(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485812
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】家畜の部位高さ測定器具
(51)【国際特許分類】
A01K 67/00 20060101AFI20190311BHJP
G01B 5/02 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
A01K67/00 D
G01B5/02
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-34050(P2016-34050)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-165271(P2016-165271A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41617(P2015-41617)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】莟 博行
(72)【発明者】
【氏名】河野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 好▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】金子 真
(72)【発明者】
【氏名】小林 良次
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−050758(JP,A)
【文献】
特開2002−262713(JP,A)
【文献】
実公第023566(大正15年)(JP,Y1T)
【文献】
中国実用新案第203869605(CN,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0032974(US,A1)
【文献】
特開平09−287950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/00
G01B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜を立った状態で収容する枠体と、
収容された家畜から上方に離れた位置で前記枠体に支持され、家畜の前後に沿って延設されるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動自在に支持される移動部材と、
測定対象部位への当接部材が一端側に取り付けられた帯状の測定具と、
前記移動部材に設けられ、前記測定具の一端側を基準引き出し端から下向きに引き出し自在に保持する測定具保持部とを備え、
前記当接部材を家畜の測定対象部位に当接させた状態で、前記基準引き出し端における前記測定具の目盛りを読み取ることで、家畜の部位高さを測定することを特徴とする家畜の部位高さ測定器具。
【請求項2】
前記測定具保持部には、引き出された前記測定具を自動巻取りする測定具巻き取り装置が接続されていることを特徴とする請求項1に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項3】
前記移動部材には、家畜の背中に向けて光線を照射し、前記測定具保持部の垂直下となる前記測定対象部位が特定できる光線照射目印を形成する光線照射装置が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項4】
前記光線照射装置は、前記測定具保持部の左右に一対設けられるレーザーポインタであることを特徴とする請求項3に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項5】
前記移動部材には、握ることで前記光線照射装置の光線照射を作動させるグリップ部が設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項6】
前記測定具の他端側には、前記測定具保持部に保持された前記測定具の他端を下向きに付勢する付勢部材が接続されていることを特徴とする請求項1に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項7】
前記測定具の目盛りは、前記当接部材の下端から距離Xの位置に、前記基準引き出し端から家畜が立つ地面までの距離をLとすると、L−Xの数値が付されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【請求項8】
前記付勢部材は、錘であることを特徴とする請求項7に記載された家畜の部位高さ測定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の十字部高さなど家畜の部位高さを測定する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の体格測定は、家畜の飼育管理や飼養技術の開発などを進める上で不可欠であり、家畜の成長に合わせて経時的に各部・各項目の測定が行われている。その中で、家畜の部位高さは、家畜が立つ地面から各部位までの高さであり、育成段階の家畜の体型変化や成長した家畜の体型を数値化して把握する上で重要な測定項目になっている。牛の場合は、高さとして一般に十字部高が測定されている。十字部とは、牛の両腰角を結んだ線と背骨との交点を指す。その他、牛の高さとして、体高(き甲部の高さ)を測定する場合もある。き甲部とは、左右の肩甲骨の頂点を結ぶ線と背骨とが交差する点を指す。
【0003】
家畜の高さを測定する装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されるような光電センサや超音波距離計を用いて測定する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−262713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した測定装置は、測定する部位を正確に特定することなく、背線高さの平均値を求めて指標にする際には有効であると言えるが、特定部位の高さを単独で測定しようとすると、特定部位の位置が側方に設置した光電センサでは把握し難いことから正確な測定ができない場合がある。また、装置が高額になり、普及し難いという問題もある。
【0006】
特に、牛の十字部高さを測定する際は、牛の側方視では正確に十字部の位置を把握し難いので、地面に定規を立てて、横棒を牛の十字部に当てて、横棒と交差する定規の目盛りを読むという、人手による測定作業が一般に行われている。この測定作業は、牛が移動するとその都度定規の位置を変更する必要があり作業性が悪く、また、牛を狭い枠に入れて牛の動きを拘束して測定しようとすると、牛は拘束時間が長くなるほど興奮して激しく動くため、正確な測定が困難になる問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、牛などの家畜の特定部位の高さを簡易且つ正確に測定すること、家畜が多少動いても速やかに対応して精度の高い測定ができ、測定作業を短時間で終わらせることができること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による家畜の部位高さ測定器具は、以下の構成を具備するものである。
家畜
を立った状態で収容する枠体と、収容された家畜から上方に離れた位置で前記枠体に支持され、家畜の前後に沿って延設されるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動自在に支持される移動部材と、測定対象部位への当接部材が一端側に取り付けられた帯状の測定具と、前記移動部材に設けられ、前記測定具の一端側を基準引き出し端から下向きに引き出し自在に保持する測定具保持部とを備え、前記当接部材を家畜の測定対象部位に当接させた状態で、前記基準引き出し端における前記測定具の目盛りを読み取ることで、家畜の部位高さを測定することを特徴とする家畜の部位高さ測定器具。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明は、牛などの家畜の特定部位の高さを簡易且つ正確に測定することができる。そして、家畜が多少動いても速やかにその動きに対応して精度の高い測定ができ、測定作業を短時間で終わらせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る家畜の部位高さ測定器具の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る家畜の部位高さ測定器具の断面図(
図1におけるA−A断面図)である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る家畜の部位高さ測定器具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る家畜の部位高さ測定器具を示している。測定対象となる家畜Mは、高さ測定が必要な家畜であればどのような家畜であってもよいが、特に、牛の十部高など、特定部位高さの測定に効果的に採用することができる。
【0012】
部位高さ測定器具1は、枠体2、ガイドレール3(3A,3B)、移動部材4(4A,4B)、測定具5、測定具保持部6、付勢部材7を備えており、家畜(牛)Mの特定部位高さ(牛の十字部高など)を人手によって測定することができるものである。
【0013】
枠体2は、家畜M
を立った状態で収容する設備である。図示の例では、枠体2は縦枠2Aと横枠2Bによって構成しているが、その形態は特に限定されるものではなく、牛舎内の既存の設備などであってもよい。
【0014】
ガイドレール3は、枠体2内に収容された家畜Mから上方に離れた位置で、枠体2に支持され、家畜Mの前後に沿って延設されている。図示の例は、2本のガイドレール3A,3Bを平行に配置しており、中央のガイドレール3Aをガイドレール3Bに対して近接又は離間できるようにしている。具体的には、中央のガイドレール3Aの両端は、枠体2のガイドレール3に直交する上枠2Cに設けたスライド溝2Fに摺動自在に支持されている。
【0015】
移動部材4(4A,4B)は、ガイドレール3(3A,3B)に沿って移動自在に支持されており、測定作業者によって、ガイドレール3に沿った任意の位置に人手で移動させることができるものである。移動部材4には測定具保持部6が支持されている。測定具保持部6は、移動部材4(4A,4B)と共にガイドレール3に沿って一体に移動すると共に、移動部材4Bに対してガイドレール3と直交する方向にスライド自在に支持されている。具体的には、測定具保持部6は、移動部材4Aに固定されると共に、移動部材4Bに設けたガイドレール3Bと直交する方向のスライド溝(図示省略)に摺動自在に保持されている。なお、図示の例では、一対の移動部材4A,4Bを設けているが、移動部材4Bを省略して、測定具保持部6が直接ガイドレール3B上を摺動するようにしてもよい。また、ガイドレール3と移動部材4との間には、移動部材の移動を円滑にするための摩擦軽減手段(ベアリングやローラなど)を適宜設けることが好ましい。
【0016】
測定具保持部6は、測定時に測定具5の目盛りと照合する基準引き出し端6Aを備えており、測定具5の一端側を基準引き出し端6Aから下向きに引き出し自在に保持している。図示の例では、測定具保持部6は、帯状の測定具5をガイドレール3と交差する方向に沿って保持すると共に、その両端が下向きになるように保持している。測定具保持部6は、移動部材4がガイドレール3に沿って移動することで、家畜Mの前後方向に移動自在であり、ガイドレール3Aをガイドレール3Bに対して近接離間することで、家畜Mの左右方向に移動自在になっている。
【0017】
測定具5は、所謂メジャーであり、帯状(或いは紐状)部材に測定のための目盛りが付されている。測定具5の一端側には、測定対象部位への当接部材5Aが取り付けられており、測定具5の他端には、測定具保持部6に保持された測定具5の他端を下向きに付勢する付勢部材7が接続されている。付勢部材7は、例えば錘を接続して重力によって測定具5の他端を下向きに付勢することもできるし、枠体2の下方に一端を接続した引っ張りバネの他端を接続することでも同様の付勢を得ることができる。
【0018】
このような部位高さ測定器具1による測定方法を説明する。家畜Mを枠体2内に収容した後、移動部材4をガイドレール3に沿って移動すると共にガイドレール3Aを左右に移動することで、当接部材5Aを家畜Mにおける測定対象部位の直上に位置させる。その後、当接部材5Aを引き下げて測定具5を基準引き出し端6Aから引き出し、当接部材5Aを家畜Mの測定対象部位に当接させた状態で、基準引き出し端6Aにおける測定具5の目盛りを読み取って家畜Mの部位高さを測定する。
【0019】
この際、測定具5の目盛りは、当接部材5Aの下端から距離Xの位置に、基準引き出し端6Aから家畜Mが立つ地面Gまでの距離をLとすると、L−Xの数値が付されている。これによって、基準引き出し位置6Aと照合される目盛りによって、即座に部位高さを読み取ることができる。また、測定具5の目盛りには、当接部材5Aの下端から距離Xの位置にXの数値を付しておき、測定後にL−Xを計算して部位高さを求めるようにしてもよい。
【0020】
ここで、測定具5は、常に付勢部材7によって当接部材5Aの逆端が下向きに付勢されているので、非作業時には、当接部材5Aは常に基準引き出し端6Aに当接した状態で保持されている。そして、前述した測定作業を行った後、当接部材5Aを手放すと、自動で測定具5が測定具保持部6に収納されて、前述した非作業時の状態に戻る。また、測定作業中は、常に付勢部材7によって測定具5が張られた状態になるので、測定具5が弛むことによる測定誤差をなくすことができ、精度の高い測定を簡易且つ継続的に行うことができる。
【0021】
このような家畜Mの部位高さ測定器具1によると、牛などの家畜Mの特定部位の高さ(例えば、十字部高や体高(き甲部の高さ)など)を、作業者が部位の位置を確認しながら簡易且つ正確に測定することができる。この際、家畜Mが多少動いても、移動部材4とガイドレール3Aを移動させて、即座に当接部材5Aの位置を調整することができるので、動きに速やかに対応して精度の高い測定を行うことができ、測定作業を短時間で終わらせることができる。
【0022】
また、1頭の家畜に対して複数箇所の部位高さを測定する場合にも、移動部材4を移動しながら順次測定することができるので、家畜に無用なストレスを与えることなく、簡易且つ短時間に、複数箇所の部位高さ測定を終わらせることができる。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る部位高さ測定器具1の他の構成例を示している。この例では、前述したガイドレール3に沿って移動自在に支持される移動部材4に、前述した例と同様に、測定具5の一端側を基準引き出し端5Aから下向きに引き出し自在に保持する測定具保持部6が設けられ、その測定具保持部6には、引き出された測定具5を自動巻取りする測定具巻き取り装置10が接続されている。
【0024】
この例では、前述した例と同様に、測定具保持部6から測定具5を引き出して、測定具5の一端側に取り付けられた当接部材5Aを家畜Mの測定部位に当接させた状態で、基準引き出し端における測定具5の目盛りを読み取ることで、家畜の部位高さ(例えば、十字部高さ)を測定する。その際、自動巻取りを行う測定具巻き取り装置10によって、測定具5は上方に付勢されているので、測定具5が弛むこと無く、精度の良い測定が可能になる。そして、測定が終了すると、当接部材5Aを解放することで、測定具5は測定具巻き取り装置10に自動巻取りされて、測定具保持部6及び測定具巻き取り装置10内に収容される。
【0025】
また、移動部材4には、家畜Mの背中に向けて光線を照射する光線照射装置20が設けられている。光線照射装置20は、測定具保持部6の垂直下における測定対象部位が特定できる光線照射目印を形成する。この光線照射装置20は、例えば図示のように、測定具保持部6の左右に一対設けられるレーザーポインタによって構成することができる。このような光線照射装置20を設けることで、当接部材5Aを測定具保持部6から垂直に引き下げるのに役立つ光線照射目印を、家畜Mの背中に付けることができる。図示の例では、一対の光線照射装置(レーザーポインタ)20によって2つの点が家畜Mの背中に照射されることになり、その間に当接部材5Aを当接させることで、測定具5を斜めに引き下げてしまう誤操作を防ぐことができる。
【0026】
また、移動部材4には、測定者が移動部材4を容易に移動させることができるハンドル30とグリップ部30Aが設けられている。このグリップ部30Aは、測定者が握ることで光線照射装置20の光線照射を作動させる圧力検知式のスイッチを兼用しており、そのスイッチに光線照射装置20のケーブル21が接続されている。このような例では、測定者は、例えば、左手でグリップ部30Aを握ることで、移動部材4を所望の位置に移動させ、且つ光線照射装置20を作動させて、光線照射目印を測定対象部位の近傍に付与し、右手で当接部材5Aを引き下げて部位高さの測定を行うことができる。このような例によると、精度の高い測定を迅速に行うことができるので、定位置で静止させることが難しい牛などの家畜の部位高さ(体長や体高など)測定を、容易且つ短時間に行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1:部位高さ測定器具,2:枠体,2A:縦枠,2B:横枠,
2C:上枠,2F:スライド溝,
3(3A,3B):ガイドレール,4(4A,4B):移動部材,
5:測定具,5A:当接部材,
6:測定具保持部,6A:基準引き出し端,7:付勢部材(錘),
10:測定具巻き取り装置,20:光線照射装置(レーザーポインタ),
21:ケーブル,30:ハンドル,30A:グリップ部
M:家畜(牛),G:地面