(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
<高炉ステーブ残厚測定装置の構成>
はじめに、
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る高炉ステーブ残厚測定装置1の構成について説明する。
図1に示すように、高炉ステーブ残厚測定装置1は、測定部2と、表示部3とを備える。
【0011】
測定部2は、
図1および
図2に示すように、ケーシング21と、撮像部22と、照射部23と、断熱材24と、計測部25とを有する。
ケーシング21は、
図2および
図3に示すように、金属製のパイプであり、一端側の表面に設けられた略矩形状の開口部211を有する。また、ケーシング21は、後述するように、長手方向において、高炉に設けられたステーブに挿入可能な長さを有する。さらに、ケーシング21の長手方向に垂直な断面における大きさは、後述するように、高炉およびステーブに形成された測定孔に挿入可能な大きさに形成される。ここで、測定孔とは、高炉およびステーブに予め設けられた、圧力計や温度計等の測定機器を挿入するための孔である。
【0012】
撮像部22は、ビデオスコープやマイクロスコープ等の撮像装置であり、ケーシング21の内部に沿って配されたケーブルと、ケーシング21の一端側となるケーブルの先端に設けられた撮像手段221とを有する。また、撮像部22は、
図3に示すように、後述するレーザ光Lの照射領域を含む撮像領域dを撮像する。撮像手段221が設けられたケーブルの先端側は、ケーブルが自在に湾曲可能に構成される。撮像手段221は、小型CCD(Charge-Coupled Device)センサ等の撮像素子およびレンズを含む撮像機構と、撮像領域dを照らすLED(Light Emitting Diode)等の照明とを有する。また、撮像部22は、
図3に示すように、ケーブルの先端側が湾曲することで、撮像手段221を含むケーブルの先端がケーシング21の開口部211からケーシングの外側へと突出して配される。また、撮像部22は、表示部3に電気的に接続され、撮像データを表示部3へと送信する。
【0013】
照射部23は、ケーシング21の内部に沿って配されたケーブルと、ケーブルの先端に設けられた光源部231とを有するレーザポインタ等の照射装置である。光源部231は、ケーシング21の長手方向において、開口部211が形成された位置に配され、開口部211を通じてケーシング21の外部へとレーザ光Lを照射する。また、光源部231には、ケーブルを通じて不図示の電源から電力が供給される。さらに、照射部23は、レーザ光Lがケーシング21の長手方向に対して略垂直方向に照射されるように、ケーシング21に固定される。
【0014】
断熱材24は、ケーシング21の一端に、先端の開口部を覆って設けられる。
計測部25は、ケーシング21の長手方向に沿ってケーシング21の表面に沿って設けられ、ケーシング21の長さを計測する。例えば、計測部25は、ケーシング21の長さを表示する目盛等である。
表示部3は、撮像部22から取得した撮像データを、撮像画像として画面へ表示する表示装置である。
【0015】
<ステーブの残厚測定方法>
次に、
図4〜
図8を参照して、高炉ステーブ残厚測定装置1を用いたステーブ5の残厚測定方法について説明する。
図4に示すように、ステーブ5は、高炉の鉄皮4の内側へと設けられ、内部には水路6が形成される。ステーブ5は、水路6に冷却水が流れることで鉄皮4を冷却し、鉄皮4を保護する。
図5に示す例では、鉄皮4の内側方向となるx軸正方向側に、ステーブ5が設けられる。このとき、鉄皮4とステーブ5との間には、隙間8が形成される。なお、以下では、ステーブ5の隙間8が設けられた鉄皮側の面を背面、背面の反対側の面を前面という。また、ステーブ5には、内部に高炉の略高さ方向となるy軸方向に延在する水路6が形成される。さらに、ステーブ5の前面には、x軸正方向側に突出した山部51および谷部52が形成される。山部51および谷部52は、y軸方向に鉄皮4に沿って、交互に複数形成される。なお、
図5に図示した領域には、山部51a,51bおよび谷部52a,52bが形成される。山部51bには、測定孔7が形成される。測定孔7は、鉄皮4から山部51bまでを貫通して形成され、通常の操業時には、内部に圧力計や温度計が設けられる。
【0016】
なお、ケーシング21は、上述のように、長手方向において、高炉に設けられたステーブ5に挿入可能な長さを有する。つまり、ケーシング21の長手方向の長さは、鉄皮4の外表面からステーブ5の前面側の端までの長さである測定孔7の長さよりも長くなるように形成される。また、ケーシング21の内部に配された、撮像部22およびレーザポインタについても同様に、ケーシング21と同様な長さに構成される。
【0017】
本実施形態に係るステーブ5の残厚測定は、高炉の休風時に行われる。これは、休風時以外の操業時においては、高炉周辺の作業場所がCOガス雰囲気となるためである。
まず、作業者は、鉄皮4の外側から測定孔7に高炉ステーブ残厚測定装置1を挿入する。このとき、高炉ステーブ残厚測定装置1は、
図5に示すように、断熱材24が設けられた側の一端から、測定孔7の貫通方向とケーシング21の長手方向とが平行となる挿入方向に挿入される。また、高炉ステーブ残厚測定装置1は、照射部23から照射されたレーザ光Lが、ステーブ5の背面側の端に当たる位置まで挿入される。なお、以下では、レーザ光Lがステーブ5の背面側の端に当たる位置まで、高炉ステーブ残厚測定装置1が挿入された深さを第1の挿入深さと称する。
【0018】
高炉ステーブ残厚測定装置1が第1の挿入深さまで挿入されたか否かは、作業者が表示部3に表示された撮像画像を見て確認する。
図5には高炉ステーブ残厚測定装置1が第1の挿入深さまで挿入された状態を示し、
図6には
図5の状態において表示部3に表示される撮像画像を示す。
図6に示すように、作業者は、背面側のステーブ5の端に、当たったレーザ光Laを確認することで、高炉ステーブ残厚測定装置1が第1の挿入深さまで挿入されたことを確認することができる。また、本実施形態に係るステーブ5の残厚測定方法では、撮像手段221の照明にて撮像領域dを照らすことで、暗所や閉所であってもステーブ5の端を視認することができる。
【0019】
次いで、作業者は、第1の挿入深さにおける計測部25の計測値を確認する。このとき、作業者は、
図5に示すように、鉄皮4の外側における計測部25である目盛の表示位置(
図5の矢印位置)を確認する。
さらに、作業者は、高炉ステーブ残厚測定装置1を高炉のさらに内部へと挿入する。この際、高炉ステーブ残厚測定装置1は、照射部23から照射されたレーザ光Lがステーブ5の前面側の端に当たる位置まで挿入される。なお、以下では、レーザ光Lがステーブ5の前面側の端に当たる位置まで、高炉ステーブ残厚測定装置1が挿入された深さを第2の挿入深さと称する。
【0020】
高炉ステーブ残厚測定装置1が第2の挿入深さまで挿入された否かは、第1の挿入深さの確認と同様に、作業者が表示部3に表示された表示画像を見て確認する。
図7には高炉ステーブ残厚測定装置1が第2の挿入深さまで挿入された状態を示し、
図8には
図7の状態において表示部3に表示される撮像画像を示す。
図8に示すように、作業者は、前面側のステーブ5の端に、当たったレーザ光Lbを確認することで、高炉ステーブ残厚測定装置1が第2の挿入深さまで挿入されたことを確認することができる。
【0021】
ここで、本実施形態では、ステーブ5の端にレーザ光Lが照射されたことを視認することで、第1および第2の挿入位置が判断される。このため、超音波を用いた測定装置を用いて間接的にステーブ5の残厚を測定する場合に比べ、高い精度で残厚を測定することができる。なお、本実施形態におけるステーブ5の残厚測定結果の誤差は、照射部23により照射されるレーザ光Lの照射径程度(例えば±1mm以内)となる。
【0022】
その後、作業者は、第2の挿入深さにおける計測部25の計測値を確認する。このとき、作業者は、
図7に示すように、鉄皮4の外側における計測部25である目盛の表示位置を確認する。
次いで、第2の挿入深さの表示値を確認した後、第1および第2の挿入深さの表示値から、ステーブ5の残厚を算出する。ステーブ5の残厚の算出は、第1の挿入深さの表示値と第2の挿入深さの表示値との差分として算出される。本実施形態では、ステーブ5の残厚として、山部51a(51)における背面から前面までの厚さを測定する。
さらに、高炉ステーブ残厚測定装置1が測定孔7から引き抜かれることで、測定が終了する。
【0023】
<変形例>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0024】
例えば、上記実施形態では、鉄皮4から山部51a(51)に形成された測定孔7に高炉ステーブ残厚測定装置1を挿入するとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、
図9に示すように、鉄皮4から谷部52b(52)に形成された測定孔7に高炉ステーブ残厚測定装置1を挿入してもよい。この際、上記実施形態と同様に測定をすることで、ステーブ5の残厚として、谷部52b(52)における背面から前面までの厚さが測定される。
【0025】
また、上記実施形態では、高炉ステーブ残厚測定装置1を測定孔7に挿入する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、鉄皮4からステーブ5まで貫通する残厚測定用の孔を予め形成し、この孔に高炉ステーブ残厚測定装置1を挿入することで、ステーブ5の残厚を測定してもよい。
【0026】
さらに、測定部2は、上記実施形態以外の構成として、
図10に示す構成を有してもよい。
図10に図示した例では、測定部2は、ケーシング21と、撮像部22aと、照射部23と、断熱材24と、反射鏡26と、照明27とを有する。
図10に示した例におけるケーシング21、照射部23および断熱材24の構成は、
図3に示したものと同じである。撮像部22aは、ケーシング21の外部に設けられ、反射鏡26を介して、開口部211の外側の領域を撮像する。撮像部22aによる表示部3へと送信され、撮像画像が表示部3へと表示される。反射鏡26は、ケーシング21の先端内部に設けられ、開口部211の外側の領域の像を撮像部22aへと反射させる。照明27は、撮像部22aによって撮像される開口部211の外側の領域を照らす光源である。
図10に示した測定部2によれば、上記実施形態と同様な測定方法を用いて、ステーブ5の残厚を測定することができる。この際、作業者は、表示部3へと表示される撮像部22aによって撮像された撮像画像により、第1および第2の挿入深さを確認することができる。
【0027】
さらに、上記実施形態では、撮像手段221には照明が設けられる構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、撮像手段221には、照明が設けられなくてもよい。この場合、撮像手段221には、撮像領域dが暗い場合にも撮像可能な高感度な撮像機構が用いられる。
【0028】
さらに、上記実施形態では、測定部2は照射部23を有する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、測定部2には、照射部23が設けられなくてもよい。この場合、撮像部22は、ケーシング21の長手方向に略垂直な方向、且つケーシグンに対して一定の位置関係を有する撮像領域を撮像可能なように、ケーシング21に固定される。なお、高炉ステーブ残厚測定装置1が第1および第2の挿入深さまで挿入されたか否かの判断は、撮像画像に表示されるステーブ5の端の撮像画像中の位置に応じて判断される。例えば、作業者は、撮像画像の中心等の所定の位置にステーブ5の端部が表示された深さを、第1および第2の挿入深さとして判断する。
【0029】
さらに、上記実施形態では、測定部2は断熱材24を有する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、測定部2がステーブ5内の温度等の条件に耐え得る構成であれば、断熱材24が設けられなくてもよい。
さらに、上記実施形態では、測定部2はパイプ状のケーシング21を有する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、撮像部22や照射部23等を測定孔7に曲げずに挿入可能であれば、他の形状のケーシング21やケーシング21を設けない構成であってもよい。ケーシング21を設けない構成の場合、計測部25は、外部から作業者が視認できるように、撮像部22や照射部23に設けられる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、計測部25は目盛であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。計測部25は、撮像部25の挿入深さが計測可能な構成であれば、目盛以外の表示方法や計測方法であってもよい。
【0031】
<実施形態の効果>
(1)本発明の一実施形態に係る高炉ステーブ残厚測定装置1は、高炉の外側から高炉の内部に設けられたステーブ5に挿入可能な長さを有し、ステーブ5の内部を撮像可能な撮像部22と、撮像部22のステーブ5への挿入深さを計測する計測部25と、撮像部22の撮像結果を表示する表示部3と、を有する。
【0032】
上記構成によれば、撮像部22による撮像画像を確認しながら、ステーブ5の端における高炉ステーブ残厚測定装置1の挿入深さを直接測定することができるため、ステーブ5の残厚を正確に測定することができる。また、例えば特許文献1のように超音波を用いて残厚を測定する場合に比べ、ステーブ5の表面の凹凸の影響、ステーブ5の材質による影響およびステーブ5の公差の影響によらずに測定できるため、超音波を用いた測定装置に比べ測定精度に優れる。
【0033】
また、上記構成によれば、ステーブ5の残厚を測定する際には、高炉ステーブ残厚測定装置1を繰り返し使用することができる。また、特許文献2のように、ステーブ5に予めマーカーを埋め込む加工をする必要がない。このため、特許文献2に記載の測定方法や測定装置に比べ、測定に掛かるコストやステーブ5の製造に掛かるコストを低減することができることから、残厚を安価に測定することができる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、従来は視認できなかった鉄皮4の高炉内側の状況を確認することができるため、正確な測定位置を判断することができる。例えば、溶損等により生じたステーブ5の背面側の凹凸や、溶損や損耗等により生じたステーブ5の前面側の凹凸や欠落を視認することができる。このため、ステーブ5の溶損や損耗等の状態に応じて、高炉の寿命管理に適切な残厚を測定することができる。これに対して、特許文献1のように超音波を用いて残厚を測定する場合、ステーブ5の溶損や損耗等の状態が分からないことから、適切な残厚を測定することができない。
【0035】
(2)ステーブ5に挿入可能な長さを有し、ステーブ5への挿入方向に対して略垂直方向にレーザ光Lを照射する照射部23をさらに有する。
上記構成によれば、レーザ光Lが照射された位置から、高炉ステーブ残厚測定装置1とステーブ5との相対的な位置関係を視認することができるため、高炉ステーブ残厚測定装置1の挿入深さおよびステーブ5の残厚を高い精度で測定することができる。
【0036】
(3)金属製のパイプ状のケーシング21をさらに有し、ケーシング21は、長手方向の先端側に開口部211を有し、撮像部22は、ケーシング21の内部に配され、開口部211を通じてケーシング21よりも外側の撮像領域dを撮像し、計測部25は、ケーシング21の表面に設けられた目盛である。
(4)金属製のパイプ状のケーシング21をさらに有し、ケーシング21は、長手方向の先端側に開口部211を有し、撮像部22は、ケーシング21の内部に配され、開口部211を通じてケーシング21よりも外側の撮像領域dを撮像し、計測部25は、ケーシング21の表面に設けられた目盛であり、照射部23は、ケーシング21の内部に配され、開口部211を通じてケーシング21よりも外側にレーザ光Lを照射する。
上記(3)および(4)の構成によれば、耐久性に優れた高炉ステーブ残厚測定装置1を低廉に製造することができる。
【0037】
(5)ステーブ5への挿入方向の先端に断熱材24を有する。
上記構成によれば、高炉内の輻射熱による、撮像部22等の高炉ステーブ残厚測定装置1の部材の溶損や故障を防止することができる。このため、高炉ステーブ残厚測定装置1の耐久性を向上させることができ、さらに、撮像部22等の部材に、断熱性に劣る安価な既製品等を適用することができる。
【0038】
(6)ケーシング21は、高炉に設けられた測定孔7に挿入可能な大きさを有する。
上記構成によれば、通常、高炉に設けられる圧力計や温度計等を挿入する測定孔に挿入して、ステーブ5の残厚を測定することができる。このため、既設の高炉のステーブ5の残厚を測定する場合にも適用することができる。また、特許文献2のようにマーカー埋め込み用の孔を形成する場合に比べ、ステーブ5に不必要な孔を設ける必要がなくなるため、ステーブ5の強度を向上させることができる。
【0039】
(7)本発明の一実施形態に係る高炉ステーブ残厚測定方法は、高炉に設けられた測定孔7に撮像装置(撮像部22)を挿入する工程と、撮像装置が高炉のステーブ5の背面側端部を撮像するときの挿入深さである第1の挿入深さを計測する工程と撮像装置がステーブ5の前面側端部を撮像するときの挿入深さである第2の挿入深さを計測する工程と、第1の挿入深さと第2の挿入深さとからステーブ5の厚さを算出する工程と、を含む。
上記構成によれば、上記(1)の構成と同様に、ステーブ5の残厚を正確に測定することができる。