(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る切削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る切削装置の側面図である。
図3は、
図2に示す噴射ノズルを矢印Aから見たときの模式図である。なお、以下では、切削装置の一例を説明するが、本実施の形態に係る切削装置の構成はこれに限定されない。板状ワークを切削可能であれば、切削装置をどのような構成としてもよい。また、
図1においては、チャックテーブルに対して板状ワークの大きさを誇張して示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、切削装置1は、切削手段3に対してチャックテーブル4を相対移動させることで、チャックテーブル4に保持された板状ワークWを個々のチップに分割するように構成されている。板状ワークWは、長方形の樹脂基板60の表面に複数(本実施の形態では3つ)の樹脂製の凸部61が長手方向に並んで設けられたパッケージ基板で構成される。樹脂基板60は、例えば、PCB基板である。板状ワークWは、複数の凸部61が配置され内部に電極を配設された半導体デバイス用の複数のデバイス領域A1とデバイス領域A1の周囲の余剰領域A2に分かれている。各デバイス領域A1は格子状の分割予定ラインLによって複数の領域に区画され、各領域に半導体デバイス(不図示)が配設される。
【0012】
この板状ワークWは、余剰領域A2が端材として除去され、デバイス領域A1が分割予定ラインLに沿って個々のチップに分割される。なお、板状ワークWは、半導体デバイス用の基板に限らず、LEDデバイス用の金属基板でもよい。また、チップ搭載後の基板に限らず、チップ搭載前の基板でもよい。板状ワークWの凸部61は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂で形成されるが、樹脂基板60に凸部61を形成可能であれば、どのような樹脂でもよい。
【0013】
ハウジング11の上面には、X軸方向(切削方向)に延びる長方形状の開口部(不図示)が形成されている。この開口部は、チャックテーブル4と共に移動可能なX軸テーブル12及び蛇腹状の防水カバー13により被覆されている。防水カバー13の下方には、チャックテーブル4をX軸方向に移動させるボールネジ式の切削送り手段15(
図2参照)が設けられている。
【0014】
X軸テーブル12には、θテーブル14を介して上面視長方形状のチャックテーブル4が回転可能に設けられている。θテーブル14は、チャックテーブル4の中心を軸にチャックテーブル4を回転駆動する回転駆動部として機能する。チャックテーブル4は、板状ワークWを保持する吸引面41を有している。チャックテーブル4の吸引面41には、板状ワークWの複数の凸部61に対応し、長手方向に複数の凹部42が並んで形成されている。チャックテーブル4の各凹部42は、板状ワークWの各凸部61の高さに一致する深さを有し、板状ワークWの各凸部61を収容可能に形成されている。各凹部42の周囲には、板状ワークWの凸部61の周囲の余剰領域A2を支持するように支持面43が形成されている。
【0015】
チャックテーブル4の吸引面41には、板状ワークWの分割予定ラインLに対応して切削ブレード31が進入する進入溝44が形成されている。チャックテーブル4の凹部42の底面(吸引面41)には、進入溝44によって格子状に区画された領域で、板状ワークWの分割後の個々のチップを吸引保持する複数の吸引孔(不図示)が形成されている。また、凹部42の周囲の支持面43(吸引面41)には、板状ワークWの余剰領域A2を吸引保持する複数の吸引孔(不図示)が形成されている。各吸引孔は、それぞれチャックテーブル4内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されている。
【0016】
チャックテーブル4は、装置中央の受け渡し位置と切削手段3に臨む加工位置との間で往復移動される。なお、
図1は、チャックテーブル4が受け渡し位置に待機した状態を示している。ハウジング11では、この受け渡し位置に隣接した一の角部の奥方に、Y軸方向に平行な一対のガイドレール16が設けられている。一対のガイドレール16は、板状ワークWのX軸方向の位置決めをする。
【0017】
一対のガイドレール16の近傍には、ガイドレール16とチャックテーブル4との間で板状ワークWを搬送する第1の搬送アーム17が設けられている。第1の搬送アーム17の上面視L字状のアーム部17aが旋回することで板状ワークWが搬送される。また、受け渡し位置のチャックテーブル4の後方には、スピンナ式の洗浄機構18が設けられている。洗浄機構18では、回転中のスピンナテーブル18aに向けて洗浄水が噴射されて板状ワークWが洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられて板状ワークWが乾燥される。
【0018】
ハウジング11上には、切削手段3を支持する支持台19が設けられている。切削手段3は、加工位置のチャックテーブル4の上方に位置付けられており、板状ワークWの表面から切削ブレード31を切り込ませて板状ワークWを切削するように構成される。切削手段3は、板状ワークWを切削する切削ブレード31を回転可能に装着する。切削手段3は、インデックス送り手段20によってY軸方向にインデックス送りされることにより、切削手段3とチャックテーブル4とがY軸方向に相対移動される。また、切削手段3は、昇降手段(不図示)によってZ軸方向に移動される。インデックス送り手段20及び昇降手段は、例えばボールネジ式の移動機構で構成される。
【0019】
切削手段3は、スピンドル32の先端に切削ブレード31を装着し、切削ブレード31の外周を覆うようにブレードカバー33を設けて構成される。切削ブレード31は、例えばリング状のワッシャーブレードで構成され、ダイヤモンド等の砥粒を結合材料で結合して形成される。ブレードカバー33は、切削ブレード31の略上半部を覆う箱型に形成されている。ブレードカバー33には、切削部分に向けて切削水を噴射する切削水ノズル34が設けられている。ここで、加工位置に対して受け渡し位置側を前方とし、受け渡し位置に対して加工位置側を後方として説明する。
【0020】
切削水ノズル34は、ブレードカバー33の後方下端から前方に向かって延びる略L字状に形成されており、切削水ノズル34の先端が切削ブレード31の略下半部に位置付けられている。切削水ノズル34の先端には、複数のスリット35(
図2参照)が形成されている。切削水は、このスリット35から切削ブレード31に向かって噴射される。切削水を供給しながら、高速回転する切削ブレード31で板状ワークWを切り込むことにより、板状ワークWは分割予定ラインに沿って切削される。
【0021】
支持台19の側面19aには、チャックテーブル4と洗浄機構18との間で板状ワークWを搬送する第2の搬送アーム21が設けられている。第2の搬送アーム21のアーム部21aは斜めに延びており、このアーム部21aがY軸方向に移動することで板状ワークWが搬送される。また、支持台19には、チャックテーブル4の移動経路(X軸方向)の上方を横切るようにして、撮像部22を支持する片持支持部23が設けられている。撮像部22は片持支持部23の下方から突出し、撮像部22によって板状ワークWが撮像される。撮像部22による撮像画像は、切削手段3とチャックテーブル4とのアライメントに利用される。
【0022】
また、切削装置1は、板状ワークWの上面に形成されるバリを除去するバリ取り手段5を備えている。バリ取り手段5は、板状ワークWに向かって高圧水を噴射する複数のバリ取りノズル51と、バリ取りノズル51に高圧水を供給する高圧水供給手段52とを有している。本実施の形態では、上記したバリ取りノズル51を複数本束ねて1つの噴射ノズル50とし、この噴射ノズル50を片持支持部23の内部に配設している。噴射ノズル50は、昇降手段55(
図2参照)によって、Z軸方向に移動可能に構成される。
【0023】
バリ取りノズル51は、鉛直方向に延びる円柱状に形成されている。バリ取りノズル51の下端には、板状ワークWの上面に向かって高圧水を噴射する噴射口53が形成されている。噴射口53は、バリ取りノズル51の内部に形成される流路(不図示)に連通されており、当該流路には、バルブ54を介して高圧水供給手段52が接続されている。高圧水供給手段52は、コンプレッサ(不図示)によって圧力が高められた流体(高圧水)を各バリ取りノズル51に供給する。
【0024】
ここで、
図3を参照して噴射ノズル50の詳細構成について説明する。
図3に示すように、噴射口53は、バリ取りノズル51の中央において、Y軸方向に長いスリットで形成される。噴射口53のY軸方向の幅は、バリ取りノズル51の半径(後述するピッチPの半分)以上の大きさを有している。本実施の形態では、同一形状の7本のバリ取りノズル51を切削送り方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)で2列に分け、X軸方向後側(上流側)の列を4本に並べ、X軸方向前側(下流側)の列を3本に並べて配設している。各バリ取りノズル51の外周面は互いに接触している。ここで、隣接する各バリ取りノズル51のY軸方向における中心間距離をピッチPとして表記する。
【0025】
X軸方向前側の3本のバリ取りノズル51は、X軸方向後側の4本のバリ取りノズル51に対して半ピッチずらされている。これにより、X軸方向後側の噴射口53の一端とX軸方向前側の噴射口53の一端とがX軸方向において部分的に重なっている。すなわち、X軸方向後側の噴射口53の端部と隣接する噴射口53の端部との隙間Sを埋めるように、X軸方向前側の噴射口53が位置付けられている。この結果、二点鎖線で示す範囲R(3ピッチ+1つの噴射口53の幅(以下、噴射範囲Rと記す))で高圧水を噴射することができる。なお、複数の噴射口53によって形成される高圧水の噴射範囲Rは、板状ワークWの短手方向の幅に比べて小さくなっている。
【0026】
図1に戻り、ハウジング11の角部には、装置各部への指示を受け付ける入力手段24が設けられている。また、支持台19の上面にはモニタ25が配置されている。モニタ25には、撮像部22で撮像された画像、板状ワークWの加工条件等が表示される。また、切削装置1には、装置各部を統括制御する制御手段26が設けられている。制御手段26は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、制御手段26は、チャックテーブル4を所定の角度で回転させるように、θテーブル14に指令を出す角度指令部27を有している。制御手段26には、
図5において後述するチャックテーブル4の動作パターンが記憶されており、角度司令部27は、
図5で示す動作パターンに基づいてθテーブル14に指令を出す。これにより、θテーブル14は、角度指令部27からの指令を受けてチャックテーブル4を所定の角度で回転させる。本実施の形態では、上記したθテーブル14と角度指令部27とでチャックテーブル回転手段が構成される。
【0027】
このように構成された切削装置1では、板状ワークWがチャックテーブル4に吸引保持された後、切削手段3が所定位置に位置付けられる。そして、切削ブレード31が高速回転されながら板状ワークWが切削送りされることにより、板状ワークWに切削溝が形成される。切削加工後、チャックテーブル4の角度を変えながら、高圧水を噴射しているバリ取りノズル51に対して板状ワークWが切削送りされる。これにより、板状ワークWの上面全体に高圧水が噴射され、板状ワークWの上面に形成されるバリが除去される。
【0028】
次に、
図4を参照して、本実施の形態に係る切削装置の切削動作について説明する。本実施の形態に係る切削装置の切削動作を示す側面図である。
【0029】
図4に示すように、先ず、板状ワークWは、複数の凸部61が形成される表面側を下に向けた状態でチャックテーブル4上に載置される。このとき、板状ワークWの各凸部61はチャックテーブル4の各凹部42に収容され、デバイス領域A1は凹部42の底面に接触する一方、余剰領域A2は支持面43に接触する。そして、吸引面41に生じる負圧により、板状ワークWはチャックテーブル4(吸引面41)に吸引保持される。
【0030】
この状態で、θテーブル14によりチャックテーブル4が回転され、切削送り手段15の切削送り方向(X軸方向)と板状ワークWの分割予定ラインLとが平行に合わせられる。そして、インデックス送り手段20によって切削手段3がY軸方向に移動され、板状ワークWの分割予定ラインL上に切削ブレード31が位置付けられるように切削手段3の位置調整がなされる。
【0031】
次に、図示しない昇降手段によって切削手段3がZ軸方向に移動され、板状ワークWをフルカット可能な高さまで切削ブレード31が降下される。そして、バリ取りノズル51から板状ワークWに向かって高圧水を噴射しながら、高速回転する切削ブレード31に対してチャックテーブル4がX軸方向に移動(切削送り)される。切削ブレード31は、進入溝44に侵入して板状ワークWを分割予定ラインLに沿って切削する。これにより、板状ワークWには、分割予定ラインLに沿う切削溝Gが形成される。なお、このとき、切削溝G(樹脂基板60)のエッジ部分には、切削ブレード31の回転方向に沿って巻き上げられたバリ(不図示)が発生している。
【0032】
一列の分割予定ラインLの切削が終了したら、インデックス送り手段20(
図1参照)によって切削手段3がY軸方向に移動され、隣接する分割予定ラインL上に切削ブレード31が位置付けられる。そして、新たな分割予定ラインLに沿って切削加工が実施される。一方向の全ての分割予定ラインLに沿って切削加工が終了したら、一方向の分割予定ラインLに直交する他方向の分割予定ラインLの切削加工が実施される。このように、板状ワークWの全ての分割予定ラインLが切削されると、板状ワークWには、切削溝Gが形成され、切削溝Gにバリが形成される。
【0033】
次に、
図5から
図11を参照して、本実施の形態に係るバリ取り方法について説明する。
図5は、本実施の形態に係る切削装置のバリ取り動作におけるチャックテーブルの動作パターンを示す表である。
図6は、本実施の形態に係る切削装置のバリ取り動作を示す側面図である。
図7から
図11は、本実施の形態に係る切削装置のバリ取り動作の一例を示す上面図である。
【0034】
本実施の形態では、
図3において説明したように、複数のバリ取りノズル51を束ねて1つの噴射ノズル50として構成し、所定の幅(
図3で示す範囲R)で板状ワークWの表面に高圧水を噴射するようにしている。上記したように、複数の噴射口53によって形成される高圧水の噴射範囲Rは、板状ワークWの幅に対して小さい。このため、噴射口53から高圧水が噴射されている状態で板状ワークWを噴射ノズル50に対して一回切削送りさせたとしても、板状ワークWの上面全体に高圧水を噴射することができない。
【0035】
そこで、本実施の形態では、板状ワークWを同一方向で数往復切削送りした後、角度指令部27からの指令により、チャックテーブル4を所定角度回転させてから新たに切削送りを実施している。このため、先の切削送りでは板状ワークWに高圧水を噴射することができなかった領域に、高圧水を噴射することが可能になる。よって、チャックテーブル4を様々な角度に調整し、各角度毎に板状ワークWを噴射ノズル50に対して切削送りさせることで、噴射ノズル50の噴射範囲Rによらず、板状ワークWの上面全体に高圧水を噴射することができる。この結果、切削加工によって板状ワークWの上面に形成されたバリを除去することができる。
【0036】
本実施の形態において、板状ワークWの上面全体とは、半導体デバイス等が形成されるデバイス領域A1全体をいい、余剰領域A2は含まれないものとしている。余剰領域A2は、上記したように、分割後に端材として除去されるものであるため、余剰領域A2のバリが除去されなくても問題はない。なお、この構成に限定されず、余剰領域A2全体にも高圧水が噴射されるように、チャックテーブル4の回転角度を調整してもよい。
【0037】
先ず、バリ動作におけるチャックテーブル4の動作パターンについて説明する。
図5に示すように、本実施の形態では、No.1からNo.6までの動作パターンが予め制御手段26に記憶されている。表中の「角度」は、切削送り方向(X軸方向)に対する板状ワークWの長手方向(チャックテーブル4)の角度を示している。表中の「ステップ角度」は、チャックテーブル4の送り角度を示している。表中の「往復回数」は、各角度における切削送りの往復回数を示している。
【0038】
No.1の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が0°〜14°の範囲で2°ずつ送られ、各角度で切削送りが4往復実施される。No.2の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が−2°〜−14°の範囲で−2°ずつ送られ、各角度で切削送りが4往復実施される。No.3の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が182°〜194°の範囲で2°ずつ送られ、各角度で切削送りが4往復実施される。NO.4の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が178°〜166°の範囲で−2°ずつ送られ、各角度で切削送りが4往復実施される。No.5の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が52°に回転され、その角度で切削送りが4往復実施される。No.6の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が−52°に回転され、その角度で切削送りが4往復実施される。
【0039】
本実施の形態では、No.1からNo.6の順でチャックテーブル4の角度を調整し、各角度のおいて板状ワークW(チャックテーブル4)が噴射ノズル50に対して切削送りされる。以下、
図6から
図11を参照して、バリ取り動作及びNo.1からNo.6までの各動作パターンについて説明する。なお、
図7から
図11においては、説明の便宜上、高圧水が噴射された領域を噴射領域Tで示している。
【0040】
図6及び
図7に示すように、No.1の動作パターンにおいては、板状ワークWの長手方向と切削送り方向との角度が0°になるように、チャックテーブル4が回転される。そして、噴射ノズル50(複数のバリ取りノズル51)における噴射範囲RのY軸方向の中心が、板状ワークWの短手方向(Y軸方向)の中心に一致するように、インデックス送り手段20(
図1参照)によってY軸方向に移動される。噴射ノズル50は昇降手段55によって降下され、噴射口53の先端が板状ワークWの上面との間で僅かに隙間を空けるように接近される。
【0041】
そして、噴射口53から噴射範囲Rで高圧水を噴射しながら、噴射ノズル50に対して板状ワークW(チャックテーブル4)が切削送りされる。これにより、板状ワークWの上面には、噴射領域Tの分だけ高圧水が噴射される。なお、この切削送りは、0°において4往復実施される。また、バリ取り動作時の切削送り速度は、例えば、200mm/secであり、切削溝Gに形成されたバリを適切に除去できる程度に調整されている。また、上記したように、噴射口53の先端が板状ワークWの上面に接近されているため、高圧水が板状ワークWの上面に衝突するまでの間、高圧水の圧力低下を小さくすることができる。この結果、良好にバリを除去することができる。
【0042】
一方向(0°)において、切削送りが4往復実施されたら、チャックテーブル4を2°だけ回転させ、上記と同様に切削送りを4往復実施する。この動作をチャックテーブル4の角度が14°になるまで繰り返し、この結果、
図8に示す噴射領域Tの分だけ、板状ワークWの上面に高圧水が噴射される。
【0043】
次に、No.2の動作パターンが実施される。No.2の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が−2°になるまで回転され、高圧水を噴射しながら再び切削送りが4往復される。そして、−14°まで−2°ずつ4往復の切削送りが実施されることで、
図9に示す噴射領域Tの分だけ、板状ワークWの上面に高圧水が噴射される。
【0044】
次に、No.3の動作パターンが実施される。No.3の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が182°になるまで回転され、高圧水を噴射しながら再び切削送りが4往復される。そして、194°まで2°ずつ4往復の切削送りが実施されることで、
図8と同様に噴射領域Tの分だけ、板状ワークWの上面に高圧水が噴射される。
【0045】
次に、No.4の動作パターンが実施される。No.4の動作パターンでは、チャックテーブル4の角度が178°になるまで回転され、高圧水を噴射しながら再び切削送りが4往復される。そして、166°まで−2°ずつ4往復の切削送りが実施されることで、
図9と同様に噴射領域Tの分だけ、板状ワークWの上面に高圧水が噴射される。
【0046】
そして、No.5及びNo.6の動作パターンが実施される。No.5の動作パターンでは、
図10に示すように、チャックテーブル4の角度が52°になるまで回転され、高圧水を噴射しながら切削送りが4往復される。その後、No.6の動作パターンでは、
図11に示すように、チャックテーブル4の角度が−52°になるまで回転され、高圧水を噴射しながら切削送りが4往復される。以上により、全てのデバイス領域A1において、板状ワークWの上面に高圧水が噴射され、切削加工によって板状ワークWの上面に形成されたバリを除去することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る切削装置1によれば、切削ブレード31によって板状ワークWの分割予定ラインL全てに切削溝Gが形成された後、チャックテーブル4の所定角度毎に、高圧水を噴射しているバリ取りノズル51に対して板状ワークWが切削送りされる。これにより、板状ワークWの幅に対して噴射口53から噴射される噴射範囲Rの幅が小さい場合であっても、板状ワークWの上面全体(全てのデバイス領域A1に形成される切削溝G)に高圧水を噴射することができる。すなわち、板状ワークWの幅に関係なく、板状ワークWの上面全体に高圧水を噴射することができる。この結果、板状ワークWの上面に形成されるバリを除去することができる。また、板状ワークWの大きさに合わせて噴射口53を大きくする必要がないため、大容量のコンプレッサを用いずに高圧を維持した状態で高圧水を噴射することができる。よって、安価な構成で良好なバリ取り効果を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0049】
例えば、上記した実施の形態においては、7本のバリ取りノズル51を束ねて噴射ノズル50とする構成としたが、この構成に限定されない。バリ取りノズル51の本数は特に限定されるものでなく、少ない本数(例えば、5本、6本)で構成してもよい。本数を変更する場合においても2列で構成し、列が異なるバリ取りノズル51は半ピッチずらして配設する。例えば、Y軸方向に所定の幅の噴射口を有する単一の噴射ノズル50(バリ取りノズル51)で構成してもよいが、複数の噴射口53を備え、噴射口53は、2列で構成し列が異なる噴射口53は半ピッチずらされている。
【0050】
また、上記した実施の形態において、噴射口53は、Y軸方向に長いスリットで形成される構成としたが、この構成に限定されない。噴射口53は、例えば、円や楕円形状に形成されてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態において、噴射口53のY軸方向の幅がバリ取りノズル51の半径以上の大きさを有する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、
図12に示すような構成としてもよい。
図12は、変形例に係る噴射ノズルの模式図である。変形例に係る噴射ノズル50は、噴射口53のY軸方向の幅がバリ取りノズル51の半径より小さい点で本実施の形態と相違する。この場合、噴射口53の幅が小さくなることで、高圧水の圧力をより高くすることができ、バリ取り効果を高めることができる。また、噴射口53から噴射される高圧水は、板状ワークWに衝突する際には噴射口53の口径より拡径され、スポットの型が略楕円形状になる。このとき、スポットの中央部分が最も圧力が高くなっており、スポットの中央部分がバリに衝突することで、バリを板状ワークWから脱落させて効果的に除去することができる。なお、噴射口53の幅が小さくなることで高圧水の噴射領域が狭くなり、
図12に示すように、Y軸方向の噴射範囲Rが断続的に形成されてしまう。しかしながら、
図5で説明したように、No.1からNo.4の動作パターンによって、チャックテーブル4の角度を細かく2°旋回させる毎にバリ取り(切削送り)を繰り返すことにより、全てのデバイス領域A1に形成される切削溝Gに、高圧水を噴射することができる。
【0052】
また、上記した実施の形態においては、切削ブレード31をチャックテーブル4の切削送り方向と同じ方向に回転させて切削するいわゆるダウンカットにより、切削溝Gを形成する構成としたが、この構成に限定されない。切削ブレード31をチャックテーブル4の切削送り方向と反対方向に回転させて切削するアップカットにより、切削溝Gを形成してもよい。