特許第6487322号(P6487322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487322乳化カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487322
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】乳化カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルション
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20190311BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A23D7/00 504
   A61K8/06
   A61K8/35
   A61K8/73
   A61K47/08
   A61K47/36
   A61K47/14
   A61K47/46
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61K47/22
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-522093(P2015-522093)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公表番号】特表2015-530076(P2015-530076A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013065143
(87)【国際公開番号】WO2014013002
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】12177364.2
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/673,786
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガゾン,トランドール
(72)【発明者】
【氏名】ケプセル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ザンバーレ,クレーメンス
(72)【発明者】
【氏名】ハビッヒ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハッセ,アンドレーアス
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/059286(WO,A1)
【文献】 特開2011−004656(JP,A)
【文献】 特開2002−187837(JP,A)
【文献】 特開昭54−098372(JP,A)
【文献】 特開2009−185023(JP,A)
【文献】 菅野祥三,加工でん粉の基礎知識と現状について(農畜産業振興機構ホームページ),2010年 5月10日,6/8ページ,[online]、平成29年5月26日検索、インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.025〜2000ppmの濃度で乳化カロテノイド及び0.5〜600ppmの濃度で、10,000〜2,000,000g/molの分子量MW分布を有するオクテニルコハク酸デンプンを含む、水中に油滴のある水性の透明な水中油型エマルションであって、30〜90%のカロテノイドがトランス異性体であり、カロテノイドが油滴中に存在し、油中に溶解している、エマルション。
【請求項2】
カロテノイドは、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-ゼアカロテン(beta-zeacaroten)、リコピン、アポカロテナール、ビキシン、パプリカオレオレジン(paprika olioresin)、カプサンチン及びカプソルビンからなる群から選択される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
5ppmのカロテノイド濃度でのNTU(濁度)値が1〜35NTUである、請求項1又は2に記載のエマルション。
【請求項4】
色強度値(E 1/1)が140〜280であり、色強度値(E 1/1)は、1%のカロテノイドエマルションを含む1cmキュベットを通過する最大吸光度での光の吸光度として定義される、請求項1乃至3のいずれかに記載のエマルション。
【請求項5】
動的光散乱法を用いて測定された油滴径が50〜400nmである、請求項1乃至4のいずれかに記載のエマルション。
【請求項6】
MCT油(中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール)、オリーブ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、大豆油及び植物油からなる群から選ばれるトリアシルグリセロール油を0.1〜150ppmの濃度で含む、請求項1乃至5のいずれかに記載のエマルション。
【請求項7】
単糖、二糖、オリゴ糖、グルコースシロップ、マルトース及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1つの炭水化物を含み、該炭水化物が0.5〜10000ppmの濃度で20及び50の間のDEを有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のエマルション。
【請求項8】
化学構造中にフェノール性OH基を含むことにより抗酸化剤として効力のある天然化合物;
コーヒー酸、フェルラ酸、チロソール、ヒドロキシチロソール、ケイ皮酸、クロロゲン酸、クマリン、クマリン酸、シナピン酸、ケイ皮酸、チコリ酸、及びC1-C20を有するこれらの化合物のいずれかのエステル;
上記化合物の少なくとも1つに富む植物の抽出物;
ロスマリン酸、ヒドロキシチロソール;
一般的なスパイスからの抽出物;
フラボン;
上述の化合物の1つ以上を含む植物由来の抽出物;
アスコルビン酸ナトリウム、ポリフェノール、グルタチオン、リポ酸、カテキン、パニカラギン、キサントン、ベンゾトロポロン;
からなる群から選ばれる少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を含み、
水溶性抗酸化剤が0.001〜60ppmの濃度である、請求項1乃至7のいずれかに記載のエマルション。
【請求項9】
エトキシキン;
ヒンダードフェノール系酸化防止剤;
ビタミンA、レチノイン酸及びC1-C20を有するそのエステル;
ビタミンD2及びD3;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコフェロール、又はそのトコフェロールの少なくとも2つを含む混合物;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコトリエノール、又はそのトコトリエノールの少なくとも2つを含む混合物;
上記化合物の少なくとも1つを含む天然抽出物;
フェノール系ジテルペン;
ケイ皮酸の誘導体;及び
イゲノール(Eugenol)、チモール(Thymol);
からなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤を含み、
油溶性抗酸化剤が0.001〜60ppmの濃度である、請求項1乃至8のいずれかに記載のエマルション。
【請求項10】
カロテノイドが、35〜80%の異性化されたトランス異性体含有量を有する、請求項1乃至9のいずれかに記載のエマルション。
【請求項11】
以下の工程:
a) 0.7〜70%の濃度でオクテニルコハク酸デンプン、0.001〜80%の濃度で単糖、二糖、オリゴ糖、グルコースシロップ、マルトース及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1つの炭水化物、及び水を含む溶液を調製し、該成分を混合する工程、
b) 0.1〜15%の濃度で少なくとも1つのカロテノイドと、1〜30%の濃度でトリアシルグリセロール油と、を混合し、100〜200°Cの温度で分散したカロテノイドを融かすことにより、溶液を調製する工程、
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液に導入する工程、
d) 工程c)の混合物を回転子/固定子ミキサーに通過させることによりプレ乳化の少なくとも1ステップを実施する工程、
e) 高圧均質化の少なくとも1ステップを実施する工程、
f) 工程e)のエマルションを噴霧乾燥させ、粉末を得る工程、
g-1) 工程f)の粉末を水に導入することによりエマルションを調製する工程、
を含み、
前記パーセントが、工程c)からe)のエマルションに関する重量%である、請求項1乃至8のいずれかに記載のエマルションの製造方法。
【請求項12】
以下の工程:
a) 0.7〜70%の濃度でオクテニルコハク酸デンプン、0.001〜80%の濃度で単糖、二糖、オリゴ糖、グルコースシロップ、マルトース及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1つの炭水化物、及び水を含む溶液を調製し、該成分を混合する工程、
b) 0.1〜15%の濃度で少なくとも1つのカロテノイドと、1〜30%の濃度でトリアシルグリセロール油と、を混合し、100〜200°Cの温度で分散したカロテノイドを融かすことにより、溶液を調製する工程、
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液に導入する工程、
d) 工程c)の混合物を回転子/固定子ミキサーに通過させることによりプレ乳化の少なくとも1ステップを実施する工程、
e) 高圧均質化の少なくとも1ステップを実施する工程、
前記パーセントは、工程c)からe)のエマルションに関する重量%であり、
f) 工程e)のエマルションを噴霧乾燥させ、粉末を得る工程、
g-2) 5重量%〜70重量%の濃度で工程f)の粉末を水に導入することによりエマルションを調製する工程、を含む、乳化カロテノイドを含む水中油型エマルションの製造方法。
【請求項13】
工程c)又はd)において前記炭水化物をエマルションに混ぜること、
工程c)、d)又はe)の後に少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を加えること、
工程a)、c)又はd)において少なくとも1つの油溶性抗酸化剤を加えること、
を含む代替手段のうち1つ以上を含
前記水溶性抗酸化剤は、
化学構造中にフェノール性OH基を含むことにより抗酸化剤として効力のある天然化合物;
コーヒー酸、フェルラ酸、チロソール、ヒドロキシチロソール、ケイ皮酸、クロロゲン酸、クマリン、クマリン酸、シナピン酸、ケイ皮酸、チコリ酸、及びC1-C20を有するこれらの化合物のいずれかのエステル;
上記化合物の少なくとも1つに富む植物の抽出物;
ロスマリン酸、ヒドロキシチロソール;
一般的なスパイスからの抽出物;
フラボン;
上述の化合物の1つ以上を含む植物由来の抽出物;
アスコルビン酸ナトリウム、ポリフェノール、グルタチオン、リポ酸、カテキン、パニカラギン、キサントン、ベンゾトロポロン;
からなる群から選ばれ、
前記油溶性抗酸化剤は、
エトキシキン;
ヒンダードフェノール系酸化防止剤;
ビタミンA、レチノイン酸及びC1-C20を有するそのエステル;
ビタミンD2及びD3;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコフェロール、又はそのトコフェロールの少なくとも2つを含む混合物;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコトリエノール、又はそのトコトリエノールの少なくとも2つを含む混合物;
上記化合物の少なくとも1つを含む天然抽出物;
フェノール系ジテルペン;
ケイ皮酸の誘導体;及び
オイゲノール(Eugenol)、チモール(Thymol);
からなる群から選ばれる、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
着色剤としての、請求項1乃至10のいずれかに記載の水性エマルションの使用。
【請求項15】
アゾ染料の代わりとしての、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルション及び前記エマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドを含むエマルションは、従来技術においてよく知られている。カロテノイドは、着色材料として、並びにヒト食品及び動物飼料産業のための並びに医薬分野における活性物質として使用されている。この分野において、カロテノイドはまた、別名「サウサンプトンシックス(Southampton Six)」(サンセットイエロー(E110)、キノリンイエロー(E104)、カルモイシン(E122)、アルラレッド(E129)、タートラジン(E102)及びポンソー4R(E124))として知られる合成アゾ染料に取って代わるべく近年使用されている。これら合成アゾ染料は、悪影響、特に子供の活動や注意力に副作用を及ぼす可能性がある。
過去、アゾ染料をカロテノイドに置き換え、アゾ染料を用いたものとまったく同じ製品の色の一致を維持することは困難であった。
カロテノイドは水に不溶である。さらに、カロテノイドは非常に酸化を受けやすい。したがって、保管中に安定でない結晶形態でカロテノイドを使用することは困難である。一般に、カロテノイドが酸化から保護され、改善された着色を有する安定なカロテノイドエマルションを得るためには、多くの添加剤が必要である。
【0003】
カロテノイドの取り扱いにおける問題を克服する一つの手段は、マイクロエマルションの製造である。これらのマイクロエマルションは、使用される乳化剤に起因する石鹸の味を呈する。
乳化剤、特にアスコルビン酸と長鎖脂肪酸のエステル、具体的にはアスコルビルパルミテートもまた、クリーミングに対して安定なエマルションを得るべく、US4,844,934の教示に従って使用されている。
【0004】
ビタミンEアセテートなどの液体油を乳化剤を用いて水相中に分散させ、続いて高圧力で均質化することにより調製される、小さなエマルションを形成するには、その油相が室温で液体であり、ビタミンEアセテート油と水相との間の界面張力が通常の植物油(例えば、ヒマワリ油)よりも低いため、高量の乳化剤とともに高量のエネルギーを必要とする(これらの材料はエマルションの形成に使用される一般的な道具である)。
一方、カロテノイドを乳化することは、カロテノイドの低い油溶性及びとても低い水溶性のため、非常に困難である。さらに、カロテノイドの再結晶化を防止するには、シス対トランス異性体の比率が安定した系を達成するように細かく調整されている必要がある。したがって、カロテノイドを含むエマルションは、実際には、純粋なビタミンEアセテートを含むエマルションとは異なる系である。最後に、油溶性ビタミン(例えば、ビタミンEアセテート)のみを含むエマルション滴は、着色剤として使用することができない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、改善されたカロテノイドのバイオアベイラビリティーとともに、好ましくは高いカロテノイド濃度で、改善された色を示す水性のカロテノイドエマルションを提供することである。さらに、エマルションは、非常に低い濁度を意味する、クリアで透明である必要がある。本発明のさらなる目的は、もっぱら自然再生可能な原料又は天然に等しい原料を使用することである。さらに、エマルションは、わずか数ステップ以内に簡単かつ効率的な方法で製造可能である必要がある。
本発明のさらなる目的は、アゾ染料に取って代わり、アゾ染料で着色した最終製品の外観を再現する着色剤としてのカロテノイド含有水性エマルション又はカロテノイド含有粉末を提供することである。加えて、本発明の目的は、アゾ染料を一切含まないが、アゾ染料で着色した製品の外観を再現する水性カロテノイドエマルションを提供することである。
【0006】
これらの課題は、本発明のエマルション及び本発明に係るエマルションの製造方法によって解決される。
【0007】
一実施形態において、本発明のエマルションは、0.025〜2000ppm(好ましくは0.025〜300ppm、0.1〜200ppm、0.1〜100ppm、1〜50ppm、1〜30ppm、3〜30ppm、3〜20ppm、より好ましくは1〜15ppm、3〜15ppm、特に3〜6ppm)の濃度で乳化カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルションである。一実施形態において、乳化カロテノイドの濃度は5ppmである。
一実施形態において、1ppmは、100万重量部中1重量部である。
本発明の目的のために、乳化カロテノイドを含む水中油型エマルションは、水中に油滴があるエマルションであって、カロテノイドがその液滴中に存在し、油中に溶解しているエマルションを意味する。
【0008】
本発明によれば、用語「水性の透明な水中油型エマルション」は、低い濁度を有するクリアなエマルションを意味する。濁度は、任意の標準濁度計、本発明の一実施形態ではHACH社製の2100AN濁度計を用いて測定される、ネフェロメ濁度単位(nephelometric turbidity units)であるNTUで測定される。
本発明の目的のために、透明エマルションは、35以下のNTU値を有する、5ppmのカロテノイドを含む水性エマルションとして規定される。
本発明の一実施形態において、5ppmのカロテノイドを含む水性エマルションは、1〜35NTU(好ましくは10〜35NTU、より好ましくは15〜30NTU、特に15〜25NTU、15〜20NTU)の濁度値(turbidity value)を有する。
本発明のさらなる実施形態において、5ppmのカロテノイドを含む水性エマルションは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25NTUからなる群から選ばれる濁度値を有する。
【0009】
本発明の別の一形態において、カロテノイドは、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-ゼアカロテン(beta-zeacaroten)、リコピン、アポカロテナール、ビキシン、パプリカオレオレジン(paprika olioresin)、カプサンチン及びカプソルビンからなる群から選択され、好ましくはアポカロテナール、より好ましくはβ-アポ-8-カロテナールである。
本発明の実施形態において、カロテノイドはβ-カロテンである。
さらなる実施形態において、本発明の水中油型エマルションはβ-カロテンを含まない。
【0010】
本発明に関して、特性「含まない」は、カロテノイドを定性的及び/又は定量的に検出する公知の技術水準の分析方法、例えば分光法(UV/VIS)、クロマトグラフィー法(HPLC)、NMR法及び/又は質量分析法を用いて、関連の化合物を本発明の組成物中に検出できないことを意味する。
すべてのカロテノイドは、天然物又は天然と等しい物であり得る。天然と等しいカロテンは、自然界に見出される天然のカロテンと全く同じ化学構造を有する合成カロテンである。
【0011】
本発明のエマルションは、別の一形態において、50〜400nm(好ましくは80〜300nm、より好ましくは100〜150nm、特に130〜140nm)の油滴径(動的光散乱法を用いて)を有する。
【0012】
本発明によれば、油滴径は、z−平均粒径(z-average size)であり、一実施形態においてMalvern社製のzetasizer nano-s (シリアル番号MAL500613)を用いて測定される。
【0013】
本発明のエマルションは、別の一形態において、0.01及び0.4の間(好ましくは0.01及び0.3の間、より好ましくは0.01及び0.2の間、特に0.01及び0.1の間)の多分散指数(PDI)を有する。多分散指数(PDI)は、油滴径分布の幅を規定し、ISP13321の第8部において規定されている。
本発明のエマルションは、別の一形態において、油滴の70%が0及び200nmの間(好ましくは油滴の80%が0及び200nmの間、より好ましくは油滴の90%が0及び200nmの間、特に油滴の95%が0及び200nmの間)である。
【0014】
一実施形態において、当該エマルションは、140〜280(好ましくは140〜250、150〜250、より好ましくは150〜230、150〜220、より好ましくは160〜230、180〜215、特に205〜215)の色強度値(colour intensity value)(E 1/1)を有する。
水溶液の色強度値(E 1/1)は、1%のカロテノイドエマルションを含む1cmキュベットを通過する最大吸光度での光(それぞれのカロテノイドで異なる)の吸光度として規定される。色強度値(E 1/1)を1%よりも低い濃度で測定する場合は、色強度の測定値を希釈係数を用いて補正する必要がある。
E1/1 = (Amax x 20)/(サンプルの重量(g))
【0015】
本発明の一実施形態において、カロテノイドは、トリアシルグリセロール油(例えばMCT油(中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール)、オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、大豆油又は他の代わりの植物油、好ましくはMCT油)に、溶融し及び/又は溶解し、及び/又はトランス体からシス体へ異性化している。
【0016】
したがって、本発明のエマルションは、一実施形態において、0.1〜150ppm(好ましくは1〜75ppm、より好ましくは5〜50ppm、特に15〜30ppm)の濃度でMCT油(中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール)、オリーブ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、大豆油及び植物油からなる群から選ばれるトリアシルグリセロール油、好ましくはMCT油を含む。
【0017】
本発明において使用されるトリアシルグリセロール油は、一実施形態において、グリセロールのエステルであり、ここで、グリセロールは脂肪酸とエステル化されており、該脂肪酸は4〜22の炭素鎖長及び任意の炭素位に二重結合を有することができる。
好ましくは、MCT油が用いられ、ここで、該MCTは、グリセロールが脂肪酸とエステル化され、該脂肪酸が飽和しかつ6〜10の炭素鎖長(好ましくは8〜10の炭素鎖長)を有する、グリセロールのエステルである。
異性化は、100〜200°C(120〜180°C、より好ましくは130〜160°C)の温度で、トランス異性体含有量が30及び100%の間(好ましくは30及び90%の間、より好ましくは35及び80%の間、特に40及び75%の間)になるまで十分な時間行われる。
【0018】
異性化は、油溶性抗酸化剤の存在下で行うことができる。
【0019】
したがって、本発明の一実施形態において、エマルションは、0.001〜60ppm(好ましくは0.01〜30ppm、より好ましくは0.1〜20ppm、特に0.5〜12ppm)の濃度で油溶性抗酸化剤をそれぞれ含む。
本発明の一実施形態によれば、油溶性抗酸化剤は、非極性溶媒に可溶であり、分子分散体を形成する。
本発明における係る油溶性抗酸化剤は、
・エトキシキン;
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、t−ブチルヒドロキシトルオール、t−ブチルヒドロキシアニソール(t- butylhydroxyaniso)、t−ブチルヒドロキシキノン);
・ビタミンA、レチノイン酸及びC1-C20の炭素鎖長を有するそのエステル;
・ビタミンD2及びD3;
・アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコフェロール、又はそのトコフェロールの少なくとも2つを含む混合物;
・アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコトリエノール、又はそのトコトリエノールの少なくとも2つを含む混合物;
・上記化合物の少なくとも1つを含む天然抽出物、フェノール系ジテルペン(例えば、カルノソール、カルノシン酸);
・ケイ皮酸の誘導体(2-エトキシエチルp-メトキシシンナメート、エチルヘキシルp-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル4-メトキシシンナメート、メチルジイソプロピルシンナメート、イソアミル4-メトキシシンナメート、ジエタノールアミン4-メトキシシンナメートのような)、及びBASF製品などのチノガードTT(Tinogard TT)、チノガードHS(Tinogard HS)、LC-ガラート(LC-gallates)、オイゲノール(Eugenol)、チモール(Thymol)、オルガノソルブリグニン(Organosolv-Lignin);
・好ましくは、α−トコフェロール;
からなる群から選択され、
・油溶性抗酸化剤は、0.001〜60ppm(好ましくは0.1〜30ppm、より好ましくは1〜20ppm、特に6〜12ppm)の濃度である。
【0020】
本発明の方法を用いることにより、カロテノイドはトリアシルグリセロール油に溶ける高い安定性を示すので、固形粒子は液滴内に存在しない。液滴は、カロテノイド、場合により含んでもよい油溶性抗酸化剤、及びトリアシルグリセロール油の混合物である。
一実施形態では、カロテノイド、場合により含んでもよい油溶性抗酸化剤、及びトリアシルグリセロール油の混合物は、溶液(カロテノイド、場合により含んでもよい油溶性抗酸化剤、及びトリアシルグリセロール油の分子分散体を意味する)である。
本発明の一実施形態において、カロテンは、結晶化又は部分的に結晶化し得る。
【0021】
本発明の別の一形態において、エマルションは、加工デンプン及び/又はゼラチン、乳清タンパク質、乳清タンパク質単離物(whey protein isolate)、カゼイン酸ナトリウム及び他の乳タンパク質、大豆タンパク質、ジャガイモタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1つの界面活性タンパク質(surface active protein);及び/又は天然ポリマー(例えば、リグニンスルホネート、ペクチン、フェヌグリークガム及びアラビアガム)を含み、好ましくは加工デンプンを含み、より好ましくはオクテニルコハク酸デンプンを含む。
加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質は、0.5〜600ppm(好ましくは2〜300ppm、より好ましくは20〜200ppm、特に60〜120ppm)の濃度を有する。上述のポリマーは、10,000〜2,000,000g/mol(好ましくは20,000〜1,000,000g/mol、より好ましくは30,000〜500,000g/mol)の分子量MW分布(molecular weight MW-distribution)を有する。
一実施形態において、本発明のエマルションは、オクテニルコハク酸無水物変性アカシアガム(アカシアガムはアラビアガムとしても知られている)を含まない。
【0022】
さらなる実施形態において、エマルションは、単糖、二糖、オリゴ糖、グルコースシロップ、マルトース及びトレハロース(好ましくはグルコースシロップ、マルトース及びトレハロース)を含む群から、好ましくはグルコースシロップ、マルトース及びトレハロース(より好ましくはグルコースシロップ)からなる群から選ばれる炭水化物を含み、前記炭水化物が20及び50の間(好ましくは35及び50の間、特に43及び48の間)のDE(デキストロース当量)を有する。糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース又はマンノースを含む。
前記炭水化物は、0.5〜10000ppm(好ましくは2〜5000ppm、より好ましくは20〜3000ppm、特に60〜2000ppm)の濃度を有する。
【0023】
本発明のエマルションは、別の一形態において、
・ケイ皮酸のヒドロキシ誘導体(例えば、C6-C3骨格を有するポリフェノールの一種であるヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシケイ皮酸エステル(例えばヒドロキシヒドロシンナメート))のような、化学構造中にフェノール性OH基を含むために抗酸化剤として効力のある天然化合物;
・コーヒー酸、フェルラ酸、チロソール、ヒドロキシチロソール、ケイ皮酸、クロロゲン酸、クマリン、クマリン酸、シナピン酸、ケイ皮酸、チコリ酸及びC1-C20を有するこれらの化合物のいずれかのエステル;
・上記化合物の少なくとも1つに富む植物の抽出物;
・ロスマリン酸、ヒドロキシチロソール;
・一般的なスパイスからの抽出物、一実施形態において、一般的なスパイスは、ローズマリー、レモンバーム、オレガノ、タイム、ペパーミント、セージ又は上記化合物の少なくとも1つを含む又はに富む類似の植物を含む群から選ばれる;
・5000を超える化合物が存在する天然化合物の一種であるフラボン、茶などの植物又はカテキン若しくはエピカテキン若しくはその誘導体を含む又はに富むその他の植物から抽出されるフラボンのいずれも抗酸化剤として使用でき、これらの化合物は、炭水化物でグリコシル化されていてもよく、又はC1-C20の脂肪酸若しくは没食子酸でエステル化されていてもよい;上述の化合物の1つ以上を含む又はに富む植物(例えば、茶、オリーブ、梨、リンゴ)由来の抽出物;
・アスコルビン酸ナトリウム、ポリフェノール(polyphenole)、ティーノバ80(Teanova80)、グルタチオン、リポ酸、カテキン、パニカラギン(punicalagin)、キサントン、ベンゾトロポロン(benzotropolones)(好ましくはアスコルビン酸ナトリウム);
からなる群から選ばれる少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を含み、
・水溶性抗酸化剤は、0.001〜60ppm(好ましくは0.1〜30ppm、より好ましくは1〜20ppm、特に6〜12ppm)の濃度である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、水溶性抗酸化剤は、水中で分子分散体を形成する。
【0025】
本発明の対象は、以下の工程:
a) 0.7〜70%(好ましくは1〜50%、より好ましくは5〜30%、特に15〜25%)の濃度で加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質、0.001〜80%(好ましくは10〜70%、より好ましくは15〜60%、特に30〜50%)の濃度で少なくとも1つの炭水化物、及び水を含む溶液を調製し、該成分を混合する工程、
b) 0.1〜15%(好ましくは0.5〜5%、より好ましくは0.5〜3%、特に1〜2%)の濃度で少なくとも1つのカロテノイドと、1〜30%(好ましくは3〜20%、より好ましくは3〜15%、3〜10%、特に3〜5%)の濃度でトリアシルグリセロール油と、を混合し、100〜200°C(120〜180°C、より好ましくは130〜160°C)の温度で、分散したカロテノイドを融かし及び場合により前記カロテノイドをトランス体からシス体に異性化することにより、溶液を調製する工程、
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液に導入する工程、
d) 工程c)の混合物を回転子/固定子ミキサーに通過させることによりプレ乳化の少なくとも1ステップを実施する工程、
e) 300〜2,000バールの圧力で、高圧均質化の少なくとも1ステップ(好ましくは少なくとも2ステップ)を実施する工程、
f) 工程e)のエマルションを噴霧乾燥させ、粉末を得る工程、
g-1) 工程f)の粉末を水に導入することによりエマルションを調製する工程、
を含み、
パーセントが、工程c)からe)のエマルションに関する重量%であり、すべての使用される化合物の総量が100%であるエマルションの製造方法である。
【0026】
さらなる対象は、上述の工程a)からf)と、工程g-1)に代わる工程g-2)において5%〜70%(好ましくは10%〜70%、10%〜60%、より好ましくは20%〜50%)の濃度で水に工程f)の粉末を導入することによりエマルションを調製することと、を含み、パーセントが水中における工程f)に係る粉末の濃度に関する重量%である、水中油型エマルションの製造方法である。
【0027】
本発明の方法の一実施形態において、場合により、0.001〜10%(好ましくは0.001〜4%、より好ましくは0.01〜1.5%、特に0.5〜1.5)の濃度で少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を工程a)において加える。
【0028】
本発明の方法の一実施形態において、場合により、0.001〜10%(好ましくは0.001〜5%、より好ましくは0.01〜2%、特に0.1〜1%)の濃度で少なくとも1つの油溶性抗酸化剤と、1〜30%(好ましくは3〜20%、より好ましくは3〜15%、3〜10%、特に3〜5%)の濃度でトリアシルグリセロール油とを、工程b)において加える。
【0029】
別の一形態において、本発明の方法は、
工程c)又はd)において炭水化物をエマルションに混ぜること、
工程c)、d)又はe)の後に水溶性抗酸化剤を加えること、
工程a)、c)又はd)において油溶性抗酸化剤を加えること、
を含む代替手段のうち1つ以上を含む。
【0030】
一実施形態において、プレ乳化は、油滴径(z−平均粒径)が200nm〜20μm(好ましくは250nm〜10μm、より好ましくは300nm〜5μm)になるまで実施される。
プレエマルションは、60°Cで少なくとも10時間(撹拌しながら)(好ましくは60°Cで5時間(撹拌しながら)、より好ましくは60°Cで3時間(撹拌しながら))安定である。
【0031】
一実施形態において、高圧均質化の工程にて二段式ホモジナイザーを使用する。二段式ホモジナイザーは2つの圧力弁からなり、そのため装置を通るそれぞれのパスは二段階からなる。一段階目は、0〜3000 バール(好ましくは500〜2000バール、より好ましくは650〜1500バール、特に800〜950バール)を有し、二段階目は、0〜3000バール(好ましくは50〜2000バール、より好ましくは50〜1500バール、特に50〜1000バール)を有する。
別の形態において、300〜2000バール(好ましくは500〜1500バール、より好ましくは500〜1400バール)で、一つの段階においてエマルションをマイクロフルダイザー(microfluidizer)に通過させる。
方法におけるすべての工程は、0及び500°Cの間(好ましくは20〜200°Cの間、より好ましくは20〜200°Cの間、特に50〜200°Cの間)の温度で行われる。
高圧均質化のステップは、別の形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30又はそれ以上で行われる。
【0032】
一実施形態において、本発明の方法は、界面活性剤を一切用いずに安定なエマルションを製造することを容易にする。
一実施形態において、本発明の安定な水中油型エマルションは、加工デンプン(好ましくはオクテニルコハク酸デンプン)の他に、界面活性剤及び/又は乳化剤を含まない。すなわち、オクテニルコハク酸デンプンが、本発明のエマルション中に存在する唯一の界面活性剤及び/又は乳化剤である。
【0033】
本発明のさらなる対象は、工程f)に係るカロテノイドを含む粉末である。
粉末は、別の一形態において、0〜15%(好ましくは0.1〜10%、より好ましくは3〜5%)の残留水分含有量を有する。
【0034】
一実施形態において、本発明の方法に従って製造される粉末は、
0.7〜70%(好ましくは1〜60%、より好ましくは10〜50%、特に20〜40%)の濃度で加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質を、
場合により、0.001〜10%(好ましくは0.001〜4%、より好ましくは0.001〜2 %、特に1%)の濃度で少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を、
0.001〜80%(好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜70%、特に45%)の濃度で少なくとも1つの炭水化物を、
0.5〜20%(好ましくは1〜5%、より好ましくは1〜3%、特に2〜3%)の濃度で、好ましくは30及び100%の間のトランス異性体含有量で、少なくとも1つのカロテノイドを、
場合により、0.001〜10%(好ましくは0.001〜5%、より好ましくは0.01〜3%、特に1%)の濃度で少なくとも1つの油溶性抗酸化剤を、
1〜50%(好ましくは3〜50%、3〜40%、より好ましくは3〜20%、3〜15%、7〜15%、特に8%)の濃度でトリアシルグリセロール油を、
含み、すべての使用される化合物の総量が100%である。
【0035】
本発明の一実施形態において、粉末は、80°C及び500°Cの間(好ましくは100〜300°C、より好ましくは100〜200°C)の入口温度で、及び約40〜150°C(好ましくは50〜100°C、より好ましくは50〜90°C)の出口温度で、噴霧乾燥することにより得られる。
【0036】
本発明の他の対象は、工程f)の粉末を水に導入することにより調製される、工程g-2)に係るカロテノイドを含む(濃縮)エマルションである。この(濃縮)エマルションは、さらに希釈することができる貯蔵エマルションである。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明の水性の透明なエマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末は、着色剤(好ましくは天然の又は天然に等しい着色剤)として使用される。本発明の水性エマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末は、ソフトドリンク、フレーバーウォーター、フルーツジュース、パンチのような飲料又はこれらの飲料の濃縮形態、並びにアルコール飲料及びインスタント飲料粉末における着色剤として使用される。
【0038】
さらなる実施形態において、本発明の水性エマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末は、食品及び/又は飼料に使用される。典型的には、本発明の水性エマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末は、アイスクリーム、チーズ、乳飲料又はヨーグルトのような乳製品、豆乳など、菓子製品、ガム、デザート、キャンディ、プリン、ゼリー、インスタントプディング粉末において、並びにスナック、クッキー、ソース、シリアル、サラダドレッシング、スープにおいても使用される。
【0039】
本発明の水性エマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末はまた、錠剤又はカプセル剤などの医薬品、又は化粧品及び皮膚製剤においても使用することができる。
【0040】
一実施形態において、本発明の水性エマルション、濃縮貯蔵エマルション及び/又は粉末は、アゾ染料の代わりに使用され、それらの代わりとなる。本発明の生成物は、最終製品の外観を再現(最終生成物が同じ色及び透明度(transparency)をもっていることを意味する)することにより、食品着色剤としてのアゾ染料に取って代わる。
【実施例】
【0041】
実施例
1.調製手順
a) 加工デンプン、アスコルビン酸ナトリウム及び炭水化物を60°Cの温度を有する水中に溶解させた。
b) トコフェロールを含むアポカロテナールを、4分間、130〜160°Cで、MCT油中で溶解させ、異性化させた。
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液と混合した。
d) 工程c)の混合物を、9分間、実験室規模の回転子/固定子ミキサーでプレ乳化させた。
e) 混合物を、高圧マイクロフルダイザーによりさらに乳化させた。
f) エマルションを噴霧乾燥した。入口温度は100〜120°Cであった。出口温度は約60℃であった。
g) 5ppmのカロテノイド濃度で該乾燥粉末を水に導入することによりエマルションを調製した。
【0042】
粉末は、5%の濃度の残留水分含有量を有していた。
【0043】
次の例では、E1/1値は460nmの最大吸光で測定し、溶媒中1%のアポカロテナールの最大吸光は2640であった。また、600nmにおける吸光度は、濁度の指標である。
【0044】
2.アポカロテナール濃度の増加
実施例1に準ずるエマルションを、以下の化合物及び濃度で調製した。ここで、工程1 e)の混合物を、高圧マイクロフルダイザー(1000バールで1パス)によってさらに乳化させた。
【0045】
【表1】
【0046】
3.様々な炭水化物の使用
実施例1に準ずるエマルションを、以下の化合物及び濃度で調製した。ここで、工程1 e)の混合物を、高圧マイクロフルダイザー(1000バールで1パス)によってさらに乳化させた。
【0047】
【表2】
【0048】
4.様々な加工デンプン濃度の使用
実施例1に準ずるエマルションを、以下の化合物及び濃度で調製した。ここで、工程1 e)の混合物を、高圧マイクロフルダイザー(800バールで1パス)によりさらに乳化させた。
【0049】
【表3】
【0050】
5.様々な圧力の使用
実施例1に準ずるエマルションを、以下の化合物及び濃度で調製した。ここで、工程1 e)の混合物を、高圧マイクロフルダイザー(600又は1000バールで1パス)によりさらに乳化させた。
【0051】
【表4】
【0052】
6.マイクロフルダイザーに1-5回のパス
実施例1に準ずるエマルションを、以下の化合物及び濃度で調製した。ここで、工程1 e)の混合物を、高圧マイクロフルダイザー(1000バール)によりさらに乳化させた。
【0053】
【表5】
(付記)
(付記1)
0.025〜2000ppmの濃度で乳化カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルション。
(付記2)
カロテノイドは、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-ゼアカロテン(beta-zeacaroten)、リコピン、アポカロテナール、ビキシン、パプリカオレオレジン(paprika olioresin)、カプサンチン及びカプソルビン(好ましくはアポカロテナール、より好ましくはβ-アポ-8-カロテナール)からなる群から選択される、請求項1に記載のエマルション。
(付記3)
5ppmのカロテノイド濃度でのNTU(濁度)値が1〜35NTUである、付記1又は2に記載のエマルション。
(付記4)
色強度値(E 1/1)が140〜280であり、色強度値(E 1/1)は、有機溶媒に溶解した1%のカロテンを含む1cmキュベットを通過する最大吸光度での光の吸光度として定義される、付記1乃至3のいずれかに記載のエマルション。
(付記5)
動的光散乱法を用いて測定された油滴径が50〜400nmである、付記1乃至4のいずれかに記載のエマルション。
(付記6)
MCT油(中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール)、オリーブ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、大豆油及び植物油(好ましくはMCT油)からなる群から選ばれるトリアシルグリセロール油を0.1〜150ppmの濃度で含む、付記1乃至5のいずれかに記載のエマルション。
(付記7)
0.5〜600ppmの濃度で、10,000〜2,000,000g/molの分子量MW分布を有する加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質を含む、付記1乃至6のいずれかに記載のエマルション。
(付記8)
単糖、二糖、オリゴ糖、グルコースシロップ、マルトース及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1つの炭水化物を含み、該炭水化物が0.5〜10000ppmの濃度で20及び50の間のDEを有する、付記1乃至7のいずれかに記載のエマルション。
(付記9)
化学構造中にフェノール性OH基を含むことにより抗酸化剤として効力のある天然化合物;
コーヒー酸、フェルラ酸、チロソール、ヒドロキシチロソール、ケイ皮酸、クロロゲン酸、クマリン、クマリン酸、シナピン酸、ケイ皮酸、チコリ酸、及びC1-C20を有するこれらの化合物のいずれかのエステル;
上記化合物の少なくとも1つに富む植物の抽出物;
ロスマリン酸、ヒドロキシチロソール;
一般的なスパイスからの抽出物;
フラボン(好ましくは茶などの植物又はカテキン若しくはエピカテキン若しくはその誘導体を含むその他の植物から抽出されるフラボン);
上述の化合物の1つ以上を含む植物(例えば、茶、オリーブ、梨、リンゴ)由来の抽出物;
アスコルビン酸ナトリウム、ポリフェノール、ティーノバ80、グルタチオン、リポ酸、カテキン、パニカラギン、キサントン、ベンゾトロポロン(好ましくはアスコルビン酸ナトリウム);
からなる群から選ばれる少なくとも1つの水溶性抗酸化剤を含み、
水溶性抗酸化剤が0.001〜60ppmの濃度である、付記1乃至8のいずれかに記載のエマルション。
(付記10)
エトキシキン;
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、t−ブチルヒドロキシトルオール、t−ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキシキノン);
ビタミンA、レチノイン酸及びC1-C20を有するそのエステル;
ビタミンD2及びD3;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコフェロール、又はそのトコフェロールの少なくとも2つを含む混合物;
アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコトリエノール、又はそのトコトリエノールの少なくとも2つを含む混合物;
上記化合物の少なくとも1つを含む天然抽出物;
フェノール系ジテルペン(例えば、カルノソール、カルノシン酸);
ケイ皮酸の誘導体(2-エトキシエチルp-メトキシシンナメート、エチルヘキシルp-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル4-メトキシシンナメート、メチルジイソプロピルシンナメート、イソアミル4-メトキシシンナメート、ジエタノールアミン4-メトキシシンナメートのような);及び
LC-ガラート(LC-gallates)、オイゲノール(Eugenol)、チモール(Thymol);
からなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤を含み、
油溶性抗酸化剤が0.001〜60ppmの濃度である、付記1乃至9のいずれかに記載のエマルション。
(付記11)
カロテノイドが、30及び100%の間の異性化されたトランス異性体含有量を有する、付記1乃至10のいずれかに記載のエマルション。
(付記12)
以下の工程:
a) 0.7〜70%の濃度で加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質、0.001〜80%の濃度で少なくとも1つの炭水化物、及び水を含む溶液を調製し、該成分を混合する工程、
b) 0.1〜15%の濃度で少なくとも1つのカロテノイドと、1〜30%の濃度でトリアシルグリセロール油と、を混合し、100〜200°Cの温度で分散したカロテノイドを融かすことにより、溶液を調製する工程、
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液に導入する工程、
d) 工程c)の混合物を回転子/固定子ミキサーに通過させることによりプレ乳化の少なくとも1ステップを実施する工程、
e) 高圧均質化の少なくとも1ステップを実施する工程、
f) 工程e)のエマルションを噴霧乾燥させ、粉末を得る工程、
g-1) 工程f)の粉末を水に導入することによりエマルションを調製する工程、
を含み、
前記パーセントが、工程c)からe)のエマルションに関する重量%である、付記1乃至9のいずれかに記載のエマルションの製造方法。
(付記13)
以下の工程:
a) 0.7〜70%の濃度で加工デンプン及び/又は少なくとも1つの界面活性タンパク質、0.001〜80%の濃度で少なくとも1つの炭水化物、及び水を含む溶液を調製し、該成分を混合する工程、
b) 0.1〜15%の濃度で少なくとも1つのカロテノイドと、1〜30%の濃度でトリアシルグリセロール油と、を混合し、100〜200°Cの温度で分散したカロテノイドを融かすことにより、溶液を調製する工程、
c) 工程b)の溶液を工程a)の溶液に導入する工程、
d) 工程c)の混合物を回転子/固定子ミキサーに通過させることによりプレ乳化の少なくとも1ステップを実施する工程、
e) 高圧均質化の少なくとも1ステップ(好ましくは2ステップ)を実施する工程、
前記パーセントは、工程c)からe)のエマルションに関する重量%であり、
f) 工程e)のエマルションを噴霧乾燥させ、粉末を得る工程、
g-2) 5%〜70%の濃度で工程f)の粉末を水に導入することによりエマルションを調製する工程、ここで、該パーセントは、水中の工程f)に係る粉末の濃度に関する重量%である、を含む、乳化カロテノイドを含む水中油型エマルションの製造方法。
(付記14)
工程c)又はd)において前記炭水化物をエマルションに混ぜること、
工程c)、d)又はe)の後に前記水溶性抗酸化剤を加えること、
工程a)、c)又はd)において前記油溶性抗酸化剤を加えること、
を含む代替手段のうち1つ以上を含む、付記12又は13に記載の製造方法。
(付記15)
付記12又は14に記載の工程f)で得られる、カロテノイドを含む粉末。
(付記16)
付記13又は14に記載の工程g-2)で得られる、カロテノイドを含む水中油型エマルション。
(付記17)
着色剤(好ましくは、食品、飼料、医薬品、化粧品及び/又は皮膚製剤における天然の又は天然に等しい着色剤)としての、付記16に記載の水性エマルション又は付記15に記載の粉末の使用。
(付記18)
アゾ染料の代わりとしての、付記17に記載の使用。