(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に複数の分割予定ラインが格子状に形成されているとともに該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に表面にバンプを備えたデバイスが形成されたウエーハの加工方法であって、
第1の厚みを有する切削ブレードによってウエーハの表面側から分割予定ラインに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの切削溝を形成する切削溝形成工程と、
該切削溝形成工程が実施されたウエーハの表面にモールド樹脂を敷設するとともに該切削溝にモールド樹脂を埋設するモールディング工程と、
該モールディング工程が実施されたウエーハの表面に敷設されたモールド樹脂の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの裏面を研削して該切削溝を表出させ該切削溝に埋設されたモールド樹脂をウエーハの裏面に露出させる裏面研削工程と、
該第1の厚みより薄い第2の厚みを有する切削ブレードによってウエーハの裏面側から該切削溝に埋設されたモールド樹脂を略半分の深さで切削してハーフカット溝を形成するハーフカット溝形成工程と、
該ハーフカット溝形成工程が実施されたウエーハの裏面にサポート部材を貼着するとともにウエーハの表面に敷設されたモールド樹脂の表面に貼着されている保護部材を剥離するサポート部材貼着工程と、
該第1の厚みより薄い第2の厚みを有する切削ブレードによってウエーハの表面側から該切削溝に埋設されたモールド樹脂と対応する領域を切削して該切削溝に埋設された残存するモールド樹脂を完全に切削して個々のデバイスに分割する分割工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成された半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することにより、デバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
近年、ウエーハを個々のデバイスに分割するとともに、個々のデバイスを樹脂で被覆するパッケージ技術が開発されている。このパッケージ技術の一つであるウエーハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)と呼ばれるパッケージ技術が下記特許文献1に開示されている。
【0004】
下記特許文献1に開示されたパッケージ技術は、ウエーハの裏面に樹脂を被覆し、ウエーハの表面から分割予定ラインに沿って樹脂に達する切削溝を形成し、ウエーハの表面にモールド樹脂を敷設して各デバイスを被覆するとともに切削溝にモールド樹脂を埋設した後、切削溝の幅より薄い厚みの切削ブレードによって切削溝に充填されたモールド樹脂を切断することにより、個々のウエーハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)に分割する。
【0005】
また、ウエーハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)を製造するウエーハの加工方法として次の技術が開発されている。
(1)ウエーハの表面側から分割予定ラインに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの切削溝を形成する。
(2)ウエーハの表面にモールド樹脂を敷設するとともに切削溝にモールド樹脂を埋設する。
(3)ウエーハの表面に敷設されたモールド樹脂の表面に保護部材を貼着しウエーハの裏面を研削して切削溝を表出させる。
(4)ウエーハの裏面をダイシングテープに貼着し、切削溝の幅より薄い厚みの切削ブレードによって切削溝に埋設されたモールド樹脂を切断することにより、個々のウエーハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)に分割する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。
図1に示す半導体ウエーハ2は、厚みが例えば600μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aに複数の分割予定ライン21が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。この各デバイス22は、全て同一の構成をしている。デバイス22の表面にはそれぞれ複数の突起電極であるバンプ23が形成されている。以下、この半導体ウエーハ2を分割予定ライン21に沿って個々のデバイス22に分割するとともに個々のデバイスを樹脂で被覆するウエーハの加工方法について説明する。
【0014】
先ず、第1の厚みを有する切削ブレードによって半導体ウエーハ2の表面側から分割予定ライン21に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの切削溝を形成する切削溝形成工程を実施する。この切削溝形成工程は、図示の実施形態においては
図2に示す切削装置3を用いて実施する。
図2に示す切削装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を切削する切削手段32と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない切削送り手段によって
図2において矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0015】
上記切削手段32は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に支持された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322の先端部に装着された環状の切れ刃323aを備えた切削ブレード323を含んでおり、回転スピンドル322がスピンドルハウジング321内に配設された図示しないサーボモータによって矢印322aで示す方向に回転せしめられるようになっている。なお、切削ブレード323の環状の切れ刃323aは、図示の実施形態においては第1の厚みである50μmに設定されている。上記撮像手段33は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0016】
上述した切削装置3を用いて切削溝形成工程を実施するには、
図2に示すようにチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2の裏面2b側を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に吸引保持する。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、表面2aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0017】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2の分割予定ライン21に沿って分割溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン21と、切削ブレード323との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0018】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削加工領域の切削開始位置に移動する。このとき、
図3の(a)で示すように半導体ウエーハ2は分割予定ライン21の一端(
図3の(a)において左端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323bの直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。次に、切削ブレード323を
図3の(a)において2点鎖線で示す待機位置から矢印Z1で示すように下方に切り込み送りし、
図3の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、
図3の(a)および
図3の(c)に示すように切削ブレード323の環状の切れ刃323bの下端が半導体ウエーハ2の表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば、200μm)に設定されている。
【0019】
次に、切削ブレード323を
図3の(a)において矢印322aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル31を
図3の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、分割予定ライン21の他端(
図3の(b)において右端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323aの直下より所定量左側に位置する位置まで達したら、チャックテーブル31の移動を停止する。このようにチャックテーブル31を切削送りすることにより、
図3の(d)で示すように半導体ウエーハ2には分割予定ライン21に沿って表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば、200μm)で幅が50μmの切削溝210が形成される(切削溝形成工程)。
【0020】
次に、切削ブレード323を
図3の(b)において矢印Z2で示すように上昇させて2点鎖線で示す待機位置に位置付け、チャックテーブル31を
図3の(b)において矢印X2で示す方向に移動して、
図3の(a)に示す位置に戻す。そして、チャックテーブル31を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)に分割予定ライン21の間隔に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべき分割予定ライン21を切削ブレード323と対応する位置に位置付ける。このようにして、次に切削すべき分割予定ライン21を切削ブレード323と対応する位置に位置付けたならば、上述した切削溝形成工程を実施する。そして、上述した切削溝形成工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン21に実施する。
【0021】
上述した切削溝形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の表面にモールド樹脂を敷設するとともに切削溝210にモールド樹脂を埋設するモールディング工程を実施する。このモールディング工程は、
図4の(a)に示すように樹脂被覆装置4の保持テーブル41の上面である保持面上に上記切削溝形成工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面2b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保持テーブル41の保持面上に半導体ウエーハ2を吸引保持する。従って、保持テーブル41に保持された半導体ウエーハ2は、表面2aが上側となる。このようにして、保持テーブル41上に半導体ウエーハ2を保持したならば、
図4の(a)に示すように樹脂供給ノズル42の噴出口421を保持テーブル41上に保持された半導体ウエーハ2の中心部に位置付け、図示しない樹脂供給手段を作動して、樹脂供給ノズル42の噴出口421からモールド樹脂40を保持テーブル41上に保持された半導体ウエーハ2の中央領域に所定量滴下する。半導体ウエーハ2の表面2aの中央領域へ所定量のモールド樹脂40を滴下したならば、
図4の(b)に示すように保持テーブル41を矢印41aで示す方向に所定の回転速度で所定時間回転することにより、
図4の(b)および(c)に示すように半導体ウエーハ2の表面2aにモールド樹脂40が敷設されるとともに切削溝210にモールド樹脂40が埋設される。なお、モールド樹脂40は、図示の実施形態においては熱硬化性の液状樹脂(エポキシ系の樹脂)が用いられており、半導体ウエーハ2の表面2aに敷設されるとともに切削溝210に埋設された後、150℃程度で加熱することにより硬化せしめられる。
【0022】
次に、半導体ウエーハ2の表面2aに敷設されたモールド樹脂40を研磨して、デバイス22の表面に形成されたバンプ23を露出するバンプ露出工程を実施する。このバンプ露出工程は、
図5の(a)に示す研磨装置5を用いて実施する。
図5の(a)に示す研磨装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研磨する研磨手段52を具備している。チャックテーブル51は、上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって
図5の(a)において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研磨手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研磨工具524とを具備している。この研磨工具524は、円形状の基台525と、該基台525の下面に装着された研磨パッド526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に締結ボルト527によって取り付けられている。なお、研磨パッド526は、図示の実施形態においては、フェルトに研磨材としてシリカからなる砥粒が混入されている。
【0023】
上述した研磨装置5を用いて上記バンプ露出工程を実施するには、
図5の(a)に示すようにチャックテーブル51の上面(保持面)に上記モールディング工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面2b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル51上に半導体ウエーハ2を吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル51上に保持された半導体ウエーハ2は、表面2aに敷設されたモールド樹脂40が上側となる。このようにチャックテーブル51上に半導体ウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル51を
図5の(a)において矢印51aで示す方向に所定の回転速度で回転しつつ、研磨手段52の研磨工具524を
図5の(a)において矢印524aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめて、
図5の(b)に示すように研磨パッド526を被加工面である表面2aに敷設されたモールド樹脂40の上面に接触せしめ、研磨工具524を
図5の(a)および
図5の(b)において矢印524bで示すように所定の研磨送り速度で下方(チャックテーブル51の保持面に対し垂直な方向)に所定量研磨送りする。この結果、
図5の(c)に示すように表面2aに敷設されたモールド樹脂40が研磨され、デバイス22の表面に形成されたバンプ23が露出せしめられる。
なお、上記モールディング工程においてバンプ23を被覆しないで半導体ウエーハ2の表面2aにモールド樹脂40を敷設した場合には、上述したバンプ露出工程は必ずしも必要ではない。
【0024】
上述したバンプ露出工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の表面に敷設されたモールド樹脂40の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、
図6に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに敷設されたモールド樹脂40の表面に保護部材としての保護テープ6を貼着する。なお、保護テープ6は、図示の実施形態においては厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート状基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ5μm程度塗布されている。
【0025】
次に、保護部材貼着工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面を研削して切削溝210を表出させ切削溝210に埋設されたモールド樹脂を半導体ウエーハ2の裏面に露出させる裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、
図7に示す研削装置7を用いて実施する。
図7の(a)に示す研削装置7は、被加工物を保持するチャックテーブル71と、該チャックテーブル71に保持された被加工物を研削する研削手段72を具備している。チャックテーブル71は、保持面である上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって
図7の(a)において矢印71aで示す方向に回転せしめられる。研削手段72は、スピンドルハウジング721と、該スピンドルハウジング721に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル722と、該回転スピンドル722の下端に装着されたマウンター723と、該マウンター723の下面に取り付けられた研削ホイール724とを具備している。この研削ホイール724は、円環状の基台725と、該基台725の下面に環状に装着された研削砥石726とからなっており、基台725がマウンター723の下面に締結ボルト727によって取り付けられている。
【0026】
上述した研削装置7を用いて上記裏面研削工程を実施するには、
図7の(a)に示すようにチャックテーブル71の上面(保持面)に上記保護部材貼着工程が実施された半導体ウエーハ2の保護テープ6側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル71上に半導体ウエーハ2を保護テープ6を介して吸引保持する。従って、チャックテーブル71上に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにチャックテーブル71上に半導体ウエーハ2を保護テープ6を介して吸引保持したならば、チャックテーブル71を
図7の(a)において矢印71aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段72の研削ホイール724を
図7の(a)において矢印724aで示す方向に例えば6000rpmで回転して、
図7の(b)に示すように研削砥石726を被加工面である半導体ウエーハ2の裏面2bに接触せしめ、研削ホイール724を
図7の(a)および
図7の(b)において矢印724bで示すように例えば1μm/秒の研削送り速度で下方(チャックテーブル71の保持面に対し垂直な方向)に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ2の裏面2bが研削され、
図7の(c)で示すように切削溝210が半導体ウエーハ2の裏面2bに表出し、切削溝210に埋設されたモールド樹脂40が半導体ウエーハ2の裏面2bに露出せしめられる。
【0027】
上述した裏面研削工程を実施したならば、上記第1の厚みより薄い第2の厚みを有する切削ブレードによって半導体ウエーハ2の裏面側から切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を略半分の深さで切削してハーフカット溝を形成するハーフカット溝形成工程を実施する。このハーフカット溝形成工程は、図示の実施形態においては
図8に示す切削装置30を用いて実施する。なお、
図8に示す切削装置30は、上記
図2に示す切削装置3と切削ブレード323の環状の切れ刃323a以外は同一の構成であるため、同一部材には同一符号を付して説明は省略する。
図8に示す切削装置30における切削ブレード323の環状の切れ刃323bは、上記環状の切れ刃323aの第1の厚み(50μm)より薄い第2の厚みである20μmに設定されている。
【0028】
図8に示す切削装置30を用いてハーフカット溝形成工程を実施するには、チャックテーブル31上に上記裏面研削工程が実施された半導体ウエーハ2の保護テープ6側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2を保護テープ6を介して吸引保持する。従って、チャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0029】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2に形成された切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を切削してハーフカット溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている切削溝210と、切削ブレード323との位置合わせを行うための画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に形成された切削溝210に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0030】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削加工領域の切削開始位置に移動する。このとき、
図9の(a)で示すように半導体ウエーハ2は切削すべきモールド樹脂40が埋設された切削溝210の一端(
図9の(a)において左端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323bの直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。
【0031】
このようにして切削装置3のチャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ2が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード323を
図9の(a)において2点鎖線で示す待機位置から矢印Z1で示すように下方に切り込み送りし、
図9の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、
図9の(a)および
図9の(c)に示すように切削ブレード323の環状の切れ刃323bの下端が半導体ウエーハ2の厚み方向中間位置に設定されている。
【0032】
次に、切削ブレード323を
図9の(a)において矢印322aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル31を
図9の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、モールド樹脂40が埋設された切削溝210の他端(
図9の(b)において右端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323bの直下より所定量左側に位置する位置まで達したら、チャックテーブル31の移動を停止する。このようにチャックテーブル31を切削送りすることにより、
図9の(d)で示すように切削溝210に埋設されたモールド樹脂40は略半分の深さで切削され幅が20μmのハーフカット溝401が形成される(ハーフカット溝形成工程)。このハーフカット溝形成工程においては、切削溝210に埋設されたモールド樹脂40の厚みの略半分の深さで切削するので、モールド樹脂40を完全に切断する場合と比較して切削ブレード323に作用するモールド樹脂40の抵抗が半分になり、切削ブレード323の環状の切れ刃323bに撓みが生ずることがなく、環状の切れ刃323bが撓むことによりデバイスの側面に傷を付けるという問題が解消する。
【0033】
次に、切削ブレード323を
図9の(b)において矢印Z2で示すように上昇させて2点鎖線で示す待機位置に位置付け、チャックテーブル31を
図9の(b)において矢印X2で示す方向に移動して、
図9の(a)に示す位置に戻す。そして、チャックテーブル31を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)にモールド樹脂40が埋設された切削溝210の間隔(分割予定ライン21の間隔)に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべき切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を切削ブレード323と対応する位置に位置付ける。このようにして、次に切削すべき切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を切削ブレード323と対応する位置に位置付けたならば、上述したハーフカット溝形成工程を実施する。そして、上述したハーフカット溝形成工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての切削溝210に埋設されたモールド樹脂40に実施する。
【0034】
上述したハーフカット溝形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の裏面にサポート部材を貼着するとともに半導体ウエーハ2の表面に敷設されたモールド樹脂40の表面に貼着されている保護部材としての保護テープ6を剥離するサポート部材貼着工程を実施する。即ち、
図10に示すように、環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着されたサポート部材としてのダイシングテープTの表面に上述したハーフカット溝形成工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面2bを貼着する。そして、半導体ウエーハ2の表面に敷設されたモールド樹脂40の表面に貼着されている保護テープ6を剥離する。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された半導体ウエーハ2は、表面に敷設されたモールド樹脂40が上側となる。
【0035】
次に、上記第1の厚みより薄い第2の厚みを有する切削ブレードによって半導体ウエーハ2の表面側から切削溝210に埋設されたモールド樹脂40と対応する領域を切削して切削溝210に埋設された残存するモールド樹脂40を完全に切削して個々のデバイスに分割する分割工程を実施する。この分割工程は、上記
図8に示す切削装置30を用いて実施する。
【0036】
図8に示す切削装置30を用いて分割工程を実施するには、チャックテーブル31上に上記サポート部材貼着工程が実施された半導体ウエーハ2が貼着されたサポート部材としてのダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープTを介して半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、
図11の(a)に示すように表面に敷設されたモールド樹脂40が上側となる。なお、
図11の(a)においてはダイシングテープTが装着された環状のフレームFを省いて示しているが、環状のフレームFはチャックテーブル31に配設された適宜のフレーム保持手段によって保持される。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0037】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2に形成された切削溝210に埋設された残存するモールド樹脂40を完全に切削すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているモールド樹脂40が埋設された切削溝210と、切削ブレード323との位置合わせを行うための画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。なお、図示の実施形態においては切削溝210が形成された半導体ウエーハ2の表面にはモールド樹脂40が敷設されているので、撮像手段33は分割予定ライン21を挟んで隣接するデバイス22に形成されモールド樹脂40の表面から露出されているバンプ23を撮像して図示しない制御手段に送る。そして、図示しない制御手段は、隣接するデバイス22に形成されバンプ23とバンプ23の中間位置を分割予定ライン21に形成された切削溝210に幅方向中間位置と決定する。このようにして、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているモールド樹脂40が埋設された切削溝210に対するアライメントを遂行したならば、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に形成された切削溝210に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0038】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削加工領域の切削開始位置に移動する。このとき、
図11の(a)で示すように半導体ウエーハ2は切削すべきモールド樹脂40が埋設された切削溝210の一端(
図11の(a)において左端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323bの直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。
【0039】
このようにして切削装置30のチャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ2が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード323を
図11の(a)において2点鎖線で示す待機位置から矢印Z1で示すように下方に切り込み送りし、
図11の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、
図11の(a)および
図11の(c)に示すように切削ブレード323の環状の切れ刃323bの下端がハーフカット溝401に達する位置に設定されている。
【0040】
次に、切削ブレード323を
図11の(a)において矢印322aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル31を
図11の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、モールド樹脂40が埋設された切削溝210の他端(
図11の(b)において右端)が切削ブレード323の環状の切れ刃323bの直下より所定量左側に位置する位置まで達したら、チャックテーブル31の移動を停止する。このようにチャックテーブル31を切削送りすることにより、
図11の(d)で示すように切削溝210に埋設された残存するモールド樹脂40はハーフカット溝401に達する幅が20μmの分割溝402によって完全切削される(分割工程)。この分割工程においては、切削溝210に埋設された残存するモールド樹脂40(切削溝210に埋設されたモールド樹脂40の略半分の厚み)を切削するので、モールド樹脂40を一度に完全に切断する場合と比較して切削ブレード323に作用するモールド樹脂40の抵抗が半分になり、切削ブレード323の環状の切れ刃323bに撓みが生ずることがなく、環状の切れ刃323bが撓むことによりデバイスの側面に傷を付けるという問題が解消する。
【0041】
次に、切削ブレード323を
図11の(b)において矢印Z2で示すように上昇させて2点鎖線で示す待機位置に位置付け、チャックテーブル31を
図11の(b)において矢印X2で示す方向に移動して、
図11の(a)に示す位置に戻す。そして、チャックテーブル31を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)にモールド樹脂40が埋設された切削溝210の間隔(分割予定ライン21の間隔)に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべき切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を切削ブレード323と対応する位置に位置付ける。このようにして、次に切削すべき切削溝210に埋設されたモールド樹脂40を切削ブレード323と対応する位置に位置付けたならば、上述した分割工程を実施する。そして、上述した分割工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての切削溝210に埋設されたモールド樹脂40に実施する。この結果、半導体ウエーハ2は、分割予定ライン21によって形成された切削溝210に埋設されたモールド樹脂40に沿って個々のデバイスに分割される。このようにして個々に分割されたデバイス22は、
図12に示すように表面および側面がモールド樹脂40によって被覆されたウエーハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)を構成している。