特許第6484966号(P6484966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484966ポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484966
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】ポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20190311BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20190311BHJP
   C09D 175/04 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   C08G18/18
   C08G18/09
   !C09D175/04
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-181564(P2014-181564)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-56242(P2016-56242A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東久保 一郎
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−024828(JP,A)
【文献】 特開2001−146509(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/060809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C09D 175/00−175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族および/または脂環族ジイソシアネート(A)、水酸基含有化合物(B)を反応させた後、イソシアヌレート化触媒(C)の存在下でイソシアヌレート化し、次いで、触媒を失活させることにより得ることを特徴とするポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物であって、イソシアヌレート化触媒(C)が一般式1で表される4級アンモニウムギ酸塩(C1)と炭素数4〜13のモノアルコールである希釈剤(C2)を含有することを特徴とするポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物の製造方法
[一般式1]
(式中、R〜Rは、各々独立した炭素数1〜20のアルキル基であり、ヒドロキシル基、フェニル基に置換されていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアヌレート化触媒、該触媒を用いたポリイソシアネート組成物、該組成物の製造方法、及び該組成物を用いた二液型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物を一成分として用いる二液硬化型のウレタン系塗料は、耐候性や耐摩耗性に優れた塗膜を与えることから、従来、建築物、土木構築物等の屋外基材の塗装、自動車の補修、プラスチックの塗装などに使用されている。これらの塗料は、ポリイソシアネートの極性の高さから、一般的に、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶剤のような溶解力の強い強溶剤が用いられていた。
【0003】
これらの強溶剤は臭気が強く、近年は作業環境の改善や地球環境負荷の低減という観点から敬遠される傾向にあり、代替溶剤として酢酸エチルや酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといった脂肪族系溶剤が用いられている。
【0004】
このような背景の中で有機ポリイソシアネートの製造方法は公知であり、アルカリ金属アルコキシドやカルボン酸塩、4級アンモニウムのカルボン酸塩やアルコキシド、ヒドロキシドなどが触媒として多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−162581号公報
【特許文献2】特表2007−528885号公報
【特許文献3】特開2002−284835号公報
【特許文献4】特開平5−170748号公報
【特許文献5】特開平6−166677号公報
【特許文献6】特開平02−006480号公報
【特許文献7】特開昭63−057577号公報
【特許文献8】特開昭62−153277号公報
【特許文献9】特開昭59−36122号公報
【特許文献10】特開昭57−137314号公報
【特許文献11】特開昭55−143978号公報
【特許文献12】特開平08−053526号公報
【特許文献13】特開2011−136912号公報
【特許文献14】特開2011−122015号公報
【0006】
ところが従来の触媒では溶剤に溶解しない物質を発生させる。この不溶解物が有機ポリイソシアネート中に存在すると溶剤に希釈したときに濁りが発生する。
【0007】
カルボン酸塩は触媒毒として酸性物質を添加するとカルボン酸が遊離する。カルボン酸はイソシアネートと反応してアミド化合物となるが、アミド化合物は有機溶剤に溶解しにくいため溶剤希釈時に濁る原因となり溶剤希釈安定性低下をもたらす。
【0008】
4級アンモニウムヒドロキシドを触媒として用いた場合、触媒毒として酸性物質を添加すると水が遊離する。水はイソシアネートと反応してウレア化合物となるが、ウレア化合物は有機溶剤に溶解しにくいため溶剤希釈時に濁る原因となり溶剤希釈安定性低下をもたらす。
【0009】
アルカリ金属アルコキシドや4級アンモニウムアルコキシドは触媒活性が強すぎるため触媒添加と同時に局所的な反応が進行し、高分子量体が生成し有機ポリイソシアネートに浮遊物が生じる。
【0010】
そこで触媒のアニオン成分に先行文献に記載の4級アンモニウムギ酸塩を使用すると、他のカルボン酸とは異なり、2分子のイソシアネート基と反応してホルミルウレア基を形成する。ホルミルウレア基を形成すると有機溶剤に溶解するので希釈安定性は良好となる。ギ酸以外のカルボン酸ではアシルウレア化を促進する触媒を使用するか、100℃以上の高い温度で長時間反応させなければアシルウレア基を形成しないことが先行文献に記載されているが、アシルウレア化を促進する触媒は金属塩であるので、これを使用することは溶剤希釈安定性を低下させる原因となり、高い温度で長時間反応させることは着色等の不具合が発生する原因となりうる。
【0011】
また触媒を溶剤に希釈せずにジイソシアネート中に添加すると結晶状態になっている4級アンモニウムギ酸塩がジイソシアネートに溶解する前に結晶表面で局所的に高分子量化が進行し、有機溶剤に溶解しない高分子量体が生成してしまう。希釈する溶剤としてはアルコールなどの極性溶剤が用いられるが、水溶性が強い低分子量アルコールやジオールでは、ジイソシアネートへの拡散速度が遅くなるため触媒投入直後に触媒が高濃度となる部分が発生し、局所的に高分子量化が進行するため、有機溶剤に溶解しない高分子量体が生成してしまう。
【0012】
また、熱を加えた時の着色や、経時の着色を抑制するためには酸化防止剤を添加することが有効であることは知られている。しかし、有機ポリイソシアネートを有機溶剤で希釈して使用する場合、希釈溶剤には微量の水分が含まれている。この水分が耐加水分解性の悪い酸化防止剤を分解するため,希釈した直後には溶解していても時間が経過すると不溶解物が発生しやすい。そのため,使用する毎に有機溶剤で希釈する必要があるため作業性に劣る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上記問題点を解決して、低い色数で酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの脂肪族系有機溶剤に希釈しても濁りが発生せず,さらに希釈した状態で時間が経過しても不溶解物が発生しないポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジイソシアネートと水酸基含有化合物を反応させた後、4級アンモニウムギ酸塩を触媒にすることにより、低い色数で溶剤希釈時の濁りが発生しないポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物を製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)脂肪族および/または脂環族ジイソシアネート(A)、水酸基含有化合物(B)を反応させた後、イソシアヌレート化触媒(C)の存在下でイソシアヌレート化し、次いで、触媒を失活させることにより得ることを特徴とするポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物であって、イソシアヌレート化触媒(C)が一般式1で表される4級アンモニウムギ酸塩(C1)と炭素数4〜13のモノアルコールである希釈剤(C2)を含有することを特徴とするポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物。
[一般式1]
(式中、R〜Rは、各々独立した炭素数1〜20のアルキル基であり、ヒドロキシル基、フェニル基に置換されていてもよい。)
【発明の効果】
【0016】
本発明者らは、検討を重ねた結果、特定の4級アンモニウムギ酸塩化合物をイソシアヌレート化触媒として使用し、特定の触媒希釈溶剤、添加剤を使用することにより、色数が低く、さらにメチルエチルケトンや酢酸エチル、酢酸ブチルといった、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤の代替品として使用される溶剤に希釈した場合においても濁りを発生することのない、ポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物を得ることができた。そのため、得られたポリイソシアネート組成物とポリオールとを含む二液型塗料組成物は、ポリイソシアネート由来の着色が少なく、溶剤に希釈しても濁りが発生せず、さらに希釈後に時間が経過しても不溶解物を発生しないことから使用する直前ではなく予め溶剤に希釈しておくことが可能であるので作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
<脂肪族および/または脂環族ジイソシアネート(A)>
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0019】
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0020】
<水酸基含有化合物(B)>
水酸基含有化合物(B)の具体例としては、一価アルコール(1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、2−オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等)、二価アルコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等)、三価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン等)、四価アルコール(エリスリトール、ペンタエリスリトール等)、五価アルコール(アラブット、キシリット等)、六価アルコール(ソルビット、マンニッヒ等)等が挙げられ、単独または2種以上を併用することができる。これらの中で、一価もしくは二価のアルコールを使用すると粘度を低く抑えることができるので好ましい。
【0021】
<イソシアヌレート化触媒(C)>
本発明において、一般式(1)で示される4級アンモニウムギ酸塩のR〜Rは、各々独立した炭素数1〜20のアルキル基であり、場合によりヒドロキシル基、フェニル基に置換されていてもよい。又は、R〜Rは、炭素数1〜20のアルキル基を含み、且つR〜Rのうちの何れか2個が炭素、酸素又は窒素原子を介したヘテロ環を形成しており、場合によりヒドロキシル基、フェニル基に置換されていてもよく、R〜Rの合計炭素数は4〜50であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、ベンジル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、アンモニウムイオンは、例えばピペラジン、モルホリン、ピロリジン、キヌクリジン又はジアザービシクロ[2.2.2]オクタン由来の1個以上の環を有する環系の一部でもあり得る。
【0022】
一般式(1)で表される4級アンモニウムギ酸塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムギ酸塩、メチルトリエチルアンモニウムギ酸塩、エチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、プロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ブチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、オクチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ノニルトリメチルアンモニウムギ酸塩、デシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、トリデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、テトラデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムギ酸塩、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムギ酸塩、トリブチルメチルアンモニウムギ酸塩、トリオクチルメチルアンモニウムギ酸塩、トリドデシルメチルアンモニウムギ酸塩、テトラブチルアンモニウムギ酸塩、テトラヘキシルアンモニウムギ酸塩、テトラオクチルアンモニウムギ酸塩、テトラドデシルアンモニウムギ酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウムギ酸塩、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2.2.2]オクタニウムギ酸塩、又は1、1−ジメチル−4−メチルピペリジニウムギ酸塩等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
これら4級アンモニウムギ酸塩の化合物のうち、イソシアヌレート化反応の触媒活性が高く、有機溶剤への希釈安定性に優れるポリイソシアネート組成物が得られる観点から、テトラメチルアンモニウムギ酸塩、メチルトリエチルアンモニウムギ酸塩、エチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、プロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ブチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、オクチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ノニルトリメチルアンモニウムギ酸塩、デシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムギ酸塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムギ酸塩、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムギ酸塩が好ましい。
【0024】
触媒を希釈する炭素数4から13の一価アルコール(C2)としては、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール等を挙げることができ、単独または2種以上を併用することができる。アルキル基の炭素数が上限値を超えると結晶性が高まるため貯蔵安定性が低下する恐れがある。アルキル基の炭素数が下限値を下回ると、希釈された触媒とジイソシアネート(A)との溶解性が悪くなるため、均一に溶解しにくくなり、局所的に反応を起こし不溶解物を発生させる恐れがある。また、アルキル基以外の結合基を有する場合には、低極性有機溶剤に対する溶解性が低下し好ましくない。
【0025】
さらに触媒を希釈する炭素数4〜13の一価アルコール(C2)と併用して活性水素基をもたない有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。
【0026】
添加剤(D)として亜リン酸エステル系酸化防止剤であって、リン原子に2−tert−ブチルフェノキシ基が結合するものとしてはトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)、3、9-ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)‐2,4,8,10‐テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(商品名;アデカスタブPEP−36、アデカ社製)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸(商品名;IRGAFOS 38、BASF社製)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4−ジイルビスホスフォナイト(商品名;IRGAFOS P−EPQ、BASF社製)等を挙げることができ、単独または2種以上を併用することができる。亜リン酸エステル系酸化防止剤を添加しないと長期貯蔵後に変色する原因となるため添加することが好ましいが、リン原子に2−tert−ブチルフェノキシ基が結合していないものは溶剤に微量含まれる水分との加水分解反応により不溶解物を発生し、溶剤希釈安定性が悪化する原因となる。
【0027】
少なくとも1種の立体障害型フェノールを、添加することは亜リン酸エステル系酸化防止剤との相乗効果により経時での変色をさらに抑制するので好ましい。立体障害型フェノールの例としてはペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)、チオジエチルンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1035、BASF社製)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox 1076、BASF社製)、N、N‘−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](Irganox 1098、BASF社製)、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル(Irganox 1135、BASF社製)、3,3’ ,3” ,5,5’ ,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(Irganox 1330、BASF社製)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](Irganox 245、BASF社製)、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 259、BASF社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2−4−6(1H,3H,5H)−トリオン(Irganox 3114、BASF社製)などが挙げられる。
【0028】
次に、ポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。尚、ポリイソシアネート組成物の製造方法は、以下に代表されるような第1工程〜第4工程を経て製造される。第1工程:有機ジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)を水酸基に対して、イソシアネート基が過剰になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下、又は非存在下、20〜120℃でウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。
第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒(C)を仕込み、50〜90℃にてイソシアヌレート化を行ってイソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する。
第3工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIに反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。これら第1工程〜第3工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
第4工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIを薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネートの含有量を1質量%未満になるまで除去する。
【0029】
<第1工程:イソシアネート基末端プレポリマーIを製造する工程>
第1工程における「イソシアネート基が過剰になる量」とは、原料仕込みの際、有機ジイソシアネート(A)のイソシアネート基と水酸基含有化合物(B)の水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で20〜7000になるように仕込むことが好ましく、更に好ましくは、R=25〜5000になるように仕込むことが好ましい。上限を超える場合には、反応性が低下することから反応時間が長くなり、着色等の不具合を生じる場合がある。下限未満の場合には、水酸基含有化合物(B)との反応物であるウレタン基含有ポリイソシアネートやアロファネート基含有化合物の生成量が多くなり、イソシアネート含有量の低下やポリイソシアヌレート含有量の低下による耐候性の低下を招く恐れがある。
【0030】
また、ウレタン化反応の反応温度は、20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。尚、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。
<ウレタン化触媒>
ウレタン化に使用できる触媒の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、第3工程で使用される反応停止剤と反応し、溶剤希釈安定性を悪化させるカルボン酸成分が生成しない範囲で、単独又は2種以上併用することができる。
【0031】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、及び温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは0.1〜2時間で十分である。尚、反応時間が長くなるに従い着色等の不具合を生じる場合がある。
【0032】
<第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する工程>
第2工程におけるイソシアヌレート化触媒(C)の使用量は、有機ジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)との合計質量に対して0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.1質量%がより好ましい。下限未満の場合には、イソシアヌレート化反応が速やかに進行せず、着色等の不具合を生じる場合がある。また、上限値を超える場合には、反応の制御が困難になる恐れがあり、局所的な反応により高分子量体が発生し、溶剤希釈安定性の低下、反応熱による温度上昇によりイソシアヌレート化温度の上限値を超えることに起因する着色等の不具合や、イソシアヌレート化反応を目標通りに停止することが困難となり高粘度となる恐れがある。
【0033】
また、イソシアヌレート化反応の反応温度は40〜100℃、好ましくは50〜90℃である。下限未満の場合には、アミド型重合体が多量に発生するため粘度の上昇を招く恐れがある。上限値を超える場合には、着色等の不具合を生じる恐れがある。
【0034】
また、ポリイソシアネート組成物の製造においては、有機溶媒等を含まずに反応を行う方法や有機溶媒の存在下で反応を行う方法が適宜選ばれる。
有機溶媒の存在下で反応を行う場合には、反応に影響を与えない有機溶媒を用いることが好ましい。
【0035】
<製造に使用する有機溶媒>
製造に使用する有機溶媒の具体例としては、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、製造で使用した有機溶媒は、第4工程における遊離の有機ジイソシアネート(B)の除去時に同時に除去される。
【0036】
<第3工程:反応停止工程>
第3工程におけるに反応停止剤としては、触媒の活性を失活させる作用があり、反応終了後、速やかに添加される。
<反応停止剤>
反応停止剤の具体例としては、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸およびこれらのエステル類、酸性リン酸エステル類、アシルハライド、アルキルハライド等公知の化合物が使用される。これらの反応停止剤は、単独又は2種以上を併用することができる。
【0037】
また、反応停止剤の添加量としては、反応停止剤や触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5〜10当量となるのが好ましく、0.8〜5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が少ない場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、多すぎる場合は、ポリイソシアネート組成物が着色する場合がある。
【0038】
<第4工程:精製工程>
第4工程の精製工程では、反応混合物中に存在している遊離の未反応の有機ジイソシアネート(A)を、例えば、10〜100Paの高真空下、120〜150℃での薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、残留含有率を1.0質量%以下にされる。尚、有機ジイソシアネート(A)の残留含有率が上限値を超える場合は、臭気や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0039】
本発明により得られたポリイソシアヌレート変性ポリイソシアネート組成物は、ポリウレタン塗料、例えば1成分型、2成分型、放射線硬化型、ブロックイソシアネートを製造するために使用することができ、それと共に製造される塗料は、種々の基板(例えば、木、紙、織布、不織布、皮革、プラスチック表面、ガラス、セラミック、金属)をコーティングするために使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−1を0.048g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−1を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−1はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3010mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.14質量%であった。PI−1を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−1 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.4度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.4度であった。
【0042】
<実施例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を995gと、1,3−ブタンジオール(ダイセル工業社製)を5gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−2を0.065g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−2を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−2はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2950mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.13質量%であった。PI−2を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−2 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.4度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.4度であった。
【0043】
<実施例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を999gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を1gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−3を0.087g添加し、60℃でNCO含有量が45.0%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−3を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−3はNCO含有量が23.1質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は900mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.15質量%であった。PI−3を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−3 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.3度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.3度であった。
【0044】
<実施例4>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−3を0.087g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−4を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−4はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2940mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.15質量%であった。PI−4を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると40(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−4 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.4度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.4度であった。
【0045】
<比較例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−4を0.105g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−5を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−5はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2940mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.15質量%であった。PI−5を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−5 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると1.0度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると1.1度であった。
【0046】
<比較例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−5を0.093g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−6を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−6はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3040mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.14質量%であった。PI−6を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−6 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.8度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.8度であった。
【0047】
<比較例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−6を0.034g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−7を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−7はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3090mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は1、遊離HDI含有量は0.13質量%であった。PI−7を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−7 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると2.3度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると3.2度であった。
【0048】
<比較例4>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−7を0.087g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−8を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−8はNCO含有量が22.1質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2970mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.14質量%であった。PI−8を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−8 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると1.1度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると1.2度であった。
【0049】
<比較例5>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒CAT−8を0.065g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名;JP−508、城北化学工業社製)を0.0128g添加し停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−9を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−9はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2990mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.15質量%であった。PI−9を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で6ヶ月間保存し、再度色数を測定すると20(APHA)であった。このポリイソシアネート組成物PI−9 20gを酢酸エチル80gに溶かし、濁度を測定すると0.7度であった。さらにこの溶液を窒素パージ後に密栓し、50℃雰囲気下で2週間保存し、再度濁度を測定すると0.7度であった。
【0050】
イソシアヌレート化触媒組成を表1に、各実施例、比較例の組成及び性状を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
<濁度測定>
薄膜蒸留後のポリイソシアネート組成物の濁度測定は、JIS−K0101の記載に基づき、カオリン濁度を測定した。また,溶剤希釈後の濁度の測定は、TR−55(笠原理化工業社製濁度計)を用い、水道法水質基準(平成15年厚生労働省令第101号)に準拠したポリスチレン濁度を測定した。20%濁度0.5度以下を合格とした。