(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水溶性のビニルポリマーが、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを含み、前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対する前記アルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ1.5質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物およびそれを含有する水中油型の化粧料を実施するための好ましい形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、水と、水溶性のビニルポリマーと、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、を含有し、亜鉛イオン濃度が30ppm以下の組成物である。
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、液体状であってもよく、ジェル状であってもよい。
亜鉛イオン濃度は少ないことが好ましく、20ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがよりさらに好ましい。
【0019】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物では、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、アルコール、キレート剤等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0020】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ6.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上かつ5.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上かつ4.5質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上であれば、分散安定性が確保され、均一な組成物が得られる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が6.0質量部以下であれば、粘度が適度な範囲となり、撹拌が容易であるため、均一な組成物が得られる。
【0021】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、水溶性のビニルポリマーの含有量は、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上かつ0.75質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上かつ0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、各成分の合計含有量は100質量%であり、各成分の合計含有量が100質量%を超えることはない。
【0022】
水溶性のビニルポリマーとは、水と任意の割合で混合でき、化粧料に使用できるビニルポリマーであれば特に限定されない。
このような水溶性のビニルポリマーとしては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体等を用いることができる。これらの水溶性のビニルポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性のビニルポリマーの中でも、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いることがより好ましい。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等で増粘させた水系化粧料や水中油型化粧料に配合しても増粘剤と同じ成分であるため、粘度低下や増粘、他成分への影響が少なく、化粧料を容易に作製することができる。
【0023】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、水に対する、水溶性のビニルポリマーと酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散性を向上させるために、アルコール類を含有することが好ましい。
【0024】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上かつ100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上かつ50質量部以下であることがより好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散性をより向上させることができる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルコール類の含有量が100質量部以下であれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を化粧料に配合した際のべたつきや感触の悪化を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、アルコール類の含有量は、0.1質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上かつ25質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上かつ20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
アルコール類としては、化粧料に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の一価アルコールまたは多価アルコール等を用いることができる。
これらのアルコール類の中でも、グリセリンは化粧料の感触改善や保湿効果で、化粧料に汎用されている点で好ましい。
【0027】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、亜鉛イオン濃度が30ppm以下であり、25ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、15ppm以下であることがさらに好ましい。
亜鉛イオン濃度が30ppmを超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が安定に分散された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が得られなくなる。
【0028】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における亜鉛イオン濃度の測定方法としては、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission spectroscopy、ICP−AES)を用いた分析方法が挙げられる。
【0029】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、BII型回転粘度計を用い、20℃、30回転(rpm)の条件下で測定した場合の粘度が、0.1Pa・s以上かつ15Pa・s以下であることが好ましく、0.2Pa・s以上かつ13Pa・s以下であることがより好ましく、0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の粘度が上記範囲内であることにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を水中油型の化粧料に好適に用いることができる。
【0030】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、40℃で1ヶ月間保管した後の粘度が0.1Pa・s以上かつ15Pa・s以下であることが好ましく、0.2Pa・s以上かつ13Pa・s以下であることがより好ましく、0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
40℃で1ヶ月間保管しても、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の粘度が上記範囲内であることにより、水系化粧料としての性能を保持できていることになるため好ましい。
【0031】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、水素イオン指数(pH)が6.0以上かつ9.0以下であることが好ましく、6.5以上かつ9.0以下であることがより好ましく、7.0以上かつ9.0以下であることがさらに好ましい。
pHが上記範囲内であることにより、水中油型の水系化粧料に好適に用いることができる。
【0032】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、40℃で1ヶ月間保管した後の水素イオン指数(pH)が6.0以上かつ9.0以下であることが好ましく、6.5以上かつ9.0以下であることがより好ましく、7.0以上かつ9.0以下であることがさらに好ましい。
40℃で1ヶ月間保管しても、水素イオン指数が上記範囲内であることにより、化粧料の水素イオン指数として使用できる性能を保持できていることになるため好ましい。
【0033】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、促進条件下で保管した場合の粘度が、例えば、40℃にて保管した場合であって、かつ、1ヶ月間経過後に測定した粘度を、初期条件下での粘度低下後の粘度、例えば、40℃で720時間経過後に測定した粘度にて割った値が、0.7以上かつ1.0以下であることが好ましい。
このように、促進条件下、すなわち、1ヶ月間経過後の粘度を、初期条件下での粘度低下後の粘度にて割った値を、上記範囲内とすることにより、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の粘度を中長期に亘って維持することができる。上記のような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、本明細書で述べられる条件を制御(調整)することで得られる。
【0034】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を必要に応じてアルコール類で希釈し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量を5質量%とし、この組成物を用いて厚み12μmの薄膜(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物)を形成した場合、その薄膜の波長450nmの光に対する透過率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。透過率は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を5質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を、石英基板上に厚み12μmとなるように薄膜を形成し、その薄膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定することにより求めることができる。
【0035】
水は、化粧料に一般的に使用される水であれば特に限定されず、純水、イオン交換水、蒸留水、精製水、超純水、天然水、アルカリイオン水、深層水等が用いられる。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における水の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整される。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の使用感向上の観点から、水の含有量は、10質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上かつ94質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)940、Carbopol(登録商標)941 、Carbopol(登録商標)980、Carbopol(登録商標)981、Carbopol(登録商標)Ultrez10(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0037】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)1342、PEMULEN(登録商標)TR−1、PEMULEN(登録商標)TR−2(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0038】
水溶性のビニルポリマーとしてアルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いる場合には、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ2.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上かつ1.5質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上かつ1.0質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量を0.02質量部以上とすれば、分散安定性が確保でき、均一な組成物が得られる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛100質量部に対するアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量を2.0質量部以下とすれば、粘度が適度な範囲となり、撹拌が容易であるため、均一な組成物が得られる。
【0039】
アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体としては、例えば、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマーが挙げられる。また、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体として、ローム&ハース社から市販されているアキュリン(登録商標)22、アキュリン(登録商標)28、アキュリン(登録商標)88を用いてもよい。
これらのアクリル酸アルキル/メタクリル酸アルキル/ポリオキシエチレン共重合体の中でも、べたつきがなく使用感がよい点で、特に、アキュリン(登録商標)22(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマーが好適である。
【0040】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、水に混合されて水系組成物としたときに、粘度の増減やpHの変動を抑制できるものであれば特に限定されない。
このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛としては、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなるものであって、酸化ケイ素被膜が緻密なものや、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中に残存するアルカリ金属が、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種で置換されたものを用いることが好ましい。
【0041】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整される。透明性と紫外線遮蔽性の観点から、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量は、1質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上かつ70質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上かつ70質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上かつ65質量%以下であることが最も好ましい。
【0042】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の場合には、SPF値が5以上であることが好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物のSPF値が5以上となる場合には、水中油型の化粧料に紫外線遮蔽効果を付与することができる。
【0043】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有の含有量が7質量%の場合には、SPF値が15以上であることがより好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が7質量%の場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物のSPF値が15以上となる場合には、水中油型の化粧料に紫外線遮蔽効果を付与することができる。
【0044】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が酸化亜鉛換算で10質量%の場合には、SPF値が25以上であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が10質量%の場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物のSPF値が25以上となる場合には、水中油型の化粧料に紫外線遮蔽効果を付与することができる。
【0045】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の例1)
酸化ケイ素被膜が緻密な酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の一例としては、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が挙げられる。さらに、この酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下となるほど、酸化亜鉛粒子全体を酸化ケイ素被膜が均一に被覆していることが好ましい。
【0046】
酸化ケイ素被膜は、「ケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすほど、縮合度の高いものであればよい。
なお、緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密さ」と酸化ケイ素の「縮合度」との間には密接な関係があり、酸化ケイ素の縮合度が高くなればなるほど酸化ケイ素被膜の緻密性が高まることとなる。
すなわち、ここでいう緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密な」とは、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5を満たすほど、酸化ケイ素の縮合度が高い状態の酸化ケイ素被膜のことを意味する。
【0047】
酸化ケイ素の縮合度については、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、固体
29Si MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を測定することで容易に知ることができる。
ここで、Q
n(n=0〜4)とは、酸化ケイ素の構成単位であるSiO
4四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子、すなわち、2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。
これらQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を、Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4と表記する。ただし、Q
0+Q
1+Q
2+Q
3+Q
4=1である。
【0048】
酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下であることが好ましいとした理由を以下に述べる。その理由は、このブリリアントブルーの分解率が3%以下であれば、酸化亜鉛粒子の光触媒活性が抑制されていることとなるので、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性も高いことを意味するからである。ここで、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性が高いとは、被覆むらがないこと、被膜が局在化していないこと、ピンホール等がないことを示す。ブリリアントブルーの分解率は、酸化亜鉛粒子の光触媒活性の指標として用いられる。酸化亜鉛粒子の光触媒反応は、基本的に酸化亜鉛粒子の表面にて起こる。すなわち、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が低いということは、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面に、酸化亜鉛粒子が露出している箇所が少ないことを示す。
【0049】
ブリリアントブルーの分解率の測定方法は、次の通りである。
まず、ブリリアントブルーを所定の含有率(例えば、5ppm)に調整したブリリアントブルー水溶液を作製し、このブリリアントブルー水溶液からスクリュー管に所定量採取し、この採取したブリリアントブルー水溶液に、酸化亜鉛換算で、この液の質量の1質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を投入し、超音波分散して懸濁液を調製する。次いで、この懸濁液に、所定の波長の紫外線を所定距離(例えば、10cm)から所定時間(例えば、6時間)照射する。
紫外線照射ランプとしては、例えば、殺菌ランプGL20(波長253.7nm、紫外線出力7.5W:東芝社製)を用いることができる。
【0050】
次いで、この紫外線が照射された懸濁液から上澄み液を採取し、原子吸光光度法により、上記のブリリアントブルー水溶液および上澄み液それぞれの吸光光度スペクトルを測定する。そして、これらの測定値を用いて、下記の式(1)によりブリリアントブルーの分解率Dを算出する。
D=(A0−A1)/A0 ・・・(1)(但し、A0はブリリアントブルー水溶液(5ppm)の吸光光度スペクトルの吸収極大波長(630nm)における吸光度、A1は上記の上澄み液の吸光光度スペクトルの吸収極大波長における吸光度である。)
【0051】
なお、通常の酸化亜鉛(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)について、上記の方法に基づいてブリリアントブルーの分解率を測定した結果、90%であった。これにより、この酸化亜鉛(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)では、光触媒活性があるとブリリアンブルーの分解率が高いことが確認された。
【0052】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、3nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために、前記の範囲内で適宜調整される。透明性の高い酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を得たい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nm以上かつ2μm以下であることが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態における「平均粒子径」とは、以下の方法で求められる数値である。すなわち、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら酸化ケイ素被覆酸化亜鉛各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均する。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均粒子径とする。
【0054】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量は、50質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましい。ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が50質量%未満では、所望の紫外線遮蔽効果が得られない。そこで、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとすると、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を使用しなければならなくなるので好ましくない。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が90質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎてしまう結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができなくなるので好ましくない。
【0055】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記の水溶液中に溶出する亜鉛の溶出率は60質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、亜鉛の溶出率が60質量%以下であることが好ましいとした理由は、亜鉛の溶出率が60質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛自体の安定性が低下し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料に適用した場合に、溶出する亜鉛イオンが、有機系紫外線遮蔽剤、増粘剤等の水溶性高分子等と反応し、化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を生じるので好ましくないからである。
【0056】
亜鉛の溶出率は、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後、固液分離を行い、液相の亜鉛濃度をICP発光分析装置にて測定することにより測定することができる。
pH=5の緩衝液としては、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を分散させることができる緩衝液であれば特に限定されず、例えば、0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液500mlと、0.1M水酸化ナトリウム水溶液226mlとを混合した後、水を加えて全体量を1000mlとした緩衝液が好適に用いられる。
【0057】
酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために適宜調整される。透明性の高い酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を得たい場合、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、50nm以上かつ500nm以下であることが好ましい。
【0058】
このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法は、国際公開第2014/171322号に詳述されている。この製造方法によれば、酸化亜鉛粒子を、アルコキシシラン、または、ケイ酸ナトリウムおよびアルコキシシランを用いて、酸化亜鉛の表面を酸化ケイ素被膜で被覆し、200℃〜600℃で焼成することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が得られる。
なお、平均粒子径が50nm以上の酸化亜鉛粒子を用いる場合には、150℃〜600℃で焼成してもよい。
【0059】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の例2)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の他の例としては、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が挙げられる。この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いることが好ましい理由は、次の通りである。
【0060】
酸化亜鉛粒子の光触媒活性よって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下になるよう、酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にシリカ被膜で被覆するには、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属を含む材料を用いて酸化ケイ素被膜を形成することが好ましい。しかし、このアルカリ金属が酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に残存していると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水相に分散させたときにアルカリイオンが溶出し、pHや粘度を大きく変動させてしまい、化粧料としての品質安定性が損なわれてしまう。
【0061】
そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属を、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜から除去される。
一方、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属と置換されたMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種は、置換後には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に存在する。これらの置換されたMg、Ca、Baは、水への溶解度が低いケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム等として存在する。
【0062】
置換の結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大となる。そのため、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水相に混合しても、アルカリ金属の溶出が抑制され、pHや粘度の変動を抑制することができ、化粧料としての品質安定性を維持することができる。
【0063】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、必要に応じて選択されるが、2nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、5nm以上かつ500nm以下であることがより好ましく、10nm以上かつ400nm以下であることがさらに好ましい。
【0064】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は小さいほど、化粧料に配合した場合に使用時の透明性を高くするのに適している。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径が大きいほど、紫外線の散乱強度も高くなり、長波長までの紫外線を遮蔽することができる。そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、目的とする化粧料の透明性および紫外線の遮蔽性に合わせて適宜選択される。
【0065】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量は、必要に応じて選択されるが、50質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上かつ90質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が50質量%未満では、所望の紫外線遮蔽効果を得ることができない可能性がある。そのような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を基剤中に含む化粧料において、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとすると、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を使用しなければならなくなるので好ましくない。
一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が99質量%を超えると、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎてしまう可能性がある。その結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができなくなり、酸化亜鉛の光触媒活性や亜鉛イオンの溶出抑制が不充分となる可能性があるため好ましくない。
【0066】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素の含有量は、酸化亜鉛粒子の平均粒子径に応じて適宜調整される。例えば、平均粒子径が50nm以下の酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましい。また、平均粒子径が50nmを超える酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は1質量%以上かつ35質量%以下であることが好ましい。
【0067】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有している。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大であることが好ましい。さらに、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率に対する比(アルカリ金属の質量百分率/(Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率)は、0.001以上かつ0.6以下であることが好ましく、0.01以上かつ0.5以下であることがより好ましく、0.1以上かつ0.4以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、アルカリ金属とは、一般的に知られているものを指し、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムからなる群から選択される少なくとも1種を意味する。
【0068】
ここで、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率を、酸化ケイ素被膜に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大とした理由は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の初期における水素イオン指数(pH)の変動要因は、亜鉛イオンの溶出ではなく、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属イオンの溶出が主要因であるからである。
【0069】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の下限値は任意に選択できる。アルカリ金属の質量百分率は0%でもよく、他の例を挙げれば、例えば、0.0001質量%以上や0.001質量%以上などであってもよい。
【0070】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、0.01質量%以上かつ1質量%以下であることが好ましい。
【0071】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛(酸化ケイ素被膜)に含まれるアルカリ金属、Mg、CaおよびBaの質量百分率(質量%)は、原子吸光分析法により測定することができる。
【0072】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛では、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
さらに、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜は、「ケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすことが好ましい。
【0073】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法]
本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法を説明する。
本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法は、酸化亜鉛粒子の表面にアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる複合粒子と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中にて混合し、この酸化ケイ素中に含まれるアルカリ金属を、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換する工程(以下、「置換工程」と言う。)と、焼成工程と、を有する製造方法である。
【0074】
なお、置換工程前のアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる酸化亜鉛、または、置換工程後のMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、アルコキシシランおよび10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうち少なくとも1種と、触媒と、水とを添加し、30分以上かつ24時間以下、これらの混合物を撹拌して反応させ、より縮合度の高い酸化ケイ素被膜が形成される工程を設けてもよい。
次に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法について詳細に説明する。
【0075】
アルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる酸化亜鉛としては、ケイ酸ソーダ等のアルカリ金属を含有するケイ酸塩と、酸化亜鉛粒子と、を反応させて、酸化亜鉛粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させたものを用いてもよい。あるいは、市販品の酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛を用いてもよい。
酸化亜鉛粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させる方法としては、例えば、特開平03−183620号公報、特開平11−256133号公報、特開平11−302015号公報、特開2007−016111号公報等に記載されている方法を用いることができる。
【0076】
酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する方法は、必要に応じて選択されるが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、酸化亜鉛粒子と水を混合し、次いで、水中に酸化亜鉛粒子を超音波分散し、酸化亜鉛水系懸濁液を調製する。
次いで、酸化亜鉛水系懸濁液を加温し、この酸化亜鉛水系懸濁液を撹拌しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を加え、10分〜60分間熟成する。
次いで、酸化亜鉛水系懸濁液を撹拌しながら、希硫酸等の酸を添加してpHを5〜9に調整し、30分〜5時間熟成する。
次いで、この反応液を固液分離し、得られた反応物を水等の溶媒を用いて洗浄し、さらに、100℃〜200℃程度にて乾燥し、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛粒子を得る。
【0077】
「置換工程」
置換工程は、酸化亜鉛粒子の表面を、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆する工程の後に行う必要がある。その理由は、アルカリ金属を含むケイ酸塩と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、単に水を含む溶液中で混合すると、不純物としてケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムおよびケイ酸バリウムの少なくとも1種の沈殿が生成するからである。そこで、置換工程は、ケイ酸塩を中和反応等させることによって、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する工程の後から、乾燥工程の後までの、いずれかの段階に組み込むことが好ましい。そのような方法によれば、反応プロセスを低減することができ、低コストにて、本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得ることができる。
【0078】
置換工程では、最初に、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中に加え、混合する。
水を含む溶液としては、特に限定されず、必要に応じて選択される。水を含む溶液としては、例えば、水、または、水および水と相溶可能な溶媒を混合してなる溶液が用いられる。
水と相溶可能な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒がより好ましい。
【0079】
この混合処理における反応温度は、特に限定されず、必要に応じて調整される。酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種と、水を含む溶液と、を含む混合液中の溶媒の凝固点以上であればよい。
また、混合液を静置したままでも反応は進行するが、反応効率を高めるためには、混合液を撹拌しながら反応させることが好ましい。
反応時間は、特に限定されず、必要に応じて選択される。反応時間は、1時間以上が好ましい。
【0080】
この混合処理により、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のアルカリ金属は、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換されて、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛から混合液中に溶出する。一方、アルカリ金属と置換したMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンは、アルカリ金属との置換により酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に取り込まれ、その結果、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛となる。
【0081】
混合液中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、特に限定されず、必要に応じて選択される。酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のNa、K等のアルカリイオンを、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンにてイオン交換するためには、混合液中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のアルカリ金属のモル当量の総和以上であることが好ましい。
【0082】
Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を供するための原料としては、これらの元素を含む無機塩であればよく、特に限定されない。Mgを供するための原料としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられる。Caを供するための原料としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。Baを供するための原料としては、例えば、塩化バリウム、硝酸バリウム等が好適に用いられる。
これらの原料は、固体のまま用いてもよく、水溶液とした状態で用いてもよい。
【0083】
次に、この置換工程により生成した酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を含有する混合液を、常圧濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により固液分離する。得られた固形物を水等の溶媒を用いて洗浄することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が得られる。
なお、得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中のアルカリ金属の含有量をさらに低減させるためには、固液分離後、再度、得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中で混合させ、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中のアルカリ金属と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種との置換工程を行うことが好ましい。この置換工程は、複数回繰り返すことがより好ましい。
【0084】
このようにして得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、水を含んでいるので、この水を除くために乾燥させることが好ましい。
乾燥温度は、特に限定されないが、通常、100℃以上の温度にて乾燥することが好ましい。また、80℃以下の温度にて乾燥する場合には、減圧乾燥が好ましい。
【0085】
次いで、この乾燥物を200℃以上かつ600℃未満の熱処理(焼成)を行うことにより、本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製することができる。
【0086】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が10nm未満では、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の結晶性が低くなる結果、充分な紫外線遮蔽性を示さないことがある。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が2μmを超えると、ぎらつき、きしみ等が生じて、化粧料に処方した際の使用の感触が悪くなることがあるとともに、分散安定性が低下し、安定な組成物が得られないことがある。なお、本発明において、分散粒径とは、複数の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が集まって分散している状態の粒径を意味する。
【0087】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の製造方法]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の製造方法としては、水溶性のビニルポリマーと、水と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とを、亜鉛イオンが溶出しないように低エネルギーで混合し、これらの成分を均一に分散させる方法が用いられる。
低エネルギーで混合する方法としては、ホモディスパーを用いる方法が好ましい。
この方法によれば、水溶性のビニルポリマーと、水と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とが均一に混合され、かつ亜鉛イオンの溶出が低減された水系組成物を作製することができる。
【0088】
水溶性のビニルポリマーは、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と混合する前に、水と、水酸化ナトリウム等のpH調整剤とを適宜添加して、水素イオン指数(pH)を4.0〜8.5に調整しておくことが好ましく、4.5〜8.0がより好ましく、5.0〜7.5がさらに好ましい。
pH調整剤としては、化粧料で使用できるものであれば特に限定されない。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0089】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の粘度は、水溶性のビニルポリマーの含有量で調整できるので、所望の粘度が得られるように適宜調整して混合すればよい。
【0090】
[水中油型の化粧料]
本実施形態の水中油型の化粧料は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を水相に含有してなる。
【0091】
本実施形態の水中油型の化粧料は、水相に本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を含み、油相には油成分が含有された水中油型のエマルションである。
水相には、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー(水溶性高分子)、増粘剤、アルコール等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
油相には、必要に応じて、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油、溶媒等、一般的に化粧料で用いられる添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0092】
油成分は、化粧料に用いられものであれば特に限定されず、所望の有機系紫外線遮蔽剤を溶解することができるものが適宜選択され、用いられる。
このような油成分としては、高級アルコール、高級脂肪酸、および、高級アルコールと高級脂肪酸が結合してなる脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。油成分がこれらの成分を含有することで、ハリ感や保湿感が向上するとともに、これらの効果の持続性が向上する。
【0093】
高級アルコールとしては、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等が好適に用いられる。これらの高級アルコールは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数12〜24の飽和または不飽和の脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸等が好適に用いられる。これらの高級脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ジステアリン酸グリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ステアリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、オクタン酸セチル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等が好適に用いられる。これらの脂肪酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、水相と油相の分離を抑制する観点から、脂肪酸エステルのエステル価は低い方が好ましい。具体的には、脂肪酸エステルとしては、エステル価が95〜170のものを用いることが好ましい。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル(エステル価100〜111)、2−エチルヘキサン酸セチル(エステル価135〜160)等が挙げられる。
【0096】
本実施形態の水中油型の化粧料は、キレート剤を含有することが好ましい。キレート剤を含有することにより、水中油型の化粧料の経時による水素指数変動をより抑制することができる。
キレート剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、フィチン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が用いられる。これらの中でも、汎用性が高い点から、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。
【0097】
水中油型の化粧料におけるキレート剤の含有量は、所望の性能に合わせて適宜調整されるが、例えば、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下であることが好ましい。ここで、キレート剤の含有量が0.01質量%未満では、水中油型の化粧料において、所望の特性が得られないので好ましくない。一方、キレート剤の含有量が1.0質量%を超えると、安全性の観点から、水中油型の化粧料を化粧料として使用できなくなるので好ましくない。例えば、化粧料においてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の配合量は、医薬部外品原料規格において1.0%以下に規制されている。
【0098】
本実施形態の水中油型の化粧料は、油相に有機系紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。
有機系紫外線遮蔽剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。有機系紫外線遮蔽剤としては、例えば、アントラニラート類、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β’−ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロナート誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン類、ビスベンゾアゾリル誘導体、p−アミノ安息香酸(PABA)誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体等が挙げられる。有機系紫外線遮蔽剤としては、前記の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0099】
本実施形態の水中油型の化粧料中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が10nm未満では、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の結晶性が低くなる結果、充分な紫外線遮蔽性を示さないことがある。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が2μmを超えると、ぎらつき、きしみ等が生じて、使用の感触が悪くなることがあるとともに、分散安定性が低下し、安定な水中油型の化粧料が得られないことがある。なお、本発明において、分散粒径とは、複数の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が集まって分散している状態の粒径を意味する。
【0100】
本実施形態の水中油型の化粧料は、上記の成分に加えて、他の成分を適宜添加すること等により、乳液、クリーム、日焼け止め料、ファンデーション、美容液、化粧下地料、口紅等の形態にして用いてもよい。
他の成分としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系紫外線遮蔽剤、有機系紫外線遮蔽剤、美白剤、増粘剤等、化粧料に一般的に用いられる添加剤や化粧品基剤原料等が挙げられる。
【0101】
[水中油型の化粧料の製造方法]
本実施形態の水中油型の化粧料の製造方法は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が水相に含有され、油成分が油相に含有された水中油型(O/W)の化粧料を作製できる方法であれば特に限定されない。
【0102】
例えば、水と、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物と、pH調整剤と、乳化剤と、をあらかじめ混合して水相用の混合物とする。そして、この水相用の混合物に油成分を加えて混合し、水中油型のエマルションとすることで、本実施形態の水中油型の化粧料を作製することができる。
【0103】
なお、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物に、アルキル変性カルボキシビニルポリマーやアクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体が含有されている場合には、アルキル部分が乳化剤の役割を果たすため、乳化剤を添加しなくてもよい。
【0104】
乳化剤としては、水中油型のエマルションを作製するのに、化粧料で使用できるものであれば特に限定されない。例えば、親水性の界面活性剤を好適に用いることができ、親水性の界面活性剤としては、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略す。)ソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POEヒマシ油、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0105】
本実施形態の水中油型の化粧料の粘度は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物に含まれる水溶性のビニルポリマーの含有量で調整できるので、所望の粘度が得られるように適宜調整して混合すればよい。
【0106】
有機系紫外線遮蔽剤を含有させる場合には、油成分と有機系紫外線遮蔽剤をあらかじめ混合しておいてから、水相用の混合物に混合して乳化させればよい。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物によれば、亜鉛イオン濃度を30ppm以下としたため、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が水に安定に分散され、紫外線遮蔽効果と使用感に優れる水中油型の化粧料が得られる。
【0108】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛として、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である酸化ケイ素被覆酸化亜鉛や、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた場合には、長期に亘って、化粧料の粘度やpHの変動が抑制される。
【0109】
さらに、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が、キレート剤を含有する場合には、化粧料の粘度とpHの変動がより抑制される。
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が、有機系紫外線遮蔽剤を含有する場合には、酸化亜鉛との相乗効果により、化粧料には優れた紫外線遮蔽効果が得られる。
【0110】
本実施形態の水中油型の化粧料によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を含有するので、紫外線遮蔽性と使用感に優れた化粧料を得ることができる。
また、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛として、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である酸化ケイ素被覆酸化亜鉛や、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた場合には、粘度やpHの変動に起因する化粧料としての性能の低下、変色等を抑制することができ、化粧料の品質の安定性を維持することができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0112】
[製造例]
酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛粒子の含有率が50質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で17.7質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中の酸化ケイ素が15質量%)のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加えて撹拌し、懸濁液とした。
【0113】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加して、pHを6に調整した。その後、2時間静置した後、さらに、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物50質量%)を加えて撹拌し、さらに、2時間静置した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を水にて洗浄した。その後、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに、500℃にて1時間、熱処理(焼成)を行い、製造例の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
【0114】
原子吸光分析法により、製造例の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のNaとCaの含有量を測定した結果、Naは0.12質量%、Caは0.10質量%であった。
【0115】
[実施例1]
純水98.5質量部と、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:PEMULEN TR−1、Lubrizol Advanced Materials社製)0.4質量部とをホモディスパーにて混合した。
次いで、この混合液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して水素イオン指数(pH)を6.0に調整し、さらに、純水を加えて100質量部に調整し、カルボマージェルAを得た。
得られたカルボマージェルAを60質量部と、グリセリン10質量部と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛30質量部とをホモディスパー(商品名:ラボ・リューション(A TYPE)ホモディスパー2.5型、プライミクス社製)にて分散させ、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を30質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を得た。
【0116】
[評価]
実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を遠心分離した。
遠心分離によって得られた上澄み液を0.05μmフィルターで固液分離した後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により、亜鉛イオン濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0117】
[実施例2]
純水98.5質量部と、カルボキシビニルポリマー(商品名:Carbopol Ultrez 10 polymer、Lubrizol Advanced Materials社製)0.2質量部とを手動にて混合した。
次いで、この混合液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して水素イオン指数(pH)を7.5に調整し、さらに、純水を加えて100質量部に調整し、カルボマージェルBを得た。
得られたカルボマージェルBを83.3質量部と、実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物16.7質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
また、カルボマージェルBを76.7質量部と、実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物23.3質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が7質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
また、カルボマージェルBを66.7質量部と、実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物33.3質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
【0118】
[透過率とSPF値の評価]
上記のジェル状の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物について、透過率およびSPF値を測定した。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の透過率(%)とSPF値を、SPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)を用いて測定した。透過率の測定結果を
図1に、SPF値の測定結果を
図2に示す。
【0119】
[実施例3]
[粘度の評価]
実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物として、40℃で保管し、所定の時間毎に粘度を測定した。粘度はBII型回転粘度計(東機産業社製)を用いて、20℃、30rpmの条件下で測定した。
粘度の測定結果を
図3に示す。
【0120】
[実施例4]
実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物71.4質量部と、実施例1で用いた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛28.6質量部とをホモディスパーにて分散させ、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を50質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を得た。
【0121】
[評価]
実施例4で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を遠心分離した。
遠心分離によって得られた上澄み液を0.05μmフィルターで固液分離した後、実施例1と同様にして、亜鉛イオン濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0122】
[実施例5]
実施例2で得られたカルボマージェルBを90質量部と、実施例4で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物10質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
また、カルボマージェルBを86質量部と、実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物14質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が7質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
また、カルボマージェルBを80質量部と、実施例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物20質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
【0123】
[評価]
上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物について、透過率およびSPF値を測定した。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の透過率を、実施例2と同様にして測定した。結果を
図1に示す。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物のSPF値を、実施例2と同様にして測定した。結果を
図2に示す。
【0124】
[実施例6]
[粘度の評価]
実施例5の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が5質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を実施例6の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物として、40℃で保管し、所定の時間毎に粘度を測定した。粘度はBII型回転粘度計(東機産業社製)を用いて、20℃、30rpmの条件下で測定した。
粘度の測定結果を
図3に示す。
【0125】
[比較例1]
実施例1で得られたカルボマージェルAを60質量部と、グリセリン10質量部と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛30質量部とを、粒径0.03mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにて分散させ、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を30質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を得た。
【0126】
[評価]
比較例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を遠心分離した。
遠心分離によって得られた上澄み液を0.05μmフィルターで固液分離した後、実施例1と同様にして、亜鉛イオン濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0127】
[比較例2]
実施例2で得られたカルボマージェルBを83.3質量部と、比較例1で得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物16.7質量部とを混合し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を5質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物(ジェル状)を得た。
【0128】
[評価]
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を、40℃で保管し、所定の時間毎に粘度を測定した。粘度はBII型回転粘度計(東機産業社製)を用いて、20℃、30rpmの条件下で測定した。
粘度の測定結果を
図3に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1の結果から、実施例1および実施例4のように、ホモディスパーを用いることにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における亜鉛イオン濃度を30ppm以下にできることが分かった。
一方、比較例1のように、ジルコニアビーズを用いたビーズミルを用いた場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物における亜鉛イオン濃度が230ppmであり、亜鉛イオン濃度を30ppm以下にできないにことが分かった。
【0131】
図1の結果から、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が低くなるに従って、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の透過率が高くなることが分かった。
図2の結果から、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が高くなるに従って、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物のSPF値が高くなることが分かった。
【0132】
図3の結果から、実施例3および実施例6の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、40℃で2ヶ月間保管した後の粘度が8Pa・s以上であり、水中油型の化粧料に要求される特性を十分に有していることが分かった。
一方、比較例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、調製した直後から粘度が2Pa・s程度であり、水中油型の化粧料に要求される特性を有していないことが分かった。
すなわち、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物中の亜鉛イオン量を低減させることにより、分散安定性に優れる水系組成物が得られることが確認された。
【0133】
[実験例]
酸化亜鉛を塩酸で溶解し、亜鉛イオンを含む水溶液を得た。
実施例2のカルボマージェルBに、亜鉛イオンが0ppm、1ppm、10ppm、20ppm、100ppmとなるように亜鉛イオンを含む水溶液を添加した場合の、カルボマージェルBの粘度とpHを上記と同様にして測定した。結果を表2および
図4に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
本実験により、亜鉛イオン濃度が増加するにつれ、カルボマージェルの粘度が低下し、酸化亜鉛含有水系組成物の安定性が低下することが確認された。