特許第6484983号(P6484983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484983
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20190311BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20190311BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190311BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20190311BHJP
【FI】
   H01L33/62
   H01L21/60 311S
   H01L33/56
   H01L33/54
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-202564(P2014-202564)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72525(P2016-72525A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大湯 孝寛
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−225597(JP,A)
【文献】 特許第3904058(JP,B2)
【文献】 特開平11−297752(JP,A)
【文献】 特開2005−101125(JP,A)
【文献】 特開2000−133683(JP,A)
【文献】 特開2008−177477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に離間して形成された少なくとも一対の配線部を有する基板と、
異方性導電部材を介して、前記一対の配線部上に接合された発光素子と
前記異方性導電部材の下面に対向する位置で前記基板上に塗布して設けられた多孔質部と
前記発光素子を被覆する封止樹脂と、を備え、
前記多孔質部は、前記封止樹脂の下方に対向し、前記発光素子の直下の位置から前記封止樹脂の端部の位置まで、前記配線部の離間する間隙内に設けられた発光装置。
【請求項2】
前記多孔質部は、多孔材料を含有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記多孔質部は、平面視で前記異方性導電部材の下面に対向する位置から前記封止樹脂の端部に対向する位置に亘って前記配線部上に設けられている請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
平面視において、前記封止樹脂が円形であり、前記発光素子は前記封止樹脂の中心部に設けられており、前記間隙は、前記封止樹脂の直径に対応する位置に設けられており、前記多孔質部は、前記間隙内に設けられるとともに、前記封止樹脂の外側にまで延長されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記多孔質部は、ゼオライト、活性炭、多孔質シリカ、多孔質ガラス、SUS系多孔質金属、Cu系多孔質金属、Ni系多孔質金属、多孔質アルミナおよびSiCのいずれかである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記多孔質部は、接着剤を介して前記一対の配線部の間の間隙内に設けられる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
光を反射する反射材料層が、前記発光素子が接合される接合領域以外の前記配線部上および前記基板上に設けられ、
前記多孔質部は、前記反射材料層を介して設けられる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基板は、基体と、前記基体の一方の面に接着層を介して設けた前記配線部とを備え、前記多孔質部は、前記基板の接着層上に設けられる請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
基体上に2つの配線部が離間して間隙を形成した少なくとも一対の前記配線部を有する基板を準備する基板準備工程と、
対の前記配線部上に異方性導電部材を配置する異方性導電部材配置工程と、
前記異方性導電部材を介して、発光素子を一対の前記配線部上に接合する発光素子接合工程と
前記異方性導電部材配置工程の前に、前記異方性導電部材の下面に対向する位置で前記基板上に多孔材料を含む多孔質部を塗布して形成する多孔質部形成工程と、
前記発光素子接合工程の後に、前記異方性導電部材および前記発光素子を封止樹脂で被覆する封止樹脂形成工程と、を含み、
前記多孔質部形成工程は、前記発光素子の直下の位置から前記封止樹脂の端部の位置までの前記間隙内に前記多孔材料を設ける発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記多孔質部形成工程において、前記多孔質部は平面視で前記異方性導電部材の下面に対向する位置から前記封止樹脂の端部に対向する位置に亘って設ける請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
平面視において、前記封止樹脂が円形であり、前記発光素子は前記封止樹脂の中心部に設けられており、前記間隙は、前記封止樹脂の直径に対応する位置に設けられ、前記封止樹脂の外側にまで延長して設けられ、
前記多孔質部形成工程において、前記多孔質部は、前記封止樹脂の外側にまで延長されるように前記間隙内に設けられる請求項9又は請求項10のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板準備工程において、前記基板は、前記発光素子を接合する接合領域以外の前記配線部上および前記基板上に、前記発光素子からの光を反射する反射材料層を有し、
前記多孔質部形成工程において、前記多孔質部は、前記反射材料層上、あるいは、前記反射材料層上および前記間隙内に、形成される請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記多孔質部形成工程は、基体に接着層を介して前記配線部が形成されている前記基板において当該接着層上に前記多孔質部を形成する請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)等の発光素子を使用する発光装置が各種の光源として利用されている。
このような発光装置としては、例えば異方性導電部材(ACP:Anisotropic Conductive Paste)を介して、基板上の配線部に発光素子を実装し、これらを封止樹脂で被覆した構成が知られている。
【0003】
ここで、上記の発光装置は、基板上および配線部上にペースト状の異方性導電部材を配置した後、加熱しながら発光素子を圧着し、異方性導電部材を硬化して接合する。そのため、加熱圧着の際に、異方性導電部材に含まれる溶媒等が気化し、配線部間に充填された異方性導電部材とその他の部材との界面等に気泡による空洞(ボイド)が発生する場合がある。また、発光素子の圧着中は、当該発光素子の中央部(間隙の上方)が圧力に応じて下方向に変形した状態となる。そのため、圧着が終了して発光素子の変形が元に戻った反動で異方性導電部材内が減圧状態となり、気泡による空洞が発生する場合もある。
【0004】
従来、前記したような半導体素子の空洞の発生を防止するために、基板の厚さ方向に通気可能な孔を穿設する方法(特許文献1参照)や、基板を被覆する保護膜に空洞内の気泡を排出するための溝を形成する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−343844号公報
【特許文献2】特開2005−101125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1または特許文献2に係る方法を上記の発光装置に適用した場合、異方性導電部材あるいは封止樹脂が前記した孔や溝に入り込み、通気が困難となる。
【0007】
また、本願発明者らは、このような気泡による空洞を含む発光装置を駆動させると、発光素子の温度上昇に伴って気泡が膨張して、気泡が外部に抜けようとするため、発光素子と封止樹脂との界面に空気層が形成され、光出力が低下する等の不具合が生じることを見出した。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、仮に異方性導電部材とその他の部材との界面等に空洞が存在して駆動時に熱により空洞中の気泡が移動しても、その気泡を効果的に排出することができ、光出力が低減しにくい発光装置およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の一実施形態に係る発光装置は、基体上に離間して形成された少なくとも一対の配線部を有する基板と、異方性導電部材を介して、前記一対の配線部上に接合された発光素子と、を備え、前記異方性導電部材の下面に対向する位置に設けられた多孔質部を有する構成とした。
【0010】
また、前記課題を解決するために本発明に係る発光装置の製造方法は、基体上に2つの配線部が離間して間隙を形成した少なくとも一対の前記配線部を有する基板を準備する基板準備工程と、前記一対の配線部上に異方性導電部材を配置する異方性導電部材配置工程と、前記異方性導電部材を介して、発光素子を前記一対の配線部上に接合する発光素子接合工程と、を含み、前記異方性導電部材配置工程の前に、前記異方性導電部材の下面に対向する位置に多孔材料を含む多孔質部を形成する多孔質部形成工程をさらに含むこととした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発光装置によれば、多孔質部により、異方性導電部材とその他の部材との界面等に空洞が存在し、その空洞から駆動時の熱で膨張して移動する気泡があっても、多孔材料により形成される多孔質部を通して、その気泡を外部に排出できる。
【0012】
本発明に係る発光装置の製造方法によれば、異方性導電部材を配置する前に多孔質部を設ける多孔質部形成工程を行うので、封止樹脂の外まで多孔質部を通して、異方性導電部材を用いる場合に発生することがある気泡を外部に排出できる。そのため、本発明に係る発光装置の製造方法では、既存の基板等構成に機械加工をすることなく、かつ、大きな製造工程の変更なく、発光素子と封止樹脂との界面に空気層が形成されず、光出力の低下等の不具合を低減した発光装置の製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】第1実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1B】第1実施形態に係る発光装置の構成を示す図であって、図1AにおけるAの部分を拡大した拡大断面図である。
図2】第1実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図である。
図3A】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、基板準備工程を模式的に示す平面図である。
図3B】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、多孔質部形成工程を模式的に示す平面図である。
図3C】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、異方性導電部材配置工程を模式的に示す平面図である。
図3D】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、発光素子接合工程を模式的に示す平面図である。
図3E】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、封止樹脂形成工程を模式的に示す平面図である。
図4】第2実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す断面図である。
図5A】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、基板準備工程を模式的に示す平面図である。
図5B】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、反射材料層形成工程を模式的に示す平面図である。
図5C】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、多孔質部形成工程を模式的に示す平面図である。
図5D】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、異方性導電部材配置工程を模式的に示す平面図である。
図5E】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、発光素子接合工程を模式的に示す平面図である。
図5F】第2実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図であって、封止樹脂形成工程を模式的に示す平面図である。
図6A】その他の実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図である。
図6B】その他の実施形態に係る発光装置のA1の部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図6C】その他の実施形態に係る発光装置を示す図であって、図3AのX−X線の断面状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態の一例となる発光装置およびその製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係等が誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明では、同一の名称および符号については原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略することとする。
【0015】
<第1実施形態>
[発光装置の構成]
本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成について、図1および図2を参照しながら説明する。発光装置1は、例えば表示装置や照明装置の光源として利用できるものである。発光装置1は、図1Aに示すように、基板10と、配線部20と、異方性導電部材30と、多孔材料41を設けた多孔質部40と、発光素子50と、封止樹脂60と、を備えている。
【0016】
基板10は、発光装置1を構成する各部材を設置するためのものである。基板10は、図1Aに示すように、樹脂層からなる基体11と、接着層12を介して、基体11の一方の面に形成される配線部20とを備えている。なお、前記した「基体11の一方の面」とは、基体11における発光素子50側の面のことを意味している。基体11の素材としては、特に限定されず、絶縁性のセラミックスや樹脂等を用いることができる。
【0017】
また、基体11として、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、不飽和ポリエチレン、ガラスエポキシ等の樹脂フィルム等の可撓性または柔軟性を有する樹脂材料を用いる場合には、発光素子の実装には、半田等に比べて低温で接合可能な、異方性導電部材を用いることが好ましい。しかし、異方性導電部材30の圧着時に、基体11が上下方向にたわみ、圧着終了後に元に戻ることで、異方性導電部材30と基体11または配線部20との間に空洞が発生しやすくなる。そのため、異方性導電部材30を用いた場合に発生する空洞の悪影響を低減することができる本発明は、可撓性または柔軟性を有する樹脂材料を基体に用いる発光装置に特に好ましく適用することができる。
接着層12は、配線部20を基体11の一方の面に接着するためのものであり、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂等で構成されている。なお、基板10の厚さは特に限定されず、目的および用途に応じて任意の厚さで形成することができる。
【0018】
配線部20は、外部の電源と発光素子50とを電気的に接続するものである。本実施形態の配線部20は、図1Aおよび図2に示すように、発光素子50の正負一対の電極51に対応して一対で構成され、基板10の接着層12上に所定の間隙Gだけ離間して形成されている。この間隙Gは、後記する封止樹脂60の直径に対応する位置に設けられている。配線部20は、図1Aに示すように断面視すると、所定の厚さの膜状に形成されている。また、配線部20は、図2に示すように平面視すると、円形状の領域と、当該円形状の領域から基板10の左右の端部にそれぞれ伸びる線状の領域とから構成され、間隙Gが前記円形状の領域を2つに分割している。そして、配線部20の円形状の領域は、後記する封止樹脂60が被覆される円形状の領域と同等あるいはそれよりも広い面積を有しており、周縁が封止樹脂60の外に露出している。
【0019】
配線部20の間隙G内では、図2に示すように、基板10の最上面である接着層12が露出し、当該接着層12上に多孔質部40が形成されている。この多孔質部40の詳細については後記する。配線部20の素材としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、スズおよびそれらの合金、またはそれらの積層等を用いることができる。配線部の20の最表面は、金またはスズであると好ましい。これにより、後述する異方性導電部材30中の導電粒子32との接合を良好に行うことができる。また、配線部20の厚さは特に限定されず、目的および用途に応じて任意の厚さで形成することができる。配線部20が厚く、基体11と配線部20の上面の高さの差が大きいほど、異方性導電部材30とその他の部材との界面等に空洞が発生しやすい。そのため、配線部20の厚みは、10〜100μm、20〜80μm、30〜50μm程度であることが好ましい。
【0020】
また、前記した間隙Gの幅は、例えば150μm〜300μmの範囲内とすることができる。配線部20および間隙Gの平面視における形状は、特に限定されないが、図1に示すように、間隙Gが異方性導電部材30と対向する部分において屈曲部や幅広部を有さない、つまり直線状または曲線状の形状であることが好ましい。間隙Gが屈曲部や幅広部を有する場合、その周辺の異方性導電部材30とその他の部材との界面等に空洞が発生しやすくなる。しかし、間隙Gを直線状または曲線状の屈曲部を有さない形状にすることにより、異方性導電部材30とその他の部材との界面等の空洞の発生を抑えることができる。なお、間隙Gが屈曲部や幅広部を有する場合には、その部分に接する、ないし隣接するように、後述する多孔質部を設けることが好ましい。
【0021】
異方性導電部材30は、発光素子50を基板10に接着して固定するとともに、発光素子50と配線部20とを導通させるためのものである。本実施形態の異方性導電部材30は、通常、図1Aおよび図1Bに示すように断面視すると、一対の配線部20上、多孔質部40上および間隙G内に亘って配置されている。また、異方性導電部材30は、図2に示すように平面視すると、一対の配線部20上、多孔質部40上および間隙Gを包含するように円形状の領域に形成されている。そして、異方性導電部材30は、接合対象である発光素子50よりも広い面積に配置されている。
【0022】
異方性導電部材30は、発光素子50の接着と導通の2つの機能を兼ね備えるため、接着剤としての透光性樹脂31と、その中に混入された導通部材としての導電粒子32と、の複合物を少なくとも含有する。
透光性樹脂31の素材としては、耐光性および耐熱性に優れるものが好ましく、具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂等を用いることができる。また、導電粒子32としては、少なくとも一部が磁性体であるものが好ましく、具体的には表面にニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ステンレス等の導電体を有する材料を用いることができる。導電粒子32の形状や大きさは特に限定されず、例えば図1Aに示すように、球状や、針状または不定形のもの、1μm〜20μmの大きさのものを用いることができる。
【0023】
なお、導電粒子32は、樹脂から成るコアと、このコアを被覆する金属から成る導電層とにより構成されていてもよい。コアに柔軟性を有する樹脂を用いることにより、圧着による接合を容易に行うことができる。コアの材料は、例えばメタクリル樹脂を用いることができ、導電層は前記した金属を用いることができる。導電層は、無電解メッキ、電解メッキ、メカノフュージョン(メカノケミカル的反応)などにより、形成可能である。
なお、導電粒子32は、異方性導電部材30中に略均一な濃度で存在しているが、図においては一部、例えば間隙G内等において図示を省略している。
【0024】
異方性導電部材30中には、光反射率を高めるため、酸化チタンや酸化亜鉛等の光反射材を含有させてもよい。
異方性導電部材30の配置領域は、図2に示すような平面視において円形のものに限定されない。また、発光素子より広い面積に配置されることに限られず、接着、導通が十分に行うことができれば、略同等やそれ以下の面積であってもよい。
【0025】
多孔質部40は、異方性導電部材30とその他の部材との界面等の気泡を外部に排出する、多孔材料41を有する部分である。多孔質部40は、例えば、図2に示すように、多孔材料41を線状に塗布して設けられた領域である。多孔材料41としては、例えばゼオライト、活性炭、多孔質シリカ、多孔質ガラス、SUS系多孔質金属、Cu系多孔質金属、Ni系多孔質金属、多孔質アルミナおよびSiCのいずれかを用いることができる。また、この多孔材料41は、図示は省略したが、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤を介して、間隙G内に設けられている。
なお、多孔質部40に、導電性を有する材料、例えば金属等を用いる場合には、一対の配線部20を短絡させることがないよう、一対の配線部20の少なくとも一方と離間して設けられるか、上述の樹脂等の絶縁性の材料で被覆されて絶縁された状態で設けられる。
なお、多孔質部40は、多孔材料41のみで構成される必要はなく、気泡の排出路を形成できれば、結着剤やバインダ等の他の物質と混合して使用してもよい。
【0026】
本実施形態の多孔質部40は、図1Bに示すように断面視すると、接着層12上に所定厚さの膜状に形成されている。また、多孔質部40は、図2に示すように平面視すると、異方性導電部材30の下面に対向する位置から封止樹脂60の端部の対向する位置に亘って間隙G内に形成されている。すなわち、多孔質部40は、異方性導電部材30が塗布された範囲の間隙G内のある点(位置)を始点として、当該異方性導電部材30の外周方向に向かって、間隙Gに沿って直線状に、封止樹脂60の端部まで連続して形成されている。なお、多孔質部40の幅は、例えば50μm〜300μmの範囲内、より好ましくは100μm〜300μmの範囲内とすることができる。
【0027】
本実施形態の多孔質部40は、より具体的には、発光素子50の直下の位置から封止樹脂60の端部の位置までの間隙G内に形成されている。すなわち、多孔質部40は、発光素子50の中央の位置に対応する間隙G内のある点(位置)を始点として、当該異方性導電部材30の外周方向に向かって直線状に、封止樹脂60の端部まで連続して形成されている。言い換えれば、多孔質部40は封止樹脂60の半径に相当する間隙G内に設けられている。
【0028】
多孔質部40が形成される範囲は、気泡を排出できるものであればよいが、例えば図2の左側に示すように、異方性導電部材30の端部から封止樹脂60の端部までの範囲a、異方性導電部材30の中心から封止樹脂60の端までの範囲b、封止樹脂60の端から端までの範囲c等とすることができる。そして、多孔質部40は、厚さ方向でみた場合、範囲aでは、封止樹脂60と間隙Gとの間に設けられ、範囲b,cでは、異方性導電部材30と間隙Gとの間および封止樹脂60と間隙Gとの間に設けられることができる。この場合、多孔質部40の下側には常に間隙Gが存在し、多孔質部40の上側には、その形成位置によって異なる部材が存在することになる。
【0029】
このような多孔質部40を備えることで、発光装置1は、駆動時の熱によって異方性導電部材30と他の部材との界面等における気泡が移動しても、多孔質部40を通じて外部に排出できる。従って、多孔質部40を備える発光装置1は、従来の発光装置のように発光素子50と封止樹脂60との界面に空気層が形成されることもない。
【0030】
本実施形態において、発光素子50は、図1Aに示すように、発光面と反対側の面に正負一対の電極51を備え、当該電極51が異方性導電部材30を介してそれぞれ対応する配線部20に接合されている。発光素子50は、より具体的には図2に示すように、異方性導電部材30を介して、一対の配線部20間の間隙Gをまたぐように当該一対の配線部20上にフリップチップ接合されている。また、発光素子50は、後記する封止樹脂60の中心部に設けられている。なお、前記した「発光面」とは、基板10上の配線部20に発光素子50を接合した際に、基板10と対向する側の面と反対側の面であり、発光装置1の光取り出し方向側の面である。
【0031】
発光素子50としては、例えば、n型半導体層とp型半導体層と発光層とからなる半導体層を有する発光ダイオードを用いることができ、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の発光素子50としては、ZnSe、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN,0≦X,0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の発光素子50としては、GaAlAs,AlInGaP等を用いることができる。なお、蛍光物質を用いた発光装置1とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を用いることが好ましい。なお、発光素子50の成分組成や発光色、大きさ等は、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0032】
発光素子50の電極は、図1Aに示すような発光面と反対側の面に正負一対の電極を備えるものに限られず、発光面と基板10側の面に正負一対の電極を有するものであってもよい。
なお、発光素子がフリップチップで接合される場合には、発光面から十分に光を取り出すことができるように、半導体層の上方側に基板を設けないか、サファイア等の透光性基板を設けることが好ましい。
【0033】
封止樹脂60は、基板10に接合された発光素子50を、塵芥、水分、外力等から保護するとともに、任意に、発光素子50の光取り出し効率向上や波長変換等の光学特性を調整させるものである。本実施形態の封止樹脂60は、図1Aに示すように断面視すると、、基板10の上面、異方性導電部材30および発光素子50を被覆しており、ドーム状(半球状)に形成されている。また、封止樹脂60は、図2に示すように平面視すると、一対の配線部20の円形状の領域をほぼ含むように円形状に形成されている。また、前記した多孔質部40は、図1Aおよび図2に示すように、この封止樹脂60の下方に対向して配置されている。
【0034】
封止樹脂60の材料としては、発光素子50からの光を透過可能な透光性を有するものが好ましく、具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂やそれらの変性タイプ、あるいはユリア樹脂等を用いることができる。また、封止樹脂60として、上記した有機材料の他に、酸化物等の無機材料を用いてもよい。またこれらに加え、所望に応じて配光や波長を変換するための蛍光体、着色剤、光拡散剤、フィラー等を含有させてもよい。
【0035】
以上の構成を備える、本実施形態の発光装置1によれば、異方性導電部材30の下方から封止樹脂60の外まで形成した多孔質部40を通じて、駆動時に熱により発生することがある異方性導電部材30とその他の部材との界面等に形成された空洞から移動する気泡を外部に排出することができる。つまり、発光装置1は、異方性導電部材30と他の部材の界面に沿って熱により気泡が膨張・移動するときに、部材間の界面となる位置に多孔質部40が設けられていることで、その多孔質部を介して気泡を外部に排出する。そのため発光装置1は、気泡の移動にともなう不具合、例えば発光素子50と封止樹脂60との界面に空気層が形成される恐れを低減することができ、光出力の低下等の発生を低減することができる。
【0036】
[発光装置の製造方法]
以下、本発明の第1実施形態に係る発光装置1の製造方法について、図3A図3Eを参照しながら説明する。発光装置1の製造方法は、基板準備工程(図3A)と、多孔質部形成工程(図3B)と、異方性導電部材配置工程(図3C)と、発光素子接合工程(図3D)と、封止樹脂形成工程(図3E)と、を順番に行う。
【0037】
基板準備工程では、図3Aに示すように、基体11上に少なくとも一対の配線部20を、接着層12を介して離間して形成した基板10を準備する。
例えば、本実施形態においては、まず基体11上に接着層12を介して金属箔を形成した後、当該金属箔のほぼ全面を覆うようにレジスト層を印刷等によって形成し、乾燥させる。次に、レジスト層の上に開口部を備えたマスクを配置する。
【0038】
次に、露光装置を用いてマスクおよびマスクの開口部内のレジストに光(紫外光)を照射して露光した後、マスクを除去して現像する。これにより、光を照射した領域(またはマスクで覆われた領域)のレジスト層が除去され、開口部が形成されたレジスト層となる。なお、開口部内には金属箔が露出した状態となっている。次に、当該開口部が形成されたレジスト層をマスクとし、レジスト層の開口部内に露出された金属箔をエッチングすることで、レジスト開口部に対応する部分の金属箔が除去される。これにより基体11の上面(接着層12)が露出し、この露出部分が間隙Gおよび配線部20以外の部分となり、間隙Gを有する一対の配線部20(図1A参照)を有する基板10となる。
【0039】
多孔質部形成工程では、例えば、図3Bに示すように平面視で後記する異方性導電部材30の下面に対向する位置から封止樹脂60の端部に対向する位置に亘る間隙G内に、多孔材料41(図1B参照)を線状に塗布し、当該多孔材料41を含む多孔質部40を形成する。多孔質部形成工程では、より具体的には、発光素子50の直下の位置から封止樹脂60の端部の位置まで、すなわち封止樹脂60の半径に相当する間隙G内に多孔材料41を設ける。ここで、多孔質部形成工程では、例えばポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法、スプレー法等により多孔材料41を塗布することで設けることができる。なお、封止樹脂60の端部までの位置は、ここでは、配線部20の外形部分と同等になることから、多孔質部40は、一対の配線部20の中心から外形部分までの範囲で間隙G内に設けられる。また、異方性導電部材30および封止樹脂60は、ペースト状、液状等の柔らかな、もしくは流動性を有する状態で塗布されることが通常であることから端部位置が必ず一定とは限らない。そこで、多孔材料41の設ける長さを、想定される範囲よりもある程度長めに塗布することで、確実に多孔質部40を形成することが可能となる。さらに、多孔質部40の一端部は、後記する発光素子50の直下に位置するようになる。ここで発光素子50の直下とは、発光素子50の中心である必要はなく、発光素子50に対向する位置であれば構わない。
また、多孔質部の材料によっては、形成方法は種々選択でき、塗布法のほか、例えばスプレー法、印刷法、貼付法を用いることがえきる。
【0040】
異方性導電部材配置工程では、例えば、図3Cに示すように一対の配線部20上にペースト状の異方性導電部材30を塗布する。異方性導電部材配置工程では、より具体的には、平面視で一対の配線部20の一部、多孔質部40の一部および間隙Gの一部を含む円形の領域上に、ペースト状の異方性導電部材30を塗布する。ここで、異方性導電部材配置工程では、例えばポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法等によりペースト状の異方性導電部材30を塗布することができる。
異方性導電部材配置工程は、必要量の異方性導電部材30を一度に一カ所に設けてもよいが、複数回で一カ所もしくは複数の位置に分けて設けてもよい。
【0041】
発光素子接合工程では、図3Dに示すように、異方性導電部材30を介して、一対の配線部20間の間隙Gをまたぐように発光素子50を一対の配線部20上に接合する。発光素子接合工程では、より具体的には、硬化前の異方性導電部材30上に電極51を下に向けて発光素子50を配置し、発光素子50の上から加熱圧着を行う。これより、一対の配線部20に発光素子50が接合される。なお、この発光素子接合工程において、透光性樹脂31内の導電粒子32がつぶされた状態(図1A参照)で異方性導電部材30が固まるため、圧着終了後に減圧状態となっても、当該導電粒子32を介して発光素子50が配線部20に接続された状態となっている。
なお、この加圧の際に、ペースト状の異方性導電部材30がつぶされることで、異方性導電部材30は、発光素子50より広い面積で設けられる。
【0042】
封止樹脂形成工程では、例えば、図3Eに示すように、多孔質部40の一部、異方性導電部材30および発光素子50を封止樹脂60で被覆する。封止樹脂形成工程では、より具体的には、平面視で一対の配線部20の円形状の領域をほぼ含むようにドーム状に封止樹脂60を形成する。ここで、封止樹脂形成工程では、例えばポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法、スプレー法等により封止樹脂60を形成することはできる。なお、多孔質部40は、封止樹脂60の下面に対面あるいは対向する位置において設けられる。そして、多孔質部40は、異方性導電部材30との間、ならびに、封止樹脂60の間に気泡を排出する領域を形成することになる。封止樹脂60の形状は、異方性導電部材30および発光素子50を封止しており、多孔質部40が封止樹脂60の外側にまで配置されている限り、特に限定されない。
【0043】
以上のような各工程を行う発光装置1の製造方法によれば、異方性導電部材30から封止樹脂60の外まで配線部20の間隙G内に多孔質部40を設けることで、異方性導電部材30とその他の部材との界面等に、仮に空洞が発生しても駆動時に熱により膨張・移動する気泡を多孔質部40により確実に外部に排出することができる。また、従来の装置と比較して発光装置1の各構成に孔や溝等の機械加工する必要がない。そして、発光装置1の製造方法では、製造した発光装置1の発光素子50と封止樹脂60との界面に空気層が形成されず、発光装置1の光出力の低下等の不具合を防止することができる。なお、前記した製造方法において、封止樹脂形成工程は、発光装置の構成により省略される場合がある。封止樹脂成形工程が省略される場合には、多孔質部40は、異方性導電部材30の端部まで、間隙G内または配線部20上等に設けられることになる。
【0044】
<第2実施形態>
[発光装置の構成]
本発明の第2実施形態に係る発光装置1Aの構成について、図4を参照しながら説明する。発光装置1Aは、図4に示すように、前記した発光装置1の構成(図1A参照)に加え、反射材料層(反射部材)70を備えている。
【0045】
反射材料層70は、発光素子50からの光を反射するためのものである。この反射材料層70は、図4に示すように、発光素子50を接合する接合領域J以外の配線部20上および基板10上に設けられている。なお、反射材料層70の詳細については後記する製造方法の説明において行う。
【0046】
反射材料層70の反射材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、フッ素樹脂、アクリル、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリフタルアミド等にTiO2,ZrO2,Al23,SiO2等の反射材を含有させたものを用いることができる。また、反射材料層70の厚さは特に限定されず、目的および用途に応じて任意の厚さで形成することができる。発光装置1Aは、このような反射材料層70を備えることで、発光素子50から出射された光を反射することができ、光出力を向上させることができる。
【0047】
[発光装置の製造方法]
以下、本発明の第2実施形態に係る発光装置1Aの製造方法について、図5A図5Fを参照しながら説明する。発光装置1Aの製造方法は、基板準備工程(図5A)と、反射材料層形成工程(図5B)と、多孔質部形成工程(図5C)と、異方性導電部材配置工程(図5D)と、発光素子接合工程(図5E)と、封止樹脂形成工程(図5F)と、を行う。なお、発光装置1Aの製造方法は、反射材料層形成工程以外は前記した発光装置1の製造方法(図3A図3E参照)と同様であるため、以下では反射材料層形成工程を主に説明する。
【0048】
反射材料層形成工程は、図5Bに示すように、基板準備工程に含まれ、例えば、光を反射する反射材料層70を、発光素子50を接合する接合領域J以外の配線部20上および基板10上に設ける。すなわち、基板10上に配線部20を形成(図5A)した後、反射材料層形成工程では予め定めた発光素子50の接合領域Jをマスクしながら反射材料を塗布し、図5Bに示すような反射材料層70を設ける。ここで、反射材料層形成工程では、接合領域Jにマスクをして、例えば、印刷法、塗布、スプレー法等により反射材料を設けることができる。
【0049】
そして、このように反射材料層形成工程で反射材料層70を設けてマスクを除去した後、図5Cに示すように、多孔質部形成工程において、反射材料層70上と接合領域Jの間隙G上とに亘って多孔材料41を線状に塗布し、反射材料層70を介して多孔質部40を形成する。ここで、発光装置1Aについても前記した発光装置1と同様に、間隙Gに沿って多孔質部40を線状に形成するものの、間隙G上における反射材料層70が設けられた領域では、反射材料層70上に多孔質部40が形成され、間隙G上における反射材料層70が設けられていない領域(接合領域J)では、間隙G上(間隙G内)に多孔質部40が形成される。
【0050】
そして、異方性導電部材配置工程(図5D)と、発光素子接合工程(図5E)と、封止樹脂形成工程(図5F)を経て、発光装置1Aを製造する。このような工程を行う発光装置1Aの製造方法によれば、異方性導電部材30とその他の部材との界面等に形成された空洞から熱により膨張・移動する気泡を除去することができ、発光素子50の接合領域J以外に反射材料層70を形成することで、光出力が向上した発光装置1Aを提供することができる。
【0051】
以上、本発明に係る発光装置およびその製造方法について、具体的な構成を例示して説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0052】
例えば前記した発光装置1,1Aは、図1Aおよび図4に示すように、基体11の一方の面に接着層12を介して配線部20が接着され、基板10および配線部20の構成が合計3層で構成されていたが、これに加えて、基体11の他方の面に別の接着層等を介して金属層を設け、合計5層で構成しても構わない。なお、前記した「基体11の他方の面」とは、基体11における発光素子50側が搭載される側の面と反対の面のことを意味している。
【0053】
この場合、最下層に設けられる金属層は基体の一部として基板10の機械的強度および放熱性を向上させるためのものであり、例えばアルミニウムおよびその合金等を用いることができる。また、基体11と金属層とを接着する接着層は、前記した接着層12と同様に、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0054】
さらに、発光装置1,1Aは、図2に示すように、多孔質部40が封止樹脂60の半径の長さの位置までに亘る間隙G内に設けられていたが、多孔質部40の形成範囲はこれに限定されない。
【0055】
例えば、多孔質部40は、封止樹脂60の直径の長さの位置までに亘る間隙G内、すなわち封止樹脂60の一方の端部の位置から他方の端部の位置までの間隙G内に設けられていてもよい。なお、多孔質部40は、封止樹脂60の一方の端部を越える位置から他方の端部を越える位置までの間隙G内に設けられていてもよい。また、封止樹脂60の直径を越えるように多孔質部40を設ける場合、発光装置が反射材料層70(図4参照)を備えるときには、間隙Gの位置となる反射材料層70上と接合領域J上とに亘って設ければよい。
【0056】
このように、封止樹脂60の直径の長さを越えて多孔材料41を設けることで、気泡による空洞が発生しやすい発光素子50の下側を縦断するように多孔質部40を形成できる。そのため、発光装置では、異方性導電部材30と他の部材との界面等の空洞から熱により膨張、移動する気泡と多孔質部40との接触する面積が増えるとともに、封止樹脂60の一方の端部の位置と他方の端部の位置とに気泡の排出口が2箇所形成されることになるため、気泡がより外部に排出されやすくなる。
【0057】
また、多孔質部40は、異方性導電部材30の端部の位置から封止樹脂60の端部の位置までの間隙G内に設けられていてもよい。この場合、発光装置を製造する際の多孔質部形成工程は、異方性導電部材配置工程の後に行われても構わない。多孔質部40は、図2に示す発光装置1よりも短い範囲であっても、少なくとも異方性導電部材30の端部から封止樹脂60の端部までの範囲に多孔質部40が形成されていれば、異方性導電部材30において熱により移動する気泡に逃げ道を与え外部に排出することが容易となる。
【0058】
また、発光装置1,1Aは、図2および図5Fに示すように、多孔材料41が発光素子50の直下の位置から封止樹脂60の端部の位置までの間隙G内に設けられているが、例えば多孔材料41が発光素子50の直下の位置から間隙G内に設けられるとともに、封止樹脂60の外側まで延長して設けられていても構わない。さらに、多孔材料41が平面視で異方性導電部材30の下面に対向する位置から封止樹脂60の端部に亘って、あるいは、当該端部を越えるように、配線部20上に設けられていても構わない。
【0059】
さらに、発光装置1,1Aは、図2に示すように、一枚の基板10に対して一つの発光素子50が配置されるとともに、配線部20が円形状の領域と、当該円形状の領域から基板10の左右の端部にそれぞれ伸びる線状の領域とから構成されていたが、基板10および配線部20の構成はこれに限定されない。
【0060】
例えば、図6A図6Cに示すように、一枚の長尺状の基板10A上に、一対の配線部20Aが複数形成され、それぞれの配線部20Aに発光素子50が接合された構成でも構わない。この場合、発光装置1Bの基板10Aは、可撓性を有し、屈曲および変形が可能なフレキシブル基板であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミド(PI)で構成されている。図6Aに示すように、この基板10A上には配線部20Aが設けられている。
【0061】
発光装置1Bの配線部20Aは、反射率を高めるために、例えばアルミニウムで構成されており、発光素子50が接合される一対の配線部20Aのうちの一方または他方が、隣接する発光素子50が接合される一対の配線部20Aの他方または一方を兼ねるように構成されている。すなわち発光装置1Bは、図6Aに示すように、中央の発光素子50bが接合される一方の配線部20Abが、左側に隣接する発光素子50aが接合される他方の配線部20Abとなるように構成されている。また同様に、発光装置1Bは、中央の発光素子50bが接合される他方の配線部20Acが、右側に隣接する発光素子50cが接合される一方の配線部20Acとなるように構成されている。なお、図6Aにおける符号20Ab,20Acおよび符号50a,50b,50cは、配線部20Aおよび発光素子50の位置を区別するために便宜的に使用したものであり、構成はそれぞれ同一である。
【0062】
このような構成を備える発光装置1Bであっても、前記した発光装置1,1Aと同様に、異方性導電部材30から封止樹脂60の外まで多孔質部40形成することで、異方性導電部材30とその他の部材との界面等において熱により膨張・移動する気泡を外部に排出することができる。なお、発光装置1Bは、図6Aに示すように、基板10A上に配線部20のみが設けられているが、前記した発光装置1A(図4参照)のように、さらに反射材料層70を設けた構成であっても構わない。この場合、発光装置1Bの配線部20Aは、例えば銅で構成される。
【0063】
さらに、発光装置1,1A,1Bは、図1A図2図4および図6Aに示すように、いずれも間隙G内または間隙Gの上側に多孔質部40が設けられていたが、多孔質部40は、少なくとも異方性導電部材30の端部の位置から封止樹脂60の端部の位置まで設けられていればよく、間隙G内以外または間隙G上以外に設けられていてもよい。例えば、多孔質部40は、異方性導電部材30の端部の位置から封止樹脂60の端部の位置までの配線部20,20A上に設けても構わない。なお、多孔質部40は、封止樹脂60の端部を越える位置まで延長して設けてもよく、設けられる幅や、形状(直線状)は特に限定されない。つまり、多孔質部40は、異方性導電部材30のような粘性部材を介して発光素子50を設ける場合に、その粘性部材に発生する気泡を排出することができる状態であれば、設けられる幅や形状や長さは限定されるものではない。
なお、発光装置1、1A、1Bでは、構成において説明する上で「対向」の言葉を用いたが、対向の意味には対面することも含まれるものである。
【0064】
また、前記した異方性導電部材30は、前記したように、透光性を有する熱硬化性樹脂または光反射材を主成分とすることにより、より好ましくは熱硬化性樹脂を主成分とすることにより、当該異方性導電部材による光の吸収を最大限に防止することができる。また、このような透光性の熱硬化性樹脂中に、光反射材が半田よりも多く、かつ均一に分散しているために、半田による光の吸収を最小限に止めるのみならず、配線間の基体11への光照射を最小限に止めることができ、基板10の劣化を回避することができる。さらに、発光素子50から出射した光が直接異方性導電部材30に当たり反射される以外の光、つまり、周辺部材からの反射・散乱光が当該異方性導電部材30に再度入射した場合でも、効率よく光を反射させることができる。
【0065】
異方性導電部材30は、例えば、熱硬化性樹脂が25〜85重量部、半田が5〜30重量部及び光反射材が10〜70重量部含有されていることが好ましく、熱硬化性樹脂が35〜85重量部、半田が5〜30重量部及び光反射材が10〜40重量部含有されることがより好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B 発光装置
10,10A 基板
11 基体(樹脂層)
12 接着層
20,20A,20Ab,20Ac 配線部
30 異方性導電部材
31 透光性樹脂
32 導電粒子
40 多孔質部
41 多孔材料
50,50a,50b,50c 発光素子
51 電極
60 封止樹脂
70 反射材料層
G 間隙
J 接合領域
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C