特許第6483274号(P6483274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483274ポリオルガノシロキサンおよびそれを含む湿気および放射線硬化性接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483274
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ポリオルガノシロキサンおよびそれを含む湿気および放射線硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/20 20060101AFI20190304BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20190304BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08G77/20
   C09J183/07
   C08L83/07
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-547556(P2017-547556)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公表番号】特表2018-514599(P2018-514599A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】CN2015073943
(87)【国際公開番号】WO2016141547
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年3月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ルー、 ジシャン
(72)【発明者】
【氏名】リー、 ジンヨウ
(72)【発明者】
【氏名】リー、 ジミン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、 ゼン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ヨン
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−073147(JP,A)
【文献】 特開2002−012638(JP,A)
【文献】 特開2013−014764(JP,A)
【文献】 特開2011−111468(JP,A)
【文献】 特開2010−111756(JP,A)
【文献】 特開2004−182942(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103554169(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1):
式中、
〜R14は、それぞれ独立して、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20シクロアルキルおよび〜C22アラルキルからなる群から選択され、
aは、0〜1000の整数であり、
bは、0〜1000の整数であり、
lは、0〜1000の整数であり、
mは、1〜1000の整数であり、
nは、1〜1500の整数であり、
ただし、a、b、lおよびmの少なくとも1つが、50以上の整数であり、
およびAは、それぞれ独立して、式(2):
(R15(R16(R1718 (2)
で表され、
式中、
15は、C〜C20アルキレンであり、
16は、C〜C21アリーレンであり、
17は、C〜C20アルキレンであり、
18は、(メタ)アクリルオキシであり、
cは、0〜10の整数であり、
dは、0〜10の整数であり、および
eは、0〜10の整数である、
で表されるポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
nは、100〜1500の整数である、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
〜R14が、それぞれ独立して、C〜Cアルキルおよび〜Cアルコキシルからなる群から選択される、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項4】
cが、1〜5の整数であり、dが、1〜5の整数であり、eが1〜5の整数である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項5】
nが、430であり、mおよびaが、68であり、lおよびbが、0であり、AおよびAが、アクリルオキシプロピルであり、R、R、R〜R14が、メチルであり、RおよびRがメトキシである、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項6】
n、aおよびmが、190であり、lおよびbが、0であり、AおよびAがメタクリルオキシメチルであり、R〜R14が、メチルである、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項7】
(1)シラノール末端ポリオルガノシロキサンを(メタ)アクリルオキシを有するアルコキシシランでエンドキャッピングする工程;
(2)シラノール末端ポリオルガノシロキサンと反応させることによって、工程(1)で得られたポリオルガノシロキサンの鎖を伸長する工程;および
(3)工程(2)で得られた生成物に含まれる残留シラノール基をエンドキャップする工程を含む請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサンの調製方法。
【請求項8】
工程(1)におけるシラノール末端ポリオルガノシロキサンが、α、ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンまたはω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)におけるシラノール末端ポリオルガノシロキサンが、α、ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンまたはω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
(a)請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン、
(b)光開始剤、
(c)湿気触媒、
(d)反応性可塑剤、および
(e)任意に、湿気架橋剤を含む、湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項11】
成分(a)が、請求項1〜のいずれか一項に記載の各ポリオルガノシロキサンの異なるポリオルガノシロキサン混合物である、請求項10に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項12】
成分(a)が、異なるポリオルガノシロキサンの混合物を含み、各ポリオルガノシロキサンが、
(i)n=430、mおよびa=68、lおよびb=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル;
(ii)n=430、l、mおよびa=68、b=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜RおよびR〜R14=メチル、およびR=メトキシ;
(iii)n=430、l、m、aおよびb=68、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜R14=メチル;
(iv)n=430、m=68、a、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R=メトキシ、R〜R14=メチル;
(v)mおよびn=430、a=68、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル;
(vi)n、aおよびm=190、lおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチル;
(vii)n=190、m=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜RおよびR〜R14=メチルおよびR=メトキシ;および
(viii)mおよびn=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチルである
から選択される請求項10に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項13】
成分(a)が、成分の全重量に基づき、20〜90重量%の量で存在する、請求項10に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項14】
成分(d)が、成分の全重量に基づき、10〜60重量%の量で存在する、請求項1013のいずれか一項に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項15】
成分(e)が、成分の全重量に基づき、1〜5重量%の量で存在する、請求項1014のいずれか一項に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項16】
組成物が、成分の全重量に基づき、5〜30重量%の量で存在する鎖伸長剤をさらに含む、請求項1015のいずれか一項に記載の湿気および放射線硬化性組成物。
【請求項17】
請求項1016のいずれか一項に記載の湿気および放射線硬化性接着剤組成物の硬化反応生成物。
【請求項18】
少なくとも1つの表面上が、請求項1016のいずれか一項に記載の湿気および放射線硬化性接着剤組成物または請求項17に記載の硬化生成物で被覆された被覆基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサンおよびそれを含む湿気および放射線硬化性接着剤組成物に関し、特に、ハンドヘルドデバイスおよびディスプレイ(HHDD)用の液体光学的透明接着剤(LOCA)に使用されるポリオルガノシロキサンおよび湿気および放射線硬化性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用途では、光学的透明接着剤(OCA)または液体光学的透明接着剤(LOCA)が、通常、タッチパネルまたはカバーガラスを基板に接着するのに使用され、ひずみの影響を受けやすい。HHDDの分野で使用される光学的透明接着剤は、長期間の使用後、特に長時間の温度/湿度変化の後の大きなディスプレイの光漏れの潜在的な問題を有する。根本的な原因は、歪みに敏感な基板と接着剤にかかる応力の蓄積である。この応力は、基板中の分子の配向の変化をもたらす。その結果、光の経路が変化し、デバイスからの光がエッジに導かれ、次に画像の品質が低下する。
【0003】
応力の蓄積を著しく減少または排除し、光漏れを避けることができるLOCAを提供するために、多くの努力がなされてきた。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第20130271828号明細書には、光学フィルム、例えば感圧接着剤(PSA)フィルムと、光学フィルムに隣接して配置された第1の液体光学的透明接着剤(LOCA)を含む光学的結合層が開示されている。LOCAは、PSAおよび偏光子の応力を緩和するために用いられた。しかし、PSAとLOCAの両方の適用の2つのステップが必要となるため、プロセスはより複雑になる。さらに、LOCAは即座に硬化し、被覆中のPSAからの応力および硬化中のLOCAからの応力が加算される。米国特許第5,795,650号明細書には、基材層と、感圧接着剤組成物および可塑剤を含有する感圧接着剤層とを含む感圧接着剤シートが開示されており、感圧接着剤層の感圧接着剤組成物の主ポリマーの重量平均分子量は600,000〜2,000,000である。可塑剤は、偏光子の収縮による応力を緩和するのに有効であると考えられている。しかし、応力緩和能力を有するPSAを、偏光子ユニット内の蓄積応力を緩和するために使用することは、高温高湿条件下での気泡の形成および成長およびエッジリフティングに耐えるには不十分な耐久性を示す。
【0005】
米国特許第6,800,366号明細書は、正の応力光学係数を有する成分を含むアクリル系PSA組成物を開示している。成分を導入する目的は、偏光子およびPSAにおける応力によって引き起こされる複屈折を補償することであった。しかし、熱サイクル中の偏光子およびPSAの構造が複雑に変化するため、補償の制御は正確ではない。また、光の漏れを避けることができない。
【0006】
したがって、高温高湿下での高い透過率および高い安定性などの他の性能を維持しながら、応力および光漏れの蓄積の問題を解決することができる改良された接着剤組成物の開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、構造式(1)で表されるポリオルガノシロキサンである。
【0008】
【化1】
式中、
〜R14は、それぞれ独立して、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C22アラルキルおよび(メタ)アクリルオキシからなる群から選択され、
aは、0〜1000の整数であり、
bは、0〜1000の整数であり、
lは、0〜1000の整数であり、
mは、1〜1000の整数であり、
nは、1〜1500の整数であり、
およびAは、それぞれ独立して、式(2):
(R15(R16(R1718 (2)
で表され、
式中、
15は、C〜C20アルキレンであり、
16は、C〜C21アリーレンであり、
17は、C〜C20アルキレンであり、
18は、(メタ)アクリルオキシであり、
cは、0〜10の整数であり、
dは、0〜10の整数であり、および
eは、0〜10の整数である。
【0009】
別の態様は、本発明のポリオルガノシロキサンの製造方法であって、
(1)シラノール末端ポリオルガノシロキサンを(メタ)アクリルオキシ基を有するアルコキシシランでエンドキャッピングする工程;
(2)シラノール末端ポリオルガノシロキサンと反応させることによって、工程(1)で得られたポリオルガノシロキサンの鎖を伸長する工程;および
(3)工程(2)で得られた生成物に含まれる残留シラノール基をエンドキャップする工程を含む方法である。
【0010】
さらに別の態様は、湿気および放射線硬化性組成物であって、
(a)本発明のポリオルガノシロキサン、
(b)光開始剤、
(c)湿気触媒(moisture catalyst)、
(d)反応性可塑剤、および
(e)任意に、湿気架橋剤(moisture crosslinker)を含む組成物である。
【0011】
さらに別の態様は、本発明による湿気および放射線硬化性接着剤組成物の硬化反応生成物である。
【0012】
さらにもう1つの態様は、少なくとも1つの表面上に、本発明による湿気および放射線硬化性接着剤組成物または硬化生成物でコーティングされたコートされた基材である。
【0013】
さらに別の態様は、ディスプレイパネル、タッチパネルまたは光学デバイスを製造するための、本発明によるポリオルガノシロキサン、湿気および放射線硬化性接着剤組成物または硬化生成物の使用である。
【0014】
本主題の他の特徴および態様は、以下により詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<詳細な説明>
本考察は、例示的な実施態様の説明のみであり、本発明のより広い態様を限定するものではないことは、当業者には理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「C〜C20アルキル」は、部分中の炭素原子間に単結合のみを含む一価の直鎖又は分岐部分を意味し、例えば、C〜C18−、C〜C12−、C〜C10−、C〜C−、C〜C−またはC〜C−アルキルである。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルおよびn−エイコシルである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「C〜C20アルケニル基」は、少なくとも1つの不飽和を有する、2〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味し、例えば、C〜C18−、C〜C12−、C〜C10−、C〜C−、C〜C−またはC〜C−アルケニルである。典型的な例は、ビニル、アリル、1−プロペン−2−イル、1−ブテン−4−イル、2−ブテン−4−イルおよび1−ペンテン−5−イルなどの基である。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「C〜C20アルコキシル」は、基−OR(式中、Rは、上記で定義したC〜C20アルキル)であり、例えば、C〜C18−、C〜C12−、C〜C10−、C〜C−、C〜C−またはC〜C−アルコキシルである。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「C〜C20アリール」は、単環(例えば、フェニル)または多縮合(縮合)環を有する6〜20個の炭素原子の一価の不飽和芳香族炭素環基を意味し、少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニルまたはアントリル)である。好ましい例には、フェニル、ナフチル、フェナントレニルなどが含まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「C〜C22アルキルアリール」は、メチルフェニル、エチルフェニル、メチルナフチル、エチルナフチルなどを含む、7〜22個の炭素原子およびアルキル置換基を有するアリール基をいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「C〜C20アルキレン」は、部分中の炭素原子間に単結合のみを含む二価の直鎖又は分岐部分を意味し、例えば、C〜C18−、C〜C12−、C〜C10−、C〜C−、C〜C−またはC〜C−アルキレンである。それらの例は、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、sec−ブチレン、イソブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−ヘキシレン、n−ヘプチレン、2,4,4−トリメチルペンチレン、2−エチルへキシレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレン、n−ウンデシレン、n−ドデシレン、n−ヘキサデシレン、n−オクタデシレンおよびn−エイコシレンである。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「C〜C20アリーレン」は、単環(例えば、フェニレン)または多縮合(縮合)環を有する6〜20個の炭素原子の二価の不飽和芳香族炭素環基を指し、少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチレン、ジヒドロフェナントレニレン、フルオレニレン、またはアントリレン)である。好ましい例としては、フェニレン、ナフチレン、フェナントレニレンなどが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリルオキシ基」とは、アクリルオキシおよびメタクリルオキシ基の両方を表す。
【0024】
本明細書中で使用される場合、上記の基は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、基上の水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、およびモノ−およびジ−置換アミノ基を含むアミノ、およびそれらの保護された誘導体から独立して選択される1以上の基である置換基で置換される。アリールが置換される場合、アリール基上の置換基は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよびヘテロシクリルを含む、アリール基に縮合した非芳香族環を形成することができる。
【0025】
全てのパーセンテージ、部および比率は、特に明記しない限り、本発明の組成物の全重量に基づく。記載された成分に関連するすべてのそのような重量は、活性レベルに基づいており、したがって、市販の材料に含まれ得る担体または副生成物を含まない。
【0026】
<ポリオルガノシロキサン>
一態様では、本開示は、一般に、構造式(1)で表されるポリオルガノシロキサンに関する。
【0027】
【化2】
式中、
〜R14は、それぞれ独立して、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C22アラルキルおよび(メタ)アクリルオキシからなる群から選択され、
aは、0〜1000の整数であり、
bは、0〜1000の整数であり、
lは、0〜1000の整数であり、
mは、1〜1000の整数であり、
nは、1〜1500の整数であり、
およびAは、それぞれ独立して、式(2):
(R15(R16(R1718 (2)
で表され、
式中、
15は、C〜C20アルキレンであり、
16は、C〜C21アリーレンであり、
17は、C〜C20アルキレンであり、
18は、(メタ)アクリルオキシであり、
cは、0〜10の整数であり、
dは、0〜10の整数であり、および
eは、0〜10の整数である。
【0028】
一実施態様では、R〜R14は、それぞれ独立して、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C22アラルキルおよび(メタ)アクリルオキシからなる群から選択され、好ましくは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシル、C〜Cアルケニル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C16アラルキルからなる群から選択され、さらに好ましくは、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシルである。
【0029】
一実施態様では、R〜Rの少なくとも1つは、C〜Cアルコキシルであり、R〜R14の他は、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C16アラルキルからなる群から選択される。より好ましくは、R〜Rの少なくとも2つは、C〜Cアルコキシルであり、R〜R14の他は、それぞれ独立して、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシルから選択され、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシなどである。
【0030】
1つの好ましい実施態様において、R〜Rの少なくとも2つはC〜Cアルコキシルであり、好ましくはメトキシであり、R〜R14の他は独立してC〜Cアルキル、好ましくはメチルである。
【0031】
他の好ましい実施態様において、R〜R14は、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、好ましくはメチルである。
【0032】
他の実施態様において、指数a、b、lおよびmは、それぞれ独立して1〜800、好ましくは、50〜400の整数であり、nは1〜1200、好ましくは、100〜800の整数である。
【0033】
さらに別の実施態様において、式:
(R15(R16(R1718 (2)
で表されるAおよびAに関して、
15は、C〜Cアルキレン、好ましくはC〜Cアルキレン、より好ましくはメチレンまたはエチレンである。R16は、C〜Cアルキレン、好ましくはフェニレンまたはナフタレンである。R17は、C〜Cアルキレン、好ましくはC〜Cアルキレン、より好ましくはメチレンまたはエチレンである。指数cは1〜5、好ましくは1〜3の整数であり、dは0〜5、好ましくは0〜3の整数であり、eは0〜5、好ましくは0〜3の整数である。
【0034】
1つの好ましい実施態様ではR15は、メチレンであり、aは3であり、bおよびcは0であり、したがってAおよびAはそれぞれ独立して(メタ)アクリルオキシプロピル基、好ましくはアクリルオキシプロピル基である。
【0035】
別の好ましい実施態様では、R15は、エチレンであり、R16は、フェニレンであり、R17は、メチレンであり、a、bおよびcは1であり、したがってAおよびAはそれぞれ独立して(メタ)アクリルオキシメチルフェネチル基、好ましくはアクリルオキシメチルフェネチル基である。
【0036】
別の態様では、本発明は、式中、n=430、mおよびa=68、lおよびb=0であり、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R、R、R〜R14=メチル、RおよびR=メトキシである式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを提供する。
【0037】
別の実施態様では、本発明は、式中、n、aおよびm=190、lおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチルである、式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを提供する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、ポリオルガノシロキサンの混合物を提供し、それぞれが、
式中、
(i)n=430、mおよびa=68、lおよびb=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル、
(ii)n=430、l、mおよびa=68、b=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜RおよびR〜R14=メチル、およびR=メトキシ、および
(iii)n=430、l、m、aおよびb=68、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜R14=メチルである、
式(1)で表される。
【0039】
さらに別の実施態様において、本発明は、ポリオルガノシロキサンの混合物を提供し、それぞれが、
式中、
(i)n=430、mおよびa=68、lおよびb=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル、
(ii)n=430、m=68、a、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R=メトキシ、R〜R14=メチル、および
(iii)mおよびn=430、a=68、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチルである、
式(1)で表される。
【0040】
さらに別の実施態様において、本発明は、ポリオルガノシロキサンの混合物を提供し、それぞれが、
式中、
(i)n、aおよびm=190、lおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチル、
(ii)n=190、m=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜RおよびR〜R14、R=メトキシ、および
(iii)mおよびn=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチルである、
式(1)で表される。
【0041】
本発明によるポリオルガノシロキサンの混合物は、構造中に(メタ)アクリルオキシ基とアルコキシル基の両方を含むことができる。これらの基は、ポリオルガノシロキサンが湿気および光線に曝されたときに硬化することを可能にする。
【0042】
<ポリオルガノシロキサンの調製>
本発明によるポリオルガノシロキサンは、以下の工程:
(1)シラノール末端ポリオルガノシロキサン(1)を(メタ)アクリルオキシ基を有するアルコキシシランでエンドキャッピングする工程;
(2)ポリオルガノシロキサンをシラノール末端ポリオルガノシロキサン(2)と反応させることによって、工程(1)で得られたポリオルガノシロキサンの鎖を伸長する工程;および
(3)工程(2)で得られた生成物に含まれる残留シラノール基をエンドキャップする工程
を含む方法によって調製される。
【0043】
より具体的には、工程(1)において、反応物は、所望量のシラノールキャッピングが生じるまで、水分の非存在下および有機リチウム触媒の存在下で攪拌しながら反応させる。アルコキシシランに対するシラノール基の所望の当量比は、好ましくは約1:0.95〜約1:1.5、より好ましくは、約1:1〜約1:1.2である。
【0044】
キャッピングが所要レベルに達した後に反応混合物中に残っている揮発性物質は、穏やかな加熱、たとえば、50℃〜100℃の減圧下で加熱することによって、除去することができる。不活性ガスは、揮発性物質の除去中に反応混合物を通過させることができる。
【0045】
工程(1)で使用されるシラノール末端反応物は、式(3)内の実質的に任意の有用なシラノール末端材料であり得る。:
【0046】
【化3】
式中、
20およびR21は、それぞれ独立に、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキルおよびC〜C22アラルキルからなる群から選択され;R19およびR22は、ヒドロキシル、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキル、およびC〜C22アラルキルからなる群から選択され、R19およびR22の少なくとも1つは、ヒドロキシルであり;そしてxは約1〜約1,200であり、たとえば、約10〜約1,000である。工程(1)におけるシラノール末端ポリオルガノシロキサンは、α、ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンまたはω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0047】
好ましくは、R20およびR21は、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキル、およびC〜C16アラルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。より好ましくは、R20〜R21は、それぞれ独立に、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシルから選択され、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ等が挙げられる。最も好ましくは、R19およびR20はともにメチルである。
【0048】
一実施態様では、R19はヒドロキシルであり、R22はC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシル、C〜Cアルケニル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C16アラルキルからなる群から選択され、さらに好ましくは、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシルであり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ等であり、したがって反応物はモノシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはモノシラノール末端ポリジメチルシロキサンである。
【0049】
別の実施態様では、R19およびR20は、ともにヒドロキシルであり、したがって反応物はジシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはジシラノール末端ポリジメチルシロキサンである。
【0050】
工程(1)におけるシラノール末端オルガノポリシロキサンの粘度は、約25℃(室温)の温度でブルックフィールド粘度計を用いて測定して約1cps〜約150,000cps、好ましくは約100cps〜約10,000cpsの範囲内である。
【0051】
(メタ)アクリルオキシ基を有するアルコキシシランとしては、少なくとも2個のアルコキシ基と少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基を有するシランが挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリルオキシ基を有するアルコキシシランは、式(5)の少なくとも1つの化合物を含む。
(R23(R24Si(OR254−(f+g) (5)
23〜R25は、それぞれ独立して、C1〜20アルキル、C2〜20アルキルおよびC6〜20アリールからなる群から選択され、好ましくはC1〜6アルキル、C2〜6アルキルおよびC6〜14アリール、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、フェニル、ビニルおよびアリル基が挙げられる。R23およびR24の少なくとも1つは、(メタ)アクリルオキシ基であり、fは0,1または2であり;gは0、1または2であり;f+gは1または2である。
【0052】
本発明に有用な(メタ)アクリルオキシ基を有する代表的なアルコキシシランには、(γ−アクリルオキシメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(γ−アクリルオキシメチル)トリメトキシシラン、(γ−アクリルオキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(γ−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(γ−アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(γ−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(γ−アクリルオキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(γ−メタクリルオキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(γ−メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(γ−メタクリルオキシメチルフェネチル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(γ−メタクリルオキシメチル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)トリイソプロポキシシラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(γ−メタクリルオキシプロピル)トリス(メトキシエトキシ)シラン、および(γ−メタクリルオキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シランが挙げられる。
【0053】
好ましくは、(メタ)アクリルオキシ基を有するアルコキシシランは、(γ−アクリルオキシメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(γ−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(γ−アクリルオキシメチル)トリメトキシシランおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0054】
有機リチウム試薬は、好ましくは、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウムおよびn−オクチルリチウムなどのアルキルリチウムである。他の有用な触媒には、フェニルリチウム、ビニルリチウム、リチウムフェニルアセチリド、リチウム(トリメチルシリル)アセチリド、リチウムシラノレートおよびリチウムシロキサノレートが含まれる。 有機基は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンまたはジシクロヘキシルアミンなどのアミン含有基、またはシリコーン含有基であってもよい。
【0055】
一般に、反応混合物中のリチウムの量は、工程(1)の反応物の重量に基づいて、1ppm〜約1000ppm、好ましくは約5ppm〜約500ppm、例えば約8ppm〜約200ppmである。
【0056】
触媒系に使用される有機リチウム触媒の量は、シラノール基含有反応物の反応性および重合可能なエチレン性不飽和基を含有するアルコキシシランの反応性に依存する。選択される量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0057】
工程(1)の反応は、ほぼ室温(約25℃)〜約150℃の温度で行うことができる。工程が実施される温度は、選択される特定の反応物、触媒系の構成成分の性質および量、および反応が進行し得る時間の長さに依存する。
【0058】
工程(2)において、反応物は、反応中の生成物の粘度をモニターすることによって、所望の量の鎖伸長が生じるまで、水分の非存在下および有機リチウム触媒の存在下で攪拌しながら反応させる。工程(1)で得られたポリオルガノシロキサン中のアルコキシに対するシラノール基の所望の当量比は、好ましくは約1:0.95〜約1:1.5、より好ましくは、約1:1〜約1:1.2である。
【0059】
鎖伸長が必要なレベルに達した後に反応混合物中に残っている揮発性物質は、穏やかな加熱、たとえば、50℃〜100℃で減圧下で加熱することによって除去することができる。不活性ガスは、揮発性物質の除去中に反応混合物を通過させることができる。
【0060】
工程(2)で使用されるシラノール末端反応物は、上記のように式(3)で表すこともでき、上記の範囲の粘度を有する。
【0061】
工程(2)の有機リチウム触媒は、工程(1)で使用されるものと同じであり得、反応混合物中のリチウムの量は、工程(2)における反応物の重量に基づいて、1ppm〜約1000ppm、好ましくは約5ppm〜約500ppm、例えば、約8ppm〜約200ppmである。
【0062】
好ましい一態様では、シラノール末端ポリオルガノシロキサン(1)はモノシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはモノシラノール末端ポリジメチルシロキサン(ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン)であり、シラノール末端ポリオルガノシロキサン(2)は、ジシラノール末端ポリオルガノシロキサンであり、好ましくは、ジシラノール末端ポリジメチルシロキサン(α、ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン)である。
【0063】
別の好ましい実施態様では、シラノール末端ポリオルガノシロキサン(1)は、ジシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはジシラノール末端ポリジメチルシロキサンであり、シラノール末端ポリオルガノシロキサン(2)は、モノシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはモノシラノール末端ポリジメチルシロキサンである。
【0064】
別の好ましい実施態様では、シラノール末端ポリオルガノシロキサン(1)および(2)の両方が、ジシラノール末端ポリオルガノシロキサン、好ましくはジシラノール末端ポリジメチルシロキサンである。このように、工程(1)のエンドキャッピングおよび工程(2)における鎖伸長は、反応の間に同時に行われる。
【0065】
工程(2)における反応は、ほぼ室温(約25℃)〜約150℃の温度で行うことができる。工程が実施される温度は、選択される特定の反応物、触媒系の構成成分の性質および量、および反応が進行し得る時間の長さに依存する。
【0066】
工程(3)において、工程(2)で得られたポリオルガノシロキサンに含まれる残留シラノールおよびエンドキャッピング剤を、水分の非存在下および有機リチウム触媒の存在下で、生成物中の残留シラノール基がエンドキャップされるまで撹拌しながら反応させる。
【0067】
工程(3)の有機リチウム触媒は、工程(1)および/または(2)で使用されるものと同じであり得、反応混合物中のリチウムの量は、工程(2)における反応物の重量に基づいて、1ppm〜約1000ppm、好ましくは約5ppm〜約500ppm、例えば約8ppm〜約200ppmである。
【0068】
好ましくは、工程(1)〜3)の有機リチウム触媒は、同一であり、例えばn−ブチルリチウムであり、工程(1)〜工程(3)に充分な量の有機リチウム触媒がプロセスの簡素化のために工程(1)で添加される。
【0069】
反応後、有機リチウム触媒を二酸化炭素と反応させ、炭酸リチウムとして沈殿させ、遠心分離、濾過などの液体−固体分離手段によって反応混合物から除去することができる。
【0070】
エンドキャップ剤は、特に限定されない。エンドキャッピング剤、例えばエンドキャッピング官能基を有するシランは、当業者に公知である。これらは立体的に嵩高い基を含まないシランであり、したがってポリオルガノシロキサンに含まれる残留シラノールとも反応することができる。
【0071】
エンドキャッピング剤として使用される適切なシランは、例えば、ジメチルジメトキシシランまたはヘキサメチルジシラザンである。
【0072】
<湿気および放射線硬化性組成物>
別の態様において、本発明は、以下の成分:
(a)本発明のポリオルガノシロキサン、
(b)光開始剤、
(c)湿気触媒、
(d)反応性可塑剤、および
(e)任意に、湿気架橋剤
を含む、湿気および放射線硬化性組成物を提供する。
【0073】
<成分(a)>
上記のポリオルガノシロキサンは、成分の総重量に基づき、20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の量で存在する。上記の異なるポリオルガノシロキサンの混合物を成分(a)として使用することができる。
【0074】
<成分(b)>
湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、放射線硬化、好ましくは、十分なUV照射を受けたとき組成物のUV硬化を開始させるための光開始剤をさらに含む。
【0075】
本発明に有用な光開始剤は特に限定されない。適する光開始剤は、限定はされないが、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン、ベンゾフェノン、ニトロソ化合物、ハロゲン化アクリル、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、トリアクリルイミダゾール、ビスイミダゾール、クロロアルキルトリアジン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキサイド、アルファヒドロキシルケトン、アルファアミノケトン、上記化合物の誘導体およびそれらの混合物が含まれる。
【0076】
例示的な光開始剤は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure 651の商標で入手可能)などのベンジルケタール;2,2−ジエトキシアセトフェノン(「DEAP」、First Chemical Corporationから入手可能)などのアセトフェノン誘導体;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(「HMPP」、Ciba Specialty ChemicalsからDarocur 1173の商標で入手可能);1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure184の名で入手可能);2−ベンジル−2−N、N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure 369の商標で入手可能);2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure 907の商標で入手可能);または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(「TPO」、HMPP(Irgacure 4265)と50/50重量%ブレンドのCiba Specialty Chemicalsから入手可能)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な、Irgacure 1700としてのHMPPと比率に応じてIrgacure 1850または1800としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(または、HCPK)との25/75重量%のブレンド)、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure 819の商標で入手可能)などのアシルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0077】
好ましい一実施態様では、本発明に有用な光開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、光開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンである。
【0078】
本発明による湿気及び放射線硬化性接着剤組成物において、成分(b)は、成分の総重量に基づき、0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の量で存在する。
【0079】
<成分(c)>
湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、湿気の存在下で組成物の湿気硬化を開始させる湿気硬化触媒をさらに含む。
【0080】
本発明の湿気および放射線硬化性接着剤組成物において典型的に使用される湿気硬化触媒は、湿気硬化を促進するために有用であることが知られているものを含む。触媒は、金属触媒および非金属触媒を含む。本発明に有用な金属触媒の金属部分の例は、スズ、チタン、ジルコニウム、鉛、コバルト鉄、アンチモン、マンガン、ビスマスおよび亜鉛化合物を含む。
【0081】
一実施態様では、組成物の湿気硬化を促進するのに有用なスズ化合物は、これには限定されないが、ジメチルジネオデカノエートスズ(Momentive Performance Materials Inc.からFOMREZ UL−28Aの商品名で入手可能)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメトキシド、スズオクトエート、イソブチルスズトリセエロエート(isobutyltintriceroate)、ジブチルスズオキサイド、可溶化ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビスジイソオクチルフタレート、ビス−トリプロポキシシリルジオクチルスズ、ジブチルスズビスアセチルアセトン、シリル化ジブチルスズジオキサイド、カルボメトキシフェニルスズトリスウベレート、イソブチルスズトリセロエート、ジメチルスズジブチレート、ジメチルスズジネオデカノエート、酒石酸トリエチルスズ、ジブチルスズジベンゾエート、オレイン酸スズ、ナフテン酸スズ、ブチルスズトリ−2−エチルヘキシルヘキソエート、スズブチレート、ジオクチルスズジデシルメルカプチド、ビス(ネオデカノイルオキシ)ジオクチルスタンナン、ジメチルビス(オレオイルオキシ)スタンナンが含まれる。
【0082】
1つの好ましい実施態様では、湿気硬化触媒は、ジメチルジネオデカノエートスズ(Momentive Performance Materials Inc.から商品名FOMREZ UL−28で入手可能)、ジオクチルスズジデシルメルカプチド(Momentive Performance Materials Inc.から商品名FOMREZ UL−32で入手可能)、ビス(ネオデカノイルオキシ)ジオクチルスタンナン(Momentive Performance Materials Inc.から商品名FOMREZ UL−38で入手可能)、ジメチルビス(オレオイルオキシ)スタンナン(Momentive Performance Materials Inc.から商品名FOMREZ UL−50で入手可能)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。より好ましくは、湿気硬化触媒は、ジメチルジネオデカノエートスズである。
【0083】
本発明による湿気及び放射線硬化性接着剤組成物において、成分(c)は全成分の総重量に基づき、0.1〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%の量で存在する。
【0084】
<成分(d)>
湿気および放射線硬化性組成物は、反応性可塑剤をさらに含むことができる。
【0085】
本明細書で使用される「反応性可塑剤」という用語は、その末端または主鎖に反応性ケイ素基を有する高分子量可塑剤を意味し、ポリオルガノシロキサンと反応し、硬化の間に架橋ネットワーク中に存在する。
【0086】
本発明に有用な反応性可塑剤は特に限定されない。1つの適切な例は、当技術分野で公知の従来の方法によって調製することができるモノ(メタ)アクリルオキシ末端直鎖ポリオルガノシロキサンホモポリマーであり、例えば、米国特許第6140444号に開示され、その内容は、参照により全体が組み込まれる。具体的には、モノ(メタ)アクリルオキシ末端ポリオルガノシロキサンホモポリマーは、(メタ)アクリルオキシメチル)フェネチル、(メタ)アクリルオキシメチルおよび(メタ)アクリルオキシプロキシル基で終端された直鎖ポリジメチルシロキサンからなる群から選択される。より具体的には、反応性可塑剤として使用されるポリオルガノシロキサンホモポリマーは、(メタ)アクリルオキシおよびC〜C20アルコキシ、好ましくはC〜Cアルコキシ、より好ましくはメチルでともに停止される。
【0087】
本発明による湿気及び放射線硬化性接着剤組成物において、成分(d)は、成分の総重量に基づき、10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%の量で存在する。
【0088】
<成分(e)>
湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、任意に湿気架橋剤を含んでいてもよい。
【0089】
例示的な湿気架橋剤は、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、γ−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートおよびヘキシルトリメトキシシランである。
【0090】
好ましくは、湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、湿気架橋剤を含み、ビニルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、湿気架橋剤は、Dynasylan VTMOの商品名でEvonikから入手可能なビニルトリメトキシシランである。
【0091】
成分(e)は、全成分の総重量に基づき、1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の量で存在する。
【0092】
<その他の成分>
湿気及び放射線硬化性接着剤組成物は、流動性、調剤性、貯蔵安定性、硬化性及び硬化した生成物の物理的性質などのシーラント組成物の特性を改良又は改質するための1種以上の任意の添加剤、樹脂成分などをさらに含んでもよい。
【0093】
必要に応じてシーラント組成物に含まれ得る成分は、例えば、鎖伸長剤、有機または無機充填剤、チキソトロープ剤、希釈剤、改質剤、顔料および染料などの着色剤、防腐剤、安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤などを含有していてもよいが、これに限定されない。
【0094】
本発明において有用な適切な鎖伸長剤は、メトキシ、エトキシ、トリエトキシシリルエチル末端ポリジメチルシロキサンなどを含むが、これに限定されない。 典型的な鎖伸長剤は、DMS−XM11(Gelest、Inc.、Morrisville、Pa。から入手可能)などのメトキシ末端ポリジメチルシロキサン、DMS−EX21(Gelest、Inc.、Morrisville、PAから入手可能)などのジメトキシ(エポキシプロポキシプロピル)末端ポリジメチルシロキサン、DMS−XE11(Gelest、Inc.、Morrisville、PAから入手可能)などのエトキシ末端ジメチルシロキサン、およびDMS XT11(Gelest、Inc.、Morrisville、PAから入手可能)などのトリエトキシシリルエチル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0095】
存在する場合、成分(e)は、本発明による湿気および放射線硬化性接着剤組成物の全成分の総重量に対して、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の量で存在する。
【0096】
本発明に任意に用いることができる適する充填剤は、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石こう、ケイ酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性化白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機充填材;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリペンタジエン、ポリイソプレン、ポリイソプロピレンなどの有機充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0097】
本発明で任意に用いることができる適するチキソトロピック剤には、タルク、ヒュームシリカ、表面処理された超微粒炭酸カルシウム、アルミナ微粒子、板状アルミナ、モンモリロナイト等の層状化合物、ホウ酸アルミニウムホイスカー等の針状化合物が挙げられるが、これらに限定されない。タルク、ヒュームシリカおよび微細アルミナが好ましいチキソトロープ剤である。
【0098】
一実施態様では、本発明は、湿気および放射線硬化性組成物であって、
ここで重量百分率は全ての成分の全重量に基づき、
20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の成分(a);
0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の成分(b);
0.1〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%の成分(c);
10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%の成分(d);
1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の成分(e);
5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の鎖伸長剤、
を含有する、硬化性組成物を提供する。
【0099】
本発明の湿気および放射線硬化性接着剤組成物は液体の形態であり、組成物のブルックフィールド粘度は好ましくは25℃で約50cps〜約40,000cpsである。このような粘度範囲の液体接着剤組成物は、良好な流動性を有し、基板への塗布や注入が容易である。ここでのブルックフィールド粘度は、25℃でスピンドルを備えたブルックフィールド回転粘度計(BROOKFIELD、USから入手可能なデジタルブルックフィールド粘度計、DV−II +)を用いてASTM D1084−1997によって測定される。試験のためのスピンドルの選択は、接着剤組成物の粘度レベルに依存する。
【0100】
本発明の湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、鮮明な外観、たとえば、光線透過率95%以上、放射線および湿気硬化後のヘイズ値が1%未満といった鮮明な外観および優れた光学特性を有する。
【0101】
<湿気および放射線硬化性接着剤組成物の調製>
メカニカルスターラー、コンデンサー、温度計、加熱マントル、窒素導入口および添加漏斗を備えたミキサーに成分(a)および(d)を入れ、80℃まで加熱する。内容物を真空下で120rpmで3時間混合し、次いで真空下で室温まで冷却する。次いで成分(c)、(d)、(e)および/または鎖伸長剤を真空下でミキサーに添加する。すべての成分について1時間混合した後、窒素で真空を中止する。
【0102】
<基板貼り合わせ工程>
本発明の別の態様は、基板を結合する方法であって、
(i)本発明の湿気および放射線接着剤組成物を被結合基板上に塗布する工程、
(ii)結合される基板をラミネートまたは積み重ねてアセンブリを形成する工程、
(iii)アセンブリを光照射する工程;および
(iv)アセンブリを室温に置く工程
を含む方法を提供する。
【0103】
具体的には、本発明による接着剤組成物は、自動ディスペンシングシステムによって所定の経路に従って基材の表面上に加圧下でコーティングすることができる。次に、別の基板を接着剤上にラミネートし、ディスペンサー、例えば、ディスペンサーKAR03(飯沼ゲージ製作所製)を用いて両基板の高低差を制御する。接着剤が接着領域全体で自己平坦化された後、硬化のために光照射が上から下へ行われる。本明細書では、光の照射には、光源(紫外線、可視光など)や高エネルギー線(電子線、α線、γ線、X線など)を用いることができ、好ましくは、約200nm〜約400nmの波長範囲の紫外線である。エネルギー線量は3000mJ/cm以上であり、出力密度は約100mW/cmである。使用されるUVランプは、Loctite UVALOC 1000のようなものであってもよく、照射時間は、一般に、約5秒〜約30秒であってもよい。
【0104】
周辺領域は不透明部分内にあるので、UV照射によって硬化させることはできない。本発明の接着剤組成物の湿気硬化性に応じて、室温で約24時間保存することにより、さらなる装置および加工の必要もなく、接着部分を完全に硬化させることができる。
【0105】
<硬化した接着剤生成物>
本発明の別の態様はまた、湿気および放射線硬化性接着剤組成物から製造された硬化接着剤生成物を提供する。
【0106】
驚くべきことに、本発明の接着剤組成物の硬化接着剤生成物は、非常に軟質であり、特に、ショア00硬度が低く、伸びが改善され、それと同時に、高温高湿下での良好な安定性および高い透明性を含む良好な特性を有する。このように、硬化接着剤生成物は、ディスプレイパネル、タッチパネルおよび光学デバイスに使用するのに適しており、収縮を大きく減少させ、光漏れを引き起こすことが知られている基板に蓄積された応力を吸収することができる。
【0107】
一実施態様では、組成物の硬化反応生成物は、ASTM D2240に従って測定して25℃で、硬化から7日後に0〜50、好ましくは15〜45のショア00硬度を有する。
【0108】
別の実施態様では、組成物の硬化反応生成物は、ASTM D412に従って測定して25℃で硬化から7日後に100%〜400%、好ましくは150%〜350%の伸び率を有する。
【0109】
<湿気および放射線硬化性接着剤組成物の使用>
本発明の湿気および放射線硬化性接着剤組成物は、ハンドヘルドデバイスおよびディスプレイ(HHDD)用の液体光学的透明接着剤(LOCA)として、特に、ディスプレイパネル、タッチパネルおよび光学デバイスの製造における様々な素子の接着またはラミネートに用いることができる。
【0110】
例えば、本発明の湿気及び放射線硬化性接着剤組成物は、透明基板を別の透明基板と接着又はラミネートすること、又は透明基板を不透明基板と接着又はラミネートすることに使用することができる。透明基板は、ガラス及び透明プラスチック等を含み、不透明基板は、金属、不透明プラスチック、セラミック、石、革及び木材等を含む。プラスチックは、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)またはポリエステル(PET)などであってもよい。
【0111】
以下の例は、当業者が本発明をより良く理解し実施するのを助けることを意図するものである。本発明の範囲は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に規定されている。全ての部およびパーセンテージは、特に明記しない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0112】
<例>
<CE−APDMST−1 PDMSの合成>
メカニカルスターラー、加熱マントル、スパージチューブおよび温度計を備えた5リットルの4つ口丸底フラスコに、350gのω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(粘度が100cps、AB Specialty SiliconesからMOH 100の商品名で市販されている)を入れた。流体を60℃の温度に加熱し、窒素で30分間スパージした後、さらに30分間真空にして、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(「APTMS」、15.56g、Gelestから市販されている)およびn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M;0.12ml、Sigma−Aldrichから市販されている)を順次反応器に加えた。混合物を真空下、60℃の温度で3時間保持した。
【0113】
次いで、反応器に窒素保護下で2187.5gのα,ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(粘度6000cps、Masil SFR 6000の商品名でEmerald Performance Materialsから市販されている)を充填した。流体を真空下で60℃の温度に加熱し、60分間維持した。ジメチルジメトキシシラン(10.5g、Gelestから市販されている)を、窒素保護下で反応器にゆっくりと加え、混合物を60℃で3時間維持した。次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に添加して触媒をクエンチした。混合物を真空ストリッピングして揮発性成分を除去した。最終生成物(CE−APDMST−1 PDMSと称する)は、式(1)で表される鎖延長アクリルオキシプロピルジメトキシシリル末端PDMS(ポリジメチルシロキサン)の混合物であり、
式中、
(i)n=430、mおよびa=68、lおよびb=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル(混合物の>80重量%);
(ii)n=430、l、mおよびa=68、b=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜RおよびR〜R14=メチル、およびR=メトキシ(混合物の約5重量%);
(iii)n=430、l、m、aおよびb=68、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R〜R14=メチル(混合物の5重量%未満);
である。
【0114】
<CE−APDMST−2 PDMSの合成>
メカニカルスターラー、加熱/冷却ジャケットを備えた1ガロンの反応器に、1500g(79.0%)のα,ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(6000cpsの粘度を有し、Emerald Performance Materialsから商品名Masil SFR 6000で市販されている)を入れた。流体を80℃の温度に加熱し、60分間真空にし、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。APTMS(11.69g、0.92%、Gelestから市販されている)およびヘキサン溶液中のn−ブチルリチウム(1.6M;1.21ml、0.042%、Sigma−Aldrichから市販されている)を順次反応器に添加した。混合物を真空下60℃の温度で1.5時間維持した。
【0115】
次いで、反応器に窒素保護下でω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン312g(16.43%)(100cpsの粘度を有し、MOH100の商品名でAB Specialty Siliconesから市販されている)を充填した。混合物を真空下、60℃の温度で2.5時間維持した。ジメチルジメトキシシラン(Gelestから市販されている)75g(5.92%)を窒素保護下で反応器にゆっくりと加え、混合物を60℃で3時間維持した。次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に添加して触媒をクエンチした。混合物を真空ストリッピングして揮発性成分を除去した。最終生成物(CE−APDMST−2 PDMSと称する)は、式(1)で表される鎖延長アクリルオキシプロピルジメトキシシリル末端PDMSの混合物であり、
式中、
(i)n=430、mおよびa=68、lおよびb=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R、R、R〜R14=メチル、RおよびR=メトキシ(混合物の>70重量%);
(ii)n=430、m=68、a、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、R=メトキシ、R〜R14=メチル;および
(iii)mおよびn=430、a=68、bおよびl=0、AおよびA=アクリルオキシプロピル、RおよびR=メトキシ、およびR、R、R〜R14=メチル;
である。
【0116】
<CE−APDMST−3 PDMSの合成>
メカニカルスターラー、加熱/冷却ジャケットを備えた2ガロンの反応器に、α,ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(750cpsの粘度を有し、商品名Masil SFR 750でEmerald Performance Materialsから市販されている)4483.5g(97.95%)を入れた。流体を80℃の温度に加熱し、60分間真空にし、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。メタクリルオキシメチルメチルジメトキシシラン(45.77g、1.0%、XL−32の商品名でWackerから市販されている)およびn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M;3.52ml、0.05%、Gelestから市販されている)を反応器に連続して添加した。 混合物を真空下、50℃の温度で3時間維持した。
【0117】
次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に加えて触媒をクエンチし、後に、30分真空にし、揮発性成分を除去した。ヘキサメチルジシラザン(Gelestから市販されている)45.77g(1%)を窒素保護下で反応器にゆっくりと加え、混合物を120℃まで加熱し、6時間維持した。混合物を真空下で120℃で2時間ストリッピングして揮発成分を除去し、次いで室温まで冷却した。最終生成物(CE−APDMST−3 PDMSと称する)は、式(1)で表される鎖延長メタクリルオキシメチルジメチルシリル末端PDMSの混合物であり、
式中、
(i)n、aおよびm=190、lおよびa=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチル(混合物の約80重量%);
(ii)n=190、m=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜RおよびR〜R14=メチルおよびR=メトキシ;および
(iii)mおよびn=190、l、aおよびb=0、AおよびA=メタクリルオキシメチル、R〜R14=メチル
である。
【0118】
<DMA−6000の合成>
メカニカルスターラー、加熱/冷却ジャケットを備えた2ガロンの反応器に、4932.5gのα,ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(6000cpsの粘度を有し、Emerald Performance MaterialsからMasil SFR 6000の商品名で市販されている)を入れた。流体を50℃の温度に加熱し、60分間真空にし、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。APTMS(65g、Gelestから市販されている)およびヘキサン溶液中のn−ブチルリチウム(1.6M;3.9ml、Sigma−Aldrichから市販されている)を順次反応器に添加した。混合物を真空下、50℃の温度で4時間維持した。次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に添加して触媒をクエンチした。混合物を真空ストリッピングして揮発性成分を除去した。最終生成物は、ジアクリルオキシプロピルジメトキシシリル末端直鎖PDMSホモポリマーであり、比較例で使用されるDMA−6000と称される。
【0119】
<反応性可塑剤の合成>
メカニカルスターラー、加熱マントル、スパージチューブおよび温度計を備えた5リットルの4つ口丸底フラスコに、2425gのω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(1000cpsの粘度を有し、MOH 1000の商品名でAB Specialty Siliconesから市販されている)を入れた。流体を60℃の温度に加熱し、窒素で30分間スパージした後、さらに30分間真空にして、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(「APTMS」、36g、Gelestから市販されている)およびヘキサン溶液中のn−ブチルリチウム(1.6M;1.89ml、Sigma−Aldrichから市販されている)を順次反応器に添加した。混合物を真空下、60℃の温度で3時間維持した。次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に添加して触媒をクエンチした。混合物を真空ストリッピングして揮発性成分を除去した。最終生成物は、モノアクリルオキシプロピルジメトキシシリル末端直鎖PDMSであり、表1に示す接着剤組成物中の反応性可塑剤として使用される。
【0120】
<鎖伸長剤の合成>
メカニカルスターラー、加熱/冷却ジャケットを備えた2ガロンの反応器に4400gのα,ω−ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(粘度70cpsを有し、Masil SFR 70の商品名でEmerald Performance Materialsから市販されている)を入れた。流体を60℃の温度に加熱し、60分間真空にし、水および二酸化炭素などの揮発性成分を除去した。ジメチルジメトキシシラン(320g、Gelestから市販されている)およびヘキサン溶液中のn−ブチルリチウム(1.6M;3.64ml、Sigma−Aldrichから市販されている)を順次反応器に添加した。混合物を窒素保護下、60℃の温度で3時間維持した。次いで、ドライアイス(1g)を反応混合物に添加して触媒をクエンチした。混合物を真空ストリッピングして揮発性成分を除去した。実施例では、最終生成物を鎖伸長剤として使用する。
【0121】
上記の調製方法に従って、本発明による接着剤組成物を得た。成分の名前と量は表1に記載する。
【0122】
【表1】
光開始剤:Darocur 1173の商品名でCiba Specialty Chemicalsから市販されている2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
湿気触媒:Momentive Performance Materials Inc.からFOMREZ UL−28の商品名で市販されているジメチルジネオデカノエートスズ
鎖伸長剤:上記のように合成されたメトキシ基でエンドキャップされた直鎖状構造のPDMS
湿気架橋剤:Dynasylan VTMOの商品名でEvonikから入手可能なビニルトリメトキシシラン
【0123】
テストのために、全ての成分(総量約50グラム)をプラスチックジャーに添加し、次いで毎回3000rpmで30秒間スピードミキサーで3回スパンした。32グラムの材料を両側面にポリエチレンフィルムとガラスの一片を有する6インチ×6インチの金属フレームに注ぎ、続いて75mW/cmのUVA強度で両面から60秒間UV暴露した。ポリエチレンフィルムを剥がし、テストすべき硬化生成物を25℃、50%相対湿度の部屋に7日間保持した。
【0124】
表1の組成物の硬化生成物のASTM D2240による硬度およびASTM D412による伸びを表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表1に示すように、例A〜Fは、本発明による鎖延長ポリオルガノシロキサンを有する接着剤組成物の本発明の例である。例Gは、1つのジ(メタ)アクリルオキシ末端直鎖ポリオルガノシロキサンホモポリマーのみを含み、従来の接着剤配合物の典型的な例である比較例として記載される。
【0127】
表2に示すように、例A〜Fの硬化生成物のショア00硬度の結果は、従来のUVおよび湿気硬化性シリコーン系接着剤、例えば例Gの範囲(50〜70)よりも著しく低い25〜40の範囲内である。
【0128】
表2において、例A〜Fの硬化生成物の伸長率結果が例Gのものよりもはるかに大きいことも明らかであり、これは本発明の接着剤組成物が従来の配合物よりもはるかに軟質であることを示している。
【0129】
このような優れた結果は、ポリオルガノシロキサンのポリマー鎖上の架橋性官能基の制御が、硬化生成物の柔軟性および伸びの改善をもたらすという仮定に起因すると考えられる。したがって、アセンブリおよび光漏れの際の基板に蓄積される応力は、本発明の接着剤によって大きく吸収され、減少することができる。
【0130】
さらに、テスト中、本発明の接着剤は、異なる基材に対する良好な接着性、良好な透過率、室温、高温および高湿度下での良好な安定性を含む特性も示した。