(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動機構は、基板の周縁部を支持するチャックと基板の周縁部との間に所定のクリアランスが形成された状態で、前記チャックおよび前記基板を移動させることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線するためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
従って、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械研磨は、基板処理装置を用いて、シリカ(SiO
2)やセリア(CeO
2)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドに供給しつつウェハを研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
上述したCMPプロセスを行う基板処理装置は、研磨パッドを有する研磨テーブルと、ウェハ(基板)を保持するためのトップリングとを有した研磨ユニットを備えている。研磨テーブルとトップリングとは、それぞれ、回転可能に構成されている。これら研磨テーブルとトップリングを回転させながら、研磨パッド上に研磨液(スラリー)が供給される。この状態で、トップリングでウェハを研磨パッドに押圧することにより、ウェハと研磨パッドとの間に研磨液が存在した状態でウェハが研磨される。研磨されたウェハは、搬送機構によって洗浄ユニットに搬送され、当該洗浄ユニットで研磨されたウェハが洗浄および乾燥させられる。
【0005】
研磨ユニットでは、研磨されたウェハを研磨パッドから引き上げるとき、またはトップリングから研磨されたウェハをリリースするときに、ウェハが割れることがある。上述した搬送機構には、そのウェハ搬送ステージ上にウェハが存在しているか否かを検出する光センサが備えられているが、この光センサの光軸がウェハの割れた部分を通過しない限り、このようなウェハの割れを検知することができない。
【0006】
一部破損したウェハが欠損を検知されずに洗浄ユニットまで搬送されてしまうと、洗浄ユニットでウェハの洗浄を実施した際に、ウェハが粉々に割れてしまうことがある。ウェハが粉々に割れると、洗浄ユニットに配置されたロールスポンジなどの洗浄具にウェハの破片が付着し、これら洗浄具にダメージを与えてしまう。さらに、当該洗浄具を交換する必要が生じ、基板処理装置のランニングコストが上昇してしまう。
【0007】
また、破片が付着したままの洗浄具を用いてウェハを洗浄すると、ウェハを汚染してしまうだけでなく、ウェハに傷(スクラッチ)が付いてしまう。そのため、ウェハが粉々に割れてしまった場合は、基板処理装置の運転を停止して、当該基板処理装置内に散乱したウェハの破片全てが回収できるように、基板処理装置内部を十分に清掃する必要が生じる。しかしながら、このような清掃には非常に長い時間がかかり、基板処理装置のダウンタイムが増大してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る基板処理装置の実施形態について
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1乃至
図8において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す平面図である。この基板処理装置は、ウェハなどの基板を研磨し、洗浄し、乾燥することができる複合装置である。
図1に示すように、基板処理装置は、矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は隔壁1a,1bによってロード/アンロード部2と研磨部3と洗浄部4とに区画されている。基板処理装置は、ウェハ処理動作を制御する動作制御部5を有している。
【0018】
ロード/アンロード部2は、多数のウェハ(基板)をストックする基板カセットが載置されるフロントロード部20を備えている。このロード/アンロード部2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセットの配列方向に沿って移動可能な搬送ロボット(ローダー)22が設置されている。搬送ロボット22は走行機構21上を移動することによってフロントロード部20に搭載された基板カセットにアクセスできるようになっている。
【0019】
研磨部3は、ウェハの研磨が行われる領域である。この研磨部3は、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、第4研磨ユニット3Dを備えている。
図1に示すように、第1研磨ユニット3Aは、研磨面を有する研磨パッド10が取り付けられた第1研磨テーブル30Aと、ウェハを保持しかつウェハを研磨テーブル30A上の研磨パッド10に押圧しながら研磨するための第1トップリング31Aと、研磨パッド10に研磨液(例えばスラリー)やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための第1研磨液供給ノズル32Aと、研磨パッド10の研磨面のドレッシングを行うための第1ドレッサ33Aと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体を霧状にして研磨面に噴射する第1アトマイザ34Aと、を備えている。
【0020】
同様に、第2研磨ユニット3Bは、研磨パッド10が取り付けられた第2研磨テーブル30Bと、第2トップリング31Bと、第2研磨液供給ノズル32Bと、第2ドレッサ33Bと、第2アトマイザ34Bとを備えている。第3研磨ユニット3Cは、研磨パッド10が取り付けられた第3研磨テーブル30Cと、第3トップリング31Cと、第3研磨液供給ノズル32Cと、第3ドレッサ33Cと、第3アトマイザ34Cとを備えている。第4研磨ユニット3Dは、研磨パッド10が取り付けられた第4研磨テーブル30Dと、第4トップリング31Dと、第4研磨液供給ノズル32Dと、第4ドレッサ33Dと、第4アトマイザ34Dとを備えている。
【0021】
第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、および第4研磨ユニット3Dは、互いに同一の構成を有しているので、以下、第1研磨ユニット3Aについて
図2を参照して説明する。
図2は、第1研磨ユニット3Aを模式的に示す斜視図である。なお、
図2において、ドレッサ33Aおよびアトマイザ34Aは、図示が省略されている。
【0022】
研磨テーブル30Aは、テーブル軸30aを介してその下方に配置されるテーブルモータ19に連結されており、このテーブルモータ19により研磨テーブル30Aが矢印で示す方向に回転されるようになっている。研磨テーブル30Aの上面には研磨パッド10が貼付されており、研磨パッド10の上面がウェハWを研磨する研磨面10aを構成している。トップリング31Aはトップリングシャフト16の下端に連結されている。トップリング31Aは、真空吸引によりその下面にウェハWを保持できるように構成されている。トップリングシャフト16は、図示しない上下動機構により上下動するようになっている。
【0023】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。トップリング31Aおよび研磨テーブル30Aをそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル32Aから研磨パッド10上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、トップリング31Aは、ウェハWを研磨パッド10の研磨面10aに押し付ける。ウェハWの表面は、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用により研磨される。研磨終了後は、ドレッサ33A(
図1参照)による研磨面10aのドレッシング(コンディショニング)が行われ、さらにアトマイザ34A(
図1参照)から高圧の流体が研磨面10aに供給されて、研磨面10aに残留する研磨屑や砥粒などが除去される。
【0024】
図1に戻り、第1研磨ユニット3Aおよび第2研磨ユニット3Bに隣接して、第1リニアトランスポータ6が配置されている。この第1リニアトランスポータ6は、4つの搬送位置(第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4)の間でウェハを搬送する機構である。また、第3研磨ユニット3Cおよび第4研磨ユニット3Dに隣接して、第2リニアトランスポータ7が配置されている。この第2リニアトランスポータ7は、3つの搬送位置(第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7)の間でウェハを搬送する機構である。
【0025】
ウェハは、第1リニアトランスポータ6によって研磨ユニット3A,3Bに搬送される。第1研磨ユニット3Aのトップリング31Aは、そのスイング動作により研磨テーブル30Aの上方位置と第2搬送位置TP2との間を移動する。したがって、トップリング31Aと第1リニアトランスポータ6との間でのウェハの受け渡しは第2搬送位置TP2で行われる。
【0026】
同様に、第2研磨ユニット3Bのトップリング31Bは研磨テーブル30Bの上方位置と第3搬送位置TP3との間を移動し、トップリング31Bと第1リニアトランスポータ6との間でのウェハの受け渡しは第3搬送位置TP3で行われる。第3研磨ユニット3Cのトップリング31Cは研磨テーブル30Cの上方位置と第6搬送位置TP6との間を移動し、トップリング31Cと第2リニアトランスポータ7との間でのウェハの受け渡しは第6搬送位置TP6で行われる。第4研磨ユニット3Dのトップリング31Dは研磨テーブル30Dの上方位置と第7搬送位置TP7との間を移動し、トップリング31Dと第2リニアトランスポータ7との間でのウェハの受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
【0027】
研磨ユニット間のウェハの受け渡し機構は上述の例に限定されることなく、例えばウェハを保持したままトップリングが直接他の研磨ユニットに移動することによりウェハを搬送してもよい。ウェハは、4つの研磨ユニット3A〜3Dのすべてによって研磨されてもよいし、研磨ユニット3A〜3Dのうちの1または複数の研磨ユニット(例えば、第1研磨ユニット3Aおよび第2研磨ユニット3B)によって研磨されてもよい。
【0028】
第1搬送位置TP1に隣接して、搬送ロボット22からウェハを受け取るためのリフタ11が配置されている。ウェハはこのリフタ11を介して搬送ロボット22から第1リニアトランスポータ6に渡される。リフタ11と搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ(図示せず)が隔壁1aに設けられており、ウェハの搬送時にはシャッタが開かれて搬送ロボット22からリフタ11にウェハが渡されるようになっている。
【0029】
第1リニアトランスポータ6と、第2リニアトランスポータ7と、洗浄部4との間にはスイングトランスポータ12が配置されている。第1リニアトランスポータ6から第2リニアトランスポータ7へのウェハの搬送は、スイングトランスポータ12によって行われる。ウェハは、第2リニアトランスポータ7によって第3研磨ユニット3Cおよび/または第4研磨ユニット3Dに搬送される。
【0030】
スイングトランスポータ12の側方には、図示しないフレームに設置されたウェハのバッファステージ72が配置されている。このバッファステージ72は、
図1に示すように、第1リニアトランスポータ6に隣接して配置されており、第1リニアトランスポータ6と洗浄部4との間に位置している。スイングトランスポータ12は、第4搬送位置TP4、第5搬送位置TP5、およびバッファステージ72の間でウェハを搬送する。
【0031】
研磨ユニット3A,3Bで研磨されたウェハWは、第1リニアトランスポータ6によって第4搬送位置TP4に搬送される。さらにウェハWは、スイングトランスポータ12により、第4搬送位置TP4から第5搬送位置TP5の上方にある基板異常検出位置(後述する)に搬送され、この基板異常検出位置にて当該ウェハWの割れなどの異常検出が行われる。研磨ユニット3C,3Dで研磨されたウェハWは、第2リニアトランスポータ7により、第5搬送位置TP5に搬送される。さらにウェハWは、スイングトランスポータ12により第5搬送位置TP5の上方にある上記基板異常検出位置に搬送され、この基板異常検出位置にて当該ウェハWの割れなどの異常検出が行われる。
【0032】
異常検出が行われた後、ウェハは、スイングトランスポータ12によってバッファステージ72に載置される。バッファステージ72上のウェハは、洗浄部4の第1の搬送ロボット77によって洗浄部4に搬送される。
図1に示すように、洗浄部4は、研磨されたウェハを洗浄液やロールスポンジ(図示せず)などを用いて洗浄する第1の洗浄ユニット73および第2の洗浄ユニット74と、洗浄されたウェハを乾燥する乾燥ユニット75とを備えている。第1の搬送ロボット77は、ウェハをバッファステージ72から第1の洗浄ユニット73に搬送し、さらに第1の洗浄ユニット73から第2の洗浄ユニット74に搬送するように動作する。第2の洗浄ユニット74と乾燥ユニット75との間には、第2の搬送ロボット78が配置されている。この第2の搬送ロボット78は、ウェハを第2の洗浄ユニット74から乾燥ユニット75に搬送するように動作する。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係るスイングトランスポータ12の構造を示す斜視図である。スイングトランスポータ12は、基板処理装置のフレーム100に設置された、鉛直方向に延びるリニアガイド101と、リニアガイド101に取り付けられたスイング機構102と、スイング機構102を鉛直方向に移動させる駆動源としての昇降駆動機構105とを備えている。この昇降駆動機構105としては、サーボモータとボールねじを有するロボシリンダなどを採用することができる。スイング機構102にはスイングアーム106を介して反転機構107が連結されている。さらに反転機構107にはウェハWを把持する把持機構110が連結されている。
【0034】
スイングアーム106は、スイング機構102の図示しないモータの駆動により該モータの回転軸を中心として旋回するようになっている。これにより、反転機構107および把持機構110が一体的に旋回運動し、把持機構110は、第4搬送位置TP4、第5搬送位置TP5、およびバッファステージ72の間を移動する。
【0035】
把持機構110は、ウェハWを把持する一対の把持アーム111を有している。それぞれの把持アーム111の両端には、ウェハWのエッジ(すなわち、ウェハWの周縁部)を把持するチャック112が設けられている。これらのチャック112は把持アーム111の両端から下方に突出して設けられている。さらに把持機構110は、一対の把持アーム111をウェハWに近接および離間する方向に移動させる開閉機構113を備えている。
【0036】
ウェハWは次のようにして把持される。把持アーム111を開いた状態で、把持アーム111のチャック112がウェハWと同一平面内に位置するまで把持機構110を昇降駆動機構105により下降させる。そして、開閉機構113を駆動して把持アーム111を互いに近接する方向に移動させ、把持アーム111のチャック112でウェハWのエッジを把持する。チャック112がウェハWを把持しているとき、チャック112とウェハWのエッジとの間には所定のクリアランスが形成されている。すなわち、ウェハWは、チャック112によって完全には拘束されず、チャック112の溝(図示せず)に遊嵌された状態で把持される。この状態で、昇降駆動機構105により把持アーム111を上昇させる。
【0037】
反転機構107は、把持機構110に連結された回転軸108と、この回転軸108を回転させるロータリーアクチュエータ(図示せず)とを有している。ロータリーアクチュエータは、空気圧などの流体圧で動作する流体圧式のロータリーアクチュエータを採用することができる。流体圧式のロータリーアクチュエータに代えて、回転軸108を回転させるためのモータを備えたモータ駆動式のロータリーアクチュエータを用いてもよい。ロータリーアクチュエータにより回転軸108を駆動させることにより、把持機構110は、その全体が180度回転し、これにより把持機構110に把持されたウェハWが反転する。
【0038】
把持機構110は、ウェハWを把持したままバッファステージ72に移動し、把持アーム111を開くことでウェハWがバッファステージ72に載置される。バッファステージ72に載置されたウェハWは、洗浄部4の第1の搬送ロボット77によって洗浄部4に搬送される。この実施形態の基板処理装置では、ウェハWは、研磨部3、リニアトランスポータ6および/または7、スイングトランスポータ12、バッファステージ72、および洗浄部4にこの順番に搬送される。
【0039】
図2に示す研磨ユニット3Aにおいて、研磨されたウェハWを研磨パッド10から引き上げるとき、または上記搬送位置でトップリング31AからウェハWをリリースするときに、ウェハWの一部が割れることがある。そこで、
図3に示すように、本実施形態の基板処理装置には、ウェハの割れなどの異常を検出するための基板異常検出部40が設けられる。以下、この基板異常検出部40について説明する。
【0040】
本発明者らは、カメラを用いてウェハを撮像することにより、ウェハの割れを検出することを着想し、
図4乃至
図6に示す評価実験1〜3を行ったものである。この評価実験1〜3では、ウェハWをスイングトランスポータ12の把持機構110により水平な姿勢で把持した状態で実験を行なったが、
図4乃至
図6では把持機構110の図示は省略している。また、評価実験1〜3では、
図1に示す装置内においてスイングトランスポータ12が設置されている箇処の底面が背景(Background)であるが、
図4乃至
図6では背景(Background)を模式化して帯状に図示している。
【0041】
図4(a)は、評価実験1で用いた基板異常検出部40の構成を示す模式図である。
図4(a)に示すように、基板異常検出部40は、ウェハWの斜め上方に配置され赤外領域の光をウェハWに投光する光源41と、ウェハWの上方に配置されウェハWを上方から撮像するカメラ42とを備えている。光源41は、CMOS素子の分光感度特性が得られる400nm〜1000nmの波長領域においてウェハW上に形成された銅配線等の金属部のフォトコロージョンを防止するために、長波長の光を発するように構成されている。実験では940nmの波長の光を発する光源を用いている。カメラ42は、CMOSセンサー内蔵のカメラを用いている。
【0042】
図4(a)に示すように構成された基板異常検出部40において、光源41から赤外領域の光をウェハWに投光すると、ウェハWからの反射光およびウェハW上の水滴からの乱反射光がカメラ42に入射して撮影される。
図4(b)は、
図4(a)に示すカメラ42により撮影された画像を示す。
図4(b)に示す画像から分かるように、ウェハは黒色の円形の画像部分として写っており、この黒色の円形の画像部分の中に、ウェハW上の水滴が乱反射して白点になって写っている。そのため、これら白点がコントラストの障害となり、誤検知の原因になる。研磨直後のウェハには研磨液が付着しているため、評価実験1の構成は、好ましくないことが判明した。
【0043】
図5(a)は、評価実験2で用いた基板異常検出部40の構成を示す模式図である。
図5(a)に示すように、基板異常検出部40は、
図4(a)に示す基板異常検出部40に対して、ウェハW上に純水(DIW)を供給してウェハW上に水膜を形成するノズル43を追加したものである。このように、ノズル43から純水(DIW)を供給してウェハW上に水膜を形成することにより、ウェハ上の水滴からの乱反射を防止するようにしている。
図5(a)に示す評価実験2で用いた光源41及びカメラ42は、
図4(a)に示す評価実験1で用いた光源41及びカメラ42とそれぞれ同様の構成である。
【0044】
図5(a)に示すように構成された基板異常検出部40において、光源41から赤外領域の光を水膜が形成されたウェハWに投光すると、ウェハW上の水膜の全面から均一な反射光がカメラ42に入射して撮影される。
図5(b)は、
図5(a)に示すカメラ42により撮影された画像を示す。
図5(b)に示す画像から分かるように、ウェハ上から乱反射される光がないため、ウェハは黒色の円形の画像部分として写っている。しかしながら、背景も薄暗い画像部分になっているため、ウェハの画像部分と背景の画像部分とのコントラストが鮮明ではない。なお、画像中、矩形の白色の画像部分は、ウェハを把持する把持機構110の開閉機構113に対応した画像部分である。このように、ウェハの画像部分と背景の画像部分とのコントラストが必ずしも鮮明ではないが、両画像部分の明るさには若干差異があるのでウェハと背景とを画像処理で識別することができるため、評価実験2の構成を用いてウェハの割れを検知できることが判明した。
【0045】
図6(a)は、評価実験3で用いた基板異常検出部40の構成を示す模式図である。
図6(a)に示すように、基板異常検出部40は、ウェハWの下側に配置され互いに間隔をおいて配置された2つの光源41,41と、ウェハWの上方に配置されウェハWを上方から撮像するカメラ42とを備えている。2つの光源41,41は、斜め下方に光を投光するように傾斜していて背景を照らすように構成されている。光源41の角度は矢印で示すように変更できるようになっている。
図6(a)に示す評価実験3で用いた光源41及びカメラ42は、
図4(a)に示す評価実験1で用いた光源41及びカメラ42とそれぞれ同様の構成である。
【0046】
図6(a)に示すように構成された基板異常検出部40において、2つの光源41,41から赤外領域の光を背景に投光した状態でカメラ42はウェハWを上方から撮影する。
図6(b)は、
図6(a)に示すカメラ42により撮影された画像を示す。
図6(b)に示す画像から分かるように、ウェハは黒色の円形の画像部分として写っており、背景は白みがかっている画像部分として写っているため、ウェハと背景とのコントラストが鮮明になっている。したがって、評価実験3の構成を用いれば、ウェハの割れを正確に検知できることが判明した。なお、画像中、矩形のグレーの画像部分は、ウェハを把持する把持機構110の開閉機構113に対応した画像部分である。
【0047】
以上の評価実験1〜3より、評価実験3の構成が、ウェハと背景のコントラストが最も鮮明となり、しかも乱反射も全くなく、水膜の形成も不要であるため、実機では、基板異常検出部40として、評価実験3の構成を採用したものである。すなわち、
図3に示すように、把持機構110により把持されたウェハWの下側に2つの光源41,41を配置し、ウェハWの上方にカメラ42を配置したものである。カメラ42は出力監視部45に接続されている。
図3において、把持機構110により把持されたウェハWの位置が前記基板異常検出位置である。2つの光源41,41は、長尺の直方体状をなし、ウェハWの直径と同等かそれ以上の長さを有している。ウェハWと2つの光源41,41を垂直方向から見ると、2つの光源41,41は、ウェハWを間に挟むようにして平行に配置されている。2つの光源41,41は、斜め下方に光を投光するように傾斜していて背景を照らすように構成されており、2つの光源41,41によりウェハの下側の背景を広く照らすことができるようになっている。各光源41は赤外領域の光を発する多数のLEDを水平方向に配列して構成されている。また、カメラ42はCMOSセンサー内蔵のカメラからなり、カメラ42の光軸はウェハWの中心又は概略中心と一致している。各光源41は、その投光角度が変更できるように支持部材(図示せず)によって装置フレームに支持されている。また、カメラ42は取付部材(図示せず)によって装置の天井部に固定されている。
【0048】
上述したように構成された基板異常検出部40において、ウェハWがスイングトランスポータ12により基板異常検出位置(
図3に示す位置)に搬送されると、動作制御部5(
図1参照)は、カメラ42に動作信号を送信する。カメラ42は、この動作信号を受信すると、光源41,41に対してON信号を送信する。これにより、光源41,41とカメラ42とは同期して作動し、光源41,41はカメラ42が撮像している時間(瞬間)だけ点灯する。光源41,41はカメラ42が動作していないときは消灯している。このように、光源41,41の点灯時間を必要最小限に抑えることにより、銅配線等の金属部のフォトコロージョンを防止している。なお、ウェハWを
図3に示す状態から反転させ、把持機構110の開閉機構113をウェハWの下側に位置させた状態でカメラ42によりウェハWを撮像するように構成してもよい。
【0049】
図7(a),(b)は、
図3に示すように構成された基板異常検出部40のカメラ42によって撮影された画像からウェハの割れを検出する検出方法を示す図であり、
図7(a)は正常ウェハの場合を示し、
図7(b)は割れたウェハの場合を示す。
図7(a),(b)に示すように、ウェハに相当する黒色の円形の画像部分の周縁部に沿って、矩形の検査領域を複数個設定する。
図7(a),(b)に示す例では、黒色の円形の画像部分の上下の周縁部に沿って、それぞれ5個の矩形の検査領域が設定されている。各検査領域は、ウェハに相当する黒色の画像部分と背景に相当する白みがかっている画像部分とに跨って設定されている。相隣接する2個の検査領域は、互いに重なり合う領域を形成するようにして、検査領域間において検査漏れが生じないようにしている。
【0050】
出力監視部45(
図3参照)には、各検査領域における、ウェハに相当する黒色の画像部分と背景に相当する白みがかっている画像部分との面積比である閾値が予め設定されている。出力監視部45は、撮影された画像から各検査領域においてウェハに相当する黒色の画像部分と背景に相当する白みがかっている画像部分との面積比を算出し、算出した面積比を予め設定された閾値と比較し、ウェハの割れの有無を判定する。
図7(a),(b)では、各検査領域において算出した面積比を一本の棒(一本のバー)で表示している。図中、各バーにおいて、上側の白抜き部分がウェハに相当する黒色の画像部分の面積に対応し、下側のグレー部分が背景に相当する白みがかっている画像部分の面積に対応する。ある検査領域内でウェハが割れていると、白みがかっている画像部分の面積に比較して黒色の画像部分の面積が小さくなるため、上側の白抜き部分が低下し、最終的には、予め設定された閾値を下回ってウェハの割れを検出することになる。
図7(b)においては、下側の左から2番目の検査領域で割れが検出される。なお、ウェハにはノッチが形成されているため、割れを検出するための閾値は、ノッチより大きい面積の場合に割れであると判定できるような値に設定されている。
【0051】
図7(a),(b)に示す検出方法によりウェハの割れを検知した場合であっても、これが誤検知である場合があるため、スイングトランスポータ12および基板異常検出部40は、誤検知でないことを確認する動作を行うようになっている。
図8は、スイングトランスポータ12および基板異常検出部40により行われる誤検知でないことを確認するための動作手順を示す模式図である。
図8においては、ウェハWは反転動作を識別できるように白色と黒色を用いて表示している。
図8(a)に示すように、基板異常検出位置にあるウェハWを、光源41を点灯してカメラ42により撮像し、
図7(a),(b)に示す処理を行ってウェハの割れを検出する。光源41は撮像時のみ点灯する。ウェハの割れを検出したら、
図8(b)に示すように、把持機構110によりウェハWを上昇させる。
次に、
図8(c)に示すように、把持機構110によりウェハWを反転させ、さらに、
図8(d)に示すように、把持機構110によりウェハWを再反転させる。その後、
図8(e)に示すように、把持機構110によりウェハWを基板異常検出位置に下降させた後に、ウェハWを、光源41を点灯してカメラ42により撮像し、
図7(a),(b)に示す処理を行ってウェハの割れの再検出を行う。
図8(a)〜(e)の工程を2回繰り返して、3回連続でウェハの割れを検知した場合、ウェハの割れが実際に起こったと判定する。なお、検知回数は任意に設定可能である。このように、スイングトランストータ12および基板異常検出部40により誤検知でないことを確認する動作を行うことにより、ウェハWを把持するチャック112とウェハWとの間にクリアランスがあるためにウェハWが移動したことによって起こる誤検知を防ぐことができる。
【0052】
次に、基板異常検出部40と基板処理装置の各ユニットとの関係を説明する。ウェハの割れは研磨ユニット3A〜3Dで生じやすい。割れたウェハ(すなわち、一部が欠損したウェハ)が洗浄部4で洗浄されると、ウェハが粉々に砕けてしまうことがある。したがって、洗浄部4にウェハが搬送される前にウェハの割れを検出することが好ましい。このような理由から、ウェハWは、研磨ユニット3A(および3B〜3D)、基板異常検出部40、および洗浄ユニット73,74の順に搬送される。本実施形態では、ウェハWをこの順番で搬送する基板搬送機構は、第1リニアトランスポータ6(および第2リニアトランスポータ7)、スイングトランスポータ12、および第1の搬送ロボット77によって構成される。基板異常検出部40は、研磨ユニット3A〜3Dと洗浄ユニット73,74との間に配置される。
本実施形態では、基板異常検出部40は第5搬送位置TP5の上方に配置されているが、他の場所に基板異常検出部40を設置してもよい。例えば、基板異常検出部40をバッファステージ72または第1リニアトランスポータ6の上方に設置してもよい。
【0053】
基板異常検出部40がウェハの割れを検出した場合、動作制御部5は、研磨ユニット3A〜3Dおよび基板搬送機構(第1リニアトランスポータ6、第2リニアトランスポータ7、スイングトランスポータ12、および第1搬送ロボット77)の運転を停止させる。作業員は、割れたウェハを基板処理装置から取り除き、これによって、割れたウェハが洗浄部4に搬送されることが防止される。ウェハが基板処理装置から取り除かれた後、基板処理装置の運転が再開される。
【0054】
基板異常検出部40がウェハの割れを検出した場合、スイングトランスポータ12は、当該割れたウェハを、
図1に示すバッファステージ72に置き、その後、動作制御部5は、研磨ユニット3A〜3Dおよび基板搬送機構の運転を停止させてもよい。また、ウェハが一時的に置かれる第2のバッファステージ(図示せず)を第1のバッファステージであるバッファステージ72とは別に設け、この第2のバッファステージに割れたウェハを置いた後に、動作制御部5は、研磨ユニット3A〜3Dおよび基板搬送機構の運転を停止させてもよい。割れたウェハをこの第2のバッファステージに置いた後、そのまま、研磨ユニット3A〜3Dおよび基板搬送機構の運転を継続することもできる。第2のバッファステージは、例えば、洗浄部4に配置された第1の洗浄ユニット73または第2の洗浄ユニット74の上方または下方に配置することができる。
【0055】
図1に示すように、本発明の基板処理装置には、研磨されたウェハWを研磨パッド10から引き上げるときの状態を監視できるように、研磨テーブル30Aの近傍に監視カメラ50が設置されている。また、トップリング31AからウェハWをリリースするときの状態を監視できるように、ウェハリリース位置に監視カメラ51が設置されている。他の研磨テーブルの近傍や他のウェハリリース位置にも、監視カメラが設置されているが、図示を省略する。このように、監視カメラ50,51を設置することにより、スイングトランスポータ12の箇所に設置された基板異常検出部40がウェハの割れを検知した際、基板異常検出部40からの検知信号に基づいて監視カメラ50,51において検知時から所定時間前以降、例えば、検知時1分前以降のウェハの搬送状況を再生することができるようになっている。これにより、ウェハが割れた瞬間を把握し、ウェハ割れの防止対策が可能となる。
【0056】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。