特許第6484041号(P6484041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484041連接符号を用いた送信装置、受信装置及びチップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484041
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】連接符号を用いた送信装置、受信装置及びチップ
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/29 20060101AFI20190304BHJP
   H03M 13/27 20060101ALI20190304BHJP
   H03M 13/19 20060101ALI20190304BHJP
   H03M 13/15 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H03M13/29
   H03M13/27
   H03M13/19
   H03M13/15
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-10274(P2015-10274)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-134883(P2016-134883A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】蔀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 進
(72)【発明者】
【氏名】成清 善一
(72)【発明者】
【氏名】本田 円香
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】高田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 一彦
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−225164(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0208183(US,A1)
【文献】 特開2009−017160(JP,A)
【文献】 特開2015−177289(JP,A)
【文献】 特開2016−134872(JP,A)
【文献】 特表2013−502095(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/073922(WO,A1)
【文献】 特開2010−183217(JP,A)
【文献】 国際公開第00/048323(WO,A1)
【文献】 特開2010−200247(JP,A)
【文献】 特開2009−181656(JP,A)
【文献】 特開2006−135980(JP,A)
【文献】 特開2009−177775(JP,A)
【文献】 特開2002−237802(JP,A)
【文献】 特開2014−154899(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115056(WO,A1)
【文献】 宮田好邦 他,光通信用LDPC符号の連接化によるエラーフロア対策,電子情報通信学会2008年総合大会講演論文集 通信2,2008年 3月 5日,p.375
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/29
H03M 13/15
H03M 13/19
H03M 13/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信対象のデータに外符号の符号化処理及び内符号の符号化処理を施し、連接符号化データを生成して送信する送信装置において、
前記送信対象のデータを所定数に分割して分割データを生成し、前記分割データ毎に、前記外符号の符号化処理を施して外符号パリティビットを生成し、当該分割データに、対応する前記外符号パリティビットを付加して符号化データを生成し、前記所定数の前記符号化データを連結し、外符号化データを生成する外符号化部と、
所定の規則に従って、前記外符号化部により生成された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが他の符号化データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをインターリーブし、インターリーブ後の外符号化データを生成するビットインターリーブ部と、
前記ビットインターリーブ部により生成されたインターリーブ後の外符号化データに対し、前記内符号である空間結合LDPC符号の符号化処理を施して空間結合LDPC符号パリティビットを生成し、前記インターリーブ後の外符号化データに前記空間結合LDPC符号パリティビットを付加して空間結合LDPC符号化データである前記連接符号化データを生成する内符号化部と、を備え
当該送信装置により送信された前記連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに前記内符号である空間結合LDPC符号の復号処理、前記インターリーブの処理に対応するデインターリーブ処理及び前記外符号の復号処理を施す受信装置により、前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記デインターリーブ処理にて前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化部が、前記送信対象のデータを所定数に分割して前記分割データを生成し、前記ビットインターリーブ部が、前記外符号化データのビットをインターリーブする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
前記ビットインターリーブ部は、
前記外符号化部により生成された外符号化データのビットを、所定の縦横サイズのメモリに対し、縦方向に順番に書き込み、前記メモリから、前記外符号化データのビットを、横方向に順番に読み出し、前記読み出した外符号化データを前記インターリーブ後の外符号化データとして生成する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに内符号の復号処理及び外符号の復号処理を施し、元のデータに復元する受信装置であって、
前記受信した連接符号化データに含まれる空間結合LDPC符号パリティビットを用いて、前記受信した連接符号化データに含まれる外符号化データに対し、空間結合LDPC符号の復号処理を施す内符号復号部と、
請求項1の送信装置におけるインターリーブとは逆の規則に従って、前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが元の符号化データの領域へ戻るように、前記外符号化データのビットをデインターリーブし、デインターリーブ後の外符号化データを生成するビットデインターリーブ部と、
前記ビットデインターリーブ部により生成されたデインターリーブ後の外符号化データに含まれる分割データ及び外符号パリティビットのデータ領域毎に、前記外符号パリティビットを用いて、前記分割データに対し、前記外符号の復号処理を施し、当該外符号の復号処理を施した分割データを連結し、元の送信対象のデータを復元する外符号復号部と、を備え
前記ビットデインターリーブ部は、
前記内符号復号部により施された前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをデインターリーブする、ことを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の受信装置において、
請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信する代わりに、請求項2の送信装置から送信された連接符号化データを受信し、
前記ビットデインターリーブ部は、
前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データのビットを、請求項2の送信装置におけるインターリーブの際に用いたメモリと同じ所定の縦横サイズのメモリに対し、横方向に順番に書き込み、前記メモリから、前記外符号化データのビットを、縦方向に順番に読み出し、前記読み出した外符号化データを前記デインターリーブ後の外符号化データとして生成する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項5】
送信装置に搭載されるチップにおいて、
所定のデータを所定数に分割して分割データを生成し、前記分割データ毎に、外符号の符号化処理を施して外符号パリティビットを生成し、当該分割データに、対応する前記外符号パリティビットを付加して符号化データを生成し、前記所定数の前記符号化データを連結し、外符号化データを生成する外符号化部と、
所定の規則に従って、前記外符号化部により生成された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが他の符号化データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをインターリーブし、インターリーブ後の外符号化データを生成するビットインターリーブ部と、
前記ビットインターリーブ部により生成されたインターリーブ後の外符号化データに対し、内符号である空間結合LDPC符号の符号化処理を施して空間結合LDPC符号パリティビットを生成し、前記インターリーブ後の外符号化データに前記空間結合LDPC符号パリティビットを付加して空間結合LDPC符号化データである連接符号化データを生成する内符号化部と、を備え
当該送信装置により送信された前記連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに前記内符号である空間結合LDPC符号の復号処理、前記インターリーブの処理に対応するデインターリーブ処理及び前記外符号の復号処理を施す受信装置により、前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記デインターリーブ処理にて前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化部が、前記所定のデータを所定数に分割して前記分割データを生成し、前記ビットインターリーブ部が、前記外符号化データのビットをインターリーブする、ことを特徴とするチップ。
【請求項6】
請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信する受信装置に搭載されるチップであって、
前記連接符号化データに含まれる空間結合LDPC符号パリティビットを用いて、前記連接符号化データに含まれる外符号化データに対し、空間結合LDPC符号の復号処理を施す内符号復号部と、
請求項1の送信装置におけるインターリーブとは逆の規則に従って、前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが元の符号化データの領域へ戻るように、前記外符号化データのビットをデインターリーブし、デインターリーブ後の外符号化データを生成するビットデインターリーブ部と、
前記ビットデインターリーブ部により生成されたデインターリーブ後の外符号化データに含まれる分割データ及び外符号パリティビットのデータ領域毎に、前記外符号パリティビットを用いて、前記分割データに対し、外符号の復号処理を施し、当該外符号の復号処理を施した分割データを連結し、元のデータを復元する外符号復号部と、を備え
前記ビットデインターリーブ部は、
前記内符号復号部により施された前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをデインターリーブする、ことを特徴とするチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像、音声等のデータを連接符号化する送信装置、連接符号化されたデータを復号する受信装置、及びチップに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の地上デジタル放送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)は、固定受信向けにハイビジョン(登録商標)放送(または複数標準画質放送)を実現している。次世代の地上デジタル放送方式では、従来のハイビジョン(登録商標)に代わり、3Dハイビジョン放送またはハイビジョン(登録商標)の16倍の解像度を持つスーパーハイビジョン等により、さらに情報量の多いサービスを提供することが求められている。そのため、データ容量の拡大及び誤り訂正技術により、所要C/Nを低減することが課題となっている。
【0003】
近年、LDPC符号(低密度パリティチェック符号:Low Density Parity Check Code)が、シャノン限界に迫る高性能の誤り訂正符号として多くの伝送システムに採用されている。また、LDPC符号の性能を凌駕する符号として、空間結合LDPC符号(SC(Spatially Coupled)−LDPC符号)が注目されている(例えば、非特許文献1を参照)。空間結合LDPC符号は、空間結合符号、空間結合型LDPC符号等とも呼ばれ、規定するパリティ検査行列の構成方法を制約することで性能を向上させたLDPC符号の総称である。
【0004】
LDPC符号は、Sum−Product復号時にエラーフロアが発生しやすいことが知られている。このエラーフロアを除去するためには、LDPC符号とBCH符号(Bose Chaudhuri Hocquenghem Code)とを組み合わせた連接符号を用いて誤り訂正を行うことが一般的である。この連接符号については、既にDVB−T2等で規格化されている。
【0005】
図12は、従来の連接符号化データの構成を示す図であり、LDPC符号とBCH符号とを組み合わせた1符号長のデータを示している。この連接符号化データは、送信対象のデータ、BCH符号のパリティビット及びLDPC符号のパリティビットにより構成される。図12から、従来の連接符号化データでは、2種類のパリティビットが1符号長の連接符号化データ内で連結されていることがわかる。
【0006】
図13は、連接符号を用いた従来の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置101は、BCH符号化部111、LDPC符号化部112及び変調部113を備えている。BCH符号は外符号であり、LDPC符号は内符号である。送信装置101は、送信対象のデータに対し、BCH符号化の後にLDPC符号化を施す連接符号化処理を行うことにより、図12に示した連接符号化データを生成して送信する。尚、図13に示す送信装置101は、本発明に関連する構成部のみ示しており、他の構成部は省略してある。
【0007】
図14は、図13に示す送信装置101による連接符号化処理を示す図である。図13及び図14を参照して、送信装置101のBCH符号化部111は、送信対象のデータを入力し、当該データをBCH符号化してBCH符号パリティビットを生成し、BCH符号化データを生成する(ステップS1401)。
【0008】
LDPC符号化部112は、BCH符号化部111により生成されたBCH符号化データを入力し、当該BCH符号化データをLDPC符号化してLDPC符号パリティビットを生成し、LDPC符号化データ(ここでは連接符号化データ)を生成する(ステップS1402)。
【0009】
変調部113は、LDPC符号化部112により生成された連接符号化データを入力し、連接符号化データに対しQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)等の所定の変調方式により変調処理を施し、変調信号を生成する。そして、変調信号が所定の無線信号に変換され、無線信号が図示しない送信アンテナから送信される。
【0010】
図15は、連接符号を用いた従来の受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置102は、復調部121、LDPC復号部122及びBCH復号部123を備えている。受信装置102は、送信装置101から送信された連接符号化データを受信し、当該連接符号化データに対し、LDPC符号復号の後にBCH符号復号を施す連接符号復号処理により、元のデータを復元する。尚、図15に示す受信装置102は、本発明に関連する構成部のみ示しており、他の構成部は省略してある。
【0011】
図16は、図15に示す受信装置102による連接符号復号処理を示す図である。図15及び図16を参照して、受信装置102の復調部121は、図13に示した送信装置101から送信された無線信号を図示しない受信アンテナにて受信し、無線信号を変調信号に変換する。そして、復調部121は、変調信号に対し、送信装置101の変調部113における所定の変調方式に対応した復調処理を施し、復調した連接符号化データを生成する。
【0012】
LDPC復号部122は、復調部121により復調された連接符号化データを入力し、連接符号化データに含まれるLDPC符号パリティビットを用いてLDPC符号復号を行い、データ及びBCH符号パリティビットの誤りを訂正し、LDPC符号復号データ(復号されたデータ及びBCH符号パリティビット)を生成する(ステップS1601)。
【0013】
BCH復号部123は、LDPC復号部122により復号されたLDPC符号復号データを入力し、LDPC符号復号データに含まれるBCH符号パリティビットを用いてBCH符号復号を行い、データの誤りを訂正し、元のデータに復元する(ステップS1602)。
【0014】
ここで、BCH復号部123は、ステップS1602のBCH符号復号処理において、誤り訂正が可能であるか否かを判定し(ステップS1602−1)、誤り訂正が可能であると判定した場合(ステップS1602−1:Y)、BCH符号復号による誤り訂正を行い(ステップS1602−2)、データを確定する(ステップS1602−3)。
【0015】
一方、BCH復号部123は、ステップS1602−1において、誤り訂正が不可能であると判定した場合(ステップS1602−1:N)、データを非確定とする(ステップS1602−4)。
【0016】
このように、BCH復号部123は、LDPC復号部122によるLDPC符号復号では誤り訂正できなかったビットを誤り訂正するものであり、LDPC符号復号により誤りのビットが残った場合であっても、BCH符号復号によりその誤りのビットを訂正することできる。しかし、BCH符号復号によっても誤りのビットを訂正することができない場合がある。
【0017】
ところで、連接符号を用いることにより誤り訂正能力が向上することは一般的に知られているが、誤り訂正能力をさらに向上させるために、復号処理を繰り返す手法が提案されている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0018】
この手法は、送信装置がリードソロモン符号と畳み込み符号とを組み合わせた連接符号を用いて連接符号化を行い、受信装置がビタビ復号及びリードソロモン復号により連接符号復号による誤り訂正を行う際に、連接符号復号による誤り訂正を繰り返し行うものである。具体的には、ビタビ復号及びリードソロモン復号により生成した誤り訂正可否情報から確定ビット情報(ビタビ復号の出力を一部確定させる情報)を生成し、確定ビット情報に応じて連接符号復号による誤り訂正を繰り返すものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】笠井健太、「空間結合符号とその研究動向」、2014年電子情報通信学会総合大会、基礎・境界講演論文集、AT−2−1、ss-19〜22、2014年3月18〜21日
【非特許文献2】辻琢矢、外2名、「RS復号の誤り訂正可否情報を用いたビタビ復号の改善」、社団法人映像情報メディア学会技術報告、ITE Technical Report、Vol.35,No.31、BCT2011-53(Jul,2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前述のとおり、LDPC符号とBCH符号とを組み合わせた連接符号を用いて誤り訂正を行う手法は、DVB−T2の規格等に従って既に実用化されており、優れた誤り訂正能力を持つことが知られている。
【0021】
しかしながら、空間結合LDPC符号の内符号とBCH符号等の外符号とを組み合わせた連接符号を用いた場合、連接符号復号処理において、空間結合LDPC符号のエラーフロアを発生させる誤りビットがランダムではなく所定領域に固まって発生する。この所定領域に固まって発生する誤りビットは、BCH符号等の単純な外符号だけでは訂正できない場合があり得る。BCH符号等の単純な外符号を用いた復号処理では、復号対象のデータ内の誤りビットの数が誤り訂正可能なビット数を超える場合、誤りビットを訂正することができないからである。このため、誤り訂正手法を改良し、全体のビット誤り率特性を向上させることが所望されていた。
【0022】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、空間結合LDPC符号の内符号とBCH符号等の外符号とを用いて符号化された連接符号化データに対し、空間結合LDPC符号の内符号復号及びBCH符号等の外符号復号を行う際に、全体のビット誤り率特性を向上させることが可能な送信装置、受信装置及びチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するために、請求項1の送信装置は、送信対象のデータに外符号の符号化処理及び内符号の符号化処理を施し、連接符号化データを生成して送信する送信装置において、前記送信対象のデータを所定数に分割して分割データを生成し、前記分割データ毎に、前記外符号の符号化処理を施して外符号パリティビットを生成し、当該分割データに、対応する前記外符号パリティビットを付加して符号化データを生成し、前記所定数の前記符号化データを連結し、外符号化データを生成する外符号化部と、所定の規則に従って、前記外符号化部により生成された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが他の符号化データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをインターリーブし、インターリーブ後の外符号化データを生成するビットインターリーブ部と、前記ビットインターリーブ部により生成されたインターリーブ後の外符号化データに対し、前記内符号である空間結合LDPC符号の符号化処理を施して空間結合LDPC符号パリティビットを生成し、前記インターリーブ後の外符号化データに前記空間結合LDPC符号パリティビットを付加して空間結合LDPC符号化データである前記連接符号化データを生成する内符号化部と、を備え、当該送信装置により送信された前記連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに前記内符号である空間結合LDPC符号の復号処理、前記インターリーブの処理に対応するデインターリーブ処理及び前記外符号の復号処理を施す受信装置により、前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記デインターリーブ処理にて前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化部が、前記送信対象のデータを所定数に分割して前記分割データを生成し、前記ビットインターリーブ部が、前記外符号化データのビットをインターリーブする、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項2の送信装置は、請求項1に記載の送信装置において、前記ビットインターリーブ部が、前記外符号化部により生成された外符号化データのビットを、所定の縦横サイズのメモリに対し、縦方向に順番に書き込み、前記メモリから、前記外符号化データのビットを、横方向に順番に読み出し、前記読み出した外符号化データを前記インターリーブ後の外符号化データとして生成する、ことを特徴とする。
【0025】
さらに、請求項3の受信装置は、請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに内符号の復号処理及び外符号の復号処理を施し、元のデータに復元する受信装置であって、前記受信した連接符号化データに含まれる空間結合LDPC符号パリティビットを用いて、前記受信した連接符号化データに含まれる外符号化データに対し、空間結合LDPC符号の復号処理を施す内符号復号部と、請求項1の送信装置におけるインターリーブとは逆の規則に従って、前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが元の符号化データの領域へ戻るように、前記外符号化データのビットをデインターリーブし、デインターリーブ後の外符号化データを生成するビットデインターリーブ部と、前記ビットデインターリーブ部により生成されたデインターリーブ後の外符号化データに含まれる分割データ及び外符号パリティビットのデータ領域毎に、前記外符号パリティビットを用いて、前記分割データに対し、前記外符号の復号処理を施し、当該外符号の復号処理を施した分割データを連結し、元の送信対象のデータを復元する外符号復号部と、を備え、前記ビットデインターリーブ部が、前記内符号復号部により施された前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをデインターリーブする、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項4の受信装置は、請求項3に記載の受信装置において、請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信する代わりに、請求項2の送信装置から送信された連接符号化データを受信し、前記ビットデインターリーブ部が、前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データのビットを、請求項2の送信装置におけるインターリーブの際に用いたメモリと同じ所定の縦横サイズのメモリに対し、横方向に順番に書き込み、前記メモリから、前記外符号化データのビットを、縦方向に順番に読み出し、前記読み出した外符号化データを前記デインターリーブ後の外符号化データとして生成する、ことを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項5のチップは、送信装置に搭載されるチップにおいて、所定のデータを所定数に分割して分割データを生成し、前記分割データ毎に、外符号の符号化処理を施して外符号パリティビットを生成し、当該分割データに、対応する前記外符号パリティビットを付加して符号化データを生成し、前記所定数の前記符号化データを連結し、外符号化データを生成する外符号化部と、所定の規則に従って、前記外符号化部により生成された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが他の符号化データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをインターリーブし、インターリーブ後の外符号化データを生成するビットインターリーブ部と、前記ビットインターリーブ部により生成されたインターリーブ後の外符号化データに対し、内符号である空間結合LDPC符号の符号化処理を施して空間結合LDPC符号パリティビットを生成し、前記インターリーブ後の外符号化データに前記空間結合LDPC符号パリティビットを付加して空間結合LDPC符号化データである連接符号化データを生成する内符号化部と、を備え、当該送信装置により送信された前記連接符号化データを受信し、前記連接符号化データに前記内符号である空間結合LDPC符号の復号処理、前記インターリーブの処理に対応するデインターリーブ処理及び前記外符号の復号処理を施す受信装置により、前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記デインターリーブ処理にて前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化部が、前記所定のデータを所定数に分割して前記分割データを生成し、前記ビットインターリーブ部が、前記外符号化データのビットをインターリーブする、ことを特徴とする。
【0028】
さらに、請求項6のチップは、請求項1の送信装置から送信された連接符号化データを受信する受信装置に搭載されるチップであって、前記連接符号化データに含まれる空間結合LDPC符号パリティビットを用いて、前記連接符号化データに含まれる外符号化データに対し、空間結合LDPC符号の復号処理を施す内符号復号部と、請求項1の送信装置におけるインターリーブとは逆の規則に従って、前記内符号復号部により復号処理が施された外符号化データを構成する一の符号化データのビットが元の符号化データの領域へ戻るように、前記外符号化データのビットをデインターリーブし、デインターリーブ後の外符号化データを生成するビットデインターリーブ部と、前記ビットデインターリーブ部により生成されたデインターリーブ後の外符号化データに含まれる分割データ及び外符号パリティビットのデータ領域毎に、前記外符号パリティビットを用いて、前記分割データに対し、外符号の復号処理を施し、当該外符号の復号処理を施した分割データを連結し、元のデータを復元する外符号復号部と、を備え、前記ビットデインターリーブ部が、前記内符号復号部により施された前記空間結合LDPC符号の復号処理に伴い所定領域に固まって発生する誤りビットが、前記分割データの領域を超えて他の分割データの領域へ分散するように、前記外符号化データのビットをデインターリーブする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、空間結合LDPC符号の内符号とBCH符号等の外符号とを用いて符号化された連接符号化データに対し、空間結合LDPC符号の内符号復号及びBCH符号等の外符号復号を行う際に、全体のビット誤り率特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による送信装置の構成を示すブロック図である。
図2】連接符号化処理を説明する図である。
図3】連接符号化データの構成を示す図である。
図4】BCH符号化部の処理を示すフローチャートである。
図5】ビットインターリーブ部の処理を示すフローチャートである。
図6】ビットインターリーブ部の処理を説明する図である。
図7】本発明の実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。
図8】連接符号復号処理を説明する図である。
図9】ビットデインターリーブ部の処理を示すフローチャートである。
図10】BCH復号部の処理を示すフローチャートである。
図11】SC−LDPC符号復号後の誤りビットの分布例を示す図である。
図12】従来の連接符号化データの構成を示す図である。
図13】従来の送信装置の構成を示すブロック図である。
図14】従来の連接符号化処理を説明する図である。
図15】従来の受信装置の構成を示すブロック図である。
図16】従来の連接符号復号処理を説明する図である。
図17】コンピュータシミュレーションにより得られたビット誤り率の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、連接符号化処理を行う送信装置において、送信対象のデータを分割し、分割データに対しBCH符号等の外符号を用いて符号化を行う外符号化部と、空間結合LDPC符号の内符号を用いて符号化を行う内符号化部との間に、外符号化部により符号化され連結された外符号化データのビットを分散させるためのビットインターリーブを行うビットインターリーブ部を備えたことを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、連接符号復号処理を行う受信装置において、送信装置から受信した連接符号化データに対し空間結合LDPC符号の内符号を用いて復号を行う内符号復号部と、復号データを分割し、分割後の復号データに対しBCH符号等の外符号を用いて復号を行う外符号復号部との間に、内符号復号部により生成された復号データのビットの位置を元に戻すビットデインターリーブを行うビットデインターリーブ部を備えたことを特徴とする。
【0033】
これにより、空間結合LDPC符号のエラーフロアを発生させる誤りビットを、符号全体に分散させることができる。したがって、所定領域に固まって発生していた誤りビットが分散するから、誤りビットが固まって発生していた分割後の復号データ内の誤りビットを減らすことができ、復号性能を向上させることができる。つまり、空間結合LDPC符号の内符号について、BCH符号等の外符号との連接符号の性能を最大限に引き出すことができ、結果として、全体のビット誤り率特性を向上させることができる。
【0034】
〔送信装置〕
まず、本発明の実施形態による送信装置について説明する。図1は、送信装置の構成を示すブロック図であり、図2は、図1に示す送信装置による連接符号化処理を説明する図である。この送信装置1は、BCH符号化部(外符号化部)11、ビットインターリーブ部12、SC−LDPC符号化部(内符号化部)13及び変調部14を備えている。
【0035】
図3は、連接符号化データの構成を示す図である。この連接符号化データは、図1の送信装置1において、ビットインターリーブ部12が存在しない場合に生成される例であり、SC−LDPC符号とBCH符号とを組み合わせた1符号長のデータの構成を示している。この例では、後述するBCH符号化部11により送信対象のデータが分割される数を3としているが、分割数は2以上であればよい。
【0036】
この連接符号化データは、送信対象のデータが3個に分割された第1のデータ、第1のデータに対するBCH符号パリティビット、分割された第2のデータ、第2のデータに対するBCH符号パリティビット、分割された第3のデータ、第3のデータに対するBCH符号パリティビット、及びSC−LDPC符号パリティビットにより構成される。
【0037】
図3から、この連接符号化データは、BCH符号パリティビットとSC−LDPC符号パリティビットとが連結されておらず、送信対象のデータが分割された分割データを単位として、BCH符号パリティビットが付加されていることがわかる。この連接符号化データの符号長、パリティビット長及びデータ長(データビット長)は、図14に示した従来の連接符号化データと同じであり、誤り訂正符号による符号化率は、従来と変わらない。
【0038】
尚、図1に示す送信装置1により生成される連接符号化データについては、後述するビットインターリーブ部12により、第1のデータ、第1のデータに対するBCH符号パリティビット、第2のデータ、第2のデータに対するBCH符号パリティビット、第3のデータ、及び第3のデータに対するBCH符号パリティビットの各ビットが並び替えられる。詳細については後述する。
【0039】
図1を参照して、送信装置1のBCH符号化部11は、送信対象のデータを入力し、入力したデータを分割し、分割データ毎に、外符号であるBCH符号の符号化処理を施し、BCH符号化データ(外符号化データ)を生成する。そして、BCH符号化部11は、BCH符号化データをビットインターリーブ部12に出力する。
【0040】
図2の例では、BCH符号化部11は、送信対象のデータを3個に分割し、分割データ(D1,D2,D3)毎に、BCH符号の符号化処理を施し、BCH符号化データを生成する。
【0041】
図4は、BCH符号化部11の処理を示すフローチャートである。まず、BCH符号化部11は、送信対象のデータを入力し(ステップS401)、入力した所定長(後述するSC−LDPC符号化部13におけるSC−LDPC符号化単位に対応した送信対象のデータ長)のデータを所定数に均等に分割し、所定数の分割データを生成する(ステップS402)。そして、BCH符号化部11は、所定数の分割データ毎(ブロック毎)に、分割データに対し外符号であるBCH符号のBCH符号化処理を施し、BCH符号パリティビットを生成する。
【0042】
BCH符号化部11は、分割データにBCH符号パリティビットを付加し、ブロック毎の符号化データを生成する(ステップS404)。そして、BCH符号化部11は、所定数(分割数)の符号化データ(分割データ+BCH符号パリティビット)を連結してBCH符号化データを生成し(ステップS405)、BCH符号化データをビットインターリーブ部12に出力する(ステップS406)。
【0043】
これにより、分割データを単位としてBCH符号パリティビットが付加され、BCH符号化データが生成される。図2の例では、BCH符号化処理により、分割データD1に対しBCH符号パリティビットP1が付加され、分割データD2に対しBCH符号パリティビットP2が付加され、分割データD3に対しBCH符号パリティビットP3が付加され、これらの符号化データ(D1+P1,D2+P2,D3+P3)が連結してBCH符号化データが生成される。
【0044】
図1に戻って、ビットインターリーブ部12は、BCH符号化部11からBCH符号化データを入力し、所定の規則に従い、BCH符号化データのビットを並び替えることでビットインターリーブを行う。そして、ビットインターリーブ部12は、ビットインターリーブ後のBCH符号化データをSC−LDPC符号化部13に出力する。
【0045】
図5は、ビットインターリーブ部12の処理を示すフローチャートであり、図6は、ビットインターリーブ部12の処理を説明する図である。ビットインターリーブ部12は、BCH符号化部11からBCH符号化データを入力する(ステップS501)。
【0046】
ビットインターリーブ部12は、BCH符号化データのビットを、所定の縦横サイズのメモリに対し、縦方向に順番に書き込む(ステップS502)。そして、ビットインターリーブ部12は、メモリから、BCH符号化データのビットを、横方向に順番に読み出す(ステップS503)。
【0047】
メモリのサイズは、BCH符号化データの全てを書き込み可能な容量とする。所定の横サイズ(列の数)及び縦サイズ(行の数)は、BCH符号化部11において分割データにBCH符号パリティビットが付与され生成された符号化データ毎(ブロック毎)に、一の符号化データのビットが、他の符号化データの領域へ分散可能なサイズとする。
【0048】
ビットインターリーブ部12は、ステップS502及びステップS503のビットインターリーブ処理の後、メモリから読み出したBCH符号化データをビットインターリーブ後のBCH符号化データとして、SC−LDPC符号化部13に出力する(ステップS504)。
【0049】
これにより、BCH符号化データのビットを、分割データ及びBCH符号パリティビットにより構成される符号化データの領域を越えて、他の符号化データの領域へ分散させることができる。
【0050】
図1に戻って、SC−LDPC符号化部13は、ビットインターリーブ部12からビットインターリーブ後のBCH符号化データを入力し、ビットインターリーブ後のBCH符号化データに対し、内符号であるSC−LDPC符号の検査行列を用いてSC−LDPC符号化処理を施し、SC−LDPC符号パリティビットを生成する。そして、SC−LDPC符号化部13は、ビットインターリーブ後のBCH符号化データにSC−LDPC符号パリティビットを付加してSC−LDPC符号化データである連接符号化データを生成し、連接符号化データを変調部14に出力する。
【0051】
これにより、連接符号化データが生成される。図2の例では、SC−LDPC符号化処理により、ビットインターリーブ後のBCH符号化データBDに対しSC−LDPC符号パリティビットP4が付加され、連接符号化データ(BD+P4)が生成される。
【0052】
変調部14は、SC−LDPC符号化部13から連接符号化データを入力し、連接符号化データに対しQPSK等の所定の変調方式により変調処理を施し、変調信号を生成する。そして、変調信号が所定の無線信号に変換され、無線信号が図示しない送信アンテナから送信される。
【0053】
以上のように、本発明の実施形態による送信装置1によれば、BCH符号化部11は、送信対象の所定長のデータを均等に分割して所定数の分割データを生成し、分割データ毎に、BCH符号の符号化処理を施して符号化データを生成し、分割数の符号化データを連結してBCH符号化データを生成するようにした。
【0054】
また、ビットインターリーブ部12は、所定の規則に従い、BCH符号化データを構成する一の符号化データのビットが、他の符号化データの領域へ分散するように、BCH符号化データのビットインターリーブを行うようにした。そして、SC−LDPC符号化部13は、ビットインターリーブ後のBCH符号化データに対しSC−LDPC符号化処理を施し、連接符号化データを生成するようにした。
【0055】
これにより、BCH符号化データにおける分割単位の符号化データのビットを、当該領域を越えて、他の符号化データの領域へ分散させることができる。そして、送信装置1から連接符号化データを受信する受信装置が、送信装置1におけるSC−LDPC符号化部13に対応する処理(後述するSC−LDPC復号部22の処理)及びビットインターリーブ部12に対応する処理(後述するビットデインターリーブ部23の処理)により、SC−LDPC符号復号の処理にて所定領域に固まって発生する誤りビットを、分割単位の符号化データの領域を超えて他の符号化データの領域へ分散させることができる。そして、受信装置が、BCH符号化部11に対応する処理(後述するBCH復号部24の処理)にて、分散した誤りビットを含む符号化データ毎にBCH符号復号を行うことにより、誤りビットの訂正が容易になり、復号性能を向上させることができる。つまり、空間結合LDPC符号について、BCH符号等との連接符号の性能を最大限に引き出すことができ、結果として、全体のビット誤り率特性を向上させることができる。
【0056】
〔受信装置〕
次に、本発明の実施形態による受信装置について説明する。図7は、受信装置の構成を示すブロック図であり、図8は、図7に示す受信装置による連接符号復号処理を説明する図である。この受信装置2は、復調部21、SC−LDPC復号部(内符号復号部)22、ビットデインターリーブ部23及びBCH復号部(外符号復号部)24を備えている。
【0057】
受信装置2は、図1に示した送信装置1により送信された無線信号を受信アンテナにて受信し、無線信号を変調信号に変換する。受信装置2の復調部21は、変調信号に対して送信装置1の変調部14における所定の変調方式に対応した復調処理を施し、復調した連接符号化データを生成してSC−LDPC復号部22に出力する。
【0058】
SC−LDPC復号部22は、復調部21から復調された連接符号化データを入力し、連接符号化データに含まれるSC−LDPC符号パリティビット、及び内符号であるSC−LDPC符号の検査行列を用いて、連接符号化データに含まれるBCH符号化データ(ビットインターリーブ後のBCH符号化データ)に対し、SC−LDPC符号の復号処理を施す。
【0059】
これにより、BCH符号化データがSC−LDPC符号復号され、BCH符号化データの誤りが訂正される。図8の例では、SC−LDPC符号復号により、連接符号化データ(BCH符号化データBD+SC−LDPC符号パリティビットP4)から、BCH符号化データBDが生成される。
【0060】
SC−LDPC復号部22は、SC−LDPC符号復号したBCH符号化データ(ビットインターリーブ後のBCH符号化データ)をビットデインターリーブ部23に出力する。
【0061】
ビットデインターリーブ部23は、SC−LDPC復号部22からSC−LDPC符号復号されたBCH符号化データ(ビットインターリーブ後のBCH符号化データ)を入力する。そして、ビットデインターリーブ部23は、所定の規則に従い、当該BCH符号化データのビットを、図1に示した送信装置1のビットインターリーブ部12によるビットインターリーブに対応させて並び替えることで(ビットインターリーブ部12とは逆の処理を行うことで)、ビットデインターリーブを行う。そして、ビットデインターリーブ部23は、ビットデインターリーブ後のBCH符号化データをBCH復号部24に出力する。
【0062】
図9は、ビットデインターリーブ部23の処理を示すフローチャートである。ビットデインターリーブ部23は、SC−LDPC復号部22からSC−LDPC符号復号されたBCH符号化データ(ビットインターリーブ後のBCH符号化データ)を入力する(ステップS901)。
【0063】
ビットデインターリーブ部23は、SC−LDPC符号復号されたBCH符号化データのビットを、図1の送信装置1のビットインターリーブ部12が使用するメモリと同じ容量及び縦横サイズのメモリに対し、横方向に順番に書き込む(ステップS902)。この処理は、図5及び図6のステップS503に対応する。
【0064】
ビットデインターリーブ部23は、メモリから、SC−LDPC符号復号されたBCH符号化データのビットを、縦方向に順番に読み出す(ステップS903)。この処理は、図5及び図6のステップS502に対応する。
【0065】
ビットデインターリーブ部23は、ステップS902及びステップS903のビットデインターリーブ処理の後、メモリから読み出したBCH符号化データをビットデインターリーブ後のBCH符号化データとして、BCH復号部24に出力する(ステップS904)。
【0066】
これにより、送信装置1によりビットインターリーブにて分散されたBCH符号化データのビットを、BCH符号復号可能な元の位置に戻すことができる。この場合、SC−LDPC復号部22によりSC−LDPC符号復号されたBCH符号化データには、空間結合LDPC符号のエラーフロアを発生させる誤りビットが所定領域に固まって発生する。しかし、ビットデインターリーブ部23により、BCH符号化データのビットがビットデインターリーブされるから、所定領域に固まって発生した誤りビットは分散することになる。
【0067】
ところで、送信装置1のビットインターリーブ部12によるビットインターリーブでは、BCH符号化データを構成する分割数の符号化データ毎に、一の符号化データのビットが、他の符号化データの領域へ分散する。ビットデインターリーブ部23によるビットデインターリーブでは、このビットインターリーブの逆の処理が行われる。したがって、所定領域に固まって発生した誤りビットは、ビットデインターリーブにより分散し、当該誤りビットを含む符号化データとは異なる元の符号化データの位置に戻ることになる。
【0068】
図7に戻って、BCH復号部24は、ビットデインターリーブ部23からビットデインターリーブ後のBCH符号化データを入力する。そして、BCH復号部24は、ビットデインターリーブ後のBCH符号化データを、当該BCH符号化データに含まれる分割データ及びBCH符号パリティビットのデータ領域毎(ブロック毎)に分割し、データ領域毎に、外符号であるBCH符号の復号処理を施す。そして、BCH復号部24は、データ領域内のBCH符号復号した分割データを連結し、元のデータとして出力する。
【0069】
尚、BCH復号部24は、BCH符号の復号処理の際に、データ領域毎に、データ領域内の誤りビットを訂正可能であるか否かを判定し、誤り訂正可能であると判定したデータ領域について、復号処理を行う。具体的には、BCH復号部24は、データ領域毎の誤りビット数を算出し、算出した誤りビット数が、予め設定された誤り訂正可能なビット数以下である場合に、誤り訂正可能であると判定して復号処理を行う。また、BCH復号部24は、算出した誤りビット数が、予め設定された誤り訂正可能なビット数を超える場合に、誤り訂正可能でないと判定し、訂正可能でないと判定したデータ領域について、復号処理を行わない。この場合、BCH復号部24は、誤りビットを訂正可能か否かの判定を行うことなく、復号処理を行うようにしてもよい。
【0070】
図8の例では、BCH復号部24は、ビットデインターリーブ後のBCH符号化データ(D1+P1+D2+P2+D3+P3)を、分割データ及びBCH符号パリティビットのデータ領域毎に分割する。この場合のデータ領域は、(D1+P1)、(D2+P2)及び(D3+P3)である。BCH復号部24は、データ領域毎に復号処理を施し、BCH符号復号した分割データ(D1,D2,D3)を連結し、元のデータ(D1+D2+D3)に復元する。これにより、分割データD1,D2,D3の誤りが訂正される。
【0071】
図10は、BCH復号部24の処理を示すフローチャートである。まず、BCH復号部24は、ビットデインターリーブ部23からビットデインターリーブ後のBCH符号化データを入力する(ステップS1001)。そして、BCH復号部24は、図1に示した送信装置1のBCH符号化部11により連結された分割データ及びBCH符号パリティビットに対応するデータ領域毎に、ビットデインターリーブ後のBCH符号化データを分割する(ステップS1002)。
【0072】
BCH復号部24は、分割したBCH符号化データ毎に、BCH符号パリティビットを用いて、分割データに対し、外符号であるBCH符号の復号処理を施す(ステップS1003)。この処理は、図4のステップS403に対応する。そして、BCH復号部24は、BCH符号復号した分割データ(復号データ)を連結し(ステップS1004)、元のデータを復元する。この処理は、図4のステップS402に対応する。そして、BCH復号部24は、復元した元のデータを出力する(ステップS1005)。
【0073】
これにより、分割BCH符号化データを単位として、分割データがBCH符号復号され、BCH符号復号された分割データが連結され、元のデータに復元される。
【0074】
尚、BCH符号復号されなかった分割データが存在する場合には、BCH復号部24により復元されたデータ(BCH符号復号されなかった分割データが連結されて構成されたデータ)は、ビットデインターリーブ部23に対応したビットインターリーブの処理が行われ(送信装置1のビットインターリーブ部12と同じ処理が行われ)、SC−LDPC復号部22へ出力されるようにしてもよい。この場合、SC−LDPC復号部22において、再度のSC−LDPC符号復号が行われる。このように、SC−LDPC復号部22、ビットデインターリーブ部23及びBCH復号部24(並びにビットインターリーブの処理)により、BCH復号部24にて全てのデータ領域の誤りビットが訂正されるまで、復号処理が所定回数分繰り返して行われるようにしてもよい。
【0075】
以上のように、本発明の実施形態による受信装置2によれば、SC−LDPC復号部22は、送信装置1のSC−LDPC符号化部13に対応して、送信装置1から送信された連接符号化データに対しSC−LDPC符号の復号処理を施し、SC−LDPC符号復号したBCH符号化データを生成するようにした。
【0076】
また、ビットデインターリーブ部23は、所定の規則に従い、SC−LDPC符号復号されたBCH符号化データのビットを、送信装置1のビットインターリーブ部12によるビットインターリーブとは逆に並び替えることで、ビットデインターリーブを行うようにした。
【0077】
また、BCH復号部24は、送信装置1のBCH符号化部11に対応して、ビットデインターリーブ後のBCH符号化データに対し、BCH符号化データに含まれる分割データ及びBCH符号パリティビットのデータ領域毎に、BCH符号の復号処理を施すようにした。
【0078】
これにより、SC−LDPC符号復号されたBCH符号化データのビットが元の位置に戻されてBCH符号復号される際に、SC−LDPC符号復号の処理にて所定領域に固まって発生する誤りビットを、送信装置1における分割単位の符号化データのデータ領域(分割領域)を超えて他の符号化データのデータ領域へ分散させることができる。したがって、所定領域に固まって発生していた誤りビットが分散するから、誤りビットが固まって発生していたデータ領域内の誤りビットを減らすことができ、誤りビットの訂正が容易になり、復号性能を向上させることができる。
【0079】
ここで、ビットデインターリーブ部23が存在しない場合には、BCH復号部24は、所定領域に固まって発生した誤りビットを含むBCH符号化データに対し、データ領域毎(分割領域毎)に、BCH符号の復号処理を施すことになる。データ領域毎のBCH符号復号処理において、BCH符号による訂正能力を超えた誤りビットが存在する場合には、その誤りを訂正することができない。そこで、データ領域毎のBCH符号復号処理を行う前に、ビットデインターリーブ部23にて誤りビットを他のデータ領域へ分散させるようにしたから、BCH符号による訂正能力を超えた誤りビットがデータ領域に存在する可能性が低くなり、誤りビットの訂正が容易になる。
【0080】
つまり、空間結合LDPC符号について、BCH符号等との連接符号の性能を最大限に引き出すことができ、結果として、全体のビット誤り率特性を向上させることができる。
【0081】
〔誤りビットの分布/コンピュータシミュレーション〕
次に、空間結合LDPC符号のエラーフロアを発生させる誤りビットの分布について、コンピュータシミュレーションにより得られた結果を挙げて説明する。図11は、SC−LDPC符号復号後の誤りビットの分布例を示す図である。横軸は、送信装置1のBCH符号化部11が送信対象の所定長のデータを20個に均等に分割したときの分割データの番号(分割データ番号)を示す。縦軸は、分割データ番号毎に発生した誤りビットの数をカウントした結果(誤りビット数)を示す。
【0082】
このコンピュータシミュレーションは、OFDMをベースとしたものであり、SC−LDPC符号長は237600ビット、符号化率は3/4、繰り返し復号回数は100回、変調パラメータはQPSK、C/Nは4.31(dB)としたものである。この場合の全体のビット誤り率は、3.94E−6となった。
【0083】
図11に示す誤りビットの分布から、空間結合LDPC符号のエラーフロアを発生させる誤りビットは、ランダムではなく所定領域に固まって発生していることがわかる。具体的には、誤りビットは、分割データ番号1〜5の領域ではほとんど発生しておらず、分割データ番号6〜20の領域に偏って発生している。
【0084】
したがって、このように偏って発生するビット誤りを、ビットデインターリーブ部23において分割データ番号1〜20の全体に平滑化することができる。これにより、ビットデインターリーブ部23の後段のBCH復号部24において、分割データ番号1〜20の全体に平滑化されたビット誤りを含むBCH符号化データが、分割データ番号1〜20のデータ領域毎にBCH符号復号される。つまり、ビット誤りが所定領域に固まって発生した状態でBCH符号復号される場合に比べ、誤りビットは訂正され易くなり、復号性能を向上させることができる。
【0085】
〔ビット誤り率/コンピュータシミュレーション〕
次に、コンピュータシミュレーションにより得られたビット誤り率の例について説明する。図17は、そのビット誤り率の例を示す図である。横軸はC/N(dB)を示し、縦軸はビット誤り率を示す。また、四角の折れ線は、従来技術の特性を示し、三角の折れ線は、本発明の実施形態の特性を示す。
【0086】
このコンピュータシミュレーションは、内符号としてSC−LDPC符号、外符号としてBCH符号を用い、変調パラメータをBPSK、符号化率を3/4、BCH符号による訂正ビットの数を16としたものである。
【0087】
図17から、従来技術及び本発明の実施形態のビット誤り率は、C/Nが0.6〜0.73(dB)の範囲において同一であるが、C/Nが0.73(dB)を超えると、本発明の実施形態の方が従来技術よりも小さくなっていることがわかる。図17の右側の拡大図を参照して、同じC/Nの値のときの本発明の実施形態のビット誤り率(三角印の箇所)と従来技術のビット誤り率(四角印の箇所)とを比較すると、本発明の実施形態の方が小さい。この差は、本発明の実施形態によりビット誤り率が改善された程度を示している。このように、本発明の実施形態によれば、従来技術よりもビット誤り率特性を向上させることができる。
【0088】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施形態では、外符号としてBCH符号を用いるようにしたが、これは一例であり、BCH符号以外の符号を用いることができる。例えば、リードソロモン符号を用いるようにしてもよい。
【0089】
また、前記実施形態の図2図3及び図8では、送信装置1のBCH符号化部11により送信対象の所定長のデータが3個に分割され、受信装置2のBCH復号部24により3個のデータ領域のそれぞれについてBCH符号復号が行われる例を示した。本発明は、この数に限定されるものではなく、2個以上に分割する場合に適用がある。
【0090】
また、前記実施形態では、送信装置1のビットインターリーブ部12は、図5及び図6に示したとおり、BCH符号化データのビットを所定の縦横サイズのメモリに書き込み、当該メモリから読み出すことで、BCH符号化データのビットを並び替えるようにした。また、受信装置2のビットデインターリーブ部23は、図9に示したとおり、送信装置1のビットインターリーブ部12に対応して、SC−LDPC符号復号されたBCH符号化データのビットを並び替えるようにした。本発明は、並び替えの規則を、図5図6及び図8に示した規則に限定するものではない。要するに、並び替えの規則は、BCH符号化データのビットを、分割データ及びBCH符号パリティビットにより構成される符号化データの領域(分割領域)を越えて、他の符号化データの領域へ分散させることが可能であればよい。
【0091】
また、前記実施形態において、図1に示した送信装置1のBCH符号化部11から変調部14までの各構成部の処理は、送信装置1に搭載される集積回路であるLSIのチップにより実現される。これらは、個別に1チップ化されていてもよいし、これらの一部または全部が1チップ化されていてもよい。
【0092】
また、LSIの代わりに、集積度の異なるVLSI、ULSI等のチップにより実現されるようにしてもよい。さらに、LSI等のチップに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いるようにしてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いるようにしてもよい。図7に示した受信装置2の復調部21からBCH復号部24までの各構成部の処理についても同様であり、受信装置2に搭載されるチップにより実現される。
【符号の説明】
【0093】
1,101 送信装置
2,102 受信装置
11,111 BCH符号化部
12 ビットインターリーブ部
13 SC−LDPC符号化部
14,113 変調部
21,121 復調部
22 SC−LDPC復号部
23 ビットデインターリーブ部
24,123 BCH復号部
112 LDPC符号化部
122 LDPC復号部
図1
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