしながら、アノードユニット17を備える基板処理装置10と比べて、筐体21の内部において、プラズマを生成するためのガスの圧力が高められた部分が生じないため、プラズマの発光強度が高められた部分も生じない。
【0062】
このように、上述したアノードユニット17を備える構成によれば、貫通孔24aを含む第2プレート24の周囲に形成されるプラズマの発光強度が、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマの発光強度よりも高められる。そのため、搬送部16とカソードステージ18との容量結合によって高周波電圧の一部が消費されても、筐体21内のプラズマ密度が高まる。結果として、消費電力当たりのスパッタ効率を高めることができる。
【0063】
[実施例及び比較例]
以下、実施例と種々の比較例について説明する。以下では、理解を容易にするために、上記実施形態の構成と類似の構成には同様の符号を付して説明する。
【0064】
[実施例1]
洗浄処理の対象となる処理面にSiO
2膜が形成された基板Sを準備し、上述した洗浄チャンバ12を用いて、処理面を洗浄した。洗浄処理は、以下の条件で行った。なお、筐体21内にプラズマを生成するためのガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0065】
・筐体内の圧力 1.0Pa
・電力 0.6W/cm
2(13.56MHz)
アノードユニット17は、第1径Dia1が2mmである複数の第1貫通孔23aを有する第1プレート23と、第2径Dia2が9mmである複数の第2貫通孔24aを有する第2プレート24を備える構成とした。アルゴンガスは、筐体に形成された供給ポート21aからアノードユニット17の第1プレート23に向けて供給した。
【0066】
[比較例1]
カソードステージ18と対向する位置に配置された金属板を、上記実施例1のアノードユニット17に代えてアノードとして使用する洗浄チャンバを用いて基板Sの洗浄処理を行う以外は、実施例1と同じ条件で基板Sの洗浄処理を行った。なお、アルゴンガスは、筐体21の内部に供給した。
【0067】
[比較例2]
上記実施例1のアノードユニット17において、第2プレート24の各第2貫通孔24aの第2径Dia2が2mmである以外は、実施例1と同じ条件で基板Sの洗浄処理を行った。
【0068】
[比較例3]
アノードユニット17の外部の位置でアルゴンガスを筐体21の内部に供給する以外は、実施例1と同じ条件で基板Sの洗浄を行った。
【0069】
[基板のエッチング速度]
実施例1および比較例1から比較例3の各々について、基板Sの表面に付着した付着物の除去速度として、SiO
2膜のエッチング速度を算出した。エッチング前のSiO
2膜の厚さと、エッチング後のSiO
2膜の厚さとを測定し、エッチング前のSiO
2膜の厚さからエッチング後のSiO
2膜の厚さを引いた値を処理時間で除算することによって、エッチング速度を算出した。エッチング速度の算出結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
表1が示すように、実施例1におけるエッチング速度は5.8mm/分であることが認められた。これに対して、比較例1におけるエッチング速度は3.2mm/分であり、比較例2におけるエッチング速度は2.6mm/分であり、比較例3におけるエッチング速度は3.0mm/分であることが認められた。
【0071】
このように、第2プレート24における第2径Dia2が、第1プレート23における第1径Dia1よりも大きいアノードユニット17を使用し、プラズマを生成するためのガスを第1プレート23に対して供給することで、基板Sのエッチング速度、すなわち、基板Sの表面に付着した付着物の除去速度が高まることが認められた。
【0072】
以上説明したように、基板処理装置10の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1プレート23を介して第2プレート24にガスが供給されている状態でカソードステージ18に電圧が印加されると、アノードユニット17とカソードステージ18との間に生成されるプラズマPに加え、第2プレート24に形成された各第2貫通孔24aの内部にもプラズマPを生成することができる。これにより、筐体21内におけるプラズマPの密度が高まり、基板Sに向けて引きつけられる荷電粒子の密度も高まる。結果として、基板Sに付着した付着物を除去する速度が高まる。
【0073】
(2)第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域の周囲が支持部17aによって閉じられているため、第2貫通孔24aの内部における圧力を高め、第2貫通孔24aの内部におけるプラズマの生成を促進することができる。
【0074】
(3)第1プレート23とアノードユニット17内の筐体21の内壁との間の空間領域の周囲が支持部17aによってアノードユニット17の外部から区画されている。そのため、第1プレート23に向けて供給されたガスは、第1貫通孔23aを通じて第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域へ流れやすくなる。ひいては、第2貫通孔24aの内部における圧力を容易に高めることができる。
【0075】
(4)第2径Dia2が3mm以上20mm以下であるため、第2貫通孔24aの内部においてガスの電離効率が高まり、第2プレート24の周囲に密度の高いプラズマPを生成することができる。
【0076】
(5)第1径Dia1が0.5mm以上5mm以下であるため、第2貫通孔24aに入り込んだプラズマPが第1貫通孔23aにまで入り込むことが抑えられる。それゆえに、第1プレート23に必要とされるプラズマ耐性を軽減することが可能となる。
【0077】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・各第1貫通孔23aおよび各第2貫通孔24aは円形孔状ではなく、他の形状を有してもよい。
【0078】
例えば、
図10が示すように、各プレート23,24の平面視において、各貫通孔23a,24aが正方形形状を有していてもよい。こうした構成では、各プレート23,24の平面視において各貫通孔23a,24aにおける最大の長さである流路幅L、すなわち、各貫通孔23a,24aにおける対角線の長さが、第1貫通孔23aであれば上述した第1径Dia1の範囲に含まれる大きさであればよく、第2貫通孔24aであれば上述した第2径Dia2の範囲に含まれる大きさであればよい。これにより、上述した(4)あるいは(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0079】
なお、各プレート23,24の平面視において、各貫通孔23a,24aは、正方形形状以外の四角形形状を有してもよいし、四角形形状以外の多角形形状、例えば、五角形形状や六角形形状などを有してもよい。
【0080】
また、
図11が示すように、各貫通孔23a,24aは、各プレート23,24の平面視において、楕円形状を有してもよい。こうした構成であっても、貫通孔23a,24aにおける流路幅Lが、第1貫通孔23aであれば上述した第1径Dia1の範囲に含まれる大きさであればよく、第2貫通孔24aであれば上述した第2径Dia2の範囲に含まれる大きさであればよい。これにより、上述した(4)あるいは(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0081】
・各第1貫通孔23aの第1径Dia1が上述した範囲に含まれる大きさであり、かつ、各第2貫通孔24aの第2径Dia2よりも小さければ、各第1貫通孔23aの第1径Dia1の大きさが互いに異なっていてもよい。
【0082】
・各第2貫通孔24aの第2径Dia2が上述した範囲に含まれる大きさであれば、各第2貫通孔24aの第2径Dia2の大きさが互いに異なっていてもよい。
・各第1貫通孔23aの第1径Dai1は、第1プレート23の面方向に沿ってガスの拡散が可能であり、かつ、各第2貫通孔24aの第2径Dia2よりも小さければ、0.5mmよりも小さくてもよいし、5mmよりも大きくてもよい。
【0083】
・各第2貫通孔24aの第2径Dia2は、第2貫通孔24aの内部におけるプラズマの発光強度が、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマの発光強度よりも高められ、かつ、各第1貫通孔23aの第1径Dia1よりも大きければ、3mmよりも小さくてもよいし、20mmよりも大きくてもよい。
【0084】
・第2プレート24の平面視において、複数の第2貫通孔24aのうちの少なくとも一部が、いずれの第1貫通孔23aとも重ならなくてもよい。
・第2貫通孔24aは、第2プレート24とカソードステージ18との間に形成されたプラズマが、第2貫通孔24aの内部に入り込む形状でなくてもよい。こうした構成であっても、第2貫通孔24aの内部におけるプラズマの発光強度が、第2プレート24とカソードステージ18との間に生成されるプラズマの発光強度よりも高められる形状を第2貫通孔24aが有していれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0085】
・上記実施形態では、閉塞部及び区画部の双方が同一の部材(支持部17a)によって形成されたが、閉塞部と区画部の各々が個別の部材によって構成されてもよい。例えば、支持部17aが2つの部材で構成されてもよい。
【0086】
・第1プレート23と第2プレート24との間の空間領域の周囲が閉塞部(支持部17a)で閉塞されず、開放されていてもよい。こうした構成であっても、第1プレート23の第1貫通孔23aを通じて供給されたガスが、第2プレート24の第2貫通孔24aを通じてカソードステージ18に向けて流れる限り、第2貫通孔24aの内部における圧力を、第2プレート24とカソードステージ18との間における圧力よりも高めることができる。それゆえに、消費電力当たりのスパッタ効率を高めることはできる。
【0087】
・第1プレート23とアノードユニット17内の筐体21の内壁との間の空間領域の周囲が区画部(支持部17a)で区画されず、開放されていてもよい。こうした構成であっても、第1プレート23の第1貫通孔23aを通じて供給されたガスが、第2プレート24の第2貫通孔24aを通じてカソードステージ18に向けて流れる限り、第2貫通孔24aの内部における圧力を、第2プレート24とカソードステージ18との間における圧力よりも高めることができる。それゆえに、消費電力当たりのスパッタ効率を高めることはできる。
【0088】
・カソードステージ18は、トレイTの搬送に干渉しなければ筐体21内の所定の位置に固定されていてもよい。
・筐体21内におけるカソードステージ18の位置が固定されている一方で、アノードユニット17とカソードステージ18とが向かい合う対向方向に沿って搬送部16が移動することで、トレイTの位置を第1位置と第2位置との間で変えてもよい。この場合、第1位置と第2位置とは、対向方向において互いに異なる位置である。このうち、第1位置は、トレイTとカソードステージ18とが干渉せずに搬送部16がトレイTを搬送することが可能な位置であり、第2位置は、カソードステージ18と基板Sとが接する位置である。
【0089】
・カソードステージ18は、導電部18aのうち基板Sに接する部分が絶縁部18bから露出するように形成されているが、基板Sに電圧を印加することが可能であれば、導電部18aの全体が絶縁部18bによって覆われていてもよい。
【0090】
・基板処理装置10は、トレイTをほぼ水平方向に沿って配置した状態で基板Sに洗浄処理を行う装置であってもよい。例えば、上記実施形態のように基板処理装置10が複数のチャンバ11〜13を備える構成であれば、搬送部16は、例えば、複数のチャンバ11〜13にわたってトレイTをほぼ水平方向に沿って配置した状態で搬送してもよい。あるいは、基板処理装置10が搬出入チャンバ11と洗浄チャンバ12のみを備える構成であれば、搬出入チャンバ11が、搬出入チャンバ11の外部からトレイTを受け取りそのトレイTを洗浄チャンバ12へ搬送する搬送ロボットを備えてもよい。
【0091】
・トレイTによる基板Sの支持がなくとも基板Sの搬送および基板Sへの処理が可能であれば、トレイTは省略されてもよい。