特許第6483573号(P6483573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483573
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 37/02 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   F16D37/02 E
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-165383(P2015-165383)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-80165(P2016-80165A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-213389(P2014-213389)
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-213386(P2014-213386)
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲
(72)【発明者】
【氏名】岡田 弘
(72)【発明者】
【氏名】桑山 明規
(72)【発明者】
【氏名】濱口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高木 周
(72)【発明者】
【氏名】長藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松島 亘志
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102012012128(DE,A1)
【文献】 特開2002−036898(JP,A)
【文献】 実公昭38−001406(JP,Y1)
【文献】 特開2010−101410(JP,A)
【文献】 実開平04−052629(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で設けられた筺体(30)と、
磁性体で前記筺体と相対回転可能に設けられ、前記筺体との間に流体室(8)を形成するロータ(40)と、
前記流体室に充填され、基液(90)中の磁性粒子(M)が前記筺体と前記ロータとの間で回転動力が伝達される方向である動力伝達方向に連なるように磁場が作用したとき、前記筺体と前記ロータとの締結力を増加させる磁性流体(9)と、
通電により前記磁性粒子に作用する磁場を発生させる磁場発生手段(5)と、
を備え、前記磁場発生手段への通電の切り替えにより、前記ロータと前記筺体との間で回転動力を伝達する動力伝達状態、及び、回転動力を遮断する動力遮断状態を切り替える動力伝達装置(207)であって、
前記筐体および前記ロータの回転方向に対し断続的に設けられ、前記筺体及び前記ロータが前記動力伝達方向に沿って対向している対向面(31/41)のうち前記筺体又は前記ロータの少なくとも一方の前記対向面に、前記動力伝達状態において前記磁性粒子が前記動力伝達方向に連なるように磁力線(φa)を前記動力伝達方向に集中させる集中部(33)、及び、前記動力遮断状態において前記磁性粒子が前記動力伝達方向に連なることを抑制するように前記磁性粒子を格納する格納部(34)が形成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記集中部(33)は、前記筺体又は前記ロータの一方の前記対向面から他方の前記対向面に向かって突起した凸状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記格納部(34)は、前記筺体又は前記ロータの前記対向面に対して凹み、複数の前記磁性粒子を格納可能な大きさの凹状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記動力伝達方向は、前記筐体および前記ロータの回転軸に対して径方向であり、前記流体室に対して径方向外側に位置する前記筐体及び前記ロータの前記対向面に前記格納部が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ロータは、円盤部(420)、およびその円盤部の外縁から回転軸の一方に延びる筒部(430)を有し、
前記筐体の内壁は、前記ロータが有する前記円盤部および前記筒部に沿ってその外側を覆うものであり、
前記磁場発生手段は、前記筐体が前記ロータの前記筒部を覆う箇所に対して径方向内側または径方向外側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記動力伝達方向は、軸方向であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記集中部は、前記筐体および前記ロータの回転方向に対し交差する方向に延びることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記動力伝達方向に対し垂直な方向から見たとき、前記筺体の前記対向面に形成された前記集中部と当該集中部に向き合う前記ロータの前記対向面に形成された前記集中部との間の断面積(α)と、凹状に形成された前記格納部の内側の断面積(β)とは同等の大きさであることを特徴とする請求項3からのいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記磁場発生手段は第1磁場発生手段であり、
前記動力遮断状態において、前記対向面に沿う方向の磁力線(φb)を生成し前記磁性粒子を前記格納部へ導くように磁場を発生させる第2磁場発生手段(61)をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記第2磁場発生手段は永久磁石であり、
前記第1磁場発生手段が前記動力伝達状態において発生させる磁場の強さよりも弱い磁場を発生させることを特徴とする請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記第2磁場発生手段は、前記集中部または前記格納部に対して前記動力伝達方向の一方に配置されたコイル(6)により構成され、前記動力遮断状態において、前記動力伝達方向に交差する方向の磁力線を前記格納部に生成することを特徴とする請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記第2磁場発生手段を構成するコイルは、複数の前記格納部または複数の前記集中部に跨って設けられることを特徴とする請求項11に記載の動力伝達装置。
【請求項13】
磁性体で設けられた筺体(301、303、304)と、
磁性体で前記筺体と相対回転可能に設けられ、前記筺体との間に流体室(8)を形成するロータ(401、403)と、
前記流体室に充填され、基液(90)中の磁性粒子(M)が前記筺体と前記ロータとの間で回転動力が伝達される方向である動力伝達方向として軸方向に連なるように磁場が作用したとき、前記筺体と前記ロータとの締結力を増加させる磁性流体(9)と、
軸方向に並んで設けられる2つのコイル(51/52)を含んで構成され、通電により前記磁性粒子に作用する磁場を発生させる磁場発生手段と、
を備え、前記磁場発生手段への通電の切り替えにより、前記ロータと前記筺体との間で回転動力を伝達する動力伝達状態、及び、回転動力を遮断する動力遮断状態を切り替える動力伝達装置(201、203、204)であって、
前記筺体及び前記ロータが前記動力伝達方向に沿って対向している対向面(311/411、313/413)のうち前記筺体又は前記ロータの少なくとも一方の前記対向面に、前記動力伝達状態において前記磁性粒子が前記動力伝達方向に連なるように磁力線(φa)を前記動力伝達方向に集中させる集中部(33、37、43)、及び、前記動力遮断状態において前記磁性粒子が前記動力伝達方向に連なることを抑制するように前記磁性粒子を格納する格納部(34、38、44)が形成されており、
前記2つのコイルは、
前記動力伝達状態では、磁力線の向きが互いに同方向となるように通電されることで前記動力伝達方向である軸方向に磁力線を生成し、
前記動力遮断状態では、磁力線の向きが互いに逆方向となるように通電されることで、前記動力伝達方向と直交する前記対向面に沿う方向であって、前記筺体及び前記ロータを径方向に周回するように磁力線を生成することを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材間で磁性流体を介して動力の伝達を行う動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁場が作用すると粘性が増大する磁性流体(磁気粘性流体、MR流体)を用い、2つの部材間で回転動力の伝達を行う動力伝達装置が知られている。磁性流体を用いた動力伝達装置は、印加磁場に対しトルクが線形である、応答速度が速い、小型化が可能であるといった利点があり、クラッチ装置やブレーキ装置等の様々な用途に利用されている。しかし、ヒステリシスクラッチ、摩擦クラッチ等の他の動力伝達手段に比べ、最大伝達トルクが小さいという課題があった。
【0003】
これに対し、ロータ(回転体)の表面に凹凸を設け、流体が発生する抵抗を大きくして最大伝達トルクを大きくする方法が検討されてきた。しかしこの方法では、凹凸を大きくし過ぎると、磁場を印加しない動力遮断状態における抵抗が増大するという背反がある。
そこで特許文献1に開示された動力伝達装置では、対向面の凹凸部の表面に基液をはじく撥液層を形成している。これにより、基液を排出し易くして、磁場を印加しない動力遮断状態における引きずり損を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−101410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の動力伝達装置では、磁性流体を介在させる隙間の表面に撥液性を付与し、磁性流体との間の摩擦抵抗を低下させているとはいえ、動力遮断状態における引きずり損を大幅に低減することは困難である。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大させ、かつ、動力遮断状態における引きずり損を低減する動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力伝達装置は、磁性体で設けられた筺体と、磁性体で筺体と相対回転可能に設けられ、筺体との間に流体室を形成するロータと、磁性流体と、磁場発生手段とを備えている。
磁性流体は、流体室に充填され、基液中の磁性粒子が筺体とロータとの間で回転動力が伝達される方向である「動力伝達方向」に連なるように磁場が作用したとき、筺体とロータとの締結力を増加させる。
磁場発生手段は、通電により磁性粒子に作用する磁場を発生させる。
この動力伝達装置は、磁場発生手段への通電の切り替えにより、ロータと筺体との間で回転動力を伝達する「動力伝達状態」、及び、回転動力を遮断する「動力遮断状態」を切り替える。
【0007】
そして、この動力伝達装置は、筺体及びロータが動力伝達方向に沿って対向している対向面のうち筺体又はロータの少なくとも一方の対向面に、動力伝達状態において磁性粒子が動力伝達方向に連なるように磁力線を動力伝達方向に集中させる「集中部」、及び、動力遮断状態において磁性粒子が動力伝達方向に連なることを抑制するように磁性粒子を格納する「格納部」が形成されていることを特徴とする。本発明の第一の態様では、集中部は、筐体及びロータの回転方向に対し断続的に設けられる。これにより、集中部のエッジの数を増やすことが可能である。したがって、この動力伝達装置は、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大することが可能である。
【0008】
この動力伝達装置は、筺体及びロータの少なくとも一方の対向面に磁力線を集中させる集中部を形成したことにより、動力伝達状態においてその集中部から磁性粒子が動力伝達方向に連なるので、最大伝達トルクを増大することが可能である。また、動力伝達装置は、その対向面に磁性粒子を格納する格納部を形成したことにより、動力遮断状態において磁性粒子が格納部に格納されるので、引きずり損を低減することが可能である。
【0009】
好ましくは、集中部は、筺体又はロータの一方の対向面から他方の対向面に向かって突起した凸状に形成されている。これにより、対向面同士の距離が最短となる集中部に磁力線が集中するため、磁性粒子が動力伝達方向に連なって粒子クラスタを形成し、最大伝達トルクを増大させることができる。
なお、集中部は、凸状に形成される以外に、例えば対向面に比較的強い磁性体を局所的に配置し、その周囲に比較的弱い磁性体又は非磁性体を配置することによって形成されてもよい。
【0010】
好ましくは、格納部は、筺体又はロータの対向面に対して凹み、複数の磁性粒子を格納可能な大きさの凹状に形成されている。これにより、動力伝達装置は、動力遮断状態において、格納部に複数の磁性粒子を格納することで、流体室の磁性流体に含まれる磁性粒子の密度を低下させることが可能である。なお、格納部は、その断面視において磁性流子を数百個程度(数十列×数十段)以上格納可能な大きさとすることが好ましい。これにより、格納部は、動力遮断状態における引きずり損を好適に低減することができる。
また、この動力伝達装置は、筺体又はロータの少なくとも一方の対向面に、集中部と格納部とが交互に隣接していることにより、磁性粒子が集中部から連なる状態と、その磁性粒子が格納部に格納される状態との切り替えの応答性を高めることが可能である。
なお、格納部は、凹状に形成される以外に、例えば対向面の表面に磁性粒子が貼り付くように保持される態様では、対向面の表面そのものを格納部と見なしてもよい。
【0011】
好ましくは、動力伝達方向は、筐体およびロータの回転軸に対し径方向であることが例示される。この場合、流体室に対して径方向外側に位置する筐体及びロータの対向面に格納部が形成される。これにより、動力遮断状態において、筺体又はロータと共に流体室の磁性流体が回転すると、その遠心力により磁性粒子は格納部に格納される。したがって、動力伝達装置は、磁性粒子を格納部に格納するための磁場発生手段等を別途設けることなく、動力遮断状態とすることが可能である。
【0012】
好ましくは、ロータは、円盤部、およびその円盤部の外縁から回転軸の一方に延びる筒部を有する。筐体の内壁は、ロータが有する円盤部および筒部に沿ってその外側を覆うものである。磁場発生手段は、筐体がロータの筒部を覆う箇所に対して径方向内側または径方向外側に設けられる。
筺体又はロータと共に流体室の磁性流体が回転すると、その遠心力によりロータの筒部とその筒部を覆う筐体との間の流体室の磁性粒子の密度が高くなり、円盤部とその円盤部の外側を覆う筐体との間の流体室の磁性粒子の密度が低くなる場合が考えられる。その場合、円盤部とその円盤部の外側を覆う筐体との間の流体室を磁束が流れに難くなる。そこで、この動力伝達装置は、筐体がロータの筒部を覆う箇所に対して径方向内側または径方向外側に磁場発生手段を設けている。この磁場発生手段が発生する磁力線は、ロータの筒部とその筒部を覆う筐体とその間の流体室を主に通過する。そのため、動力伝達装置は、円盤部とその円盤部の外側を覆う筐体との間の流体室の磁性粒子の密度の低下に関わらず、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大させることが可能である。
【0013】
好ましくは、動力伝達方向は、軸方向であることが例示される。これにより、ロータの形状を円盤状に形成し、筐体の形状をロータを覆う中空の円盤状に形成することが可能である。したがって、動力伝達装置は、ロータおよび筐体の体格を小型化することができる。
【0014】
好ましくは、集中部は、筐体及びロータの回転方向に対し交差する方向に延びるものである。これにより、個々の集中部のエッジが筐体及びロータの回転方向に対し交差する方向に延びる構成となる。この集中部のエッジに磁力線が集中し磁性粒子が連なると考えられる。そのため、この動力伝達装置は、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大することが可能である。
【0016】
好ましくは、動力伝達方向に対し垂直な方向から見たとき、筺体の対向面に形成された集中部とその集中部に向き合うロータの対向面に形成された集中部との間の断面積と、凹状に形成された格納部の内側の断面積とは同等の大きさである。これにより、動力伝達状態の際に筺体の集中部とその集中部に向き合うロータの集中部との間で粒子クラスタを形成する複数の磁性粒子について、動力遮断状態の際にそのほぼ全ての磁性粒子を格納部に格納することが可能である。そのため、格納部が形成される対向面は、動力遮断状態において平坦な状態となる。したがって、この動力伝達装置は、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0017】
ここで、上述した磁場発生手段を第1磁場発生手段と称する。動力伝達装置は、動力遮断状態において、対向面に沿う方向の磁力線を生成し磁性粒子を格納部へ導くように磁場を発生させる第2磁場発生手段をさらに備えることが好ましい。これにより、第1磁場発生手段への通電を停止した動力遮断状態で、第2磁場発生手段が発生する磁場により磁気粒子を格納部へ格納することで、磁性粒子による摩擦抵抗を低減し、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
具体的には、第2磁場発生手段は永久磁石であり、第1磁場発生手段が動力伝達状態において発生させる磁場の強さよりも弱い磁場を発生させる。
【0018】
このように、動力遮断状態で第2磁場発生手段が発生する磁場を利用することで、磁性流体中の磁性粒子を格納部に効率的に格納することができる。したがって、引きずり損の低減を確保しつつ、対向面の凹凸を比較的大きく形成することができる。すなわち、集中部を高く形成することで、動力伝達状態における最大伝達トルク増大の課題と、動力遮断状態における引きずり損低減の課題とを両立して解決することができる。
【0019】
好ましくは、第2磁場発生手段は、集中部または格納部に対して動力伝達方向の一方に配置されたコイルにより構成される。このコイルは、動力遮断状態において、動力伝達方向に交差する方向の磁力線を格納部に生成する。これにより、動力遮断状態のときに第2磁場発生手段としてのコイルに通電することで、磁性流体中の磁性粒子を格納部に格納することができる。また、動力伝達状態のときに第2磁場発生手段としてのコイルへの通電をオフすることで、第1磁場発生手段が発生する磁場を抑制することが無い。
【0020】
好ましくは、第2磁場発生手段を構成するコイルは、複数の格納部または複数の集中部に跨って設けられる。これにより、第2磁場発生手段としてのコイルの数を少なくすることが可能である。また、第2磁場発生手段としてのコイルに通電することで、凹状に形成された格納部の内側に、動力伝達方向に対して直交する方向に磁力線を生成することが可能である。
【0021】
本発明の第二の態様では、磁場発生手段(第1磁場発生手段)は、軸方向に並んで設けられる2つのコイルを含んで構成される。その2つのコイルの通電方向は、動力伝達状態では、動力伝達方向に磁力線を生成するように通電される。動力遮断状態では、動力伝達方向と直交する対向面に沿う方向に磁力線を生成するように通電される。
磁場発生手段が2つのコイルを含んで構成される場合、次に示すように、動力伝達方向が軸方向の態様と、動力伝達方向が径方向の態様とでは、2つのコイルの通電方向が異なるものとなる。
【0022】
本発明の第二の態様では、動力伝達方向軸方向である。この場合、2つのコイルは、動力伝達状態では、磁力線の向きが互いに同方向となるように通電されることで軸方向に磁力線を生成する。動力遮断状態では、磁力線の向きが互いに逆方向となるように通電されることで、筺体及びロータを径方向に周回するように磁力線を生成する。
【0023】
なお、参考形態として動力伝達方向が径方向の場合、2つのコイルは、動力伝達状態では、磁力線の向きが互いに逆方向となるように通電されることで径方向に磁力線を生成する。動力遮断状態では、磁力線の向きが互いに同方向となるように通電されることで、筺体及びロータを軸方向に周回するように磁力線を生成する。
【0024】
このように、2つのコイルのうち一方への通電方向を、動力伝達状態と動力遮断状態とで反転させることで、動力伝達状態では動力伝達方向に磁力線を生成する。このとき、対向面同士の距離が最短となる集中部に磁力線が集中するため、磁性粒子が動力伝達方向に連なって粒子クラスタを形成し、最大伝達トルクを増大させることができる。
また、動力遮断状態では、動力伝達方向と直交する対向面に沿う方向に磁力線を生成することにより、磁性粒子は、格納部の溝壁に引き寄せられて格納部に格納される。したがって、磁性粒子による引きずり損を好適に低減することができる。
【0025】
このように、動力遮断状態で、2つのコイルのうち一方の通電方向を反転させたときに発生する磁場を利用することで、磁性流体中の磁性粒子を格納部に効率的に格納することができる。したがって、引きずり損の低減を確保しつつ、対向面の凹凸を比較的大きく形成することができる。すなわち、集中部を高く形成することで、動力伝達状態における最大伝達トルク増大の課題と、動力遮断状態における引きずり損低減の課題とを両立して解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図2図1の流体動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図3図1図2のIII−III線(径方向)断面図。
図4】(a)図1のIVa部拡大断面図、(a)図2のIVb部拡大断面図。
図5】本発明の第2実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図6図5の流体動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図7】本発明の第3実施形態による動力伝達装置の軸方向断面図。
図8】本発明の第4実施形態による動力伝達装置の径方向断面図。
図9】本発明の第5実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図10図9の流体動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図11図9図10のXI−XI線(径方向)断面図。
図12】(a)図9のXIIa部拡大断面図、(a)図10のXIIb部拡大断面図。
図13】本発明の第6実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図14図13の流体動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図15】本発明の第7実施形態による動力伝達装置の軸方向断面図。
図16】本発明の第8実施形態による動力伝達装置の径方向断面図。
図17】本発明の第9実施形態による動力伝達装置の軸方向断面図。
図18図17のXVIII−XVIII線(径方向)断面図。
図19図18のXIX部拡大断面図における動力伝達状態の説明図。
図20図18の動力伝達装置の動力伝達状態から遮断状態への切替時の説明図。
図21図18の動力伝達装置の動力遮断状態の説明図。
図22】本発明の第10実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図23】本発明の第11実施形態による動力伝達装置の動力伝達状態の軸方向断面図。
図24図23の動力遮断装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図25図23のXXV−XXV線(径方向)断面図。
図26図25のXXVI―XXVI線断面図における動力伝達状態の説明図。
図27】本発明の第12実施形態による動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
図28】本発明の他の実施形態による(a)集中部、(b)格納部を有する動力伝達装置の拡大断面図。
図29】本発明の他の実施形態による動力伝達装置の動力遮断状態の軸方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の複数の実施形態による動力伝達装置を図面に基づいて説明する。ここで用いる図は、本発明の特徴を理解しやすくするための模式的な図である。そのため、部材表面の凹凸形状や粒子の大きさを誇張して表しており、実際の製品における寸法比率や繰り返しの数を正確に反映したものではない。また、外部電源からコイルへの配線等、本発明の特徴的な構成以外の部分については図示を省略し、或いは簡略化して示している。
1つの図中に実質的に同一の部材が複数存在するとき、複数のうち一部のみに符号を付す場合がある。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
以下の実施形態のうち、少なくとも第11実施形態の特徴を含む形態、又は、第5、第7、第8実施形態が「特許請求の範囲に記載の発明を実施するための形態」に相当する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による動力伝達装置を図1図4に示す。
動力伝達装置101は、互いに相対回転可能に設けられた筺体とロータとの間で、回転動力を伝達する動力伝達(係合)状態、及び、回転動力を遮断する動力遮断(解放)状態を切り替えるクラッチ装置として用いられる。
【0029】
動力伝達装置101は、筺体301、ロータ401、コイル5、永久磁石61、62、シャフト7、及び磁性流体9等を備えている。
筺体301とロータ401とは、共通の回転軸Oに対して同軸に配置されている。なお、本明細書で「軸方向」とは、この回転軸Oに平行な方向をいう。筺体301は、例えば鉄等の磁性体で、内部にロータ401を収容可能な有底円筒状に形成されている。ロータ401は、例えば鉄等の磁性体で円板状に形成されており、筺体301の内部に収容されている。また、筺体301の筒状部には、「磁場発生手段」または「第1磁場発生手段」としてのコイル5が設けられている。
【0030】
シャフト7は、一端が筺体301の開口部39を挿通し、ロータ401の中心に形成された軸孔49に圧入等によって固定されている。これにより、ロータ401は、シャフト7と一体に回転する。シャフト7は、動力源からの入力側に設けられてもよく、負荷への出力側に設けられてもよい。
シャフト7の外壁と筺体301の開口部39の内壁との間には、環状のシール軸受75が設けられている。シール軸受75は、筺体301の外部と内部との間を液密にシールしつつ、シャフト7を回転可能に支持している。
【0031】
筺体301とロータ401との間に形成された流体室8には磁性流体9が充填される。
磁性流体9は、いわゆる「機能性流体」の一つである磁気粘性流体(MR流体)であり、水や油等の基液90中に、カルボニル鉄、マグネタイト、マンガン亜鉛フェライト等の強磁性を有する磁性粒子Mが分散した流体である。本実施形態では、磁性粒子Mとして直径5μm程度の粒子を想定する。磁性粒子Mは、その表面に吸着された界面活性剤と基液との親和力、及び、界面活性剤同士の反発力により、基液90中で凝集したり沈降したりすることなく、安定した分散状態が保たれている。
【0032】
磁性流体9は、コイル5に通電することによって発生する磁場が作用したとき、磁力線に沿って磁性粒子Mが連なることにより、粒子クラスタPC(図4参照)が形成される。その結果、磁性流体9は、疑似的に粘度が増大した状態になり、筺体301とロータ401との締結力を増加させる。流体室8に粒子クラスタPCが形成された状態で筺体301又はロータ401の一方が回転すると、粒子クラスタPCに引きずられるようにして他方が回転し、筺体301とロータ401との間で回転動力(トルク)が伝達される。
以下、コイル5に通電して磁性粒子Mが連なった粒子クラスタPCを形成し、回転動力を伝達する状態を「動力伝達状態」、コイル5への通電を停止して磁性粒子Mを基液90中に分散させ、回転動力を遮断する状態を「動力遮断状態」という。
【0033】
ここで、筺体301とロータ401とは軸方向及び径方向のいずれにも対向している。ただし第1実施形態では、軸方向で動力が伝達されることを想定し、軸方向を「動力伝達方向」とする。そして、動力伝達方向に直交する筺体301の両側の内底面を対向面311とし、同じくロータ401の両端面を対向面411とする。すなわち、「対向面」という用語は、「その実施形態における動力伝達方向に沿って対向している面」を意味する。
【0034】
第1実施形態の動力伝達装置101は、筺体301の対向面311に凸状の集中部33及び凹状の格納部34が形成されること、並びに、集中部33及び格納部34が形成される領域の径方向外側及び内側に「第2磁場発生手段」としての永久磁石61、62を備えることを特徴とする。
【0035】
集中部33は、筺体301の対向面311からロータ401の対向面411に向かって軸方向に突起しており、集中部33にて対向面311、411同士の距離が最短となる。
格納部34は、隣接する集中部33同士の間で凹状に形成されている。特に本実施形態では、図3に示すように、集中部33及び格納部34は同心円の条溝として形成されている。
【0036】
図4(a)に示すように、溝の深さをD、溝の幅をWとすると、D及びWは数百μmであり、比(D/W)は1〜3程度に設定されることが好ましい。磁性粒子Mの直径が約5μmであるので、一つの格納部34の溝内に、磁性粒子Mを「数十列×数十段」格納することが可能である。これにより、格納部34の溝の断面視において数百個以上の磁性粒子Mが格納されたとき、流体室8の磁性流体9に含まれる磁性粒子Mの密度を好適に低下させることが可能である。したがって、格納部34は、動力遮断状態における引きずり損を好適に低減することができる。
【0037】
永久磁石61、62は、筺体301の対向面311における径方向外側及び内側に環状に設けられている。外側に設けられる永久磁石61の内側の磁極(例えばN極)と、内側に設けられる永久磁石62の外側の磁極(例えばS極)とは極性が反対であるため、永久磁石61、62間には径方向の磁力線φbが常時生成される。
また、永久磁石61、62が発生する磁場の強さは、コイル5が通電時に発生する磁場の強さよりも弱くなるように設定されている。
【0038】
続いて、動力伝達装置101の作用効果について説明する。
図1図4(a)に示すように、動力伝達状態では、コイル5に通電されることにより、コイル5を中心とする磁力線φaが生成される。この磁力線φaは、筺体301とロータ401との対向面311、411の間を軸方向に通過する。このとき、集中部33は、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なるように磁力線φaを動力伝達方向に集中させる。そのため、粒子クラスタPCが形成され、筺体301とロータ401との締結力が増加する。よって、最大伝達トルクを増大させることができる。
なお、永久磁石61、62間には径方向の磁力線φbが常時通過しているが、永久磁石61、62による磁場は相対的に弱いため、動力伝達状態での作用には影響しない。
【0039】
一方、図2図4(b)に示すように、動力遮断状態では、コイル5への通電が停止されて磁力線φaが消滅し、永久磁石61、62による磁力線φbのみが残る。この磁力線φbは、格納部34の溝壁を横切るように対向面311に沿って径方向に通過する。これにより、磁性流体9中の磁性粒子Mは、溝壁に引き寄せられるように格納部34に効率的に格納される。つまり、格納部34は、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なることを抑制するように磁性粒子Mを格納する。よって、磁性粒子Mによる摩擦抵抗を低減し、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0040】
このように本実施形態では、動力遮断状態で、「第2磁場発生手段」としての永久磁石61、62が発生する磁場を利用することで、磁性流体9中の磁性粒子Mを格納部34に効率的に格納することができる。したがって、引きずり損の低減を確保しつつ、対向面311の凹凸を比較的大きく形成することができる。すなわち、集中部33を高く形成することで、動力伝達状態における最大伝達トルク増大の課題と、動力遮断状態における引きずり損低減の課題とを両立して解決することができる。
【0041】
特に本実施形態では、凸形状により集中部33を構成しているため、後述する他の実施形態(図28(a)参照)のように対向面311の材質を局所的に変えることなく、形状加工のみで容易に集中部33を構成することができる。また、格納部34を凹状に形成することで格納効果を高めることができる。
さらに本実施形態では、集中部33及び格納部34を同心円の条溝として形成しているため、対向面311、411の間の締結力特性を周方向で均一にすることができる。
【0042】
また、特許文献1に記載された構成では、凹部の溝幅を磁性体の直径以下としている。特許文献1には磁性体の直径について具体的な数値は示されていないものの、本実施形態で想定している5μm相当とすると、数μmのオーダーの溝を加工により形成することは現実的でない。それに対し、本実施形態では、溝の深さD、幅Wを数百μmのオーダーで設定しているため、通常の加工方法により現実に形成可能である。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による動力伝達装置を図5図6に示す。第2実施形態は、第1実施形態に対し、動力伝達方向を径方向とする点が異なる。
図5図6に示すように、第2実施形態の動力伝達装置102は、筺体302の内周の対向面32と、ロータ402の外周の対向面42とが対向する径方向が動力伝達方向となる。筺体302の内周の対向面32は、凸状の集中部33及び凹状の格納部34が形成されている。詳しくは、格納部34が全周方向に溝状に形成されている。
【0044】
筺体302の筒状部には、「磁場発生手段」または「第1磁場発生手段」としての2つのコイル53、54が軸方向に並んで設けられている。2つのコイル53、54は、電磁気的特性が同等であることが好ましい。
筺体302の対向面32の軸方向における集中部33及び格納部34の一方(反シャフト7側)及び他方(シャフト7側)には、「第2磁場発生手段」としての環状の永久磁石63、64が設けられている。ロータ402の軸方向の対称面をVとすると、反シャフト7側に設けられる永久磁石63の対称面V側の磁極(例えばN極)と、シャフト7側に設けられる永久磁石64の対称面V側の磁極(例えばS極)とは極性が反対であるため、永久磁石63、64間には軸方向の磁力線φbが常時生成される。
また、永久磁石63、64が発生する磁場の強さは、コイル53、54が通電時に発生する磁場の強さよりも弱くなるように設定されている。
【0045】
図5に示す動力伝達状態では、コイル53、54に互いに逆方向に通電する。例えば図5の下側において、コイル53には紙面の向こう側から手前側へ向かうように電流を流して反時計回りの磁力線φaを生成し、コイル54には紙面の手前側から向こう側へ向かうように電流を流して時計回りの磁力線φaを生成する。磁力線φaは、対称面Vに沿って動力伝達方向である径方向に通過する。このとき、磁力線φaが集中部33に集中することで磁性粒子Mが動力伝達方向に連なり、最大伝達トルクを増大させることができる。
なお、永久磁石63、64間には軸方向の磁力線φbが常時通過しているが、永久磁石63、64による磁場は相対的に弱いため、動力伝達状態での作用には影響しない。
【0046】
図6に示す動力遮断状態では、コイル53、54への通電が停止されて磁力線φaが消滅し、永久磁石63、64による磁力線φbのみが残る。この磁力線φbは、格納部34の溝壁を横切るように対向面32に沿って軸方向に通過する。これにより、磁性流体9中の磁性粒子Mは、第1実施形態と同様に格納部34に効率的に格納される。よって、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図7に示すように、本発明の第3実施形態の動力伝達装置103は、第1実施形態に対し、筺体303の対向面313でなくロータ403の対向面413に集中部43及び格納部44が形成されている。
図7では、回転軸Oに対して図の上側に動力伝達状態、図の下側に動力遮断状態の磁力線を図示する。動力伝達状態では、第1実施形態の図1と同様に、コイル5が発生する磁場によって生成される磁力線φaが集中部43に集中し、集中部43から筺体303の対向面313に向かって磁性粒子Mが動力伝達方向に連なる。
【0048】
ロータ403の径方向における集中部43及び格納部44の外側及び内側には、「第2磁場発生手段」としての環状の永久磁石65、66が設けられている。外側に設けられる永久磁石65の内側の磁極(例えばN極)と、内側に設けられる永久磁石66の外側の磁極(例えばS極)とは極性が反対であるため、永久磁石65、66間には径方向の磁力線φbが常時生成される。
また、永久磁石65、66が発生する磁場の強さは、コイル5が通電時に発生する磁場の強さよりも弱くなるように設定されている。
【0049】
第3実施形態の作用効果は、第1実施形態と同様である。
本発明の動力伝達装置は、さらに第1実施形態と第3実施形態とを複合し、筐体及びロータの双方に集中部及び格納部を形成するようにしてもよい。
【0050】
(第4実施形態)
図8に示すように、本発明の第4実施形態の動力伝達装置104は、第1実施形態(図3の径方向断面図参照)に対し、環溝状ではなく穴状の格納部38が同心円上に離散して形成されている。また、穴状の格納部38以外の部分全体が集中部37を構成している。このような形態でも第1実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、格納部38の穴形状は、円形に限らず、どのような形状としてもよい。
【0051】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による動力伝達装置を図9図12に示す。
動力伝達装置201は、筺体301、ロータ401、コイル51、52、シャフト7、及び磁性流体9等を備えている。
筺体301の筒状部には、「磁場発生手段」としての2つのコイル51、52が軸方向に並んで設けられている。2つのコイル51、52は、電磁気的特性が同等であることが好ましい。
【0052】
磁性流体9は、2つのコイル51、52に対し所定の通電方向に通電することによって発生する磁場が作用したとき、磁力線に沿って磁性粒子Mが連なることにより、粒子クラスタPC(図12参照)が形成される。その結果、磁性流体9は、疑似的に粘度が増大した状態になり、筺体301とロータ401との締結力を増加させる。流体室8に粒子クラスタPCが形成された状態で筺体301又はロータ401の一方が回転すると、粒子クラスタPCに引きずられるようにして他方が回転し、筺体301とロータ401との間で回転動力(トルク)が伝達される。
以下、2つのコイル51、52に対し所定の通電方向に通電して磁性粒子Mが連なった粒子クラスタPCを形成し、回転動力を伝達する状態を「動力伝達状態」、2つのコイル51、52への通電方向を変更して磁性粒子Mを基液90中に分散させ、回転動力を遮断する状態を「動力遮断状態」という。
【0053】
第5実施形態の動力伝達装置201は、筺体301の対向面311に凸状の集中部33及び凹状の格納部34が形成されること、並びに、2つのコイル51、52のうち一方への通電方向を、動力伝達状態と動力遮断状態とで反転させることを特徴とする。
2つのコイル51、52は、動力伝達状態では、磁力線φaの向きが互いに同方向となるように通電されることで軸方向に磁力線φaを生成する。動力遮断状態では、磁力線φbの向きが互いに逆方向となるように通電されることで、筺体301及びロータ401を径方向に周回するように磁力線φbを生成する。
【0054】
集中部33は、筺体301の対向面311からロータ401の対向面411に向かって軸方向に突起しており、集中部33にて対向面311、411同士の距離が最短となる。
格納部34は、隣接する集中部33同士の間で凹状に形成されている。特に本実施形態では、図11に示すように、集中部33及び格納部34は同心円の条溝として形成されている。
【0055】
図12(a)に示すように、溝の深さをD、溝の幅をWとすると、D及びWは数百μmであり、比(D/W)は1〜3程度に設定されることが好ましい。磁性粒子Mの直径が約5μmであるので、一つの格納部34の溝内に、磁性粒子Mを「数十列×数十段」格納することが可能である。
【0056】
続いて、動力伝達装置201の作用効果について説明する。
図9図12(a)に示すように、動力伝達状態では、コイル51、52に同方向に通電することにより、コイル51、52を中心とする互いに同方向の磁力線φaを生成する。この磁力線φaは、筺体301とロータ401との対向面311、411の間を軸方向に通過する。このとき集中部33は、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なるように磁力線φaを動力伝達方向に集中させる。そのため、粒子クラスタPCが形成され、筺体301とロータ401との締結力が増加する。よって、最大伝達トルクを増大させることができる。
【0057】
一方、図10図12(b)に示すように、動力遮断状態では、コイル51への通電方向を動力伝達状態と反転させ、コイル52への通電方向を動力伝達状態と同じとする。また、動力伝達状態に比べ、コイル51、52に流す電流を小さくする。これにより、コイル51、52により発生する磁力線φbは互いに逆方向となり、また、対向面311、411の間を飛びにくくなるため、筺体301及びロータ401を径方向に周回する。
【0058】
この磁力線φbは、格納部34の溝壁を横切るように対向面311に沿って径方向に通過する。これにより、磁性流体9中の磁性粒子Mは、溝壁に引き寄せられるように格納部34に効率的に格納される。つまり、格納部34は、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なることを抑制するように磁性粒子Mを格納する。よって、磁性粒子Mによる摩擦抵抗を低減し、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0059】
このように本実施形態では、動力遮断状態で、2つのコイル51、52のうち一方の通電方向を反転させたときに発生する磁場を利用することで、磁性流体9中の磁性粒子Mを格納部34に効率的に格納することができる。したがって、引きずり損の低減を確保しつつ、対向面311の凹凸を比較的大きく形成することができる。すなわち、集中部33を高く形成することで、動力伝達状態における最大伝達トルク増大の課題と、動力遮断状態における引きずり損低減の課題とを両立して解決することができる。
【0060】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による動力伝達装置を図13図14に示す。第6実施形態は、第5実施形態に対し、動力伝達方向を径方向とする点が異なる。
図13図14に示すように、第6実施形態の動力伝達装置202は、筺体302の内周の対向面32と、ロータ402の外周の対向面42とが対向する径方向が動力伝達方向となる。筺体302の内周の対向面32は、凸状の集中部33及び凹状の格納部34が形成されている。詳しくは、格納部34が全周方向に溝状に形成されている。
【0061】
筺体302の筒状部には、第5実施形態と同様に、2つのコイル53、54が軸方向に並んで設けられている。2つのコイル53、54は、電磁気的特性が同等であることが好ましい。
第6実施形態は、第5実施形態に対し、「径方向」と「軸方向」との関係が逆転する。つまり、2つのコイル53、54は、動力伝達状態では、磁力線φaの向きが互いに逆方向となるように通電されることで径方向に磁力線φaを生成する。動力遮断状態では、磁力線φbの向きが互いに同方向となるように通電されることで、筺体302及びロータ402を軸方向に周回するように磁力線φbを生成する。
【0062】
図13に示す動力伝達状態では、コイル53、54に逆方向に通電することにより、コイル53、54を中心とする互いに逆方向の磁力線φaを生成する。例えば図13の下側において、コイル53には紙面の向こう側から手前側へ向かうように電流を流して反時計回りの磁力線φaを生成し、コイル54には紙面の手前側から向こう側へ向かうように電流を流して時計回りの磁力線φaを生成する。磁力線φaは、ロータ402の軸方向の対称面Vに沿って動力伝達方向である径方向に通過する。このとき、磁力線φaが集中部33に集中することで磁性粒子Mが動力伝達方向に連なり、最大伝達トルクを増大させることができる。
【0063】
図14に示す動力遮断状態では、コイル53への通電方向を動力伝達状態と反転させ、コイル54への通電方向を動力伝達状態と同じとする。これにより、コイル53、54により発生する磁力線φbは互いに同方向となり、筺体302及びロータ402を軸方向に周回する。この磁力線φbは、格納部34の溝壁を横切るように対向面32に沿って軸方向に通過する。これにより、磁性流体9中の磁性粒子Mは、第5実施形態と同様に格納部34に効率的に格納される。よって、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0064】
(第7実施形態)
図15に示すように、本発明の第7実施形態の動力伝達装置203は、第5実施形態に対し、筺体303の対向面313でなくロータ403の対向面413に集中部43及び格納部44が形成されている。
図15では、回転軸Oに対して図の上側に動力伝達状態、図の下側に動力遮断状態の磁力線を図示する。動力伝達状態では、第5実施形態の図9と同様に、コイル51、52によって互いに同方向に生成される磁力線φaが集中部43に集中し、集中部43から筺体303の対向面313に向かって磁性粒子Mが動力伝達方向に連なる。
【0065】
動力遮断状態では、2つのコイル51、52のうち一方への通電方向を、動力伝達状態と反転させることで、筺体303及びロータ403を径方向に周回するように磁力線φbを生成する。
【0066】
第7実施形態の作用効果は、第5実施形態と同様である。
本発明の動力伝達装置は、さらに第5実施形態と第7実施形態とを複合し、筐体及びロータの双方に集中部及び格納部を形成するようにしてもよい。
【0067】
(第8実施形態)
図16に示すように、本発明の第8実施形態の動力伝達装置204は、第5実施形態(図11の径方向断面図参照)に対し、環溝状ではなく穴状の格納部38が同心円上に離散して形成されている。また、穴状の格納部38以外の部分全体が集中部37を構成している。このような形態でも第5実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、格納部38の穴形状は、円形に限らず、どのような形状としてもよい。
【0068】
(第9実施形態)
図17に示すように、第9実施形態の動力伝達装置205が備えるロータ405は、円盤部420と、その円盤部420の外縁から回転軸の一方に延びる筒部430とを有する。ロータ405の円盤部420と筒部430との間には、円環状の非磁性体80が設けられている。筐体305は、ロータ405が有する円盤部420および筒部430の外側を覆う中空形状に形成されている。
筐体305において、ロータ405の筒部430の軸方向に位置する箇所には、「磁場発生手段」または「第1磁場発生手段」としてのコイル5が設けられている。筐体305には、コイル5の軸方向に位置する箇所に、非磁性体81,82が設けられている。これにより、コイル5への通電によりコイル5を中心として筐体305、ロータ405および流体室8を通過する磁力線φaを生成可能な磁気回路が形成される。
【0069】
第9実施形態では、筐体305とロータ405との間でトルクが伝達される動力伝達方向は、筐体305およびロータ405の回転軸に対して径方向である。したがって、筐体305及びロータ405が径方向に対向している箇所が対向面315,415であり、その対向面315,415に集中部33,43および格納部34,44として機能する凹凸が形成されている。集中部33,43および格納部34,44は、ロータ405の筒部430の外壁と、その筒部430の外側を覆う筐体305の内壁に形成されている。即ち、集中部33,43および格納部34,44は、流体室8に対して径方向外側に位置する筐体305およびロータ405の対向面315,415に形成されている。なお、図18では、対向面315,415に設けられた凸状の集中部33,43の先端を実線Aで示し、凹状の格納部34,44の底を破線Bで示している。
【0070】
図19に示すように、集中部33,43および格納部34,44は、筐体305およびロータ405の回転方向に対し交差する方向に延びている。具体的に、集中部33,43および格納部34,44は、軸方向に延びている。これにより、集中部33,43は、ロータ405の回転方向に対し断続的に設けられる。そのため、個々の集中部33,43のエッジEが、ロータ405の回転方向に対し交差する方向に延びる構成となる。図19に示す動力伝達状態において、コイル5に通電すると、集中部33,43のエッジEに磁力線が集中し、そこに磁性粒子Mが連なった粒子クラスタPCを形成されると考えられる。したがって、この動力伝達装置205は、粒子クラスタPCの列が、ロータ405の回転方向に対し交差する方向に断続的に形成されるので、筐体305とロータ405との締結力が増加し、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大することが可能である。
【0071】
図20に示すように、コイル5への通電が停止されると、磁性粒子Mは基液90中で分散した状態となる。
ここで、図20に示したように、軸方向から見たとき、筐体305の対向面315に形成された集中部33とその集中部33に向き合うロータ405の対向面415に形成された集中部43との間の断面積(図20に斜線部分αで示す)と、凹状に形成された格納部34の内側の断面積(図20に斜線部分βで示す)とは同等の大きさに形成されている。
【0072】
図21に示すように、動力遮断状態では、コイル5への通電が停止された状態で、筐体305又はロータ405と共に流体室8の磁性流体9が回転すると、遠心力により磁性流体9に含まれる磁性粒子Mは流体室8に対して径方向外側に位置する格納部34,44に格納される。このとき、格納部34,44は、図19で示した動力伝達状態の際に粒子クラスタPCを形成した複数の磁性粒子Mについて、図21で示した動力遮断状態の際にそのほぼ全ての磁性粒子Mを格納部34,44に格納することが可能である。そのため、動力遮断状態の際に、格納部34,44が形成されている対向面315,415は、ほぼ平坦な状態となる。したがって、この動力伝達装置205は、動力遮断状態における引きずり損を低減することが可能である。
【0073】
第9実施形態では、動力伝達方向が、ロータ405の回転軸に対して径方向である。これにより、動力遮断状態において、筐体305又はロータ405と共に流体室8の磁性流体9が回転すると、その遠心力により磁性粒子Mは格納部34,44に格納される。したがって、動力伝達装置205は、磁性粒子Mを格納部34,44に格納するための磁場発生手段等を別途設けることなく、コイル5への通電を停止するのみで、動力遮断状態とすることが可能である。
【0074】
(第10実施形態)
図22に示すように、第10実施形態の動力伝達装置206では、筐体306において、ロータ406の筒部430の径方向内側に位置する箇所に「磁場発生手段」または「第1磁場発生手段」としてのコイル5が設けられている。
ロータ406の筒部430には、コイル5の径方向外側に位置する箇所に非磁性体83が設けられている。また、ロータ406の円盤部420と筒部430との接続箇所の近傍にも、非磁性体84が設けられている。
筐体306には、コイル5の径方向外側に位置する箇所に、非磁性体85が設けられている。また、筐体306において、ロータ406の筒部430の軸方向に位置する箇所にも、非磁性体86が設けられている。これにより、コイル5への通電によりコイル5を中心とする磁力線φaを生成可能な磁気回路が形成される。この磁気回路による磁力線φaは、ロータ406の筒部430、その筒部430の外側を覆う筐体306、及び、筒部430と筐体306との間の流体室8を主に通過する。
【0075】
ところで、遠心力により流体室8内を磁性粒子Mが移動し、ロータ406の円盤部420とその円盤部420の外側を覆う筐体306との間の流体室8の磁性粒子Mの密度が低くなると、その箇所の流体室8の基液90が磁気抵抗となることが考えられる。この場合でも、第10実施形態の動力伝達装置206は、その磁気抵抗となる箇所を除いて磁気回路が形成されているので、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大させることが可能である。
【0076】
(第11実施形態)
本発明の第11実施形態による動力伝達装置を図23図26に示す。第11実施形態の動力伝達装置207は、第1実施形態と同じく、軸方向を「動力伝達方向」とする。但し、第11実施形態は、第1実施形態が第2磁場発生手段として備えていた永久磁石61,62を廃止し、その代わりに第2磁場発生手段として複数のコイル6を備えている点が第1実施形態の構成と異なる。複数のコイル6は、筺体301及びロータ401の回転軸Oを中心とした同心円状に設けられている。
以下の説明において、第2磁場発生手段として複数のコイル6を「第2磁場コイル6」と称し、第1磁場発生手段としてコイル5を「第1磁場コイル5」と称することとする。
複数の第2磁場コイル6は、集中部33または格納部34に対して動力伝達方向の一方に配置される。具体的に、第11実施形態では、集中部33が形成される領域に対し軸方向における流体室8とは反対側に、第2磁場コイル6が配置されている。
【0077】
図23に示すように、動力伝達状態において、第1磁場コイル5に通電されると、その第1磁場コイル5を中心とする磁力線φaが生成される。このとき、複数の第2磁場コイル6への通電は停止されている。そのため、第1磁場コイル5による磁力線φaの強度が抑制されることが無い。これにより、集中部33に磁力線φaが集中し、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なって粒子クラスタPCを形成し、最大伝達トルクを増大させることができる。
【0078】
図24に示すように、動力遮断状態において、複数の第2磁場コイル6に通電されると、凹状の格納部34の内側に、動力伝達方向に交差する方向の磁力線φbが生成される。具体的に、この磁力線φbは、格納部34の底と壁との間を通過する。これにより、磁性流体9の中の磁性粒子Mは、格納部34の底と壁に引き寄せられ、格納部34に格納される。なお、図24では、磁性粒子Mが格納部34に格納された領域を、符号Cで示した斜線部分に模式的にあらわしている。これにより、動力伝達装置207は、磁性粒子Mによる摩擦抵抗を低減し、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0079】
さらに、図25に示すように、第11実施形態の動力伝達装置207は、第1実施形態に対し、集中部33が筐体307およびロータ407の回転方向に対し断続的に設けられる。これにより、集中部33のエッジEの数を増やすことが可能である。
図26に示すように、動力伝達状態において、第1磁場コイル5に通電されると、集中部33のエッジEに磁力線が集中し、そこに磁性粒子Mが連なった粒子クラスタPCが形成されると考えられる。したがって、この動力伝達装置207は、粒子クラスタPCの列が、筐体307およびロータ407の回転方向に対し交差する方向に断続的に形成されるので、筐体307とロータ407との締結力が増加し、動力伝達状態における最大伝達トルクを増大することが可能である。
【0080】
(第12実施形態)
図27に示すように、第12実施形態の動力伝達装置208では、第2磁場コイル6が、複数の格納部34または複数の集中部33に跨って設けられている。なお、第12実施形態においても、第11実施形態と同様に、第2磁場コイル6は、筺体301及びロータ401の回転軸Oを中心とした同心円状に設けられている。第12実施形態では、第11実施形態と比べて、第2磁場コイル6の数を少なくすることが可能である。
【0081】
動力遮断状態において、複数の第2磁場コイル6に通電されると、凹状の格納部34の内側に、動力伝達方向に交差する方向の磁力線φbが生成される。具体的に、この磁力線φbは、格納部34の底と壁との間を通過することに加え、格納部34の両壁の間を径方向に通過するものも含まれる。これにより、磁性流体9の中の磁性粒子Mは、格納部34に確実に格納される。なお、図27では、磁性粒子Mが格納部34に格納された領域を、符号Cで示した斜線部分に模式的にあらわしている。これにより、動力伝達装置208は、磁性粒子Mによる摩擦抵抗を低減し、動力遮断状態における引きずり損を低減することができる。
【0082】
(他の実施形態)
(ア)図28(a)に示す動力伝達装置105では、筺体305の対向面311に比較的強い磁性体で形成された集中部35が局所的に配置され、集中部35の周囲に比較的弱い磁性体又は非磁性体で形成された非集中部35Nが配置されている。そのため、動力伝達状態で生成された磁力線φaは、図4(a)と同様に集中部35に集中し、磁性粒子Mが動力伝達方向に連なることにより、最大伝達トルクを増大させることができる。このように、本発明の「集中部」は、凸状に形成されるものに限らない。
【0083】
(イ)図28(b)に示す動力伝達装置106では、筐体306を通過する磁力線φbによって磁性粒子Mが対向面311に引き寄せられ、貼り付くように保持される。言い換えれば、動力伝達方向に連なることが抑制される。このような態様では、対向面311の表面そのものを「格納部」と見なしてもよい。つまり、本発明の「格納部」は、凹状に形成されるものに限らない。
【0084】
(ウ)第1実施形態の動力伝達装置101では、筺体301の対向面311における径方向外側及び内側に、2つの永久磁石61、62が環状に設けられている。これに対し、図29に示す動力伝達装置107のように、外側の永久磁石61と内側の永久磁石62との間に、さらに中間の永久磁石615を配置してもよい。各永久磁石61、615、62の磁極の向きは、径方向に対向する磁極同士の極性が反対となるように設定される。これにより、動力遮断状態における磁力線φbがより安定して格納部34の溝壁を横切るようにすることができる。もちろん径方向に4つ以上の永久磁石を設けてもよい。また、他の実施形態についても、磁力線φbの向きに永久磁石を増設してもよい。
【0085】
(エ)永久磁石の磁極の配置や、コイル又は永久磁石による磁力線の向きは、言うまでもなく、各図面で図示した方向と逆であってもよい。
(オ)第5実施形態において、2つのコイルによる磁力線の向きは、それらが互いに同方向であるか逆方向であるかという関係を変更しない限り、各図面で図示した方向と逆であってもよい。
(カ)本発明の要部以外の構成に関しては、上記実施形態に対し形状、配置、数量等、適宜変更してよい。例えば、シャフトとロータとの接続、シャフトの軸受け、流体室の形状、筐体におけるコイルの設置や配線等については、どのように構成してもよい。
【0086】
(キ)本発明の動力伝達装置として、上記実施形態では、シャフト及びロータの回転動力を、同軸に設けられた筐体に伝達可能なクラッチ装置を例示した。この他、本発明の動力伝達装置は、ロータの回転を制動するブレーキ装置等に適用されてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
101−107,201−208・・・動力伝達装置、
301−308 ・・・筺体、
311、313、32、315・・・(筺体の)対向面、
33、35、37 ・・・(筺体の)集中部、
34、36、38 ・・・(筺体の)格納部、
401−403 ・・・ロータ、
411、413、42、415・・・(ロータの)対向面、
43 ・・・(ロータの)集中部、
44 ・・・(ロータの)格納部、
5、51、52、53、54 ・・・コイル(磁場発生手段、第1磁場発生手段)、
61、615、62、63、64、65、66・・・永久磁石(第2磁場発生手段)、
6 ・・・コイル(第2磁場発生手段)、
8 ・・・流体室、
9 ・・・磁性流体、 90・・・基液、 M ・・・磁性粒子。
図1
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