(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485963
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】落下装置および落下方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/303 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
G01N3/303 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-149521(P2015-149521)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-32295(P2017-32295A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】福田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】小野 松太郎
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−344251(JP,A)
【文献】
特開2002−174574(JP,A)
【文献】
特表2003−502630(JP,A)
【文献】
米国特許第06508103(US,B1)
【文献】
特開2004−045335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/303
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被落下物を挟み込んで保持する状態と、前記被落下物の挟み込みを解除する状態とが可能となるように、開閉可能に構成された第1の保持部材および第2の保持部材からなる保持治具と、
前記保持治具の移動を案内する案内機構とを有し、
前記案内機構は、前記第1の保持部材を案内する第1の案内軌道と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材の開閉中心部を案内する第2の案内軌道と、前記第2の保持部材を案内する第3の案内軌道と、を備え、
前記第1の保持部材は、前記第1の案内軌道に沿って移動可能な第1の結合部を有し、
前記開閉中心部は、前記第2の案内軌道に沿って移動可能な第2の結合部を有し、
前記第2の保持部材は、前記第3の案内軌道に沿って移動可能な第3の結合部を有し、
各結合部が各案内軌道に沿って移動する際、前記第1の結合部と前記第3の結合部との距離が拡大することにより、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が開いた状態となり、前記第1の結合部と前記第3の結合部との距離が縮小することにより、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じた状態となり、
前記案内機構は、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材を上方に開いて前記被落下物を前記第1の保持部材の上に載置可能とする載置部と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を閉じて前記被落下物を前記第1の保持部材および前記第2の保持部材の間に挟み込んで保持させるチャック部と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を下向きに開いて前記被落下物を落下させる姿勢とする落下部と、前記チャック部から前記落下部に至る間で、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じて前記被落下物を挟み込んで保持した状態で前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を移動させることが可能な移動部と、を有し、
前記第1の保持部材および前記第2の保持部材は、前記案内機構に沿って、前記載置部、前記チャック部、前記移動部、前記落下部の順に移動可能であり、前記チャック部において、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材が上側となる姿勢で横向きに移動し、前記落下部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が開く側を下方とする姿勢で上向きに移動する構成であることを特徴とする落下装置。
【請求項2】
前記載置部から前記チャック部にかけて、前記第2の案内軌道と前記第3の案内軌道との間隔が縮小し、前記落下部では、前記第1の案内軌道と前記第3の案内軌道との間隔が徐々に増加することを特徴とする請求項1に記載の落下装置。
【請求項3】
前記落下装置が落下試験機であることを特徴とする請求項1または2に記載の落下装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の落下装置を用いた落下方法であって、
前記載置部において、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材が上方に開いた状態とする工程と、
前記第1の保持部材の上に前記被落下物を載置する工程と、
前記チャック部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じて前記被落下物を挟み込んで保持する工程と、
前記移動部において、前記被落下物を挟み込んで保持した状態で前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を移動させる工程と、
前記落下部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が下向きに開いて前記被落下物を落下させる工程と、を有することを特徴とする落下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を所定の高さまたは位置から落下させる、落下装置および落下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内容物を充填した容器(バッグ、パウチ等)においては、所定の高さから落下しても容器の破損や内容物の漏洩のないことが求められている。
特許文献1,2には、ディスク(円盤)等の物品を紐状体にぶら下げ、紐状体の引き上げと、紐状体に対する係合の解除とを繰り返すことにより、物品が破壊されるまでの落下回数を測定可能にした落下試験機が記載されている。
特許文献3には、被試験物を保持部に紐状素材により連結することで、被試験物に任意の姿勢を取らせて落下させる落下試験装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2698411号公報
【特許文献2】特許第2704748号公報
【特許文献3】特開2000−65677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載の装置によれば、いずれも物品を紐に取り付けたまま落下させている。このため、物品に紐を取り付ける作業が煩雑である、途中で紐の取り付けが緩んだり紐が絡んだりすると、試験が正常に実施されない等の問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業性よく、物品を所定の高さまたは位置から落下させることが可能な、落下装置および落下方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、被落下物を挟み込んで保持する状態と、前記被落下物の挟み込みを解除する状態とが可能となるように、開閉可能に構成された第1の保持部材および第2の保持部材
からなる保持治具と、前記保持治具の移動を案内する案内機構とを有し、前記案内機構は、前記第1の保持部材を案内する第1の案内軌道と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材の開閉中心部を案内する第2の案内軌道と、前記第2の保持部材を案内する第3の案内軌道と、を備え、前記第1の保持部材は、前記第1の案内軌道に沿って移動可能な第1の結合部を有し、前記開閉中心部は、前記第2の案内軌道に沿って移動可能な第2の結合部を有し、前記第2の保持部材は、前記第3の案内軌道に沿って移動可能な第3の結合部を有し、各結合部が各案内軌道に沿って移動する際、前記第1の結合部と前記第3の結合部との距離が拡大することにより、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が開いた状態となり、前記第1の結合部と前記第3の結合部との距離が縮小することにより、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じた状態となり、前記案内機構は、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材
を上方に開い
て前記被落下物を
前記第1の保持部材の上に載置可能とする載置部と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材
を閉じて前記被落下物を
前記第1の保持部材および前記第2の保持部材の間に挟み込んで保持
させるチャック部と、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材
を下向きに開いて前記被落下物を落下させる姿勢とする落下部と、前記チャック部から前記落下部に至る間で、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じて前記被落下物を挟み込んで保持した状態で前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を移動させることが可能な移動部と、を有し、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材は、
前記案内機構に沿って、前記載置部、前記チャック部、前記移動部、前記落下部の順に移動可能であり、前記チャック部において、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材が上側となる姿勢で横向きに移動し、前記落下部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が開く側を下方とする姿勢で上向きに移動する構成であることを特徴とする落下装置を提供する。
【0007】
前記載置部から前記チャック部にかけて、前記第2の案内軌道と前記第3の案内軌道との間隔が縮小し、前記落下部では、前記第1の案内軌道と前記第3の案内軌道との間隔が徐々に増加する構成を採用することも可能である。
前記落下装置が落下試験機であってもよい。
【0008】
上記の落下装置を用いた落下方法は、前記載置部において、前記第1の保持部材に対して前記第2の保持部材が上方に開いた状態とする工程と、前記第1の保持部材の上に前記被落下物を載置する工程と、前記チャック部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が閉じて前記被落下物を挟み込んで保持する工程と、前記移動部において、前記被落下物を挟み込んで保持した状態で前記第1の保持部材および前記第2の保持部材を移動させる工程と、前記落下部において、前記第1の保持部材および前記第2の保持部材が下向きに開いて前記被落下物を落下させる工程と、を有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業性よく、物品を所定の高さまたは位置から落下させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の落下装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】載置部における動作の一例を示す側面図である。
【
図3】チャック部における動作の一例を示す側面図である。
【
図4】移動部における動作の一例を示す側面図である。
【
図5】落下部における動作の一例を示す側面図である。
【
図6】保持部材と案内軌道との間の結合構造の一例を示す、
図5のS−S線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に、本発明の落下装置10の一例を示す。この落下装置10は、被落下物を保持する保持治具30と、保持治具30の移動を案内する案内機構20を有する落下装置本体11を有する。
図1の落下装置本体11は、正面と上面が開放された箱状または枠状である。落下装置本体11の左右の側部13に、それぞれ案内機構20が設けられている。落下装置10を落下試験機(落下試験装置)として用いる場合、被落下物は被試験体である。
【0012】
保持治具30は、開閉中心部33を中心として相互に開閉可能に構成された第1の保持部材31および第2の保持部材32を有する。以下、本明細書では、第1の保持部材31および第2の保持部材32を総称して、「保持部材31,32」ということがある。開閉中心部33は、保持部材31,32とは別の部材から構成されてもよく、各保持部材31,32の一部を組み合わせた構成でもよい。開閉中心部33を中心として保持部材31,32を開くことにより、被落下物Pの挟み込みを解除することができる。
【0013】
保持部材31,32は、被落下物P(
図2〜5参照)を挟み込んで保持できれば、その構造は特に限定されない。被落下物Pが平たい場合は、板状が好ましい。その他の構造としては、箱状、棒状、網状、格子状などが挙げられる。保持部材31,32が被落下物Pに接触する部位に、ゴム、スポンジ等の緩衝材を設けると、緩衝材が被落下物Pに密着してチャック強度が向上するので好ましい。
【0014】
案内機構20は、保持部材31,32に対して被落下物Pを載置可能とする載置部24と、保持部材31,32を閉じて被落下物Pを挟み込むチャック部25と、保持部材31,32が下向きに開いて被落下物Pを落下可能とする落下部28と、チャック部25から落下部28に至る間で保持部材31,32を移動させる移動部(転向部26、上昇部27)を有する。保持部材31,32は、案内機構20に沿って、載置部24、チャック部25、転向部26、上昇部27、落下部28の順に移動可能である。
【0015】
案内機構20は、三種類の案内軌道を有する。三種類の案内軌道とは、第1の保持部材31を案内する第1の案内軌道21と、開閉中心部33を案内する第2の案内軌道22と、第2の保持部材32を案内する第3の案内軌道23である。以下、本明細書では、第1の案内軌道21、第2の案内軌道22、第3の案内軌道23を総称して、「案内軌道21〜23」という場合がある。
【0016】
保持治具30は、各案内軌道21〜23に対応して、三種類の結合部を有する。三種類の結合部とは、第1の保持部材31に設けられた第1の結合部34と、開閉中心部33に設けられた第2の結合部36と、第2の保持部材32に設けられた第3の結合部35である。第1の結合部34は第1の案内軌道21に沿って、第2の結合部36は第2の案内軌道22に沿って、第3の結合部35は第3の案内軌道23に沿って、それぞれ移動可能である。本明細書では、第1の結合部34、第2の結合部36、第3の結合部35を総称して、「結合部34〜36」という場合がある。
【0017】
各結合部34〜36が各案内軌道21〜23に沿って移動する際、第1の結合部34と第3の結合部35との距離が拡大することにより、保持部材31,32を開いた状態とすることができる。また、第1の結合部34と第3の結合部35との距離が縮小することにより、保持部材31,32を閉じた状態とすることができる。各案内軌道21〜23は、各結合部34〜36の相対位置を制御するため、案内機構20の各部において間隔が変化した構成を有する。
【0018】
図2に、保持治具30が載置部24に位置する状態を示す。載置部24では、第1の保持部材31に対して第2の保持部材32が上方に開いた状態で、保持治具30が待機する。そこで、作業者は、第1の保持部材31の上に被落下物Pを載置する。載置の際、被落下物Pが第2の保持部材32に接触しても構わない。保持部材31,32の開き角は特に限定されないが、例えば30〜150°である。第1の案内軌道21および第2の案内軌道22が略等間隔で略水平(横向き)に延び、第3の案内軌道23が上方に湾曲した経路をとる。
【0019】
図3に、保持治具30がチャック部25に位置する状態を示す。チャック部25では、第2の保持部材32が第1の保持部材31に向かって上側から閉じるように変位し、最終的には被落下物Pが両保持部材31,32の間に挟み込んで保持される。第1の案内軌道21および第2の案内軌道22が略等間隔で略水平(横向き)に延び、第3の案内軌道23が徐々に第2の案内軌道22に接近した経路をとる。この例では、載置部24からチャック部25にかけて、第2の案内軌道22と第3の案内軌道23との間隔が縮小し、第2の保持部材32のみが開閉中心部33の周りで向きを変える構成である。第1の保持部材31は向きを変えないので、挟み込み(チャック)前の被落下物Pの姿勢が安定する。なお、保持治具30を閉じる際に向きを変える保持部材が、保持部材31,32のどちらであるか、または両方であるかは、特に限定されない。
【0020】
図4に、保持治具30が上昇部27に位置する状態を示す。転向部26と上昇部27を含む移動部では、保持部材31,32が被落下物Pを挟み込んで保持するように閉じた状態となる。移動部では、各案内軌道21〜23が略等間隔で並走し、転向部26では移動方向が横向きから上向きに転向し、上昇部27では移動方向が上向きである。また、上昇部27において、保持治具30は開閉中心部33を上側にした姿勢をとる。上昇部27の長さは、落下高さに応じて、適宜設定可能である。落下高さは特に限定されず、例えば80cm〜2mであるが、2m以上または80cm以下でもよい。
【0021】
さらには、上昇部27の長さが可変となるように落下装置本体11の側部13を構成することが好ましい。例えば、転向部26を含むパーツと、上昇部27を含むパーツと、落下部28を含むパーツとを別部品にして、上昇部27を含むパーツの個数を変更したり、上昇部27の長さが異なるパーツに交換したり、上昇部27の案内機構20の長さを伸縮自在としたりすることが考えられる。
【0022】
図5に、保持治具30が落下部28に位置する状態を示す。落下部28では、保持部材31,32が下向きに開き、被落下物Pを落下させる。第1の案内軌道21および第3の案内軌道23は、第2の案内軌道22を中心にして、徐々に間隔を増加させており、第1の結合部34と第3の結合部35との距離が拡大することにより、保持部材31,32が開閉中心部33を上側にして開いた状態となる。この例では、落下部28において、両方の保持部材31,32が開閉中心部33の周りで向きを変える構成である。保持部材31,32が被落下物Pに対称的に変位するので、落下時の被落下物Pの姿勢が安定する。なお、保持治具30を開く際に向きを変える保持部材が、保持部材31,32のどちらであるか、または両方であるかは、特に限定されない。
【0023】
保持治具30がチャック部25から落下部28まで移動する間、保持部材31,32は閉じて、被落下物Pを挟み込んで保持しているため、落下時の被落下物Pの姿勢は、載置部24において被落下物Pを保持部材31,32に載置するときに、開閉中心部33に対する向きに応じて任意に設定することができる。このため、例えば平たい袋容器であれば、上部、下部、側部、上側の隅部、下側の隅部など、所望の部位に落下時の衝撃を加えることができる。被落下物Pを水平に落下させる場合は、保持部材31,32の開き側の端部に、被落下物Pの幅を保持する構造を設けることができる。例えば保持部材を断面L字状とし、各一端部を開閉中心部として連結した構造が挙げられる。
【0024】
本実施形態の落下装置および落下方法によれば、開いた保持部材31,32に被落下物Pを載置した後、保持部材31,32を案内機構20に沿って移動させるだけで、被落下物Pが保持部材31,32に挟み込まれ、所定の高さまで移動し、被落下物Pを落下させるまでの一連の動作が一定の経路および手順に従って実施される。このため、耐衝撃性試験等の目的で多数の物品を落下させる場合に、被落下物Pを保持部材31,32に保持させる作業が簡単であり、しかも落下高さのばらつきを抑制することができる。
本実施形態の落下試験方法は、落下後の被落下物の破壊状況を作業員が確認すること等により、実施することができる。また、本実施形態の落下試験機は、本実施形態の落下装置のみから構成することもでき、あるいは更に他の手段を有することもできる。落下試験機は、例えば、落下中または落下後の被落下物の観測手段、落下時の下降速度や衝撃力などの計測手段を有することができる。
【0025】
被落下物Pが落下後に衝突する衝撃面は、落下部28の下方で任意の位置に設けることができる。衝撃面の材質は特に限定されないが、コンクリート、石材、金属、樹脂、土壌、木材などが挙げられる。落下装置本体11の底部12が開口部を有する場合には、落下装置本体11を載置する面を衝撃面とすることもできる。また、落下装置本体11の底部12を衝撃面としてもよいが、被落下物Pの落下により落下装置本体11が揺れると試験に影響するため、落下装置本体11を強固に固定することが好ましい。衝撃面は、一般には被落下物Pの寸法より十分に広い水平面であるが、この場合、被落下物が衝撃面に衝突する部位は、落下時の最下点となる。曲面、凹凸を有する面、棒状体の側面や先端面などを衝撃面とすることも可能である。
【0026】
被落下物Pを落下させた後の保持治具30は、落下前とは逆の順序で、落下部28から上昇部27、転向部26、チャック部25を経て、載置部24に戻される。案内機構20に沿った保持治具30の移動は、手動でもよく、電動などの自動でもよい。案内機構20の経路を循環路とし、落下部28から載置部24に戻る経路を移動部とは別に設けることもできる。循環路に2以上の保持治具30を設置すれば、被落下物Pを落下させた後の保持治具30が載置部24に戻るのを待たずに、次の保持治具30を落下部28まで移動させて落下操作を行うことができる。
【0027】
図6は、保持部材と案内軌道との間の結合構造の一例を示す断面図である。この例では、結合部34〜36は、保持部材31,32の側方に延びる凸部から構成されている。また、案内軌道21〜23は、結合部34〜36の凸部を収容する溝状の凹部から構成されている。開閉中心部33は、保持部材31,32の一方に設けられた、第2の結合部36を有する突出部と、保持部材31,32の他方に設けられた、第2の結合部36が挿入される穴を有する突出部とを組み合わせることにより形成されている。
【0028】
この構成では、案内軌道21〜23の溝に対して結合部34〜36の凸部が嵌合することにより、保持治具30は、軌道に沿った方向で前後自在に移動可能であるが、軌道に直交する方向の移動を規制されている。結合部34〜36は、移動時の摩擦を低減するため、車輪を有してもよい。結合部34〜36と案内軌道21〜23との結合構造は特に限定されず、機械的結合に限らず、電磁気的結合でもよい。
【0029】
案内軌道21〜23の構成は、底部を有する溝に限らず、側部13の厚さ方向を貫通した溝穴でもよく、その他のレールや、ベルト、チェーンなどでもよい。第2の案内軌道22を溝穴とし、この溝穴を通して、開閉中心部33に設けられた第2の結合部36が落下装置本体11の側部13から外側に突出した構造とした場合、第2の結合部36の先端をつまんで、保持治具30を手動で容易に移動させることができる。
【0030】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本実施形態の落下装置は、所定の高さまたは位置から物品を落下させることができるので、落下試験のような試験目的に限らず、物品の搬送、加工、不用品の破壊などにも利用することができる。被落下物(被試験体)は特に限定されないが、バッグ、パウチ、紙袋、缶等の容器、携帯電話機等の電子機器、家電用品、産業資材等が挙げられる。
落下装置の保持治具を上昇させる機構としては、保持治具に紐などの線状体を連結し、線状体を巻き上げる方法を採用することもできる。被落下物に線状体を接触させる必要がないので、絡まり等の問題を抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
P…被落下物、10…落下装置、11…落下装置本体、12…底部、13…側部、20…案内機構、21…第1の案内軌道、22…第2の案内軌道、23…第3の案内軌道、24…載置部、25…チャック部、26…移動部のうち転向部、27…移動部のうち上昇部、28…落下部、30…保持治具、31…第1の保持部材、32…第2の保持部材、33…開閉中心部、34…第1の結合部、35…第3の結合部、36…第2の結合部。