特許第6483404号(P6483404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6483404-レーザー加工装置 図000002
  • 特許6483404-レーザー加工装置 図000003
  • 特許6483404-レーザー加工装置 図000004
  • 特許6483404-レーザー加工装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483404
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20190304BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B23K26/142
   B23K26/16
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-224361(P2014-224361)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-87639(P2016-87639A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウィリアム ガド
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166065(JP,A)
【文献】 特開2014−200842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/142
B23K 26/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に集光レンズで集光したレーザー光線を照射して加工するレーザー光線照射手段と、該レーザー光線を被加工物に照射することで加工点に発生するデブリが被加工物へ付着するのを防ぐデブリ付着防止手段と、を備えるレーザー加工装置であって、
該デブリ付着防止手段は、
平坦な下面を有し、被加工物に照射される該レーザー光線が通過する貫通穴を設け、該加工点の近傍に配設される本体部と、
該本体部の下面に形成された開口と流体供給源とを接続する流体供給路と、
該貫通穴を囲繞して該チャックテーブルに保持された被加工物の表面とわずかな隙間を持って略並行に延在する該下面の該貫通穴を挟んで該流体供給路が接続された該開口と対応した位置に設けられた吸引開口と、
該吸引開口と吸引源とを接続する吸引路と、を備え、
流体が該開口から該本体部の下面と被加工物の表面との該隙間に供給されて被加工物の表面に高速で流れる該流体の層を形成し、
該開口から供給され該加工点上を通過した該流体を該吸引開口から吸引し、該加工点で発生したデブリを収集することを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の板状の被加工物に対し吸収性を有する波長のレーザー光線を照射し、アブレーション加工によってレーザー加工溝を形成する加工方法が知られている。このレーザー加工溝によってLow−k膜を剥離させることなく分断したり、光デバイスウエーハの破断起点を形成したりする。
【0003】
しかしながら、レーザー光線の照射によって、被加工物が溶融し、いわゆるデブリと呼ばれる微細な粉塵が発生し、デブリが飛散してデバイスに付着することでデバイスの機能を低下させてしまう恐れがある。そこで、デブリ除去対策として、たとえば集光用対物レンズの光軸に沿ってエアを噴出する噴出口を備え、噴出口の周りからデブリを吸引する粉塵排出手段を備えたレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69249号公報
【特許文献2】特開2011−121099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のレーザー加工装置は、十分なデブリの集塵はできず、デブリが被加工物の表面に付着する虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、加工点で発生したデブリが被加工物の表面に付着することを抑制することができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に集光レンズで集光したレーザー光線を照射して加工するレーザー光線照射手段と、該レーザー光線を被加工物に照射することで加工点に発生するデブリが被加工物へ付着するのを防ぐデブリ付着防止手段と、を備えるレーザー加工装置であって、該デブリ付着防止手段は、平坦な下面を有し、被加工物に照射される該レーザー光線が通過する貫通穴を設け、該加工点の近傍に配設される本体部と、該本体部の下面に形成された開口と流体供給源とを接続する流体供給路と、該貫通穴を囲繞して該チャックテーブルに保持された被加工物の表面とわずかな隙間を持って略並行に延在する該下面の該貫通穴を挟んで該流体供給路が接続された該開口と対応した位置に設けられた吸引開口と、該吸引開口と吸引源とを接続する吸引路と、を備え、流体が該開口から該本体部の下面と被加工物の表面との該隙間に供給されて被加工物の表面に高速で流れる該流体の層を形成し、該開口から供給され該加工点上を通過した該流体を該吸引開口から吸引し、該加工点で発生したデブリを収集することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本願発明のレーザー加工装置では、加工点の近傍に被加工物とわずかな隙間を持って平行に対面する下面から流体を供給するデブリ付着防止手段を備えるため、加工点付近の被加工物の表面に高速で流れる流体の層を形成することができ、加工点で発生し飛散したデブリが流体の層によって被加工物の表面に付着することを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたレーザー加工装置の要部の断面図である。
図3図3は、図1に示されたレーザー加工装置の加工中の状況を示す平面図である。
図4図4は、実施形態2に係るレーザー加工装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示されたレーザー加工装置の要部の断面図である。図3は、図1に示されたレーザー加工装置の加工中の状況を示す平面図である。
【0013】
実施形態1に係るレーザー加工装置1は、板状の被加工物Wを保持するチャックテーブル10と、レーザー光線照射手段20とを相対移動させることで、被加工物Wにアブレーション加工を施して、被加工物Wにレーザー加工溝R(図3に示す)を形成するものである。実施形態1に係るレーザー加工装置1は、被加工物Wの外縁部にレーザー加工溝Rを形成するものである。
【0014】
実施形態1では、被加工物Wは、レーザー加工装置1により加工される加工対象であり、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物Wは、表面WSに積層されたLow−k膜によって、格子状に形成される複数の分割予定ラインで区画された領域にデバイスDが形成されたデバイス領域DRと、デバイス領域DRを囲繞する外周余剰領域GRを備える。なお、図1中の一点鎖線よりも内側がデバイス領域DRであり、外側が外周余剰領域GRである。図1では、デバイス領域DRと外周余剰領域GRとの境界を、便宜上一点鎖線で示している。
【0015】
Low−k膜は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜が被加工物Wの表面WSに積層されて構成されている。被加工物Wは、デバイスDが複数形成されている表面WSの反対側の裏面に粘着テープTが貼着され、粘着テープTの外縁が環状フレームFに貼着されることで、環状フレームFの開口に粘着テープTで支持される。
【0016】
レーザー加工装置1は、図1に示すように、板状の被加工物Wを保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WSにレーザー加工溝Rを形成するレーザー光線照射手段20と、被加工物Wの表面WSを撮像する撮像手段30と、X軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、デブリ付着防止手段60と、図示しない制御手段とを含んで構成される。
【0017】
チャックテーブル10は、加工前の被加工物Wが保持面10a上に載置されて、粘着テープTを介して環状フレームFの開口に貼着された被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置された被加工物Wを吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、X軸移動手段40によりX軸方向に加工送りされ、かつ回転駆動源(図示せず)により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転されるとともに、Y軸移動手段50によりY軸方向に割り出し送りされる。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動して被加工物Wの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部11が複数設けられている。
【0018】
レーザー光線照射手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wに集光レンズ22(図2に示す)で集光したレーザー光線L(図2に示す)を照射して加工するものである。レーザー光線照射手段20は、被加工物Wに対し、被加工物Wが吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線Lを照射し、被加工物Wにアブレーション加工を施して、被加工物Wの表面WSにレーザー加工溝Rを形成するものである。
【0019】
レーザー光線照射手段20は、図2に示すように、装置本体2の柱部3に支持されたケーシング21と、ケーシング21内に設けられた図示しないレーザー光線発振部と、集光レンズ22などを備えている。レーザー光線発振部は、周知のレーザー発振器と、1/2波長板と、ビームスプリッタと、ビーム調整手段などを備えて構成され、レーザー光線Lを集光レンズ22に発振する。
【0020】
集光レンズ22は、チャックテーブル10の保持面10aに対向してケーシング21の先端部に設けられている。集光レンズ22は、レーザー光線Lをチャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WS上に集光する。
【0021】
撮像手段30は、レーザー光線照射手段20のケーシング21に取り付けられて、レーザー光線照射手段20によってレーザー加工すべき加工領域を撮像するものである。撮像手段30は、撮像して得た画像を制御手段に出力する。
【0022】
デブリ付着防止手段60は、レーザー光線Lを被加工物Wに照射することで、被加工物Wの表面WSにおいてレーザー光線Lが照射される加工点P(図2及び図3に示す)に発生するデブリG(図2に示す)が被加工物Wの表面WSの特にデバイスDに付着するのを防ぐものである。デブリ付着防止手段60は、図1及び図2に示すように、レーザー光線照射手段20のケーシング21の先端部に取り付けられている。
【0023】
デブリ付着防止手段60は、図2に示すように、本体部61と、流体供給部62とを備える。本体部61は、レーザー光線照射手段20のケーシング21の先端部に取り付けられた取付部材63と、Z軸方向に取付部材63とチャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WSとの間に位置する下側部材64と、取付部材63と下側部材64とを連結する連結部材65とを備えている。下側部材64は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WSと対向し、かつ平坦に形成された下面64aを有している。下面64aは、本体部61の下面であり、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WSとわずかな隙間C(図2に示す)を持って、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの表面WSと略平行に対面している。また、実施形態1では、下面64aと被加工物Wの表面WSとの間の隙間Cは、略40μm程度であり、本発明では、後述する流体供給源68から供給される流体により隙間C内の加工点Pに発生するデブリGを吹き飛ばして、デブリGが被加工物Wの表面WSに付着することを抑制できる流体の層を形成できるのであれば、10μm〜200μm程度であるのが望ましい。
【0024】
また、本体部61は、取付部材63及び下側部材64がレーザー光線照射手段20から被加工物Wに照射されるレーザー光線Lを避けて、加工点Pの近傍に配設される。なお、実施形態1では、デブリ付着防止手段60は、図3に示すように、下側部材64の外周面から凹に形成されて、レーザー光線Lを通すことができる切欠き64bを形成することで、本体部61の下側部材64をレーザー光線照射手段20から被加工物Wに照射されるレーザー光線Lを避けて、加工点Pの近傍に配設される。
【0025】
流体供給部62は、本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間に流体を供給するものである。流体供給部62は、図2に示すように、本体部61の下側部材64を貫通しかつ本体部61の下面64aに形成された開口66と、開口66に連なる流体供給路67とを備える。開口66は、その断面において、開口面積が一定に形成され、かつ下側に向かうにしたがって徐々に加工点Pに近付くようにZ軸方向に対して傾いて形成されている。流体供給路67は、管状に形成され、かつ開口66と流体供給源68とを接続するものであり、取付部材63を貫通して設けられている。流体供給路67は、流体供給源68からの流体を開口66に導くためのものである。なお、実施形態1では、流体供給源68は、流体としての加圧された空気を流量25〜300l/minで開口66に供給し、開口66は、直径3〜30mm程度の大きさに形成されている。なお、流体供給源68の流量及び開口66の面積は、加工点Pに発生するデブリGを吹き飛ばして、デブリGが被加工物Wの表面WSに付着することを抑制できる程度の流量、面積であればよい。
【0026】
制御手段は、レーザー加工装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段は、被加工物Wに対するアブレーション加工動作をレーザー加工装置1に行わせるものである。なお、制御手段は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0027】
次に、本実施形態に係るレーザー加工装置1の加工動作について説明する。まず、オペレータが加工内容情報を登録し、オペレータがレーザー光線照射手段20から離間したチャックテーブル10の保持面10a上に被加工物Wを載置し、加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置1が加工動作を開始する。加工動作では、制御手段は、チャックテーブル10の保持面10aに被加工物Wを吸引保持し、クランプ部11で環状フレームFを挟持する。制御手段は、X軸移動手段40及びY軸移動手段50によりチャックテーブル10をレーザー光線照射手段20の下方に向かって移動させ、撮像手段30の下方にチャックテーブル10に保持された被加工物Wを位置付け、撮像手段30に撮像させる。撮像手段30は、撮像した画像の情報を制御手段に出力する。そして、制御手段が、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの外縁部と、レーザー光線照射手段20との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実施し、チャックテーブル10に保持された被加工物Wとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整する。この際、レーザー光線照射手段20よりも開口66が被加工物Wの中央寄りに位置するように、被加工物Wとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整するのが望ましい。
【0028】
そして、制御手段は、流体供給源68から流体を開口66を通して、本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間に供給し、これらの隙間C内に高速で流れる流体の層を形成する。そして、制御手段は、X軸移動手段40、回転駆動源、Y軸移動手段50に、被加工物Wの外縁部とレーザー光線照射手段20とを被加工物Wの外縁部に沿って相対的に移動させながらレーザー光線照射手段20からレーザー光線Lを被加工物Wの表面WSに向けて照射する。こうして、レーザー加工装置1では、流体が開口66から本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの隙間Cに供給されて、被加工物Wの表面WSに高速で流れる流体の層を形成して、レーザー光線Lを照射する。なお、本発明では、流体の層の流速は、加工点Pに発生するデブリGを吹き飛ばして、デブリGが被加工物Wの表面WSに付着することを抑制できる程度の流速であればよい。
【0029】
そして、レーザー光線照射手段20からレーザー光線Lが照射される加工点Pではアブレーション加工がおこなわれ、被加工物Wの移動とともにレーザー加工溝Rが形成される。また、加工点Pでは、デブリGが発生し、発生したデブリGは、図3に示すように、開口66から流れる流体により形成される層により加工点Pから吹き飛ばされて、被加工物Wの表面WSに付着することが抑制される。
【0030】
被加工物Wの外縁部の全周にレーザー加工溝Rを形成した後、制御手段は、レーザー光線照射手段20からのレーザー光線Lの照射を停止し、チャックテーブル10をレーザー光線照射手段20から離間した位置に移動させた後、チャックテーブル10の吸引保持及びクランプ部11の挟持を解除する。そして、オペレータが外縁部の全周にレーザー加工溝Rが形成された被加工物Wをチャックテーブル10上から取り除くとともに、レーザー加工前の被加工物Wを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、被加工物Wにレーザー加工溝Rを形成する。
【0031】
以上のように、実施形態1に係るレーザー加工装置1によれば、加工点Pの近傍に被加工物Wとわずかな隙間Cを持って平行に対面する下面64aから流体を供給するデブリ付着防止手段60を備える。このために、加工点P付近の被加工物Wの表面WS上には高速に流れる流体の層を形成することができ、加工点Pで発生し飛散したデブリGを流体の層によって吹き飛ばすことができ、被加工物Wの表面WSに付着することを抑制することができる。また、実施形態1では、レーザー光線照射手段20よりも開口66が被加工物Wの中央寄りに位置するように、被加工物Wとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整して、レーザー光線照射手段20からレーザー光線Lを照射して、被加工物Wの外縁部にレーザー加工溝Rを形成するのが望ましい。この場合、加工点Pに発生したデブリGが被加工物Wのデバイス領域DR上を通過することなく、外縁側に吹き飛ばされるので、デブリGが被加工物Wの表面WSに付着することをより確実に抑制することができる。
【0032】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るレーザー加工装置を図面に基いて説明する。図4は、実施形態2に係るレーザー加工装置の要部の断面図である。なお、図4において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
実施形態2に係るレーザー加工装置1は、被加工物Wのすべての分割予定ラインにレーザー加工溝Rを形成するものである。実施形態2に係るレーザー加工装置1のデブリ付着防止手段60は、図4に示すように、本体部61の取付部材63の中央部にレーザー光線照射手段20のケーシング21の先端部を取り付けている。デブリ付着防止手段60は、下側部材64の中央部にレーザー光線照射手段20が照射するレーザー光線Lが通過する貫通穴69を形成している。
【0034】
デブリ付着防止手段60は、下側部材64に貫通穴69を設けることで、本体部61を被加工物Wに照射されるレーザー光線Lを避けて加工点Pの近傍に配設する。デブリ付着防止手段60の本体部61の下側部材64の下面64aが、レーザー光線Lが通過する貫通穴69を囲繞して、レーザー光線照射手段20よりも流体供給部62の開口66から離れた側に延在している。なお、実施形態2では、貫通穴69は、被加工物Wの表面WSに近付くのにしたがって徐々に小径となるように、断面テーパ状に形成されている。
【0035】
また、実施形態2に係るレーザー加工装置1のデブリ付着防止手段60は、流体吸引部70を備えている。流体吸引部70は、本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間の流体をデブリGとともに吸引するものである。流体吸引部70は、図4に示すように、本体部61の下側部材64を貫通しかつ本体部61の下面64aに形成された吸引開口71と、吸引開口71に連なる吸引路72とを備える。
【0036】
吸引開口71は、貫通穴69を挟んで流体供給路67が接続された開口66と対応した位置に設けられている。実施形態2では、吸引開口71は、開口66との間に貫通穴69を挟む位置に設けられている。吸引開口71は、その断面において、開口面積が一定に形成され、かつ下側に向かうにしたがって徐々に加工点P即ち開口66に近付くようにZ軸方向に対して傾いて形成されている。吸引路72は、管状に形成され、かつ吸引開口71と吸引源73とを接続するものであり、取付部材63を貫通して設けられている。吸引路72は、吸引源73の吸引力により本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間の流体を吸引源73に導くためのものである。こうして、吸引開口71は、吸引路72によって吸引源73と接続している。なお、実施形態2では、吸引源73による空気の流量及び吸引開口71の面積は、加工点Pに発生するデブリGを吸引して、デブリGが被加工物Wの表面WSに付着することを抑制できる程度の流量、面積であればよい。
【0037】
実施形態2に係るレーザー加工装置1は、加工動作では、制御手段が撮像手段30の撮像した画像の情報に基づいて、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの分割予定ラインと、レーザー光線照射手段20との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実施し、チャックテーブル10に保持されたウエーハWとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整する。
【0038】
そして、制御手段は、流体供給源68から流体を開口66を通して、本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間に供給するとともに、吸引源73により本体部61の下面64aと被加工物Wの表面WSとの間の流体を吸引開口71を通して吸引源73に吸引する。そして、制御手段は、X軸移動手段40、回転駆動源、Y軸移動手段50によりチャックテーブル10とレーザー光線照射手段20とを相対的に移動させながら、デバイス領域DR内のすべての分割予定ラインにレーザー光線照射手段20からレーザー光線Lを照射する。
【0039】
そして、レーザー光線照射手段20からレーザー光線Lが照射される加工点Pではアブレーション加工がおこなわれ、被加工物Wの移動とともにレーザー加工溝Rが形成される。また、開口66から供給され加工点P上を通過した流体を吸引開口71から吸引する。また、加工点Pでは、デブリGが発生し、発生したデブリGは、開口66から供給され加工点P上を通過した流体により形成される層により加工点Pから吹き飛ばされて、吸引開口71を通して吸引されて、被加工物Wの表面WSに付着することが抑制される。こうして、実施形態2に係るレーザー加工装置1は、加工点Pで発生したデブリGを収集する。
【0040】
被加工物Wのすべての分割予定ラインにレーザー加工溝Rを形成した後、制御手段は、レーザー光線照射手段20からのレーザー光線Lの照射を停止し、チャックテーブル10をレーザー光線照射手段20から離間した位置に移動させた後、チャックテーブル10の吸引保持及びクランプ部11の挟持を解除する。そして、オペレータがすべての分割予定ラインにレーザー加工溝Rが形成された被加工物Wをチャックテーブル10上から取り除くとともに、レーザー加工前の被加工物Wを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、被加工物Wにレーザー加工溝Rを形成する。
【0041】
以上のように、実施形態2に係るレーザー加工装置1によれば、実施形態1の効果にくわえ、吸引源73に接続された吸引開口71が加工点Pを通過したデブリGを含んだ流体を吸引する。このために、レーザー加工装置1は、加工点Pに発生し飛散したデブリGを加工点Pから速やかに吹き飛ばし吸引することができ、確実にデブリGの被加工物Wの表面WSへの付着を抑制することができる。また、吸引する場合には、エジェクタを利用してエアー供給のみで吸引力を発生させてもよい。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
20 レーザー光線照射手段
22 集光レンズ
60 デブリ付着防止手段
61 本体部
64a 下面
66 開口
67 流体供給路
68 流体供給源
69 貫通穴
71 吸引開口
72 吸引路
73 吸引源
W 被加工物
WS 表面
C 隙間
G デブリ
L レーザー光線
P 加工点
図1
図2
図3
図4