(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水、並びに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの群から選ばれる少なくとも1種を混合してシリコチタネートゲルを得、当該シリコチタネートゲルを結晶化することを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載のシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法。
無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水、並びに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの群から選ばれる少なくとも1種を、以下のモル比となるように混合することを特徴とする請求項3に記載のシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法。
0.5≦Si/Ti≦2.0
20≦H2O/Ti≦150
1.0≦M/Ti≦5.0
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属)
前記シリコチタネートゲルがニオブ、タンタル、バナジウム、アンチモン、マンガン、銅、鉄からなる群より1以上を含むことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載のシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法。
前記無機系チタン塩が、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、メタチタン酸ソーダ、及び、塩化チタンの群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載のシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のセシウム吸着剤よりも高いセシウム吸着性能を有するシチナカイト構造を有するシリコチタネート、及び、危険物又は劇物を使用する必要がなく、入手が容易な化合物を用いて生産することができ、且つ汎用のオートクレーブを用いることができるシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、危険物又は劇物ではない化合物を原料として用いることができるシリコチタネートの製造方法を見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明は無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水およびアルカリ金属水酸化物を混合してシリコチタネートゲルを得、当該シリコチタネートゲルを結晶化することを特徴とするシチナカイト構造を有するシリコチタネートの製造方法である。更には、セシウムの分配係数が100,000mL/g以上であるシチナカイト構造を有するシリコチタネートである。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、シチナカイト構造を有するシリコチタネート、及びその製造方法である。
【0015】
シチナカイト構造を有するシリコチタネートとは、E.V.Sokolova他,Sov.Phys.Dokl.34,583(1989)(以下、「参考文献1」とする。)、又は、M.J.Buerger他,W.A.DollAse,Z.KRISTALLOGR.,125,92(1967)(以下、「参考文献2」とする。)、又はAmerican Mineralogist Crystal Structure Database(http://ruff.geo arizona.edu./AMS/amcsd.php、検索日:2014年7月1日、以下、「参照HP」とする。)におけるsitinakite、のいずれかに記載された粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)ピークで特定されるXRDピークを有する結晶性シリコチタネートである。
【0016】
本発明のシリコチタネートはセシウムの吸着特性が高く、セシウムの分配係数(以下、「Kd」とする。)が100,000mL/g以上、更には200,000mL/g以上、また更には1,000,000mL/gであることが好ましい。
【0017】
本発明のシリコチタネートはストロンチウムの吸着特性が高いことが好ましい。そのため、本発明のシリコチタネートはストロンチウムのKdが10,000mL/g以上、さらに20,000mL/g以上であることが好ましい。
【0018】
本発明において、Kdは、吸着剤を用いて金属イオン含有水溶液から金属イオンの吸着処理した際の、吸着剤の吸着特性を示す値であり、以下の式(1)から求めることができる。
Kd=(C。−C)/C×V/m (1)
Kd : 分配係数(mL/g)
C。 : 吸着処理前の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
C : 吸着平衡時の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
V : 金属イオン含有水溶液の体積(mL)
m : 吸着剤の重量(g)
【0019】
例えば、吸着剤及び金属イオン含有水溶液として、シリコチタネート及びセシウム含有水溶液を使用して当該水容液からセシウムを吸着する場合、シリコチタネートのセシウムの吸着特性は、上記(1)式において以下の値を用いて、セシウムの分配係数として求めることができる。
Kd : セシウムの分配係数(mL/g)
C。 : 吸着処理前のセシウム含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
C : 吸着平衡時のセシウム含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
V : セシウム含有水溶液の体積(mL)
m : シチナカイト構造を有するシリコチタネートの重量(g)
【0020】
なお、シリコチタネートとセシウム含有水溶液とを24時間以上接触させた状態を、吸着平衡時とすればよい。
【0021】
また、本発明においては、吸着処理の温度は0〜50℃、更には10〜30℃、また更には20〜30℃とする。
【0022】
なお、金属イオン含有水溶液は、セシウムを含む2種以上の金属イオンを含有する水溶液であってもよい。セシウムを含む2種以上の金属イオンを含有する水溶液に対するセシウムのKdが高いことで、本発明のシリコチタネートのセシウムの選択吸着能が高くなる。セシウムを含む2種以上の金属イオンを含有する水溶液としては、Csの他に、Na、Mg、Ca、K、及びSrからなる群のいずれか2種以上を含有する水溶液、例えば、海水や模擬海水を挙げることができる。
【0023】
本発明のシリコチタネートは、ニオブ、タンタル、バナジウム、アンチモン、マンガン、銅、及び、鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「ドープ金属」とする。)を含有することが好ましく、特にニオブを含有することが好ましい。ドープ金属を含有することで、シチナカイト構造を有するシリコチタネートの、セシウムの吸着性能が向上する。
【0024】
本発明のシリコチタネートに含まれるドープ金属は、Tiに対するドープ金属のモル比で0.01〜1.2であることが好ましい。M
dope/Tiモル比がこの範囲であることで、セシウムに対する吸着性能が向上する。好ましい範囲として、更には0.01〜1.0、また更には、0.10〜0.50が挙げられる。
【0025】
本発明のシチナカイト構造を有するシリコチタネートは平均粒子径が4.0μm以上20μm以下であることが好ましく、更には、8.0以上20μm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のシチナカイト構造を有するシリコチタネートは粒子径分布の累積曲線において、10μmでの累積値が90%以下であることが好ましく、更には、60%以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、シリコチタネートに係わる「平均粒子径」とは、体積基準で表される粒子径分布の累積曲線が中央値(メディアン径;累積曲線の50%に対応する粒子径)である粒と同じ体積の球の直径をいい、レーザー回折法による粒子径分布測定装置によって測定することができる。
【0028】
本発明のシリコチタネートの粒子径は、0.5μm以上150μm以下であることが挙げられる。さらに、各粒子径の体積頻度は比較的均一になりやすい。そのため、本発明のシリコチタネートの粒子径分布はモノモーダルではない粒子径分布、更にはマルチモーダルの粒子径分布となりやすく、また、全ての粒子径の粒子の体積頻度は5%以下となりやすい。
【0029】
本発明のシリコチタネートはこのような特徴を有する粒子である。このような特徴を有
する粒子もセシウム吸着特性の向上に寄与していると考えられる。
【0030】
本発明のシリコチタネートの製造方法では、チタン源として無機系チタン塩、及び、シリカ源として無機系ケイ素化合物を使用する。これらのチタン源及びシリカ源は、有機系アルコキシ金属化合物をはじめとする、危険物又は劇物のいずれでもない。そのため、本発明の製造方法におけるチタン源及びシリカ源は、有機系アルコキシチタン化合物又は有機系アルコキシケイ素化合物などの有機系アルコキシ金属化合物に比べてハンドリングが容易であり、安価で、より工業的な使用に適している。
【0031】
無機系ケイ素化合物として珪酸ソーダ、シリカゾル、ヒュームドシリカ、及びホワイトカーボンの群から選ばれる1種以上を挙げることができる。アルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解させることが比較的容易であるため、無機系ケイ素化合物は珪酸ソーダ又はシリカゾルの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0032】
無機系チタン塩として、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、メタチタン酸ソーダ、及び塩化チタンの群から選ばれる1種以上を挙げることができる。アルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解させることが比較的容易であるため、無機系チタン塩として、硫酸チタン、又はオキシ硫酸チタンの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、上記のチタン源及びシリカ源、水、およびアルカリ金属水酸化物を混合してシリコチタネートゲルを得る。
【0034】
上記アルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムの群から選ばれる少なくとも1種であり、より安価であるため、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることが好ましい。
【0035】
無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水および、並びに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムの群から選ばれる少なくとも1種(以下、「アルカリ金属源」とする。)は以下の混合モル比となるように混合することが好ましい。
0.5≦Si/Ti≦2.0
20≦H2O/Ti≦150
1.0≦M/Ti≦5.0
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属)
【0036】
更に混合モル比は以下の組成を有することがより好ましい。
1.0≦Si/Ti≦2.0
20≦H2O/Ti≦150
1.0≦M/Ti≦5.0
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属)
【0037】
Si/Tiモル比は0.5以上、2.0以下であればよく、好ましくは0.8以上、1.7以下、より好ましくは1.0以上、1.5以下である。Si/Tiモル比が0.5以上、2.0以下であることで、シチナカイト構造の単相がより得られやすくなる。
【0038】
H
2O/Tiモル比が20以上、150以下であればよく、好ましくは40以上、100以下である。20以上であることで、無機系チタン塩、シリカ源として無機系ケイ素化合物、水、およびアルカリ金属源を含む混合物が撹拌しやすくなる。H
2O/Tiモル比が150以下であることで、シリコチタネートの収率が高くなりやすい。
【0039】
M/Tiモル比(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属)が1.0以上、5.0以下、更には1.5以上、4.5以下、また更には2.5以上、4.5以下である。Na/Tiモル比が1.0以上、及び、5.0以下であることで、シチナカイト構造の単相がより得られやすくなる。
【0040】
無機系Si化合物及び無機系チタン塩は、アルカリ金属水酸化物水溶液に可溶である。無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水およびアルカリ金属源を混合することにより、無定形のシリコチタネートゲルが生じる。当該シリコチタネートゲルを結晶化することでシチナカイト構造を有するシリコチタネートが得られる。
【0041】
なお、本発明の製造方法では、無機系チタン塩、無機系ケイ素化合物、水およびアルカリ金属源を混合することにより得られるシリコチタネートゲルを結晶化する。すなわち、本発明の製造方法では、危険物又は劇物に該当しないシリカ源及びチタン源を使用するだけでなく、構造指向剤を使用する必要がない。構造指向剤は、通常、高価な化合物である。構造指向剤を使用しない本発明の製造方法は、より安価にシリコチタネートを製造することができる。
【0042】
本発明で製造されるシチナカイト構造を有するシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウム吸着量及びセシウムの吸着量が大きく、また選択的にストロンチウムを吸着する効果を有する。
【0043】
シリコチタネートゲルは、ニオブ、タンタル、バナジウム、アンチモン、マンガン、銅、及び、鉄からなる群より選ばれる少なくとも1以上(以下、「ドープ金属」とする。)を含むことが好ましい。ドープ金属を含む原料から得られるシチナカイト構造を有するシリコチタネートは、ストロンチウム及びセシウムの吸着特性が高くなり好ましい。
【0044】
シリコチタネートゲルに含まれるドープ金属は、M
dope/Tiモル比で0.01〜1.2であることが好ましい。M
dope/Tiモル比がこの範囲であることで、副生物の生成が低減され、吸着性能が向上する。吸着性能がより向上するため、更には0.01〜1.0であることが好ましい(M
dopeはドープ金属)。
【0045】
結晶化温度は150℃以上、230℃以下であればよく、好ましくは160℃以上、220℃以下、より好ましくは170℃以上、200℃以下である。結晶化温度が150℃以上であれば、シチナカイト構造の結晶性が高くなりやすい。230℃以下であれば汎用の反応容器等を使用するのに十分な温度となる。
【0046】
結晶化時間は24時間以上120時間以下であればよい。結晶化時間が24時間以上であればシチナカイト構造の結晶性が高くなりやすい。一方、120時間以下であれば、セシウム又はストロンチウムの吸着特性が高いシチナカイト構造を有するシリコチタネートが得られる。
【0047】
本発明の製造方法は、原料混合物を結晶化することでシチナカイト構造を有するシリコチタネートを得ることができる。さらに本発明の製造方法は結晶化で得られた結晶化物である、シチナカイト構造を有するシリコチタネートを冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥する各工程をいずれか1種以上含んでいてもよい。
【0048】
結晶化したシチナカイト構造を有するシリコチタネートを冷却する場合は、特に限定する冷却条件は無いが、10℃/分で加熱炉冷却、または加熱炉より取り出し強制又は放冷することが挙げられる。
【0049】
また、結晶化したシチナカイト構造を有するシリコチタネートをろ過する場合は、任意のろ過方法、例えば、ヌッチェやベルトフィルターを用いるろ過を挙げることができる。フィルター等を用いるろ過では、当該フィルターは1μm程度の目開きのものを用いることができる。
【0050】
また、結晶化したシチナカイト構造を有するシリコチタネートを洗浄する場合は、5倍〜10倍の純水または60℃〜90℃の温水を洗浄水とし、これと当該シリコチタネートとを混合することで洗浄することが挙げられる。
【0051】
また、結晶化したシチナカイト構造を有するシリコチタネートを乾燥する場合は、当該シリコチタネートを大気中で70℃〜90℃で乾燥することが挙げられる。乾燥後、シリコチタネートが凝集している場合は乳鉢、粉砕機などで適宜解砕すればよい。
【0052】
結晶化後にこれらの工程を経ることで、シチナカイト構造を有するシリコチタネートを粉末とすることができる。
【0053】
本発明の製造方法により、シチナカイト構造を有するシリコチタネートを得ることができる。
【0054】
当該シチナカイト構造を有するシリコチタネートは、そのチタンに対するケイ素のモル比(Si/Tiモル比)が0.2以上、1.5以下、更には0.5以上、1.0以下、また更には0.6以上、0.8以下であることが挙げられる。
【0055】
さらに、チタンに対するアルカリ金属のモル比は、1.0以上、4.0以下、更には1.0以上、2.0以下、また更には1.0以上、1.5以下を挙げることができる。
【0056】
本発明のシチナカイト構造を有するシリコチタネートはセシウム又はストロンチウムの少なくともいずれかの吸着剤として使用することができる。
【0057】
本発明のシチナカイト構造を有するシリコチタネートはセシウム又はストロンチウムの少なくともいずれかの吸着方法に用いることができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明のシチカナイト構造を有するシリコチタネートは、セシウムの吸着性能が非常に高い。
【0059】
本発明の製造方法により、一般的で、入手が容易な無機系チタン塩及び無機系シリカ化合物をチタン源及びシリカ源として用いて、安全に生産することができ、且つ汎用のオートクレーブが使用できる。
【0060】
さらに、本発明の製造方法では、劇薬や危険物である有機系アルコキシチタン化合物又は有機系アルコキシケイ素化合物などの有機系アルコキシ金属化合物を使用せずに、構造指向剤も必要としない。これにより、より製造コストが安価になり、より工業的な製造方法とすることができる。
【0061】
また、本発明の製造方法により得られるシチカナイト構造を有するシリコチタネートは、ストロンチウム及びセシウムに対する、高い選択的に吸着特性を有する。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(粉末X線回折測定)
一般的なX線回折装置(商品名:MXP3HF型X線回折計、マックスサイエンス社製)を使用して試料のXRDパターンを測定した。測定条件は以下のとおりとした。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.04°
発散スリット: 1.00deg
散乱スリット: 1.00deg
受光スリット: 0.30mm
計測時間 : 3.00秒
測定範囲 : 2θ=5.0°〜60.0°
得られたXRDパターンと、参考文献1、参考文献2、及び参照HPに記載されたXRDピークとを比較することで、シチナカイト構造の同定を行った。
【0065】
(ストロンチウム、セシウムイオン濃度の測定)
水溶液中のストロンチウムイオン濃度は適宜、希釈してICP法により測定した。測定には、一般的なICP−AES(装置名:OPTIMA3000DV、PERKIN−ELMER社製)を使用した。Ca、Mgも同様の方法で測定した。
【0066】
また、水溶液中のセシウム濃度はICP−MASS(装置名:NExION300S、PERKIN−ELMER社製)で測定した。得られた各金属濃度から、各金属のKdを計算した。
【0067】
(金属の除去率)
吸着処理による各金属の除去率は以下の式(2)より求めた。
除去率 = (C
0−C)/C。×100 (2)
C。 : 吸着処理前の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
C : 吸着平衡時の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
【0068】
(粒子径分布測定)
光散乱式粒度分布測定により、粒子径分布の累積曲線を測定した。測定には、一般的な光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社 MICROTRAC HRA MODEL:9320−X1000)を用いた。前処理として、試料を蒸留水に懸濁させ、超音波ホモジナイザーを用いて2分間分散させた。得られた粒子径分布の累積曲線から、平均粒子径、及び粒子径10μmでの累積値を得た。
【0069】
(粒子の観察)
一般的な走査型電子顕微鏡(装置名:JSM−6390LV、日本電子株式会社製)を用いて試料の粒子を観察した。
【0070】
実施例1
ケイ酸ソーダ(SiO
2;29.1重量%)20g、硫酸チタン水溶液(TiO
2;13.31重量%)46g、水酸化ナトリウム(NaOH;48重量%)50g、及び、純水77gを混合し、以下の組成の原料混合物を得た。
Si/Tiモル比=1.31
Na/Tiモル比=3.3
H
2O/Tiモル比=82
得られた原料混合物はゲル状であった。
【0071】
得られた原料混合物の一部を回収し、固液分離、温水洗浄、及び大気中、80℃で乾燥し、粉末状の原料混合物を得た。得られた原料混合物粉末のXRD図を
図1に示す。
図1より、得られた原料混合物のXRDパターンは結晶性ピークを有しておらず、これが無定形であることが分る。これより、原料混合物は無定形シリコチタネートゲルであることが確認できた。
【0072】
当該ゲル状原料混合物を撹拌しながらステンレス製オートクレーブ(商品名:KH−02、HIRO COMPANY製)に充填した。これを180℃で72時間加熱して原料混合物を結晶化させて結晶化物を得た。
【0073】
結晶化時の圧力は0.8MPaであり180℃での水蒸気圧に該当した。結晶化後の結晶化物を、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のシリコチタネートを得た。
【0074】
得られたシリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるピークは確認できなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図2に示す。
【0075】
得られたシリコチタネートはSi/Tiモル比=0.68、Na/Tiモル比=1.07であった。
【0076】
実施例2
原料混合物を以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.25
Na/Tiモル比 = 3.6
H
2O/Tiモル比 = 82
【0077】
得られた原料混合物は無定形シリコチタネートゲルであり、結晶化時の圧力は0.8MPaであった。結晶化後の結晶化物を、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のシリコチタネートを得た。
【0078】
得られたシリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図3に示す。
【0079】
得られたシリコチタネートはSi/Tiモル比=0.75、Na/Tiモル比=1.31であった。
【0080】
(ストロンチウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて模擬海水からのストロンチウム選択的吸着特性の評価を行った。ストロンチウムを含有する模擬海水として、NaCl、MgCl
2、CaCl
2、Na
2SO
4、KCl及びSr標準液を用い、以下の組成を含む水溶液を調製し、測定溶液とした。
Na :870重量ppm(NaCl由来)
Mg :118重量ppm
Ca : 41重量ppm
Na :126重量ppm(Na
2SO
4由来)
K : 32重量ppm
Sr : 1重量ppm
(ここでNaの合計の濃度は996重量ppmである)
【0081】
1Lの測定溶液に対し0.05gのシリコチタネートを添加し、これを、25℃、800rpm、24時間攪拌混合することで吸着特性の評価とした。なお、シリコチタネートは、前処理として大気中、100℃で1時間加熱した。混合後、測定溶液からシリコチタネートをろ別し、回収された測定溶液中のストロンチウム濃度を測定した。
【0082】
吸着特性評価後の測定溶液の各成分濃度から、上記の式(1)によりストロンチウムのKd、及び、上記の式(2)により除去率を求めた。
【0083】
吸着特性の評価後の測定溶液のストロンチウム濃度は0.52重量ppm、カルシウム濃度は38重量ppm、及びマグネシウム濃度は110重量ppmであった。これより、各金属のKdは以下のとおりであった。
ストロンチウム : 18,000mL/g
カルシウム : 1,600mL/g
マグネシウム : 1,500mL/g
【0084】
また、各金属の除去率は以下のとおりであった。
ストロンチウム : 48%
カルシウム : 7.3%
マグネシウム : 6.8%
【0085】
これより、ストロンチウムのKdは10,000mL/g以上であり、またカルシウム及びマグネシウムのKdよりも大きく、また、ストロンチウム除去率がカルシウム及びマグネシウムの除去率よりも大きく、本実施例のシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウム吸着選択性を有することが確認できた。
【0086】
(セシウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて模擬海水からのセシウム選択的吸着特性の評価を行った。セシウムを含有する模擬海水として、NaCl、MgCl
2、CaCl
2、Na
2SO
4、KCl、及びCs標準液を用い、以下の組成を含む水溶液を調製し、測定溶液とした。
Na :1740重量ppm(NaCl由来)
Mg : 236重量ppm
Ca : 82重量ppm
Na : 252重量ppm(Na
2SO
4由来)
K : 64重量ppm
Cs : 1重量ppm
(ここでNaの合計の濃度は1992重量ppmである)
【0087】
1Lの測定溶液に対し、0.05gのシリコチタネートを添加し、これを、25℃、800rpm、24時間攪拌混合した。なお、シリコチタネートは、前処理として大気中、100℃で1時間加熱した。混合後、測定溶液からシリコチタネートをろ別し、回収された測定溶液中のセシウム濃度を測定した。
【0088】
吸着特性の評価後の測定溶液中のセシウム濃度は0.08重量ppmであった。
【0089】
吸着特性評価後の測定溶液の各成分濃度から、上記の式(1)よりセシウムのKd、及び、上記の式(2)により除去率を求めた。
【0090】
セシウムのKdは230,000mL/gとなった。また、セシウムの除去率は92%であった。
【0091】
本実施例のシリコチタネートはセシウムのKdが100,000mL/g以上であり、除去率が大きい。
【0092】
実施例3
原料混合物を以下の組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.14
Na/Tiモル比 = 4.0
H
2O/Tiモル比 = 82
【0093】
得られた原料混合物は無定形シリコチタネートゲルであり、結晶化時の圧力は0.8Mpaであった。結晶化後の結晶化物を、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のシリコチタネートを得た。
【0094】
得られたシリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図4に示す。
【0095】
得られたシリコチタネートはSi/Tiモル比=0.72、Na/Tiモル比=1.25であった。
【0096】
実施例4
ケイ酸ソーダ(SiO
2;29.1重量%)20g、硫酸チタン水溶液(TiO
2;13.31重量%)46g、水酸化ナトリウム(NaOH;48重量%)50g、及び、純水77gを混合し、以下の組成からなる無定形シリコチタネートゲルを得た。
Si/Tiモル比 = 1.31
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
【0097】
得られた無定形シリコチタネートゲルに、酸化ニオブ(Nb
2O
5)粉末0.73gを添加し、以下の組成の無定形シリコチタネートゲルからなる原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.31
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
Nb/Tiモル比 = 0.2
【0098】
当該原料混合物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で原料混合物を結晶化させて結晶化物を得た。結晶化時の圧力は0.8MPaであった。結晶化後の結晶化物を実施例1と同様な方法で、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のニオブ含有シリコチタネートを得た。
【0099】
得られたニオブ含有シリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図5に示す。
【0100】
得られたニオブ含有シリコチタネートはSi/Tiモル比=0.67、Na/Tiモル比=1.35、及び、Nb/Ti=0.16であった。
【0101】
本実施例の粒子径分布の累積曲線を
図6に示す。得られたニオブ含有シリコチタネートの平均粒子径は8.5μm、粒子径10μmでの累積値は55%であった。
【0102】
本実施例のシリコチタネートのSEM観察像を
図7に示す。
【0103】
(ストロンチウム吸着特性の評価)
実施例2と同様な方法で、ストロンチウムの選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の測定溶液のストロンチウム濃度は0.50重量ppm、また、海水成分であるカルシウム濃度は39.5重量ppm、マグネシウム濃度は115重量ppmであった。
【0104】
これより、上記(1)式より求めた各金属のKdは以下のとおりであった。
ストロンチウム : 20,000mL/g
カルシウム : 7,600mL/g
マグネシウム : 5,200mL/g
【0105】
また、上記(2)式より求めた各金属の除去率は以下のとおりであった。
ストロンチウム : 50%
カルシウム : 3.6%
マグネシウム : 2.5%
【0106】
これより、ストロンチウムのKdは10,000mL/g以上であり、またカルシウム及びマグネシウムのKdよりも大きく、また、ストロンチウムの除去率がカルシウム及びマグネシウムの除去率よりも大きく,本実施例のシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウム吸着選択性を有することが確認できた。
【0107】
Nbを含有していない実施例2と比べると、ストロンチウムの除去率が大きく、海水成分共存下でストロンチウム吸着選択性に優れていることが確認できた。
【0108】
(セシウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて、実施例2と同様な方法で、模擬海水からのセシウム選択的吸着特性の評価を行った。
【0109】
吸着特性の評価後の測定溶液中のセシウム濃度は0.011重量ppmであった。上記の式(1)よりセシウムのKdは1,800,000ml/gとなった。また、セシウムの除去率は98.9%であった。
【0110】
セシウムのKdが上記の様に、非常に大きく、除去率も大きい。Nb含有の無い実施例2と比べると、実施例4は海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム除去率が大きく、ニオブ添加剤の性能効果を確認できた。
【0111】
実施例5
ケイ酸ソーダ(SiO
2;29.1重量%)20g、オキシ硫酸チタン(TiO
2;16.3重量%)72g、水酸化ナトリウム(NaOH;48重量%)50g、及び、純水77gを混合し、以下の組成からなる無定形シリコチタネートゲルを得た。
Si/Tiモル比 = 1.34
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
【0112】
得られた無定形シリコチタネートゲルに、水酸化ニオブ(Nb(OH)
5)粉末0.98gを添加し、以下の組成の無定形シリコチタネートゲルからなる原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.34
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
Nb/Tiモル比 = 0.35
【0113】
当該原料混合物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で原料混合物を結晶化させて結晶化物を得た。得られた結晶化物を実施例1と同様な方法で、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のニオブ含有シリコチタネートを得た。
【0114】
得られたニオブ含有シリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図8に示す。
【0115】
得られたニオブ含有シリコチタネートはSi/Tiモル比=0.73、Na/Tiモル比=1.35、及び、Nb/Ti=0.33であった。
【0116】
(ストロンチウムおよびセシウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて模擬海水からのストロンチウムおよびセシウム選択的吸着特性の評価を行った。NaCl、MgCl
2、CaCl
2及びSr標準液とCs標準液を用い、以下の組成を有する模擬海水を調製した。
Na :996重量ppm
Mg :118重量ppm
Ca : 41重量ppm
Sr : 1重量ppm
Cs : 1重量ppm
【0117】
1Lの模擬海水に対し0.05gのシリコチタネートを添加し、これを、25℃、800rpm、24時間攪拌混合することで吸着特性の評価とした。
【0118】
吸着特性の評価後の模擬海水のストロンチウム濃度は0.63重量ppm、セシウム濃度は0.008ppm、また、カルシウム濃度は39.5重量ppm、マグネシウム濃度は115重量ppmであった。上記の式(1)より求めた各金属のKdは以下のとおりであった。
ストロンチウム : 12,000mL/g
セシウム : 2,400,000mL/g
カルシウム : 5,000mL/g
マグネシウム : 5,200mL/g
【0119】
また、上記の(2)式より求めた各金属の除去率は以下のとおりであった。
ストロンチウム : 37%
セシウム : 99.2%
カルシウム : 3.7%
マグネシウム : 2.5%
【0120】
これより、ストロンチウムのKdは10,000mL/g以上であり、セシウムのKdは100,000mL/g以上であり、またカルシウム及びマグネシウムのKdよりも大きく、また、ストロンチウムおよびセシウムの除去率がカルシウム及びマグネシウムの除去率よりも大きく,本実施例のシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸着選択性を有することが確認できた。
【0121】
模擬海水の組成は異なるが、Nbを含有していない実施例2と比べると、ストロンチウ
ムおよびセシウムの除去率が大きく、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸
着選択性に優れていることが確認できた。
【0122】
実施例6
原料混合物を以下の組成となるようにしたこと以外は実施例5と同様な方法で結晶化物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.07
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
【0123】
得られた無定形シリコチタネートゲルに、水酸化ニオブ(Nb(OH)
5)粉末0.56gを添加し、以下の組成の無定形シリコチタネートゲルからなる原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.07
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
Nb/Tiモル比 = 0.2
【0124】
当該原料混合物を使用したこと以外は実施例5と同様な方法で原料混合物を結晶化させて結晶化物を得た。得られた結晶化物を実施例5と同様な方法で、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のニオブ含有シリコチタネートを得た。
【0125】
得られたニオブ含有シリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本実施例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本実施例のシリコチタネートのXRD図を
図9に示す。
【0126】
得られたニオブ含有シリコチタネートはSi/Tiモル比=0.65、Na/Tiモル比=1.34、及び、Nb/Ti=0.16であった。
【0127】
(ストロンチウムおよびセシウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて模擬海水からのストロンチウムおよびセシウム選択的吸着特性の評価は実施例5と同様な方法で行った。
【0128】
吸着特性の評価後の模擬海水のストロンチウム濃度は0.65重量ppm、セシウム濃度は0.013重量ppm、また、カルシウム濃度は36.1重量ppm、マグネシウム濃度は112重量ppmであった。上記の式(1)より求めた各金属のKdは以下のとおりであった。
ストロンチウム : 11,000mL/g
セシウム : 1,500,000mL/g
カルシウム : 2,300mL/g
マグネシウム : 1,000mL/g
【0129】
また、上記の(2)式より求めた各金属の除去率は以下のとおりであった。
ストロンチウム : 35%
セシウム : 98.7%
カルシウム : 12.0%
マグネシウム : 5.1%
【0130】
これより、ストロンチウムのKdは10,000mL/g以上であり、セシウムのKdは1,000,000mL/g以上であり、またカルシウム及びマグネシウムのKdより大きく、また、ストロンチウムおよびセシウムの除去率がカルシウム及びマグネシウムの除去率よりも大きく,本実施例のシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸着選択性を有することが確認できた。
【0131】
模擬海水の組成は異なるが、Nbを含有していない実施例2と比べると、ストロンチウ
ムおよびセシウムの除去率が大きく、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸
着選択性に優れていることが確認できた。
【0132】
比較例1
オルトケイ酸テトラエチル9g、オルトチタン酸テトライソプロピル10gを混合した
後、これを水酸化ナトリム(NaOH;48重量%)溶液9gと水49gの混合溶液に添
加混合し、以下の組成を有する原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.30
Na/Tiモル比 = 3.3
H
2O/Tiモル比 = 82
【0133】
得られた原料組成物はシリコチタネートゲルであった。当該シリコチタネートゲルは、
エチルアルコールが6.6重量%、及び、イソプロピルアルコールが7.5重量%を副生
物として含んでいた。多量のアルコールを含むため、実施例と同様なオートクレーブを用
いた180℃加熱による結晶化はできなかった。
【0134】
比較例2
硫酸チタン水溶液の代わりに酸化チタン(アナターゼ型TiO
2粉末)を用いたこと以
外は、実施例1と同様に原料混合物、及び結晶化物を得た。得られた結晶化物を、冷却、
ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状の生成物を得た。
【0135】
得られた粉末状の生成物のXRD図からは酸化チタンに帰属するピークが確認され、シ
チナカイト構造は確認されなかった。本比較例の生成物のXRD図を
図10に示す。
【0136】
なお、本比較例の原料混合物のXRD図から酸化チタン(アナターゼ型TiO
2粉末)
のXRDピーク及び結晶性のチタン酸化物のXRDピークが確認された。これより、本比
較例の原料混合物は結晶性のチタン酸化物混合物であり、シリコチタネートゲルではない
ことが確認できた。
【0137】
比較例3
オルトケイ酸テトラエチル9g、オルトチタン酸テトライソプロピル10gを混合した後、これを水酸化ナトリム(NaOH;48重量%)溶液9gと水49gの混合溶液に添加混合し、以下の組成を有する原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.18
Na/Tiモル比 = 3.8
H
2O/Tiモル比 = 82
【0138】
得られた原料組成物はシリコチタネートゲルであった。当該シリコチタネートゲルは、エチルアルコールが6.5重量%、及び、イソプロピルアルコールが7.6重量%を副生物として含んでいた。副生アルコール除去処理としてオートクレーブ上部より窒素ガスを当該シリコチタネートゲル中に吹き込み、12時間後、得られた無定形シリコチタネートゲルに、酸化ニオブ(Nb
2O
5)粉末0.73gを添加し、以下の組成の無定形シリコチタネートゲルからなる原料混合物を得た。
Si/Tiモル比 = 1.18
Na/Tiモル比 = 3.8
H
2O/Tiモル比 = 82
Nb/Tiモル比 = 0.2
【0139】
当該原料混合物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で原料混合物を結晶化させて結晶化物を得た。結晶化時の圧力は0.8MPaであった。結晶化後の結晶化物を実施例1と同様な方法で、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥して粉末状のニオブ含有シリコチタネートを得た。
【0140】
得られたニオブ含有シリコチタネートのXRD図からはシチナカイト構造以外に帰属できるXRDピークは確認されなかった。これにより本比較例のシリコチタネートはシチナカイト構造の単相であることが確認できた。本比較例のシリコチタネートのXRD図を
図11に示す。
【0141】
得られたニオブ含有シリコチタネートはSi/Tiモル比=0.66、Na/Tiモル比=1.23、及び、Nb/Ti=0.17であった。
【0142】
本比較例の粒子径分布の累積曲線を
図12に示す。得られたニオブ含有シリコチタネートの平均粒子径は3.1μm、粒子径10μmでの累積値は97%であった。
【0143】
(ストロンチウム吸着特性の評価)
得られたシリコチタネートについて模擬海水からのストロンチウムおよびセシウム選択
的吸着特性の評価を行った。NaCl、MgCl
2、CaCl
2及びSr標準液とCs標
準液を用い、以下の組成を有する模擬海水を調製した。
Na : 996重量ppm
Mg : 118重量ppm
Ca : 41重量ppm
Sr : 1重量ppm
Cs : 1重量ppm
【0144】
1Lの模擬海水に対し0.05gのシリコチタネートを添加し、これを、25℃、800rpm、24時間攪拌混合することで吸着特性の評価とした。
【0145】
吸着特性の評価後の模擬海水のストロンチウム濃度は0.85重量ppm、セシウム濃度は0.34ppm、また、海水成分であるカルシウム濃度は38.0重量ppm、マグネシウム濃度は110重量ppmであった。これより、上記の式(1)より求めた各金属のKdは以下のとおりであった。
ストロンチウム : 3,500mL/g
セシウム : 39,000mL/g
カルシウム : 1,600mL/g
マグネシウム : 1,500mL/g
【0146】
また、上記の(2)式より求めた各金属の除去率は以下のとおりであった
ストロンチウム : 15%
セシウム : 66%
カルシウム : 7.3%
マグネシウム : 6.8%
【0147】
これより、ストロンチウムのKdは10,000mL/g未満であり、セシウムのKdも100,000ml/g未満であり、本比較例のシリコチタネートは、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸着選択性に劣ることを確認した。
【0148】
模擬海水の組成はが異なるが、Nbを含有する実施例4と比べても、ストロンチウムおよびセシウムのKdは低く、海水成分共存下でストロンチウムおよびセシウム吸着選択性に劣ると言える。