(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線を照射して発生したオゾンやラジカルによって保管食品の殺菌効果を得る方法では、オゾン又はラジカルの酸化作用によって保管食品が酸化障害を起こす問題がある。
特許文献1には、例えば、段落[0042]に、波長240nm以下の紫外線をカットした紫外線ランプを使用することで、オゾンによる保管食品の酸化を防止することが記載されている。しかし、この方法では、オゾンの発生効率が低下すると共に、オゾン発生量を正確に制御できないという問題がある。
上記問題を解決する手段は特許文献2及び3にも記載されていない。
また、水銀灯を使用した紫外線ランプは、10℃以下の低温では点灯しにくいため、一度昇温させて点灯させる必要があり、操作が煩雑になる。プラズマ式オゾン発生器を用いる方法は、空気中の窒素と酸素が化学結合した窒素酸化物を生成し、冷蔵庫を構成する機材や保管された青果物を傷めるおそれがあり、かつ環境及び作業者に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、保管庫内に保管される生鮮品を紫外線の照射によって発生するオゾン又はラジカルで痛めるおそれなく、かつ生鮮品全体を効率良く殺菌可能にすることで、長期間鮮度を維持可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)幾つかの実施形態に係る生鮮品の保管装置は、
生鮮品をチルド状態以上の温度で保管可能な生鮮品保管庫と、
前記生鮮品保管庫の庫内温度をチルド状態以上の温度に調整可能な温度調整部と、
前記生鮮品保管庫の庫内に空気流を形成する空気流発生部と、
紫外線を前記空気流に照射してオゾン又はラジカルを発生させる照射部と、
前記紫外線を断続的に前記空気流に照射させるように前記照射部を制御可能な断続照射制御部と、
を備える。
【0008】
上記構成において、上記照射部より上記空気流に紫外線を照射することにより、上記生鮮品の周囲にオゾンやOHラジカルなどのラジカルが生成される。生成したオゾンやラジカルは上記空気流により生鮮品保管庫の内部全域に拡散する。拡散したオゾン又はラジカルによって庫内全域が殺菌され、カビなどの微生物の繁殖を抑制し、保管された生鮮品の腐敗を抑制できる。これによって、生鮮品の鮮度を長期間保持できる。
また、上記断続照射制御部によって紫外線を断続的に照射することで、生鮮品の周囲に発生するオゾン又はラジカルの濃度制御が容易になる。断続照射により発生するオゾン又はラジカルの濃度制御を行うことで、生鮮品の殺菌効果を維持しつつ、オゾン又はラジカルによって被る生鮮品の酸化障害を抑制できる。
【0009】
なお、上記温度調整部によって、生鮮品をチルド状態以上の温度で保管するので、生鮮品の細胞中に氷結晶が形成するのを抑止できる。これによって、氷結晶の形成による細胞膜の損傷を抑制でき、生鮮品を鮮度良く保管できる。
また、上記温度調整部によって生鮮品保管庫の内部を冷蔵、保温又は解凍を行うことのできる生鮮品の適温に調整することで、生鮮品保管庫を凍結庫、冷蔵庫、保温庫及び解凍庫等に利用可能になる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、前記(1)の構成において、
前記断続照射制御部は、
前記生鮮品が前記オゾン又はラジカルに曝される時間と前記オゾン又はラジカルの濃度との積で求められる積算濃度に基づいて前記紫外線を断続照射させるものである。
本発明者等は、生鮮品に殺菌効果をもたらすオゾン又はラジカルの酸化作用の程度は、上記積算濃度によって決まることを見い出した。生鮮品がオゾン又はラジカルに曝される時間は、実質的に上記照射部によって紫外線が照射される時間と置き換えることができる。
【0011】
紫外線の照射方法として、連続照射と断続照射とがあり、連続照射は少ない積算濃度で酸化作用を増大できるが、生鮮品の保管期間が長くなると、酸化作用が強くなりすぎて生鮮品の表面に酸化障害が現れるおそれがある。他方、断続照射は、オゾン又はラジカルの発生を抑制できるので、生鮮品の保管期間が長くなっても、生鮮品の表面を傷めずに殺菌できる。
上記(2)の構成によれば、上記積算濃度に基づいて紫外線を断続照射することで、オゾン又はラジカルの発生量を正確に制御できる。そのため、生鮮品に対する酸化作用の程度を正確に調整できるので、生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記(2)の構成において、
前記断続照射制御部は、
前記生鮮品保管庫における前記生鮮品の保管中に前記紫外線を断続照射させ、
前記生鮮品の周囲の前記積算濃度が、前記生鮮品の殺菌効果が現れる下限値と前記生鮮品の表面に酸化障害が現れる上限値との間の値になるように制御させるものである。
上記(3)の構成によれば、生鮮品の保管期間中、積算濃度を上記下限値と上記上限値との間の値になるように、紫外線を断続照射することで、保管期間中の全期間に亘り生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0013】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記照射部は、200nm未満の単一波長の真空紫外線を放射可能なエキシマランプ又は希ガス蛍光ランプで構成される。
上記エキシマランプ又は上記希ガス蛍光ランプを用い、前記ランプから放射される空気中の酸素に強く吸収される200nm未満の単一波長の真空紫外線を空気に照射することで、空気中の酸素からオゾン又はラジカルを効率良く生成できる。他方、上記波長の真空紫外線は空気中のN
2には吸収されず、N
2を乖離しないので、NO
Xを発生しない。従って、生鮮品保管庫の保管空間を構成する機材や保管される生鮮品を傷めるおそれがない。
【0014】
また、波長200nm未満の真空紫外線を放射する上記エキシマランプ又は希ガス蛍光ランプは、温度及び湿度に対する点灯依存性が少なく、農産物の保管温度である5℃以下の低温度帯で速やかに点灯できると共に、高湿度環境でもオゾン又はラジカルを高効率で発生できるので、生鮮品保管庫が解凍庫として用いられる場合、高湿度の庫内空間を速やかに殺菌できる。
また、電力供給と同時に速やかに点灯してオゾン又はラジカルを発生し、電力停止と同時にこれらの発生が停止するため、オゾン又はラジカルの濃度コントロールが容易である。
【0015】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記温度調整部は、
前記生鮮品がタンパク質凝固点以下の温度域に加温できる加温部として構成される。
上記(5)の構成によれば、前記温度調整部によって、生鮮品保管庫内の生鮮品をタンパク質凝固点(例えば72℃)以下の温度域に加温することで、生鮮品保管庫を解凍庫として有効に利用出来る。また、加温する温度の上限をタンパク質凝固点以下とすることで、生鮮品fを変質させるおそれはない。
【0016】
(6)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記温度調整部は、
前記生鮮品が冷蔵状態で若しくはチルド状態で保存できる冷気発生部として構成される。
ここで、「冷蔵状態」とは2,3〜10℃の温度に保持することを言い、「チルド状態」とは−2、−3〜5℃の温度に保持することを言う。
上記(6)の構成によれば、生鮮品を冷蔵状態又はチルド状態で保存することで、生鮮品保管庫を冷蔵庫、保温庫として有効に利用出来る。
【0017】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記生鮮品の周囲の前記空気流を加湿するための加湿部をさらに備える。
前記生鮮品が例えば食肉、魚、青果物等の場合、これらを低温状態で保存すると乾燥して劣化するおそれがあるため、上記加湿部を設けることで、保管された生鮮品の乾燥を抑制できる。
【0018】
さらに、一実施形態として、フリーザのような連続式の冷凍装置を用いて生鮮品を凍結する場合においても、連続式冷凍装置を生鮮品保管庫内の殺菌された雰囲気に設置することで、フリーザの稼動終了後、生鮮品残渣による機材の汚染を未然に防ぐことができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態に係る保管方法は、
保管庫内で生鮮品をチルド状態以上の温度で保管する生鮮品保管工程と、
前記生鮮品の周囲に空気流を形成する空気流形成工程と、
前記空気流に紫外線を断続的に照射してオゾン又はラジカルを生成すると共に、前記オゾンやラジカルを前記空気流により前記保管庫の庫内全域に拡散させる紫外線照射工程と、
を含む。
【0020】
上記紫外線照射工程において、上記保管庫内で紫外線を空気流に照射することにより、上記生鮮品の周囲にオゾンやOHラジカルなどのラジカルを生成させ、生成したオゾンやラジカルは上記空気流により生鮮品保管庫の内部全域に拡散する。拡散したオゾン又はラジカルによって庫内全域が殺菌され、カビなどの微生物の繁殖を抑制し、保管された生鮮品の腐敗を抑制できる。これによって、生鮮品の鮮度を長期間保持できる。
また、上記紫外線照射工程において、紫外線を断続的に照射することで、生鮮品の周囲に発生するオゾン又はラジカルの濃度制御が容易になる。断続照射により発生するオゾン又はラジカルの濃度制御を行うことで、生鮮品の殺菌効果を維持しつつ、オゾン又はラジカルによって被る生鮮品の酸化障害を抑制できる。
【0021】
なお、生鮮品保管工程では、生鮮品をチルド状態以上の温度で保管するので、生鮮品の細胞中に氷結晶が形成するのを抑止でき、これによって、氷結晶の形成による細胞膜の損傷を抑制でき、生鮮品を鮮度良く保管できる。
【0022】
(9)一実施形態では、前記(8)の方法において、
前記紫外線照射工程は、
前記紫外線の照射時間と前記オゾン又はラジカルの濃度との積で求められる積算濃度に基づいて、前記紫外線を断続照射するものである。
上記(9)の方法によれば、上記積算濃度に基づいて紫外線を断続照射することで、生鮮品に対するオゾン又はラジカルの発生量を、生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる適量に制御できる。
【0023】
(10)一実施形態では、前記(9)の方法において、
前記紫外線照射工程は、
前記生鮮品保管工程において前記紫外線を断続照射させ、前記生鮮品の周囲の前記積算濃度が、前記生鮮品の殺菌効果が現れる下限値と、前記生鮮品の表面に酸化障害が現れる上限値との間の値になるように制御するものである。
上記(10)の方法によれば、積算濃度を上記下限値と上記上限値との間の値になるように、紫外線を断続照射することで、保管期間中全期間において生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0024】
(11)一実施形態では、前記(8)〜(10)のいずれかの方法において、
前記紫外線は200nm未満の波長域を有する真空紫外線である。
上記(11)の方法によれば、空気中の酸素に強く吸収される200nm未満の単一波長の真空紫外線を空気に照射することで、オゾン又はラジカルを効率良く生成できる。他方、上記波長の真空紫外線は空気中のN
2には吸収されず、N
2を乖離しないので、NO
Xを発生しない。従って、生鮮品保管庫の保管空間を構成する機材や保管される生鮮品を傷めるおそれがない。
【0025】
なお、保管庫に保管される生鮮品は、例えば、収穫後調理されていない生の青果物、肉、魚類であり、あるいはこれらが少なくとも部分的に切断された切り身である。切断面(切り口)のある切り身は、特にオゾン又はラジカルによって酸化障害を受けやすい。
上記幾つかの実施形態によれば、これらの生鮮品をオゾン又はラジカルによる酸化障害を被ることなく、かつ鮮度を維持したまま長期保存できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、保管された生鮮品全体を効率良く殺菌でき、これによって、微生物の繁殖を抑制して生鮮品の腐敗を抑制し、生鮮品の鮮度を長期間保持できると共に、生鮮品の表面に酸化障害が発生するのを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
幾つかの実施形態に係る生鮮品の保管装置10(10A、10B、10C、10D)は、夫々
図1〜
図4に示すように、生鮮品保管庫12を備え、生鮮品保管庫12の内部で生鮮品fがチルド状態以上の温度で保管される。生鮮品保管庫12の内部に、庫内温度をチルド状態以上の温度に保持する温度調整部14と、庫内に空気流aを発生させる空気流発生部16が設けられる。
また、庫内に紫外線を照射する照射部18が設けられ、照射部18から紫外線が空気流aに対して照射される。
図5に示すように、照射部18は断続照射制御部20を備える。照射部18は、断続照射制御部20によって紫外線を断続的に照射するように制御される。
【0030】
上記構成において、照射部18から空気流aに紫外線を照射することにより、生鮮品fの周囲にオゾンやOHラジカルなどのラジカルが生成される。生成したオゾン又はラジカル(以下「オゾン等」とも言う。)は空気流aにより生鮮品保管庫12の内部全域に拡散する。拡散したオゾン等によって庫内全域が殺菌され、カビなどの微生物の繁殖を抑制し、保管された生鮮品の腐敗を抑制できる。これによって、生鮮品の鮮度を長期間保持できる。
また、照射部18が断続照射制御部20によって紫外線を断続的に照射することで、生鮮品fの周囲に発生するオゾン等の濃度制御が容易になる。断続照射によって発生するオゾン等の濃度制御を行うことで、生鮮品fの殺菌効果を維持しつつ、オゾン等によって被る生鮮品fの酸化障害を抑制できる。
【0031】
また、温度調整部14によって、生鮮品fをチルド状態以上の温度に保持するので、生鮮品fの細胞中に氷結晶が形成するのを抑制できる。これによって、氷結晶の形成による細胞膜の損傷を抑制でき、生鮮品fを鮮度良く保管できる。
また、温度調整部14によって生鮮品保管庫12の内部を冷蔵、保温又は解凍を行うことのできる生鮮品fの適温に調整することで、生鮮品保管庫12を冷蔵庫、保温庫及び解凍庫等として利用可能になる。
【0032】
図示した実施形態では、
図1〜4に示すように、温度調整部14は各機器がケーシング24の内部に内臓された空調ユニットで構成される。空気流発生部16は、ケーシング24の内部に設けられたファンで構成される。照射部18は、紫外線光源を内蔵したランプユニットで構成される。
【0033】
幾つかの実施形態では、断続照射制御部20は、生鮮品fがオゾン等に曝される時間とオゾン等の濃度との積で求められる積算濃度(以下「CT値」とも言う。)に基づいて紫外線を断続照射するように照射部18を制御するものである。
生鮮品fは、オゾン等の濃度コントロールをしないと、オゾン等の酸化作用によって障害を受ける。例えば、農産物が受けるダメージは主に変色として現れる。これは酸化による細胞の壊死が原因である。ダメージは作物によって異なり、葉菜類はオゾン又はラジカルによって酸化障害を被りやすく、他方、果菜類は酸化障害を被りにくい。
本発明者等は、オゾン等の酸化作用の程度は、CT値によって決まることを見い出した。言い換えれば、オゾン等の酸化作用の程度はCT値に比例するとも言える。生鮮品がオゾン等に曝される時間は、実質的に照射部18によって紫外線が照射される時間と置き換えることができる。
【0034】
紫外線の照射方法として、連続照射と断続照射とがある。カビなどの微生物に対し、連続照射のほうが少ないCT値で殺菌効果を高めることができる。この理由は、殺菌が不十分でカビなどの微生物が生きていた場合、断続照射ではオゾン等が生成されない時間帯で微生物の増殖が起こるためである。生鮮品を生鮮品保管庫12に保管する場合、目標とする期間腐敗を抑え、かつ色や食感等を変わらない状態にする必要がある一方で、オゾン等による酸化障害が起こらない状態にする必要がある。
上記実施形態では、CT値に基づいて紫外線を断続照射することで、オゾン等の発生量を正確に制御できる。そのため、生鮮品に対する酸化作用の程度を正確に調整できるので、生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0035】
幾つかの実施形態では、
図6に示すように、断続照射制御部20によって、目標とする保管期間中に生鮮品fの表面が傷まず、かつ殺菌が可能なCT値の下限値と、生鮮品fの表面に酸化障害が現れるCT値の上限値との間にオゾン等の濃度を調整する。
連続照射の場合、保管期間によってはオゾン等が低濃度であっても、CT上限値を超えてしまう場合がある。例えば、生鮮品fが農産物の場合、農産物の多くは1カ月から数カ月の長い保管期間が要求される。オゾン等の濃度が0.1ppmであっても30日でCT値は4320ppm・minを超えるため、キャベツやレタスは酸化障害が現れる。他方、断続照射とすることで、保管装置の全域に渡りCT下限値とCT上限値との間に統制できる。
これによって、生鮮品の保管期間の全期間で、生鮮品の表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0036】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図4に示すように、照射部18は200nm未満の単一波長の真空紫外線を放射可能なエキシマランプ又は希ガス蛍光ランプで構成される。
エキシマランプは誘電体バリア放電によって200nm未満の単一波長の真空紫外線を放射する。エキシマランプのうち、例えば、キセノンエキシマランプは波長172nmの真空紫外線を放射可能であり、ArFエキシマレーザは波長193nmの真空紫外線を放射可能である。
エキシマランプ又は希ガス蛍光ランプを用い、前記ランプから放射される空気中の酸素に強く吸収される200nm未満の単一波長の真空紫外線を、空気に照射することで、オゾン又はラジカルを効率良く生成できる。他方、上記波長域の真空紫外線は空気中のN
2には吸収されず、N
2を乖離しないので、NO
Xを発生しない。従って、生鮮品保管庫12の保管空間を構成する機材や保管される生鮮品を傷めるおそれがない。
【0037】
また、波長200nm未満の単一波長の真空紫外線を放射するエキシマランプ又は希ガス蛍光ランプは、温度及び湿度に対する点灯依存性がなく、農産物の保管温度である5℃以下の低温度帯で速やかに点灯できると共に、高湿度環境でもオゾン又はラジカルを高効率で発生できるので、生鮮品保管庫12が解凍庫として用いられる場合、高湿度の庫内空間を速やかに殺菌できる。
また、電力供給と同時に速やかに点灯してオゾン等を発生し、電力停止と同時にこれらの発生が停止するため、オゾン等の濃度コントロールが容易である。
【0038】
一実施形態では、温度調整部14は、生鮮品fがタンパク質凝固点以下の温度域に加温できる加温部として構成される。
この実施形態によれば、温度調整部14によって、生鮮品保管庫12に保管された生鮮品fをタンパク質凝固点(例えば72℃)以下の温度域に加温することで、生鮮品保管庫12を解凍庫として有効に利用出来る。加温する温度の上限をタンパク質凝固点以下とすることで生鮮品fを変質させるおそれはない。
【0039】
一実施形態では、温度調整部14は、生鮮品fが冷蔵状態で若しくはチルド状態で保存できる冷気発生部として構成される。
この実施形態によれば、生鮮品fを冷蔵状態又はチルド状態で保存することで、生鮮品保管庫12を冷蔵庫又は保温庫として有効に利用出来る。
【0040】
幾つかの実施形態では、
図3及び
図4に示すように、生鮮品fの周囲の空気流aを加湿するための加湿部22をさらに備える。
生鮮品が例えば食肉、魚、青果物等の場合、これらを低温状態で保存すると乾燥して劣化するおそれがあるため、加湿部22を設けることで、保管された生鮮品fの乾燥を抑制できる。
例示的な実施形態では、
図3及び
図4に示すように、加湿部22は、ケーシング24の底部に設けられた貯水槽32と、貯水槽32から加湿用水wを汲み上げ、ケーシング24の内部に形成された空気流路bに加湿用水wを散布する散水装置34を含む。
【0041】
例示的な実施形態では、
図1〜
図4に示すように、温度調整部14は、空気流aの入口及び出口を有するケーシング24の内部に、ファンで構成された空気流発生部16、デフロスト及び温度調整用のヒータ26、及び庫外に設けられた冷凍機28から冷媒が供給される熱交換器30を有する。ケーシング24の内部に空気流路bが形成され、空気流路bに空気流aが形成される。空気流aはヒータ26によって加温され、あるいは熱交換器30によって冷却されることで、温度調整される。
【0042】
図1及び
図2に示す実施形態では、ケーシング24は横向きに配置され、ケーシング24の内部で空気流aは横向きに流れる。
図3及び
図4に示す実施形態では、ケーシング24は縦向きに配置され、ケーシング24の内部で空気流aは縦向きに流れる。
冷凍機28は、例えば、生鮮品保管庫12の外部で、
図1及び
図2に示すように、生鮮品保管庫12の上壁に設けられ、あるいは
図3及び
図4に示すように、生鮮品保管庫12の側壁に隣接して配置される。
【0043】
一実施形態では、
図5に示すように、照射部18は、キセノンエキシマランプ又は希ガス蛍光ランプで構成された放電ランプ35で構成される。放電ランプ35は、例えば、波長200nm未満の真空紫外線を放射する放電ランプ光源36と、放電ランプ光源36から放射される真空紫外線により生成したオゾン等を拡散するファン38とを内蔵している。なお、ファン38の配置は省略してもよい。
例示的な実施形態では、放電ランプ35は生鮮品保管庫12の内部に形成される空気流aに面して配置され、放電ランプ35は紫外線照射窓40を有する。
放電ランプ光源36から真空紫外線を空気流aに向けて照射することで、空気流a中にオゾン等が発生し、発生したオゾン等は空気流aに乗って庫内全般に拡散し、生鮮品fを殺菌する。
【0044】
上記放電ランプから放射される紫外線の波長は、その放電室に封入された放電ガスによって決まる。例えば、放電ガスがアルゴン(Ar)のとき126nmとなり、放電ガスがクリプトン(Kr)のとき146nmとなり、放電ガスがキセノン(Xe)のとき、172nmとなる。
【0045】
図1及び
図3に示す実施形態では、照射部18としての放電ランプは生鮮品fの上方に配置され、紫外線照射窓40は空気流aを介して生鮮品fに向けられている。
図2に示す実施形態では、放電ランプ35は連続搬送式フリーザ44の上方に配置され、紫外線照射窓40は空気流aを介して連続搬送式フリーザ44に向けられている。
図4に示す実施形態では、放電ランプ35は生鮮品fの上方隅に配置され、紫外線照射窓40は空気流aに向けられている。
このように、紫外線照射窓40が空気流aに向けて配置されるので、生成したオゾン等を空気流aに乗せて庫内全域に拡散できる。これによって、庫内全域を殺菌できる。
【0046】
例示的な実施形態では、
図1及び
図3に示すように、紫外線照射窓40が生鮮品fに向けて配置されるので、紫外線が生鮮品fに直接照射され、生鮮品fの照射面に対して強い殺菌力を発揮できる。従って、放電ランプ35から放射される真空紫外線との相乗効果によって、保管された生鮮品全体の殺菌効果を高めることができる。
【0047】
例示的な実施形態では、
図1〜
図3に示すように、放電ランプ35は、温度調整部14のケーシング24の内部に形成される空気流路bを流れる空気流aに向けて真空紫外線を照射するので、発生したオゾン等を空気流aに乗って庫内全域に効率良く拡散できる。これによって、庫内空気全体を効率良く殺菌できる。
また、温度調整部14は加湿部22を有し、加湿部22で温度調整部14に導入される空気流aを加湿するので、庫内雰囲気を高湿度に保持でき、生鮮品fの乾燥を抑制できる。これによって、生鮮品fの歩留まり低下を抑制できる。
【0048】
例示的な実施形態では、
図1,
図3及び
図4に示すように、生鮮品fは青果物又はその切り身であり、生鮮品保管庫12の内部で段積みされたかご42に収納される。
【0049】
一実施形態では、
図2に示すように、生鮮品保管庫12の内部に連続搬送式フリーザ44が設置される。連続搬送式フリーザ44は、コンベア46を備え、生鮮品fはコンベア46で搬送中に連続的に凍結される。
この実施形態では、オゾン等の存在によって殺菌効果を有する生鮮品保管庫12の内部で生鮮品fを凍結するため、連続搬送式フリーザ44の稼動が終了した後でも、連続搬送式フリーザ44を構成する機材が生鮮品残渣によって汚染されるのを防ぐことができる。
【0050】
一実施形態では、
図5に示すように、生鮮品保管庫12の内部にオゾン等の濃度を検出するオゾン濃度センサ48が設けられ、オゾン濃度センサ48の検出値は断続照射制御部20に入力される。断続照射制御部20は上記検出値に基づいて放電ランプ35の動作を制御する。
【0051】
幾つかの実施形態に係る保管方法は、
図7に示すように、生鮮品保管工程S10と,空気流形成工程S12と、紫外線照射工程S14とを含む。
生鮮品保管工程S10では生鮮品保管庫12の内部で生鮮品fをチルド状態以上の温度で保管する。空気流形成工程S12では、生鮮品保管庫12に保管された生鮮品fの周囲に空気流aを形成する。紫外線照射工程S14では、空気流aに紫外線を断続的に照射してオゾン又はOHラジカルなどのラジカルを生成すると共に、オゾン等を空気流aに乗せて庫内全域に拡散させる。
【0052】
これによって、庫内全域に拡散したオゾン等によって庫内全域が殺菌されるため、カビなどの微生物の繁殖が抑制され、保管された生鮮品fの腐敗を抑制できる。従って、生鮮品の鮮度を長期間保持できる。
また、紫外線照射工程S14において、紫外線を断続的に照射することで、生鮮品fの周囲に発生するオゾン又はラジカルの濃度制御が容易になる。断続照射により発生するオゾン等の濃度制御を行うことで、生鮮品fの殺菌効果を維持しつつ、オゾン等によって被る生鮮品fの酸化障害を抑制できる。
なお、生鮮品保管工程S10では、生鮮品fをチルド状態以上の温度で保管するので、生鮮品fの細胞中に氷結晶が形成するのを抑止でき、これによって、氷結晶の形成による細胞膜の損傷を抑制でき、生鮮品fを鮮度良く保管できる。
【0053】
一実施形態では、紫外線照射工程S14において、紫外線の照射時間とオゾン等の濃度との積で求められる積算濃度に基づいて、紫外線を断続照射する。
積算濃度に基づいて真空紫外線を断続照射することで、生鮮品fに対するオゾン等の発生量を、生鮮品fの表面を傷めずに殺菌効果を維持できる適量に制御できる。
【0054】
一実施形態では、紫外線照射工程S14において、紫外線を断続照射させ、生鮮品fの周囲の積算濃度が、生鮮品fの殺菌効果が現れる下限値と生鮮品fの表面に酸化障害が現れる上限値との間の値になるように制御する。
積算濃度をCT下限値とCT上限値との間の値になるように、紫外線を断続照射することで、保管期間中全期間において生鮮品fの表面を傷めずに殺菌効果を維持できる。
【0055】
一実施形態では、紫外線照射工程S14において、200nm未満の波長域を有する真空紫外線を照射する。
空気中の酸素に強く吸収される200nm未満の単一波長の真空紫外線を空気に照射することで、オゾン等を効率良く生成できる。他方、上記波長の真空紫外線は空気中のN
2には吸収されず、N
2を乖離しないので、NO
Xを発生しない。従って、生鮮品保管庫12の保管空間を構成する機材や保管される生鮮品fを傷めるおそれがない。
【0056】
例示的な実施形態では、生鮮品fが青果物であり、生鮮品保管庫内で青果物を0℃以上5℃以下に冷却し、オゾン濃度を0.1ppm以上0.5ppm以下に調整する。これによって、生鮮品fの保管期間中生鮮品fの腐食を抑制できると共に、オゾン等による酸化障害を抑制できる。
また、生鮮品保管庫内を加湿して相対湿度を90%以上に調整する。これによって、保管期間中生鮮品fの乾燥を抑制できる。
【0057】
一実施形態では、青果物のうち、レタス、キャベツのように表皮細胞が薄い葉菜類、花卉類又はキノコ類は、オゾン等による酸化障害を被りやすい。そこで、保管期間中上記葉菜類は、トマト、レモンのように表皮体で全体が包皮されている果実類に比して,CT値がCT下限値より高くCT下限値に近い値となるように上記波長の真空紫外線を断続照射する。
これによって、保管期間中、葉菜類、花卉類、キノコ類のうち特に切り口及びその周辺の酸化障害を抑制できる。
【0058】
一実施形態では、生鮮品fが生の魚肉、又は生の鶏肉、ターキ等の獣肉のいずれかであって、これらの肉体を少なくとも部分的に細胞膜と交差する方向に切断された切り身である場合、オゾン等の酸化障害を被りやすい。そこで、上記切り身の場合、保管期間中細胞膜に沿って切断された切り身の場合に比してCT値がCT下限値より高くCT下限値に近い値となるように上記波長の真空紫外線を断続照射する。
これによって、保管期間中、オゾン等の酸化障害を被りやすい切り身の酸化障害を抑制できる。
【0059】
一実施形態では、生鮮品fが生の魚肉、又は生の鶏肉、ターキ等の獣肉のいずれかであって、これらの肉体を少なくとも部分的に細胞膜に沿う方向に切断された切り身である場合、細胞膜と交差する方向に切断された切り身と比べてオゾン等の酸化障害を被りにくい。そこで、上記切り身の場合、CT値がCT上限値より低くCT上限値に近い値となるように上記波長の真空紫外線を断続照射する。
これによって、保管期間中、上記切り身の酸化障害を抑制しつつ殺菌効果を向上できる。
【実施例】
【0060】
(1)庫内殺菌試験
保管装置として、
図4に示す保管装置10(10D)を用いた。保管装置10(10D)は、加湿部22を有する温度調整部14を備えた生鮮品保管庫12を備えている。
図4に示すように、照射部18としての放電ランプ35は生鮮品fの上方隅に配置され、その紫外線照射窓40は空気流aに向けて配置されている。
紫外線照射窓40から波長200nm未満の真空紫外線が放射され、庫内を温度2℃、相対湿度95%以上に保持して庫内空気の殺菌試験を実施した。
また、庫内のオゾン濃度が0.3ppmになるように、断続照射制御部20によって放電ランプ35を点灯1秒、消灯10秒で繰り返し30分間断続点灯させた。
【0061】
図4に示すように、放電ランプ35の下方に段積みされたかご42の中に、上段に位置するA点、B点、及び中段に位置するC点にPDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)を30分間開放してカビの量を計測した。
その結果を
図8に示すように、殺菌運転後に菌数の減少を確認した。
なお、比較例として、水銀灯を使用し、波長185nmの紫外線を放射する紫外線ランプを用いて実施した試験では、水銀灯が低温のため点灯しなかった。
【0062】
(2)キャベツの保管試験
図4に示す保管装置10(10D)を用い、生鮮品保管庫12にキャベツを裸の状態で入れ、温度2℃、相対湿度95%以上の状態で2ヶ月間保管した。38日保管後残りの日数の間、放電ランプ35から波長200nm未満の紫外線を放射し、庫内のオゾン濃度が0.3ppmとなるように、点灯1秒、消灯10秒の間隔で1時間/日の断続照射を行った。
比較例として、放電ランプ35を作動させず、他は同様の条件でキャベツを2ヶ月間保管した。
【0063】
その結果、本実施例は2ヶ月間腐敗を低く抑えられた。一方、比較例は40日までは良い鮮度を保ったが、それ以降カビが発生し、急速に腐敗した。
2ヶ月でのカビの発生率は、本実施例が27%、比較例が90%と大きな差が見られ、また、重量歩留まりも本実施例のほうが良かった。
【0064】
(3)キャベツの表面殺菌試験
コンテナの内部に加湿部22を備えたクーラユニット(温度調整部)14を設置し、クーラユニット14の出口に放電ランプ35を配置した。そして、コンテナ内の温度を5℃、相対湿度を90%以上に保つと共に、オゾン濃度が0.35ppmとなるように、放電ランプ35を点灯1秒、消灯10秒に制御し、2時間/日の照射時間で10日間波長200nm未満の真空紫外線を放射した。
この結果、キャベツの表面及び軸部分の一般性菌及びカビの数が大幅に減少した。
【0065】
(4)キャベツの色の変化試験(比較例)
上記試験(3)と同じ試験装置を用い、コンテナ内の温度及び相対湿度を上記試験(3)と同じ条件とし、生鮮品であるキャベツ周囲のオゾン濃度が2ppmとなるように、放電ランプ35を作動させた。放電ランプ35の点灯時間を点灯1秒、消灯1.5秒にセットし、24時間連続で9日間作動させた。その結果、キャベツの表面が変色した。
【0066】
<発生ガスの検査>
一実施形態に係る照射部18としての放電ランプ35は、
図9に示すように、放電ガスが封入されている放電室36aから放射される真空紫外線が空間cに導入された大気中のN
2ガスに吸収されず、N
2ガスを乖離しない。従って、窒素酸化物の発生を抑制できる。
図10は、放電ガスとしてキセノンを用いて波長172nmの真空紫外線を放射する放電ランプを用い、当該放電ランプを用いて発生させたオゾンガスをガスクロマトグラフィで分析した結果を示している。図中、ラインDは上記放電ランプを用いた場合を示し、ラインEは従来公知の放電式オゾナイザを用いてオゾンガスを発生させた場合を示している。
図10に示すように、ラインDでは窒素酸化物の発生が抑制されている。
【0067】
(5)カビに対する照射試験
インキュベータ(保育器)の内部を温度20℃、相対湿度90%に保持し、供試菌株として青カビ(Penicillium属)を用いた。青カビは、菌糸に滅菌水10mlを入れ、胞子を掻き取り、各希釈倍率に希釈した後、PDA培地に100μLずつ塗布し、インキュベータの中に入れ、放電ランプから200nm未満の波長を有する真空紫外線を点灯時間1秒、消灯時間10秒の間隔で断続照射した。
図11は、インキュベータ内のオゾン濃度の推移を示す。
図11におけるオゾン濃度の各山を
図12では「処理区」と称している。
図12は、処理区の数が増えるにつれて、即ち、CT値が増えるにつれてカビのコロニー(塊)数が減少していることを示している。
【0068】
上記試験条件で、供試菌糸として、黒カビ(Cladosporium属)及び大腸菌(Escherichia属)をさらに加えて試験した。CT値を13.3ppm・min(1日目)、36.8ppm・min(2日目)、42.5ppm・min(3日目)となるように調整した。
この結果、3つの供試菌糸とも減少し、特に、大腸菌の減少が著しかった。
【0069】
(6)キャベツ保管試験
2℃の温度に保持された保管庫の中に収穫のキャベツを収納し、保管庫内のキャベツに放電ランプから200nm未満の波長を有する真空紫外線を点灯時間0.5秒、消灯時間20秒の間隔で30分間断続照射した。目標オゾン濃度は0.35ppmとした。30分間の断続照射でCT値は11.1ppm・minとなり、この断続照射を1日2回行い、28日後のCT値は610.5ppm・minとなった。
保管63日後のキャベツの状態は、カビの発生が少なく腐敗が抑制され、かつオゾンによる酸化障害も発現していなかった。従って、この試験では、キャベツの保管期間中CT値は下限値と上限値との間にあったことがわかる。
【0070】
(7)キャベツ保管試験
2℃の温度に保持された保管庫の中に収穫後のキャベツを保管し、保管庫内で放電ランプから200nm未満の波長を有する真空紫外線を点灯時間0.5秒、消灯時間20秒の間隔で60分間断続照射した。目標オゾン濃度は0.35ppmとした。収穫後試験前のキャベツの外観を
図13(A)に示す。
試験開始から29日間60分の断続照射を1日2回行ったところ、29日後のCT値は2919.53ppm・minに達し、全部のキャベツに酸化障害が発現した(第1ステージ)。この状態のキャベツの外観を
図13(B)に示す。
図13(B)において、キャベツの表面に酸化障害oが発現している。
第1ステージ後、断続照射時間を30分/回×1回/日に変更し、さらに29日間継続した(第2ステージ)。第2ステージにおけるCT値は1011.18ppm・minに達し、その結果、試験開始から第2ステージまでのCT値は3930.72ppm・minに達した。第2ステージ後のキャベツの外観は、
図13(C)に示すように、酸化障害oはさらに激しくなっている。
【0071】
上記試験は、キャベツを3グループに分けて実施し、第1ステージ終了後全部のグループで酸化焼けが発生した。
上記試験の結果から、CT上限値を2900ppm・min以下にする必要があることが分かる。
また、第1ステージ後において、カビの発生状況は、グループXが20%、グループYが10%、グループZが10%であった。また、第2ステージ後のカビの発生状況は、グループXが100%、グループYが57%、グループZが74%であった。このようにカビの発生が進んでいる原因は、CT上限値を超えるオゾン等の照射による酸化障害の発現が原因であると考えられる。
オゾン等はあまり浸透性がないため、生鮮品表面のカビを殺菌できるが、葉のように入り組んだ組織に生えるカビを完全に死滅させることはできない。オゾン等による酸化障害によって壊死した葉はいずれ腐ってカビが生えてくる。
【0072】
なお、上記各実施例では、生鮮品保管庫内を0℃以上の温度に設定したが、本発明は、生鮮品保管庫内を0℃未満の低温度としても殺菌効果及び酸化障害の抑制効果を発揮できる。